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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】組成物及び日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230906BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20230906BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230906BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20230906BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/29
A61K8/37
A61Q1/12
A61Q17/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022559859
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2022020717
(87)【国際公開番号】W WO2022244816
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021084029
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591023642
【氏名又は名称】中越パルプ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(74)【代理人】
【識別番号】100225141
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 安司
(72)【発明者】
【氏名】伊東 慶郎
(72)【発明者】
【氏名】野北 昂志
(72)【発明者】
【氏名】犬童 奏実
(72)【発明者】
【氏名】坂井 博明
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/194080(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112791010(CN,A)
【文献】国際公開第2021/029425(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230228(WO,A1)
【文献】特開2017-094218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C08B 13/00-13/02
D06M 13/00-13/535
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均太さ3~200nmであり、平均長さ0.1μm以上のCNFであって、
前記CNFの水酸基は、ビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類を用いてエステル化された疎水化CNFと(B)油性成分を含有する疎水化CNF油性成分含有体と、
(C)無機金属の微粒子である紫外線散乱剤とを含有する組成物。
【請求項2】
前記(A)疎水化CNFの置換度が、0.2~1.79である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)平均太さ3~200nmであり、平均長さ0.1μm以上のCNFであって、
前記CNFの水酸基は、ビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類を用いてエステル化された疎水化CNFと (B)油性成分とを含有する化粧料用原料と、
(C)無機金属の微粒子である紫外線散乱剤とを含有する日焼け止め化粧料。
【請求項4】
前記(A)疎水化CNFの置換度が、0.2~1.79である請求項3に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項5】
前記日焼け止め化粧料は、
油中水型日焼け止め化粧料又は非水系日焼け止め化粧料であって、
前記日焼け止め化粧料中の(A)疎水化CNFの量が1.1wt%以上である請求項3に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項6】
前記日焼け止め化粧料は、
油中水型日焼け止め化粧料又は非水系日焼け止め化粧料であって、
前記日焼け止め化粧料中の(A)疎水化CNFの量が1.1wt%以上である請求項4に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項7】
CNFを、有機溶媒に分散させて一次分散体を得る第1工程と、
得られた一次分散体と、ビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類とをエステル化反応を行い、二次分散体を得る第2工程と、
得られた二次分散体を洗浄し、分散媒に分散させる工程と、
前記第1工程若しくは前記第2工程において、触媒を加える工程を有する(A)疎水化CNF分散体を得る工程と、
得られた疎水化CNF分散体に、(B)油性成分を添加し、前記疎水化CNF分散体中の分散媒を除去する工程により化粧料原料を得る工程と、
得られた化粧料原料に、少なくとも(C) 無機金属の微粒子である紫外線散乱剤を添加して混合する工程により得られる、油中水型日焼け止め化粧料又は非水系日焼け止め化粧料の製造方法。
【請求項8】
前記(A)疎水化CNFの置換度が、0.2~1.79である請求項7に記載の油中水型日焼け止め化粧料又は非水系日焼け止め化粧料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料には、太陽から届く紫外線を吸収し、熱エネルギーに変えて放出するために、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジメチルPABAオクチル等の紫外線吸収剤が配合されている。また、紫外線を物理的反射ではね返すために、酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線散乱剤が配合されている。
紫外線吸収剤は、皮膚に塗ったときに白く見えないという利点があるものの、皮膚刺激性があり、処方量が規制されていることから、紫外線吸収剤を全く配合しないか、或いは配合量を少なくするという場合がある。
【0003】
一方、紫外線散乱剤は、皮膚刺激性が少なく、処方量の規制はないという利点があるものの、皮膚に塗ったときに白く見えたり、チタンや亜鉛等の無機金属同士が自己凝集し、耐水性、化粧持ち、分散性等に問題があったりする場合がある。
【0004】
特許文献1には、紫外線散乱剤の凝集が抑止され、分散安定性に極めて優れた分散体を提供することを目的として、無機酸化物で被覆された紫外線散乱剤と、分散剤とを含有することを特徴とする分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005ー001999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された分散体は、紫外線散乱剤の凝集を抑え、分散安定性を高めるためには、界面活性剤や油系の増粘剤等を多く入れる必要がある。
また、一般的に、油系の増粘剤を多く処方した日焼け止め化粧料は、べとつきがあり、使用感が良くないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、界面活性剤や油系の増粘剤等を使用しなくとも、或いは界面活性剤や油系の増粘剤等の使用量が少なくとも、紫外線散乱剤の凝集を抑えることができ、かつ、油のきしみ感がなく、使用感が良好である日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、界面活性剤と同様の効果を生じる疎水化CNFに着目し、疎水化CNFと油性成分と混合させた疎水化CNF油性成分含有体が紫外線散乱剤の凝集を防ぐことができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、少なくとも、疎水化CNF油性成分含有体と紫外線散乱剤とを含有する日焼け止め化粧料である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、界面活性剤や油系の増粘剤等を使用しなくとも、或いは界面活性剤や油系の増粘剤等の使用量が少なくとも、紫外線散乱剤の凝集を抑えることができ、かつ、油のきしみ感がなく、使用感が良好である日焼け止め化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第2工程において用いるメディアレス分散機の一例を示す要部断面図である。
図2】実施例12で得られた疎水化CNF粉体をメトキシケイヒ酸エチルヘキシルに分散させた状態を示す図である。
図3】実施例14で得られた疎水化複合CNF粉体をポリプロピレングリコールに分散させた状態を示す図である。
図4】実施例16における疎水化CNFの粘性評価1についての結果を示す図である。
図5】実施例17における疎水化CNFの粘性評価2についての結果を示す図である。
図6】実施例18で得られた疎水化複合CNF粉体を用いて粘性評価を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。ただし、以下の実施形態は、発明の理解を助けるためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0013】
(用語の定義)
ここで本発明で用いる主な用語の定義づけをする。
本明細書における「CNF」との用語は、平均太さ3~200nmであり、平均長さ0.1μm以上のセルロース繊維のことをいい、平均幅3~4nmのいわゆるシングルセルロースナノファイバー、およびシングルセルロースナノファイバーがいくつか集合し複数層となっている平均幅10~200nmのシングルセルロースナノファイバー集合体を包含する。また、セルロース繊維の長さ方向に枝分かれのないものだけではなく、枝分かれしているものも存在する。
また、本明細書における「疎水化CNF」との用語は、前記CNFの水酸基の一部がビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類を用いてエステル化されたCNFのことをいう。
さらに、本明細書における「疎水化複合CNF」との用語は、前記CNFの水酸基の一部が、ビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類を用いてエステル化され、かつ、エステル化されたCNF同士が、多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類を介して架橋されたもの及び/又はエステル化されたCNFの水酸基の一部に結合したCNFを包含する。
さらに、本明細書における「疎水化CNF油性成分含有体」との用語は、少なくとも前記疎水化CNFと後述する各種油性成分とを含む含有体のことをいう。
さらに、本明細書における「疎水化複合CNF油性成分含有体」との用語は、少なくとも前記疎水化複合CNFと後述する各種油性成分とを含む含有体のことをいう。
さらに、本明細書における「疎水化CNF粉体」との用語は、疎水化CNF油性成分含有体であって、疎水化CNF油性成分含有体中の疎水化CNFの成分が20%以上~99%以内のもののことをいう。換言すれば、疎水化CNF油性成分含有体中の疎水化CNFの成分を1としたときに、疎水化CNFと前記油性成分との比が1:0.01~1:4の範囲にあるもののことをいう。
さらに、本明細書における「疎水化複合CNF粉体」との用語は、疎水化複合CNF油性成分含有体であって、疎水化複合CNF油性成分含有体中の疎水化複合CNFの成分が20%以上~99%以内のもののことをいう。 換言すれば、疎水化複合CNF油性成分含有体中の疎水化複合CNFの成分を1としたときに、疎水化複合CNFと前記油性成分との比が1:0.01~1:4の範囲にあるもののことをいう。
さらに、本明細書における「ペースト状の疎水化CNF油性成分含有体」とは、疎水化CNF油性成分含有体であって、疎水化CNF油性成分含有体中の疎水化CNFの成分が20%より小さいもののことをいう。
さらに、本明細書における「ペースト状の疎水化複合CNF油性成分含有体」とは、疎水化複合CNF油性成分含有体であって、疎水化複合CNF油性成分含有体中の疎水化複合CNFの成分が20%より小さいもののことをいう。
【0014】
(疎水化CNF分散体及び疎水化複合CNF分散体の製造方法)
本発明の疎水化CNF分散体の製造方法は、少なくとも、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有している。
前記第1工程は、含水状態のCNFを、有機溶媒に分散させて一次分散体を得る工程である。
また、前記第2工程は、前記一次分散体と、ビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類とを、剪断部のクリアランスが10μm以上23000μm以下のメディアレス分散機を用いて分散処理して、二次分散体を得る工程である。
さらに、前記第3工程は、前記二次分散体をアルコール水溶液に分散させて疎水化CNF濃度が2~30%の疎水化CNF分散体を得る工程である。
さらに、前記第1工程若しくは前記第2工程において、触媒を加える工程を有している。
【0015】
本発明の疎水化CNF分散体の製造方法は、前記第2工程において、剪断部のクリアランスが10μm以上23000μm以下のメディアレス分散機を用いて分散処理して、二次分散体を得る工程を有しているため、前記第1工程で得られた一次分散体中に存在するCNFを分散させることができる。これにより、前記第2工程を行い得られた二次分散体は、セロビオースユニット内の水酸基がビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類によってエステル化され、置換反応が進行する。
また、本発明の疎水化複合CNF分散体の製造方法は、前記疎水化CNF分散体の製造方法における第2工程の一部が異なるものであり、他の第1工程及び第3工程は、前記疎水化CNF分散体の製造方法と同一である。
【0016】
<第1工程>
第1工程では、含水状態のCNFを、有機溶媒に分散させて一次分散体を得ることを目的とする。
このようにすることで、CNFの水酸基とビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類との反応性を向上させることができる。
以下、第1工程について詳細に説明する。
【0017】
先ず、CNF分散液を準備し、そのCNF分散液を固液分離することでCNFと水分とを分離して、CNF含量を2~40%程度とした含水状態のCNFとする。ここで、固液分離の態様は特に限定されない。例えば遠心分離機、フィルタープレス等を用いることができる。なお、CNF分散液中のCNF含量を2%以下程度のものを使用した場合には、含水状態のCNFとしてそのまま用いてよい。また、CNF分散液については後述する。
【0018】
次いで、得られた含水状態CNFが15%程度以上のものである場合には、これを粉末化する。ここで、粉末化の態様は特に限定されない。粉末化する態様としては、物理的に細かく粉砕すればよく、例えば、圧縮破砕機、剪断粗砕機、衝撃破砕機、ロールミル、高速回転ミル、ジェットミル等を用いることができる。また、粉砕の程度に特に制限はないが、例えば粉末化により得られるパウダー状のCNFの平均粒子径が0.1~5cmの範囲になるように粉末化することが好ましい。
【0019】
次いで、得られた前記パウダー状のCNF又は15%以下程度の含水状態のCNFを有機溶媒に圧縮力及びせん断力を付加しながら混合して上記一次分散体が得られる。なお、一次分散体中のCNF濃度は、0.1~4.5w/w、より好ましくは、2.5~3.5w/wの範囲とすることが好ましい。
ここで、圧縮力及びせん断力を付加しながら混合することのできる装置としては、高速せん断ミル、ブレード型混練機、高速混合機メカノハイブリット、高性能流動式混合機FMミキサー等を用いることができる。なお、上記有機溶媒については後述する。
【0020】
(CNF分散液)
本願発明に用いることのできるCNF分散液としては、特許第6867613号公報に記載の微細状繊維の製造方法や特許第6704551号公報に記載の天然高分子としてセルロースを用いたセルロースナノファイバー及びセルロースナノクリスタル水溶液の調製方法や両公報に記載の他の原料等を由来成分とする微細状繊維の製造方法を参照することができる。
【0021】
これらCNF分散液の原料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。また原料の多糖としてはα-セルロース含有率60%~99質量%のパルプを用いるのが好ましい。α-セルロース含有率60質量%以上の純度であれば繊維径及び繊維長さが調整しやすくなって繊維同士の絡み合いを抑えることができ、α-セルロース含有率60質量%未満のものを用いた場合に比べ、熱安定性が高く、着色抑制効果が良好である。一方、99質量%以上のものを用いた場合、繊維をナノレベルに解繊することが困難になる。
【0022】
CNFの結晶化度は結晶化度50以上が好ましい。結晶化度については、X線回折法等によって測定することができ、結晶化度50未満の場合は、セルロースの天然結晶が有する特性を十分に引き出せなくなるほか、腐敗等による保管時の経時劣化を引き起こす虞がある。
ACC法(水中対向衝突法)により、セルロース繊維の平均粒子長を10μmにまで粉砕することができ、その結果、平均太さ3~200nmであり、平均長さ0.1μm以上であるCNFが得られる。平均太さと平均繊維長さの測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等を適宜選択し、CNFを観察・測定し、得られた写真から20本以上を選択し、これをそれぞれ平均化することにより求める。
【0023】
(有機溶媒)
有機溶媒としては、N-メチルピロリドン(以下、NMPと記す)、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと記す)、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す)、または、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと記す)等を含む非イオン性極性溶媒を用いることができる。
【0024】
<第2工程>
第2工程は、CNFに存在する水酸基をビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類によりエステル化させて疎水化CNF等の反応生成物を含む二次分散体を得ることを目的とした工程である。また、第2工程で得られた二次分散体中の反応生成物を回収し、これを精製する工程を行うことで、疎水化CNFが得られる。
以下、第2工程について詳細に説明する。
【0025】
CNFに存在する水酸基をビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類によりエステル化反応を開始するためには、触媒の存在が必須となる。本発明において、触媒を加える工程は、以下のように、第2工程で触媒を添加する工程を行う場合と、第1工程において、触媒を添加する工程を行う場合の2態様がある。
第1の態様は、第2工程において、触媒を加える態様である。
第1工程により一次分散体を得た後、一次分散体中の水分量が60%から10%以下のいずれかの範囲となるように上記有機溶媒及び/又は水を用いて水分量の調節を行う。
次いで、ビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類を添加する。このとき、ビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類は、前記一次分散体に含まれるCNFのグルコース単位換算量に対して0.1~5.0モル当量の割合で添加するとよい。
疎水化複合CNF分散体を製造する場合には、さらに、多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類及び架橋剤を追加して添加する。このときの多価アルコール及び/又はポリアルキレングリコールのCNFに対する量については後述する。
次いで、触媒を一次分散体中のCNFに対して、1~400wt%、好ましくは、5~350wt%、より好ましくは、10~300wt%の範囲で添加する。係る場合は、触媒を添加したときに、エステル化反応が開始する。
或いは、第1工程により一次分散体を得た後、一次分散体中の水分量の調節を前記の範囲のように行う。
次いで、触媒を一次分散体中のCNFに対して、前記の範囲で添加する。
次いで、ビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類を前記の割合で添加する。
疎水化複合CNF分散体を製造する場合には、さらに、多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類及び架橋剤を添加する。係る場合には、ビニルエステル類等を添加したときに、エステル化反応が開始する。
【0026】
第2の態様は、第1工程において、触媒を一次分散体中のCNFに対して、前記の範囲で添加してから、第2工程を行う態様である。
係る場合には、前記第1の態様の後段と同様に、ビニルエステル類等を添加したときに、エステル化反応が開始する。
【0027】
したがって、後述するメディアレス分散機による分散処理の開始直前に、エステル化反応を開始させるように触媒等の添加のタイミングを合わせるとよい。
また、本発明におけるメディアレス分散機による分散処理には、メディアレス分散機を使用して分散処理するという意味の他に、前記エステル化反応も含むと解される。
ここで、説明のために、触媒若しくはビニルエステル類を添加する直前の分散体を処理前二次分散体とする。
反応温度は、25℃~100℃、好ましくは、60℃~95℃、より好ましくは、70℃~90℃の範囲において行う。
反応時間は、1分~5時間、好ましくは、10分~4時間、より好ましくは、15分~3時間の範囲において行う。
なお、ビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類、多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類、架橋剤及び触媒については後述する。
【0028】
次いで、メディアレス分散機を用いて、処理前二次分散体を分散処理することで二次分散体が得られる。また、得られた二次分散体を、再度、メディアレス分散機を用いて分散処理してもよい。
第2工程において用いられるメディアレス分散機は特に限定されないが、回転体であるロータと固定面であるステータとを備えていることが好ましい。また、触媒や架橋剤等はメディアレス分散機の直近もしくは直接機内に添加する機構を備えていることが好ましい。
前記ロータと前記ステータとを備えることにより、前記ロータと前記ステータとのクリアランスの調整や、前記ロータの回転速度の調整により、前記処理前二次分散体、前記触媒及びビニルエステル類等に加える剪断力を調節できるからである。
また、高速撹拌翼、タービン/ステータ型攪拌機、高粘度混練プラス高速攪拌、旋回薄膜型高速攪拌、インライン式分散機・混合型攪拌機等から選択することができる。
なお、メディアレス分散機は2種類以上を連続式に並べてもよく、撹拌槽等と循環しても良い。また、予備分散として超音波分散や混練撹拌などの粗分散を合わせても良く、撹拌槽等による間接昇温・冷却やマイクロ波による直接昇温を合わせて行っても良い。
前記メディアレス分散機としては、例えば、プライミクス株式会社製の「クリアスタア」、新東工業株式会社製の「ディスパライザー」、エム・テクニック株式会社製の「アルリア」及び日本コークス工業株式会社製の「FMミキサー」等を用いることができる。
【0029】
ここで、前記第2工程で用いるメディアレス分散機について図面を用いて説明する。図1は、本発明の第2工程において用いるメディアレス分散機の一例を示す要部断面図である。
図1において、メディアレス分散機1は、ステータ2と、ステータ2の内部で回転するロータ3とを備えている。ステータ2とロータ3との間には、隙間4が形成されている。図1では、ステータ2とロータ3との隙間4の最小の大きさをクリアランスCとした。
クリアランスCは、10μm以上23000μm以下の大きさに設定され、クリアランスCは、20μm以上5000μm以下がより好ましく、50μm以上1000μm以下が更に好ましい。クリアランスCが10μmより小さいと、クリアランスCより大きなCNF集合体が処理前二次分散体中に存在した場合や、濃度変動がある場合に、これが機器内に閉塞する可能性や、偏芯によって、ロータとステータが接触してしまい、メディアレス分散機が故障する可能性がある。
一方、クリアランスCが23000μmを超えると、剪断力が小さくなるおそれがある。
【0030】
図1において、ロータ3を回転させて、ステータ2とロータ3との隙間4に矢印の方向に混合液を通過させることにより、本発明における前記処理前二次分散体に水平剪断応力を与えることができ、かつ、触媒等が均一に分散され、反応効率を向上させることができる。
【0031】
また、上記第2工程におけるシェアレートは、1×10(1/s)以上1×10(1/s)以下であることが好ましく、1×10(1/s)以上1×10(1/s)以下であることがより好ましい。
上記シェアレートが1×10(1/s)を下回ると十分な剪断力を得ることができず、処理前二次分散体中のCNF集合体の水酸基に触媒等が、均一に分散されない。一方、上記シェアレートが1×10(1/s)を超えると、分散処理中の処理液が高温となるおそれがあり、好ましくない。ただし、メディアレス分散機に冷却機能を有する場合には、上記シェアレートが1×10(1/s)を超えてもよい場合がある。
【0032】
上記シェアレートは、下記式で表される。
シェアレート(1/s)=周速(m/s)/クリアランスC(mm)×1000
周速(m/s)=π×ロータの直径(mm)×1/1000×回転数(rpm)×1/60
【0033】
(ビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類)
本発明に使用するビニルエステル類又は有機酸ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルステアレート、ビニルラウレート、ビニルミリステート、ビニルプロピオネート、バーサティク酸ビニル等の直鎖状又は分岐鎖状C2-20脂肪族カルボン酸のビニルエステル、安息香酸ビニルなどの芳香族カルボン酸を例示できる。
【0034】
(多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類)
多価アルコール及びポリアルキレングリコール類としては、水酸基を2つ以上有していれば特に制限はなく、多価アルコールとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,3-ブタンジオールなどが挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。
また、ポリアルキレングリコールとしては、主鎖中にエーテル結合の繰り返し構造を有する線状高分子化合物であり、例えば環状エーテルの開環重合等によって製造される。ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の重合体、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体およびその誘導体等が挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等のいずれの共重合体も用いることができる。また、ポリアルキレングリコールの分子量は、概ね200~100000の範囲のものを使用することができる。
【0035】
(多価アルコール及び/又はポリアルキレングリコールのCNFに対する量について)
CNFの水酸基に対して、0.01%~50%となるように多価アルコール及び/又はポリアルキレングリコールを結合させるとよい。多価アルコール及び/又はポリアルキレングリコールの量が少ないと、油性成分に分散させた際に、嵩高い疎水化複合CNF複合体が得られないので、CNF同士が密に集合してしまい、離漿性が生じてしまう。一方、多価アルコール及び/又はポリアルキレングリコールの量が多いと、有効に反応できるCNF中の水酸基の絶対量が少なくなってしまうため、前記ビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類がCNFの水酸基に導入されにくくなるので、油性成分になじまないものとなってしまう。また、ポリアルキレングリコールは、親水性のエーテル結合を多く含むので、本願発明の目的に反することとなる。
【0036】
(架橋剤)
本願発明における架橋剤としては、CNFの水酸基と多価アルコール及び/又はポリアルキレングリコールが有する水酸基同士とを結合するものであれば特に制限されない。具体的には、ジビニルエステル類、イソシアネート系架橋剤等を使用することができる。
【0037】
ジビニルエステル類としては、例えば、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルサクシネート等を挙げることができ、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0038】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。
【0039】
(触媒)
本願発明における触媒としては、特に制限されることはないが、アルカリ性を有する触媒、特に緩衝作用を有するものが好ましく、アルカリ金属塩が好ましい。例えばリン酸水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウムを例示できる。
【0040】
<第3工程>
第3工程は、第2工程における反応終了後の疎水化CNFを含む二次分散体を脱水・洗浄した後、アルコール水溶液(以下、分散媒ということもある。)を用いて、疎水化CNF濃度が2~30%程度の疎水化CNF分散体とすることを目的とした工程である。
以下、第3工程について詳細に説明する。
【0041】
(脱水工程)
反応終了後の疎水化CNFを含む二次分散体を固液分離することで疎水化CNFと有機溶媒、未反応物質、触媒及び副生成物とを分離する。ここで、固液分離の態様は特に限定されない。例えば遠心分離機、フィルタープレス等を用いることができる。
【0042】
(洗浄工程)
前記脱水工程で除去しきれなかった有機溶媒、未反応物質、触媒及び副生成物等の不純物を、アルコール水溶液を用いて洗浄する。アルコールの種類は、特に制限されないが、上記物質との相溶性の観点からメタノールやエタノール等が好ましい。
また、アルコール水溶液中のアルコール濃度は、同様に相溶性の観点から1~100%、好ましくは30~90%、さらに好ましくは50~70%が好ましい。
得られる疎水化CNF分散体の第一工程において用いた有機溶媒の濃度が1000ppm以下になるまで、前記脱水工程と前記洗浄工程を交互に行う。
【0043】
(疎水化CNF及び疎水化複合CNF)
本発明に係る疎水化CNF及び疎水化複合CNFは、第2工程で得られた反応生成物を回収し、精製する工程を行うことで、疎水化CNF又は疎水化複合CNFが得られる。或いは、得られた疎水化CNF分散体又は疎水化複合CNF分散体中のアルコール水溶液を除去することによっても得られる。
本発明の疎水化CNFは、平均太さ3~200nmであり、平均長さ0.1μm以上のCNFであって、前記CNFの水酸基は、ビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類を用いてエステル化され、その置換度が0.41~1.79である。
疎水化CNFの置換度は、次の置換度測定によって、測定される。
【0044】
(置換度測定)
本発明において、疎水化CNF分散体中の疎水化CNFの置換度測定は以下の方法で行う。
1%(w/w)濃度の疎水化CNF分散体:10mlに対して、等量のエタノール:10mlを加えて分散させる。次いで、分散液に0.5N水酸化ナトリウム溶液をホールピペットで10ml添加し、80℃で60分間反応させ加水分解する。反応終了後、冷却して反応を停止させる。フェノールフタレイン溶液を数滴加えた後、ビュレットを用いて0.1N 塩酸を滴下し、エステルの加水分解で生じた酸の量を滴定する。滴定値より置換度(DS)を算出する。
【0045】
(疎水化複合CNF)
本発明の疎水化複合CNFは、含水状態のCNFを、有機溶媒に分散させて一次分散体を得る工程と、触媒を加える工程と、多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類、架橋剤、ビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類を加える工程と、剪断部のクリアランスが10μm以上23000μm以下のメディアレス分散機を用いて分散処理をして反応させ、得られる反応生成物を回収する工程とを含む疎水化複合CNFである。
【0046】
本発明において、「疎水化複合CNF」の発明を、その特定事項として製造方法によって特定している。その理由を説明する。
本発明の疎水化複合CNFの態様として、少なくとも、以下の2つの態様が存在する。
まず、第一に、セロビオースユニット内の化学修飾されていない水酸基が、ビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類を用いてエステル化され、一のCNF中の未反応の水酸基と他のCNF中の未反応の水酸基とに対し、多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類の2つ以上の水酸基とが結合した疎水化複合CNFが存在する。
次いで、第二に、セロビオースユニット内の化学修飾されていない水酸基が、ビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類を用いてエステル化され、多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類の2分子以上の水酸基同士が結合し、これが、一のCNF中の未反応の水酸基と他のCNF中の未反応の水酸基とに結合している疎水化複合CNFが存在する。
そして、これらの疎水化複合CNFがある割合で組み合わされている。
【0047】
ここで、水酸基とエステル結合したビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類の置換度を測定するためには、前述のように、水酸化ナトリウム溶液を用いてエステル結合したビニルエステル類及び/又は有機酸ビニルエステル類を遊離させ、これを滴定することによって、算出する。
しかしながら、係る方法を疎水化複合CNFに適用すると、第二の疎水化複合CNFに対しては、多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類同士の結合も遊離してしまい、疎水化複合CNF中の水酸基に結合した多価アルコール類及び/又はポリアルキレングリコール類の置換度を正確に算出することができない。
本発明の疎水化複合CNFをその構造又は特性により直接特定するためには、特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するため、出願時に一義的に特定することは事実上困難である。そこで、疎水化複合CNFの発明において、製造方法を発明特定事項としている。
【0048】
(疎水化CNF油性成分含有体及び疎水化CNF粉体の製造方法)
(疎水化複合CNF油性成分含有体及び疎水化複合CNF粉体の製造方法)
本発明に係る疎水化CNF油性成分含有体の製造方法と疎水化複合CNF油性成分含有体の製造方法は、疎水化CNF分散体を用いるか、或いは、疎水化複合CNF分散体を用いるかの点のみが異なるものであるから、以下、疎水化CNF油性成分含有体について説明する。
また、本発明に係る疎水化CNF粉体の製造方法と疎水化複合CNF粉体の製造方法は、疎水化CNF分散体を用いるか、或いは、疎水化複合CNF分散体を用いるかの点のみが異なるものであるから、以下、疎水化CNF粉体について説明する。
【0049】
本発明に係る疎水化CNF油性成分含有体の製造方法は、疎水化CNF分散体に後述する各種油性成分を添加し、疎水化CNF分散体中の分散媒を50%、40%、30%、20%以下程度まで除去することにより、疎水化CNF油性成分含有体が得られる。
このとき、各種油性成分の添加の割合を、得られる疎水化CNF油性成分含有体中の疎水化CNFの成分が20%以上~99%以内になるように各種油性成分を添加すると、疎水化CNF粉体が得られる。
または、得られる疎水化CNF油性成分含有体中の疎水化CNFの成分を1としたときに、疎水化CNFと前記油性成分との比が1:0.01~1:4の範囲にあるように各種油性成分を添加すると、疎水化CNF粉体が得られる。
分散媒を除去する方法は、特には限定されないが、例えば溶媒置換法や乾燥法により得ることができる。
溶媒置換法の場合、疎水化CNF分散体に各種油性成分を加え、ホモジナイザー若しくはFMミキサー等の撹拌装置を用いて分散後、遠心分離機等を用いて沈降させた疎水化CNFを回収する。係る一連の操作を数回繰り返すことで、疎水化CNF油性成分含有体を得ることができる。本溶媒置換法は、主にペースト状の疎水化CNF油性成分含有体を製造するときに採用され得る。
一方、乾燥法の場合、疎水化CNF分散体に各種油性成分を加え、乾燥機を用いて疎水化CNF分散体中の分散媒を除去することで得られる。より、具体的には、疎水化CNF分散体に各種油性成分を加え、疎水化CNF分散体中の分散媒を加温し、攪拌しながら乾燥等させ、分散媒を除去することにより得られる。なお、乾燥方法は、減圧乾燥、真空乾燥などの公知の方法を用いることができる。本乾燥法は、疎水化CNF粉体と、ペースト状の疎水化CNF油性成分含有体のいずれについても製造することができる。
用いる乾燥機としては特に限定されないが、例えば減圧と加温、撹拌が同時に可能な機器が望ましい。疎水化CNF分散体に加える油性成分の量は、特に限定されないが、得られる疎水化CNF油性成分含有体中の疎水化CNF含有率が1~99%となるように調製すればよい。
疎水化CNF油性成分含有体にすることにより、疎水化CNF分散体では分散が難しかった溶媒に対して、良好な分散性を得ることができる。
【0050】
(疎水化CNF油性成分含有体及び疎水化CNF粉体)
本発明の疎水化CNF油性成分含有体及び疎水化CNF粉体の製造方法によって、疎水化CNF油性成分含有体及び疎水化CNF粉体が得られる。
本発明の疎水化CNF油性成分含有体は、本発明に係る疎水化CNFと油性成分とを含有するものである。
また、本発明の疎水化CNF粉体は、疎水化CNF油性成分含有体であって、疎水化CNFを1としたときに、疎水化CNFと前記油性成分との比が1:0.01~1:4である。
本発明に係る疎水化CNF油性成分含有体及び疎水化CNF粉体は、各種油性成分に再分散させることが可能である。
【0051】
(疎水化複合CNF油性成分含有体及び疎水化複合CNF粉体)
本発明の疎水化複合CNF油性成分含有体及び疎水化複合CNF粉体の製造方法によって、疎水化複合CNF油性成分含有体及び疎水化複合CNF粉体が得られる。
本発明の疎水化複合CNF油性成分含有体は、本発明に係る疎水化複合CNFと油性成分とを含有するものである。
また、本発明の疎水化複合CNF粉体は、疎水化複合CNF油性成分含有体であって、疎水化複合CNFを1としたときに、疎水化複合CNFと前記油性成分との比が1:0.01~1:4である。
本発明に係る疎水化複合CNF油性成分含有体及び疎水化複合CNF粉体は、各種油性成分に再分散させることが可能である。
【0052】
(油性増粘剤)
本発明の疎水化CNF、疎水化CNF分散体、疎水化CNF油性成分含有体、疎水化CNF粉体、疎水化複合CNF、疎水化複合CNF分散体、疎水化複合CNF油性成分含有体及び疎水化複合CNF粉体を油性増粘剤として使用することができる。
例えば、公知の増粘、ゲル化剤、疎水化剤、懸濁剤、分散剤・温度・力学安定剤、固結防止剤、流動性改善剤、乾式シリカ、フューズドシリカ粒子等と、1種又は2種以上組み合わせて、油性増粘剤として使用することもできる。
本願発明に係る油性増粘剤の用途の例として、油性塗料の増粘剤、疎水性樹脂の増粘剤が挙げられる。また、オイル吸着剤、オイル吸収剤、エマルション用オイル組成物としても利用でき、形状くずれ防止、たれ防止、摩耗性改善にも利用できる。
【0053】
(化粧料用原料)
本発明の疎水化CNF、疎水化CNF分散体、疎水化CNF油性成分含有体、疎水化CNF粉体、疎水化複合CNF、疎水化複合CNF分散体、疎水化複合CNF油性成分含有体及び疎水化複合CNF粉体を化粧料用原料として使用することができる。本発明の疎水化CNF等を利用することにより、高い増粘効果を発揮することができ、使用感や安定性の良好な化粧料を提供することができる。
【0054】
(油性成分)
本発明に係る疎水化CNF油性成分含有体又は疎水化複合CNF油性成分含有体に使用できる油性成分としては、例えば、シリコーン油、非極性有機化合物及び低極性有機化合物、高級アルコール類、高級脂肪酸、多価アルコール、ポリアルキレングリコール、紫外線吸収剤、植物油、鉱物油、種子抽出オイル、天然ガス又は石油から分離精製液化した油、動物の皮下組織などより得られる脂肪油、骨,皮を酸,アルカリ,酵素それぞれ単独あるいは組合せの存在下で加水分解して得られるコラーゲンたん白質加水分解物、ベンゼン等の極性の小さな各種溶媒、動物油等を挙げることができる。以下に油性成分について具体的にあげるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の疎水化CNFで増粘できる油性成分であれば、本発明の油性成分として利用することができる。
【0055】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチコン)、メチルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
【0056】
非極性有機化合物としては、例えば、流動パラフィン(ミネラルオイル)、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ワセリン、n-パラフィン、イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカン、ポリイソブチレン、水素化ポリイソブチレン、ポリブテン、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン・ポリピロピレンワックス、スクワレン、スクラワン、プリスタン、ポリイソプレン等を挙げることができる。
【0057】
低極性有機化合物としては、例えば、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン(トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン)、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パルミチン酸エチルヘキシル等を挙げることができる。
【0058】
高級アルコール類としては、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、オクチルアルコール、キミルアルコール、ステアリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、デシルアルコール、バチルアルコール、ヘキシルデカノール、ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0059】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0060】
紫外線吸収剤としては、一般に化粧品に用いられる高極性の油性紫外線吸収剤を広く挙げることができる。例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸等の安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル酸メチル等のアントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等が例示される。
【0061】
植物油としては、例えばメンドウフォーム油、紅花油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アルモンド油、ゴマ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、大豆油、落花生油、ミンク油、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、米油、オリーブ油、ヤシ油、サザンカ油等を挙げることができる。
【0062】
(組成物)
本発明に係る組成物は、疎水化CNF油性成分含有体と紫外線散乱剤を含有する組成物である。また、本発明に係る組成物をプレミックス品として用いることができる。
【0063】
(日焼け止め化粧料)
本発明に係る日焼け止め化粧料は、紫外線散乱剤及び/又は紫外線吸収剤を含有する化粧料であって、その剤形が、油中水型化粧料、水中油型化粧料、非水系化粧料のいずれの剤形とすることができる化粧料のことをいう。ここで、非水系化粧料とは、その製造工程において、原料として水を含まない化粧料のこと、及び/又は、その製造工程において、乳化工程を行わない化粧料のことをいう。なお、その剤型が油中水型化粧料である場合には、油中水型日焼け止め化粧料と、水中油型化粧料である場合には、水中油型日焼け止め化粧料と、非水系化粧料である場合には、非水系日焼け止め化粧料と称呼する。
また、本発明の化粧料の形態としては、メイクアップ化粧料、皮膚用化粧料、皮膚洗浄剤、紫外線防御化粧料、スキンケア製品、毛髪化粧料など幅広く適用が可能である。
メイクアップ化粧料としては、化粧下地、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、スティックファンデーション、アイシャドウ、チーク、コンシーラー、口紅、マニュキュア、マスカラ、ドーラン、フェイスカラー、頬紅、アイライナー、アイブロー、ネイルトリートメント等が挙げられる。
皮膚用化粧料としては、化粧水、乳液(美白乳液など)、クリーム、美容液、保湿ローション、フェイスパック、エモリエントクリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム等が挙げられる。
皮膚洗浄剤としては、クレンジングオイル、手洗い用洗浄料、洗顔料、ボディソープ、頭皮用洗浄料、ハンドクリーナー、スクラブ、ピーリング剤、クレンジングクリーム、クレンジングバーム、クレンジングジェル、クレンジングミルク、コールドクリーム、バニシングクリーム、マッサージクリーム等が挙げられる。
紫外線防御化粧料としては、日焼け止め乳液、日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、サンタン化粧品、アフターサンケア化粧品、セルフタンニング化粧品、トーンアップ、日焼け止めミスト・スプレー、ジェル、パウダー等が挙げられる。
毛髪化粧料としては、ヘアクリーム、ヘアミスト、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、リンスインシャンプー、ヘアスタイリング剤(ヘアフォーム、ジェル状整髪料等)、ヘアトリートメント剤、ヘアワックス、ヘアオイル、染毛剤等が挙げられる。
さらには、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、芳香剤、消臭剤、歯磨剤、軟膏、湿布、洗口液、除毛クリーム、エイジングケアクリーム等が挙げられる。
【0064】
本発明の日焼け止め化粧料には、必要に応じて、通常化粧料に配合できる公知の増粘剤、ゲル化剤、疎水化剤、懸濁剤、分散剤・温度・力学安定剤、固結防止剤、流動性改善剤、乾式シリカ、フューズドシリカ粒子、顔料、ワックス、界面活性剤、保湿剤、防腐剤・殺菌剤等の原料を配合することができる。
【0065】
紫外線散乱剤としては、一般的に日焼け止め化粧料に用いられるものであれば特に制限されない。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛や、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、酸化チタン被覆ガラスフレーク等の複合粉体などが挙げられる。これらのうち、紫外線防御効果の観点から、金属酸化物が好ましく微粒子の酸化亜鉛と酸化チタンがより好ましい。
また、紫外線散乱剤は、疎水処理したものが耐水性を向上させる観点からは好ましい。疎水処理は通常の表面処理法を用いることができる。さらに、薬剤等を用いて光の波長より小さい顔料をも用いることができる。
【0066】
顔料としては、一般に日焼け止め化粧料に用いられるものであれば特に制限されない。例えばタルク、マイカ、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、カーボンブラック、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、オキシ塩化ビスマス、チタン-マイカ系パール顔料等の無機顔料;赤色201号、赤色202号、橙色203号、黄色205号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色404号、緑色3号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料;クロロフィル、β-カロチン等の天然色素;染料等が挙げられる。
【0067】
ワックスとしては、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス、カルナウバロウ、オゾケライト、ライスワックス、コメヌカロウ、ホホバワックス、キャンデリラロウなどの植物由来のワックス、鯨ロウ、ミツロウ、雪ロウなどの動物由来のワックス、シリコーンワックス等が挙げられる。これらワックスは単独で使用することができるし、2種以上を併用することもできる。
【0068】
界面活性剤としては、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性の活性剤があるが、特に制限されるものではなく、通常の化粧料に使用されるものであれば、いずれのものも使用することができ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0069】
保湿剤としては、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;ソルビトール、マルトース、キシリトール等の糖アルコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコール、プロピレングリコール、ジブチレングリコール、ペンチレングリコール、デカンジオール、ヘキサンジオール、エリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール;グルコース、グリセリルグルコシド、ベタイン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等が挙げられる。
【0070】
防腐剤・殺菌剤としては、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、イミダゾリジニルウレア、サリチル酸、イソプロピルメチルフェノール、石炭酸、パラクロルメタクレゾール、フェノキシエタノール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、ポリリジン、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール等が挙げられる。
【実施例
【0071】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
(DMSOの測定方法)
各実施例(F)におけるDMSOの濃度の測定は、以下の測定方法に基づいて行った。
各疎水化CNF分散体をアセトンに10~100倍希釈し、スターラーや超音波等の分散装置を用いて分散させる。
次いで、ガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて、シリンジフィルターで疎水化CNFを取り除いた後の液を分析した後、希釈前の疎水化CNF中に含まれるDMSOの濃度を算出した。
なお、前記希釈倍率は、適宜調節して分析を行った。
ガスクロマトグラフィー質量分析計の測定条件は以下の通りである。
ガスクロマトグラフ質量分析計:アジレント・テクノロジー株式会社社製、Agilent 5975GC/MS
カラム:アジレント・テクノロジー社製、DB-WAX 0.25mm×30m×0.25μm
注入口温度:200℃
注入法:スプリット
温度条件:40℃(1分)~10℃/分→250℃(8分)
キャリアガス流量:He 1.2ml/分
イオン源温度:230℃
【0073】
(実施例1)
(疎水化CNF分散体の作成)
ヘキサン酸ビニルを用いた疎水化CNF分散液を以下のA~Fの工程を行い調製した。
次いで、得られた疎水化CNFの置換度を測定した。
(A)竹パルプを原料として、ACC法(水中対向衝突法)を用いて、解繊処理を行い、平均繊維径3nm~200nmのCNF分散液1wt%を得た。次いで、CNF分散液を、フィルタープレス(株式会社栗田機械製作所、MF-A 手動式)を用いて、CNF濃度を30w/w%まで脱水し、得られたCNFを破砕してパウダー状のCNFとした。
(B)次いで、パウダー状のCNFを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社、FM10C/I)を用いて、1時間、DMSO中に分散させ、CNF濃度を2.7w/w%とする一次分散体(DMSO分散液)を得た。
(C)次いで、水を加えた後の水分量が40%となるように、一次分散体に水を加え、これを80℃に加温した。
(D)次いで、ヘキサン酸ビニルを一次分散体に含まれるCNFのグルコース単位換算量に対して1.2モル当量の割合で添加した。
(E)次いで、剪断部のクリアランスが1000μmであるFMミキサー(回転数:1200rpm、直径:160mm、周速:10.1m/s、シェアレート:10053(1/s))を用いて分散処理を行った。次いで、炭酸カリウムをCNF比20%加え、FMミキサー(条件は上記と同じ)で180分反応を行い、二次分散体を得た。
(F)反応終了後、ブフナー漏斗で脱水した後、FMミキサーと50%濃度のエタノール水溶液を用いて複数回洗浄し、DMSOの濃度が950ppmとなったところで、洗浄を終了し、エタノール水溶液を用いて、疎水化CNF濃度が2%の疎水化CNF分散体とした。
また、疎水化CNFの置換度は、0.71であった。
【0074】
(実施例2)
(疎水化CNF分散体の作成)
実施例1における(A)~(F)の工程の内、(B)、(C)、(D)及び(F)を以下のように変更して、ラウリン酸ビニルを用いた疎水化CNF分散体を作成した。
次いで、得られた疎水化CNFの置換度を測定した。
(B)次いで、パウダー状のCNFを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社、FM10C/I)を用いて、1時間、DMSO中に分散させ、CNF濃度を2.3w/w%とする一次分散体(DMSO分散液)を得た。
(C)次いで、水を加えた後の水分量が60%となるように、一次分散体に水を加え、これを80℃に加温した。
(D)次いで、ラウリン酸ビニルを一次分散体に含まれるCNFのグルコース単位換算量に対して1.2モル当量の割合で添加した。
(F)反応終了後、ブフナー漏斗で脱水した後、FMミキサーと60%濃度のエタノール水溶液を用いて複数回洗浄し、DMSO濃度が500ppmとなったところで、洗浄を終了し、エタノール水溶液を用いて、疎水化CNF濃度が5%の疎水化CNF分散体とした。
また、疎水化CNFの置換度は、1.09であった。
【0075】
(実施例3)
(疎水化CNF分散体の作成)
実施例1における(A)~(F)の工程の内、(B)、(D)、(E)及び(F)を以下のように変更して、ラウリン酸ビニルを用いた疎水化CNF分散体を作成した。
(B)次いで、パウダー状のCNFを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社、FM10C/I)を用いて、1時間、DMSO中に分散させ、CNF濃度を3.5w/w%とする一次分散体(DMSO分散液)を得た。
(D)次いで、ラウリン酸ビニルを一次分散体に含まれるCNFのグルコース単位換算量に対して1.2モル当量の割合で添加した。
(E)次いで、剪断部のクリアランスが23000μmであるトリミックス(株式会社井上製作所 遊星ミキサー)(回転数:102rpm、直径:150mm、周速:0.8m/s、シェアレート:35(1/s))を用いて分散処理を行った後、炭酸カリウムをCNF比20%加え、トリミックス(条件は上記と同じ)で180分間の反応を行い、二次分散体を得た。
(F)反応終了後、ブフナー漏斗で脱水した後、FMミキサーと50%濃度のエタノール水溶液を用いて複数回洗浄し、DMSO濃度が50ppmとなったところで、洗浄を終了し、エタノール水溶液を用いて、疎水化CNF濃度が2%の疎水化CNF分散体とした。
また、疎水化CNFの置換度は、0.41であった。
【0076】
(実施例4)
(疎水化CNF分散体の作成)
実施例1における(A)~(F)の工程の内、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)を以下のように変更して、ラウリン酸ビニルを用いた疎水化CNF分散体を作成した。
(B)次いで、パウダー状のCNFを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社、FM10C/I)を用いて、1時間、DMSO中に分散させ、CNF濃度を3.0w/w%とする一次分散体(DMSO分散液)を得た。
(C)次いで、水を加えた後の水分量が50%となるように、一次分散体に水を加え、これを80℃に加温した。
(D)次いで、ラウリン酸ビニルを一次分散体に含まれるCNFのグルコース単位換算量に対して5.0モル当量の割合で添加した。
(E)次いで、剪断部のクリアランスが10μmであるディスパライザー(新東工業株式会社 遠心ディスクミキサー)(回転数:12000rpm、直径:150mm、周速:94.2m/s、シェアレート:9424778(1/s))を用いて分散処理を行った後、炭酸カリウムをCNF比20%加え、ディスパライザー(条件は上記と同じ)で180分間の反応を行い、二次分散体を得た。
(F)反応終了後、ブフナー漏斗で脱水した後、FMミキサーと60%濃度のエタノール水溶液を用いて複数回洗浄しDMSO濃度が900ppmとなったところで、洗浄を終了し、エタノール水溶液を用いて、疎水化CNF濃度が10%の疎水化CNF分散体とした。
また、疎水化CNFの置換度は、1.79であった。
【0077】
(実施例5)
(疎水化CNF分散体の作成)
実施例1における(A)~(F)の工程の内、(A)、(B)、(C)、(D)及び(F)を以下のように変更して、ラウリン酸ビニルを用いた疎水化CNF分散体を作成した。
(A)竹パルプに変えて針葉樹パルプを原料とした。
(B)次いで、パウダー状のCNFを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社、FM10C/I)を用いて、1時間、DMSO中に分散させ、CNF濃度を2.5w/w%とする一次分散体(DMSO分散液)を得た。
(C)次いで、水を加えた後の水分量が50%となるように、一次分散体に水を加え、これを80℃に加温した。
(D)次いで、ラウリン酸ビニルを一次分散体に含まれるCNFのグルコース単位換算量に対して1.2モル当量の割合で添加した。
(F)反応終了後、ブフナー漏斗で脱水した後、FMミキサーと30%濃度のエタノール水溶液を用いて複数回洗浄し、DMSO濃度が980ppmとなったところで、洗浄を終了し、エタノール水溶液を用いて、疎水化CNF濃度が5%の疎水化CNF分散体とした。
また、疎水化CNFの置換度は、0.6であった。
【0078】
(実施例6)
(疎水化CNF分散体の作成)
実施例1における(A)~(F)の工程の内、(A)、(B)、(C)、(D)及び(F)を以下のように変更して、ヘキサン酸ビニルを用いた疎水化CNF分散体を作成した。
(A)竹パルプに変え針葉樹パルプを原料とした。
(B)次いで、パウダー状のCNFを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社、FM10C/I)を用いて、1時間、DMSO中に分散させ、CNF濃度を3.0w/w%とする一次分散体(DMSO分散液)を得た。
(C)次いで、水を加えた後の水分量が20%となるように、一次分散体に水を加え、これを80℃に加温した。
(D)次いで、ヘキサン酸ビニルを一次分散体に含まれるCNFのグルコース単位換算量に対して1.2モル当量の割合で添加した。
(F)反応終了後、ブフナー漏斗で脱水した後、FMミキサーと90%濃度のエタノール水溶液を用いて複数回洗浄し、DMSO濃度が300ppmとなったところで、洗浄を終了し、エタノール水溶液を用いて、疎水化CNF濃度が5%の疎水化CNF分散体とした。
また、疎水化CNFの置換度は、0.58であった。
【0079】
(実施例7)
(疎水化CNF分散体の作成)
実施例1における(A)~(F)の工程の内、(A)、(B)、(C)、(D)及び(F)を以下のように変更して、ラウリン酸ビニルを用いた疎水化CNF分散体を作成した。
(A)竹パルプに変えて広葉樹パルプを原料とした。
(B)次いで、パウダー状のCNFを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社、FM10C/I)を用いて、1時間、DMSO中に分散させ、CNF濃度を4.0w/w%とする一次分散体(DMSO分散液)を得た。
(C)次いで、水を加えた後の水分量が30%となるように、一次分散体に水を加え、これを80℃に加温した。
(D)次いで、ラウリン酸ビニルを一次分散体に含まれるCNFのグルコース単位換算量に対して1.2モル当量の割合で添加した。
(F)反応終了後、ブフナー漏斗で脱水した後、FMミキサーと70%濃度のエタノール水溶液を用いて複数回洗浄し、DMSO濃度が950ppmとなったところで、洗浄を終了し、エタノール水溶液を用いて、疎水化CNF濃度が30%の疎水化CNF分散体とした。
また、疎水化CNFの置換度は、0.5であった。
【0080】
(実施例8)
(疎水化CNF分散体の作成)
竹パルプを原料として、ACC法(水中対向衝突法)を用いて、解繊処理を行い、平均繊維径3nm~200nmのCNF分散液1wt%を得た。次いで、CNF分散液を、フィルタープレス(株式会社栗田機械製作所、MF-A 手動式)を用いて、CNF濃度を30w/w%まで脱水し、得られたCNFを破砕してパウダー状のCNFとした。
次いで、パウダー状のCNFを、攪拌機(IKA EUROSTAR 20 DIGITAL(攪拌棒:R1303)を用いて、DMSO中のCNF濃度が4.0w/w%となるように分散させた。
次いで、炭酸カリウムを添加した後、ラウリン酸ビニルをCNFのグルコース単位換算量に対して0.8モル等量の割合で添加して80℃で30分間反応させた。反応終了後、生成物を回収し有機溶媒にて洗浄・精製して、エタノール水溶液を用いて、CNF濃度2%の疎水化CNF分散体とした。
また、疎水化CNFの置換度は、0.2であった。
【0081】
(実施例9)
(疎水化CNF分散体の作成)
実施例8における竹パルプを針葉樹パルプとしたこと以外は、実施例8と同様に調製を行い、CNF濃度2%の疎水化CNF分散体とした。
また、疎水化CNFの置換度は、0.21であった。
【0082】
(実施例10)
(疎水化複合CNF分散体の作成)
実施例1における(A)~(F)の工程の内、(B)、(C)、(D)及び(F)を以下のように変更して、疎水化複合CNF分散体を作成した。
(B)次いで、パウダー状のCNFを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社、FM10C/I)を用いて、1時間、DMSO中に分散させ、CNF濃度を0.1w/w%とする一次分散体(DMSO分散液)を得た。
(C)次いで、水を加えた後の水分量が10%となるように、一次分散体に水を加え、これを80℃に加温した。
(D)次いで、セバシン酸ジビニルとプロピオン酸ビニルを一次分散体に含まれるCNFのグルコース単位換算量に対して各1.2モル当量、ポリエチレングリコールを0.18モル当量の割合で添加した。
(F)反応終了後、ブフナー漏斗で脱水した後、FMミキサーと60%濃度のエタノール水溶液を用いて複数回洗浄し、DMSO濃度が500ppmとなったところで、洗浄を終了し、エタノール水溶液を用いて、疎水化複合CNF濃度が5%の疎水化複合CNF分散体とした。
【0083】
(実施例11)
(ペースト状疎水化CNF油性成分含有体の作成)
実施例1で得られた疎水化CNF分散体を用いて、得られるペースト状疎水化CNF油性成分含有体中の疎水化CNFの割合が19%となるように、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを加えた。
次いで、攪拌機(IKA EUROSTAR 20 DIGITAL(攪拌棒:R1303)を用いて、温度を80℃とした条件下で、疎水化CNF分散体中の分散媒を除去し、ペースト状疎水化CNF油性成分含有体を得た。
【0084】
(実施例12)
(疎水化CNF粉体の作成)
実施例4で得られた疎水化CNF分散体を用いて、得られる疎水化CNF粉体中の疎水化CNFの割合が20%となるように、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを加えた。
次いで、攪拌機(IKA EUROSTAR 20 DIGITAL(攪拌棒:R1303)を用いて、温度を80℃とした条件下で、疎水化CNF分散体中の分散媒を除去し、疎水化CNF粉体を得た。
次いで、得られた疎水化CNF粉体にメトキシケイヒ酸エチルヘキシルを加えて、疎水化CNF粉体を再分散させた。結果を図2に示す。図2より、本発明に係る疎水化CNF粉体は、油性成分に再分散させることが可能であることが明らかとなった。
【0085】
(実施例13)
(疎水化CNF粉体の作成)
実施例7で得られた疎水化CNF分散体を用いて、得られる疎水化CNF粉体中の疎水化CNFの割合が90%となるように、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルを加えた。
次いで、攪拌機(IKA EUROSTAR 20 DIGITAL(攪拌棒:R1303)を用いて、温度を80℃とした条件下で、疎水化CNF分散体中の分散媒を除去し、疎水化CNF粉体を得た。
【0086】
(実施例14)
(疎水化複合CNF粉体の作成)
実施例10で得られた疎水化複合CNF分散体を用いて、得られる疎水化複合CNF粉体中の疎水化複合CNFの割合が30%となるように、ポリプロピレングリコールを加えた。
次いで、攪拌機(IKA EUROSTAR 20 DIGITAL(攪拌棒:R1303)を用いて、温度を80℃とした条件下で、疎水化複合CNF分散体中の分散媒を除去し、疎水化複合CNF粉体を得た。
次いで、得られた疎水化複合CNF粉体にポリプロピレングリコールを加えて、疎水化複合CNF粉体を再分散させた。結果を図3に示す。図3より、本発明に係る疎水化複合CNF粉体は、油性成分に再分散させることが可能であることが明らかとなった。
【0087】
(実施例15)
(疎水化CNFの分散性評価)
実施例1と実施例2で得られた疎水化CNFを下記の各オイルに対して、それぞれ0.3wt%になるように調製し、各オイルを撹拌し、超音波処理を30分間行い、静置した。一日後の目視による分散性評価を下記の評価基準を用いて行った。表1に実施例1で得られた疎水化CNFについての結果を、表2に実施例2で得られた疎水化CNFについての結果を示す。
評価基準
◎:分散安定 〇:分散後沈降 ×:凝集
実施例1で得られた疎水化CNFに対するオイルの種類は以下の通りである。
・イソドデカン(カネダ株式会社:ISODODECANE)、
・2-オクチルドデカノール(高級アルコール工業株式会社:リソノール 20SP)
・トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(BASFジャパン株式会社:Myritol 318)、
・エチルヘキサン酸セチル(BASFジャパン株式会社:Cetiol SN-1F)
・テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(日清オイリオグループ株式会社:サラコス5408)
・メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(日清オイリオグループ株式会社:ノムコート TAB)
・パルチミン酸エチルヘキシル(日光ケミカルズ株式会社:ニッコールNIKKOL IOP)
実施例2で得られた疎水化CNFに対するオイルの種類は以下の通りである。
・ミネラルオイル(株式会社MORESCO:モレスコホワイト P-70(M))
・オリーブオイル(クローダジャパン株式会社:CROPURE OL-LQ-(JP))
・リンゴ酸ジイソステアリル(日本精化株式会社:Neosolue-DiSM)
・セバシン酸ジエチル(日光ケミカルズ株式会社:NIKKOL DES-SP)
・ジメチコン(信越化学工業株式会社:KF-96A-6CS)
・パルチミン酸エチルヘキシル(日光ケミカルズ株式会社:ニッコールNIKKOL IOP)
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
(実施例16)
(疎水化CNFの粘性評価1)
実施例1で得られた疎水化CNFを、2-オクチルドデカノール(高級アルコール工業株式会社:リソノール 20SP)、エチルヘキサン酸セチル(BASFジャパン株式会社:CetiolSN-1F)、リンゴ酸ジイソステアリル(日本精化株式会社:Neosolue-DiSM)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(日清オイリオグループ株式会社:サラコス 5408)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(日清オイリオグループ株式会社:ノムコート TAB)に対して下記の表3に示す濃度とした各サンプルを調製した。
各サンプルを振とうし、撹拌した後、恒温槽(25℃)に5分間静置し、粘度計(東機産業株式会社:TVB-15M、ローターM4)を使用し、回転数6rpmにおいて測定した。
【0091】
【表3】
【0092】
表3及び図4に結果を示す。いずれのオイルに対しても、少量の疎水化CNFを添加することでオイルを増粘させる効果があることが分かった。
【0093】
(実施例17)
(疎水化CNFの粘性評価2)
実施例2で得られた疎水化CNFを、オリーブオイル(クローダジャパン株式会社:CROPURE OL-LQ-(JP))、エチルヘキサン酸セチル(BASFジャパン株式会社:Cetiol SN-1F)、リンゴ酸ジイソステアリル(日本精化株式会社:Neosolue-DiSM)、セバシン酸ジエチル(日光ケミカルズ株式会社:NIKKOL DES-SP)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(日清オイリオグループ株式会社:ノムコート TAB)に対して下記の表4に示す濃度とした各サンプルを調製した。
各サンプルを振とうし、撹拌した後、恒温槽(25℃)に5分間静置し、粘度計(東機産業株式会社:TVB-15M、ローターM4)を使用し、回転数6rpmにおいて測定した。
【0094】
【表4】
【0095】
表4及び図5に結果を示す。いずれのオイルに対しても、少量の疎水化CNFを添加することでオイルを増粘させる効果があることが分かった。
【0096】
(実施例18)
(疎水化複合CNF粉体の粘性評価)
実施例14で得られた疎水化複合CNF粉体を、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(日清オイリオグループ株式会社:ノムコート TAB)及びオリーブオイル(クローダジャパン株式会社:CROPURE OL-LQ-(JP))に対して、疎水化複合CNF粉体中の疎水化複合CNF濃度を0.5%、1.0%、1.5%、2.0%とした各サンプルをハンディホモジナイザー(IKA T10 ULTRA-TURRAX;シャフトジェネレーター(S10D-7G-KS-110))を用いて10分間分散させた。
次いで、各サンプルを振とうし、撹拌した後、5分間静置し、レオメーター(株式会社アントンパール:MCR92、コーンプレート50mm 1°)を使用し、貯蔵弾性率(Pa)を測定した。
測定結果を表5及び図6に示す。表5及び図6より、本発明に係る疎水化複合CNF粉体は、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びオリーブ油のどちらにも、充分なゲル化能を有していることが明らかとなった。
【0097】
【表5】
【0098】
(化粧料用原料の調製方法)
実施例19~実施例34の化粧料用原料1~16(疎水化CNF油性成分含有体)は、下記の方法により調製した。
各実施例で得られた疎水化CNF分散体に各種油性成分を加え、ホモジナイザー(IKA ULTRA-TURRAX T18 digital(シャフトS18N-19G 12,000rpm 15分)で分散させた。
次いで、遠心分離機(久保田商事株式会社 Model7000 23,830rpm 4.5時間)により疎水化CNFを沈降させた。
次いで、沈降物を回収し同様の操作を2回繰り返した。
次いで、所定濃度になるように、得られた疎水化CNFの沈降物に油性成分を加え、ホモジナイザー(IKA ULTRA-TURRAX T18 digital シャフトS18N-19G 12,000rpm 1分)で分散させた。
【0099】
(各化粧料の評価)
下記の各化粧料を調製し、その製剤安定性、使用感触(べたつきの有無等)について検討を行った。
【0100】
(実施例19)
(リキッドファンデーション1)
実施例2で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが2wt%となるようにメトキシケイヒ酸エチルヘキシルを加え、化粧料用原料1を調製した。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてリキッドファンデーション1を調製した。リキッドファンデーション1中の疎水化CNFの配合量は0.064wt%であった。
調製方法:Aを混合し、均一溶解する。一方、Bを混合し、均一分散する。次いで、Bを撹拌しているところにCを添加し、均一分散する。さらに、Aを添加し、均一分散させ、調整を終了する。
リキッドファンデーション1を使用した結果、伸びがよく、メイクののりが良かった。
【0101】
(実施例20)
(リキッドファンデーション2)
実施例2で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが2wt%となるようにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(油性成分)を加え、化粧料用原料2を調製した。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてリキッドファンデーション2を調製した。リキッドファンデーション2中の疎水化CNFの配合量は0.06wt%であった。
調製方法:Bを混合し、均一分散する。Bを撹拌しているところにCを添加し、均一分散させ、調製を終了する。
リキッドファンデーション2を使用した結果、伸びがよく、メイクののりが良かった。
【0102】
(実施例21)
(UVジェル)
実施例2で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが2wt%となるようにイソドデカン(油性成分)を加え、化粧料用原料3を調製した。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてUVジェルを調製した。UVジェル中の疎水化CNFの配合量は0.02wt%であった。
調製方法:Aを混合する。さらに、80℃まで加温し、均一溶解する。Bを混合する。さらに、80℃まで加温し、均一分散する。Aを攪拌しているところにBを添加し、乳化させる。室温まで冷却し、調製を終了する。
UVジェルを使用した結果、ベタつかず、伸びのよい触感であった。また、酸化チタンの分散性向上に寄与し、乳化を阻害しなかった。さらに、白浮が残りにくかった。
【0103】
(実施例22)
(UVローション)
実施例2で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが2wt%となるようにミネラルオイル(油性成分)を加え、化粧料用原料4を調製した。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてUVローションを調製した。UVローション中の疎水化CNFの配合量は0.3wt%であった。
調製方法:Aを混合する。さらに、80℃まで加温し、均一溶解する。Bを混合する。さらに、80℃まで加温し、均一分散する。Aを攪拌しているところにBを添加し、乳化させる。室温まで冷却し、調製を終了する。
UVローションを使用した結果、ベタつかず、伸びのよい触感であった。また、酸化チタンの分散性向上に寄与し、乳化を阻害しなかった。さらに、白浮が残りにくかった。
【0104】
(実施例23)
(UVミルク1)
実施例1で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが2wt%となるようにミネラルオイル(油性成分)を加え、化粧料用原料5を調製した。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてUVミルク1を調製した。
UVミルク1中の疎水化CNFの配合量は0.57wt%であった。
調製方法:Aを混合し、均一分散する。Bを混合し、均一分散させる。AとBを均一分散させ、調製を終了する。
UVミルクを使用した結果、ベタつかず、伸びのよい触感であった。また、酸化チタンの分散性向上に寄与し、乳化を阻害しなかった。さらに、白浮が残りにくかった。
【0105】
(実施例24)
(油中水型日焼け止め化粧料(UVミルク2))
実施例1で得られた疎水化CNF分散体と実施例2で得られた疎水化CNF分散体とが1:1となるように混合し、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが5.0wt%となるように、エチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料6を調製した。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてUVミルク2を調製した。
UVミルク2中の疎水化CNFの配合量は1.1wt%であった。
調製方法:Aを混合し、均一分散する。さらに、Aを80℃まで加温し、均一分散させる。
Bを混合し、均一分散する。さらに、Bを80℃まで加温し、均一溶解させる。Aを撹拌しているところにBを添加し、撹拌する。室温まで冷却し、調整を終了する。
【0106】
(実施例25)
(非水系日焼け止め化粧料(UVミルク3))
実施例4で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが5.0wt%となるようにエチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料7を調製した。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてUVミルク3を調製した。
UVミルク3中の疎水化CNFの配合量は2.0wt%であった。
調製方法:Aを混合し、調製を終了する。
【0107】
(実施例26)
(非水系日焼け止め化粧料(UVミルク4))
実施例1で得られた疎水化CNF分散体と実施例2で得られた疎水化CNF分散体とが1:1となるように混合し、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが5.0wt%となるように、エチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料8を調製した。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてUVミルク4を調製した。
UVミルク4中の疎水化CNFの配合量は2.0wt%であった。
調製方法:Aを混合し、調整を終了する。
【0108】
(実施例27)
(油中水型日焼け止め化粧料(UVミルク5))
実施例5で得られた疎水化CNF分散体と実施例6で得られた疎水化CNF分散体とが1:1となるように混合し、得られる化粧料用原料中に疎水化CNFが5.0wt%となるように、エチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料9を調製した事以外は、実施例24と同様にして、UVミルク5を調製した。
【0109】
(実施例28)
(非水系日焼け止め化粧料(UVミルク6))
実施例6で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが5.0wt%となるようにエチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料10を調製した事以外は、実施例25と同様にして、UVミルク6を調製した。。
【0110】
(実施例29)
(非水系日焼け止め化粧料(UVミルク7))
実施例5で得られた疎水化CNF分散体と実施例6で得られた疎水化CNF分散体とが1:1となるように混合し、得られる化粧料料原料中に疎水化CNFが5.0wt%となるように、エチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料11とした事以外は、実施例25と同様にして、UVミルク7を調製した。
【0111】
(実施例30)
(非水系日焼け止め化粧料(UVミルク8))
実施例1で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNF20wt%となるようにエチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加えた。
次いで、攪拌機(IKA EUROSTAR 20 DIGITAL(攪拌棒:R1303)を用いて、温度を80℃とした条件下で、疎水化CNF分散体中の分散媒を除去し、化粧料用原料12(疎水化CNF粉体)を得た。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてUVミルク8を調製した。
UVミルク8中の疎水化CNFの配合量は2.0wt%であった。
調製方法:Aを混合し、調製を終了する。
【0112】
(実施例31)
(油中水型日焼け止め化粧料(UVミルク9))
実施例3で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが5.0wt%となるようにエチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料13を調製した事以外は、実施例24と同様にして、UVミルク9を調製した。
【0113】
(実施例32)
(油中水型日焼け止め化粧料(UVミルク10))
実施例8で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが5.0wt%となるようにエチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料14を調製した事、及び、パルチミン酸エチルヘキシルをトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルとした事以外は、実施例24と同様にして、UVミルク10を調製した。
【0114】
(実施例33)
(非水系日焼け止め化粧料(UVミルク11))
実施例9で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが5.0wt%となるようにエチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料15を調製した事以外は、実施例25と同様にして、UVミルク11を調製した。
【0115】
(実施例34)
(非水系日焼け止め化粧料(BBクリーム))
実施例2で得られた疎水化CNF分散体に、得られる化粧料用原料中の疎水化CNFが5.0wt%となるようにエチルヘキサン酸セチル(油性成分)を加え、化粧料用原料16とした。
次いで、下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてBBクリームを調製した。
BBクリーム中の疎水化CNFの配合量は1.75wt%であった。
【0116】
(比較例1)
下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてUVミルクを調製した。
調製方法:Aを混合し、均一分散する。さらに、Aを80℃まで加温し、均一分散させる。
Bを混合し均一分散する。さらに、Bを80℃まで加温し、均一分散させる。
Aを撹拌しているところにBを添加し、撹拌する。室温まで冷却し、調整を終了する。
【0117】
(比較例2)
下記に示す原料を秤量し、下記の調製方法にてUVミルクを調製した。
調製方法:Aを混合し、均一分散する。さらに、Aを80℃まで加温し、均一溶解させる。
Bを混合し、均一分散する。さらに、Bを80℃まで加温し、均一溶解させる。
Aを撹拌しているところにBを添加し、撹拌する。室温まで冷却し、調整を終了する。
【0118】
実施例19~34、比較例1,2で使用した原料は以下の通りである。
※1:(C15-19)アルカン(EMOGREEN L15:SEPPIC S.A.)
※2:酸化チタン、水酸化Al、ステアリン酸(複合原料(紫外線散乱剤))(MT-N1:テイカ株式会社)
※3:パルミチン酸エチルヘキシル(NIKKOL IOP:日光ケミカル株式会社)
※4:PEG-20水添ヒマシ油(NIKKOL HCO-20:日本サーファクタント工業株式会社)
※5:オレイン酸ソルビタン(NIKKOL SO-10V:日本サーファクタント工業株式会社)
※6:プロパンジオール(Zemea Select プロパンジオール:DuPont Tate & Lyle Bio Products)
※7:フェノキシエタノール(ハイソルブ EPH:東邦化学工業株式会社)
※8:カプリリルグリコール、1,2-ヘキサンジオール(複合原料)(symdiol 68:シムライズ株式会社)
※9:酸化チタン、酸化鉄、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(複合原料)(TNコスメSV706-1:株式会社たけとんぼ)
※10:nanoforest-S(中越パルプ工業株式会社)、未変性CNF
※11:メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ポリシリコーン-14、BG、エチドロン酸、フェノキシエタノール(複合原料)(Silasoma MEA:株式会社成和化成)
※12:グリセリン(化粧品用濃グリセリン:阪本薬品工業株式会社)
※13:ジメチコン、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(複合原料)(KSG-995:信越化学工業株式会社)
※14:ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(KF-56A:信越化学工業株式会社)
※15:ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン、シクロペンタシロキサン(複合原料)(BENTONE GELVS-5PC V HV:Elementis plc)
※16:シクロペンタシロキサン(KF-995:信越化学工業株式会社)
※17:BG(1,3-ブチレングリコール:株式会社ダイセル)
※18:エチルヘキサン酸セチル(BASFジャパン株式会社:Cetiol SN-1F)
【0119】
以下の評価項目・評価基準1~5に基づいて実施例24~34及び比較例1,2を評価した。結果を表6に示す。
(評価項目1:塗りやすさ)
各種日焼け止め化粧料を実際に使用して、塗りやすさを評価した。
(評価基準1)
◎:さっと伸びて広がる
○:数回伸ばして広がる
×:クリームを塗った箇所でしか広がらない
【0120】
(評価項目2:厚み感)
各種日焼け止め化粧料を実際に使用して厚み感について評価した。
(評価基準2)
◎:厚み感がある
○:多少の厚み感がある
×:厚み感は無く、油のきしみ感がある
【0121】
(評価項目3:適度な粘度)
各種日焼け止め化粧料を実際に肌に使用して粘度について評価した。
(評価基準3)
△:肌に塗布した後、3秒以上ダレない
◎:肌に塗布した後、3秒以内でダレてくる
〇:肌に塗布した後、1秒以内でダレてくる
×:肌に塗布した後、すぐにダレてくる
【0122】
(評価項目4:白浮きにくさ)
各種日焼け止め化粧料を実際に顔に使用して白浮きにくさについて評価した。
(評価基準4)
◎:白浮きしにくい
〇:やや白浮きがある
×:白浮きがある
【0123】
(評価項目5 安定性評価)
各種日焼け止め化粧料の安定性を評価した。
(評価基準5)
◎:凝集がみられなかった
×:凝集がみられた
【0124】
【表6】
【0125】
表6より、紫外線散乱剤を配合した本願発明に係る日焼け止め化粧料は、紫外線散乱剤が凝集することなく、安定性に優れた化粧料であることが明らかとなった。日焼け止め化粧料中の疎水化CNFの量が1.1wt%以上となるように処方すれば、適度な粘度を有し、ダレを防止することが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6