(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】圧延機用のギアスピンドル装置及び圧延設備並びに圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法
(51)【国際特許分類】
B21B 35/14 20060101AFI20230906BHJP
B21B 35/12 20060101ALI20230906BHJP
F16D 3/18 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B21B35/14 B
B21B35/12
F16D3/18 P
(21)【出願番号】P 2022563283
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2020042838
(87)【国際公開番号】W WO2022107218
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河野 諒太
(72)【発明者】
【氏名】河角 知美
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-538204(JP,A)
【文献】特表2014-532565(JP,A)
【文献】特許第5575213(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周歯が設けられた内周面を一端側に有するスピンドル外筒と、
前記内周歯に噛み合う外周歯が設けられた外周面を有するスピンドル内筒と、
前記スピンドル外筒と前記スピンドル内筒との間に設けられ、前記内周歯と前記外周歯との噛合部に潤滑油を保持するためのシール部材と、
前記スピンドル外筒の軸方向において前記噛合部を挟んで前記シール部材とは反対側に設けられ、前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒に向けてクーラントを供給するためのクーラント供給ユニットと、
を備える圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項2】
前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒および前記クーラント供給ユニットを収容するハウジングを備える
請求項1に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記軸方向における前記スピンドル外筒の他端側にて前記スピンドル外筒に嵌合する軸が挿通され、前記スピンドル外筒よりも直径が小さい穴を有する第1壁部を含む
請求項2に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項4】
前記クーラント供給ユニットは、前記スピンドル外筒よりも上方の位置から、前記スピンドル外筒に向けて前記クーラントを噴出するように構成された
請求項1乃至3の何れか一項に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項5】
前記クーラント供給ユニットは、前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒に向けて前記クーラントを噴出するように構成されたノズルを含む
請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項6】
前記ノズルは、前記軸方向において、前記スピンドル外筒の他端側から前記一端側に向かう方向に前記クーラントを噴射するように構成される
請求項5に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項7】
前記スピンドル外筒を、前記スピンドル外筒の中心軸に直交し、かつ、水平な方向から視たとき、前記ノズルの中心軸と、前記スピンドル外筒の中心軸とのなす角度が30度以上60度以下である
請求項6に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項8】
前記スピンドル外筒を前記軸方向から視たとき、前記ノズルの中心軸の水平方向に対する角度が30度以上60度以下である
請求項5乃至7の何れか一項に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項9】
前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒の温度を計測するように構成された温度センサを備える
請求項1乃至8の何れか一項に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項10】
前記温度センサは、前記軸方向において、前記スピンドル外筒の他端側から前記一端側に向かう方向に、前記クーラント供給ユニットからずれた位置に設けられる
請求項9に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項11】
前記噛合部および前記クーラント供給ユニットを収容するハウジングを備え、
前記ハウジングは、開口部を有する第2壁部を含み、
前記開口部を開閉可能な蓋部を備え、
前記温度センサは、前記蓋部に支持される
請求項9又は10の何れか一項に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項12】
前記蓋部と前記第2壁部とを接続するためのアームと、
前記アームを前記蓋部又は前記第2壁部に回動可能に支持するためのヒンジと、
を備える請求項11に記載の圧延機用のギアスピンドル装置。
【請求項13】
圧延ロールと、
前記圧延ロールを駆動するためのモータと、
前記モータで生成される回転駆動力を前記圧延ロールに伝達するように構成された請求項1乃至12の何れか一項に記載のギアスピンドル装置と、
を備える圧延設備。
【請求項14】
前記スピンドル外筒に供給されたクーラント、及び、前記圧延ロールに供給されたクーラントを循環させるためのクーラント循環装置を備え、
前記クーラント循環装置は、
前記スピンドル外筒に供給された前記クーラント、及び、前記圧延ロールに供給されたクーラントを受けて集めるためのクーラント受け部と、
前記クーラント受け部からの前記クーラントを、前記クーラント供給ユニットに供給するための第1供給ラインと、
前記クーラント受け部からの前記クーラントを、前記圧延ロールに供給するための第2供給ラインと、
を含む
請求項13に記載の圧延設備。
【請求項15】
内周歯が設けられた内周面を一端側に有するスピンドル外筒と、
前記内周歯に噛み合う外周歯が設けられた外周面を有するスピンドル内筒と、
前記スピンドル外筒と前記スピンドル内筒との間に設けられ、前記内周歯と前記外周歯との噛合部に潤滑油を保持するためのシール部材と、
を含む圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法であって、
前記スピンドル外筒の軸方向において前記噛合部を挟んで前記シール部材とは反対側の位置から、前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒に向けてクーラントを供給するステップ
を備える圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧延機用のギアスピンドル装置及び圧延設備並びに圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板等を圧延するための圧延設備では、モータの駆動力を圧延ロールに伝達するために、モータと圧延ロールとの間にスピンドルが設けられる。このようなスピンドルとして、ギアを用いたギアタイプのスピンドル(ギアスピンドル装置)が用いられることがある。
【0003】
特許文献1には、モータやギアボックスの出力軸等に接続される端部を有するスピンドル外筒と、前述の出力軸とは反対側の端部にてスピンドル外筒に嵌合されるスピンドル内筒と、を含むギアスピンドルが開示されている。スピンドル外筒とスピンドル内筒との嵌合部において、スピンドル外筒には内歯車(内周歯)が設けられ、スピンドル内筒には、スピンドル外筒の内歯車と噛み合う外歯車(外周歯)が設けられる。内歯車と外歯車との噛合部を介して、スピンドル外筒とスピンドル内筒との間でモータからのトルクが伝達されるようになっている。また、嵌合部におけるスピンドル外筒とスピンドル内筒との間には、上述の内歯車と外歯車との噛合部を潤滑するための潤滑油が封入される潤滑油室が形成され、該潤滑油室は、シール部材によって外部空間と隔離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ギアスピンドルの内周歯と外周歯との噛合部では摩擦等により熱が生じるため、この熱による潤滑油の性能低下又はシール部材の劣化等を抑制すべく、クーラントを用いてギアスピンドル装置を冷却することがある。しかし、冷却のしかたによっては、クーラントの飛散により、ギアスピンドル装置の近傍に配置される機器又は圧延材に悪影響を及ぼす場合がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、クーラントの供給に起因した機器又は圧延材への悪影響を低減可能な圧延機用のギアスピンドル装置及び圧延設備並びに圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延機用のギアスピンドル装置は、
内周歯が設けられた内周面を一端側に有するスピンドル外筒と、
前記内周歯に噛み合う外周歯が設けられた外周面を有するスピンドル内筒と、
前記スピンドル外筒と前記スピンドル内筒との間に設けられ、前記内周歯と前記外周歯との噛合部に潤滑油を保持するためのシール部材と、
前記スピンドル外筒の軸方向において前記噛合部を挟んで前記シール部材とは反対側に設けられ、前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒に向けてクーラントを供給するためのクーラント供給ユニットと、
を備える。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延設備は、
圧延ロールと、
前記圧延ロールを駆動するためのモータと、
前記モータで生成される回転駆動力を前記圧延ロールに伝達するように構成された上述のギアスピンドル装置と、
を備える。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法は、
内周歯が設けられた内周面を一端側に有するスピンドル外筒と、
前記内周歯に噛み合う外周歯が設けられた外周面を有するスピンドル内筒と、
前記スピンドル外筒と前記スピンドル内筒との間に設けられ、前記内周歯と前記外周歯との噛合部に潤滑油を保持するためのシール部材と、
を含む圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法であって、
前記スピンドル外筒の軸方向において前記噛合部を挟んで前記シール部材とは反対側の位置から、前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒に向けてクーラントを供給するステップ
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、クーラントの供給に起因した機器又は圧延材への悪影響を低減可能な圧延機用のギアスピンドル装置及び圧延設備並びに圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】幾つかの実施形態に係るギアスピンドル装置が適用される圧延設備の概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係るギアスピンドル装置10のモータ2側の端部を示す概略断面図である。
【
図3】一実施形態に係るギアスピンドル装置10の部分的な断面を示す図である。
【
図6】一実施形態に係るギアスピンドル装置10を含む圧延設備1の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
図1は、幾つかの実施形態に係るギアスピンドル装置が適用される圧延設備の概略構成図である。同図に示す圧延設備1は、圧延材料(鋼等)を圧延するための設備であり、一対の圧延ロール(ワークロール)6と、一対の圧延ロール6を回転駆動する駆動力を生成するためのモータ2と、一対の圧延ロール6とモータ2との間にそれぞれ設けられる一対のギアスピンドル装置10と、を備える。
【0014】
一対の圧延ロール6は、圧延材料を挟むように設けられ、該圧延ロール6の軸端部6a,6bに設けられる軸箱(不図示)によってハウジング(不図示)に回転自在に支持される。なお、図示しないが、圧延設備1は、一対の圧延ロール6を挟むように設けられる一対のバックアップロールをさらに備えてもよい。一対のバックアップロールは、該バックアップロールの軸端部に設けられる軸箱によって上述のハウジングに回転自在に支持されてもよい。
【0015】
一対のギアスピンドル装置10は、モータ2で生成される回転駆動力を一対の圧延ロール6にそれぞれ伝達するように構成される。
【0016】
一対のギアスピンドル装置10の各々は、中間シャフト12と、中間シャフト12のモータ2側の端部に設けられるスピンドル内筒14A及びスピンドル外筒16Aと、中間シャフト12の圧延ロール6側の端部に設けられるスピンドル内筒14B及びスピンドル外筒16Bと、を含む。
【0017】
ギアスピンドル装置10の中間シャフト12は、スピンドル内筒14A及びスピンドル外筒16Aを介して、モータ2側の機器の出力シャフトに連結される。図示する例示的な実施形態では、モータ2とギアスピンドル装置10の間にギアボックス(変速機)4が設けられており、中間シャフト12は、スピンドル内筒14A及びスピンドル外筒16Aを介してギアボックス4の出力シャフト5に連結されている。なお、ギアボックス4は、モータ2により生成される回転駆動力の回転数を変速するとともに、該回転駆動力を2つに分配するように構成される。他の実施形態では、圧延ロール6を駆動するためのモータがギアボックスを介さずにギアスピンドル装置10に接続されてもよい。すなわち、ギアスピンドル装置10の中間シャフト12は、スピンドル内筒14A及びスピンドル外筒16Aを介してモータの出力シャフトに連結されてもよい。
【0018】
また、ギアスピンドル装置10の中間シャフト12は、スピンドル内筒14B及びスピンドル外筒16Bを介して、圧延ロール6の軸端部6aに連結される。
【0019】
図2は、一実施形態に係るギアスピンドル装置10のモータ2側の端部を示す概略断面図である。ここでは、ギアスピンドル装置10とモータ2側機器の出力シャフトとの連結構造について説明するが、ギアスピンドル装置10と圧延ロール6の軸端部6aとの連結構造についても同様の説明が適用される。
【0020】
図2に示すように、スピンドル外筒16Aは、軸方向(スピンドル外筒16Aの中心軸Oの方向)における第1端16a側の端面に開口し、スピンドル内筒14Aの端部が嵌合される嵌合穴27を有する。また、スピンドル外筒16Aは、第1端16a(一端)側において、内周歯30が設けられた内周面28を有する。嵌合穴27は、内周面28によって形成される。スピンドル内筒14Aは、スピンドル外筒16Aの嵌合穴27に嵌合する端部において、外周歯26が設けられた外周面24を有する。スピンドル外筒16Aの内周歯30とスピンドル内筒14Aの外周歯26とが互いに噛み合うように、スピンドル内筒14Aの端部がスピンドル外筒16Aの嵌合穴27に嵌合される。これによりスピンドル外筒16Aの内周歯30とスピンドル内筒14Aの外周歯26とが互いに噛み合う部分である噛合部22が形成される。なお、スピンドル外筒16Aの中心軸Oに対してスピンドル内筒14Aの中心軸Pが傾斜した状態で、内周歯30と外周歯26とが噛み合うことが可能になっている。
【0021】
スピンドル外筒16Aの内周歯30とスピンドル内筒14Aの外周歯26との噛合部22には、不図示の潤滑油供給経路を介して潤滑油が供給されるようになっている。スピンドル外筒16Aの内周面28とスピンドル内筒14Aの外周面24との間に、上述の潤滑油が貯留される潤滑油室32が形成される。また、スピンドル外筒16Aの内周面28とスピンドル内筒14Aの外周面24との間に、噛合部22に潤滑油を保持するための(すなわち、潤滑油室32からの潤滑油の漏れを抑制するための)シール部材34が設けられる。
【0022】
図2に示すように、スピンドル外筒16Aは、軸方向における第1端16a(一端)とは反対の第2端16b(他端)側の端面に開口する嵌合穴29を有する。該嵌合穴29には、モータ2側の機器の出力シャフト(図示する例ではギアボックス4の出力シャフト5)の端部が嵌合される。
【0023】
上述のように構成された圧延設備1において、モータ2で生成される回転駆動力は、モータ2側の出力シャフト、噛合部22を含むモータ2側のスピンドル外筒16A及びスピンドル内筒14A、中間シャフト12、並びに、噛合部を含む圧延ロール6側のスピンドル外筒16B及びスピンドル内筒14Bを介して、圧延ロール6に伝達される。
【0024】
以下、幾つかの実施形態に係るギアスピンドル装置10についてより詳細に説明する。
図1に示すように、幾つかの実施形態では、ギアスピンドル装置10は、モータ2側のスピンドル外筒16Aにクーラントを供給するためのクーラント供給ユニット18A、又は、圧延ロール6側のスピンドル外筒16Bにクーラントを供給するためのクーラント供給ユニット18Bを備える。なお、
図1等に示すように、一対のギアスピンドル装置10の各々にクーラント供給ユニット18A又はクーラント供給ユニット18Bがそれぞれ設けられてもよい。
【0025】
以下の説明では、スピンドル内筒14A及び14Bをスピンドル内筒14と総称し、スピンドル外筒16A及び16Bをスピンドル外筒16と総称し、クーラント供給ユニット18A及び18Bをクーラント供給ユニット18と総称する。また、以下において、幾つかの実施形態に係るギアスピンドル装置10について、主として、スピンドル外筒16A及びクーラント供給ユニット18Aを含むギアスピンドル装置10のモータ2側部分を示す図を参照して説明するが、圧延ロール6側についても同様の説明が適用できる。
【0026】
図2に示すように、クーラント供給ユニット18は、スピンドル外筒16の軸方向(以下、単に軸方向ともいう。)において噛合部22を挟んでシール部材34とは反対側に設けられ、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16に向けてクーラントを供給するように構成される。噛合部22の形成範囲A1は、互いに噛み合う内周歯30と外周歯26とが軸方向にて重なり合う軸方向の範囲である。ここで、
図2に示すように、典型的には、シール部材34は、軸方向において、スピンドル外筒16の第2端16bから第1端16aに向かう方向に、噛合部22からずれた位置に設けられる。すなわち、クーラント供給ユニット18は、軸方向において、スピンドル外筒16の第1端16aから第2端16bに向かう方向に、噛合部22からずれた位置に設けられる。あるいは、クーラント供給ユニット18は、軸方向において、スピンドル外筒16の第1端16aから第2端16bに向かう方向に、噛合部22からずれた位置にクーラント吐出口18aを有する。
【0027】
上述の実施形態によれば、スピンドル外筒16の第1端16a側(即ち、モータ2又はギアボックス4の出力シャフトや圧延ロール6の軸端部6aが嵌合される第2端16bとは反対側)に設けられる内周歯30と外周歯26との噛合部22を挟んでシール部材34とは反対側に設けたクーラント供給ユニット18から、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16に向けてクーラントを供給可能である。よって、クーラント供給ユニット18からスピンドル外筒16に向けて吐出されたクーラント、あるいは、このように吐出されてスピンドル外筒16の表面で跳ね返ったクーラントが、スピンドル外筒16の第2端16b側に連結される機器(例えばギアボックス4、モータ2又は圧延ロール6等)に向かって飛散するのを効果的に抑制することができる。よって、クーラントの供給に起因した機器又は圧延材への悪影響を低減することができる。
【0028】
例えば、ギアスピンドル装置10のモータ2側のスピンドル外筒16Aに向けてクーラントを供給するクーラント供給ユニット18Aを設けることにより、クーラントの混入によるギアボックス4又はモータ2の故障を抑制することができる。あるいは、ギアスピンドル装置10の圧延ロール6側のスピンドル外筒16Bに向けてクーラントを供給するクーラント供給ユニット18Bを設けることにより、クーラントの圧延材への付着による圧延材の温度管理不全等を抑制することができる。
【0029】
図3~
図5は、それぞれ、一実施形態に係るギアスピンドル装置10の部分的な断面を示す図である。
図3は、ギアスピンドル装置10のモータ2側の部分を側方から視た図であり、
図4は、
図3のA-A断面を示す図であり、
図5は、
図3のB-B断面を示す図である。
【0030】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図3~
図5に示すように、ギアスピンドル装置10は、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16およびクーラント供給ユニット18を収容するハウジング20を備える。
【0031】
図3~
図5に示す例示的な実施形態では、ハウジング20は、スピンドル外筒16及びクーラント供給ユニット18の上方及び下方にそれぞれ位置する上側壁部40及び下側壁部41と、軸方向においてスピンドル外筒16及びクーラント供給ユニット18を挟んで両側に設けられる一対の軸方向端壁部42,44と、スピンドル外筒16及びクーラント供給ユニット18の側方に設けられる一対の側壁部46,48と、を含む。ハウジング20は、脚部49を介して基礎構造に支持されている。なお、幾つかの実施形態では、ハウジング20は、上側壁部40、下側壁部41、軸方向端壁部42、軸方向端壁部44、側壁部46及び側壁部48の少なくとも1つを含む。例えば、ハウジング20は、上側壁部40、下側壁部41及び一対の側壁部46,48を有し、軸方向端壁部44を有しなくてもよい。
【0032】
なお、本明細書における上方及び下方は、鉛直方向(上下方向)における上方及び下方を意味する。
【0033】
図3~
図5に示す例示的な実施形態では、一対の軸方向端壁部42,44のうち、スピンドル外筒16の第2端16b側に位置する軸方向端壁部42には、スピンドル外筒16の第2端16b側の端部に嵌合するモータ2側機器の出力シャフト(図示する例ではギアボックス4の出力シャフト5)が挿通される穴43が形成される。また、一対の軸方向端壁部42,44のうち、スピンドル外筒16の第1端16a側に位置する軸方向端壁部44には、スピンドル内筒14に接続される中間シャフト12が挿通される穴45が形成される。
【0034】
上述の実施形態によれば、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16及びクーラント供給ユニット18がハウジング20に収容されるので、スピンドル外筒16の第2端16b側に連結される機器(即ちモータ2やギアボックス4)へのクーラントの飛散をより効果的に抑制することができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、ハウジング20は、軸方向におけるスピンドル外筒16の第2端16b側にてスピンドル外筒16に嵌合する軸が挿通され、スピンドル外筒16よりも直径が小さい穴を有する第1壁部を含む。
図3~
図5に示す例示的な実施形態では、ハウジング20は、第1壁部として上述の軸方向端壁部42を含み、軸方向端壁部42は、スピンドル外筒16の第2端16b側にてスピンドル外筒16に嵌合するギアボックス4の出力シャフト5が挿通される上述の穴43を有する。該穴43の直径D3は、スピンドル外筒16の直径D1よりも小さい。なお、穴43の直径D3は、該穴43に挿通される出力シャフト5の直径D2よりも大きい。
【0036】
上述の実施形態によれば、ハウジング20の軸方向端壁部42(第1壁部)に設けられ、スピンドル外筒16に嵌合するギアボックス4の出力シャフト5が挿通される穴43の直径D3はスピンドル外筒16の直径D1よりも小さいので、ギアボックス4へのクーラントの飛散を効果的に抑制することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、例えば
図1~
図4に示すように、クーラント供給ユニット18は、スピンドル外筒16よりも上方の位置から、スピンドル外筒16に向けてクーラントを噴出するように構成される。すなわち、クーラント供給ユニット18のクーラント吐出口18aは、該クーラント供給ユニット18による冷却対象のスピンドル外筒16よりも上方に位置する。
【0038】
上述の実施形態によれば、クーラント供給ユニット18により、スピンドル外筒16よりも上方の位置からスピンドル外筒16に向けてクーラントが噴出されるので、スピンドル外筒16よりも下方の位置からスピンドル外筒16に向けてクーラントを噴出する場合に比べて、噴出されたクーラントがスピンドル外筒16に確実に到達しやすい。よって、ギアスピンドル装置10の冷却対象部位(噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16)を効果的に冷却しながら、スピンドル外筒16の第2端16b側に連結される機器(ギアボックス4又は圧延ロール6等)に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0039】
図1~
図5に示す例示的な実施形態では、クーラント供給ユニット18は、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16に向けてクーラントを噴出するように構成されたノズル19を含む。
【0040】
上述の実施形態によれば、クーラント供給ユニット18はノズル19を含むので、ノズル19からのクーラントの噴出角度や、スピンドル外筒16におけるクーラントの供給範囲を調整しやすい。よって、ギアスピンドル装置10の冷却対象部位を効果的に冷却しながら、スピンドル外筒16の第2端16b側に連結される機器(ギアボックス4又は圧延ロール6等)に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、
図4及び
図5に示すように、平面視において、スピンドル外筒16の中心軸Oを挟んだ両側に一対のノズル19(クーラント供給ユニット18)が設けられる。これにより、ギアスピンドル装置10の冷却対象部位をより効果的に冷却することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、例えば
図2、
図3及び
図5に示すように、ノズル19(クーラント供給ユニット18)は、軸方向において、スピンドル外筒16の第2端16b側から第1端16a側に向かう方向にクーラントを噴射するように構成される。
【0043】
上述の実施形態によれば、ノズル19(クーラント供給ユニット18)によって、スピンドル外筒16の第2端16b側(機器が連結される側)から第1端16a側(スピンドル内筒14が設けられる側)に向かう方向にクーラントを噴射するようにしたので、スピンドル外筒16の第2端16b側に連結される機器(ギアボックス4又は圧延ロール6等)に向かってクーラントが飛散するのをより効果的に抑制することができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、例えば
図2に示すように、ノズル19(クーラント供給ユニット18)は、スピンドル外筒16のうちクーラントの供給領域A2よりも、軸方向にてシール部材34から遠い位置から、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16に向けてクーラントを供給するように構成される。すなわち、ノズル(クーラント供給ユニット18)のクーラント吐出口18aは、クーラントの供給領域A2よりも、軸方向にて第1端16aから第2端16bに向かう方向にずれた位置に設けられる。なお、クーラントの供給領域A2は、ノズル19(クーラント供給ユニット18)によるクーラントの噴出方向、噴出角度及び噴出圧力等に応じて決まる。
【0045】
上述の実施形態によれば、ノズル19(クーラント供給ユニット18)によって、クーラントの供給領域A2よりも軸方向にてシール部材34から遠い位置から、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16に向けてクーラントを供給するようにしたので、スピンドル外筒16の第2端16b側に連結される機器(ギアボックス4又は圧延ロール6等)に向かってクーラントが飛散するのをより効果的に抑制することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、スピンドル外筒16を、該スピンドル外筒16の中心軸Oに直交し、かつ、水平な方向から視たとき(
図3参照)、ノズル19の中心軸L1と、スピンドル外筒16の中心軸Oとのなす角度αが30度以上60度以下である。
【0047】
上述の実施形態によれば、上述の角度αが30度以上60度以下であるので、スピンドル外筒16とクーラントとの接触面積を大きく確保しやすい。よって、ギアスピンドル装置10の冷却対象部位を効果的に冷却することができる。また、上述の角度αが60度以下である場合、ノズル19から噴出されてスピンドル外筒16の表面で跳ね返ったクーラントが、スピンドル外筒16の第2端16b側(機器が連結される側)から第1端16a側(スピンドル内筒14が設けられる側)に向かう方向に向かいやすい。よって、スピンドル外筒16の第2端16b側に連結される機器(ギアボックス4又は圧延ロール6等)に向かってクーラントが飛散するのをより効果的に抑制することができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、スピンドル外筒16を軸方向から視たとき(
図4参照)、ノズル19の中心軸L1の水平方向(
図4中の直線L
Hの方向)に対する角度βが30度以上60度以下である。
【0049】
上述の実施形態によれば、上述の角度βが30度以上60度以下であるので、スピンドル外筒16とクーラントとの接触面積を大きく確保しやすい。よって、ギアスピンドル装置10の冷却対象部位を効果的に冷却することができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、スピンドル外筒16を平面視したとき(
図5参照)、ノズル19の中心軸L1と、スピンドル外筒16の中心軸Oとのなす角度γが30度以上60度以下である。
【0051】
上述の実施形態によれば、上述の角度γが30度以上60度以下であるので、スピンドル外筒16とクーラントとの接触面積を大きく確保しやすい。よって、ギアスピンドル装置10の冷却対象部位を効果的に冷却することができる。
【0052】
図4及び
図5に示すように、幾つかの実施形態では、ギアスピンドル装置10は、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16の温度を計測するように構成された温度センサ52を備える。
【0053】
上述の実施形態によれば、温度センサ52によって、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16の温度を計測可能であるので、温度センサ52による計測温度に基づき、冷却対象部位(すなわち噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16)が適切に冷却されているかを確認することができる。よって、ギアスピンドル装置10の冷却対象部位をより確実に冷却しながら、スピンドル外筒16の第2端16b側に連結される機器(ギアボックス4又は圧延ロール6等)に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、例えば
図5に示すように、温度センサ52は、スピンドル外筒16の軸方向において、スピンドル外筒16の第2端16b側から第1端16a側に向かう方向に、クーラント供給ユニット18からずれた位置に設けられる。
【0055】
上述の実施形態によれば、軸方向においてスピンドル外筒16の第2端16b側から第1端16a側に向かう方向にクーラント供給ユニット18からずれた位置に温度センサ52を設けたので、該温度センサ52により、スピンドル外筒16のうちクーラントが供給される部位(噛合部22の形成範囲A1)の近傍の温度を計測することができる。よって、温度センサ52による計測温度に基づき、冷却対象部位が適切に冷却されているかをより正確に確認することができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、温度センサ52は、赤外線を用いて噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16の温度を計測するように構成される。すなわち、温度センサ52は、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16から放出される赤外線を受光するための受光部を有し、該受光部での赤外線の検出結果に基づいて、上述のスピンドル外筒16の温度を取得するように構成される。
【0057】
幾つかの実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、ギアスピンドル装置10は、温度センサ52とスピンドル外筒16との間にて、噛合部22の形成範囲A1におけるスピンドル外筒16から温度センサ52に向かう赤外線が通過可能なパイプ56を備える。パイプ56は、温度センサ52の受光部による赤外線の受光方向に沿って延在する。
【0058】
上述の実施形態では、温度センサ52とスピンドル外筒16との間に上述のパイプ56を設けたので、クーラント供給ユニット18から吐出されたクーラント又はスピンドル外筒16で跳ね返ったクーラントが温度センサ52に到達することがパイプ56により阻害され、これにより、温度センサ52とスピンドル外筒16との間における赤外線の経路を確保しやすくなる。よって、温度センサ52によって、スピンドル外筒16の温度をより正確に計測することが可能となる。
【0059】
幾つかの実施形態では、例えば
図4に示すように、温度センサ52側からスピンドル外筒16側に向かうガス流をパイプ56の内部に形成するように、パイプ56にガスを供給するように構成されたガス供給部58を備える。ガス供給部58は、ガス供給源とパイプ56との間に設けられるガス供給管を含む。
図4に示すように、ガス供給部58は、温度センサ52を保持するセンサ保持部54に設けられる貫通孔55を介して、パイプ56に向けてガスを供給するように構成されてもよい。
【0060】
上述の実施形態では、ガス供給部58によって、温度センサ52側からスピンドル外筒16側に向かうガス流をパイプ56の内部に形成することができる。これにより、クーラント供給ユニット18から吐出されたクーラント又はスピンドル外筒16で跳ね返ったクーラントがパイプ56の内部に侵入し難くなる。また、仮にクーラントがパイプ56の内部に侵入したとしても、上述のガス流によって、クーラントをパイプ56の外に追い出すことができる。よって、温度センサ52によって、スピンドル外筒16の温度をより正確に計測することが可能となる。
【0061】
幾つかの実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、ギアスピンドル装置10のハウジング20は、開口部47を有する側壁部46(第2壁部)を含む。また、ギアスピンドル装置10は、開口部47を開閉可能な蓋部50を備える。そして上述の温度センサ52は蓋部50に支持される。なお、
図5において、開口部47が開放されている状態での蓋部50及び温度センサ52等を二点鎖線で示す。
【0062】
図4及び
図5に示す例示的な実施形態では、温度センサ52は、蓋部50に固定される支持板61,62を含む支持部60を介して、蓋部50に支持される。なお、蓋部50によって開口部47を閉塞するとき、蓋部50は、ボルト51によって側壁部46に締結される。また、開口部47を開放するとき、ボルト51を取り外すことにより、蓋部50が側壁部46から外される。
【0063】
上述の実施形態によれば、ハウジング20に設けられた開口部47を開閉可能な蓋部50によって温度センサ52を支持するようにしたので、開口部47を開放してギアスピンドル装置10のメンテナンスをするときに、併せて温度センサ52をメンテナンスすることができる。よって、スピンドル外筒16にクーラントが供給されるギアスピンドル装置10において、メンテナンスを効率的に行うことができる。
【0064】
一実施形態では、温度センサ52に加え、上述のパイプ56及び/又はガス供給部58も蓋部50に支持されてもよい。
【0065】
一実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、パイプ56は、蓋部50に設けられた孔53に挿通されてもよい。パイプ56は、例えば溶接等により蓋部50に固定されてもよい。
【0066】
一実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、ガス供給部58のガス供給管の端部は、温度センサ52を保持するセンサ保持部54に接続されてもよい。このようにして、ガス供給部58は、センサ保持部54及び温度センサ52とともに、支持部60を介して蓋部50に支持されてもよい。
【0067】
このように、蓋部50によってパイプ56及び/又はガス供給部58を支持することにより、開口部47を開放してギアスピンドル装置10のメンテナンスをするときに、併せてパイプ56及び/又はガス供給部58をメンテナンスすることができる。よって、スピンドル外筒16にクーラントが供給されるギアスピンドル装置10において、メンテナンスを効率的に行うことができる。
【0068】
一実施形態では、ガス供給部58のガス供給管は、可撓性材料で形成されてもよい。この場合、ガス供給管が可撓性を有するので、ガス供給管を取り外さなくても蓋部50を容易に開閉することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、例えば
図4及び
図5に示すように、ギアスピンドル装置10は、蓋部50と側壁部46(第2壁部)とを接続するためのアーム66,68と、アーム66,68を蓋部50又は前記側壁部46(第2壁部)に回動可能に支持するためのヒンジ67,69,71と、を含む。
図4及び
図5に示す実施形態では、アーム66,68は、支持部60を介して蓋部50に支持されるとともに、側壁部46から側方に突出する突出部70を介して側壁部46に支持される。アーム66,68は、ヒンジ67,69,71によって回動可能となっている。
【0070】
上記の構成によれば、蓋部50と側壁部46(第2壁部)とを接続するためのアーム66,68と、アーム66,68を蓋部50又は前記側壁部46(第2壁部)に回動可能に支持するためのヒンジ67,69,71と、を設けたので、温度センサ52を支持することで重量が増大した蓋部50を容易に開閉することができる。
【0071】
図6は、一実施形態に係るギアスピンドル装置10を含む圧延設備1の概略構成図である。
図6に示す例示的な実施形態では、圧延設備1は、クーラント循環装置80を備える。クーラント循環装置80は、ギアスピンドル装置10のスピンドル外筒16及び圧延ロール6に供給されるクーラントを循環させるように構成される。
【0072】
図6に示すクーラント循環装置80は、スピンドル外筒16に供給されたクーラント、及び、圧延ロール6に供給されたクーラントを受けて集めるためのクーラント受け部94と、クーラント受け部94からのクーラントを、クーラント供給ユニット18に供給するための第1供給ライン90と、クーラント受け部94からのクーラントを、圧延ロール6に供給するための第2供給ライン88と、を含む。
【0073】
クーラント循環装置80は、クーラントを貯留するためのタンク82を備える。クーラント受け部94に集められたクーラントは、タンク導入ライン96を介してタンクに導入される。
【0074】
クーラント循環装置80は、タンク82内のクーラントを、圧延ロール6の冷却に適した温度に調節するための第1温度調節部84を含む。第1温度調節部84は、タンク82内のクーラントを加熱するためのヒータを含んでもよい。第1温度調節部84によって温度調節されたタンク82内のクーラントは、ポンプ86を介して、第1供給ライン90及び第2供給ライン88に圧送される。
【0075】
クーラント循環装置80は、第1供給ライン90を流れるクーラントを、スピンドル外筒16の冷却に適した温度に調節するための第2温度調節部92を含む。第2温度調節部92は、第1供給ライン90を流れるクーラントを冷却するためのクーラを含んでもよい。 第1供給ライン90は、分岐ライン90a及び分岐ライン90bを含む。第2温度調節部92によって温度調節されたクーラントは、分岐ライン90aを介してモータ2側のスピンドル外筒16Aを冷却するためのクーラント供給ユニット18Aに供給されるとともに、分岐ライン90bを介して圧延ロール6側のクーラント供給ユニット18Bに供給される。
【0076】
圧延ロール6に供給されたクーラント、及び、スピンドル外筒16に供給されたクーラントは、それぞれ、図示しない経路を介して、クーラント受け部94に集められる。なお、スピンドル外筒16に供給されたクーラントは、ハウジング20に設けられる排出口98、及び、該排出口98に接続されるドレン管(不図示)等を介して、クーラント受け部94に導かれるようになっていてもよい。
【0077】
上述の実施形態によれば、スピンドル外筒16及び圧延ロール6にそれぞれ供給されたクーラントがクーラント受け部94で集められ、該クーラントが、第1供給ライン90を介してクーラント供給ユニット18に、第2供給ライン88を介して圧延ロール6にそれぞれ供給される。すなわち、上述の実施形態では、スピンドル外筒16に供給されるクーラントと、圧延ロール6に供給されるクーラントとを兼用するようにしたので、スピンドル外筒16の冷却機構と、圧延ロール6の冷却機構とを別々に設ける場合に比べて、機器の設置スペースや設置コストを低減しながら、スピンドル外筒16の第2端16b側に連結される機器(ギアボックス4又は圧延ロール6等)に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0078】
以下、幾つかの実施形態に係る圧延機用のギアスピンドル装置及び圧延設備並びに圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法について概要を記載する。
【0079】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延機用のギアスピンドル装置(10)は、
内周歯が設けられた内周面を一端側に有するスピンドル外筒と、
前記内周歯に噛み合う外周歯が設けられた外周面を有するスピンドル内筒と、
前記スピンドル外筒と前記スピンドル内筒との間に設けられ、前記内周歯と前記外周歯との噛合部に潤滑油を保持するためのシール部材と、
前記スピンドル外筒の軸方向において前記噛合部を挟んで前記シール部材とは反対側に設けられ、前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒に向けてクーラントを供給するためのクーラント供給ユニットと、
を備える。
【0080】
上記(1)の構成によれば、スピンドル外筒の一端側に設けられる内周歯と外周歯との噛合部を挟んでシール部材とは反対側に設けたクーラント供給ユニットから、噛合部の形成範囲におけるスピンドル外筒に向けてクーラントを供給するようにしたので、スピンドル外筒の他端側に連結される機器(例えばギアボックス、モータ又は圧延ロール等)に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。よって、クーラントの供給に起因した機器又は圧延材への悪影響を低減することができる。例えば、クーラントの混入によるギアボックス又はモータの故障や、クーラントの圧延材への付着による圧延材の温度管理不全等を抑制することができる。
【0081】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記圧延機用のギアスピンドル装置は、
前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒および前記クーラント供給ユニットを収容するハウジングを備える。
【0082】
上記(2)の構成によれば、噛合部の形成範囲におけるスピンドル外筒及びクーラント供給ユニットがハウジングに収容されるので、スピンドル外筒の他端側に連結される機器へのクーラントの飛散をより効果的に抑制することができる。
【0083】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記ハウジングは、前記軸方向における前記スピンドル外筒の他端側にて前記スピンドル外筒に嵌合する軸が挿通され、前記スピンドル外筒よりも直径が小さい穴を有する第1壁部を含む。
【0084】
上記(3)の構成によれば、ハウジングの第1壁部に設けられ、スピンドル外筒に嵌合する軸(例えばモータ又はギアボックスの出力軸等)が挿通される穴の直径はスピンドル外筒の直径よりも小さいので、前述の軸を含む機器へのクーラントの飛散を効果的に抑制することができる。
【0085】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記クーラント供給ユニットは、前記スピンドル外筒よりも上方の位置から、前記スピンドル外筒に向けて前記クーラントを噴出するように構成される。
【0086】
上記(4)の構成によれば、クーラント供給ユニットにより、スピンドル外筒よりも上方の位置からスピンドル外筒に向けてクーラントが噴出されるので、スピンドル外筒よりも下方の位置からスピンドル外筒に向けてクーラントを噴出する場合に比べて、噴出されたクーラントがスピンドル外筒に確実に到達しやすい。よって、ギアスピンドル装置の冷却対象部位を効果的に冷却しながら、スピンドル外筒の他端側に連結される機器に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0087】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記クーラント供給ユニットは、前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒に向けて前記クーラントを噴出するように構成されたノズルを含む。
【0088】
上記(5)の構成によれば、クーラント供給ユニットはノズルを含むので、ノズルからのクーラントの噴出角度や、スピンドル外筒におけるクーラントの供給範囲を調整しやすい。よって、ギアスピンドル装置の冷却対象部位を効果的に冷却しながら、スピンドル外筒の他端側に連結される機器に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0089】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記ノズルは、前記軸方向において、前記スピンドル外筒の他端側から前記一端側に向かう方向に前記クーラントを噴射するように構成される。
【0090】
上記(6)の構成によれば、ノズルによって、スピンドル外筒の他端側(機器が連結される側)から一端側(スピンドル内筒が設けられる側)に向かう方向にクーラントを噴射するようにしたので、スピンドル外筒の他端側に連結される機器に向かってクーラントが飛散するのをより効果的に抑制することができる。よって、クーラントの供給に起因した機器又は圧延材への悪影響をより効果的に低減することができる。
【0091】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記スピンドル外筒を、前記スピンドル外筒の中心軸に直交し、かつ、水平な方向から視たとき、前記ノズルの中心軸と、前記スピンドル外筒の中心軸とのなす角度が30度以上60度以下である。
【0092】
上記(7)の構成では、スピンドルの外筒の中心軸に直交し、かつ、水平な方向から視たとき、ノズルの中心軸とスピンドル外筒の中心軸とのなす角度が30度以上60度以下であるので、スピンドル外筒とクーラントとの接触面積を大きく確保しやすい。よって、ギアスピンドル装置の冷却対象部位を効果的に冷却することができる。また、上述の角度が60度以下である場合、ノズルから噴出されてスピンドル外筒の表面で跳ね返ったクーラントが、スピンドル外筒の他端側(機器が連結される側)から一端側(スピンドル内筒が設けられる側)に向かう方向に向かいやすい。よって、スピンドル外筒の他端側に連結される機器に向かってクーラントが飛散するのをより効果的に抑制することができる。よって、上記(7)の構成によれば、ギアスピンドル装置の冷却対象部位を効果的に冷却しながら、スピンドル外筒の他端側に連結される機器に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0093】
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)乃至(7)の何れかの構成において、
前記スピンドル外筒を前記軸方向から視たとき、前記ノズルの中心軸の水平方向に対する角度が30度以上60度以下である。
【0094】
上記(8)の構成では、スピンドルの外筒を軸方向から視たとき、ノズルの中心軸の水平方向に対する角度が30度以上60度以下であるので、スピンドル外筒とクーラントとの接触面積を大きく確保しやすい。よって、ギアスピンドル装置の冷却対象部位を効果的に冷却することができる。よって、上記(8)の構成によれば、ギアスピンドル装置の冷却対象部位を効果的に冷却しながら、スピンドル外筒の他端側に連結される機器に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0095】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、
前記圧延機用のギアスピンドル装置は、
前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒の温度を計測するように構成された温度センサを備える。
【0096】
上記(9)の構成によれば、温度センサによって、噛合部の形成範囲におけるスピンドル外筒の温度を計測可能であるので、温度センサによる計測温度に基づき、冷却対象部位が適切に冷却されているかを確認することができる。よって、ギアスピンドル装置の冷却対象部位をより確実に冷却しながら、スピンドル外筒の他端側に連結される機器に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0097】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記温度センサは、前記軸方向において、前記スピンドル外筒の他端側から前記一端側に向かう方向に、前記クーラント供給ユニットからずれた位置に設けられる。
【0098】
上記(10)の構成によれば、軸方向においてスピンドル外筒の他端側から一端側に向かう方向にクーラント供給ユニットからずれた位置に温度センサを設けたので、該温度センサにより、スピンドル外筒のうちクーラントが供給される部位の近傍の温度を計測することができる。よって、計測温度に基づき、冷却対象部位が適切に冷却されているかをより正確に確認することができる。よって、ギアスピンドル装置の冷却対象部位をより確実に冷却しながら、スピンドル外筒の他端側に連結される機器に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0099】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)または(10)の構成において、
前記圧延機用のギアスピンドル装置は、
前記噛合部および前記クーラント供給ユニットを収容するハウジングを備え、
前記ハウジングは、開口部を有する第2壁部を含み、
前記開口部を開閉可能な蓋部を備え、
前記温度センサは、前記蓋部に支持される。
【0100】
上記(11)の構成によれば、ハウジングに設けられた開口部を開閉可能な蓋部によって温度センサを支持するようにしたので、開口部を開放してギアスピンドル装置のメンテナンスをするときに、併せて温度センサをメンテナンスすることができる。よって、スピンドル外筒にクーラントが供給されるギアスピンドル装置において、メンテナンスを効率的に行うことができる。
【0101】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記圧延機用のギアスピンドル装置は、
前記蓋部と前記第2壁部とを接続するためのアームと、
前記アームを前記蓋部又は前記第2壁部に回動可能に支持するためのヒンジと、
を備える。
【0102】
上記(12)の構成によれば、蓋部と第2壁部とを接続するためのアームと、アームを蓋部又は第2壁部に回動可能に支持するためのヒンジと、を設けたので、温度センサを支持することで重量が増大した蓋部を容易に開閉することができる。
【0103】
(13)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延設備は、
圧延ロールと、
前記圧延ロールを駆動するためのモータと、
前記モータで生成される回転駆動力を前記圧延ロールに伝達するように構成された上記(1)乃至(12)の何れかに記載のギアスピンドル装置と、
を備える。
【0104】
上記(13)の構成によれば、スピンドル外筒の一端側に設けられる内周歯と外周歯との噛合部を挟んでシール部材とは反対側に設けたクーラント供給ユニットから、噛合部の形成範囲におけるスピンドル外筒に向けてクーラントを供給するようにしたので、スピンドル外筒の他端側に連結される機器(例えばギアボックス、モータ又は圧延ロール等)に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。よって、クーラントの供給に起因した機器又は圧延材への悪影響を低減することができる。例えば、クーラントの混入によるギアボックス又はモータの故障や、クーラントの圧延材への付着による圧延材の温度管理不全等を抑制することができる。
【0105】
(14)幾つかの実施形態では、上記(13)の構成において、
前記圧延設備は、
前記スピンドル外筒に供給されたクーラント、及び、前記圧延ロールに供給されたクーラントを循環させるためのクーラント循環装置を備え、
前記クーラント循環装置は、
前記スピンドル外筒に供給された前記クーラント、及び、前記圧延ロールに供給されたクーラントを受けて集めるためのクーラント受け部と、
前記クーラント受け部からの前記クーラントを、前記クーラント供給ユニットに供給するための第1供給ラインと、
前記クーラント受け部からの前記クーラントを、前記圧延ロールに供給するための第2供給ラインと、
を含む。
【0106】
上記(14)の構成によれば、クーラント循環装置を設け、クーラント受け部で集めたクーラントを、第1供給ラインを介してクーラント供給ユニットに、第2供給ラインを介して圧延ロールにそれぞれ供給する。すなわち、上記(14)の構成では、スピンドル外筒に供給されるクーラントと、圧延ロールに供給されるクーラントとを兼用するようにしたので、スピンドル外筒の冷却機構と、圧延ロールの冷却機構とを別々に設ける場合に比べて、機器の設置スペースや設置コストを低減しながら、スピンドル外筒の他端側に連結される機器に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。
【0107】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法は、
内周歯が設けられた内周面を一端側に有するスピンドル外筒と、
前記内周歯に噛み合う外周歯が設けられた外周面を有するスピンドル内筒と、
前記スピンドル外筒と前記スピンドル内筒との間に設けられ、前記内周歯と前記外周歯との噛合部に潤滑油を保持するためのシール部材と、
を含む圧延機用のギアスピンドル装置の冷却方法であって、
前記スピンドル外筒の軸方向において前記噛合部を挟んで前記シール部材とは反対側の位置から、前記噛合部の形成範囲における前記スピンドル外筒に向けてクーラントを供給するステップ
を備える。
【0108】
上記(15)の方法によれば、スピンドル外筒の一端側に設けられる内周歯と外周歯との噛合部を挟んでシール部材とは反対側の位置から、噛合部の形成範囲におけるスピンドル外筒に向けてクーラントを供給するようにしたので、スピンドル外筒の他端側に連結される機器(例えばギアボックス、モータ又は圧延ロール等)に向かってクーラントが飛散するのを効果的に抑制することができる。よって、クーラントの供給に起因した機器又は圧延材への悪影響を低減することができる。例えば、クーラントの混入によるギアボックス又はモータの故障や、クーラントの圧延材への付着による圧延材の温度管理不全等を抑制することができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0110】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0111】
1 圧延設備
2 モータ
4 ギアボックス
5 出力シャフト
6 圧延ロール
6a 軸端部
6b 軸端部
10 ギアスピンドル装置
12 中間シャフト
14,14A,14B スピンドル内筒
16,16A,16B スピンドル外筒
16a 第1端
16b 第2端
17 スピンドル外筒
18,18A,18B クーラント供給ユニット
18a クーラント吐出口
19 ノズル
20 ハウジング
22 噛合部
24 外周面
26 外周歯
27 嵌合穴
28 内周面
29 嵌合穴
30 内周歯
32 潤滑油室
34 シール部材
40 上側壁部
41 下側壁部
42 軸方向端壁部
43 穴
44 軸方向端壁部
45 穴
46 側壁部
47 開口部
48 側壁部
49 脚部
50 蓋部
51 ボルト
52 温度センサ
53 孔
54 センサ保持部
55 貫通孔
56 パイプ
58 ガス供給部
60 支持部
61 支持板
62 支持板
66 アーム
67 ヒンジ
68 アーム
69 ヒンジ
70 突出部
71 ヒンジ
80 クーラント循環装置
82 タンク
84 第1温度調節部
86 ポンプ
88 第2供給ライン
90 第1供給ライン
90a 分岐ライン
90b 分岐ライン
92 第2温度調節部
94 クーラント受け部
96 タンク導入ライン
98 排出口
A1 形成範囲
A2 クーラント供給領域