(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】熱交換器及び熱交換器を備える電気装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20230906BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20230906BHJP
H01F 27/12 20060101ALI20230906BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20230906BHJP
F28D 7/10 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
F28D15/02 102H
H01F30/10 S
H01F27/12 Z
F28F1/00 Z
F28D7/10 Z
(21)【出願番号】P 2022566293
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2021059009
(87)【国際公開番号】W WO2021219332
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-19
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーレンス,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】サンド,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ベル・フィディラ,レベイ
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-524893(JP,A)
【文献】特開平05-067890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0018560(US,A1)
【文献】米国特許第10107555(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0033070(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0166289(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0187984(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0014493(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0117872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
F28D 7/10
H01F 30/10
H01F 27/12
F28F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(12)であって、
一次側(20)と、
二次側(22)と、
前記一次側(20)の少なくとも1つの一次空間(34、46)を画定する前記一次側(20)の少なくとも1つの一次構造(26、42、50)と、
前記二次側(22)の少なくとも1つの二次空間(36、48)を画定する前記二次側(22)の少なくとも1つの二次構造(28、44、50)と
を備え、
前記少なくとも1つの一次構造(26、42、50)のうちの1つ以上及び前記少なくとも1つの二次構造(28、44、50)のうちの1つ以上が、前記少なくとも1つの一次空間(34、46)から分離され、且つ前記少なくとも1つの二次空間(36、48)から分離された冷却剤容積(38)を画定し、
前記少なくとも1つの一次構造(26、42)のうちの1つ以上及び/又は前記少なくとも1つの二次構造(28、44)のうちの1つ以上が、三次元格子体を含み、
前記熱交換器が、前記一次側(20)の前記少なくとも1つの一次空間(34、46)と前記二次側(22)の前記少なくとも1つの二次空間(36、48)との間に流体密シールを提供する分離構造(32)をさらに備え、前記分離構造(32)は、前記冷却剤容積(38)の冷却剤が前記一次側(20)と前記二次側(22)との間を流れることを可能にするように構成される、熱交換器(12)。
【請求項2】
前記熱交換器(12)は、前記冷却剤容積(38)内に二相冷却剤を含む、請求項1に記載の熱交換器(12)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの一次構造(26,42,50)のうちの1つ以上及び/又は前記少なくとも1つの二次構造(28,44,50)のうちの1つ以上がパイプ(50)である、
請求項1または2に記載の熱交換器(12)。
【請求項4】
前記格子体は、
複数のセルを含み、
前記複数のセルの各々は、三重周期極小面を基準とする厚みを有し、前記複数のセルが、前記三重周期極小面の周期的パターンを形成するように、直交する3方向の各々に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器(12)。
【請求項5】
前記冷却剤容積(38)を画定する前記少なくとも1つの一次構造(26,42,50)のうちの1つ以上及び/又は前記冷却剤容積(38)を画定する前記少なくとも1つの二次構造(28,44,50)のうちの1つ以上が一体的に形成される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器(12)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの一次構造(26,42,50)は、前記冷却剤容積(38)を間に画定する2つの一次構造(26,42,50)を含み、及び/又は、前記少なくとも1つの二次構造(28,44,50)は、前記冷却剤容積(38)を間に画定する2つの二次構造(28,44,50)を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器(12)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの一次構造(26,42)のうちの1つ以上及び/又は前記少なくとも1つの二次構造(28,44)のうちの1つ以上が積層造形される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換器(12)。
【請求項8】
前記冷却剤容積(38)を画定する前記少なくとも1つの一次構造(26,42,50)、及び前記冷却剤容積(38)を画定する前記少なくとも1つの二次構造(28,44,50)は、前記冷却剤容積(38)に面する毛細管構造(40)を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の熱交換器(12)。
【請求項9】
前記冷却剤容積(38)、前記冷却剤容積(38)を画定する前記少なくとも1つの一次構造(26,42,50)、及び、前記冷却剤容積(38)を画定する前記少なくとも1つの二次構造(28,44,50)は、ヒートパイプとして機能するように構成されている、
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱交換器(12)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの一次構造(26,42,50)のうちの1つ以上及び/又は前記少なくとも1つの二次構造(28,44,50)のうちの1つ以上は、少なくとも10μmの算術平均表面粗さを有する粗面を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の熱交換器(12)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの一次構造(26,42,50)のうちの1つ以上及び/又は前記少なくとも1つの二次構造(28,44,50)のうちの1つ以上は、流体流を促進するためのカスタマイズされた表面を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の熱交換器(12)。
【請求項12】
前記カスタマイズされた表面が周期的なテクスチャを含む、請求項11に記載の熱交換器(12)。
【請求項13】
前記格子体を含む前記少なくとも1つの一次構造(26,42)のうちの前記1つ以上及び/又は前記少なくとも1つの二次構造(28,44)のうちの前記1つ以上は、平坦でない、流れを促進する端部(30)をも含む、
請求項1~12のいずれか1項に記載の熱交換器(12)。
【請求項14】
発熱電気構成要素(14)と、前記
発熱電気構成要素(14)を冷却するように配置された、
請求項1~13のいずれか1項に記載の熱交換器(12)とを備える電気装置(10)。
【請求項15】
前記電気装置(10)が高電圧静電誘導システムである、請求項14に記載の電気装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、一般に、熱交換器に関する。特に、三次元格子体を有する構造を備える熱交換器、及びそのような熱交換器を備える電気装置が提供される。
【背景技術】
【0002】
背景
電力変圧器に使用される変圧器油は、ラジエータ又は冷却器などの冷却装置によって冷却されることが多い。これらの冷却装置は、多くの場合、変圧器の設置面積の相当部分を構成する。
【0003】
米国特許出願公開第2020033070号明細書は、エンクロージャと、エンクロージャ内の最小表面構造とを含む熱交換器を開示している。エンクロージャは、第1の入口、第1の出口、第2の入口、及び第2の出口を含む。最小表面構造は、エンクロージャ内の第1の容積と第2の容積とを分離する。第1の入口及び第1の出口は、第1の容積と流体連通し、第2の入口及び第2の出口は、第2の容積と流体連通する。第1の容積と第2の容積とは、互いに混合しないように分離される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概要
本開示の目的の1つは、性能が向上した熱交換器を提供することである。
【0005】
本開示のさらなる目的は、コンパクトな設計を有する熱交換器を提供することである。
本開示のまたさらなる目的は、低重量の熱交換器を提供することである。
【0006】
本開示のまたさらなる目的は、必要な流体の量が少ない熱交換器を提供することである。
【0007】
本開示のまたさらなる目的は、前述の目的のいくつか又はすべてを組み合わせて解決する熱交換器を提供することである。
【0008】
本開示のさらに別の目的は、電気構成要素と、熱交換器とを備える電気装置を提供することであり、この電気装置は、前述の目的のうちの1つ、いくつか、又はすべてを解決する。
【0009】
本開示のさらに別の目的は、電気構成要素と、熱交換器とを備える電気装置を提供することであり、この電気装置は、電気構成要素の冷却の改善を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、熱交換器であって、一次側と、二次側と、一次側の少なくとも1つの一次空間を画定する一次側の少なくとも1つの一次構造と、二次側の少なくとも1つの二次空間を画定する二次側の少なくとも1つの二次構造とを備え、少なくとも1つの一次構造のうちの1つ以上及び少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上が、少なくとも1つの一次空間から分離され、且つ少なくとも1つの二次空間から分離された冷却剤容積を画定し、少なくとも1つの一次構造のうちの1つ以上及び/又は少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上が、三次元格子体を含み、熱交換器が、一次側の少なくとも1つの一次空間と二次側の少なくとも1つの二次空間との間に流体密シールを提供する分離構造をさらに備え、分離構造は、冷却剤容積の冷却剤が一次側と二次側との間を流れることを可能にするように構成される、熱交換器が提供される。
【0011】
三次元格子体によって、一次空間、二次空間、及び冷却剤容積のうちの1つ以上が、連続ラビリンスネットワークとして形成される。格子体は、熱伝達のために露出される表面積を増加させる。したがって、熱伝達効率が格子体によって改善される。格子体は、良好な混合環境及び低い圧力降下の増加をさらに提供する。
【0012】
格子体は、2つ又は3つの直交方向の各々における周期的パターン、例えば各方向における少なくとも3つの周期を含むことができる。格子体は、複数のセルを含んでもよい。セルは、二次元又は三次元に直交して配置されてもよい。
【0013】
少なくとも1つの一次空間は、一次側で第1の流体、例えば油を含むより大きい容積と流体連通してもよい。少なくとも1つの二次空間は、二次側で第2の流体、例えば大気を含むより大きい容積と流体連通してもよい。
【0014】
第1の流体は一次空間内を流れることができ、第2の流体は二次空間内を流れることができ、第3の流体、例えば冷却剤は冷却剤容積内を流れることができる。この場合、第1の流体、第2の流体及び第3流体が混合されることはない。第1の流体は油であってもよく、第2の流体は空気であってもよく、第3の流体は別の冷却剤であってもよい。一次空間の容積と二次空間の容積との合計は、冷却剤容積に実質的に対応してもよく、又は対応してもよい。
【0015】
冷却剤容積は、第1の側から第2の側まで延在してもよい。熱交換器は、分離構造をさらに備えてもよい。分離構造は、一次側及び二次側を画定することができる。分離構造は、一次側の少なくとも1つの一次空間と二次側の少なくとも1つの二次空間との間に流体密シールを提供する。分離構造は、冷却剤容積の冷却剤が一次側と二次側との間を流れることを可能にするように構成される。分離構造は、例えば、分離壁であってもよい。分離構造は、少なくとも1つの一次構造のうちの1つ以上の一部及び/又は少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上の一部によって構成されてもよい。あるいは、分離構造は、少なくとも1つの一次構造及び少なくとも1つの二次構造に加わる構造であってもよい。したがって、冷却剤は、循環的に、例えば一次側で冷却剤容積の内部で蒸発することができ、二次側に流れ、そこで冷却されて凝縮し、その後、一次側に戻り、再び蒸発することができる。
【0016】
熱交換器は、冷却剤容積内に二相冷却剤を含んでもよい。この場合、一次空間に隣接する冷却剤容積の領域は蒸発器領域であってもよく、二次空間に隣接する冷却剤容積の領域は凝縮器領域であってもよい。
【0017】
少なくとも1つの一次構造のうちの1つ以上及び/又は少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上は、パイプであってもよい。パイプはヒートパイプであってもよい。この場合、熱交換器は、三次元格子体とヒートパイプの両方を利用して、コンパクトで単純な設計で熱交換性能をさらに向上させる。
【0018】
格子体は、三重周期極小面TPMSなどの、三重周期の実質的に最小の表面を含むことができる。TPMSは、例えば、Schwarz P表面を含み得る。
【0019】
冷却剤容積を画定する少なくとも1つの一次構造のうちの1つ以上と、冷却剤容積を画定する少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上とは、一体的に形成されてもよい。この場合、分離構造は、一体的に形成された一次構造/二次構造の内部に配置されてもよい。
【0020】
少なくとも1つの一次構造は、冷却剤容積を間に画定する2つの一次構造を含むことができ、及び/又は、少なくとも1つの二次構造は、冷却剤容積を間に画定する2つの二次構造を含むことができる。このようにして、表面熱交換をほぼ2倍にすることができる。
【0021】
内側一次構造は内側一次空間を画定することができ、外側一次構造は外側一次空間を画定することができる。内側一次空間は、外側一次空間と流体連通してもよく、又はしなくてもよい。油などの第1の流体が、内側一次空間内及び外側一次空間内を流れることができ、冷却剤などの第3の流体が、内側一次空間と外側一次空間との間の冷却剤容積内を流れることができる。
【0022】
内側二次構造は内側二次空間を画定することができ、外側二次構造は外側二次空間を画定することができる。内側二次空間は、外側二次空間と流体連通してもよく、又はしなくてもよい。空気などの第2の流体が、内側二次空間内及び外側二次空間内を流れることができ、冷却剤などの第3の流体が、内側二次空間と外側二次空間との間の冷却剤容積内を流れることができる。
【0023】
少なくとも1つの一次構造のうちの1つ以上及び/又は少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上は、積層造形されてもよい。積層造形の一例は、3D印刷である。また、分離構造も積層造形されてもよい。
【0024】
冷却剤容積を画定する少なくとも1つの一次構造、及び冷却剤容積を画定する少なくとも1つの二次構造は、冷却剤容積に向かって毛細管構造を含んでもよい。代替的又は付加的に、冷却剤容積、冷却剤容積を画定する少なくとも1つの一次構造、及び冷却剤容積を画定する少なくとも1つの二次構造は、ヒートパイプとして機能するように構成されてもよい。これらの変形形態は、熱交換器の受動的冷却を促進する。
【0025】
少なくとも1つの一次構造のうちの1つ以上及び/又は少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上は、10μm~200μmなどの、少なくとも10μmの算術平均表面粗さを有する粗面を含むことができる。この表面粗さは、熱交換を改善する。
【0026】
少なくとも1つの一次構造のうちの1つ以上及び/又は少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上は、流体流を促進するためのカスタマイズされた表面を含んでもよい。カスタマイズされた表面は、一次構造及び/又は二次構造と共に積層造形及び/又は研磨されてもよい。1つ以上のカスタマイズされた表面によって、熱交換器の性能を改善するように調整することができる。一変形例によれば、カスタマイズされた表面の少なくとも10%が研磨されている。
【0027】
カスタマイズされた表面又はその領域は、周期的なテクスチャを含んでもよい。周期的なテクスチャは、乱流を促進し、それによって熱伝達をさらに改善するように設計することができる。周期的なテクスチャはまた、圧力降下をさらに減少させるように設計されてもよい。周期的なテクスチャの例は、ディンプル、フィン、及びサメ皮である。
【0028】
格子体を含む少なくとも1つの一次構造のうちの1つ以上及び/又は少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上はまた、平坦でない、流れを促進する端部を含んでもよい。端部は、例えば、円錐又は半球であってもよい。各端部は、格子体のそれぞれのセルを閉じることができる。
【0029】
さらなる態様によれば、発熱電気構成要素と、電気構成要素を冷却するように構成された本開示による熱交換器とを備える電気装置を提供する。熱交換器の三次元格子体によって、電気構成要素の冷却効率が改善される。
【0030】
熱交換器はコンパクトな設計であるため、電気装置もよりコンパクトにすることができる。あるいは、電気装置は、同じ設置面積でより強力にすることができる。
【0031】
熱交換器によって、電気装置をより軽量にすることができる。これにより、輸送コストが削減される。熱交換器はまた、電気装置をより容易に製造することを可能にする。
【0032】
電気装置は、誘電油などの誘電冷却流体を一次側に備えてもよい。熱交換器の高い熱伝達効率により、誘電冷却流体の量を比較的少なくすることができる。電気装置は、自然対流のみによって、すなわち冷却流体を循環させるためのいかなる機械的補助なしに冷却流体を循環させるように構成することができる。
【0033】
電気装置は、二次構造を冷却するための流体流を確立するように配置構成されたファンをさらに備えることができる。少なくとも1つの二次構造のうちの1つ以上が三次元格子体を含む場合、ファンは、格子体を通る流体流を確立するように配置構成されてもよい。
【0034】
電気装置は、電力変圧器などの高電圧静電誘導システムであってもよい。本明細書において使用される場合、高電圧は、少なくとも100kVなどの、少なくとも30kVであってもよい。
【0035】
高電圧静電誘導システムのサイズが大きいため、熱交換器も比較的大きくなければならない(ただしコンパクト)。大きいサイズの熱交換器は、冷却性能を高めるために追加の機能を追加することを可能にする。熱交換器は、主に電力変圧器に関連して説明されているが、熱交換器は電気装置に限定されない。
【0036】
図面の簡単な説明
本開示のさらなる詳細、利点、及び態様は、図面と併せて以下の実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】熱交換器を備える電気装置の概略側面図である。
【
図4】熱交換器のさらなる例を備える電気装置の概略側面図である。
【
図6】熱交換器のさらなる例を備える電気装置の概略側面図である。
【
図8】熱交換器のさらなる例を備える電気装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
以下において、三次元格子体を有する構造を備える熱交換器、及びそのような熱交換器を備える電気装置を説明する。同じ又は類似の参照符号が、同じ又は類似の構造的特徴を示すために使用される。
【0039】
図1は、ここでは電力変圧器10として例示される電気装置の側面図を概略的に示す。電力変圧器10は、熱交換器12を備える。電力変圧器10は、発熱電気構成要素14をさらに備える。熱交換器12は、電気構成要素14を冷却するように構成される。
【0040】
電力変圧器10は、ケーシング16を備える。電気構成要素14は、ケーシング16の内部に配置される。この例では、ケーシング16は誘電油18を収容する。電気構成要素14は、油18に浸漬される。電気構成要素14は、電力変圧器10の巻線であってもよい。
【0041】
図1は、一次側20及び二次側22をさらに示す。一次側20は、ケーシング16の内部に設けられ、油18を収容する。二次側22は、この例ではケーシング16の外側の周囲大気である。熱交換器12は、ファン24をさらに備える。
【0042】
図2は、
図1の熱交換器12の部分斜視図を概略的に示している。
図1及び
図2をまとめて参照すると、熱交換器12は、一次構造26及び二次構造28を備える。一次構造26及び二次構造28は、三次元格子体に一体的に形成されている。この例の格子体は、三重周期極小面TPMSを含む。TPMSは、ここではSchwarz P表面である。TPMSは、複数のセルを含む。この例では、セルは直交する3方向に配置構成されている。一次構造26及び二次構造28の各々は、ここでは円錐として例示されている、流れを促進する平坦でない端部30を含む。
【0043】
熱交換器12は、ここでは分離壁32として例示されている分離構造をさらに備える。各分離壁32は、一次側20と二次側22との間に流体密シールを提供する。分離壁32は、格子体内の様々な位置に配置することができる。分離壁32は、必ずしもケーシング16の壁と位置合わせされる必要はない。一次構造26、二次構造28、及び分離壁32は、例えば3D印刷によって積層造形される。
【0044】
一次構造26は、一次空間34を画定する。一次空間34は、一次側20と流体連通している。この例では、一次空間34は、TPMSのセルの外側の連続ラビリンスネットワークを含む。したがって、油18は、電気構成要素14から一次構造26の内部の一次空間34に流入し、電気構成要素14に戻ることができる。一次空間34は、格子体内及びケーシング16の外側に延在してもよい。一次空間34が格子体内でどれだけ延在するかは、分離壁32の位置付けに依存する。
【0045】
二次構造28は、二次空間36を画定する。二次空間36は、二次側22と流体連通している。この例では、二次空間36は、TPMSのセルの外側の連続ラビリンスネットワークを含む。したがって、分離壁32は、一次空間34と二次空間36との間をシールするようにTPMSのセルの外側に配置構成される。周囲空気は、二次構造28の内部の二次空間36に出入りして流れることができる。ファン24を使用して、空気を二次空間36に強制的に流すことができる。二次空間36は、格子体内で且つケーシング16内へと延在してもよい。二次空間36が格子体内でどれだけ延在するかは、分離壁32の位置付けに依存する。
【0046】
ここでは一次構造26及び二次構造28から構成される格子セル体は、冷却剤容積38を画定する。この例では、冷却剤容積38は、TPMSのセルの内側の連続ラビリンスネットワークを含む。冷却剤容積38は、一次空間34及び二次空間36から分離される。分離壁32は、冷却剤容積38の冷却剤が一次側20と二次側22との間を流れることを可能にするように構成される。
【0047】
熱交換器12は、冷却剤容積38内に二相冷却剤をさらに含む。したがって、冷却剤容積38は、一次空間34及び二次空間36にそれぞれ隣接する蒸発器領域及び凝縮器領域を形成する。
【0048】
図3は、
図1の熱交換器12の部分側断面図を概略的に示す。冷却剤容積38に面する格子体の表面(TPMSのセルの内側)には、毛細管構造40が設けられている。これにより、一次構造26、二次構造28、及び冷却剤容積38は、ヒートパイプとして機能するように構成される。
【0049】
冷却剤容積38の表面のいくつかの部分は、多孔質である毛細管構造40を含む。毛細管構造40は、様々な方法で製造することができる。毛細管構造40は、例えば、完全に密な構造から多孔質構造に移行するように印刷パラメータを調整することによって、一次構造26/二次構造28の壁と共に3D印刷されてもよい。
【0050】
一次空間34に隣接する冷却剤容積38の蒸発器領域では、二相冷却剤が油18から熱を吸収して蒸発する。蒸気は、冷却剤容積38の内部であるが、毛細管構造40の外部で、二次空間36に隣接する冷却剤容積38の低温凝縮器領域に流れ、そこで蒸気は凝縮して液体に戻り、毛細管構造40によって吸収される。次いで、液体は、凝縮器領域から蒸発器領域に戻るように毛細管構造40の内部を流れる。
【0051】
この例の電力変圧器10は受動的に冷却される。電力変圧器10の動作中、電気構成要素14は熱を発生し、油18を加熱する。一次空間34に進入した油18は、冷却剤容積38内の冷却剤によって冷却される。格子体に起因して、一次空間34と熱伝達のために露出される冷却剤容積38との間の表面積は大きい。これに対応して、格子体はまた、冷却剤容積38と二次空間36との間の熱伝達のために露出された大きい表面積を提供し、そこを通って空気がファン24によって強制的に流される。受動冷却は、毛細管構造40によって強化される。これにより、熱交換器12は、コンパクトな設計で非常に効果的な熱伝達を提供する。熱交換器12によって冷却された油18は、自然対流によって沈み、油18の循環がケーシング16の内部に確立される(
図1の時計回りの方向に)。
【0052】
図4は、熱交換器12のさらなる例を含む電力変圧器10の側面図を概略的に表し、
図5は、
図4の熱交換器12の部分斜視図を概略的に表す。
図4及び
図5をまとめて参照して、
図1~
図3に対する主な差を説明する。
【0053】
図4及び
図5の熱交換器12は、内側一次構造26と、外側一次構造42と、内側二次構造28と、外側二次構造44とを備える。内側一次構造26は、外側一次構造42の内側に配置される。内側二次構造28は、外側二次構造44の内側に配置される。
【0054】
内側一次構造26及び内側二次構造28は、内側三次元格子体に一体的に形成されている。外側一次構造42及び外側二次構造44は、外側三次元格子体に一体的に形成されている。格子体は複雑である。この例では、内側格子体及び外側格子体の各々は、三重周期極小面TPMSを含む。各格子体は、複数のセルを含む。内側格子体の各セルは、外側格子体のセルの内側に配置される。この例でも、各格子体のセルは直交する3方向に配置構成されている。
図4及び
図5に示すように、分離壁32の一部は、内側格子体のセルの内側に配置され、分離壁32の一部は、外側格子体のセルの外側に配置されている。
【0055】
内側一次構造26は内側一次空間34を画定し、外側一次構造42は外側一次空間46を画定する。この例では、内側一次空間34及び外側一次空間46の各々は、一次側20と流体連通している。内側一次空間34は、内側格子体のセルの内側の連続ラビリンスネットワークを含む。外側一次空間46は、外側格子体のセルの外側の連続ラビリンスネットワークを含む。したがって、油18は、電気構成要素14から内側一次構造26の内側一次空間34及び外側一次構造42の外側一次空間46内へと流れ、次いで電気構成要素14に戻ることができる。内側一次空間34は、内側格子体内(そのセルの内側)及びケーシング16の外側に延在してもよい。外側一次空間46は、外側格子体内(そのセルの外側)及びケーシング16の外側に延在してもよい。内側一次空間34及び外側一次空間46がどれだけ延在するかは、分離壁32の位置付けに依存する。
【0056】
内側二次構造28は内側二次空間36を画定し、外側二次構造44は外側二次空間48を画定する。この例では、内側二次空間36及び外側二次空間48の各々は、二次側22と流体連通している。内側二次空間36は、内側格子体のセルの内側の連続ラビリンスネットワークを含む。外側二次空間48は、外側格子体のセルの外側の連続ラビリンスネットワークを含む。周囲空気は、内側二次空間36及び外側二次空間48の各々に流入することができる。ファン24を使用して、空気を内側二次空間36及び外側二次空間48の各々に強制的に流すことができる。内側二次空間36は、内側格子体内(そのセルの内側)及びケーシング16の内側に延在してもよい。外側二次空間48は、外側格子体内(そのセルの外側)及びケーシング16の内側に延在してもよい。内側二次空間36及び外側二次空間48がどれだけ延在するかは、分離壁32の位置付けに依存する。
【0057】
この例では、内側格子体は内側一次構造26及び内側二次構造28から構成され、外側格子体は外側一次構造42及び外側二次構造44から構成されている。冷却剤容積38が、内側格子体と外側格子体との間に画定される。したがって、冷却剤容積38は、内側格子体のセルの外側及び外側格子体のセルの内側に設けられる。この例でも、冷却剤容積38は、連続ラビリンスネットワークを含む。冷却剤容積38は、内側一次空間34、外側一次空間46、内側二次空間36、及び外側二次空間48の各々から分離されている。分離壁32は、冷却剤容積38の冷却剤が一次側20と二次側22との間を流れることを可能にするように構成される。
【0058】
冷却剤容積38は、二相冷却剤を含み、
図1~
図3と同様に多孔質毛細管構造40を設けられる。したがって、冷却剤容積38は、内側一次空間34及び外側一次空間46に隣接する蒸発器領域と、内側二次空間36及び外側二次空間48に隣接する凝縮器領域とを形成する。
【0059】
図4及び
図5の複雑な格子体に起因して、内側一次空間34と冷却剤容積38との間、及び外側一次空間46と冷却剤容積38との間の熱伝達のために露出される表面積は非常に大きい。これに対応して、この複雑な格子体もまた、内側二次空間36と冷却剤容積38との間、及び外側二次空間48と冷却剤容積38との間の熱伝達のために露出した非常に大きい表面積を提供し、それを通じて空気がファン24によって強制的に流される。受動冷却は、毛細管構造40によってさらに強化される。これにより、熱交換器12は、コンパクトな設計でさらにより効果的な熱伝達を提供する。
【0060】
図6は、熱交換器12のさらなる例を含む電力変圧器10の側面図を概略的に表し、
図7は、
図6の熱交換器12の部分斜視図を概略的に表す。
図6及び
図7をまとめて参照して、
図1~
図3に対する主な差を説明する。
【0061】
図6及び
図7の熱交換器12は、複数の直線ヒートパイプ50と、外側一次構造42とを備える。外側一次構造42は、ここでは三重周期極小面TPMSとして例示されている三次元格子体を含む。外側一次構造42は、複数のセルを含む。この例でも、格子体のセルは直交する3方向に配置構成されている。この例では、外側一次構造42は分離壁32を備える。分離壁32は、一次側20と二次側22とを分離する。分離壁32は、冷却剤容積38の冷却剤が一次側20と二次側22との間を流れることを可能にするように構成される。
【0062】
各ヒートパイプ50は、外側一次構造42の内側に配置される。より具体的には、各ヒートパイプ50は、分離壁32及び外側一次構造42を通って延在する。したがって、ヒートパイプ50は、分離壁32の一次側20の内側一次構造、及び、分離壁32の二次側22の二次構造を構成する。
【0063】
ヒートパイプ50の、分離壁32の一次側20(
図6の左)の区画及び外側一次構造42は、一次側20上でそれらの間の一次空間34を画定する。一次空間34は、一次側20と流体連通している。一次空間34は、外側一次構造42のセルの内側に連続ラビリンスネットワークを含む。したがって、油18は、電気構成要素14から一次空間34に流入し、次いで、電気構成要素14に戻ることができる。
【0064】
ヒートパイプ50の分離壁32の二次側22の区画(
図6の右側)は、それらの間に二次空間36を画定する。二次空間48もまた、外側一次構造42の内側、すなわちセルの外側に設けられている。二次空間36、48の各々は、二次側22と流体連通している。二次空間48は、外側一次構造42のセルの外側の連続ラビリンスネットワークを含む。周囲空気は、ヒートパイプ50と外側一次構造42のセルの外側の二次空間36との間の二次空間48の各々に流入することができる。ファン24を使用して、空気を二次空間36、48に強制的に流すことができる。
【0065】
各ヒートパイプ50の両端は閉じられている。これにより、各ヒートパイプ50は、内部に冷却剤容積38を画定する。冷却剤容積38は、一次空間34及び二次空間36、48から分離される。
【0066】
冷却剤容積38は、二相冷却剤を含み、
図1~
図3と対応して多孔質毛細管構造40を設けられる。毛細管構造40は、ヒートパイプ50の内面に設けられている。したがって、ヒートパイプ50の内部の冷却剤容積38は、外側一次構造42に隣接する蒸発器領域と、二次空間36に隣接する凝縮器領域とを形成する。ヒートパイプ50が外側一次構造42の外側で二次側22にどれだけ延在するかは、自然対流によって冷却剤を凝縮するために伝達される必要がある熱の量に依存する。
【0067】
図6及び
図7の複雑な格子体、すなわち、格子体の内部のヒートパイプ50に起因して、一次空間34と冷却剤容積38との間、及び一次空間34と二次空間48との間の熱伝達のために露出される表面積は大きい。空気が、ファン24によって二次空間36、48を通じて強制的に流される。受動冷却は、毛細管構造40によってさらに強化される。
図6及び
図7の熱交換器12はまた、市販のヒートパイプ50を格子体に挿入することができるため、比較的単純である。これにより、熱交換器12は、コンパクト且つ単純な設計で効果的な熱伝達を提供する。
【0068】
図8は、熱交換器12のさらなる例を備える電力変圧器10の側面図を概略的に示す。
図6及び
図7に対する主な差を説明する。
【0069】
図8の熱交換器12は、一次構造26と、複数の直線ヒートパイプ50とを備える。一次構造26は、ここでは三重周期極小面TPMSとして例示されている三次元格子体を含む。一次構造26は、複数のセルを含む。この例でも、格子体のセルは直交する3方向に配置構成されている。
【0070】
この例では、一次構造26は分離壁32を備える。一次構造26は、一次構造26のセルの外側に一次空間34を画定する。一次空間34は、一次構造26のセルの外側に連続ラビリンスネットワークを含む。油18が、一次空間34に流入することができる。ケーシング16の外側で、一次空間34は二次側22に対して閉じられている。したがって、一次空間34は、ケーシング16の内側及び外側の両方に延在する。分離壁32は、冷却剤容積38の冷却剤が一次側20と二次側22との間を流れることを可能にするように構成される。
【0071】
この例のヒートパイプ50は、二次構造を構成している。ヒートパイプ50の端部は、
図8に示すように、一次構造26のセルに、例えば溶接によって接続されている。したがって、ヒートパイプ50は、一次構造26に移行する。ヒートパイプ50の両端は閉じられている。ヒートパイプ50の内部及び一次構造26のセルの内部には、冷却剤容積38が設けられている。
図8に示すように、この例の冷却剤容積38は連続的である。
【0072】
ヒートパイプ50は、それらの間に二次空間36を画定する。したがって、二次空間36は、二次側22と流体連通している。周囲空気は、ヒートパイプ50の間で二次空間36の各々に流入することができる。
【0073】
ファン24を使用して、空気を二次空間36に強制的に流すことができる。
図8に示すように、ファン24は、一次構造26からさらに離れて位置付けられている。
【0074】
冷却剤容積38は、一次空間34及び二次空間36から分離される。冷却剤容積38は、二相冷却剤を含み、
図1~
図3と対応して多孔質毛細管構造40を設けられる。毛細管構造40は、ヒートパイプ50の内面及び一次構造26の内面に設けられている。したがって、冷却剤容積38は、一次構造26内に蒸発器領域を形成し、ヒートパイプ50内に凝縮器領域を形成する。
【0075】
また、
図8において、格子体は、一次空間34と冷却剤容積38との間の熱伝達のために露出された大きい表面積を提供する。受動冷却は、毛細管構造40によってさらに強化される。
図8の熱交換器12は、一次構造26のセルにヒートパイプ50が取り付けられているため、非常に単純である。これにより、熱交換器12は、コンパクト且つ単純な設計で効果的な熱伝達を提供する。さらに、
図8の熱交換器12は、簡単な方法で、冷却剤容積38の凝縮器領域をケーシング16から遠くに位置付けることを可能にする。
【0076】
以上、例示的な実施形態を参照して本開示を説明したが、本発明は上述したものに限定されないことが理解されよう。例えば、部品の寸法は必要に応じて変えることができることが理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され得ることが意図される。