(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ヘルスケアシステムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/70 20180101AFI20230907BHJP
【FI】
G16H20/70
(21)【出願番号】P 2023094444
(22)【出願日】2023-06-08
【審査請求日】2023-06-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522174281
【氏名又は名称】ロゴスサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113186(JP,A)
【文献】特開2023-65808(JP,A)
【文献】特開2016-190025(JP,A)
【文献】特開2008-35298(JP,A)
【文献】特開2005-4398(JP,A)
【文献】特開2020-48043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのバイタルデータまたはユーザの状態の入力を取得する手段と、
制御プログラムとメンタルヘルスのセルフケア/維持/改善/治療用の提供プログラムを記憶する記憶装置と、
制御プログラムによって、システムの動作を制御する制御部と、
を含むヘルスケアシステムであって、
前記手段からのユーザの前記バイタルデータまたは前記ユーザの状態を示すデータから、ユーザが前記提供プログラムを実施する際の一時的なユーザのストレスレベルを導出し、
前記ストレスレベルに応じて、前記提供プログラムのコンテンツのアイコン、媒体、内容の変更、削除、使用制限、または、コンテンツの提供順序の変更によってユーザが不快感を感じることなく前記提供プログラムを利用し続けることができることを特徴とするヘルスケアシステム。
【請求項2】
前記ストレスレベルがバイタルデータの計測から算出されることを特徴とする請求項1のシステム。
【請求項3】
前記バイタルデータは、心拍、脈拍、歩行速度、活動量、呼吸音、のいずれかのバイタルデータである請求項2のシステム。
【請求項4】
ユーザのバイタルデータまたはユーザーの状態の入力を取得する手段と、
制御プログラムとメンタルヘルスのセルフケア/維持/改善/治療用の提供プログラムおよび/またはワーク(コンテンツ)を記憶する記憶装置と、
制御プログラムによって、システムの動作を制御する制御部と、
を含むヘルスケアシステムにおいて、
前記ヘルスケアシステムが、
前記手段からバイタルデータまたはユーザの状態
の入力を取得する工程と、
前記バイタルデータまたはユーザの状態の入力から、ユーザが前記提供プログラムを実施する際の一時的なユーザのストレスレベルを導出する工程と、
前記ストレスレベルに応じて、ユーザが不快感を感じることなくそれらを利用し続けることができるように、前記提供プログラムのコンテンツの、アイコン、媒体、内容の変更、削除、使用制限、またはコンテンツの提供順序の変更を行う工程とを実行する、ヘルスケアシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘルスケアシステムおよびその方法、特に、バイタルデータを用いたストレスレベルの推定を含むヘルスケアシステムおよびその方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、メンタルヘルス不調者の増加が社会問題となっており、コロナの流行以降、特に顕著になっている。また、スマートフォンやタブレット端末などの技術革新に伴い、これらのポータブルデバイスでストレス関連疾患を治療するための治療用アプリが開発されてきている(特許文献1)。
【0003】
また、これらのポータブルデバイス等の生体センサで取得された対象者の生体に関する生体データからストレス度合い算出し、可視化技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-137258号広報
【文献】特開2023-65808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明では、対象者のストレスレベルが高い場合は、スマホ等の出力(例えば、画面の輝度が高い)や、プログラムの内容(例えば、文章が多い)といった提供方法や提供内容によって、ユーザーに不快感を感じさせる場合がある。また特許文献2ではストレス状態を可視化する技術を開示したにすぎず、ストレス状態に応じて提供方法や提供内容を変更することは考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)
利用者のバイタルデータを取得するデバイスと、
制御プログラムとメンタルヘルスのセルフケア/維持/改善/治療用の提供プログラムを記憶する記憶装置と、
制御プログラムによって、システムの動作を制御する制御部と、
を含むヘルスケアシステムであって、
前記デバイスからのバイタルデータから利用者のストレスレベルを導出し、
前記ストレスレベルに応じて、出力装置からの前記提供プログラムの出力方法、あるいは、前記提供プログラムの変更、を行うことを特徴とするヘルスケアシステム。
(請求項2)
前記利用者の状態のレベルがストレスレベルであり、バイタルデータの計測から算出されることを特徴とする請求項1のシステム。
前記デバイスは常時駆動のパッシブな測定手段である請求項1のシステム。
(請求項3)
前記デバイスは、心拍、脈拍、歩行速度、活動量、呼吸音、のいずれかのバイタルデータである請求項2のシステム。
(請求項4)
前記デバイスは常時駆動のパッシブな測定手段である請求項2または請求項3のシステム。
(請求項5)
利用者のバイタルデータをデバイスによって取得するデバイスと、
制御プログラムとメンタルヘルスのセルフケア/維持/改善/治療用の提供プログラムを記憶する記憶装置と、
制御プログラムによって、システムの動作を制御する制御部と、
を含むヘルスケアシステムにおいて、
前記制御プログラムが、
前記デバイスからバイタルデータを取得する工程と、
前記バイタルデータから利用者のストレスレベルを導出する工程と、
前記ストレスレベルに応じて、出力装置からの前記提供プログラムの出力方法、あるいは、前記提供プログラムの変更、する工程と、を実行する、
ヘルスケアシステムの制御方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のヘルスケアシステムによれば、対象者のストレス状態に応じてヘルスケア用のワークやプログラムの提供方法や提供内容を修正することが可能となり、利用者が不快感を感じることなくそれらを利用し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明の第1の実施例のストレスレベルに応じたコンテンツの実施の可否の対応関係を示すテーブルである。
【
図4】本発明の第2の実施例のストレスレベルに応じたコンテンツの実施の可否の対応関係を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はユーザに利用されるヘルスケアアプリのワーク(コンテンツ)をユーザの体調(たとえばストレス状態)の日毎、あるいは経時変化等での一時的な状況変化に応じて修正する技術を開示するものである。
(本発明のヘルスケアシステムの構成)
本発明の一実施形態として、PC、ノートパソコンや、典型的にはスマホやタブレットなどの利用者の情報処理端末にインストールされたプログラムを挙げる。情報処理端末110は、ヘルスケアプログラムを制御する制御装置101、記憶装置102、液晶モニタなどの表示装置103、タッチパネルやキーボードなどの入力装置104、外部ネットワークとの通信用の通信装置105、バイタルデータを測定する測定装置106等を備える。また、情報処理端末110とインターネットや無線接続あるいは優先接続などのネットワークであるネット120を介して、腕時計型、イヤホン型、バンド型、身体貼付型などのウェアラブル端末や、トイレなどに設置された血糖値測定装置、スマートミラーに搭載された撮像装置などの据え置き型測定器である測定装置116を情報処理端末に内蔵された測定装置106に代えて用いても良い。また、本実施例では情報処理端末にプログラムや必要なデータ等を情報処理端末110に収容してスタンドアローンで動作するシステムを例に挙げているが、ネット120を介してサーバ120と接続し、サーバ120と情報処理端末110のそれぞれにプログラムやデータを分散、あるいは、サーバ120にプログラムやデータを集約し、情報処理端末は単なる入出力装置として利用することも可能である。
【0010】
測定装置106の例としてはバイタルデータを測定できるデバイスが利用可能である。バイタルデータの例として以下に歩行速度と心拍数、通話の測定を例に挙げるがこれに限定されるものではなく、体温上昇、皮膚の電気抵抗の変化、血圧変化、血流量変化、睡眠時間、体重、歩数、活動量やその他の当業者に周知の様々なバイタルデータが本発明で利用できることは言うまでもない。また、バイタルデータの測定として、測定装置106が対象者が意識することなく測定可能なバイタルデータ、歩行速度や、対話の分析、トイレ利用時の血糖値測定、洗面所のスマートミラー内蔵撮像素子による心拍測定などのパッシブなデータであると特に都合が良い。さらに常時駆動として無意識状態の測定ができると都合がよい。
【0011】
(歩行速度測定装置)
対象者の情報処理端末110には、GPS測位機能等(図示しない)が供えられ、その測位機能によって得られた情報処理端末110の位置を示す情報は、対象者の位置情報とされる。位置情報は、例えば、緯度及び経度を示す情報である。また、情報処理端末110は、加速度センサ等の加速度を測定する機能を有している。情報処理端末110は、その測位及び加速度の測定を定期的(例えば、数秒又は数分毎)に行い、その結果を記憶装置102に記憶する。
次に、制御装置101は歩行速度計測・判断ソフトウェアプログラムによって、前記測位データと加速度のデータから当該対象者が歩行しているかを判断して、当該対象者が歩行していると判断されたタイミングにおける当該対象者の移動速度を示す情報を歩行速度として取得する(詳細な歩行速度およびストレス状態の判断手段は特許文献1に記載の方法などを利用することができる)。これらから算出された歩行速度の一定期間ごと(例えば1日、1週間あるいは1か月)の平均値を比較して、歩行速度が前回の測定より遅い場合、あるいは所定の閾値より遅い場合、ストレス状態と判断する。
【0012】
(心拍数測定装置)
スマホ等の情報処理端末110に具備されているカメラ(測定装置106)を利用する心拍数測定装置などが知られている。例えば、顔などの皮膚表面を撮影したカメラ映像、あるいは指先などの皮膚表面を撮影したカメラ映像から、脈波信号を取り出し、心拍数を推定するものである。心拍数の測定には「映像脈波抽出」という技術を利用し、血液中のヘモグロビンが持つ、緑色光を吸収する性質に着目し、血管の収縮と拡張に伴う皮膚表面の反射光を画像解析して脈波信号を抽出するものである。
次にこれらの脈波信号からストレス指数を制御装置101がシステム100に備えられたストレス指数算出・判断ソフトウェアプログラムに従って算出する。ストレス指数は、脈波間隔を基に、心拍変動の時系列データとして得ることができる。心拍変動に基づくストレス指数としては、例えば交感神経と副交感神経の全体のバランスを表すLF/HFがある。LF(低周波)は、心拍変動の時系列データの0.004~0.15Hzの低周波を表し、メイヤー波と呼ばれる約10秒周期の血圧変化を信号源とする変動波である。HF(高周波)は、0.15~0.4Hzの高周波数を表し、3秒から4秒程度の周期を持つ呼吸を信号源とする変動波であり、このLF/HFが高い場合、交感神経が優位の状態で、ストレスが高い状態にあたる。一方で、ストレス指数であるLF/HFが低い場合、副交感神経が優位の状態にあり、リラックスした状態にあたる。このLF/HFについて、例えば、一定時間毎の平均値を対象者ごとに測定し、その経時変化でその値が各人に設定される閾値を超える場合にストレス状態と判断する。ただし、この測定法においても心因性疾患等の原因に基づくストレス状態なのか、例えば、イベント等に伴う一時的な精神的ストレス状態なのか判定がつかないという問題があった。なお、ストレス指数はLF/HFに限定されずに、SDNN、RMSSD及びCVSDや他の指数を用いても良い。
【0013】
(対話によるストレス推定装置)
対象者のスマートフォンでの通話やウェブ会議等でのマイク入力をモニタリングして記録し、その入力データを音声入力時と非音声入力状態に分離し、音声入力時の平均周波数と平均振幅を計測する。これらの変化からストレス状態を推測することができる。ストレス状態の推測方法については、特開2010-259691などに記載された方法が利用できる。
【0014】
(メンタルヘルスケアアプリ1)
次に
図2(a)のフローを参照しながら、メンタルヘルスケアアプリの例を示す。本メンタルヘルスケアアプリは、メンタルヘルスのセルフケア/維持/改善/治療用の複数のワークがプログラムだてされて提供される、提供プログラムであり、記憶装置102に記憶されている。この提供プログラムは記憶装置102に記憶された制御プログラムによって提供されるものである。提供プログラムは、動画コンテンツからなる心理教育(201)、チャットボットや、動画コンテンツ、音声コンテンツからなる漸進的筋弛緩法、腹式呼吸法、視覚イメージ法などのリラクゼーション(202)のワーク、行動活性化などのストレスマネジメント(203)のワーク、認知再構成法(204)、マインドフルネス瞑想などのマインドフルネス(205)のワークが含まれる。これらの心理教育やワークが所定の順序(例えば、201、202、203、204、205の順)に従って、それぞれのワークを数日をかけて、スマートフォン等の情報処理端末110の入力装置104を介して必要なやり取りを行い、表示装置103や音声出力装置を介してユーザに提供される。ユーザはこれらの教育やワークを実施することによってメンタルケアを行うことができる。
【0015】
(メンタルヘルスケアアプリ2)
次に
図2(b)の図を参照しながら、メンタルヘルスケアアプリの別の例を示す。本メンタルヘルスケアアプリは、メンタルヘルスのセルフケア/維持/改善/治療用の複数のワークが一覧形式で提供される、提供プログラムであり、記憶装置102に記憶されている。この提供プログラムは記憶装置102に記憶された制御プログラムによって制御されて提供されるものである。提供プログラムは、動画コンテンツからなる心理教育、チャットボットや、動画コンテンツ、音声コンテンツからなる漸進的筋弛緩法、腹式呼吸法、視覚イメージ法などのリラクゼーションのワーク、行動活性化などのストレスマネジメントのワーク、認知再構成法、マインドフルネス瞑想などのマインドフルネスのワークが含まれる。これらの心理教育やワークがスマートフォン等の情報処理端末110の表示装置103上でアイコン形式で表示され、タッチパネル等の入力装置で選択されることによって、ユーザに提供される。ユーザはこれらの教育やワークを実施することによってメンタルケアを行うことができる。
【0016】
(実施例)
次に本発明のメンタルヘルスケアシステムの実施例を以下に例示する。本実施例で用いられるメンタルヘルスケアアプリ(ソフトウェア)(制御プログラム)は情報処理端末110の記憶装置102に記憶され、記憶装置102から読み出されたプログラムが制御装置101で制御され、表示装置103や入力装置104、測定装置106,116等と連携しながら実行される(本実施例では前述の提供プログラムを提供するメンタルヘルスケアアプリを例とする)。本実施例では対象者の情報処理端末110としてスマートフォンが、バイタルデータとして心拍を用いている。メンタルヘルスケアアプリのプログラムが起動されるとまず、ストレスレベルの測定が行われる。ストレスレベルの測定のために、測定装置106から逐次取得された心拍データは記憶装置102に保存される。次に、プログラムに含まれる、心拍変動パラメータ算出ブロックでは、所定期間分の生体データが記憶装置102に保存されると、所定期間分の生体データに含まれる心電図を用いて心拍変動パラメータ(SDNN、RMSSD及びCVSD、LFおよびHF)を算出する。次にSDNN/RMSSDとLF/HFを算出する。通常、心電図を測定する際には、ノイズが発生することがある。そこで、心拍変動パラメータ算出ブロックでは、取得された心電図のノイズを除去するために、心拍変動パラメータの算出前に心電図の加重平均を算出してもよい。そして、算出されたSDNN、RMSSD及びCVSDの各値はストレス推定ブロックに処理をうつされる。次に算出されたSDNN、RMSSD及びCVSDの各値と、記憶装置に保存されたストレス推定テーブル(図示しない)に登録されているストレスレベル毎のSDNN、RMSSD及びCVSDの値とを比較する。例えば、制御プログラムに含まれるストレス推定ブロックは、算出されたSDNNの値と、各ストレスレベルにおけるSDNNの値とを比較する。例えば、ストレス推定ブロックは、算出されたRMSSDの値と、各ストレスレベルにおけるRMSSDの値とを比較する。例えば、ストレス推定ブロック、算出されたCVSDの値と、各ストレスレベルにおけるCVSDの値とを比較する。ストレス推定ブロックは、SDNN、RMSSD及びCVSDの各値の比較結果に基づいて、類似していると判断されたストレスレベルをそれぞれ取得する。ここで、類似していると判断するための基準は、予め設定されているものとする。例えば、ストレス推定ブロックは、算出された値と、ストレス推定テーブルに登録されている値との差が閾値未満である場合に類似していると判断してもよい。なお、1つの指標において、類似していると判断された値が複数ある場合、ストレス推定ブロックは差が最も小さい値を選択してもよい。例として、ストレスレベルはA(正常)、B(ストレス小)、C(ストレス中)、D(ストレス大)と評価され、ユーザの情報処理端末110の表示装置103に表示してユーザに認識させることができる。ストレス推定テーブルはユーザの平常時の平均的な値を基にして修正するようにしても良い。また、本実施例では上記数値によってストレスレベルの推定を行ったが、SDNN/ RMSSDやLF/HFとストレスレベルの対応関係を記憶したテーブル(図示しない)を用いてストレスレベルを算出しても良い。また、本実施例ではウェアラブルデバイスから逐次取得された心拍のバイタルデータを用いていたが、そのほかのバイタルデータから当業者周知のストレスレベルの算出方法を用いて算出されたストレスレベルを用いても良いことは言うまでもない。
【0017】
前述のストレスレベルの測定に続いて、メンタルヘルスケアアプリである制御プログラムによって次の処理が行われる。本実施例ではユーザーは本アプリを使用し始めてから数日間が経過しており、心理教育のワークが終了して、リラクゼーションまで進んでいる状態である。ストレスレベルと実施するワークの関係を
図3を参照しながら説明する。
図3にはリラクゼーションのワークに含まれるコンテンツの実施の有無とストレスレベルとの関係を示したテーブルで、記憶装置102に記憶され、制御プログラムがワークを実施する際に呼び出されて、制御プログラムによるワークの実施の可否を判断するために参照される。これは一例であり、適宜修正可能である。また同様のテーブルが他のワークの実施の可否を判断するために用意されるが説明は省略する。リラクゼーションのワークは(1)漸進的筋弛緩法(動画コンテンツ)、(2)腹式呼吸法(文章コンテンツ)、(3)視覚イメージ法(音声コンテンツ)の各コンテンツからなり、数日をかけてそれぞれのコンテンツを(1)、(2)、(3)の順に実施するワークである。まず、ストレスレベルA(正常)の場合は、特に問題なく、制御プログラムは通常の流れに基づいて、ユーザの情報処理端末110を介してユーザに各コンテンツを提供していく。次に、(2)の腹式呼吸法を実施予定だったユーザがストレスBだった場合、通常の腹式呼吸法のコンテンツではなく、記憶装置102に記憶された代替用の音声コンテンツに基づく腹式呼吸法のコンテンツをユーザに提供し、ユーザがこのコンテンツを実施すると次のコンテンツへ流れを進める。次に、(1)漸進的筋弛緩法を実施予定だったユーザがストレスレベルCだった場合、(3)の視覚イメージ法を先に行い、ユーザがこのコンテンツを実施すると、続いて、(2)、(1)の順でコンテンツを提供していく。最後に、(3)視覚イメージ法の実施予定だったユーザがストレスレベルDであった場合、(3)のコンテンツの実施に代えて、自律神経を整えるような音楽のコンテンツを提供する。この場合、このコンテンツを実施していないので、記憶装置102に保存されている、制御プログラムによる、提供プログラムの提供状態のメモリに(3)のコンテンツが実施されていないことが記憶され、例えば、制御プログラムによって、次の日の処理が行われる場合に、このメモリから(3)が次の処理であることを読み出し、再度ストレスレベルに応じて、(3)のコンテンツが実施できるか確認が行われ、(3)が実施された場合はさらに次の処理に移ることができる(ここでは、リラクゼーションのワークが終了し、例えば次の日にストレスマネジメントのワークの処理に移ること、つまり
図2(a)の202から203へ移ること、を意図している)。
【0018】
メンタルヘルスケアアプリである制御プログラムは、
図2(a)に記載されたフローに従って、上述のようにそれぞれのワークに関して、ストレスレベルに応じて、ワーク(コンテンツ)の実施の可否を判断しながら、ユーザに対して、適切なワーク(コンテンツ)を提供し、ヘルスケアを実施していく。このように、ユーザの一時的な状態に応じてコンテンツを、文章コンテンツから音声コンテンツへといった媒体を変えた提供手段の変更、コンテンツの提供順序の変更、コンテンツを例えば音楽といった状態を改善するためのコンテンツへのコンテンツ内容の変更といった修正を提供プログラムに行うことでユーザの負荷を減らし、継続意欲を減退を抑制することができる。
【0019】
(第二の実施例)
第二の実施例はメンタルヘルスケアプリ2を用いた実施例である。このアプリはユーザが一覧から実施したいワーク(コンテンツ)を選択して実施する形式、あるいは、メンタルヘルスケアアプリ1で、提供プログラムとして提供されるワーク(コンテンツ)がいくつかあり、そのうちの一つをユーザが選択して実施する形式などが含まれるが、その他の本技術が応用される実施形式に適用することも可能である。
メンタルヘルスケアアプリの制御プログラムの起動、およびストレスレベルの測定までは前述の実施例と同様である。
【0020】
メンタルヘルスケアアプリ2の制御プログラムは、ユーザに心理教育や、コンテンツなどのワークを所定のルーチンに従って提供する。
図2、
図3、
図4を用いてこれらの実例を示す。まず、ストレスレベルAの場合、記憶装置102に記憶された、コンテンツの実施可否とストレスレベルの関係を示したテーブル(
図3)を参照し、制御プログラムは、すべてのコンテンツが実施可能としてユーザに一覧形式としてコンテンツ選択を表示装置に表示されたコンテンツアイコン(
図2(b)参照)として提供し、ユーザが入力手段であるタッチパネル104でいずれかのアイコンを選択することによってコンテンツが選択される。次に選択されたコンテンツを制御プログラムがユーザに情報処理端末を介して提供する。次にストレスレベルCの場合、画面にストレスレベルCと表示され、制御プログラムはテーブルを参照し、実施不可(×)とされた(1)心理教育に代えて、動画コンテンツから音声コンテンツに代えた(1)心理教育を提供するためのアイコンを表示し、同じく実施不可とされた(2)筋弛緩法については、音楽コンテンツを提供することを要求するアイコンに変更、さらに実施不可とされた(4)行動活性化を選択できないことを示すグレーアウト表示とし、同じく実施不可とされた(5)認知再構成については削除し、一覧として表示装置を介してユーザに提供する。最後にストレスレベルDの場合、(1)心理教育については動画コンテンツから音声コンテンツと変えたものの提供を要求するアイコン、(2)筋弛緩法については音楽コンテンツを提供することを要求するアイコンに変更、その他のコンテンツについては削除し、実施可能な二つのコンテンツについては、ユーザが選択しやすいようにアイコンを大きく表示して一覧として提供している。ストレスレベルBについては他のストレスレベルと同様に制御プログラムによってテーブルとの比較に基づいて表示・提供が修正される。表示装置103に表示されたアイコンをユーザが選択すると、指定されたコンテンツが実施され、ユーザのメンタルケア、セルフケア、治療・改善が行われる。
【0021】
上述のように、提供されるコンテンツをユーザの一時的な状態に応じてコンテンツを、文章コンテンツから音声コンテンツへといった媒体を変えた提供手段の変更、コンテンツの提供順序の変更、コンテンツを例えば音楽といった状態を改善するためのコンテンツへのコンテンツ内容の変更、コンテンツの削除・使用制限、アイコンの修正といった修正を提供プログラムに行うことでユーザの負荷を減らし、継続意欲を減退を抑制することができる。
【0022】
(第三の実施例)
本実施例では実施例1および実施例2とストレスレベルの測定をする点、制御プログラムによって提供プログラム(ワーク、コンテンツ)を提供する点や一覧としてワーク(コンテンツ)を提供する点は同様に制御されて実施される。本実施例では提供プログラムやワーク、コンテンツに修正、変更等を行うことではなく、それらの提供手段に変更を加える点が異なっている。そこで、この点についてのみ次から説明する。ストレスレベルが高い場合に、表示装置の輝度が高いとユーザがストレスを感じることがある。本実施例はこのストレスを解消することを目的としている。
スマートフォン等の表示装置103は一般的に外光の光量に比べて高輝度であると表示画像の視認性が高くなるのでそのような状態が保たれるように制御装置101によって自動的に維持されている。ここで、本実施例に従う制御装置101は、制御プログラムによって、前記ストレスレベルが判定されると、例えば、ストレスレベルAの場合は通常道理の輝度で提供プログラムや一覧表示のワーク(コンテンツ)の表示を行うように制御し、ストレスレベルBの場合は、輝度を3%落とした表示を行うように制御し、ストレスレベルCの場合は、輝度をさらに3%、ストレスレベルDの場合は、輝度をさらに3%落とした表示を行うように制御する。この変化させる光量の幅は一例にすぎず、適宜調整されるが、外光の輝度より低くするとユーザが画面を認識しずらくなり、ストレスを増加させる結果となるので、変更される輝度の下限は外光の輝度と同じか、近傍になるように設定すると都合がよい。
【0023】
本実施例では輝度を例として説明したが、これに限られず、色調を柔らかいものとする(たとえば、色を白っぽくするなど)、ドットピッチを変えて情報量を少なくする、出力手段として表示装置の制御だけでなく、動画や音声の再生速度や、音声の周波数を変更することもできる。また、前述のようにコンテンツへの修正とこの出力方法への修正を組み合わせることもできる。
【0024】
上述の実施例では、ユーザの状態としてバイタルデータを例示してきたがそのほかの身体的な状態、たとえば、めまいの状態、頭痛の状態といった状態を用いても良く、デバイスによる測定結果だけでなく、主観的なユーザの状態の入力などを用いても良い。
【符号の説明】
【0025】
100 ヘルスケアシステム
101 制御装置
102 記憶装置
103 表示装置
104 入力装置
105 通信装置
106 測定装置
110 ユーザの情報処理端末
116 測定装置
120 ネットワーク
【要約】
【課題】ヘルスケアシステムおよびその方法を提供する。
【解決手段】
利用者のバイタルデータを取得するデバイスと、
制御プログラムとメンタルヘルスのセルフケア/維持/改善/治療用の提供プログラムを記憶する記憶装置と、
制御プログラムによって、システムの動作を制御する制御部と、
を含むヘルスケアシステムであって、
前記デバイスからのバイタルデータから利用者のストレスレベルを導出し、
前記ストレスレベルに応じて、出力装置からの前記提供プログラムの出力方法、あるいは、前記提供プログラムの変更、を行うことを特徴とするヘルスケアシステム。
【選択図】
図1