(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】測量方法、測量システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
G01C15/00 105Z
(21)【出願番号】P 2020044481
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】一里山 海洋
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮介
(72)【発明者】
【氏名】西 義弘
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 基広
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭佑
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-43088(JP,A)
【文献】特開2006-3206(JP,A)
【文献】特開2019-219195(JP,A)
【文献】実開平5-28925(JP,U)
【文献】特開2005-214630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の位置座標を取得可能に構成され、通信部を備える位置取得装置と、
前記位置取得装置と通信可能な端末通信部、端末表示部、端末操作部および端末制御部を備える携帯端末とを用いる測量方法であって、
(a)前記端末制御部が、路線の中心線上に所定の間隔で設定された複数の中心点と、各中心点を通り前記中心線に直交する横断面上に設定された複数の測定点とを備える3次元設計データを読み込
んで前記端末表示部に表示するステップと、
(b)前記端末制御部が、前記3次元設計データにおいて観測の進行方向を
横断方向または路線方向に設定するステップと、
(c)前記端末制御部が、前記3次元設計データにおいて第1の測定点を設定するステップと、
(d)前記端末制御部が、前記位置取得装置に前記作業者の位置座標を取得させるステップと、
(e)前記端末制御部が、前記作業者を前記第1の測定点まで誘導するステップと、
(f)前記端末制御部が、前記位置取得装置に前記第1の測定点における前記作業者の位置座標を取得させるステップと、
(g)前記端末制御部が、
前記作業者の現在位置から、前記
設定された観測の進行方向に最も近い
未測定の測定点を第2の測定点に設定するステップと、
(h)前記端末制御部が、前記作業者を前記第2の測定点まで誘導するステップ
と、
(i)その後、前記
第1の測定点を前記第2の測定点に、前記第2の測定点を第3の測定点というように、順次次の測定点を更に次の測定点に読み替えながら前記ステップ(f)~前記ステップ(h)を繰り返して
、前記作業者を残りの測定点に誘導する
ステップとを備え、
前記観測の進行方向における横断方向とは、開始点から横断面に沿って最も近い点の方向へ進行し、横断面上の点を全て測定すると最も近い横断面に移動して横断面に沿って進行することを繰り返す一連の観測方向であり、前記観測の進行方向における路線方向とは、開始点から路線に沿って最も近い点の方向へ進行し、同一線上の構成点を全て測定すると、同一横断面に沿って最も近い点に移動して路線に沿って進行することを繰り返す一連の観測方向であり、
観測の途中において、前記作業者が、前記3次元設計データと共に前記端末表示部に表示される誘導点切替ボタンを押すことにより、前記観測の進行方向に関わらず、作業者の現在位置から最も近い測定点を第1の測定点として設定し、前記ステップ(d)~前記ステップ(i)を実行することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)において、前記作業者が前記3次元設計データと共に前記端末表示部に表示される進行方向切替ボタンを押すことにより、前記観測の進行方向が設定可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
観測の途中において、前記作業者が前記3次元設計データと共に前記端末表示部に表示される進行方向切替ボタンを押すことにより、前記観測の進行方向が随時切替可能となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)は、前記ステップ(d)の後に実行され、
前記ステップ(c)において、前記端末制御部は、前記ステップ(d)で位置座標を取得した前記作業者から最も近い点を、前記第1の測定点として設定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記位置取得装置は、
前記作業者に保持されるように構成されたターゲットと、
測距光を前記ターゲットに送光し、前記ターゲットからの反射光を受光して、前記ターゲットを測距および測角するように構成された測量機であり、
前記端末制御部は、前記作業者に保持された前記ターゲットを測距および測角することにより得られる測定データに基づいて、前記作業者の位置座標を取得することを特徴とする請求項1
~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記測量機は、2色のガイド光を発光し、前記測量機の視準軸に対して水平方向を識別可能とするとともに、前記測量機の視準軸に対して視準軸方向の位置を識別可能とするガイド光照射部を備え、
前記ステップ(e)および前記ステップ(h)において、
前記端末制御部が、前記測量機に視準軸が誘導先である前記第1の測定点または前記第2の測定点を視準させ、前記測量機に前記ガイド光照射部を駆動させることにより行うことを特徴とする請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記位置取得装置は、
前記作業者に保持されるように構成され、航法信号に基づいて、
自位置を取得可能なGNSS装置であることを特徴とする請求項1
~4いずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(e)および前記ステップ(h)において、
前記端末制御部が、前記位置取得装置に前記作業者の位置座標を取得させ、
前記端末制御部が、前記作業者から誘導先である前記第1の測定点または前記第2の測定点までの距離および方向を計算し、
前記端末制御部が、前記端末表示部に、前記距離および前記方向に応じたコンパス表示を表示することを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
作業者の位置座標を取得可能に構成され、通信部を備える位置取得装置と、
前記位置取得装置と通信可能な端末通信部、端末操作部、端末表示部および端末制御部を備える携帯端末とを備え、
前記端末制御部が、
路線の中心線上に所定の間隔で設定された複数の中心点と、各中心点を通り前記中心線に直交する横断面上に設定された複数の測定点とを備える3次元設計データを読み込
んで前記端末表示部に表示し、前記3次元設計データにおいて観測の進行方向を
横断方向または路線方向に設定し、
前記3次元設計データにおいて第1の測定点を設定し、
既知点に設置された前記位置取得装置に、前記作業者の位置座標を取得させ、
前記作業者を前記第1の測定点まで誘導し、
前記位置取得装置に、前記第1の測定点における前記作業者の位置座標を取得させ、
前記作業者の
現在位置から前記
設定された観測の進行方向に最も近い
未測定の測定点を第2の測定点に設定し、
前記作業者を前記第2の測定点まで誘導
し、
その後、第2の測定点における前記作業者の位置座標の取得、次の測定点の設定および該次の測定点への前記作業者の誘導を、順次次の測定点を更に次の測定点に読み替えながら繰り返して残りの測定点の観測を実行するように構成
され、
前記観測の進行方向における横断方向とは、開始点から横断面に沿って最も近い点の方向へ進行し、横断面上の点を全て測定すると最も近い横断面に移動して横断面に沿って進行することを繰り返す一連の観測方向であり、前記観測の進行方向における路線方向とは、開始点から路線に沿って最も近い点の方向進行し、同一線上の構成点を全て測定すると、同一横断面に沿って最も近い点に移動して路線に沿って進行することを繰り返す一連の観測方向であり、
観測の途中において、前記作業者が、前記3次元設計データと共に前記端末表示部に表示される誘導点切替ボタンを押すことにより、前記観測の進行方向に関わらず、作業者の現在位置から最も近い測定点を第1の測定点として設定するようになっていることを特徴とする測量システム。
【請求項10】
作業者の位置座標を取得可能に構成され、通信部を備える位置取得装置と通信可能な端末通信部と、端末表示部と、端末操作部と、端末制御部とを備えるコンピュータ端末に、
(
j)前記端末制御部が、路線の中心線上に所定の間隔で設定された複数の中心点と、各中心点を通り前記中心線に直交する横断面上に設定された複数の測定点とを備える3次元設計データを読み込
んで前記端末表示部に表示するステップと、
(
k)前記端末制御部が、前記3次元設計データにおいて観測の進行方向を
横断方向または路線方向に設定するステップと、
(
l)前記端末制御部が、前記3次元設計データにおいて第1の測定点を設定するステップと、
(
m)前記端末制御部が、前記位置取得装置に、前記作業者の位置座標を取得するステップと、
(
n)前記端末制御部が、前記作業者を前記第1の測定点まで誘導するステップと、
(
o)前記端末制御部が、前記位置取得装置に前記第1の測定点における前記作業者の位置座標を取得するステップと、
(
p)前記端末制御部が、
前記作業者の現在位置から、前記設定された観測の進行方向に最も近い
未測定の測定点を第2の測定点に設定するステップと、
(
q)前記端末制御部が
、前記作業者を前記第2の測定点まで誘導するステップと、
(
r)その後、前記
第1の測定点を前記第2の測定点に、前記第2の測定点を第3の測定点というように、順次次の測定点を更に次の測定点に読み替えながら前記ステップ(
l)~前記ステップ(
q)を繰り返して
、前記作業者を残りの測定点
に誘導するステップを実行させるためのプログラム
であって、
前記観測の進行方向における横断方向とは、開始点から横断面に沿って最も近い点の方向へ進行し、横断面上の点を全て測定すると最も近い横断面に移動して横断面に沿って進行することを繰り返す一連の観測方向であり、前記観測の進行方向における路線方向とは、開始点から路線に沿って最も近い点の方向へ進行し、同一線上の構成点を全て測定すると、同一横断面に沿って最も近い点に移動して路線に沿って進行することを繰り返す一連の観測方向であり、
前記端末制御部に、観測の途中において、前記作業者が前記3次元設計データと共に前記端末表示部に表示される誘導点切替ボタンを押すことにより、前記観測の進行方向に関わらず、作業者の現在位置から最も近い測定点を第1の測定点として設定し、前記ステップ(m)~前記ステップ(r)を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
作業者の位置座標を取得可能に構成されるとともに通信部を備える位置取得装置と通信可能な端末通信部と、端末操作部と、端末表示部と、端末制御部とを備える携帯端末であって、
前記端末制御部が、
路線の中心線上に所定の間隔で設定された複数の中心点と、各中心点を通り前記中心線に直交する横断面上に設定された複数の測定点とを備える3次元設計データを読み込んで前記端末表示部に表示し、前記3次元設計データにおいて観測の進行方向を横断方向または路線方向に設定し、
前記3次元設計データにおいて第1の測定点を設定し、
既知点に設置された前記位置取得装置に、前記作業者の位置座標を取得させ、
前記作業者を前記第1の測定点まで誘導し、
前記位置取得装置に、前記第1の測定点における前記作業者の位置座標を取得させ、
前記作業者の現在位置から前記設定された観測の進行方向に最も近い未測定の測定点を第2の測定点に設定し、
前記作業者を前記第2の測定点まで誘導し、
その後、第2の測定点における前記作業者の位置座標の取得、次の測定点の設定および該次の測定点への前記作業者の誘導を、順次次の測定点を更に次の測定点に読み替えながら繰り返して、残りの測定点の観測を実行するように構成され、
前記観測の進行方向における横断方向とは、開始点から横断面に沿って最も近い点の方向へ進行し、横断面上の点を全て測定すると最も近い横断面に移動して横断面に沿って進行することを繰り返す一連の観測方向であり、前記観測の進行方向における路線方向とは、開始点から路線に沿って最も近い点の方向へ進行し、同一線上の構成点を全て測定すると、同一横断面に沿って最も近い点に移動して路線に沿って進行することを繰り返す一連の観測方向であり、
観測の途中において、前記作業者が、前記3次元設計データと共に前記端末表示部に表示される誘導点切替ボタンを押すことにより、前記観測の進行方向に関わらず、前記作業者の現在位置から最も近い測定点を前記第1の測定点として設定するようになっていることを特徴とする携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量方法、測量システム、およびプログラムに関し、より詳細には、路線建設に係る路線測設および管理断面出来形観測のための測量方法、測量システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路等の路線を建設する場合、まず、中心線測量、横断測量等の路線測量を行い、路線測量の結果に基づいて、3次元設計データを作成する。3次元設計データには、中心線上に所定の間隔で設定した中心点、道路幅を示す構成点、中心線に直交する断面上の地形の変化点である構成点が設定されている。現場では、指定された中心点、構成点に杭や鋲などを設置する路線測設を行い、これを基準として、切土、盛土等の作業を行う。また、路線の建設後には、出来形確認のため、指定された中心点、構成点を測定する管理断面出来形観測を行う。
【0003】
近年、横断測量や管理断面出来形観測には、一般的にトータルステーション等の光波装置や、GNSS装置が用いられる。特許文献1には、トータルステーションによる測量を行う際、3次元設計データを、PDA(Personal・Digital・Assistant)等の携帯端末に読み込ませ、測量データの収集や測量補助者の誘導を行う測量システムが開示されている。
【0004】
さらに、非特許文献1には、路線の中心線、中心点を設定した3次元設計データを測量機と通信可能な携帯端末に読み込ませ、トータルステーションおよびターゲットを組み合わせて、路線測設や管理断面出来形観測の実行を支援する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-82895号公報
【文献】実開平5-28925号公報
【文献】特開2019-178983号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】株式会社トプコン データコレクター FC-500 監督さん.V取扱説明書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1の方法では、作業者は、測定の開始時に、携帯端末から測定する断面を選択し、断面における中心点からの左右のオフセット値を設定し、1点ごとに観測を進めるようになっている。
図1を参照して説明する。なお、
図1において、CLは中心線を、P1
CL,P2
CL,・・・は中心点(杭)を、No.1,No.2,…は、それぞれ中心点(杭)P1
CL,P2
CL,…における横断面を、P1
1,P1
2,…は、構成点を示し、P1
1,P1
2,…は、横断面No.1上の構成点を,P2
1,P2
2,…は、横断面No.2上の構成点を示す。
【0008】
例えば、
図1(A-1)の現場を、点P1
1から観測すると仮定する。作業者Oは、まず、携帯端末から断面No.1を選択し、左のオフセット値(
中心点からの支距)として、点P1
1,点P
1
CL間の距離を入力して設定する。次に、測量機で、ターゲットを追尾させながら、作業者Oは、携帯端末の表示部に表示される誘導表示に従って、点P1
1に移動する。そして、
図1(A-2)に示すように、ターゲットを点P1
1に設置し、携帯端末から測量機にターゲットを測定させる。測定データは携帯端末に入力される。その後、矢印Aで示すように、P1
2→P1
CL→・・・を順次移動しながら測定する。この時、点を移動するごとに、作業者Oが、携帯端末から断面とオフセット値を設定し直す必要があり作業が煩雑であった。
【0009】
また、
図1(B-1)のように、断面に高低差がある地形の場合、断面毎に測定すると、作業者Oは上下の移動を繰り返す必要があり効率が悪い。そこで、
図1(B-2)に矢印Bで示すように、同じ高さの測定点をP1
1→P2
1→P3
1→・・・の順序で観測作業を進めることが好ましい。しかし、この場合も、断面を移動する毎に、携帯端末で断面とオフセット値を設定し直す必要があり、作業が煩雑であった。
【0010】
本発明は、係る事情を鑑みてなされたものであり、路線測設または管理断面出来形観測において、簡易な操作で、地形に合わせた効率的な観測を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る測量方法は、作業者の位置座標を取得可能に構成され、通信部を備える位置取得装置と、前記位置取得装置と通信可能な端末通信部、端末表示部、端末操作部および端末制御部を備える携帯端末とを用いる測量方法であって、(a)前記端末制御部が、路線の中心線上に所定の間隔で設定された複数の中心点と、各中心点を通り前記中心線に直交する横断面上に設定された複数の測定点とを備える3次元設計データを読み込むステップと、(b)前記端末制御部が、前記3次元設計データにおいて観測の進行方向を設定するステップと、(c)前記端末制御部が、前記3次元設計データにおいて第1の測定点を設定するステップと、(d)前記端末制御部が、前記位置取得装置に前記作業者の位置座標を取得させるステップと、(e)前記端末制御部が、前記作業者を前記第1の測定点まで誘導するステップと、(f)前記端末制御部が、前記位置取得装置に前記第1の測定点における前記作業者の位置座標を取得させるステップと、(g)前記端末制御部が、前記第1の測定点から前記進行方向に最も近い点を第2の測定点に設定するステップと、(h)前記端末制御部が、前記作業者を前記第2の測定点まで誘導するステップとを備え、その後、前記ステップ(f)~前記ステップ(h)を繰り返して、順次作業者を残りの測定点に誘導する。
【0012】
上記態様において、前記ステップ(c)は、前記ステップ(d)の後に実行され、前記ステップ(c)において、前記端末制御部は、前記ステップ(d)で位置座標を取得した前記作業者から最も近い点を、前記第1の測定点として設定することも好ましい。
【0013】
また、上記態様において、前記位置取得装置は、前記作業者に保持されるように構成されたターゲットと、測距光を前記ターゲットに送光し、前記ターゲットからの反射光を受光して、前記ターゲットを測距および測角するように構成された測量機であり、前記端末制御部は、前記作業者に保持された前記ターゲットを測距および測角することにより得られる測定データに基づいて、前記作業者の位置座標を取得することも好ましい。
【0014】
また、上記態様において、前記測量機は、2色のガイド光を発光し、前記測量機の視準軸に対して水平方向を識別可能とするとともに、前記測量機の視準軸に対して視準軸方向の位置を識別可能とするガイド光照射部を備え、ステップ(e)およびステップ(h)において、前記端末制御部が、前記測量機に視準軸が誘導先である前記第1の測定点または前記第2の測定点を視準させ、前記測量機に前記ガイド光照射部を駆動させることにより行うことも好ましい。
【0015】
また、上記態様において、前記位置取得装置は、前記作業者に保持されるように構成され、航法信号に基づいて、自位値を取得可能なGNSS装置であることも好ましい。
【0016】
また、上記態様において、前記ステップ(e)および前記ステップ(h)において、前記端末制御部が、前記位置取得装置に前記作業者の位置座標を取得させ、前記端末制御部が、前記作業者から誘導先である前記第1の測定点または前記第2の測定点までの距離および方向を計算し、前記端末制御部が、前記端末表示部に、前記距離および前記方向に応じたコンパス表示を表示することも好ましい。
【0017】
また、本発明の別の態様に係る測量システムは、作業者の位置座標を取得可能に構成され、通信部を備える位置取得装置と、前記位置取得装置と通信可能な端末通信部、端末操作部、端末表示部および端末制御部を備える携帯端末とを備え、前記端末制御部が、路線の中心線上に所定の間隔で設定された複数の中心点と、各中心点を通り前記中心線に直交する横断面上に設定された複数の測定点とを備える3次元設計データを読み込み、前記3次元設計データにおいて観測の進行方向を設定し、前記3次元設計データにおいて第1の測定点を設定し、既知点に設置された前記位置取得装置に、前記作業者の位置座標を取得させ、前記作業者を前記第1の測定点まで誘導し,前記位置取得装置に、前記第1の測定点における前記作業者の位置座標を取得させ、前記第1の測定点から前記進行方向に最も近い点を第2の測定点に設定し、前記作業者を前記第2の測定点まで誘導するように構成されている。
【0018】
また、本発明の別の態様に係るプログラムは、作業者の位置座標を取得可能に構成され、通信部を備える位置取得装置と通信可能な端末通信部と、端末表示部と、端末操作部と、端末制御部とを備えるコンピュータ端末に、(i)前記端末制御部が、路線の中心線上に所定の間隔で設定された複数の中心点と、各中心点を通り前記中心線に直交する横断面上に設定された複数の測定点とを備える3次元設計データを読み込むステップと、(j)前記端末制御部が、前記3次元設計データにおいて観測の進行方向を設定するステップと、(k)前記端末制御部が、前記3次元設計データにおいて第1の測定点を設定するステップと、(l)前記端末制御部が、前記位置取得装置に、作業者の位置座標を取得するステップと、(m)前記端末制御部が、前記作業者を前記第1の測定点まで誘導するステップと、(n)前記端末制御部が、前記位置取得装置に前記第1の測定点における作業者の位置座標を取得するステップと、(o)前記端末制御部が、前記第1の測定点から前記進行方向に最も近い点を第2の測定点に設定するステップと、(p)前記端末制御部が、前記ターゲットを保持する作業者を前記第2の測定点まで誘導するステップと、(q)その後、前記ステップ(f)~前記ステップ(h)を繰り返して、順次作業者を残りの測定点へと誘導するステップを実行させるものである。
【発明の効果】
【0019】
上記態様に係る測量方法、測量システム、およびプログラムによれば、開始点と、進行方向の設定という簡単な操作を行うだけで、作業者を順次、次の測定点へと誘導し、地形に合わせた効率的な横断測量または管理断面出来形観測を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A-1)は、高低差が小さい現場の3次元設計データを模式的に示す図であり、(A-2)は、従来の観測方法を説明する図である。(B-1)は、高低差の大きい現場の3次元設計データを模式的に示す図であり、(B-2)は、好ましい観測方法を説明する図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る測量システムの全体概略図である。
【
図4】同測量システムを用いる測量方法に用いる3次元設計データの一例を示す図である。
【
図5】同測量システムを用いる測量方法1における携帯端末の処理のフローチャートである。
【
図6】同測量システムの携帯端末の表示の例を示す図である。
【
図7】同測量方法における観測方向の設定を説明する図である。
【
図8】同測量方法におけるターゲットの測定の詳細のフローチャートである。
【
図9】同測量方法における誘導表示の例を示す図である。
【
図10】同測量
システムを用い
る測量方法2における携帯端末の処理のフローチャートである。
【
図11】(A)~(C)は、上記測量方法2の利用の一例を説明する図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態に係る測量システムの構成ブロック図である。
【
図13】同測量システムを用いた測量方法におけるターゲットの測定のフローチャートである。
【
図14】本発明の第3の実施の形態に係る測量システムの構成ブロック図である。
【
図15】本発明の第4の実施の形態に係る測量システムの外観概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施の形態において、同一の機能および構成を有する部材には、同一の符号を付し、対応する機能を有する部材には、同一の名称を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0022】
(第1の実施形態)
(システムの全体構成)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る測量システム(以下、単に「システム」という。)100の全体概略図であり、
図3は、システム100の構成ブロック図である。システム100は、位置取得装置30と、携帯端末50とを備える。
【0023】
(位置取得装置30の構成)
位置取得装置30は、測量機10とターゲット40とで構成されている。
測量機10は、トータルステーション(電子式測距測角儀)である。測量機10は、三脚2を介して、既知点に設置される。なお、本明細書において、「測量機を既知点に設置する」とは、「座標既知の点に設置すること」のみならず、測量機10を設置した後、例えば後方交会法等により座標既知とすることも含む。また、測量機10の座標データは、携帯端末50に入力され、端末記憶部53に格納される。
【0024】
測量機10は、外観上、整準部3の上に設けられた基盤部5と、基盤部5の上で軸H-H周りに水平回転する托架部7と、托架部7に軸V-V周りに鉛直回転する望遠鏡9と、を有する。托架部7には、後述する制御演算部23が収容されている。
【0025】
測量機10は、自動視準機能および自動追尾機能を備え、望遠鏡9に、図示しない測距光学系および追尾光学系が収容されている。測距光学系および追尾光学系の構成は、従来公知である。測量機10では、托架部7の水平回転と、望遠鏡9の鉛直回転の協働により測距光および追尾光が全周にわたって照射される。
【0026】
図3に示すように、測量機10は、測距部11、追尾部12、水平回転駆動部13、鉛直回転駆動部14、水平角検出器15、鉛直角検出器16、通信部17、チルトセンサ18、記憶部19、操作部21、表示部22、および制御演算部23を備える。
【0027】
測距部11は、上記測距光学系を用いて測距光を出射し、ターゲット40からの反射光を受光して、自動視準およびターゲット40を測距する。
【0028】
追尾部12は、上記追尾光学系を用いて追尾光を出射し、ターゲット40からの反射光からターゲット40の位置を捕捉して、ターゲット40が移動した場合にターゲット40を自動追尾する。
【0029】
水平回転駆動部13は、基盤部5に設けられたモータである。水平回転駆動部13は、基盤部5に対して托架部7を軸H-H周りに回転する。鉛直回転駆動部14は、托架部7に設けられたモータである、鉛直回転駆動部14は、望遠鏡9を軸V-V周りに回転する。
【0030】
水平角検出器15、鉛直角検出器16は、ロータリエンコーダである。水平角検出器15は、托架部7の軸H-H周りの角度を検出し、鉛直角検出器16は、望遠鏡9の軸V-V周りの角度を検出する。この結果、水平角検出器15と鉛直角検出器16が、ターゲット40を測角する測角部を構成する。
【0031】
通信部17は、測量機10と携帯端末50を有線または無線で接続する通信制御装置である。通信部17を実現する通信規格として、無線LAN規格の一つであるWi-Fi(登録商標)や4G(第4世代移動通信システム)を採用してもよい。あるいはBluetooth(登録商標)、赤外線通信等の近距離無線通信規格を採用してもよい。
【0032】
チルトセンサ18は、気泡管式、静電容量式等の傾斜センサであり、基盤部5の回転軸(図示せず)の上面に固定されている。水平回転駆動部13の回転軸が1回ずつ正反回転したときのチルトセンサ18の値が読み取られ、正反回転でのずれ量に基づき、整準部3の水平が調整される。
【0033】
記憶部19は、情報を制御演算部23が処理可能な形式で記憶、保存及び伝達する記憶媒体であり、例えば、HDD(Hard・Disc・Drive)、フラッシュメモリ等が採用される。記憶部19には、測定した測量データと、各種処理のためのプログラムが格納される。
【0034】
操作部21は、托架部7の外面に設けられた複数のボタンである。操作部21を介して、測量機10の動作に関する各種情報が入力可能である。
【0035】
表示部22は、托架部7の外面に設けられた液晶ディスプレイであり、測量に関する各種情報を表示する。
【0036】
制御演算部23は、CPU(Central・Processing・Unit)、ROM(Read・Only・Memory),RAM(Randam・Access・Memory)等を集積回路に実装したマイクロコンピュータである。制御演算部23は、測量機10の各部と接続されている。制御演算部23は、測量機10の各種機能を実行するためのプログラムを、記憶部19またはRAMから読み出して、測量機10の各部を制御して、自動追尾、測距、測角等各種機能を実行する。また、測距、測角等により得られたデータに演算処理を行う。また、通信部17を介して、携帯端末50と通信し、携帯端末50の命令に従って処理を実行し、携帯端末50にデータを送信する。
【0037】
ターゲット40は、複数の三角錐状のプリズムを放射状に組み合わせて構成された、いわゆる全方位プリズムであるが、これに限定されない。ターゲット40は、入射光を、入射方向と反対の方向に反射する。
【0038】
ターゲット40は、中心O1までの長さH1が既知の支持部材41を備える。支持部材41は、図示しない水準器を備え、鉛直に設置できるようになっている。支持部材41を介して測定点に鉛直に設置したターゲット40を、既知点に設置した測量機10で測距・測角することにより、中心O1の3次元座標を求めることができる。また、長さH1を用いて、設置点P1の3次元座標を求めることができる。
【0039】
(携帯端末50の構成)
携帯端末50は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、PDA、データコレクタ等の、いわゆるコンピュータ端末である。
【0040】
携帯端末50は、端末表示部51、端末操作部52、端末記憶部53、端末通信部54および端末制御部55を備える。
【0041】
端末表示部51は、端末操作部52と一体に構成されたタッチパネル式の液晶ディスプレイであるが、端末表示部51と端末操作部52が、別個に設けられていてもよい。端末表示部51は、作業内容に応じた画面を表示し、各画面は作業内容に応じて切り替えられるようになっている。
【0042】
端末記憶部53は、例えばHDDである。端末記憶部53には、通信プログラム、表示部に作業内容等、通信内容等を表示するための画像表示プログラム、横断測量、管理断面出来形観測を実行するための各種プログラム等が記憶されている。
【0043】
また、端末記憶部53には、測量機10の座標、ターゲット40の高さ等の測量に関する各種情報が記憶される。また、測量機10から受信した、測距データ、測角データが記憶される。
【0044】
端末通信部54は、測量機10の通信部17を介して、測量機10と無線通信可能とする通信制御装置であり、通信部17と同じ通信規格を有する。
【0045】
端末制御部55は、少なくともCPU及びメモリ(ROM,RAM)等を備える制御ユニットである。端末制御部55は、端末通信部54、端末操作部52等からの入力信号に基づいて、携帯端末50および測量機10を制御する。端末制御部55は、RAMに、端末記憶部53に記憶された、後述する測量方法を実行するためのプログラムを呼び出して実行する。
【0046】
(測量方法1)
次に、システム100を用いた測量方法1について説明する。
図4は、例として説明する作業範囲の3次元設計データである。
図5は、測量方法1を実施する際の携帯端末50の処理のフローチャートである。
図6は、端末表示部51に表示される画面の例である。
【0047】
まず、
図4に示すような、路線の中心線CL上に所定の間隔で設定された複数の中心点P1
CL,P2
CL,…と、各中心点を通り前記中心線に直交する横断面No.1,No.2,…上に設定された複数の測定点P1
1,P1
2,…,P2
1,P2
2,…とを備える3次元設計データを用意する。
【0048】
次に、現場において、測量機10を、作業範囲全体を見通せる既知点に設置する。
【0049】
そして、作業者は、測量機10の自動追尾機能をONにして、ターゲット40と、携帯端末50を持って観測を開始する。これにより、測量機10は、作業中、作業者が保持するターゲット40を自動追尾し続ける。
【0050】
観測を開始すると、まず、ステップS01で、端末制御部55は、3次元設計データを読み込む。3次元設計データは、予め端末記憶部53に保存しておいてもよく、測量機10から受信してもよい。3次元設計データ61は、
図6(A)に示すように、端末表示部51に表示される。また、端末表示部51には、断面
図62,選択されている観測の進行方向示す進行方向切替ボタン63(63a,63b)等種々の情報が表示される。また、符号64は、ターゲットの現在位置マークを示す。
【0051】
次に、ステップS02で、作業者が、端末表示部51および端末操作部52から、進行方向切替ボタン63を押すことで、横断方向63aと路線方向63bを切り替えて、進行方向を入力する。これにより、端末制御部55は選択された進行方向を設定する。
【0052】
横断方向を選択すると、
図7(A)に示すように、次のステップS
03で設定する第1の測定点である開始点(例えば断面No.1の点P1
CL)から、横断方向に向かって最も近い点から順に進行し、断面上の点を全て測定すると、最も近い断面(No.2)に移動し、これを繰り返す。
【0053】
一方、路線方向を選択すると、
図7(B)に示すように、次のステップS
03で設定する開始点(例えば断面No.1の点P1
1)から、断面をまたいで測定が進行し、最も近い構成点(ここでは、点P2
1)に移動する。そして、路線方向に向かって最も近い点から順に進行し、同一線上の構成点を全て測定すると、同一断面の横断方向に最も近い点に移動し、さらに路線方向に逆方向に進行する。
【0054】
作業者は、現場の地形や状況から、効率よく作業することができる方向を判断し、選択することができる。ここでは横断方向を設定したと仮定する。
【0055】
次に、ステップS03で、作業者が端末表示部51および端末操作部52から、任意の点を選択することにより第1の測定点として開始点(例えばP1CL,以下同じ)を指定する。端末制御部55はこれに応じて、開始点を設定し、端末表示部51に次の測定点マーク65を表示する。
【0056】
次に、ステップS04で、携帯端末50は、測量機10に作業者の位置座標を取得させる。ターゲットの40の位置座標は、作業者の位置座標として扱うことができる。
【0057】
図8は、ステップS04の詳細なフローチャートである。位置座標の取得を開始すると、ステップS41で、端末制御部55は、測量機10にターゲット40の測定命令を送信する。ステップS42で、測量機10が命令を受信すると、ステップS43で、命令に応じて追尾中のターゲット40を測定(測距、測角)する。次に、ステップS44で、測量機10は、測定データを携帯端末50に送信し、ステップS45で、携帯端末50は、測定データを受信して、端末記憶部53に記憶する。
【0058】
次に、ステップS46で、端末制御部55が、測定データから、ターゲット40の位置座標を算出して取得する。あるいは、測量機10の制御演算部23に、測距、測角データからターゲット40の位置座標を算出させて、測定データとして、携帯端末50に送信させ、携帯端末50が、測定データを受信してターゲット40の位置座標を取得する。
【0059】
なお、システム100において、携帯端末50がターゲット40の位置座標を取得すると、端末表示部51は、現在位置マーク64を更新する。
【0060】
次に、ステップS05で、携帯端末50は、ステップS03で設定した開始点(次の測定点)まで、作業者を誘導する。
【0061】
作業者の誘導は、端末表示部51に、
図9に示す、誘導のためのコンパス表示66を表示することにより行う。具体的には、誘導を開始すると、携帯端末50は、ステップS04の動作を常時繰り返して、測量機10にターゲットを測距・測角させてターゲットの位置座標をモニターする。
【0062】
次に、端末制御部55は、取得した位置座標毎に、開始点(次の測定点)とターゲット40の現在位置との距離Dおよびターゲット40から開始点の方向を算出する。距離Dが所定の上限値(例えば、3m)以上の場合、端末制御部55は、端末表示部51に、第1のコンパス表示66を表示させる。第1のコンパス表示66は、例えば、コンパスを示す赤い丸の中に、開始点に向かう方向を示す。これにより、作業者は、ターゲット40を保持しながら、第1のコンパス表示66に従って移動するだけで、設定した開始点に近づくことができる。
【0063】
そして、距離Dが所定の下限値(例えば0.5m)以上かつ所定の上限値(例えば、3m)未満である場合、端末表示部51に、第2のコンパス表示66を表示する。第2のコンパス表示66は、例えばコンパスを示す赤い丸の中に、開始点に向かう方向を示す矢印と、その方向ごとの距離値を示す。これにより、作業者は、距離の意識を明確にした状態で、行きすぎたりすることなく、的確に開始点に近づくことができる。
【0064】
そして、距離Dが所定の下限値(例えば0.5m)未満となったときに、端末制御部55は、端末表示部51に、第3のコンパス表示66を表示する。第3のコンパス表示66は、例えば緑色線の二重丸であり、誘導が完了したOK状態を示す。作業者は、ターゲット40を保持して現在位置から次の測定点(開始点)に移動し、開始点にターゲット40を設置する。
【0065】
図6(D)は、端末表示部51に、3次元設計データ61と共に表示されたコンパス表示66を示す。このように現場を示す3次元設計データ61に重ねて、現在位置マーク64、次の測定点マーク65およびコンパス表示66が表示される。これにより、作業者は、現在位置、誘導先および移動すべき方向を直観的に理解して円滑に次の測定点まで移動することができる。3次元設計データ61およびコンパス表示66は、例えば、携帯端末50に内蔵される電子コンパス(図示せず)の検出結果に基づいて、携帯端末50の向きに応じて表示されるようになっている。
【0066】
誘導が完了すると、端末制御部55は、ステップS06で、ステップS04と同様にして、測量機10に、次の測定点P1
CLにおける作業者の現在位置として、測定点P1
1に設置したターゲット40を測距および測角させて、ターゲット40の位置座標(すなわち、測定点P
CLにおける作業者の位置座標)を取得する。取得した位置座標は、端末記憶部53に記憶される。
そして、端末制御部55は、3次元設計データの測定点のポイント表示を、例えば、白抜き丸から色付きの丸というように変更する(
図6(B),(C)参照)。これにより、作業者は、観測の進捗状況を一見して把握することができるので利便性が向上する。
【0067】
次に、ステップS07で、端末制御部55は、作業範囲において未測定の測定点(次の測定点)があるか否かを判断する。
【0068】
未測定の測定点がある場合(Yes)、ステップS08で、端末制御部55は、ターゲット40の現在位置、すなわち点P1CLから観測の進行方向である横断方向に、最も近い未測定の測定点(点P12)を、次の測定点(第2の測定点)として設定する。具体的には、端末制御部55が、観測の進行方向に作業者の現在位置に近接する測定点を抽出し、それぞれの測定点と作業者の現在位置との距離を算出し、その距離が最も短いものを次の測定点に設定する。
【0069】
次に、ステップS09で、ステップS05と同様に、端末制御部55は、作業者をさらに次の測定点(点P12)まで誘導する。
【0070】
そして、ステップS06に戻り、ステップS07で未測定の測定点がなくなるまで、ステップS06~S09を繰り返す。一方、ステップS06で、未測定の測定点がなくなった場合(No)、観測を終了する。
【0071】
本測量方法では、作業者が、携帯端末50で、観測の進行方向と、第1の測定点である開始点を設定するだけで、携帯端末50は、作業者を第1の測定点まで誘導し、第1の測定点の測定を行う。そして、第1の測定点から、観測の進行方向に最も近い点を、第2の測定点として設定し、第2の測定点まで作業者を誘導する。したがって、作業者は、測定点ごとに、横断面を設定するという作業を行わなくてもよいので作業が簡便になる。
【0072】
また、各測定点間において、作業者は、単に携帯端末50の誘導に従って、移動していけば、効率よく次の測定点に移動することができるので、作業者の作業負担を低減し、時間的なロスを低減することができる。
【0073】
また、携帯端末50は、端末表示部51に、誘導先までの距離に応じたコンパス表示66を3次元設計データ61と合わせて表示して作業者を誘導する。これにより作業者は、目的の測定点までの距離および方向を、直観的かつ明確に認識しながら移動することができるので、作業性が向上する。
【0074】
(測量方法2)
次に、システム100を用いる測量方法2について説明する。
図10は、測量方法2を実施する際の携帯端末50の処理のフローチャートである。作業範囲等の条件は測量方法1の説明で用いたものと同じである。
【0075】
しかし、測量方法1では、作業者が端末操作部52から第1の測定点である開始点を入力することにより開始点の設定を行うのに対して、測量方法2では、作業者の現在位置を取得し、作業者の現在位置から、最も近い点を開始点として設定する。
【0076】
具体的には、ステップS11,S12で、ステップS01,S02と同様に、端末制御部55が、3次元設計データを読み込み、観測の進行方向を設定する。
【0077】
次に、ステップS13で、ステップS04と同様に、端末制御部55が、測量機10にターゲット40の測定を行わせ、ターゲット40の位置座標を作業者の位置座標として取得する。
【0078】
次に、ステップS14で、端末制御部55が、作業者の現在位置から最も近い測定点を、第1の測定点である開始点(次の測定点)として設定する。その後、ステップS16~S19で、ステップS06~S09と同様にして観測を行い、全ての測定点を観測するまで、処理を続行する。
【0079】
このように、測量方法2では、位置取得装置30に作業者の現在位置を取得させ、作業者の現在位置から最も近い測定点を開始点(第1の測定点)として自動的に設定する。そして、設定された観測の進行方向に、測定点における作業者から最も近い点を、次の測定点(第2の測定点)として設定し、順次誘導、測定を繰り返すことで、作業者は、自身の位置や、どの断面を測定中かなどを特に意識せず、誘導に従って観測を続行するだけで、効率的なルートで観測を進めることができる。
【0080】
本方法において、例えば、作業途中に、進行方向切替ボタン63(63a,63b)を押すことで、3次元設計データを保持しながら、ステップS12から開始するように構成されていてもよい。
【0081】
具体的には、
図11(A)に示すように、作業者が、測定点P1
1から誘導に従って路線方向に観測中であると仮定する。測定点P3
1を測定後、作業者Oが、重機が一時的に作業中等で作業不可能な領域に誘導されそうになった場合に、その場で、進行方向切替ボタン63を押すことで、
図11(B)に示すように、観測の進行方向を横断方向に設定し、作業者の現在位置から最も近い点P3
CLを次の測定点を設定する。その後、P3
2→P3
1→…と、横断方向に観測を続行する。上記測量方法1においても同様にすることができる。このように、観測中に観測の進行方向を随時切替可能に構成すると、無駄な待ち時間が回避できるだけでなく、煩雑な設定を行う必要なく、効率よく観測を続行することができる。
【0082】
また、本方法において、
図6に示すように、表示部に誘導点切替ボタン67を設け、誘導点切替ボタン67を押すことで、現在の3次元設計データを保持しながら、ステップS13から開始するように構成されていてもよい。具体的には、上記同様
図11(A)に示すように観測中であると仮定する。測定点P3
1を測定後、作業者Oが、作業不可能な領域に誘導されそうになった場合に、作業不可能な領域を避けるように移動して、誘導点切替ボタン67を押すことで、
図11(C)に示すように、作業者の現在位置から進行方向に関わらず最も近い点P3
CLを次の測定点に設定し、その後、点P2
CL→P1
CL→…と、路線方向に観測を続行する。
【0083】
このように、観測中に誘導点(次の測定点)を、随時設定可能に構成することにより、無駄な待ち時間が回避でき、煩雑な設定を行う必要なく、効率よく観測を続行することができる。このことは、設定された観測方向に最も近い未測定な測定点が複数ある場合や、携帯端末50が設定する次の測定点(誘導点)以外の点を次の測定点としたい場合に、特に有利である。
【0084】
なお、上記測量方法1、2は、各測定点に杭や鋲を設置することで路線測設に適用でき、各測定点を測定を行うことで路線建設後の管理断面出来形観測に適用することができる。
【0085】
(第2の実施の形態)
図12は、第2の実施の形態に係る測量システム200の構成ブロック図である。システム200は概略システム100と同様の構成を有するが、位置取得装置230の測量機210が、追尾部12を備えない点で異なる。
【0086】
システム200を用いる場合、ターゲット40を保持して、測定点を移動するターゲット側作業者と、測量機を操作する測量機側作業者の2名で観測を行う。
【0087】
システム200を用いる測量方法1および2における、携帯端末50の動作は、概略同じであるが、測量機210が、ターゲット40の自動視準を行わない点で異なる。具体的には、S04,S06,S13,S16の位置座標の取得および誘導(S05,S09,S15,S19)の処理において、測量機210にターゲット40を測距・測角させる際の動作が異なる。
【0088】
図13は、位置座標の取得および誘導の際に、位置取得装置230に作業者(ターゲット40)の位置座標を取得させるときの、システム200の動作である。
【0089】
開始すると、ステップS241で、端末制御部55は、測量機210にターゲット測定命令を送信する。同時に、端末表示部51に測定命令を送信中であることを表示し、ターゲット側作業者にも、測定命令中であることを知らせてもよい。次にステップS242で、測量機210は、命令に応じて測量機側作業者に、表示部22に、ターゲット40の測定を要求するメッセージを表示する。
【0090】
次にステップS243で、測量機側作業者は、メッセージに従って、測量機210を操作すると、ステップS244で、測量機210は、ターゲットを測距・測角する。次に、ステップS245で、測量機210は、測定データを、携帯端末50に送信する。
【0091】
そして、ステップS246で、携帯端末50が、測定データを受信すると、端末制御部55は、端末記憶部53に測定データを記憶する。次に、ステップS247で端末制御部55が、測定データから、ターゲット40の位置座標を、作業者の位置座標として算出して、取得する。
【0092】
したがって、システム200によれば、測量機210が追尾部12を備えない場合でも、2人の作業者が協働することで、システム100と同様の効果を奏することができる。
【0093】
(第3の実施の形態)
図14は、第3の実施の形態に係る測量システム300の構成ブロック図である。システム300は、システム100と概略同様の構成であるが、位置測定装置330の測量機310が、さらに、ガイド光照射部24を備える点で異なる。
【0094】
ガイド光照射部24は、測量機310の視準軸と、水平方向に合致するように測量機310に配置されている。ガイド光照射部24は、視準軸に対して左右で異なる2色のガイド光(例えば赤と緑の可視光)を発光し、前記測量機の視準軸に対して水平方向を識別可能とするとともに、前記測量機の視準軸に対して視準軸方向の位置を識別可能とするように構成されている。この結果、誘導点を設定して、ガイド光を照射することにより、作業者を所定の誘導点へ誘導することができるようになっている。このようなガイド光照射部24としては、種々の構成が公知とされており、例えば特許文献2に開示された構成を適用することができる。
【0095】
そして、ガイド光照射部24は、制御演算部23の制御により、発光が制御される。ターゲット40を保持する作業者は、ガイド光を確認しながら設定された次の測定点に移動する。
【0096】
従って、システム300を用いた測量方法1および2においては、ステップS05,S09,S15,S19に相当する作業者の誘導は、携帯端末50から測量機310に誘導先の次の測定点情報と、誘導命令とを送信し、測量機310が命令に従って、次の測定点を視準し、ガイド光照射部24を駆動して、ガイド光の照射を制御することにより行う。
【0097】
このように、作業者の誘導を、測量機310のガイド光機能により行っても、作業者は、誘導にしたがって移動していくだけで、煩雑な操作を行うことなく、地形に合わせた効率的な観測を行うことができるという第1の実施の形態と同じ効果を奏することができる。
【0098】
(第4の実施の形態)
図15は、第4の実施の形態に係る測量システム400の外観概略図、
図16は、システム400の構成ブロック図である。
【0099】
システム400は、位置取得装置430と携帯端末450とを備える。位置取得装置430は、GNSS(全地球航法衛星システム:Global・Navigation・Satelite・System)装置80である。
【0100】
図16に示すように、GNSS装置80は、GNSS受信機81および通信部83を備える。
【0101】
GNSS受信機81は、アンテナ一体型の航法信号受信装置である。GNSS受信機81は、航法衛星から発信される航法信号を受信し、航法信号の送信時刻を計測して測位を行うことで、自位置を取得可能である。GNSS受信機81は、受信した航法信号を電気信号に変換し、測位データとして後述する通信部83、端末通信部454を介して携帯端末50に出力する。
【0102】
GNSS受信機81は、既知の長さH2を有するポール状の支持部材84上端の、支持部材84に直交する面上に支持されている。作業者が支持部材84を鉛直に支持して、GNSS受信機81が水平に支持されている状態で測位を行うことにより、GNSS受信機81の基準点O2の3次元座標を取得することができる。
【0103】
GNSS受信機81を水平にするために、例えば、支持部材84に水準器を設けたり、特許文献3に開示されているように、GNSS装置80にチルトセンサを備える構成としたりすることができる。
【0104】
通信部83は、GNSS受信機81と携帯端末540を有線または無線で接続する通信制御装置である。通信部83を実現する通信規格として、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等の近距離無線通信規格を採用してもよい。あるいは、無線LAN規格の一つであるWi-Fi(登録商標)や4G(第4世代移動通信システム)を採用してもよい。
【0105】
(携帯端末450の構成)
携帯端末450は、携帯端末50と同様のコンピュータ端末である。携帯端末450は、端末表示部51、端末操作部52、端末記憶部453、端末通信部454および端末制御部455を備える。
【0106】
端末記憶部453には、GNSS装置80との通信プログラム、GNSS装置80の制御し、路線測設および管理断面出来形観測を実行するための各種プログラム、端末表示部51の表示を制御するためのプログラム等が記憶されている。また、端末記憶部453は、GNSS装置80から受信した、測位データを保存し、演算処理により得られる各種データを保存する。
【0107】
端末通信部454は、GNSS装置80の通信部83を介して、GNSS装置80と有線または無線での通信を可能とする通信制御装置であり、通信部83と同じ通信規格を有する。
【0108】
端末制御部455は、端末制御部55と同様の構成の制御ユニットである。端末制御部455は、端末通信部454、端末操作部52等からの入力信号に基づいて、携帯端末50およびGNSS装置80を制御する。端末制御部455は、RAMに、端末記憶部453に記憶された各種プログラムを読み出して、路線測設および管理断面出来形観測のための測量方法を実行する。また、端末制御部455は、GNSS装置80から受信した測位データに基づいて、GNSS装置80の基準点O2の3次元位置座標を作業者の位置座標として取得する。また、携帯端末450に、作業者が、支持部材84の長さH2を入力することで、GNSS装置80を設置点P2の座標を算出することができる。
【0109】
システム400を用いて、第1の実施の形態で説明した測量方法1,2を実行する場合、作業者がターゲット40を保持して測定点を移動するのに代えて、作業者はGNSS装置80を保持して測定点を移動する。そして、ステップS04,S06,S13,S16および作業者の誘導(S05,S09,S15,S19)における、作業者の位置座標取得においては、携帯端末450が、測量機10にターゲット40を測定させる代わりに、GNSS装置80に測位させ、測位データに基づいて、GNSS装置の基準点O
2
の位置座標を、作業者の位置座標として算出する。
【0110】
このように、位置取得装置がGNSS装置の場合であっても、システム100と同じ測量方法1,2を実行することができ、システム100と同じ効果を奏することができる。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
10 :測量機
30 :位置取得装置
17 :(測量機の)通信部
21 :操作部
22 :表示部
24 :ガイド光照射部
40 :ターゲット
50 :携帯端末
51 :端末表示部
52 :端末操作部
53 :端末記憶部
54 :端末通信部
55 :端末制御部
80 :GNSS装置
83 :(GNSS装置の)通信部
100 :測量システム
200 :測量システム
210 :測量機
230 :位置取得装置
300 :測量システム
310 :測量機
330 :位置取得装置
400 :測量システム
430 :位置取得装置
450 :携帯端末
454 :端末通信部
455 :端末制御部