(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】循環式穀物乾燥機における穀物の循環・排出制御装置
(51)【国際特許分類】
F26B 17/14 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
F26B17/14 J
F26B17/14 B
(21)【出願番号】P 2019216040
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】折場 浩信
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148381(JP,A)
【文献】特開2011-47586(JP,A)
【文献】特開2003-279591(JP,A)
【文献】特開平1-222197(JP,A)
【文献】特開2012-63072(JP,A)
【文献】国際公開第2010/021027(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110360829(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物を貯留する貯留部と、該貯留部から流下する穀物に対して乾燥風を送給して穀物の乾燥を行う乾燥部と、該乾燥部の下方から排出された穀物を揚穀して前記貯留部の上部に還流させる揚穀部と、穀物を前記貯留部に還流させる循環位置と穀物を機外排出する排出位置とに切り換える切換手段と、を備えた循環式穀物乾燥機において、
前記循環式穀物乾燥機は、穀物の乾燥が終了して、該乾燥後の穀物を機外に排出するに際し、前記乾燥後の穀物を前記乾燥部の下方から機外に排出しながら同時に、新たに乾燥させる乾燥前の穀物を前記貯留部の上方から投入する操作を行うものであって、
前記貯留部には、該貯留部に貯留された穀物の貯留量を検出するレベルセンサと、該貯留部に貯留された穀物が貯留部を流下するときの流下速度を検出する流下速度検出センサと、が設けられ、
前記乾燥部には、前記レベルセンサの検出情報と前記流下速度検出センサの検出情報とに基づき、前記乾燥後の穀物と前記乾燥前の穀物との境界を探索するとともに、この境界が所定位置に到達したときに、前記乾燥前の穀物が機外排出されないよう、前記切換手段を排出位置から循環位置への切り換え制御を実行する制御手段を備えたことを特徴とする循環式穀物乾燥機における穀物の循環・排出制御装置。
【請求項2】
前記レベルセンサは、錘と、該錘を吊り上げるロープと、前記錘の巻き上げを行う電動機と、前記錘のレベルを検知するリフト計と、を備えてなる巻き取り式レベルセンサであることを特徴とする請求項1記載の循環式穀物乾燥機における穀物の循環・排出制御装置。
【請求項3】
前記レベルセンサは、マイクロ波を穀物の堆積層に照射し、該マイクロ波が穀物の堆積層で反射して反射パルスが再度センサに受信されるまでの往復伝播時間を測定してレベルを検知する構成のマイクロ波レベルセンサであることを特徴とする請求項1記載の循環式穀物乾燥機における穀物の循環・排出制御装置。
【請求項4】
前記流下速度検出センサは、前記貯留部内に堆積した穀物を取り入れて流下速度を検出する筒状部材と、該筒状部材上部の開口部を開閉する開閉シャッタと、該開閉シャッタを開閉駆動するエアシリンダと、前記筒状部材内の複数箇所に設けられた穀物のレベルを検知するレベル計と、を備えて構成されるセンサであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の循環式穀物乾燥機における穀物の循環・排出制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環式穀物乾燥機における穀物の循環・排出制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、循環式穀物乾燥機において、乾燥後の穀物を機外へ排出するに際し、乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を乾燥機本体に上方から投入することで、乾燥後の穀物を乾燥機本体から全て排出した後に、新たに乾燥させる穀物を前記乾燥機本体に投入する場合に比べ、乾燥機本体内の穀物の入れ換えにかかる時間を半分に短縮でき、効率よく使用する循環式穀物乾燥機の使用方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を乾燥機本体に上方から投入する際には、下方から排出中の乾燥後の穀物と、新たに乾燥させる穀物とを明確に分けることが必須であり、穀物の排出中は、新たに乾燥させる乾燥前の穀物を乾燥機本体の下方から排出しないような、何らかの工夫が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決するために、下方から排出中の乾燥後の穀物(乾燥籾又は半乾籾)と、新たに乾燥させる乾燥前の穀物(生籾)とを明確に分ける境界を検出して、穀粒の排出から穀粒の循環への切り換えをタイミングよく行うことのできる循環式穀物乾燥機における穀物の循環・排出制御装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、
穀物を貯留する貯留部と、該貯留部から流下する穀物に対して乾燥風を送給して穀物の乾燥を行う乾燥部と、該乾燥部の下方から排出された穀物を揚穀して前記貯留部の上部に還流させる揚穀部と、穀物を前記貯留部に還流させる循環位置と穀物を機外排出する排出位置とに切り換える切換手段と、を備えた循環式穀物乾燥機において、
前記循環式穀物乾燥機は、穀物の乾燥が終了して、該乾燥後の穀物を機外に排出するに際し、前記乾燥後の穀物を前記乾燥部の下方から機外に排出しながら同時に、新たに乾燥させる乾燥前の穀物を前記貯留部の上方から投入する操作を行うものであって、
前記貯留部には、該貯留部に貯留された穀物の貯留量を検出するレベルセンサと、該貯留部に貯留された穀物が前記貯留部を流下するときの流下速度を検出する流下速度検出センサと、が設けられ、
前記乾燥部には、前記レベルセンサの検出情報と前記流下速度検出センサの検出情報とに基づき、前記乾燥後の穀物と前記乾燥前の穀物との境界を探索するとともに、この境界が所定位置に到達したときに、前記乾燥前の穀物が機外排出されないよう、前記切換手段を排出位置から循環位置への切り換え制御を実行する制御手段を備えたことを特徴とする循環式穀物乾燥機における穀物の循環・排出制御装置とした。
【0007】
請求項2記載の発明では、前記レベルセンサが、錘と、該錘を吊り上げるロープと、前記錘の巻き上げを行う電動機と、前記錘のレベルを検知するリフト計と、を備えた巻き取り式レベルセンサであることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明では、前記レベルセンサが、マイクロ波を穀物の堆積層に照射し、該マイクロ波が穀物の堆積層で反射して反射パルスが再度センサに受信されるまでの往復伝播時間を測定してレベルを検知するマイクロ波レベルセンサであることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明では、前記流下速度検出センサが、前記貯留部内に堆積した穀物を取り入れて流下速度を検出する筒状部材と、該筒状部材上部の開口部を開閉する開閉シャッタと、該開閉シャッタを開閉駆動するエアシリンダと、前記筒状部材の内部で複数の箇所で穀物のレベルを検知するレベル計と、を備えたセンサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、穀物の乾燥が終了し、乾燥後の穀物を機外に排出するに際し、乾燥後の穀物を乾燥部の下方から機外に排出しながら同時に、新たに乾燥させる乾燥前の穀物を、前記貯留部の上方から投入する操作を行うものであり、貯留部に貯留された穀物の貯留量を検出するレベルセンサと、該貯留部に貯留された穀物の流下速度を検出する流下速度検出センサとの検出情報に基づき、前記乾燥後の穀物と前記乾燥前の穀物との境界を探索するとともに、この境界が所定位置に到達したときに、前記切換手段を排出位置から循環位置への切り換え制御を実行するものであるから、乾燥部の下方から排出中の乾燥後の穀物(乾燥籾又は半乾籾)と、新たに乾燥させる乾燥前の穀物(生籾)とを明確に分ける境界を検出することができ、切換手段の排出から循環への切り換え操作をタイミングよく行えるものとなる。したがって、乾燥前の穀物(生籾)が誤って機外排出されるなどのおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】循環式穀物乾燥機の一例を示す概略縦断面図である。
【
図2】本発明に係る循環式穀物乾燥機の制御構成を説明するブロック図である。
【
図4】新たに乾燥させる生籾を投入して生籾堆積層NMが半乾籾堆積層HMに重なったときの境界Kを示す作用図である。
【
図5】流下速度検出センサにより穀物の流下速度を検出する際の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る循環式穀物乾燥機における穀物の循環・排出制御装置の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、循環式穀物乾燥機の一例が示されている。
図1に示すように、循環式穀物乾燥機1は、上部に配置する貯留部2と、下部に配置する乾燥部3と、乾燥部3下部と貯留部2上部とを連絡する揚穀部4とを備えている。乾燥部3には、一対の多孔状隔壁5,5で仕切られた穀物流下路6が複数個設けられており、貯留部2に貯留された穀物が流下することができるようになっている。そして、隣り合う穀物流下路6,6で囲まれる空間を熱風室7に、乾燥部3の両側の穀物流下路5と機壁8との間の空間及び乾燥部3の中央を排風室9にそれぞれ形成される。
【0014】
熱風室7には、バーナ10により生成された熱風が送給され、穀物流下路6を通過して排風室9側に流れるようになっている。これにより、穀物流下路6内の穀物が乾燥されることとなる。穀物流下路6下部にはロータリーバルブ11が設けられており、乾燥された穀物を集穀ホッパ12へ落下させるようになっている。集穀ホッパ12の底部にはスクリューコンベア13が設けられており、穀物を揚穀部4の下部に供給するようになっている。この穀物は揚穀部4により貯留部2の上方へ揚穀され、揚穀部4上部に設けた切換弁14を介して機内に循環されるか、機外に取り出されるようになっている。
【0015】
切換弁14には循環用シュート15と排出用シュート16とが分岐して接続され、切換弁14の切り換えによって、循環用シュート15を介して機内循環するか、又は、排出用シュート16を介して機外排出するかを選択可能となっている。符号29は半乾燥となった穀物を乾燥部3の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる生籾を貯留部2上方から投入するための生籾投入管である。この生籾投入管29の上流には図示しないフローコンベア等が接続されていて、荷受部などから生籾が供給され搬送されてくる形態となっている。
【0016】
貯留部2上部にはレベルセンサ17が設けられており、貯留部2への穀物の貯留量(張り込み量)を検出できるようになっている。レベルセンサ17は、錘18と、錘18を吊り上げるロープ19と、錘の巻き上げを行う電動機20と、錘18のレベルを検知するリフト計21とを備えて構成される。このような巻き取り式のレベルセンサ17は、錘18を所定の速度で巻き下げ(下降させ)、錘18が穀物の堆積層に当たると、ロープ19の張力が減少するので、その時の巻き下げ量を検知して、穀物の貯留量(張り込み量、堆積量)を検知するという構成である。
なお、このようなレベルセンサ17に限らず、貯留部2内の上下方向における任意の箇所で穀物の有無を検知することができるものであればよい。例えば、貯留部2内の上部に設置し、穀物の貯留量を監視できるものとして、マイクロ波を穀物の堆積層に照射し、マイクロ波が穀物の堆積層で反射して、反射パルスが再びセンサに受信されるまでの往復伝播時間を測定してレベルを検知するといった、マイクロ波レベル計などを採用してもよい。そのほか、周知のレベルセンサを採用することができるが、ここでは説明を省略する。
【0017】
貯留部2内の下部には、貯留部2内の穀物が流下する流下速度を検出する流下速度検出センサ22が設けられる。流下速度検出センサ22は、貯留部2内に堆積した穀物を取り入れて流下速度を検出する筒状部材23と、この筒状部材23上部に設けた上開口部23aを開閉するための開閉シャッタ24と、この開閉シャッタ24を開閉駆動するエアシリンダ25と、前記筒状部材23内の複数箇所に設けられた穀物のレベルを検知するレベル計26,27,28とを備えて構成される。
これにより、穀物の流下速度を検出したいときは、開閉シャッタ24を開放して貯留部2内の穀物を上開口部23aから筒状部材23内に取り入れた後、開閉シャッタ24を閉鎖して測定を開始する。つまり、開閉シャッタ24が閉鎖されているため、新たな穀物が流入しないが、筒状部材23内に取り入れられた穀物は下開口部23bから流出する。このとき、筒状部材23内の穀物は、貯留部2内の穀物と同スピードで下方に流下することとなり、レベル計26,27,28の検知タイミングを知ることで筒状部材23内の流下速度が算出され、これを利用して貯留部2内の穀物の流下速度も把握することができる。
【0018】
次に、本発明に係る循環式穀物乾燥機の制御構成を説明する。
図2は本発明に係る循環式穀物乾燥機の制御構成を説明するブロック図である。
制御部50は、各種の操作スイッチが設けられた操作盤51や循環式穀物乾燥機1の各部に配設したセンサ類からの検出情報などを受けて所定の演算処理により、バーナ10の燃焼量の制御や、穀物を機内循環させるか機外排出するかを切り換える切換弁14の制御や、循環流量を変更するようロータリーバルブ11の回転数の制御などを行う。
【0019】
制御部50の入力側には、各種操作スイッチが設けられた操作盤51、水分計等の水分検出手段52、外気温度を計測し取得する外気温度検出手段53、熱風室7の熱風温度や排風室9の排風温度を計測し取得する熱風温度検出手段54、貯留部2への穀物の貯留量(張り込み量)を検出するための前記レベルセンサ17、及び貯留部2内の穀物が流下する流下速度を検出するための前記流下速度検出センサ22等が設けられている。
【0020】
制御部50の出力側には、ロータリーバルブ11を駆動するためのバルブモータ55、集穀ホッパ12底部のスクリューコンベア13や揚穀部4や上部のスクリューコンベア(図示せず)など穀物搬送機構を駆動する搬送系駆動モータ56、穀物を機内循環させるか機外排出するかを切り換える切換弁14の制御を行う切換弁駆動モータ57、バーナや燃料ポンプ等のバーナ燃焼系出力58、排風ファンなどを駆動する吸引ファンモータ59、操作盤51内の表示部60が設けられている。さらに、制御部50には、ROM/RAMなどからなる記憶手段61が接続されている。
【0021】
次に、制御部50の制御構成について、
図3のフローチャート及び
図4の作用図に基づいて説明する。
本発明では、特開2019-148381号公報の段落0037に記載のような循環式穀物乾燥機の使用方法を想定している。すなわち、投入1巡目において約17%の水分状態まで水分値が低下した半乾籾HM(
図4参照)を機外へ排出するに際し、乾燥部3下方から揚穀部4、排出用シュート16を介して排出しながら、同時に、投入2巡目において新たに乾燥させる生籾NM(
図4参照)を貯留部2上方から半乾籾HMの上に重ねて投入するようにしている。
【0022】
そして、半乾籾は排出状態にあるから半乾籾HMは
図4の矢視の方向へ順次流下していくが、切換弁14をタイミングよく切り換えをしないと、未乾燥の生籾NMまでも機外排出するおそれが生じる。このため、半乾籾HMと生籾NMとを明確に分ける境界Kを検出し、境界Kがロータリーバルブ11,11(
図1参照)を越えない(通り過ぎない)ように切換弁14を機内循環側に切り換える必要がある。
【0023】
図3のフローチャートに従って説明すると、ステップ100において、まず、生籾の投入前の半乾籾HMの堆積高さを貯留部2のレベルセンサ17により算出する。ここで、レベルセンサ17は、錘18を所定の速度で下降させ、錘18が穀物の半乾籾HMに当たれば、ロープ19の張力が減少するので、その時の巻き下げ量を検知して、穀物の貯留量(張り込み量、堆積量)を検知する。例えば、貯留部2の高さがH1、ロータリーバルブ11から乾燥部3上部までの高さがH2とし、レベルセンサ17の検出値がXとすれば(
図1参照)、H1およびH2は固定値であるから、半乾燥籾HMの堆積高さは
【0024】
【0025】
次に、ステップ101において、半乾籾HMの流下速度を流下速度検出センサ22により算出する。エアシリンダ25を駆動して開閉シャッタ24を開操作すると、筒状部材23には上開口部23aから穀物が取り込まれる。穀物が上開口部23a付近まで達したときに、開閉シャッタ24を閉操作して摺り切り、新たな穀物が筒状部材23に流入しないようにしておく。そうすると、
図4(b)に示すように、筒状部材23内に取り入れられた穀物は下開口部23bから排出され、貯留部2の半乾籾HMと同スピードで下方に流下するようになる。
【0026】
このとき、筒状部材23内の容量は既知であり、固定値となっているので、例えば、レベル計26とレベル計27との間の距離を0.5メートル、レベル計27とレベル計28との間の距離を0.5メートルなどとして設定しておけば、半乾籾HMの表面がレベル計26からレベル計27に至るまでの時間と、レベル計27からレベル計28に至るまでの時間とを計測し、平均値を算出するなどすれば、筒状部材23内を穀物が流下する流下速度を把握することができる。
【0027】
【0028】
一方で、ステップ101で求めた流下速度がそのまま穀物の排出速度とみなされるのではなく、ロータリーバルブ11の稼働時間を加味して穀物の排出速度を求める必要もある。したがって、ステップ102では、ロータリーバルブ11の稼働時間を求める。
【0029】
そして、ステップ103では、半乾籾HM上に生籾NMを重ねて投入を開始し、その境界Kがロータリーバルブ11付近に接近する時間Tを推定する。
【0030】
【0031】
上記数式3の係数Kは、推定時間Tを様々な条件を加味して修正することを示す。
図3のフローチャートのステップ103では、係数Kを導くために、以下の(1)から(3)の条件のあてはめを行っている。
(1)投入する生籾NMの水分が、半乾籾HMの水分より高い場合は、水分が高い生籾が機外排出されないように、境界Kがロータリーバルブ11,11を必ず越えることがない(必ず通り過ぎない)よう、早めの推定時間Tに設定する。
(2)投入する生籾NMの水分が、半乾籾HMの水分より低い場合は、しっかり乾燥を行って次工程での仕上げ乾燥が不要となるように、境界Kがロータリーバルブ11,11を越える程度に、遅めの推定時間Tに設定する。
(3)投入する生籾NMの水分が、半乾籾HMの水分と同程度の場合は、高水分側への水分のバラツキを考慮し、安全面を考えて(1)と同じような推定時間Tの設定をする。
(4)乾燥条件(原料、品種、初期水分、仕上げ水分、流下速度、推定時間T)は、記憶手段61に記憶しておき、流下速度検出センサ22が故障した場合は記憶したデータに基づいて切換弁14の制御を行う。
【0032】
次に、境界Kがロータリーバルブ11付近に接近する推定時間Tが算出されたら、ステップ104では、生籾の投入を開始してから推定時間が到来したか否かの判断をする。推定時間が到来した場合、ステップ105に至り、制御部50は機外排出作業を停止するとともに切換弁駆動モータ57に切り換え信号を送り、切換弁14(
図1参照)を循環側に切り換える。そして、ステップ106に至って、新たに投入された生籾NMを循環しながら乾燥する作業が開始される。ステップ104で推定時間が到来しない場合、ステップ101にリターンする。
【0033】
ステップ107では生籾NMが約24%の水分状態から約17%の水分状態の半乾状態となったか否かが水分検出手段52などを利用して監視が行われる。すなわち、乾燥が終了したか否かの確認である。仮に、水分が未だに約20%であったら再乾燥されることとなる。
【0034】
乾燥が終了すればステップ109の排出作業の開始となるが、それに先立って生籾NM投入の第3巡目があるか否かの判断が行われる。第3巡目がある場合、上記同様の半乾籾HMを排出しながら同時に生籾NMを投入する作業のためにステップ100にリターンする。第3巡目がない場合、ステップ109の通常の排出作業の後、乾燥作業終了となる。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0036】
例えば、本実施形態の
図1に示す乾燥部3は一対の多孔状隔壁5,5で仕切られた穀物流下路6を複数個設けた構成であるが、これに限らず、熱風を多数の山形の空気路に通過させて穀物の乾燥を行う山形多管部を設けた構成の穀物乾燥機(例えば、特開平11-237181の
図2参照)であってもよい。この形式の穀物乾燥機にあっては、乾燥部と貯留部との容積が半々程度となるため、穀物乾燥機の機壁側と中央側との間で穀物の流下速度が異なると予想される。このため、流下速度検出センサ22を複数個備えてその平均値を算出するようにするとよい。
【0037】
また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、循環式穀物乾燥機に利用することができる。特に、乾燥後の穀物を乾燥機本体の下方から排出しながら同時に、新たに乾燥させる穀物を乾燥機本体に上方から投入する使用方法に適したものである。
【符号の説明】
【0039】
1 循環式穀物乾燥機
2 貯留部
3 乾燥部
4 揚穀部
5 多孔状隔壁
6 穀物流下路
7 熱風室
8 機壁
9 排風室
10 バーナ
11 ロータリーバルブ
12 集穀ホッパ
13 スクリューコンベア
14 切換弁
15 循環用シュート
16 排出用シュート
17 レベルセンサ
18 錘
19 ロープ
20 電動機
21 リフト計
22 流下速度検出センサ
23 筒状部材
23a 上開口部
23b 下開口部
24 開閉シャッタ
25 エアシリンダ
26 レベル計
27 レベル計
28 レベル計
29 生籾投入管
50 制御部
51 操作盤
52 水分検出手段
53 外気温度検出手段
54 熱風温度検出手段
55 バルブモータ
56 搬送系駆動モータ
57 切換弁駆動モータ
58 バーナ燃焼系出力
59 吸引ファンモータ
60 表示部
61 記憶手段