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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/507 20210101AFI20230907BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20230907BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20230907BHJP
   H01M 50/516 20210101ALI20230907BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20230907BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M50/522
H01M50/503
H01M50/516
H01G11/12
H01G4/228 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021530591
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020024996
(87)【国際公開番号】W WO2021006052
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2019129605
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 暢之
(72)【発明者】
【氏名】春日井 正邦
【審査官】櫻井 雄介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-049932(JP,A)
【文献】特開平11-120986(JP,A)
【文献】特開2015-118731(JP,A)
【文献】特開2019-003925(JP,A)
【文献】特開2016-115601(JP,A)
【文献】特開2019-032928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/507
H01M 50/522
H01M 50/503
H01M 50/516
H01G 11/12
H01G 4/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子を有するとともに並び方向に沿って並べられた複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、絶縁性を有するシートと、芯線の外周が絶縁被覆に包囲された電線であって、前記シートの表面に、前記並び方向に沿って配された複数の電線と、を備え、前記電線には端子が接続され、前記端子が前記複数の蓄電素子の電極端子に接続されたバスバーに電気的に接続されており、前記端子は前記電線の前記芯線と接続する電線接続部を有し、前記電線の前記芯線が前記電線接続部に溶接されており、前記シートは、基材と、溶着層と、を有し、前記電線の前記絶縁被覆が前記シートの前記溶着層と熱溶着されることにより、前記電線と前記シートとが固定されており、前記溶着層と前記絶縁被覆とが同じ合成樹脂材から構成される配線モジュールと、
電極端子を有するとともに並び方向に沿って並べられた複数の蓄電素子と、
前記電極端子に接続される複数のバスバーと、を備えた蓄電モジュールであって、
前記複数のバスバーは、前記電極端子に接続される本体部と、前記本体部から突出して前記並び方向に延びる突出片と、を有し、
前記突出片と前記電線とが電気的に接続される蓄電モジュール
【請求項2】
前記複数の電線は、前記並び方向に沿って延びる幹線部と、前記幹線部から前記並び方向と交差する交差方向に延びる支線部と、を有し、
前記支線部の端部が前記バスバーに電気的に接続されている請求項1に記載の蓄電モジュール
【請求項3】
前記端子は、前記並び方向に延びるとともに前記バスバーと接続するバスバー接続部を有する請求項1または請求項2に記載の蓄電モジュール
【請求項4】
前記電線接続部は、前記並び方向と交差する交差方向に延びる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電モジュール
【請求項5】
前記配線モジュールは、車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであ、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蓄電モジュール
【請求項6】
前記電線の端部には端子が接続されており、前記端子は、前記並び方向に延びるとともに前記バスバーと接続するバスバー接続部を有し、
前記突出片と前記バスバー接続部とが接続される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記バスバーは、前記本体部と前記バスバーとが同種の金属からなり、前記突出片と前記電線に含まれる金属とが同種の金属からなる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記シートと、前記蓄電素子とは、固定部により固定されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線モジュール、蓄電モジュール、バスバー、および蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極端子を備えた単電池を複数並べた単電池群に電池配線モジュールが取り付けられた電池モジュールとして、特許文献1(特開平11-120986号公報)に記載のものが知られている。この種の電池モジュールは、電気自動車やハイブリッド車等の車両に取り付けられて、車両の駆動源として使用される。
【0003】
上記の電池配線モジュールは、電極端子間を接続する複数のバスバーと、このバスバーを保持する樹脂プロテクタとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-120986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術によると、樹脂プロテクタを合成樹脂で射出成型するための金型が必要となるため、配線モジュールの製造コストが増大することが懸念される。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、製造コストが削減された配線モジュールにかかる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、電極端子を有するとともに並び方向に沿って並べられた複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、絶縁性を有するシートと、前記シートの表面に、前記並び方向に沿って配された複数の電線と、を備え、前記複数の電線は、前記複数の蓄電素子の電極端子に接続されたバスバーに電気的に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、配線モジュールの製造コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1にかかる蓄電モジュールが搭載された車両を示す模式図である。
図2図2は、実施形態1にかかる蓄電モジュールを示す一部拡大平面図である。
図3図3は、蓄電素子群を示す一部拡大平面図である。
図4図4は、配線モジュールを示す平面図である。
図5図5は、電線とシートとの固定構造を示す断面図である。
図6図6は、バスバーを示す斜視図である。
図7図7は、蓄電素子の電極端子にバスバーを接続した状態を示す一部拡大平面図である。
図8図8は、バスバーを示す断面図である。
図9図9は、バスバーの変形部が前後方向に拡開した状態を示す断面図である。
図10図10は、バスバーの突出片と端子のバスバー接続部との接続構造を示す一部拡大平面図である。
図11図11は、バスバーの突出片と端子のバスバー接続部との接続構造を示す一部拡大平面図である。
図12図12は、実施形態2にかかる蓄電モジュールを示す平面図である。
図13図13は、実施形態3にかかる蓄電モジュールを示す一部拡大平面図である。
図14図14は、実施形態4にかかる蓄電モジュールを示す一部拡大平面図である。
図15図15は、実施形態5にかかるバスバーを示す平面図である。
図16図16は、実施形態6にかかる蓄電モジュールを示す一部拡大平面図である。
図17図17は、実施形態7にかかる蓄電モジュールを示す一部拡大平円図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0011】
(1)本開示は、電極端子を有するとともに並び方向に沿って並べられた複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、絶縁性を有するシートと、前記シートの表面に、前記並び方向に沿って配された複数の電線と、を備え、前記複数の電線は、前記複数の蓄電素子の電極端子に接続されたバスバーに電気的に接続される。
【0012】
絶縁性の合成樹脂を射出成型することによって絶縁プロテクタを形成しなくてもよいので、金型の製造コストが不要となる。これにより、配線モジュールの製造コストを削減できる。
【0013】
複数の電線がシートの表面に配されているので、配線モジュールを低背化できる。
【0014】
(2)前記複数の電線は、前記並び方向に沿って延びる幹線部と、前記幹線部から前記並び方向と交差する交差方向に延びる支線部と、を有し、前記支線部の端部が前記バスバーに電気的に接続されていることが好ましい。
【0015】
支線部の先端と、バスバーとを接続すればよいので、電線を、蓄電素子ごとに配索する作業が不要となる。これにより配線モジュールの製造効率を向上させることができる。
【0016】
(3)前記電線には端子が接続されており、前記端子が前記バスバーに接続されていてもよい。
【0017】
端子とバスバーとを接続するという簡易な手法により、電線とバスバーとを容易に電気的に接続できる。
【0018】
(4)前記端子は、前記並び方向に延びるとともに前記バスバーと接続するバスバー接続部を有することが好ましい。
【0019】
バスバー接続部は並び方向に延びて形成されているので、並び方向についてのバスバー接続部の長さ寸法の範囲内で、並び方向についての蓄電素子の公差に追従できる。
【0020】
(5)前記端子は、前記交差方向に延びるとともに前記芯線と接続する電線接続部を有することが好ましい。
【0021】
電線と、端子の電線接続部とを接続することにより、バスバー接続部を並び方向に延びる姿勢で配置することができる。これにより、端子の位置精度を容易に向上させることができる。
【0022】
(6)前記シートは、基材と、溶着層と、を有し、前記溶着層に前記複数の電線が固定されていることが好ましい。
【0023】
基材によってシートの強度を保持しつつ、溶着層によって容易に電線と溶着させることができる。
【0024】
(7)配線モジュールは、車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであってもよい。
【0025】
(8)本開示は、上記(1)から上記(7)のいずれか1つに記載の配線モジュールと、電極端子を有するとともに並び方向に沿って並べられた複数の蓄電素子と、前記電極端子に接続される複数のバスバーと、を備えた蓄電モジュールであって、前記複数のバスバーは、前記電極端子に接続される本体部と、前記本体部から突出して前記並び方向に延びる突出片と、を有し、前記突出片と前記電線とが電気的に接続される。
【0026】
並び方向に延びる突出片の並び方向の長さ寸法の範囲内で、バスバーと電線の芯線とを電気的に接続できるので、並び方向についての蓄電素子の公差に追従することができる。
【0027】
(9)前記芯線の端部には端子が接続されており、前記端子は、前記並び方向に延びるとともに前記バスバーと接続するバスバー接続部を有し、前記突出片と前記バスバー接続部とが接続されていてもよい。
【0028】
並び方向に延びる突出片と、並び方向に延びるバスバー接続部との接続代の範囲内で、並び方向についての蓄電素子の公差に追従することができる。
【0029】
(10)前記バスバーは、前記本体部と前記バスバーとが同種の金属からなり、前記突出片と前記電線に含まれる金属とが同種の金属からなることが好ましい。
【0030】
これにより、バスバーの本体部と電極端子とを容易に溶接するとともに、バスバーの突出片と電線とを容易に電気的に接続することができる。
【0031】
(11)前記シートと、前記蓄電素子とは、固定部により固定されていることが好ましい。
【0032】
シートと蓄電素子とが固定部により固定されているので、蓄電素子と配線モジュールとの位置精度を向上させることができる。
【0033】
(12)電極端子を有するとともに並び方向に沿って並べられた複数の蓄電素子の前記電極端子に取り付けられるバスバーであって、隣り合う前記電極端子を接続する本体部と、前記本体部から外方に突出するとともに電線に電気的に接続される突出片と、を備えることが好ましい。
【0034】
電極端子同士を接続する本体部と異なる突出片において、電線とバスバーとが電気的に接続されている。これにより、本体部を流れる電流の影響が緩和された状態で、蓄電素子の電圧を検知することができる。
【0035】
(13)前記本体部には、前記並び方向の中間位置に、前記本体部の板面から直交する方向に屈曲する変形部を有し、前記変形部は前記並び方向に伸縮可能に形成されていることが好ましい。
【0036】
変形部が並び方向に伸縮することにより、並び方向についての蓄電素子の公差に追従することができる。
【0037】
(14)本開示は、蓄電モジュールの製造方法であって、並び方向に並べられた複数の蓄電素子の電極端子に、本体部を有するバスバーの前記本体部を接続する工程と、複数の電線の端部に、電線接続部を有する端子の前記電線接続部を接続する工程と、絶縁性のシートに、前記端子に設けられたバスバー接続部が同じ方向を向くように前記複数の電線を並べて固定する工程と、前記バスバー接続部が前記並び方向を向くようにして前記シートを前記複数の蓄電素子に載置するとともに、前記バスバー接続部を前記バスバーのうち前記並び方向に延びる突出片に前記バスバー接続部を載置する工程と、前記突出片と前記バスバー接続部とを接続する工程と、を備える。
【0038】
上記の製造方法によれば、蓄電モジュールの製造工程を分業できるので、蓄電モジュールの製造効率を向上させることができる。
【0039】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0040】
<実施形態1>
本開示を車両1に搭載される蓄電パック2に適用した実施形態1が図1から図11を参照しつつ説明される。蓄電パック2は、電気自動車、またはハイブリッド自動車等の車両1に搭載されて、車両1の駆動源として用いられる。以下の説明においては、複数の部材については一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0041】
[全体構成]
図1に示されるように、車両1の中央付近には蓄電パック2が配設されている。車両1の前部にはPCU3(Power Control Unit)が配設されている。蓄電パック2とPCU3とは、ワイヤーハーネス4によって接続されている。蓄電パック2とワイヤーハーネス4とは図示しないコネクタによって接続されている。蓄電パック2は複数の蓄電素子11を備えた蓄電モジュール10を有する。
【0042】
図2に示されるように、蓄電モジュール10は、電極端子13を有する複数の蓄電素子11と、電極端子13に接続されたバスバー42と、複数の蓄電素子11に取り付けられた配線モジュール20と、を備える。以下では、矢線Zで示される方向を上方とし、矢線Yで示される方向を前方とし、矢線Xで示される方向を左方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0043】
[蓄電素子11]
図3に示されるように、蓄電素子11は前後方向に扁平な直方体形状をなしている。蓄電素子11の上面には、左端部と右端部のそれぞれから、電極端子13が上方に突出している。1つの蓄電素子11に形成された2つの電極端子13のうち、一方が正極で他方が負極となっている。複数の蓄電素子11は前後方向(並び方向の一例)に沿って並べられることにより蓄電素子群12を構成する。
【0044】
[配線モジュール20]
図2示されるように、配線モジュール20は、蓄電素子群12の上面に配設される。配線モジュール20は、シート22と、シート22の上面に配された複数の電線23と、複数の電線23の端部に接続された端子16と、を備える。
【0045】
[シート22]
図4に示されるように、シート22は、前後方向に細長く延びた、略長方形状に形成されている。シート22の右側縁には、右方に延出する複数の延出片24が、前後方向に間隔を空けて形成されている。
【0046】
図5に示されるように、シート22は、基材27と、基材27の上面に積層された溶着層28と、を有する。基材27は、不織布からなる。不織布の形態としては、繊維シート、ウェブ(繊維だけで構成された薄い膜状のシート)、またはバット(毛布状の繊維)であってもよい。不織布を構成する材料としては、天然繊維でもよく、また、合成樹脂からなる合成繊維であってもよく、また、天然繊維と合成繊維の双方を用いたものであってもよい。合成繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなど、任意の合成樹脂を適宜に選択できる。
【0047】
溶着層28を構成する合成樹脂は特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等、任意の合成樹脂を適宜に選択できる。溶着層28と構成する合成樹脂としては、後述する電線23の絶縁被覆29と溶着可能な合成樹脂が好ましい。本実施形態ではポリ塩化ビニルが用いられる。
【0048】
[電線23]
図4に示されるように、電線23は、芯線30と、芯線30の外周を包囲する絶縁被覆29と、を備える。芯線30の構成は特に限定されず、例えば、複数の金属細線が撚り合わされた撚り線でもよく、また、棒状の1つの金属線からなるいわゆる単芯線でもよい。本実施形態にかかる芯線30は撚り線とされる。
【0049】
絶縁被覆29は、絶縁性の合成樹脂からなる。絶縁被覆29を構成する合成樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等、任意の合成樹脂を選択できる。本実施形態においては、ポリ塩化ビニルが用いられる。本実施形態では、溶着層28と絶縁被覆29とが同じ合成樹脂材から構成されるようになっている。
【0050】
[バスバー42]
図6に示されるように、バスバーは、金属板材を所定の形状にプレス加工して形成される。バスバー42を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を適宜に選択できる。
【0051】
図7に示されるように、バスバー42は、上方から見て略長方形状をなす本体部44と、本体部44のうち前後方向の中央付近において上方に凸状に形成された変形部45と、本体部44の左前隅から左方に突出するとともに後方に屈曲して延びる突出片46と、を有する。
【0052】
変形部45は、左右方向に延びて形成されている。変形部45は、バスバー42の左側縁から右側縁まで延びて形成されている。図8に示されるように、変形部45は下方に開口して形成されており、変形部45の断面形状は略U字状をなしている。図9に示されるように、変形部45が前後方向に拡開変形することにより、バスバー42は、蓄電素子11の前後方向についての公差に追従して変形できるようになっている。
【0053】
突出片46は上方から見て前後方向に延びる長方形状をなしている。突出片46の上面には電線23の芯線30が載置されており、突出片46と芯線30とが接続されている。突出片46と芯線30とは、はんだ付け、ろう付け、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接等の公知の手法により接続されている。突出片46と芯線30とがレーザー溶接により接続される場合には、芯線30は単芯線が好ましい
【0054】
バスバー42の本体部44は、上方から見て前後方向に細長い略長方形状状をなしている。バスバー42の本体部44は、異なる蓄電素子11の隣り合う電極端子13同士に接続される。バスバー42の本体部44の前後方向の長さ寸法は、隣り合う電極端子13を上方から覆う程度に設定されている。バスバー42の本体部44と電極端子13とを接続する手法は、レーザー溶接、はんだ付け等、特に限定されない。本実施形態においては、バスバー42の本体部44と電極端子13とはレーザー溶接されている。
【0055】
図3に示されるように、電極端子13の上面には上方に突出する位置決めピン31が形成されている。位置決めピン31は円柱状をなしている。図7に示されるように、バスバー42の本体部44には位置決めピン31に対応する位置に位置決め孔32が貫通されている。位置決め孔32に位置決めピン31が挿通することにより、電極端子13とバスバー42とが位置決めされる。
【0056】
[端子16]
図10および図11に示されるように、端子16は、電線23の芯線30が接続される電線接続部17と、電線接続部17に連なるとともにバスバー42の突出片46に接続されるバスバー接続部18と、を有する。電線23の芯線30の一方の端部は電線接続部17に接続されており、他方の端部は図示しないECU(Electronic Cotrol Unit)に接続されている。これにより、蓄電素子11の電圧が、バスバー42および端子16を介して、電線23によって検知される。
【0057】
電線接続部17の上面に芯線30が載置された状態で、電線接続部17と芯線とが接続されている。電線接続部17と芯線30との接続方法は特に限定されず、はんだ付け、ろう付け等のろう接や、レーザー溶接、超音波溶接、抵抗溶接等の溶接や、圧着、圧接等、公知の手法を選択できる。本実施形態では、電線接続部17と芯線とは溶接されている。
【0058】
バスバー接続部18は、延出片24の右端部から前方に延びるように配置されている。これにより、バスバー接続部18は前後方向に延びる姿勢で配されている。
【0059】
バスバー42の突出片46の上面に、バスバー接続部18が載置された状態で、突出片46とバスバー接続部18とが接続される。突出片46とバスバー接続部18との接続方法は特に限定されず、はんだ付け、ろう付け等のろう接や、レーザー溶接、超音波溶接、抵抗溶接等の溶接により接続される。本実施形態では突出片46とバスバー接続部18とはレーザー溶接されている。
【0060】
前後方向に延びる突出片46と、前後方向に延びるバスバー接続部18との接続位置は、前後方向について突出片46とバスバー接続部18との重なり代の範囲で選択できる。これにより、複数の蓄電素子11の前後方向についての公差に対応できるようになっている(図10および図11参照)。
【0061】
[シート22と電線23との固定構造]
図4に示されるように、シート22の上面に配された電線23のうち、前後方向に配索された部分は幹線部33とされる。電線23は、幹線部33から、右方に屈曲した支線部34を有する。シート22の後端部においては、全ての電線23が左右方向に横並びに配されている。電線23が前方に延びるにつれて、幹線部33を構成する電線23の右端の電線23から順に、右方へと屈曲して支線部34が構成される。
【0062】
図5に示されるように、幹線部33を構成する電線23の絶縁被覆29は、シート22の上面に形成された溶着層28と、熱溶着されている。電線23の絶縁被覆29と、シート22の溶着層28とを溶着する手段は特に限定されず、超音波溶着、抵抗溶着等の熱溶着、またはレーザー溶着等を適宜に選択できる。
【0063】
支線部34を構成する電線23の絶縁被覆29は、幹線部33の電線23と同様に、シート22の上面に形成された溶着層28と、熱溶着されている。
【0064】
支線部34を構成する電線23は、シート22の延出片24の上面に配され、延出片24の右端部から前方へと屈曲して配されている。電線23の端部においては、絶縁被覆29が皮剥ぎされることにより芯線30が露出している。露出した芯線30は、上記したように、端子16の電線接続部17と接続されている。
【0065】
[実施形態の製造工程]
続いて、本実施形態にかかる蓄電モジュール10および配線モジュール20の製造工程の一例について説明される。蓄電モジュール10および配線モジュール20の製造工程は以下の記載に限定されない。
【0066】
基材27に溶着層28が積層されてシート22が形成される。シート22が所定の形状に切断される。
【0067】
電線23の端末が皮剥ぎされて芯線30が露出される。複数の電線23がシート22の上面に所定の形状で配索される。電線23の絶縁被覆29がシート22の溶着層28と熱溶着されることにより、電線23とシート22とが固定される。
【0068】
電線23の芯線30と端子16とが接続される。これにより配線モジュールが完成する(図4参照)。
【0069】
複数の蓄電素子11が前後方向に並べられることにより蓄電素子群12が形成される(図3参照)。蓄電素子群12の電極端子13の上面に、バスバー42の本体部44が載置される(図7参照)。このとき、位置決めピン31が、バスバー42の位置決め孔32に挿入される。バスバー42と電極端子13とが接続される。
【0070】
蓄電素子群12の上面に配線モジュール20が配置される。バスバー42の突出片46の上面に、端子16のバスバー接続部18が載置される。突出片46とバスバー接続部18とを溶接する。これにより、蓄電モジュール10が完成する。
【0071】
[本実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態は、電極端子13を有するとともに並び方向に沿って並べられた複数の蓄電素子11に取り付けられる配線モジュール20であって、絶縁性を有するシート22と、シート22の表面に、並び方向に沿って配された複数の電線23と、を備え、複数の電線23は、芯線30と、芯線30の周囲を覆うとともに絶縁性の合成樹脂製の絶縁被覆29と、を有し、芯線30は、複数の蓄電素子11の電極端子13に接続されたバスバー42に接続される。
【0072】
複数の電線23がシート22の表面に配されているので、配線モジュール20を低背化できる。
【0073】
絶縁性の合成樹脂を射出成型することによって絶縁プロテクタを形成しなくてもよいので、金型の製造コストが不要となる。これにより、配線モジュール20の製造コストを削減できる。
【0074】
また、本実施形態によれば、複数の電線23は、並び方向に沿って延びる幹線部33と、幹線部33から前後方向と交差する左右方向に延びる支線部34と、を有し、支線部34の端部から露出する芯線30がバスバー42に電気的に接続されている。
【0075】
支線部34の先端から露出した芯線30と、バスバー42とを接続すればよいので、電線23を、蓄電素子11ごとに配索する作業が不要となる。これにより配線モジュール20の製造効率を向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、端子16は、前後方向に延びるとともにバスバーと42接続するバスバー接続部18を有する。
【0077】
本実施形態によれば、芯線30には端子16が接続されており、端子16がバスバー42に接続されている。
【0078】
端子16とバスバー42とを接続するという簡易な手法により、電線23とバスバー42とを容易に電気的に接続できる。
【0079】
バスバー接続部18は蓄電素子11の並ぶ前後方向に延びて形成されているので、前後方向についてのバスバー接続部18の長さ寸法の範囲内で、複数の蓄電素子11が並ぶ前後方向についての蓄電素子11の公差に追従できる。
【0080】
また、本実施形態によれば、シート22は、基材27と、溶着層28と、を有し、溶着層28に複数の電線23が固定されている。
【0081】
基材27によってシート22の強度を保持しつつ、溶着層28によって容易に電線23と溶着させることができる。
【0082】
本実施形態には、上記の配線モジュール20と、電極端子13を有するとともに前後方向に沿って並べられた複数の蓄電素子11と、電極端子13に接続される複数のバスバー42と、を備えた蓄電モジュール10であって、複数のバスバー42は、電極端子13に接続される本体部44と、本体部44から突出して並び方向に延びる突出片46と、を有し、端子16は、前後方向に延びるとともにバスバー42と接続するバスバー接続部18を有し、突出片46とバスバー接続部18とが接続される。
【0083】
前後方向に延びる突出片46と、前後方向に延びるバスバー接続部18との接続代の範囲内で、前後方向についての蓄電素子11の公差に追従することができる。
【0084】
本実施形態においては、電極端子13同士を接続する本体部44と異なる突出片46において、電線23とバスバー42とが電気的に接続されている。これにより、本体部44を流れる電流の影響が緩和された状態で、蓄電素子11の電圧を検知することができる。
【0085】
本実施形態によれば、本体部44には、前後方向の中間位置に、本体部44の板面から直交する方向(上方)に屈曲する変形部45を有し、変形部45は前後方向に伸縮可能に形成されている。
【0086】
変形部45が前後方向に伸縮することにより、前後方向についての蓄電素子11の公差に追従することができる。
【0087】
本実施形態にかかる蓄電モジュール10の製造工程は、前後方向に並べられた複数の蓄電素子11の電極端子13に、本体部44を有するバスバー42の本体部を44接続する工程と、複数の電線23の端部に、電線接続部17を有する端子16の電線接続部17を接続する工程と、絶縁性のシート22に、端子16に設けられたバスバー接続部18が同じ方向を向くように複数の電線23を並べて固定する工程と、バスバー接続部18が前後方向を向くようにしてシート22を複数の蓄電素子11に載置するとともに、バスバー接続部18をバスバー42のうち前後方向に延びる突出片46にバスバー接続部18を載置する工程と、突出片46とバスバー接続部18とを接続する工程と、を備える。
【0088】
本実施形態によれば、蓄電素子メーカーにおいて、並べられた蓄電素子11の電極端子13にバスバー42が接続される工程が行われ、電線メーカーにおいて、配線モジュール20が組み立てられ、カーメーカーにおいて、複数の蓄電素子11に配線モジュール20が取り付けられる。これにより、蓄電モジュール10の製造工程を分業できるので、蓄電モジュール10の製造効率を向上させることができる。
【0089】
本実施形態にかかる配線モジュール20は車両1に搭載されて用いられる車両用の配線モジュール20である。
【0090】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2が図12を参照しつつ説明される。本実施形態にかかる蓄電モジュール50に取り付けられた配線モジュール51は、シート52の右端部寄りの位置に右支線部53を有するとともに、シート52の左端部寄りの位置に左支線部54を有する。右支線部53を構成する電線23の端部には端子16が接続されており、左支線部54を構成する電線23の端部にも端子16が接続されている。これにより、1つの配線モジュール51を蓄電素子群12に取り付けることにより、複数の蓄電素子11を直接に接続することができる。
【0091】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0092】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3が図13を参照しつつ説明される。本実施形態にかかる蓄電モジュール60においては、蓄電素子11と、配線モジュール61のシート62とは、ピン63(固定部材の一例)により、固定されている。シート62に貫通されたピン63は、隣り合う蓄電素子11の間に嵌入されることにより、隣り合う蓄電素子11によって固定される。なお、ピン63は、隣り合う蓄電素子11同士を隔てる枠状部材(図示せず)に嵌入される構成としてもよい。
【0093】
これにより、蓄電素子11と配線モジュール61との位置精度を向上させることができる。
【0094】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0095】
<実施形態4>
次に、本開示の実施形態4が図14を参照しつつ説明される。本実施形態にかかる蓄電モジュール70の配線モジュール71においては、端子72は、左右方向に延びるとともに芯線30と接続する電線接続部73を有する。端子72は、前後方向に延びるバスバー接続部74を有するので、端子72は、上方から見てL字状に屈曲している。
【0096】
電線23の芯線30と、端子72の電線接続部73とを接続することにより、バスバー接続部74を前後方向に延びる姿勢で配置することができる。これにより、端子72の位置精度を容易に向上させることができる。
【0097】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0098】
<実施形態5>
次に本開示の実施形態5が図15を参照しつつ説明される。本実施形態にかかるバスバー80は、本体部81を構成する金属と、突出片82を構成する金属とが異なる。図15においては、本体部81が網掛けされることにより、本体部81と突出片82とが異なる金属からなることが表されている。本体部81の色と突出片82の色は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0099】
また、電線23の芯線30と、端子16は同種の金属からなる。これにより、芯線30と、端子16の電線接続部17とを、溶接等により容易に接続できる。また、圧着により芯線30と電線接続部17とを接続した場合でも、異種金属の接触に起因する電食を防止できる。
【0100】
例えば、本体部81は銅または銅合金により構成され、突出片82はアルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されてもよい。この場合には、蓄電素子11の電極端子13が銅または銅合金からなり、電線23の芯線30がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。
【0101】
逆に、本体部81はアルミニウムまたはアルミニウム合金により構成され、突出片82は銅または銅合金により形成されてもよい。この場合には、蓄電素子11の電極端子13がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、電線23の芯線30が銅または銅合金からなる。
【0102】
これにより、バスバー80の本体部81と電極端子13とを容易に溶接するとともに、バスバー80の突出片82と端子16のバスバー接続部18とを容易に溶接することができる。また、電線接続部17と芯線30とは同種の金属により形成されているので、電線接続部17と芯線30とを容易に接続できる。
【0103】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0104】
<実施形態6>
次に、本開示の実施形態6が図16を参照しつつ説明される。本実施形態においては、電線23の芯線30がバスバー42の突出片46に接続されている。芯線30と突出片46とは、はんだ付け、ろう付け等のろう接や、レーザー溶接、超音波溶接、抵抗溶接等の溶接等、公知の手法により接続されている。
【0105】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0106】
本実施形態によれば、端子が不要となるので、配線モジュールの部品点数を削減できる。
【0107】
<実施形態7>
次に、本開示の実施形態7が図17を参照しつつ説明される。本実施形態においては、バスバー42の突出片46と、端子92とは、直交した状態で接続されている。
【0108】
端子92のバスバー接続部94は、バスバー42の突出片46の上面に載置されている。支線部34は左右方向に延びて形成されているので、支線部34に沿って電線接続部93が延びている構成となっている。これにより、端子92は、全体として、バスバー42の突出片46と直交した姿勢に配されている。
【0109】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0110】
突出片46の延びる方向と、端子92の延びる方向とのなす角度は、直角に限定されず、任意の角度とすることができる。これにより、バスバー42と端子92との接続構造の自由度を大きくすることができる。
【0111】
<他の実施形態>
(1)蓄電素子11は、二次電池でもよく、キャパシタでもよい。
【0112】
(2)シートは、基材と溶着層とは溶着されていてもよく、また、基材と溶着層とが接着層と介して接着されていてもよい。
【0113】
(3)実施形態4にかかる端子72は、上方から見てL字状としたが、これに限られず、上方から見てT字状をなしており、前後方向(並び方向)に延びるバスバー接続部74の前後方向における中央付近から、電線接続部73が左右方向(交差方向)に延びる形状であってもよい。
【0114】
(4)本実施形態にかかる電線23は被覆電線としたが、これに限られず、エナメル線や、裸電線でもよい。
【符号の説明】
【0115】
1:車両
2:蓄電パック
3:PCU
4:ワイヤーハーネス
10、50、60、70: 蓄電モジュール
11: 蓄電素子
12: 蓄電素子群
13: 電極端子
16、72、92: 端子
17、73、93: 電線接続部
18、74、94: バスバー接続部
20、51、61、71: 配線モジュール
22、52、62: シート
23: 電線
24: 延出片
27: 基材
28: 溶着層
29: 絶縁被覆
30: 芯線
31: 位置決めピン
32: 位置決め孔
33: 幹線部
34: 支線部
42、80: バスバー
44、81: 本体部
45: 変形部
46、82: 突出片
53: 右支線部
54: 左支線部
63: ピン(固定部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17