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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】無線センサ
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/00 20060101AFI20230907BHJP
   G01K 1/024 20210101ALI20230907BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20230907BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20230907BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G08C17/00 Z
G01K1/024
B60L5/00 B
B60L53/12
B60M7/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022519915
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2021014833
(87)【国際公開番号】W WO2021225056
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2020081784
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】西岡 直樹
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073928(WO,A1)
【文献】特開昭63-250798(JP,A)
【文献】特開2019-124515(JP,A)
【文献】特開2004-249887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
G01K 1/024
B60L 5/00
B60L 53/12
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が給電線から非接触で電力を得る移動体システムに関する状態量を測定し、測定された状態量を無線で送信する無線センサであって、
前記給電線から非接触で電力を得る非接触受電部と、
前記非接触受電部から供給される電力により動作し、前記移動体システムの被測定部位における前記状態量を測定する測定部と、
前記非接触受電部から供給される電力により動作し、前記測定部により測定された状態量を無線送信する無線送信部と、
を備え、
前記非接触受電部は、片側が開放されたE型コアであり、
前記E型コアに対して前記給電線の位置が固定されていることを特徴とする無線センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の無線センサであって、
前記状態量として温度を測定することを特徴とする無線センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の無線センサであって、
前記状態量として、前記温度に加え、前記給電線の電圧を測定することを特徴とする無線センサ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の無線センサであって、
前記被測定部位は、前記給電線が電気的に接続される端子台と当該給電線との接続部、又は当該接続部の近傍であることを特徴とする無線センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の無線センサであって、
前記端子台は、金属製の筐体の内部に設けられており、
前記無線送信部は、前記筐体の外側に配置されていることを特徴とする無線センサ。
【請求項7】
請求項1から5までの何れか一項に記載の無線センサであって、
前記非接触受電部の位置を固定する取付部を備え、
前記取付部は、前記給電線と前記E型コアの相対位置を決めることを特徴とする無線センサ。
【請求項8】
請求項1から5までの何れか一項、又は請求項7に記載に記載の無線センサと、
前記給電線から非接触で電力を得る複数の移動体と、
前記無線センサにより測定された状態量を収集する管理装置と、
を備え、
前記無線センサは、測定された状態量を無線通信により前記管理装置へ送信することを特徴とする移動体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体システムにおいて状態量を取得する無線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば搬送台車システムにおいて、レールに沿って走行する搬送台車に給電するための給電線の継ぎ目部分に対して、温度センサを含むセンサデバイスを配置する構成が知られている。特許文献1は、この種の構成を有する搬送車システムを開示する。
【0003】
特許文献1の搬送車システムは、温度センサにより端子台に電気的に接続された複数本(例えば、4本)の給電線のそれぞれの温度を検出し、検出基板により取得した温度データを無線で送信する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2019/073928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された温度センサ及び検出基板を動作させるには、電力を供給する必要がある。このため、例えば給電ケーブルの配線工事等を行う必要があるが、かかる工事により搬送車システムを長時間停止しなければならない場合がある。半導体製造工場等においては、搬送車システムの停止は避けるべきである。従って、既存のシステムに温度センサを後付け的に取り付けることが困難であった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、容易に電源を得ることができ、既存の移動体システムへの後付けが容易な無線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の無線センサが提供される。即ち、この無線センサは、移動体が給電線から非接触で電力を得る移動体システムに関する状態量を測定し、測定された状態量を無線で送信する。前記無線センサは、非接触受電部と、測定部と、無線送信部と、を備える。前記非接触受電部は、前記給電線から非接触で電力を得る。前記測定部は、前記非接触受電部から供給される電力により動作し、前記移動体システムの被測定部位における前記状態量を測定する。前記無線送信部は、前記非接触受電部から供給される電力により動作し、前記測定部により測定された状態量を無線送信する。前記非接触受電部は、片側が開放されたE型コアである。前記E型コアに対して前記給電線の位置が固定されている。
【0009】
これにより、無線センサは、移動体システムに予め備えられている給電線から、電力を非接触で得ることができる。従って、特別な電源等を設けることなく、無線センサの被測定部位への後付けを容易に行うことができる。即ち、既存の移動体システムに対して、状態量測定機能を簡単に追加することができる。更に、十分な電力を容易に得ることができる。また、給電線を容易に非接触受電部に装着することができる。
【0010】
前記の無線センサは、前記状態量として温度を測定することが好ましい。
【0011】
これにより、被測定部位の温度を監視することができる。
【0012】
前記の無線センサは、前記状態量として、前記温度に加え、前記給電線の電圧を測定することが好ましい。
【0013】
これにより、給電線の電圧を監視することができる。
【0014】
前記の無線センサにおいて、前記被測定部位は、前記給電線が電気的に接続される端子台と当該給電線との接続部、又は当該接続部の近傍であることが好ましい。
【0015】
これにより、接続部における電気的な導通不良で高温となり易い場所を対象として、温度を監視することができる。
【0016】
前記の無線センサにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記端子台は、金属製の筐体の内部に設けられている。前記無線送信部は、前記筐体の外側に配置されている。
【0017】
これにより、無線送信部が外部と無線通信を行うのに好適な環境を実現することができる。
【0020】
前記の無線センサにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この無線センサは、前記非接触受電部の位置を固定する取付部を備える。前記取付部は、前記給電線と前記E型コアの相対位置を決める。
【0021】
これにより、給電線の位置を固定することができ、電力を安定的に得ることができる。
【0022】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の移動体システムが提供される。即ち、この移動体システムは、前記無線センサと、複数の移動体と、管理装置と、を備える。前記複数の移動体は、前記給電線から非接触で電力を得る。前記管理装置は、前記無線センサにより測定された状態量を収集する。前記無線センサは、測定された状態量を無線通信により前記管理装置へ送信する。
【0023】
これにより、管理装置は、無線センサにより測定された状態量を容易に取得することができる。無線センサは、移動体システムに予め備えられた給電線から電力を非接触で得ることができる。従って、新たに電気配線を行う必要がなく、移動体システムの電気配線を簡潔にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送台車システムの概略な構成を示す模式図。
図2】端子ボックスの内部の構成を示す模式図。
図3】端子ボックスが取り付けられたレールの部分を詳細に示す斜視図。
図4】第1ケース部及びE型コアの構成を示す斜視図。
図5】装置給電部の構成を示す分解斜視図。
図6】温度検出基板と管理装置との間の通信を示す模式図。
図7】装置給電部の他の構成を示す概観図。
図8】装置給電部の他の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る搬送台車システム100の概略な構成を示す模式図である。図2は、端子ボックス4の内部の構成を示す模式図である。図3は、端子ボックス4が取り付けられたレール1の部分を詳細に示す斜視図である。図4は、第1ケース部61及びE型コア63の構成を示す斜視図である。図5は、装置給電部6の構成を示す分解斜視図である。
【0026】
図1に示す搬送台車システム(移動体システム)100は、搬送台車2により荷物を搬送することができる。搬送台車2は、天井側に設置されたレール1に沿って走行する。搬送台車システム100は、例えば、複数の処理装置(図略)を有する半導体製造工場や、複数のスタッカラック(図略)を有する自動倉庫等において用いられる。
【0027】
レール1は、例えば半導体製造工場等の天井から吊り下げられた状態で設置されている。搬送台車2としては、例えば、OHT(即ち、天井走行車)を用いることができる。OHTとは、Overhead Hoist Transferの略称である。
【0028】
搬送台車2は、電力供給装置3から供給される電力を、レール1に沿って敷設された給電経路30を介して、電磁誘導により非接触で得ることができる。これにより、搬送台車2は、給電経路30からの電力の供給を受けながら、レール1に沿って走行することができる。
【0029】
給電経路30は、略平行に配置された複数対の給電線31を有している。それぞれの給電線31は、細長い複数の導電線要素が長手方向で互いに接続された構成となっている。複数の継ぎ目部分の各々には、図2に示す端子ボックス4が配置されている。
【0030】
端子ボックス4の内部には、図2及び図3に示すように、端子台41と、本実施形態の温度センサ装置(無線センサ)5と、が配置されている。
【0031】
端子台41は、図2に示すように、筐体41a内に配置される。筐体41aは、例えば金属製とすることができる。端子台41は、1対の給電線31において、給電のための電流が流れる導電線要素同士を電気的に相互に接続するために用いられる。
【0032】
温度センサ装置5は、端子台41の近傍に配置されている。温度センサ装置5は、端子台41の近傍の給電線31の温度を検出するために用いられる。
【0033】
温度センサ装置5は、センサ本体(測定部)51と、温度検出基板(無線送信部)52と、装置給電部6と、を備える。
【0034】
センサ本体51は、例えば、温度センサから構成される。センサ本体51は、端子台41の近傍の給電線31の温度(状態量)を検出する。即ち、温度センサ装置5による被測定部位は、給電線31のうち端子台41の近傍に位置する部分である。なお、センサ本体51は、給電線31と端子台41との接続部近傍に設けられ、当該接続部近傍における温度を検出しても良い。
【0035】
センサ本体51は、端子台41の近傍の給電線31の温度に加え、給電線31における電圧を検出するものであっても良い。かかる構成においては、端子台41の近傍の給電線31の温度及び給電線31における電圧が前記状態量に相当する。
【0036】
本実施形態においては、図2に示すように、4本の導電線要素が、端子台41から紙面向かって左右方向にそれぞれ2本ずつ延在するように設けられている。センサ本体51は、図2に示すように、左右2本ずつの導電線要素のそれぞれについて、端子台41による電気的な接続箇所を挟んで2つ配置されている。4つのセンサ本体51は、それぞれの部分の温度を検出する。
【0037】
各センサ本体51は、温度の検出結果を、温度検出基板52へ有線で出力する。各センサ本体51は、温度検出基板52から供給される電力で動作する。即ち、各センサ本体51は、装置給電部6から温度検出基板52を介して供給される電力で動作する。
【0038】
温度検出基板52は、端子台41から少し離れた位置に設けられている。この温度検出基板52は、端子台41を収容する筐体41aの外部に位置する。これにより、温度検出基板52による外部装置との間の無線通信が、金属製の筐体41aによって遮断されないようにすることができる。
【0039】
温度検出基板52は、電線等を介して装置給電部6と電気的に接続され、装置給電部6から供給される電力で動作する。温度検出基板52は、各センサ本体51から供給される検出結果を後述の管理装置9へ送信する。
【0040】
センサ本体51に加え、端子台41からある程度離れた部位(例えば筐体41aの外側)に外気温センサを設け、当該外気温センサにより検出される外気温を後述の管理装置9へ別途送信するものであってもよい。あるいは、センサ本体51により検出される端子台41の近傍の給電線31の温度と、外気温センサにより検出される外気温との差分温度を後述の管理装置9へ送信するものであってもよい。この態様において、管理装置9は、かかる差分温度に基づいて異常の発生を判断する。また、外気温センサは、装置給電部6から温度検出基板52を介して供給される電力で動作する。
【0041】
次に、本実施形態の搬送台車システム100における、複数の温度検出基板52同士の間、及び温度検出基板52と管理装置9との間の通信について、図6等を参照して簡単に説明する。図6は、温度検出基板52と管理装置9との間の通信を示す説明図である。図6に示す温度検出基板52a~52gは、前述の温度検出基板52の一例である。以下、これら温度検出基板52a~52gを特に区別しない場合には、単に温度検出基板52と称する。
【0042】
本実施形態の複数の温度検出基板52のそれぞれは、中継機能を有し、適宜の間隔をあけて設けられている。温度検出基板52は、他の温度検出基板52の中継機として用いられ、より遠くまでデータを伝送できるマルチホップ通信を実現する。
【0043】
具体的には、温度検出基板52は、他の温度検出基板52同士との間で無線通信可能に構成されている。温度検出基板52は、他の温度検出基板52との無線通信により、他の温度検出基板52からの温度の検出結果を取得する。温度検出基板52は、取得した他の温度検出基板52の検出結果及び自身の検出結果を更に他の温度検出基板52又は管理装置9に送信する。
【0044】
温度検出基板52は、取得した他の温度検出基板52の検出結果及び自身の検出結果を更に他の温度検出基板52に無線送信する場合、他の温度検出基板52同士の間の無線通信における中継機として機能する。温度検出基板52は、取得した他の温度検出基板52の検出結果及び自身の検出結果を管理装置9に送信する場合、他の温度検出基板52と管理装置9との間の無線通信における中継機として機能する。
【0045】
図6に示すように、温度検出基板52a~52gは、設けられた位置等に応じて、他の温度検出基板52との間でそれぞれ異なる態様の無線通信を行う。温度検出基板52a、52b、52cは、Wi-Fi等によるメッシュネットワークを構成し、相互に所謂メッシュ通信を行う。特に、管理装置9に有線接続された温度検出基板52aと、その近傍に配置された複数の温度検出基板52(図6では温度検出基板52b、52c)との間でかかるメッシュ通信が行われることが好ましい。
【0046】
温度検出基板52bは、温度検出基板52d、52eとの間で、それぞれWi-Fiによる無線通信を行う。また、温度検出基板52cは、温度検出基板52f、52gとの間で、それぞれWi-Fiによる無線通信を行う。このように、前記メッシュネットワークを構成する温度検出基板52a、52b、52cは、それぞれの近傍に配置された複数の温度検出基板52との間で、メッシュネットワークを構成しない所謂スター型の無線通信を行う。
【0047】
温度検出基板52dは、温度検出基板52eとの間でBluetooth(登録商標)による無線通信を行う。また、温度検出基板52fは、温度検出基板52gとの間でBluetoothによる無線通信を行う。このように、前記メッシュネットワークを構成する温度検出基板52a~52cと所謂スター型の無線通信を行う複数の温度検出基板52d~52g同士は、Bluetoothによる無線通信を行う。
【0048】
複数の通信装置が相互に無線通信する通信システムでは、送信時にパケットの衝突が発生するおそれがある。Wi-Fi通信においては、CSMA/CA方式等の仕組みによりパケット同士の衝突を回避できるが、Bluetoothに基づく無線通信ではかかる仕組みがなく、各通信装置が独自の判断でパケットを送信してしまい、パケット同士の衝突が発生するおそれがある。
【0049】
そこで、本実施例の温度検出基板52は、Wi-Fi通信により他の温度検出基板52と無線通信可能に構成されるとともに、Bluetooth通信により他の温度検出基板52と無線通信可能に構成されている。そして、他の温度検出基板52から、Bluetooth通信を介して検出結果を含むパケットを受信した場合、その検出結果を含むパケットを受信した時刻に基づいて、自機がWi-Fi通信によりパケットを送信するタイミングを調整する。この際、当該Wi-Fi通信により送信されるパケットに、前記他の温度検出基板52から受信した前記検出結果を含める。
【0050】
これにより、例えば図6に示す例において、前記メッシュネットワークを構成する温度検出基板52bに温度検出基板52dが送信すべき検出結果を、パケット同士の衝突を抑制しつつ、温度検出基板52eが代替的に温度検出基板52bに送信することができる。
【0051】
管理装置9は、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ装置、タブレット端末、スマートフォン等から構成される。管理装置9は、温度検出基板52aと有線/無線で接続され、温度検出基板52aとの通信に基づいて、温度センサ装置5の検出結果を取得する。このように、管理装置9は、温度検出基板52aとの通信を介して、温度センサ装置5から取得された検出結果を収集する。得られたデータに基づいて、管理装置9は、搬送台車システム100の異常(例えば、端子台41の近傍の温度異常)が発生しているか否かを監視する。
【0052】
上述のように、温度検出基板52同士の間の無線通信等を介して、センサ本体51により検出された検出結果が他の温度検出基板52に即時に共有され、管理装置9により収集される。これにより、管理装置9は、端子台41における電気的接続の不良等によって高温になり易い端子台41の近傍の温度を、リアルタイムで監視することができる。
【0053】
装置給電部6は、図5に示すように、主として、第1ケース部61と、第2ケース部62と、E型コア(非接触受電部)63と、を備える。この第1ケース部61及び第2ケース部62は、本実施形態の取付部を構成する。
【0054】
第1ケース部61は、例えば、合成樹脂から形成される。第1ケース部61は、一側が開放された中空の箱状に形成されている。第2ケース部62は、この開放側から第1ケース部61に取り付けられる。
【0055】
第1ケース部61は、第2ケース部62が第1ケース部61に取り付けられる方向で見た場合、長方形に形成されている。第1ケース部61は、給電線31の軸方向で見た場合、E字状に形成されている。
【0056】
第1ケース部61には、切欠部61aと、ケース固定部61bと、E型コア嵌合部61cと、が形成されている。
【0057】
切欠部61aは、第1ケース部61における側壁部が一側(上側)を開放するように切り欠かれることにより形成されている。切欠部61aの開放側は、第1ケース部61における開放側と同じである。切欠部61aは、給電線31の軸方向において、第1ケース部61(側壁部)を貫通するように形成されている。これにより、切欠部61aに給電線31を通すことができる。切欠部61aにおける幅方向の寸法は、給電線31の径寸法と略同等か、それよりもわずかに大きい。これにより、切欠部61aに通された給電線31の、切欠部61aの幅方向における移動が規制され、その位置が定められる。
【0058】
切欠部61aは、所定の間隔をあけて2つ並べて形成されている。2本の給電線31のそれぞれは、対応する切欠部61aに嵌め入れることができる。それぞれの切欠部61aには、図5に示すように、給電線31の一部を収容することができる。
【0059】
ケース固定部61bは、第1ケース部61の4隅のそれぞれに1つずつ設けられている。ケース固定部61bは、後述の取付片62aを挿入可能な角筒状に形成されている。ケース固定部61bの内部には、例えば、図略の引掛け部が設けられており、挿入された取付片62aの爪部62cを引っ掛けることができる。これにより、取付片62aがケース固定部61bから抜けないように固定することができる。
【0060】
E型コア嵌合部61cは、第1ケース部61の内部に配置され、細長く延びる溝状に形成されている。この溝の長手方向は、給電線31の長手方向と垂直である。また、溝の長手方向は、2つの切欠部61aが並ぶ方向と一致する。E型コア嵌合部61cは、E型コア63の一部を収容する。図5に示すようにE型コア63がE型コア嵌合部61cに嵌合されることで、E型コア63の位置が固定される。
【0061】
第2ケース部62は、例えば、合成樹脂から形成される。第2ケース部62は、第1ケース部61に嵌合して、E字状の第1ケース部61の開放部分を閉じるカバーとして機能する。これにより、図5に示すように、第2ケース部62と第1ケース部61との間には、給電線31を差込可能な通過路が形成される。
【0062】
第2ケース部62は、図5に示すように、概ね板状に形成されている。第2ケース部62は、第1ケース部61と対面する方向で見た場合、第1ケース部61より若干小さい長方形に形成されている。
【0063】
第2ケース部62は、4つの取付片62aと、4つの押え片62bと、を備える。
【0064】
取付片62aは、第2ケース部62を第1ケース部61に固定するために用いられる。取付片62aは、第2ケース部62の4隅のそれぞれにおいて、第1ケース部61に向かって突出するように形成されている。取付片62aは、2本の給電線31が並ぶ方向における第2ケース部62の両端のそれぞれに、2本ずつ設けられている。
【0065】
取付片62aの先端には、小さな爪部62cが設けられている。この爪部62cは、2本の給電線31が並ぶ方向において、第2ケース部62の中央から遠ざかる向きに突出している。爪部62cは、取付片62aの先端の一部がL字状に折り曲げられるように形成されている。
【0066】
図5に示すように、第2ケース部62を第1ケース部61に取り付ける場合、4つの取付片62aは、第1ケース部61に形成されたケース固定部61b内に挿入される。ケース固定部61b内に挿入された取付片62aの爪部62cが図略の引掛け部に引っ掛かることで、第2ケース部62が第1ケース部61に固定される。
【0067】
押え片62bは、第1ケース部61の切欠部61aに通された給電線31の位置を固定するために用いられる。図5に示すように、押え片62bは、第1ケース部61の切欠部61aに対応する位置に設けられている。
【0068】
押え片62bは、給電線31の軸方向において、第2ケース部62の両側に2つずつ設けられている。即ち、1本の給電線31に対して、その軸方向で異なる2箇所に配置された押え片62bによって、当該給電線31が押さえられる。更に、切欠部61aの幅寸法が上述のように構成されていることで、切欠部61aに通された給電線31の、切欠部61aの幅方向における移動が規制される。即ち、給電線31が切欠部61aに通された状態で、第1ケース部61に第2ケース部62が取り付けられることで、第1ケース部61及び第2ケース部62(ひいてはE型コア63)に対して、給電線31の位置を固定することができる。
【0069】
押え片62bの先端部には、円弧状の凹部が形成されている。給電線31の軸方向で見た場合、円弧状の部分は、第1ケース部61から離れる方向へ凹むように形成されている。なお、以下の説明においては、円弧状の凹部の内面を円弧面と称する。
【0070】
第2ケース部62が第1ケース部61に嵌合した場合、押え片62bの円弧面が、第1ケース部61の切欠部61aに設置された給電線31の外周面の一部と接触する。これにより、2本の給電線31が並ぶ方向における当該給電線31の動きを規制することができる。
【0071】
上述のように、E型コア63の位置が第1ケース部61により固定される。一方、給電線31の位置は、第2ケース部62の押え片62b等により固定される。即ち、第1ケース部61及び第2ケース部62の組合せにより、給電線31とE型コア63との相対的な位置決めを行うことができる。この結果、安定した誘電電力を得ることができる。
【0072】
E型コア63は、例えばフェライト等の磁性材料から形成される。E型コア63は、図4及び図5に示すように、給電線31の軸方向で見たときにE字状に形成される。E型コア63には、2本の給電線31が並ぶ方向において適宜の間隔をあけて、2つのコア切欠部63aが並べて形成されている。2つのコア切欠部63aは、E型コア63の同じ側(片側)を開放させるように形成されている。E型コア63は、コア切欠部63aが切欠部61aと互いに対応するように、第1ケース部61の内部に嵌められている。
【0073】
E型コア63は、図4に示すように、2本の外側突起63bと、中央突起63cと、を備える。
【0074】
外側突起63bは、E型コア63の長手方向両側外側のそれぞれに1本ずつ設けられている。
【0075】
中央突起63cは、E型コア63の中央位置に設けられている。中央突起63cは、2つの外側突起63bの間に配置されている。中央突起63cの外周面には、例えば銅線からなる巻き線64が配置されている。この巻き線64は、2次コイルに相当する。
【0076】
E型コア63のコア切欠部63aのそれぞれに設置される給電線31の部分は、1次コイルに相当する。即ち、給電線31に交流電流を流すと、生成した磁束に比例した誘電電流が巻き線64に流れる。この電磁誘導により、給電線31から電力を非接触で得ることができる。
【0077】
上述のように、本実施形態の温度センサ装置5は装置給電部6を備えているので、給電ケーブルの配線作業等を要することなく容易に取り付けることができる。また、端子台41の近傍において、2本の給電線31が第1ケース部61の切欠部61aのそれぞれに位置するように第1ケース部61を配置して、この第1ケース部61に第2ケース部62を嵌合することで、既存の端子台41に対して簡単に適用することができる。
【0078】
図7は、装置給電部6の別の一例について概観を示す図であり、図8は、その断面図である。以下、これら図7及び図8を用いて、装置給電部6の別の構成例について説明する。なお、以下の説明において、図5及び図6を用いて説明した実施形態と共通する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
この構成例の装置給電部6は、ケース部65を備える。ケース部65は、第1ケース部65aと、第2ケース部65bと、を備える。第1ケース部65a及び第2ケース部65bは、ヒンジ部65cにおいて連結されており、当該ヒンジ部65cを支点として相互に回動し開閉可能とされている。第1ケース部65aにおけるヒンジ部65cとは反対側の端部には係合爪部65dが、第2ケース部65bにおけるヒンジ部65cとは反対側の端部には被係合部65eが、それぞれ設けられている。係合爪部65dが、被係合部65eに係合させられることで、第1ケース部65aと第2ケース部65bとが相互に嵌め合わされ、ヒンジ部65cを支点とする回動が不能となるように構成されている。
【0080】
第1ケース部65aと第2ケース部65bとが相互に嵌め合わされることで、ケース部65には1対の窓部65fが形成される。E型コア63のコア切欠部63aには、ウレタン樹脂等の電気絶縁体からなる充填材65gが設けられている。図7に示すように、窓部65fに相当する位置に給電線31が挿入された状態で、第1ケース部65aと第2ケース部65bとが相互に嵌め合わされると、充填材65gが弾性変形させられるとともに、当該給電線31が窓部65fと充填材65gとの間で挟持され、その位置が規制されるようになっている。なお、図8においては、給電線31及び第1ケース部65a側の窓部65fを破線で示すとともに、充填材65gが弾性変形させられる前(力が加わっていない状態)の形状を例示している。
【0081】
図7に示すように、1対の給電線31が窓部65fと充填材65gとの間で挟持されることで、当該給電線31に対してケース部65が保持される。このため、ケース部65は、レール1、端子ボックス4等には固定されていない。図7及び図8においては、ケース部65における第2ケース部65bが端子ボックス4側となるように、ケース部65が1対の給電線31に取り付けられているが、第1ケース部65aが端子ボックス4側となるように取り付けられてもよい。
【0082】
図8に示すように、第2ケース部65bにおける底部65hの厚み寸法tbは、第1ケース部65aにおける底部65jの厚み寸法taよりも大きい。かかる構成により、図8に示すようにケース部65(第2ケース部65b)と端子ボックス4とが最も接近した状態においても、E型コア63の開放端(外側突起63b及び中央突起63cが突出する側)は、端子ボックス4に対して少なくとも底部65hの厚み寸法tbに相当する距離を隔てて位置される。この厚み寸法tbは、E型コア63から発生させられる磁界が、端子ボックス4を構成する部材に渦電流を発生させるのを抑制するために必要十分な厚みとされる。
【0083】
端子ボックス4は、例えばアルミニウム合金の導電体から構成される。このため、E型コア63の開放端が端子ボックス4に近接して設けられると、E型コア63から発生させられる磁界が、端子ボックス4を構成する導電性板材に渦電流を発生させ、電力ロスが発生して給電効率が低下するおそれがある。本構成例においては、第2ケース部65bにおける底部65hの厚み寸法tbが十分に大きく構成されていることで、ケース部65内に収容されるE型コア63の開放端と端子ボックス4との間に十分な距離を保つことができる。これにより、E型コア63により発生させられた磁界が、端子ボックス4を構成する導電性板材に渦電流を発生させるのを抑制でき、装置給電部6の給電効率低下を防止できる。
【0084】
一方で、第1ケース部65aにおける底部65jの厚み寸法taは、第2ケース部65bにおける底部65hの厚み寸法tbよりも小さいが、E型コア63における基部側(開放端とは反対側)から外部に向けて発生させられる磁界は、開放端側から外部に向けて発生させられる磁界に比べて十分に小さいため、E型コア63における基部側に発生させられた磁界が周囲の導電性板材等に与える影響は小さい。このため、ケース部65が給電線31に対して、第1ケース部65aが端子ボックス4側となるように取り付けられた構成において、ケース部65(第1ケース部65a)と端子ボックス4とが最も接近した状態においても、E型コア63により発生させられた磁界が端子ボックス4を構成する部材に渦電流を発生させることはなく、装置給電部6の給電効率低下を防止できる。
【0085】
以上のように、本構成例によれば、ケース部65が給電線31に対して、第1ケース部65a及び第2ケース部65bの何れが端子ボックス4側となるように取り付けられても、E型コア63により発生させられた磁界が、端子ボックス4を構成する部材に渦電流を発生させるのを抑制でき、装置給電部6の給電効率低下を防止できる。このため、作業者はケース部65を給電線31に対して取り付ける際、第1ケース部65a及び第2ケース部65bの何れが端子ボックス4側となるように取り付けてもよく、その向きに気を払う必要がないため、取付効率が向上するという利点もある。
【0086】
なお、図7及び図8には図示していないが、ケース部65を給電線31に取り付けた状態において、ケース部65に対して端子ボックス4を構成する部材の反対側には、レール1に端子台41を取り付けるための取付部材が位置することになる。この取付部材は、例えば鉄材等の導電性板材から構成されている。鉄材はアルミニウム部材に比べて体積抵抗率が大きく、磁界が及んだ際に渦電流が流れにくいものの、E型コア63により発生させられた磁界が及ぶことで渦電流が発生させられるおそれがある。しかしながら、上述のように本構成例のケース部65においては、第1ケース部65a及び第2ケース部65bのうち何れの側に導電性板材が接近しても渦電流の発生が抑制されるように構成されているため、端子ボックス4を構成する部材及び取付部材の何れにおいても渦電流の発生を抑制でき、装置給電部6の給電効率低下を防止できる。
【0087】
以上に説明したように、本実施形態の温度センサ装置5は、搬送台車2が給電線31から非接触で電力を得る搬送台車システム100に関する温度を測定し、測定された温度を無線で送信する。温度センサ装置5は、E型コア63と、センサ本体51と、温度検出基板52と、を備える。E型コア63は、給電線31から非接触で電力を得る。センサ本体51は、E型コア63から供給される電力により動作し、搬送台車システム100の被測定部位における温度を測定する。温度検出基板52は、E型コア63から供給される電力により動作し、センサ本体51により測定された温度を無線送信する。
【0088】
これにより、温度センサ装置5は、搬送台車システム100に予め備えられている給電線31から、電力を非接触で得ることができる。従って、特別な電源等を設けることなく、温度センサ装置5の被測定部位への後付けを容易に行うことができる。即ち、既存の搬送台車システム100に対して、温度測定機能を簡単に追加することができる。
【0089】
また、本実施形態の温度センサ装置5は、状態量として、温度を測定する。
【0090】
これにより、被測定部位の温度を監視することができる。
【0091】
また、温度センサ装置5は、状態量として、温度に加え、給電線31の電圧を測定しても良い。
【0092】
この場合、温度に加えて、給電線31の電圧を監視することができる。
【0093】
また、本実施形態の温度センサ装置5において、被測定部位は、給電線31が電気的に接続される端子台41と当該給電線31との接続部、又は当該接続部の近傍である。
【0094】
これにより、接続部における電気的な導通不良で高温となり易い場所を対象として、温度を監視することができる。
【0095】
また、本実施形態の温度センサ装置5において、端子台41は、金属製の筐体41aの内部に設けられている。温度検出基板52は、筐体41aの外側に配置されている。
【0096】
これにより、温度検出基板52が外部と無線通信を行うのに好適な環境を実現することができる。
【0097】
また、本実施形態の温度センサ装置5において、E型コア63は、片側が開放された形状となっている。
【0098】
これにより、十分な電力を容易に得ることができる。また、給電線31を容易にE型コア63に装着することができる。
【0099】
また、本実施形態の温度センサ装置5は、E型コア63の位置を固定する第1ケース部61及び第2ケース部62を備える。第1ケース部61及び第2ケース部62は、給電線31とE型コアの相対位置を決める。
【0100】
これにより、給電線31の位置を固定することができ、電力を安定的に得ることができる。
【0101】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0102】
無線センサは、温度センサ装置5の代わりに、例えば、湿度を検出する湿度センサ、物品の有無等を検出する赤外線センサ、機械的な機構で状態を検知するメカニカルセンサ、過電流保護用の電流センサ、液体又は気体の流量を検知する流量センサ等とすることができる。
【0103】
温度検出基板52を介さず、各センサ本体51は、子機7との無線通信を経由して、検出結果を管理装置9へ送信しても良い。
【0104】
取付部としての第1ケース部61及び第2ケース部62の構成は上記に限定されない。E型コア63と給電線31との相対位置を固定できれば、取付部を他の形状に変更することができる。
【0105】
第2ケース部62に、I型コア又はE型コアが内蔵されても良い。
【符号の説明】
【0106】
2 搬送台車(移動体)
31 給電線
5 温度センサ装置(無線センサ)
51 センサ本体(測定部)
52 温度検出基板(無線送信部)
63 E型コア(非接触受電部)
100 搬送台車システム(移動体システム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8