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特許7344498画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/405 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
H04N1/405 510A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019237087
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106335
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000131625
【氏名又は名称】株式会社シンク・ラボラトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】堀内 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 緑
(72)【発明者】
【氏名】重田 核
(72)【発明者】
【氏名】李 東輝
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-219162(JP,A)
【文献】特開2000-253255(JP,A)
【文献】特開2001-157056(JP,A)
【文献】特開2015-216455(JP,A)
【文献】特開2000-333010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値入力画像データを多値量子化出力画像データに変換する画像処理装置であって、
前記多値入力画像データのテクスチャ情報を検出するテクスチャ検出部と、前記テクスチャ情報を強調するように前記多値入力画像データに対する階調変換処理を実行することで、前記多値入力画像データを前記多値量子化出力画像データに変換する誤差拡散部と、
前記多値入力画像データ及び前記誤差拡散部で量子化された多値量子化画像データの差分画像を生成する差分演算部と、前記差分画像を入力する視覚特性フィルタである視覚処理部と、前記テクスチャ情報を保存するように修正量を演算する修正量演算部と、前記修正量に基づいて前記多値入力画像データを修正する多値画像修正部と、を有し、
前記多値画像修正部の出力に基づいて前記誤差拡散部で多値量子化出力画像データを生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記テクスチャ情報が、テクスチャ部分の情報であり、前記テクスチャ部分の情報が、表面凹凸情報、表面模様情報、明度情報、エッジ情報又は輪郭情報であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像処理装置を用いた、多値入力画像データを多値量子化出力画像データに変換する画像処理方法であって、
前記多値入力画像データのテクスチャ情報をテクスチャ検出部で検出するテクスチャ検出工程と、
前記テクスチャ情報を強調するように前記多値入力画像データに対する階調変換処理を実行することで、前記多値入力画像データを誤差拡散部で前記多値量子化出力画像データに変換する工程と、を有する画像処理方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の画像処理装置を用いた、多値入力画像データを多値量子化出力画像データに変換する画像処理方法であって、
前記多値入力画像データのテクスチャ情報を用い、
前記テクスチャ情報を強調するように前記多値入力画像データに対する階調変換処理を実行することで、前記多値入力画像データを誤差拡散部で前記多値量子化出力画像データに変換する工程、を有する画像処理方法。
【請求項5】
前記多値入力画像データ及び前記誤差拡散部で量子化された多値量子化画像データの差分画像を差分演算部で生成する工程と、前記差分画像を、視覚特性フィルタである視覚処理部に入力する工程と、前記テクスチャ情報を保存するように修正量演算部で修正量を演算する工程と、前記修正量に基づいて前記多値入力画像データを多値画像修正部で修正する工程と、前記多値画像修正部の出力に基づいて前記誤差拡散部で前記多値量子化出力画像データを生成する工程と、を有することを特徴とする請求項3又は4記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記修正量演算部で修正量を演算する工程を反復的に繰り返すことを特徴とする請求項記載の画像処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1又は2記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクロ又はカラーの多値入力画像データを多値量子化画像データに変換する画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷画像の二値量子化手法として誤差拡散法が広く普及している。誤差拡散法は、二値量子化するときの量子化誤差を周囲に伝搬し、白黒の密集度により擬似的に中間濃度を再現するものである。誤差拡散法は、構成、制御が簡単である反面、印刷画像の輪郭部分の二値量子化の空間的なばらつきが大きくなり、輪郭部分を正確に再現できないという問題点を有していた。
【0003】
この問題点に対して、特許文献1に記載された画像処理装置、プログラム、方法は、一般に印刷画像の量子化手法として利用されている誤差拡散法を利用した際に生じる印刷文字の輪郭部分の量子化の空間的なばらつきの軽減を目的として、エッジ部分の量子化と非エッジ部分の量子化を別々に行った後に、それらを論理合成することによって、エッジ部分の滑らかさを保存した量子化を実現している。
【0004】
しかしながら、特許文献1は、特許文献1の実施例図10および図11に示されるように、背景と明確に輝度差のある文字などを対象としており、写真のような自然画像に対しては、実施例図5に示されるような、エッジが明確である特殊な箇所のみが処理され、基本的には写真などには影響しないように工夫されている。したがって、本発明で対象とするような画像内のテクスチャの保存に適用することができない。
【0005】
また、市販のプリンタでは二値量子化画像データが用いられているが、新聞や広告など、専門印刷の分野では必ずしも二値量子化画像データを出力とせず、むしろ階調の表現力向上のために、四値などの多値量子化画像を印刷することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-98552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、モノクロ又はカラーの多値入力画像データを多値量子化画像データに変換する手法を実現し、写真などの画像内のテクスチャの強調に適用できる画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の画像処理装置は、多値入力画像データを多値量子化出力画像データに変換する画像処理装置であって、前記多値入力画像データのテクスチャ情報を検出するテクスチャ検出部と、前記テクスチャ情報を強調するように前記多値入力画像データに対する階調変換処理を実行することで、前記多値入力画像データを前記多値量子化出力画像データに変換する誤差拡散部と、を有する画像処理装置である。
【0009】
前記テクスチャ情報が、表面凹凸情報、表面模様情報、明度情報、エッジ情報又は輪郭情報であるのが好適である。
【0010】
前記テクスチャ情報に応じて、前記変換の量子化誤差の分配を算出する誤差分配部を有するのが好適である。
【0011】
前記テクスチャ情報が、前記多値入力画像データの質感強調処理情報であるのが好適である。
【0012】
前記質感強調処理情報が、周波数サブバンド情報であるのが好適である。
【0013】
前記多値入力画像データ及び前記誤差拡散部で量子化された多値量子化画像データの差分画像を生成する差分演算部と、前記差分画像を入力する視覚特性フィルタである視覚処理部と、前記テクスチャ情報を保存するように修正量を演算する修正量演算部と、前記修正量に基づいて前記多値入力画像データを修正する多値画像修正部と、をさらに有し、前記多値画像修正部の出力に基づいて前記誤差拡散部で多値量子化出力画像データを生成するのが好適である。
【0014】
本発明の画像処理方法は、多値入力画像データを多値量子化出力画像データに変換する画像処理方法であって、前記多値入力画像データが事前テクスチャ情報処理がなされていない場合には、前記多値入力画像データのテクスチャ情報をテクスチャ検出部で検出するテクスチャ検出工程と、前記多値入力画像データが事前テクスチャ情報処理がなされている場合には、前記多値入力画像データのテクスチャ情報を用い、前記テクスチャ情報を強調するように前記多値入力画像データに対する階調変換処理を実行することで、前記多値入力画像データを誤差拡散部で前記多値量子化出力画像データに変換する工程と、を有する画像処理方法である。
【0015】
前記画像処理方法に、前記多値入力画像データ及び前記誤差拡散部で量子化された多値量子化画像データの差分画像を差分演算部で生成する工程と、前記差分画像を、視覚特性フィルタである視覚処理部に入力する工程と、前記テクスチャ情報を保存するように修正量演算部で修正量を演算する工程と、前記修正量に基づいて前記多値入力画像データを多値画像修正部で修正する工程と、前記多値画像修正部の出力に基づいて前記誤差拡散部で前記多値量子化出力画像データを生成する工程と、をさらに有するのが好適である。
【0016】
前記修正量演算部で修正量を演算する工程を反復的に繰り返すのが好適である。
【0017】
本発明のプログラムは、コンピュータを、前記画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、モノクロ又はカラーの多値入力画像データを多値量子化画像データに変換する手法を実現し、写真などの画像内のテクスチャの強調に適用できる画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供することができるという著大な効果を有する。さらに、本発明によれば、カラー画像を分版したCMYKなどの画像に本発明の処理を適用することによって、カラーの多値画像の処理も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の画像処理装置の一つの実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一つの実施の形態に係る画像処理方法の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の画像処理装置の別の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
図4】本発明の別の実施の形態に係る画像処理方法の流れを示すフローチャートである。
図5】本発明に係る画像処理装置を用いた印刷装置を示す概略構成図である。
図6】実施例1及び比較例1の結果を示す自然画像であり、(a)は比較例1の結果であり、(b)は実施例1の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。なお、同一部材は同一符号で表される。
【0021】
図において、符号10A,10Bは本発明に係る画像処理装置のそれぞれの実施形態を示す。画像処理装置10A,10Bは、例えば図5に示すようなワンパス方式のインクジェットプリンタ50などに好適に用いられる。図5において、インクジェットプリンタ50は、ロール12a,12bに掛け渡されたウェブ状印刷基材14に、例えば、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)の各色のインクを印刷するためのインクジェットヘッド16a,16b,16c,16dを備えており、ヘッド制御部18によって制御されてインクジェットヘッド16a,16b,16c,16dからインクが吐出される。
【0022】
画像処理装置10A,10Bは、ヘッド制御部18に画像データを出力することで、インクジェットヘッド16a,16b,16c,16dによってウェブ状印刷基材14に印刷が行われる構成とされている。
【0023】
<画像処理装置10A>
画像処理装置10Aの概略構成を図1のブロック図に示す。画像処理装置10Aは、図1に示すように、多値入力画像データ20を多値量子化出力画像データ28に変換する画像処理装置であって、前記多値入力画像データ20のテクスチャ情報を検出するテクスチャ検出部22と、前記テクスチャ情報を強調するように前記多値入力画像データ20に対する階調変換処理を実行することで、前記多値入力画像データ20を前記多値量子化出力画像データに変換する誤差拡散部26と、を有する画像処理装置である。
【0024】
画像処理装置10Aは、例えばCPU等の制御部及び記憶部を備えるコンピュータであり、画像処理装置10Aの各処理を行うようにプログラムによって各手段として機能せしめられる。また、画像処理装置10Aの各処理は、インターネット等のネットワークを介して行われるようにしてもよい。
【0025】
多値入力画像データ20は、8ビットなどの階調などで表現されるカラー又はモノクロのディジタル画像であり、これを2値でない全ての画像(例えば、8ビット形式で表現される画像)に置き換えるように量子化して多値量子化出力画像データ28とする。
【0026】
画像処理装置10Aによる画像処理方法の一つの実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。前記画像処理方法は、コンピュータの記憶部に格納されたプログラムによって実行されることができる。
【0027】
画像処理装置10Aによる本発明の画像処理方法は、モノクロ又はカラーの多値入力画像データ20をモノクロ又はカラーの多値量子化出力画像データ28に変換する画像処理方法である。まず、他の情報端末や記憶媒体などから、モノクロ又はカラーの多値入力画像データ20を入力する(多値画像データ入力工程、S100)。
【0028】
前記多値入力画像データ20が、事前に何らかのテクスチャ情報を扱うような画像処理(例えば質感を強調するような画像処理)がされているか判断し(事前テクスチャ情報処理検出工程、S102)、前記多値入力画像データ20が、事前に何らのテクスチャ情報処理(例えば質感を強調するような画像処理)もなされていない場合には、前記多値入力画像データ20のテクスチャ情報をテクスチャ検出部22で検出する(テクスチャ検出工程、S104)。
【0029】
ここで、テクスチャ情報とは、テクスチャ部分の情報という意味である。テクスチャ部分は、物理的には画像中の輝度勾配が高く、局所領域の輝度勾配分散が高い箇所となり、画像特徴としては、輝度変化のある細かな表面凹凸や表面模様、細かな物体の集合における輪郭(エッジ)などの部分のことを指す。そして、テクスチャ情報としては、かかるテクスチャ部分の、例えば、表面凹凸情報や表面模様の情報、明度情報、細かな物体の集合における輪郭情報又はエッジ情報が挙げられる。なお、これらの情報は、ノイズ除去後の輝度勾配と局所輝度勾配分散情報につき、それらの値の違いによって、知覚的に「凹凸」「模様」「エッジ」などと称している。
【0030】
テクスチャ検出工程S104では、例えば、前記テクスチャ情報がエッジ情報の場合、前記多値入力画像データに対して予めノイズ除去によってノイズ成分を分離した後に、前記多値入力画像データから輝度信号(明度)の勾配を利用してエッジ強度を抽出し、抽出されたエッジ強度の局所領域の分散を用いて、テクスチャ強度を算出することで、前記テクスチャ情報を検出する。なお、ノイズを除去しないと、ノイズ成分もテクスチャ部分と見なされるため、予め分離するのが好ましい。
【0031】
また、前記多値入力画像データ20が事前に何らかのテクスチャ情報を扱うような画像処理(例えば質感を強調するような画像処理)がなされている場合には、前記多値入力画像データ20のテクスチャ情報を用いる(テクスチャ情報の利用工程、S106)。この場合、既存のテクスチャ情報を利用するため、テクスチャ情報を検出するための演算量が削減される利点がある。
【0032】
また、誤差分配部24では、前記テクスチャ情報の強さに応じて、誤差拡散法の量子化誤差の分配を決定する機能を有しており、前記テクスチャ情報を優先的に保存するように誤差分配を実現する(誤差分配工程、S108)。
【0033】
そして、前記テクスチャ情報を強調するように前記多値入力画像データに対する階調変換処理を実行することで、前記多値入力画像データを誤差拡散部26で前記多値量子化出力画像データに変換する(誤差拡散部での量子化工程、S110)。誤差拡散部26では、誤差分配部24で決定された誤差分配結果に基づいて、量子化を実施する。そして、1画素ずつラスタースキャンやベクタースキャンなどによって全画素順番に繰り返し処理する(全画素量子化されたか否かの判断工程、S112)。
【0034】
全画素量子化されると、多値量子化出力画像データ28として出力する(多値量子化出力画像データ出力工程、S114)。残っている画素がある場合には、誤差分配部24での誤差分配工程S108に戻って繰り返す。
【0035】
なお、上述した画像処理装置10Aによる画像処理方法の例では、事前テクスチャ情報処理検出工程S102を設けた例を示したが、画像処理装置10Aによる画像処理方法の他の例としては、事前テクスチャ情報処理検出工程S102を設けずに、前記多値入力画像データ20に事前テクスチャ情報処理がされている場合及び事前テクスチャ情報処理がされていない場合のそれぞれの処理を行うようにすることもできる。
【0036】
<画像処理装置10B>
画像処理装置10Bの概略構成を図3のブロック図に示す。画像処理装置10Bは、図3に示すように、多値入力画像データ30を多値量子化出力画像データ44に変換する画像処理装置であって、前記多値入力画像データ30のテクスチャ情報を検出するテクスチャ検出部32と、前記テクスチャ情報を強調するように前記多値入力画像データ30に対する階調変換処理を実行することで、前記多値入力画像データ30を前記多値量子化出力画像データ44に変換する誤差拡散部42と、を有する画像処理装置である。
【0037】
画像処理装置10Bは、さらに、前記多値入力画像データ30及び前記誤差拡散部42で量子化された多値量子化画像データの差分画像を生成する差分演算部36と、前記差分画像を入力する視覚特性フィルタである視覚処理部38と、前記テクスチャ情報を保存するように修正量を演算する修正量演算部34と、前記修正量に基づいて前記多値入力画像データ30を修正する多値画像修正部40と、を有し、前記多値画像修正部40の出力に基づいて前記誤差拡散部42で多値量子化出力画像データ44を生成する構成とされている。
【0038】
画像処理装置10Bは、上述した画像処理装置10Aと同様に、例えばCPU等の制御部及び記憶部を備えるコンピュータであり、画像処理装置10Bの各処理を行うようにプログラムによって各手段として機能せしめられる。また、画像処理装置10Bの各処理は、インターネット等のネットワークを介して行われるようにしてもよい。
【0039】
多値入力画像データ30は、多値入力画像データ20と同じであり、8ビットなどの階調などで表現されるディジタル画像であり、これを2値でない全ての画像(例えば、8ビット形式で表現される画像)に置き換えるように量子化して多値量子化出力画像データ44とする。
【0040】
画像処理装置10Bによる画像処理方法の一つの実施の形態を図3及び図4に基づいて説明する。前記画像処理方法は、上述した画像処理装置10Aと同様に、コンピュータの記憶部に格納されたプログラムによって実行されることができる。
【0041】
画像処理装置10Bによる本発明の画像処理方法は、モノクロ又はカラーの多値入力画像データ30をモノクロ又はカラーの多値量子化出力画像データ44に変換する画像処理方法である。まず、他の情報端末や記憶媒体などから、モノクロ又はカラーの多値入力画像データ30を入力する(多値画像データ入力工程、S200)。
【0042】
前記多値入力画像データ30が、事前に何らかのテクスチャ情報を扱うような画像処理(例えば質感を強調するような画像処理)がされているか判断し(事前テクスチャ情報処理検出工程、S202)、前記多値入力画像データ30が、事前に何らのテクスチャ情報を扱うような画像処理(例えば質感を強調するような画像処理)もなされていない場合には、前記多値入力画像データ30のテクスチャ情報をテクスチャ検出部32で検出する(テクスチャ検出工程、S204)。テクスチャ情報やテクスチャ検出工程S204については上述の画像処理装置10Aで説明した通りである。
【0043】
また、前記多値入力画像データ30が事前に何らかのテクスチャ情報を扱うような画像処理(例えば質感を強調するような画像処理)がなされている場合には、前記多値入力画像データ30のテクスチャ情報を用いる。
【0044】
また、事前に何らかのテクスチャ情報を扱うような画像処理がなされている前記多値入力画像データ30に対しては、多値画像修正部40で修正し(多値画像修正工程、S212)、誤差拡散部42で量子化する(量子化工程、S214)。
【0045】
前記S214で誤差拡散部42で量子化された多値量子化画像データは、前記差分演算部36に送られて前記多値入力画像データ30と前記S214で量子化された多値量子化画像データとの差分画像が差分演算部36で生成される(差分画像生成工程、S206)。
【0046】
この生成された差分画像は、視覚処理部38で視覚特性のフィルタを通した後(フィルタ処理工程、S208)、修正量演算部34で、テクスチャ検出工程S204でテクスチャ検出部32によって得られたテクスチャ情報と比較し、多値量子化画像がテクスチャ情報を保存するように、修正量演算部34で修正量を導出する(修正量導出工程、S210)。
【0047】
そして、修正量演算部34による修正量導出工程S210での修正量に基づいて、入力された多値入力画像を多値画像修正部40で修正(多値画像修正工程、S212)し、これを誤差拡散部42で量子化する(量子化工程、S214)。そして、1画素ずつラスタースキャンやベクタースキャンなどによって全画素順番に繰り返し処理する(全画素量子化されたか否かの判断工程、S216)。
【0048】
全画素量子化されると、多値量子化出力画像データ44として出力する(多値量子化出力画像データ出力工程、S218)。残っている画素がある場合には、差分演算部36での差分画像生成工程S206に戻って繰り返す。
【0049】
なお、上述した画像処理装置10Bによる画像処理方法の例では、事前テクスチャ情報処理検出工程S202を設けた例を示したが、画像処理装置10Bによる画像処理方法の他の例としては、事前テクスチャ情報処理検出工程S202を設けずに、前記多値入力画像データ30に事前テクスチャ情報処理がされている場合及び事前テクスチャ情報処理がされていない場合のそれぞれの処理を行うようにすることもできる。
【0050】
上記したプロセスを反復的に繰り返すことにより、知覚的にテクスチャ情報を保存した量子化を実現できる。画像処理装置10Bによる本発明の画像処理方法は、画像処理装置10Aによる画像処理方法と比べて、一般的に良好な量子化結果が得られる利点がある。
【0051】
上記した誤差拡散部26,42では、誤差拡散法により、1画素ずつラスタースキャンやベクタースキャンなどによって全画素順番に量子化を行う。誤差拡散法は、中間階調の処理で画像を滑らかに表現する方法の一種である。ディジタル画像の画素(ピクセル)の処理で生じた誤差を周囲の画素へ割り振り、その後も誤差を割り振った影響を考慮して処理を行うことで全体としての誤差を最小にする方法である。例として、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)のインクによる四値量子化画像を出力とする場合について説明する。
【0052】
例えば、C,M,Y,Kのインクを用いる場合、CMYKがそれぞれ四値を持つことになり、以下の方法でそれぞれのインクについて四値を決定する。
<C(シアン)の場合>
output = 0(濃いシアン), if X ≦ a1
output = 85(中間のシアン), if a1< X ≦ a
output = 170(薄いシアン), if a < X ≦a3
output = 255(インクを置かない), if a3 < X
ここで、a1,a,a3 は液滴サイズとインク濃度によって決定される閾値パラメータであり、現行のカラー校正技術によって、入力と印刷画像の色差が最小となるように決定される。他のM,Y,Kのそれぞれのインクについても上記のようにして四値を決定する。
【0053】
入力階調数より小さければ、本発明は四値に限らず、任意の階調数の量子化にも適用できる。なお、インクの特性、紙の特性、ヘッドの特性など、印刷過程における様々な要因が積み重なって非線形に生じるため、例えばディジタル画像のカラーチャートを印刷して、画像の色と印刷結果を測色して推定して四値を決定することになる。誤差拡散部26,42では、この閾値パラメータに基づいて誤差を拡散することで、1画素ずつラスタースキャンやベクタースキャンなどによって全画素順番に量子化を行う。C以外の他のM,Y,Kのそれぞれのインクについても同様にして量子化を行う。
【0054】
また、他の例として、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)のインクによる六値量子化画像を出力とする場合について説明する。例えば、C,M,Y,Kのインクを用いる場合、CMYKがそれぞれ六値を持つことになり、以下の方法でそれぞれのインクについて六値を決定する。
<C(シアン)の場合>
output = 0(濃いシアン), if X ≦ a1
output = 51(やや濃いシアン), if a1< X ≦ a
output = 102(中間のシアン), if a < X ≦a3
output = 153(やや薄いシアン), if a3 < X ≦a4
output = 204(薄いシアン), if a4 < X ≦a5
output = 255(インクを置かない), if a5 < X
ここで、a1,a,a3,a4,a5 は上記と同様に、液滴サイズとインク濃度によって決定される閾値パラメータである。誤差拡散部26,42では、これら閾値パラメータに基づいて誤差を拡散することで、1画素ずつラスタースキャンやベクタースキャンなどによって全画素順番に量子化を行う。C以外の他のM,Y,Kのそれぞれのインクについても上記のようにして六値を決定し、同様にして量子化を行う。
【実施例
【0055】
本発明の実施例1及び比較例1による写真画像の印刷結果を図6に示す。実施例1及び比較例1では、株式会社シンク・ラボラトリー社製のインクジェット印刷機FXIJを用いて、水性インク用600dpiインクジェットKJ48を使用し、C,M,Y,Kの水性インクを用いて印刷した。各液滴サイズは、0pL(インク吐出量ゼロピコリットル,ドットなし),3pL,4pL,5pLを使用した。
【0056】
<比較例1>
図6(a)は従来法の誤差拡散法を600dpiで四値量子化した画像データをインクジェット印刷した結果である。図6(a)では、テクスチャの構造を考慮せずに空間的に多値量子化に伴う量子化誤差を拡散しているため、テクスチャ情報が十分に再現されていない。すなわち、部分的な拡大画像は、例えば縦線を再現できていない。また、印刷プロセスで、インクによってテクスチャはほとんどつぶれる結果となった。
【0057】
<実施例1>
図6(b)は図1及び図2で示した本発明の画像処理装置及び画像処理方法を用いて600dpiで四値量子化して得られた多値量子化画像データをインクジェット印刷した結果である。上述したC,M,Y,Kのインクを用いる場合の例と同様にして、それぞれのインクについて四値を決定した。誤差拡散部26では、この閾値パラメータに基づいて誤差を拡散することで、1画素ずつラスタースキャンやベクタースキャンなどによって全画素順番に量子化を行った。それぞれのインクについて同様にして量子化を行った。本発明による図6(b)では、例えば、部分的な拡大画像の縦線が明確に表現されるように、入力濃淡画像のテクスチャ情報を強調する形で量子化して表現できている。印刷プロセスを経ても、テクスチャ情報を保存した印刷結果を得ることが可能となった。
【0058】
このように、本発明によれば、印刷紙、インク、ヘッドなどのハードウェアを変更せずに、従来の誤差拡散法の印刷結果と比較して、本発明は印刷対象のオブジェクトが有するテクスチャや質感を向上できる優位性が確認できた。
【0059】
さらに、従来の誤差拡散法は高輝度ディスプレイの低輝度コントラストを表現するための技術としても用いられている。そして、ディスプレイの技術分野においても、画像内のテクスチャを強調することは重要な課題である。そこで、本発明の量子化技術をディスプレイに採用すれば、テクスチャの強調に適用できるテレビなどのディスプレイを実現することができる。
【0060】
なお、上記において、テクスチャ検出部の具体的構成については示していないが、例えば、画像のエッジの強度を微分フィルタによって抽出する。抽出された強度の高いエッジには、画像内のノイズや物体の輪郭が含まれているため、テクスチャ情報を検出するためには、抽出されたエッジからそれらを除去する必要がある。各画素の局所領域における濃度の分散値が大きな場合をノイズや物体の輪郭と仮定し、それらの逆数をエッジ強度に乗じることによって、テクスチャ情報のみを検出することができる。
【0061】
なお、テクスチャ情報として、縦線、透明感(明度情報)、エッジ情報又は輪郭情報について説明したが、物体の質感、表面状態に関連する凹凸情報など、他のテクスチャ情報でもよい。
【0062】
また、質感強調処理のために用いられた既存のテクスチャ情報として、周波数サブバンド情報などが考えられるが、他のテクスチャ情報でもよい。
【0063】
また、画像処理装置10Bを用いた画像処理方法(図3及び図4)において、修正量を求めて、修正量に基づいて制御するプロセスを反復的に繰り返したが、反復的に繰り返す回数は、回数が多いほど、良好な量子化結果を得ることができる反面、回数が少ないほど、少ない演算量になる特徴を有する。また、反復的に繰り返さない構成でもよく、その場合、最も演算量を少なくできる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、写真などの画像内のテクスチャの強調に適用できる画像処理装置、画像処理方法及びプログラムとして産業上利用可能である。本発明は、商業用印刷機、家庭用プリンタ、ディスプレイ、テレビ、ディジタルカメラ、画像処理ソフトウェアなどに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
10A,10B:画像処理装置、12a,12b:ロール、14:ウェブ状印刷基材、16a,16b,16c,16d:インクジェットヘッド、18:ヘッド制御部、20,30:多値入力画像データ、22,32:テクスチャ検出部、24:誤差分配部、26,42:誤差拡散部、28,44:多値量子化出力画像データ、30:多値入力画像データ、34:修正量演算部、36:差分演算部、38:視覚処理部、40:多値画像修正部、50:インクジェットプリンタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6