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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】車いすの駆動補助機構
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/02 20060101AFI20230907BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20230907BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61G5/02 707
A61G5/04 711
A47C7/62 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019167776
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021041125
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】三村 真季
(72)【発明者】
【氏名】大野 博
(72)【発明者】
【氏名】湯木 則博
(72)【発明者】
【氏名】梶原 隆司
(72)【発明者】
【氏名】民秋 清史
(72)【発明者】
【氏名】村上 智一
(72)【発明者】
【氏名】饗場 啓太
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-526734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0222607(US,A1)
【文献】特開2014-231240(JP,A)
【文献】特開平11-164854(JP,A)
【文献】特開2013-199147(JP,A)
【文献】特開2009-213810(JP,A)
【文献】特開平03-073147(JP,A)
【文献】特開平10-059260(JP,A)
【文献】特開2011-130936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/02
A61G 5/04
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いすの駆動補助機構であって、
前記車いすのホイールを駆動するモータと、
前記モータに近接して設けられ、前記モータの回転数を取得する回転数センサと、
前記モータを制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、前記回転数センサから前記モータの回転数を取得し、前記取得された回転数から得られる速度に応じてモータトルクを制御し、
前記制御ユニットは、前記制御ユニットにおいて選択された前記車いすの最高速度と、あらかじめ規定された又は別に設けられる操作部において選択された前記車いすの最高モータトルクとの組み合わせによって複数の動作モードを設定し、
各動作モードのモード設定は、速度モードとモータトルクモードの組み合わせを基礎としてそれぞれ設定され、
前記各動作モードにおいて設定された前記最高速度及び前記最高モータトルクの範囲内で速度に応じてモータトルクを制御し、
前記制御ユニットは、前記車いすが速度を増すに連れ、前記最高モータトルクに達するまで、モータトルクを徐々に増加させるように制御する、ことを特徴とする駆動補助機構。
【請求項2】
前記制御ユニットは、モータトルクが前記最高モータトルクに達すると、前記車いすが前記最高速度に達するまでの間に、モータトルクを維持又は徐々に減少させるように制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の駆動補助機構。
【請求項3】
前記車いすのホイールに設けられたワンウェイクラッチを更に備え、
前記ワンウェイクラッチは、接続状態のとき、前記モータのモータトルクを前記ホイールに伝達し、非接続状態のとき、前記車いすを手動車いすとして使用可能とする、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動補助機構。
【請求項4】
着座センサを更に備え、
前記制御ユニットは、電源スイッチONの状態で、前記着座センサによって取得された情報を加味して各構成要素を起動させる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の駆動補助機構。
【請求項5】
駐車センサを更に備え、
前記制御ユニットは、電源スイッチONの状態で、前記駐車センサによって取得された情報を加味して各構成要素を起動させる、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の駆動補助機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いすの駆動補助機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手動車いすと電動車いすとの中間的な存在として、各種の駆動補助装置を備えた車いすが提案されている。例えば、特許文献1は、下り坂により生じる力による希望しない駆動方向と逆方向への回転に関する問題を解決する駆動補助装置を備えた車椅子を提供することを目的として、駆動モータ、検出手段、及び制御ユニットを有する車椅子用の駆動補助装置において、検出手段は、駆動輪に手動で付与される力を検出するように構成され、制御ユニットは、駆動モータが駆動輪に手動で付与される駆動力に応じた駆動補助段階に従って駆動輪を駆動するように制御し、また、制御ユニットは、駆動輪の意図しない回転を避けるように駆動モータを制御するアンチロールバック操作モードを含む、ことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-57901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の駆動補助装置を備えた車いすでは、使用者が置かれている状況に応じて、安全を確保できる範囲で、求められる速度に対して適切なモータトルクを供給するためのきめ細かな補助を提供することは困難という課題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたものであり、車いすの使用をスムーズにアシストするため、使用者が必要とするだけのアシスト力を得る駆動補助機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、車いすの駆動補助機構であって、前記車いすのホイールを駆動するモータと、前記モータに近接して設けられ、前記モータの回転数を取得する回転数センサと、前記モータを制御する制御ユニットと、を備え、前記制御ユニットは、前記回転数センサから前記モータの回転数を取得し、前記取得された回転数から得られる速度に応じてモータトルクを制御する、ことを特徴とする。
【0007】
(2)上記(1)の構成において、前記制御ユニットは、前記制御ユニットにおいて選択された前記車いすの最高速度と、あらかじめ規定された又は別に設けられる操作部において選択された前記車いすの最高モータトルクとの組み合わせによって複数の動作モードを設定し、各動作モードにおいて設定された前記最高速度及び前記最高モータトルクの範囲内で速度に応じてモータトルクを制御する。
【0008】
(3)上記(2)の構成において、前記制御ユニットは、前記車いすが速度を増すに連れ、前記最高モータトルクに達するまで、モータトルクを徐々に増加させるように制御する。
【0009】
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記制御ユニットは、モータトルクが前記最高モータトルクに達すると、前記車いすが前記最高速度に達するまでの間に、モータトルクを維持又は徐々に減少させるように制御する。
【0010】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記車いすのホイールに設けられたワンウェイクラッチを更に備え、前記ワンウェイクラッチは、接続状態のとき、前記モータのモータトルクを前記ホイールに伝達し、非接続状態のとき、前記車いすを手動車いすとして使用可能とする。
【0011】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つの構成において、着座センサを更に備え、前記制御ユニットは、電源スイッチONの状態で、前記着座センサによって取得された情報を加味して各構成要素を起動させる。
【0012】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つの構成において、駐車センサを更に備え、前記制御ユニットは、電源スイッチONの状態で、前記駐車センサによって取得された情報を加味して各構成要素を起動させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車いすの使用をスムーズにアシストするため、使用者が必要とするだけのアシスト力を得る駆動補助機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る駆動補助機構を適用した車いすの例について、前面から見た斜視図である。
図2】同じく、車いすを背面から見た斜視図である。
図3】駆動補助機構の要部を背面から拡大して説明する図である。
図4】駆動補助機構の構成の概略を示すブロック図である。
図5】駆動補助機構のうち、操作部の構成図である。
図6】駆動補助機構のうち、制御ユニットボックスの構成図である。
図7】駆動補助機構のうち、バッテリーボックスの構成図である。
図8】駆動補助機構の動作モードの例を説明する図である。
図9】駆動補助機構の各動作モードにおける速度とモータトルクの関係を示すグラフであって、(a-1)は「低速モード/モータトルク:ゼロ」、(a-2)は「低速モード/モータトルク:弱」、(a-3)は「低速モード/モータトルク:中」、(a-4)は「低速モード/モータトルク:強」、(b-1)は「中速モード/モータトルク:ゼロ」、(b-2)は「中速モード/モータトルク:弱」、(b-3)は「中速モード/モータトルク:中」、(b-4)は「中速モード/モータトルク:強」の各動作モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、車いす10を前面から見た斜視図、図2は、車いす10を背面から見た斜視図、図3は、駆動補助機構の要部を背面から拡大して説明する図である。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。
【0016】
(実施形態)
詳しくは後述するが、図1から図3に示すように、本実施形態に係る車いす10の駆動補助機構は、車いす10のホイール17L,17Rを駆動するモータ32L,32Rと、モータ32L,32Rに近接して設けられ、モータ32L,32Rの回転数を取得する回転数センサと、モータ32L,32Rを制御する制御ユニット31Lと、を備えている。駆動補助機構は、車いす10の使用をスムーズにアシストするため、モータ32L,32Rの回転数を取得し、取得された回転数から得られる速度に応じてモータトルクを制御するように構成される。これにより、使用者は、自身の置かれている状況に応じて、必要とするだけのアシスト力を得ることが可能となる。なお、モータトルクは、より詳細には、モータ32L,32Rに組み付けられているギヤヘッド軸のトルクとして具現化されている。
【0017】
より具体的には、制御ユニット31Lは、制御ユニット31Lにおいて選択された車いす10の最高速度と、あらかじめ規定された又は別に設けられる操作部20(リモコン20である場合を含む)において選択された車いす10の最高モータトルクとの組み合わせによって複数の動作モードを設定し、各動作モードにおいて設定された最高速度及び最高モータトルクの範囲内で速度に応じてモータトルクを制御する。例えば、制御ユニット31Lは、車いす10が停止状態から速度を増すに連れ、設定された最高モータトルクに達するまで、モータトルクを徐々に増加させるように制御する。一方、制御ユニット31Lは、モータトルクが最高モータトルクに達すると、車いす10が最高速度に達するまでの間に、モータトルクを維持又は徐々に減少させるように制御する。
【0018】
さらに、本実施形態に係る駆動補助機構は、車いす10のホイール17L,17Rに設けられたワンウェイクラッチを更に備えてもよく、ワンウェイクラッチは、接続状態のとき、モータ32L,32Rのモータトルクをホイール17L,17Rに伝達し、非接続状態のときには、車いす10を手動車いすとして使用可能とする。また、駆動補助機構は、安全対策として、駐車センサ40や着座センサ50を各別に又は併せて更に備えてもよく、その場合、制御ユニット31Lは、電源スイッチONの状態で、駐車センサ40及び着座センサ50によって取得された情報を加味して各構成要素を起動させる。以下、駆動補助機構を搭載した車いす、及び駆動補助機構の詳細について説明する。
【0019】
(車いす)
まず、本実施形態に係る駆動補助機構を搭載した車いす10の構成について、図1から図3を用いて説明する。なお、車いす10自体の構造上の構成は、図示されたものには限定されない。本実施形態に係る駆動補助機構は、種々の態様の車いす10に適用可能である。
【0020】
図1及び図2に示すように、車いす10は、フレーム11が前下方から後上方に延在しており、その途中には使用者が着座する着座部14、背もたれ15及び腕を休める肘掛け12が設けられている。フレーム11の前下方端には使用者の足を置くステップ19が配置され、フレーム11の後上方端は、介助者用のグリップ13となっている。なお、ここでは図示していないが、グリップ13に介助者用の手動ブレーキを設けてもよい。
【0021】
着座部14の左側には、駆動補助機構を操作する操作部20が設けられてもよい(図1及び図2では図示されていないが、操作部20の構成は、図4及び図5に記載されたリモコン20として後ほど説明する)。着座部14の内部には、使用者の着座/未着座を感知する着座センサ50が配置される。着座センサ50としては、例えばリミットスイッチを用いることができ、使用者の着座/未着座によって、ON/OFFとなる。後述するように、着座センサ50は、駆動補助機構を駆動させるための契機の一つとすることができる。なお、着座部14は、操作部20(リモコン20)の操作によってクッションが制御されるパワークッションとしてもよい。
【0022】
車いす10は、前輪として、方向転換自在である左右一対のキャスタ16L,16Rで支持され、後輪として、駆動補助機構によって駆動が補助される左右一対のホイール17L、17Rで支持されている。ホイール17L,17Rの外側には、車いす10を使用者が手動車いすとして自ら手動で移動できるように、ハンドリム18L,18Rが配置されている。また、ホイール17L,17Rの前方には、駐車センサ40が配置されたブレーキが設けられている。駐車センサ40としては、例えばリミットスイッチを用いることができ、駐車/解除によって、ON/OFFとなる。後述するように、駐車センサ40は、駆動補助機構を駆動させるための契機の一つとすることができる。
【0023】
ホイール17L,17Rの内側には、図3に拡大して示すように、駆動補助機構を構成する左右一対の補助駆動部30L,30Rが左右一対の支承部60L,60R及び車軸61L,61R(図中、61Lはモータ32Lの背後)に支持されて設けられている。なお、支承部60L,60Rの間には、サスペンション機能を補強するため、一対の交差したクロスバー70が配置されている。
【0024】
補助駆動部30L,30Rは、それぞれの内部にモータ32L,32Rが配置されており、ホイール17L,17Rは、車軸61L,61Rに設けられたワンウェイクラッチ(不図示)を介してモータ32L,32Rと接続される。ワンウェイクラッチは、正回転のときに接続状態となり、逆回転のときに非接続状態となるものである。これにより、ワンウェイクラッチが接続状態のときには、ホイール17L,17Rは、モータ31L,31Rのモータトルクが伝達され,非接続状態のときには、モータ31L,31Rからのモータトルクの伝達が遮断され、車いす10は手動車いすとして使用可能な状態になる。
【0025】
ワンウェイクラッチを設けることによる効果について説明すると、車いす10を前進させる場合には、「ホイール回転数≧モータ回転数」と、後進させる場合には、「ホイール回転数=モータ回転数」となる。モータ回転数がゼロの状態でホイール回転数を上げることができるので、車いす10を手動車いすのように軽く移動させることができる。ここで、ホイール回転数を上げても、モータ回転数が上がらないとアシストされないことから、モータ回転数がゼロの状態で、わずかに、例えば、0.8Nのモータトルクを掛けることで、モータ回転数が上がるようにしてもよい。このようにすることで、ホイール17L,17Rの回転数センサを不要にすることができる。
【0026】
補助駆動部30Lには、その内部に、モータ31Lに加えて、駆動補助機構の制御を司る制御ユニット31Lが配置される一方(補助駆動部30Lは、以下で「制御ユニットボックス」ともいう)、補助駆動部30Rには、その内部に、モータ32Rに加えて、駆動補助機構に電源を供給するバッテリー31Rが配置されている(補助駆動部30Rは、以下で「バッテリーボックス」ともいう)。補助駆動部30Lと補助駆動部30Rの間、また、補助駆動部30Lと操作部20の間には、各種の信号ケーブルを収納した接続管81及び接続管82が配管されている。
【0027】
(駆動補助機構)
上記した構成をもとに、駆動補助機構の詳細について、図4から図9を用いて説明する。図4は、駆動補助機構のブロック図、図5は、操作部20(リモコン20)の構成図を、図6は、補助駆動部30L(「制御ユニットボックス」)の構成図を、図7は、補助駆動部30R(「バッテリーボックス」)の構成図を、それぞれ示す。また、図8は、駆動補助機構の動作モードの例を、図9は、各動作モードにおける速度とモータトルクの関係を、それぞれ示す。
【0028】
駆動補助機構は、図4に示すように、操作部20(リモコン20)と、補助駆動部30L(「制御ユニットボックス」)と、補助駆動部30R(「バッテリーボックス」)とを備えている。さらに、駐車センサ40と、着座センサ50とを備えてもよい。また、操作部20(リモコン20)は、DC5Vの出力ができるようにしてもよく、この出力は、例えば、前述したように、着座部14をパワークッションとする場合の電源として利用できる。
【0029】
以下、駆動補助機構の制御の構成及び手順について、図5から図9を参照して詳しく説明する。
【0030】
(入力仕様)
駆動補助機構は、各種の入力手段を備えており、まず、操作部20(リモコン20)には、図5に示すように、モータトルク選択スイッチが設けられている。モータトルク選択スイッチは、ここでは、モータトルクについて、“ゼロ”、“弱”、“中”、“強”の4段階に切り替えることができるようにしている。モータトルク選択スイッチとしては、例えばタクトスイッチ3で構成される。
【0031】
次に、制御ユニットボックス30Lの制御基板には、図6に示すように、バッテリーボックス30Rに収納されているバッテリー(図中、マルB)からDC18V電源が入力されるバッテリー接続端子(電源回路へ接続)、オペレーションプレートに設けられ駆動補助機構の起動/停止を操作する起動/停止スイッチ(タクトスイッチ1)、同じくオペレーションプレートに設けられ車いす10の速度を選択する速度選択スイッチ(タクトスイッチ2)が設けられている。また、制御ユニットボックス30L内のドライバL(2点:モータL<図1~2のモータ17L。以下同様>の回転数を取得するホール信号入力と、エラー信号入力)及びバッテリーボックス30R内のドライバR(2点:モータR<図1~2のモータ17R。以下同様>の回転数を取得するホール信号入力と、エラー信号入力)からの信号入力を受け付ける端子が設けられている。
【0032】
ここで、ホール信号とは、モータL,R(図3のモータ32L,32R)に設けられている回転数センサとしてのホールセンサからの信号を意味している。ホール信号によって、モータL,R(図1~2のモータ17L,17R)の回転数を取得し、この回転数から車いす10の速度を得る。本実施形態では、モータの回転数をホイールの略回転数としており、[モータの回転数≦ホイールの回転数]の関係にある。また、ドライバL,RとモータL,Rは、それぞれ、回生抵抗接続されるようにしてもよい。
【0033】
さらに、制御ユニットボックス30Lの制御基板には、車いす10の本体に設けられている、駐車センサ40(リミットスイッチ1)及び着座センサ(リミットスイッチ2)からの入力を受け付ける端子が設けられてもよい。
【0034】
(出力仕様)
駆動補助機構は、各種の出力手段を備えており、まず、操作部20(リモコン20)には、図5に示すように、モータトルク“ゼロ”時に点灯するLED4、モータトルク“弱”時に点灯するLED5、モータトルク“中”時に点灯するLED6、モータトルク“強”時に点灯するLED7、及び、電圧低下(充電低下)時に点灯するLED8が設けられている。また、操作部20(リモコン20)には、例えば着座部14にパワークッションを設けた場合に電源を供給するため、DC5V 1A電源出力用のUSB typeA メス(又は、typeC メス)を設けてもよい。ただし、この電源出力は、操作部20(リモコン20)に代えて、制御ユニットボックス30Lに設けても差し支えない。
【0035】
制御ユニットボックス30Lの制御基板は、図6に示すように、制御ユニットボックス30L内のホイールLを駆動するモータLを制御するドライバL(3点:3つの動作モード設定。動作モードについては後述する)に必要な出力を行うとともに、起動/停止スイッチによる起動時にLED1を、速度選択スイッチによる「低速モード」時にLED2を、同じく「中速モード」時にLED3を、それぞれ点灯させる。そのほか、非常時のためのブザーやアラームを鳴動させる。
【0036】
また、制御ユニットボックス30Lの制御基板は、図7に示すように、バッテリーボックス30R内のホイールRを駆動するモータRを制御するドライバR(3点:3つの動作モード設定。動作モードについては後述する)に必要な出力を行う。
【0037】
(ドライバ仕様)
ドライバL,Rは、図6及び図7に示すように(図中、DRV-L,DRV-R)、それぞれ、制御ユニットボックス30Lの制御基板からDC18V電源を受ける。ドライバL,Rは、前述したように、制御ユニットボックス30Lの制御基板に対し、ホール信号としてモータL,Rのホールセンサのパルス(回転)を、エラー信号として各種のエラーを出力する。
【0038】
ここで、ドライバL,Rに入力される動作モードの例について、図8を参照して説明する。図8は、動作モードとして、デジタル3点の“I1”、“I2”、“I3”にモード設定されている例を示している。
【0039】
動作モードのモード設定は、「速度モード:モータトルクモード」の組み合わせを基礎として設定される。「速度モード:モータトルクモード」の組み合わせは、前述した「低速モード/中速モード」と「モータトルク“ゼロ/弱/中/強”」を組み合わせることにより、「低速モード/モータトルク:ゼロ」、「低速モード/モータトルク:弱」、「低速モード/モータトルク:中」、「低速モード/モータトルク:強」、「中速モード/モータトルク:ゼロ」、「中速モード/モータトルク:弱」、「中速モード/モータトルク:中」、「中速モード/モータトルク:強」の8つの組み合わせがベースとなる。
【0040】
この8つの組み合わせをベースに、動作モード“I1”は、速度が中速モードに設定される場合であり、「中速:ゼロ」、「中速:弱」、「中速:中」、「中速:強」を「ON」とするモード、動作モード“I2”は、速度が低速モードと中速モードに設定される場合であり、「低速:弱」、「低速:強」、「中速:弱」、「中速:強」を「ON」とするモード、動作モード“I3”は、速度が低速モードと中速モードに設定される場合であり、「低速:中」、「低速:強」、「中速:中」、「中速:強」を「ON」とするモードである。
【0041】
(制御手順<入力>)
入力に関する制御手順は、次のとおりである。制御ユニットボックス30Lのバッテリー接続端子に対するバッテリーボックス30Rのバッテリーの脱着は次のようにされる。未装着から装着(電源DC18V接続)となったとき、起動/停止スイッチ(タクトスイッチ1)が「ON」の状態となる。装着から未装着(又は、電源低下)となったときには、その時の速度モードを保存して停止する。
【0042】
車いす10の本体に設けられているリミットスイッチ1は、駐車センサ40として機能しており、駐車ブレーキを実施すると「OFF」に、駐車ブレーキを解除すると「ON」となる。そして、駐車ブレーキが実施され「OFF」となった場合には、“駐車コントロール”へ移行し、駐車ブレーキが解除され「ON」となった場合には、“通常コントロール”へ移行する。なお、断線や接触不良などの場合には、「OFF」となるように制御する。
【0043】
また、車いす10の本体に設けられているリミットスイッチ2は、着座センサ50として機能しており、使用者が着座すると「ON」に、使用者が未着座のときは「OFF」となる。そして、未着座の「OFF」の場合には、“未着座コントロール”へ移行し、着座の「ON」の場合には、“通常コントロール”へ移行する。なお、断線や接触不良などの場合には、「OFF」となるように制御する。
【0044】
制御ユニットボックス30Lに設けられている起動/停止スイッチ(タクトスイッチ1)によって、制御ユニットボックス30Lの起動/停止を行う。電源接続時は、デフォルトは「起動」状態となり、LED1が点灯する。LED1は、タクトスイッチ1を押すごとに、「停止」で消灯、「起動」で点灯に切り替わる。エラーとなった場合は、タクトスイッチ1を通常押しでエラーが解除される。「起動」状態で、DC5V電源の出力が開始され、「停止」状態で、DC5V電源の出力が停止する。
【0045】
制御ユニットボックス30Lに設けられている速度選択スイッチ(タクトスイッチ2)によって、速度モードを選択する。タクトスイッチ2を「ON」にすると、前回起動時の速度モードで起動し、該当するLED、すなわち、「低速モード」の場合にはLED2が、「中速モード」の場合にはLED3が、それぞれ点灯する。デフォルトは「低速モード」となっており、タクトスイッチ2を押すごとに、「中速モード」と「低速モード」が切り替わる。
【0046】
操作部20に設けられているモータトルク選択スイッチ(タクトスイッチ3)によって、モータトルクモードを選択する。起動時は“ゼロ”で起動し、LED4が点灯する。タクトスイッチ3を押すごとに、モータトルクモードが“ゼロ”⇒“弱”⇒“中”⇒“強”⇒“ゼロ”⇒…と切り替わり、それに応じて、該当するLEDが、LED4⇒LED5⇒LED6⇒LED7⇒LED4⇒…と順次点灯する。タクトスイッチ3は、3秒間以上の長押しで、「停止」と「起動」を切り替えることができる。
【0047】
(制御手順<個別のコントロール>)
駐車センサ40(リミットスイッチ1)の駐車ブレーキが実施され「OFF」のとき、“駐車コントロール”に設定される。この“駐車コントロール”では、DC18V電源は、ドライバL,Rへ供給されない。
【0048】
着座センサ50(リミットスイッチ2)が未着座で「OFF」のとき、“未着座コントロール”に設定される。この“未着座コントロール”では、DC18V電源は、ドライバL,Rへ供給されない。“未着座コントロール”下で10分間経過すると、「停止」し、“待機コントロール”へ移行する。
【0049】
「起動」の状態、駐車センサ40の駐車ブレーキが未実施で「ON」の状態、着座センサ50が着座で「ON」の状態が揃ったとき、“通常コントロール”に設定される。この“通常コントロール”では、DC18V電源がドライバL,Rへ供給される。初期状態では、「速度モード」は選択済みのもの、モータトルクモードは「ゼロ」で、動作モードがモード設定される。そして、「モータトルクモード」と「速度モード」の切り替えに応じて、モード設定が更新される。モード設定は、図8で前述したように、デジタル3点として、“I1”、“I2”、“I3”とされる。
【0050】
“I1”、“I2”、“I3”の各動作モードにおける駆動補助機構による制御について、図9を参照して、説明する。図9は、横軸に「速度(km/h)」を、縦軸に「モータトルク(Nm)」をとり、車いす10の速度に応じて駆動補助機構が付与するモータトルクのパターンを示している。
【0051】
図9において、(a-1)は「低速モード/モータトルク:ゼロ」、(a-2)は「低速モード/モータトルク:弱」、(a-3)は「低速モード/モータトルク:中」、(a-4)は「低速モード/モータトルク:強」、(b-1)は「中速モード/モータトルク:ゼロ」、(b-2)は「中速モード/モータトルク:弱」、(b-3)は「中速モード/モータトルク:中」、(b-4)は「中速モード/モータトルク:強」の場合における制御を示している。
【0052】
動作モード“I1”は、(b-1)「中速モード/モータトルク:ゼロ」、(b-2)「中速モード/モータトルク:弱」、(b-3)「中速モード/モータトルク:中」、(b-4)「中速モード/モータトルク:強」のパターンとなる。動作モード“I2”は、(a-2)「低速モード/モータトルク:弱」、(a-4)「低速モード/モータトルク:強」、(b-2)「中速モード/モータトルク:弱」、(b-4)「中速モード/モータトルク:強」のパターンとなる。動作モード“I3”は、(a-3)「低速モード/モータトルク:中」、(a-4)「低速モード/モータトルク:強」、(b-3)「中速モード/モータトルク:中」、(b-4)「中速モード/モータトルク:強」のパターンとなる。
【0053】
ここでは、低速モードにおける最高速度は2.5km/hに、中速モードにおける最高速度は5.0km/hに設定されている。また、モータトルク“弱”は2.6Nmに、モータトルク“中”は4.1Nmに、モータトルク“強”は5.6Nmに設定されている。
【0054】
低速モードを見ると、いずれの最大モータトルクの場合も、駆動補助機構によって、車いす10が速度を増すに連れ、最高モータトルクに達するまで、モータトルクが徐々に増加するように制御されている。そして、速度2.0km/hのときに最大モータトルクに達すると、その後は、駆動補助機構によって、設定された最高速度の2.5km/hに達するまでの間に、モータトルクは徐々に減少するように制御されている。
【0055】
また、中速モードを見ると、同様に、いずれの最大モータトルクの場合も、駆動補助機構によって、車いす10が速度を増すに連れ、最高モータトルクに達するまで、モータトルクが徐々に増加するように制御されている。そして、速度3.0km/hのときに最大モータトルクに達すると、その後は、駆動補助機構によって、速度4km/hまでモータトルクは維持され、さらに設定された最高速度の5.0km/hに達するまでの間に、モータトルクは徐々に減少するように制御されている。
【0056】
このように、本実施形態に係る駆動補助機構は、使用者がアシストを必要とする動作開始から最高速度に至る前までの区間において、モータトルクを徐々に増加するように制御するとともに、最大モータトルクに達した後は、最高速度に至るまでに、使用者にとって必要となくなったモータトルクを維持又は徐々に減少するように提供する。使用者が車いす10が置かれている状況(道路状況など)に応じて、最大モータトルクを変更できることとも相まって、駆動補助機構は、車いす10の使用をスムーズにアシストし、使用者が必要とするだけのアシスト力を提供することができる。
【0057】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0058】
10…車いす
17L,17R:ホイール
20…操作部(リモコン)
30L、30R…補助駆動部(制御ユニットボックス、バッテリーボックス)
31L…制御ユニット
31R…バッテリー
32L,32R…モータ
40…駐車センサ
50…着座センサ
60L,60R…支承部
61L,61R…車軸
70…クロスバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9