(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230907BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20230907BHJP
B60R 21/015 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
B60R21/015 310
(21)【出願番号】P 2019063888
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】有田 優紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優樹
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 雄也
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081504(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080369(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
A47C 7/62
B60R 21/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面側表面を有し、シート座部を構成するクッション部材と、
前記クッション部材に取り付けられ、乗員の荷重を検知するセンサと、を備え、
前記座面側表面には、前記センサが配置された領域の側方に位置し、前記座面側表面から前記クッション部材の厚み方向に延びて下端が前記センサの位置よりも下方に位置する凹部が形成され
ており、
前記凹部は、
前記シートの幅方向における前記センサが配置された領域の両側の位置において各々前記シートの奥行き方向に沿って直線状に互いに平行に延びる第1凹部及び第2凹部と、
前記シートの奥行き方向における前記センサが配置された領域の前側の位置のみに設けられて前記シートの幅方向に沿って直線状に延び、かつ前記シートの奥行き方向における前記第1凹部及び前記第2凹部の前端部同士を接続する第3凹部と、を含むことを特徴とするシート。
【請求項2】
請求項1に記載のシートにおいて、
前記クッション部材は、前記座面側表面を含む座面側表層部を有し、
前記センサは、前記座面側表層部に配されていることを特徴とするシート。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のシートにおいて、
前記凹部は、前記センサの下端から当該凹部の下端までの前記クッション部材の厚み方向に沿った距離が前記座面側表面における予め定められた乗員の着座中心から前記シートの幅方向における前記センサの最外端までの前記幅方向に沿った距離の5%以上45%以下となるように形成されていることを特徴とするシート。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか一項に記載のシートにおいて、
前記凹部は、前記センサの下端から当該凹部の下端までの前記クッション部材の厚み方向に沿った距離が3mm以上10mm以下の範囲となるように形成されていることを特徴とするシート。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか一項に記載のシートにおいて、
前記凹部は、人体模型AM50を前記シート座部の予め定められた着座中心に対して着座させたときに規定される前記人体模型
AM50と前記シート座部との接触領域内に位置するように形成されていることを特徴とするシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の荷重を検知するセンサを備えたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に装備されたシートベルト等の各種安全装置を制御すること等を目的として、シートへの乗員の着座を検知することが知られている。例えば特許文献1には、乗員の着座を検知するための荷重検出装置を備えたシートの一例が開示されている。特許文献1に記載のシートでは、荷重検出装置のセンサ本体が、シート座部を構成するパッド部材の厚さ方向の中間位置と下面との間に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシートでは、着座する乗員が子供等の軽量な人間である場合、乗員が着座した際の座面の変形量が小さく、センサ本体に付加される荷重が小さくなるため、乗員の着座を検知できない場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、乗員が着座したことをより精度よく検知できるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係るシートは、座面側表面を有し、シート座部を構成するクッション部材と、前記クッション部材に取り付けられ、乗員の荷重を検知するセンサと、を備え、前記座面側表面には、前記センサが配置された領域の側方に位置し、前記座面側表面から前記クッション部材の厚み方向に延びて下端が前記センサの位置よりも下方に位置する凹部が形成されており、前記凹部は、前記シートの幅方向における前記センサが配置された領域の両側の位置において各々前記シートの奥行き方向に沿って直線状に互いに平行に延びる第1凹部及び第2凹部と、前記シートの奥行き方向における前記センサが配置された領域の前側の位置のみに設けられて前記シートの幅方向に沿って直線状に延び、かつ前記シートの奥行き方向における前記第1凹部及び前記第2凹部の前端部同士を接続する第3凹部と、を含むものである。
【0007】
なお、本発明において、「センサが配置された領域の側方」には、センサが配置された領域の幅方向における側方と、センサが配置された領域の奥行き方向における側方との両方が含まれるものとする。
【0008】
このシートでは、センサが配置された領域の側方に位置し、座面側表面からクッション部材の厚み方向に延びて下端がセンサの位置よりも下方に位置する凹部がクッション部材の座面側表面に形成されている。このため、シートに乗員が着座することによりクッション部材の座面側表面に荷重が加わった際にクッション部材のうちセンサが配置された領域が変形しやすくなる。従って、乗員の着座に伴って加わる荷重がセンサに伝わりやすく、よって、このシートによれば、乗員の着座に伴って加わる荷重が小さい場合でも乗員が着座したことを精度よく検知することができる。
【0009】
このシートにおいて、前記クッション部材は、前記座面側表面を含む座面側表層部を有し、前記センサは、前記座面側表層部に配されていることが好ましい。
【0010】
この場合、乗員の着座に対する高い検知感度を維持しつつ凹部を浅くすることができる。従って、乗員の着座に対する高い検知感度と優れた座り心地との両立を図ることができる。
【0017】
このシートにおいて、前記凹部は、前記センサの下端から当該凹部の下端までの前記クッション部材の厚み方向に沿った距離が前記座面側表面における予め定められた乗員の着座中心から前記シートの幅方向における前記センサの最外端までの前記幅方向に沿った距離の5%以上45%以下となるように形成されていることが好ましい。
【0018】
センサの下端から凹部の下端までのクッション部材の厚み方向に沿った距離が座面側表面における予め定められた乗員の着座中心からシートの幅方向におけるセンサの最外端までの前記幅方向に沿った距離の5%以上となるように凹部を形成することにより、クッション部材のセンサが配置された領域の変形量をより大きくすることができる。従って、乗員の着座に伴って加わる荷重がセンサにより伝わりやすく、よって、乗員が着座したことをさらに精度よく検知することが可能となる。
【0019】
センサの下端から凹部の下端までのクッション部材の厚み方向に沿った距離が座面側表面における予め定められた乗員の着座中心からシートの幅方向におけるセンサの最外端までの前記幅方向に沿った距離の45%以下となるように凹部を形成することにより、シートの座り心地を優れたものとすることができる。
【0020】
また、具体的な数値として、前記凹部は、前記センサの下端から当該凹部の下端までの前記クッション部材の厚み方向に沿った距離が3mm以上10mm以下の範囲となるように形成されていることが好ましい。
【0021】
センサの下端から凹部の下端までのクッション部材の厚み方向に沿った距離が3mm以上となるように凹部を形成することにより、クッション部材のセンサが配置された領域の変形量をより大きくすることができる。従って、乗員の着座に伴って加わる荷重がセンサにより伝わりやすく、よって、乗員が着座したことをさらに精度よく検知することが可能となる。
【0022】
センサの下端から凹部の下端までのクッション部材の厚み方向に沿った距離が10mm以下となるように凹部を形成することにより、シートの座り心地を優れたものとすることができる。
【0023】
このシートにおいて、前記凹部は、人体模型AM50を前記シート座部の予め定められた着座中心に対して着座させたときに規定される前記人体模型AM50と前記シート座部との接触領域内に位置するように形成されていることが好ましい。
【0024】
この場合、座面側表面の凹部よりもセンサ側に位置する領域の面積を小さくできるため、乗員が着座したときに座面側表面の凹部よりもセンサ側に位置する領域に加わる単位面積当たりの荷重を大きくすることができる。従って、クッション部材のセンサが配置された領域の変形量をより大きくすることができ、乗員の着座に伴って加わる荷重がセンサにより伝わりやすくなる。よって、乗員が着座したことをより精度よく検知することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、乗員が着座したことをより精度よく検知できるシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシートを示す平面図である。
【
図2】前記シートに設けられたセンサを示す平面図である。
【
図5】前記シートの座面に荷重が加わった際のシート座部の変形態様を示す、
図1のIII-III線での断面図である。
【
図6】前記シートの座面に荷重が加わった際のシート座部の変形態様を示す、
図1のIV-IV線での断面図である。
【
図7】第1の変形例に係るシートの一部分を示す平面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線での断面図である。
【
図10】第1の変形例に係るシートの座面に荷重が加わった際のシート座部の変形態様を示す、
図7のVIII-VIII線での断面図である。
【
図11】第1の変形例に係るシートの座面に荷重が加わった際のシート座部の変形態様を示す、
図7のIX-IX線での断面図である。
【
図12】第2の変形例に係るシートの一部分を示す平面図である。
【
図15】第2の変形例に係るシートの座面に荷重が加わった際のシート座部の変形態様を示す、
図12のXIII-XIII線での断面図である。
【
図16】第2の変形例に係るシートの座面に荷重が加わった際のシート座部の変形態様を示す、
図12のXIV-XIV線での断面図である。
【
図17】実施例において実施した荷重負荷実験の概要を表す断面図である。
【
図18】実施例におけるクッション部材の厚み方向への変位量の測定ポイントを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシート1を示す平面図である。
図2は、シート1に設けられたセンサを示す平面図である。
図3は、
図1のIII-III線での断面図である。
図4は、
図1のIV-IV線での断面図である。
図1に示すシート1は、例えば、自動車や電車等の車両全般に配設可能なシートであるが、例えば、シートベルトやエアバック等の各種安全装置を装備する車両等であって、シートへの乗員の着座を検知する必要がある車両に対して特に好適に用いられるシートである。
【0028】
シート1は、乗員が着座する座面2a(
図3及び
図4を参照。)を有するシート座部2と、シート座部2の奥行き方向Tの後側端部から上方に向かって延びる背もたれ部(図示省略)とを備えている。シート座部2の断面を示す
図3及び
図4に示されるように、シート座部2は、座面2a側に位置する座面側表面10aを有するクッション部材10と、クッション部材10の表面の少なくとも一部を被覆しているトリム(表皮)20(
図1においては図示を省略)とを有する。クッション部材10は、弾性材料により構成されている。このため、クッション部材10は、弾性変形可能である。クッション部材10を構成する弾性材料の好ましい具体例としては、例えば、ポリウレタン等の樹脂等が挙げられる。
【0029】
図1~
図4に示すように、クッション部材10には、乗員の荷重を検知するセンサ30が取り付けられている。詳細には、
図2及び
図3に示すように、可撓性を有するシート状のセンサ30が、クッション部材10の座面側表面10a上に配されている。
【0030】
センサ30は、クッション部材10の厚み方向Hから視た際に、シート座部2の着座中心Cと重なる位置に配されている。換言すれば、クッション部材10の厚み方向Hから視た際に、センサ30が設けられた領域内に着座中心Cが位置するようにセンサ30が配されている。
【0031】
ここで、「着座中心」とは、シートに着座した乗員とシート座部との接触面の図心であり、シートの設計時に予め定められるものである。
【0032】
センサ30は、乗員の荷重を検知するセンサであり、本実施形態では、メンブレン方式のセンサが採用されている。
【0033】
図2に示すように、本実施形態において、センサ30は、荷重を検知する4つの検知部31a~31dと、4つの検知部31a~31dのそれぞれに接続された配線32と、可撓性を有する一対の保持フィルム33とを有する。一対の保持フィルム33は、互いに貼付されており、それら一対の保持フィルム33の間に4つの検知部31a~31d及び配線32が配されている。
【0034】
クッション部材10の座面側表面10aには、センサ30が配置された領域の側方に位置する凹部11が形成されている。凹部11は、センサ30が配置された領域の周辺部に形成されている。
図1に示すように、凹部11は、人体模型AM50(図示省略)をシート座部2の着座中心Cに対して着座させたときに規定される人体模型AM50とシート座部2との接触領域A内に位置するように形成されている。
【0035】
ここで、「人体模型AM50」とは、米国成人男性で、小さい方から数えて50%に相当する体格の人体模型(人体ダミー)のことである。
【0036】
凹部11は、幅方向Wにおいてセンサ30の一方側に位置し、奥行き方向Tに沿って延びる第1の凹部分11aと、幅方向Wにおいてセンサ30の他方側に位置し、奥行き方向Tに沿って延びる第2の凹部分11bと、奥行き方向Tにおいてセンサ30の一方側に位置し、幅方向Wに沿って延びる第3の凹部分11cと、奥行き方向Tにおいてセンサ30の他方側に位置し、幅方向Wに沿って延びる第4の凹部分11dとを含む。第1~第4の凹部分11a~11dは、それぞれ、直線状に形成されている。第1及び第2の凹部分11a、11bは、それぞれ、奥行き方向Tに沿って互いに平行に形成されている。第3及び第4の凹部分11c、11dは、それぞれ、幅方向Wに沿って互いに平行に形成されている。第1及び第2の凹部分11a、11bは、それぞれ、センサ30の奥行き方向Tの一方側端よりもさらに一方側(外側)と、他方側端よりもさらに他方側(外側)とに渡って形成されている。第3及び第4の凹部分11c、11dは、それぞれ、センサ30の幅方向Wの一方側端よりもさらに一方側(外側)と、他方側端よりもさらに他方側(外側)とに渡って形成されている。第1の凹部分11aの奥行き方向Tの一方側端部と第2の凹部分11bの奥行き方向Tの一方側端部とは第3の凹部分11cにより接続されている。一方、第1の凹部分11aの奥行き方向Tの他方側端部と第2の凹部分11bの奥行き方向Tの他方側端部とは第4の凹部分11dにより接続されている。このため、本実施形態では、凹部11は、センサ30が設けられた領域を包囲する形状に形成されている。
【0037】
図3及び
図4に示すように、凹部11は、その幅方向に沿った横断面形状が凹部11の先端側(下端側)に向かって徐々に幅狭となる略U字形状となるように形成されている。
【0038】
凹部11は、乗員が着座していない状態において、座面側表面10aからクッション部材10の厚み方向Hに延びて下端(先端)がセンサ30の位置よりも下方に位置するように形成されている。具体的には、凹部11は、センサ30の下端から凹部11の下端までの厚み方向Hに沿った距離L1が座面側表面10aにおける乗員の着座中心Cから幅方向Wにおけるセンサ30の最外端までの幅方向Wに沿った距離L0(
図2を参照)の5%以上45%以下となるように形成されている。本実施形態では、凹部11は、具体的には、センサ30の下端から凹部11の下端までの厚み方向Hに沿った距離L1が3mm以上10mm以下の範囲となるように形成されている。
【0039】
以上説明したように、このシート1では、クッション部材10の座面側表面10aに、センサ30が配置された領域を包囲し、座面側表面10aからクッション部材10の厚み方向Hに延びて下端がセンサ30の位置よりも下方に位置する凹部11が形成されている。この構成によれば、クッション部材10のうち凹部11に包囲され、センサ30が配置された領域の変形が当該領域の外側に位置する部分により拘束されにくい。このため、クッション部材10のうち凹部11に包囲され、センサ30が配置された領域が変形しやすい。従って、乗員の着座に伴って加わる荷重がセンサ30に伝わりやすい。よって、このシート1によれば、例えば、乗員が軽量な子供などの場合のように、乗員の着座に伴って加わる荷重が小さい場合でも乗員が着座したことを精度よく検知することが可能である。
【0040】
シート1では、凹部11は、人体模型AM50をシート座部2の着座中心Cに対して着座させたときに規定される人体模型AM50とシート座部2との接触領域A内に位置するように形成されている。この構成によれば、座面側表面10aの凹部11よりもセンサ30側に位置する領域(凹部11によって包囲された領域)の面積を、座面側表面10aの面積に対して小さくできるため、乗員が着座したときに座面側表面10aの凹部11よりもセンサ30側に位置する領域に加わる単位面積当たりの荷重を大きくすることができる。従って、クッション部材10のセンサ30が配置された領域の変形量をより大きくすることができ、乗員の着座に伴って加わる荷重がセンサにより伝わりやすくなる。よって、この構成によれば、乗員が着座したことをより精度よく検知することが可能となる。
【0041】
このシート1では、センサ30が座面側表面10a上に配置されている。この構成によれば、シート1に着座した乗員とセンサ30との間の距離を短くすることができるため、センサ30に荷重が伝わりやすくなる。従って、乗員が着座したことをより精度よく検知することが可能である。
【0042】
このシート1では、センサ30の下端から凹部11の下端までのクッション部材10の厚み方向Hに沿った距離L1が座面側表面10aにおける着座中心Cから幅方向Wにおけるセンサ30の最外端までの幅方向Wに沿った距離L0の5%以上となるように凹部11が形成されている。具体的には、センサ30の下端から凹部11の下端までの厚み方向Hに沿った距離L1が3mm以上となるように凹部11が形成されている。
【0043】
この構成によれば、クッション部材10のセンサ30が配置された領域の変形量をより大きくすることができる。従って、乗員の着座に伴って加わる荷重がセンサ30により伝わりやすく、よって、乗員が着座したことをさらに精度よく検知することが可能である。
【0044】
クッション部材10のセンサ30が配置された領域の変形量をさらに大きくする観点から、距離L1が距離L0の10%以上となるように凹部11が形成されていることが好ましい。距離L1が5mm以上となるように凹部11が形成されていることが好ましい。
【0045】
このシート1では、距離L1が距離L0の45%以下となるように凹部11が形成されている。具体的には、距離L1が10mm以下となるように凹部11が形成されている。
【0046】
この構成によれば、凹部11を浅くできるため、シート1の優れた座り心地を実現することができる。
【0047】
シート1のより優れた座り心地を実現する観点から、距離L1が距離L0の30%以下となるように凹部11を形成することが好ましい。具体的には、距離L1が10mm以下となるように凹部11を形成することが好ましい。
【0048】
なお、センサに必要とされる検知感度に応じて、センサ30の下端から凹部11の下端までのクッション部材10の厚み方向Hに沿った距離L1を距離L0の5%以上45%以下の範囲で適宜選択することができる。
【0049】
[変形例]
以下、上記実施形態の変形例について説明する。以下の説明において、上記実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0050】
上記実施形態では、凹部11がセンサ30を包囲するように形成された例について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。凹部11はセンサ30を包囲しないように形成されていてもよい。例えば、第1及び第2の凹部分11a、11bと第3及び第4の凹部分11c、11dとが相互に離間して独立して形成されていてもよい。また、凹部11は、例えば、以下の第1及び第2の変形例のように構成されていてもよい。
【0051】
(第1の変形例)
図7は、第1の変形例に係るシートの一部分を示す平面図である。
図8は、
図7のVIII-VIII線での断面図である。
図9は、
図7のIX-IX線での断面図である。
図10及び
図11は、それぞれ、第1の変形例に係るシートの座面に荷重が加わった際のシート座部の変形態様を示す断面図である。
【0052】
第1の変形例では、
図7~
図9に示すように、凹部11は、センサ30の幅方向Wにおける両側及び奥行き方向Tにおける前方に形成されている。凹部11は、センサ30の奥行き方向Tにおける後方には形成されていない。凹部11は、クッション部材10の厚み方向Hから視た際に略U字形状に形成されている。凹部11は、幅方向Wにおいてセンサ30の一方側に位置して奥行き方向Tに沿って延びる第1の凹部分11aと、幅方向Wにおいてセンサ30の他方側に位置して奥行き方向Tに沿って延びる第2の凹部分11bと、奥行き方向Tにおいてセンサ30の前側に位置して幅方向Wに沿って伸びる第3の凹部分11dとにより構成されている。第1の凹部分11aの奥行き方向Tの前側端部と第2の凹部分11bの奥行き方向Tの前側端部とは、第3の凹部分11dにより接続されている。
【0053】
図7~
図9に示すように、第1の変形例においても、上記実施形態と同様に、センサ30が配置された領域の側方に位置する凹部11が座面側表面10aに形成されている。本変形例においては、凹部11は、センサ30の幅方向Wにおける両側において奥行き方向Tに沿って延びる部分と、センサ30の奥行き方向Tの前方において幅方向Wに沿って延びる部分とを含む。このため、センサ30が配置された領域の変形が、当該領域の幅方向Wにおける両側部分及び奥行き方向Tにおける前方部分により拘束されにくい。従って、
図10及び
図11に示すように、センサ30が配置された領域が大きく変形しやすく、よって、乗員の着座を精度よく検知することが可能となる。
【0054】
(第2の変形例)
図12は、第2の変形例に係るシートの一部分を示す平面図である。
図13は、
図12のXIII-XIII線での断面図である。
図14は、
図12のXIV-XIV線での断面図である。
図15及び
図16は、それぞれ、第2の変形例に係るシートの座面に荷重が加わった際のシート座部の変形態様を示す断面図である。
【0055】
第2の変形例では、
図12~
図14に示すように、凹部11は、センサ30の幅方向Wにおける両側に形成されている。具体的に、凹部11は、幅方向Wにおいてセンサ30の一方側に位置して奥行き方向Tに沿って延びる第1の凹部分11aと、幅方向Wにおいてセンサ30の他方側に位置して奥行き方向Tに沿って延びる第2の凹部分11bとにより構成されている。
【0056】
図12~
図14に示すように、第2の変形例においても、上記実施形態と同様に、センサ30が配置された領域の側方に位置する凹部11が座面側表面10aに形成されている。本変形例においては、凹部11は、センサ30の幅方向Wにおける両側において各々奥行き方向Tに沿って延びる部分を含む。このため、センサ30が配置された領域の変形が、当該領域の幅方向Wにおける両側部分により拘束されにくい。従って、
図15及び
図16に示すように、センサ30が配置された領域が大きく変形しやすく、よって、乗員の着座を精度よく検知することが可能となる。
【0057】
(その他の変形例)
第2の変形例では、凹部11がセンサ30に対して幅方向Wの側方に位置する第1及び第2の凹部分11a、11bにより構成されている例について説明したが、凹部11は、例えば、センサ30に対して奥行き方向Tの側方に位置する第3及び第4の凹部分11c、11dの少なくとも一方により構成されていてもよい。
【0058】
この構成によれば、センサ30が配置された領域の変形が、当該領域の奥行き方向Tにおける側方に位置する部分により拘束されにくい。従って、この構成においてもセンサ30が配置された領域が大きく変形しやすく、よって乗員の着座を精度よく検知することが可能となる。
【0059】
このように、凹部11がセンサ30が配置された領域の側方に形成されている場合は、当該領域の変形が、その領域に対して凹部11を挟んで隣り合う領域により拘束されにくくなる。このため、凹部11がセンサ30が配置された領域の側方に形成されている場合は、凹部11の平面視形状や横断面形状に関わらず、乗員の着座を精度よく検知することが可能となる。
【0060】
例えば、凹部11の第1及び第2の凹部分11a、11bは、それぞれ、奥行き方向Tに対して傾斜した方向に沿って形成されていてもよい。凹部11の第3及び第4の凹部分11c、11dは、それぞれ、幅方向Wに対して傾斜した方向に沿って形成されていてもよい。
【0061】
第1~第4の凹部分11a~11dは、それぞれ、非直線状に形成されていてもよい。第1~第4の凹部分11a~11dのそれぞれは、例えば、蛇行状、湾曲した形状に形成されていてもよい。
【0062】
凹部11は、ドット状に形成されていてもよい。
【0063】
凹部11は、例えば、その横断面形状が矩形状、逆三角形状、逆台形状等となるように形成されていてもよい。
【0064】
上記実施形態では、センサ30が座面側表面10a上に配置されている例について説明したが、センサ30は、例えば、座面側表層部10bに埋設されていてもよい。この構成においても、凹部11を、座面側表面10aからクッション部材10の厚み方向Hに延びて下端がセンサ30の位置よりも下方に位置するように形成することにより、センサ30が配置された領域の変形が当該領域の側方に位置する部分により拘束されにくくなる。従って、乗員の着座を精度よく検知することが可能となる。
【0065】
上記実施形態では、センサ30がメンブレン方式のセンサにより構成されている例について説明した。但し、本発明において、センサは、乗員の荷重を検知できるセンサであればどのようなセンサであってもよい。センサ30は、例えば、ひずみゲージ、圧電素子を用いたセンサ等により構成することもできる。
【0066】
上記実施形態では、センサ30が4つの検知部31a~31dを有している例について説明したが、本発明において、センサは、少なくとも一つの検知部を有していればよく、例えば、ひとつの検知部により構成されていてもよい。
【0067】
シート座部2は、トリム(表皮)20を有しておらず、例えば、クッション部材10により構成されていてもよい。
【0068】
シート1は、背もたれ部を有しておらず、例えば、シート座部2により構成されていてもよい。
【0069】
[比較実験]
クッション部材10の座面側表面10aに凹部11を形成することにより、座面側表面10aを押圧した際の座面側表面10aの変位量がどのように変化するかを以下の実施例に係るシートと比較例に係るシートとを用いて実験した。
【0070】
(実施例に係るシート)
実施例に係るシートは、上記実施形態で説明したシート1と実質的に同様の構成を有するシートであり、具体的には、凹部11が形成されたポリウレタン製のクッション部材10と、クッション部材10の座面側表面10aの凹部11により包囲された領域内に貼付された幅寸法が80mmであり奥行き寸法が80mmであるシート状のセンサ30とを備えるシートである。当該シートにおいては、クッション部材10の座面側表面10aに以下のような凹部11が形成されている。
【0071】
凹部11の深さ(座面側表面10aと凹部11の先端との間のクッション部材10の厚み方向Hに沿った距離):5mm
凹部11の幅:5mm
凹部11の第1の凹部分11aと第2の凹部分11bとの間の幅方向Wに沿った距離:90mm
凹部11の第3の凹部分11cと第4の凹部分11dとの間の奥行き方向Tに沿った距離:100mm
【0072】
(比較例に係るシート)
比較例に係るシートは、座面側表面に凹部が形成されていないことを除いては上記実施例に係るシートと同様の構成を有するシートであり、具体的には、凹部が形成されていないポリウレタン製のクッション部材と、そのクッション部材の座面側表面に貼付された幅寸法が80mmであり奥行き寸法が80mmであるシート状のセンサとを備えるシートである。
【0073】
(実験)
図17に示すように、直径が80mmである円板状の負荷板40を、その図心がセンサ30の図心と一致するように配し、196Nの力でクッション部材に押し当て、
図18に示す各測定点A-1~C-4及びDにおける座面側表面10aの変位量を測定した。この測定を5回繰り返し、各測定点A-1~C-4及びDにおける変位量の平均値を求めた。実施例に係るシートに対する結果を表1に示し、比較例に係るシートに対する結果を表2に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
(考察)
表1及び表2に示す結果から、座面側表面10aに凹部11を形成することにより、凹部11に包囲された領域における座面側表面の変位量が大きくなる傾向にあることが理解される。このことは、凹部11を形成した実施例における測定点B-3と測定点Dとの変位量の差(5.1mm)が、凹部11を形成しなかった比較例における測定点B-3と測定点Dとの変位量の差(4.2mm)よりも大きかったことによっても裏付けられる。また、座面側表面10aに凹部11を形成することにより、凹部11に包囲された領域内に位置する測定点A-2、A-3、A-4、B-2、B-3、B-4、C-2、C-3、C-4における変位量のばらつきを小さくできることが理解される。以上より、クッション部材10の座面側表面10aに凹部11を形成することにより、座面側表面10aの凹部11により包囲された領域の変位量を比較的安定して大きくできることが分かる。
【符号の説明】
【0077】
1 シート
2 シート座部
2a 座面
10 クッション部材
10a 座面側表面
10b 座面側表層部
11 凹部
30 センサ