(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】収納ケースおよび仕分け収納ラック
(51)【国際特許分類】
B65D 1/22 20060101AFI20230907BHJP
A47B 88/00 20170101ALI20230907BHJP
B65G 1/14 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B65D1/22
A47B88/00
B65G1/14 B
(21)【出願番号】P 2019130108
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】592018629
【氏名又は名称】三進金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】橋本 明彦
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3065797(JP,U)
【文献】特開2001-286357(JP,A)
【文献】特開2002-017471(JP,A)
【文献】実開平02-134034(JP,U)
【文献】特開2018-188235(JP,A)
【文献】特開2016-088650(JP,A)
【文献】実開平04-051247(JP,U)
【文献】実開平05-086570(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/22
A47B 67/04
A47B 88/00
B65G 1/14
B42F 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の底面板の4つの辺から、第1側面板、この第1側面板に対向する第2側面板、引手を有する前面板および後面板が立ち上がり、上面が開口する箱体であり、
前記第2側面板
、前記前面板および前記後面板が第1側面板よりも低く形成され
、
前記第1側面板の上端後方部に、上方に突出する後部突出部が形成されていることを特徴とする収納ケース。
【請求項2】
前記後部突出部には、その前方側が前記第1側面板から切り離されて内側に屈曲されることによって、係止部が設けられ、
前記第1側面板の前記係止部の下方に孔が形成され、
上下に収納ケースを積み重ねた状態において、下段の収納ケースの前記係止部が上段の収納ケースの前記孔に嵌合されるように構成されている請求項1に記載の収納ケース。
【請求項3】
前記第1側面板の上端前方部および前記前面板の上端部のいずれか一方に、上方に突出する前部突出部が形成されている請求項1または2に記載の収納ケース。
【請求項4】
複数の棚を有するラックと、請求項1~3のいずれかに記載の収納ケースを少なくとも1個とを備えることを特徴とする仕分け収納ラック。
【請求項5】
前記棚の前面側下部において、その下段の棚に載置した収納ケースの後部突出部が当接するストッパーおよび/または前部突出部が当接するストッパーを有する請求項4に記載の仕分け収納ラック。
【請求項6】
請求項4または5に記載の仕分け収納ラックの棚に載置された収納ケースを前方に引き出し、引き出された収納ケースの第2側面板に向かってケース内の物品を取り出すことを特徴とするピッキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚上の空間を左右方向に区分する収納ケースおよびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ピッキング設備においては、複数段の棚板を備えたラックやカートが使用される。前記ラック等では、各棚板に仕切体を取り付けて棚板上の空間を区切って複数種の物品を仕分けして載置できるようになされている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の
図2には、載置板に側辺から仕切板を立ち上げ、手前側の辺を屈曲させて棚板の框にスライド可能に係合する係合部を有する仕切り体が記載されている。前記仕切り体は、棚板上をラックの間口方向に自在にスライドして棚板上の空間を任意の位置で区切ることができ、物品の寸法に応じて位置を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたラックは、仕切られた空間の幅を自在に変更できる。しかし、物品の出し入れは手前側からのみであり、手前から順次取り出すとしても奥側に置かれた物品ほど取出し難くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、物品の出し入れを容易に行える収納ケースおよびその関連技術の提供を目的とする。
【0007】
即ち、本発明は下記[1]~[6]に記載の構成を有する。
【0008】
[1]矩形の底面板の4つの辺から、第1側面板、この第1側面板に対向する第2側面板、引手を有する前面板および後面板が立ち上がり、上面が開口する箱体であり、
前記第2側面板の少なくとも一部が第1側面板よりも低く形成されていることを特徴とする収納ケース。
【0009】
[2]前記第1側面板の上端後方部および前記後面板の上端部のいずれか一方に、上方に突出する後部突出部が形成されている前項1に記載の収納ケース。
【0010】
[3]前記第1側面板の上端前方部および前記前面板の上端部のいずれか一方に、上方に突出する前部突出部が形成されている前項1または2に記載の収納ケース。
【0011】
[4]複数の棚を有するラックと、前項項1~3のいずれかに記載の収納ケースを少なくとも1個とを備えることを特徴とする仕分け収納ラック。
【0012】
[5]前記棚の前面側下部において、その下段の棚に載置した収納ケースの後部突出部が当接するストッパーおよび/または前部突出部が当接するストッパーを有する前項4に記載の仕分け収納ラック。
【0013】
[6]前項4または5に記載の仕分け収納ラックの棚に載置された収納ケースを前方に引き出し、引き出された収納ケースの第2側面板に向かってケース内の物品を取り出すことを特徴とするピッキング方法。
【発明の効果】
【0014】
上記[1]に記載の収納ケースは、第2側面板の高さが第1側面板の高さよりも低いので、棚等に載置した収納ケースを手前に引き出して第2側面板側から容易に物品を出し入れすることができる。
【0015】
上記[2]に記載の収納ケースは、第1側面板または後面板の後部突出部を、その収納ケースを載置するラックの上部に当接させることによって、前方への転落を防止できる。
【0016】
上記[3]に記載の収納ケースは、第1側面板または前面板の前部突出部を、その収納ケースを載置するラックの上部に当接させることによって、収納ケースが奥に入り込まないようにすることができる。
【0017】
上記[4]に記載の仕分け収納ラックによれば、収納ケースの低くした第2側面板の側方からでも収納した物品を把握することができ、ラックの目線の高さ位置の棚まで収納ケースを配置することが可能となる。これにより、同じスペースでも従来より収納ケースを多く配置することができる。
【0018】
上記[5]に記載の仕分け収納ラックは、棚の前面側下部に後部突出部が当接するストッパーおよび/または前部突出部が当接するストッパーが設けられており、その下段の棚に載置した収納ケースの後部突出部をストッパーに当接させることにより収納ケースの前方への転落を防止でき、前部突出部をストッパーに当接させることにより収納ケースが奥に入り込むのを防止できる。。
【0019】
上記[6]に記載のピッキング方法によれば、棚から収納ケースを引き出して第2側面板に向かって物品を取り出すので、収納域にアクセスしやすく、ピッキング作業を効率良く行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の収納ケースの第1の実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明の収納ケースの第2の実施形態の斜視図である。
【
図3】本発明の収納ケースの第3の実施形態の斜視図である。
【
図4】
図3の収納ケースを積み重ねた状態の側面図である。
【
図5】本発明の収納ケースの第4の実施形態の斜視図である。
【
図6】本発明の仕分け収納ラックの一実施形態の斜視図である。
【
図7】棚から収納ケースを引き出した状態を示す斜視図である。
【
図9】他の棚およびストッパーを示す断面図である。
【
図10】さらに他の棚およびストッパーを示す断面図である。
【
図11】本発明のピッキング方法を説明する斜視図である。
【
図12】本発明の収納ケースのさらに他の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1、2、3、5に本発明の収納ケースの4種類の実施形態を示し、
図6に前記収納ケースを用いた仕分け収納ラックを示す。
【0022】
以下の説明において、収納ケースおよび仕分け収納ラックにおける前後左右の方向は、前面板側を「前」または「手前」、後面板側を「後」または「奥」、前面板の外面から見て左側を「左」、前面板の外面から見て右側を「右」とする。また、同じ符号を付したものは同一物または同等物を示すものであり、重複する説明を省略する。
[収納ケース]
(第1の実施形態)
図1の収納ケース1は、長方形の底面板10の対向する左右の側辺から第1側面板11および第2側面板12が立ち上がり、前側の辺から前面板13、後側の辺から後面板14が立ち上がり、上面が開口する箱体である。前記収納ケース1は金属板を曲げ加工することにより作製された継ぎ目のないケースである。
【0023】
前記第1側面板11の高さH1、前面板13の高さH3、後面板14の高さH4は等しく、第2側面板12の高さH2が他の面板よりも低い。このように、第2側面板12を第1側面板11よりも低くすることによって、側面からの物品の出し入れを容易に行うことができる。本発明において、第1側面板11の高さH1と第2側面板12の高さH2の差に制限はないが、物品の出し入れのし易さという観点から、第2側面板12の高さH2は第1側面板11の高さの50%以下に設定することが好ましい。また、ケース内に物品を安定して収納するために10mm以上であることが好ましい。
【0024】
なお、前記収納ケース1は前面板13に向かって左の側面板を第1側面板11とし、右側の側面板を第2側面板12としているが、左右どちらの側面板を第1側面板に設定してもよい。本発明において、対向する2つの側面板の高さが異なり、高い方の側面板を第1側面板と称し、低い方の側面板を第2側面板と称する。
【0025】
前記前面板13には上端に材料板の上端縁を外側に屈曲させた引手15が形成されている。本発明の収納ケースは引手の位置および形状を限定するものではないが、前面板13の上端部に引手15を設けることによって、複数個の収納ケースを積み重ねる際に上下のトレーの引手に干渉せず省スペース化を図ることができる(
図4参照)。また、前記収納ケース1は金属板の曲げ加工品であるから、材料板から前面板13を成形する工程で引手15を成形できる。
【0026】
本発明において、引手は前面板から前方に突出したものに限定されない。例えば前面板に孔を穿設して指を掛けてトレーを引き出すようにすることもできる。このような孔を引手とする収納ケースも本発明に含まれる。また、前面板と一体であることにも限定されず、前面板に別部材の引手を取り付けることもできる。
(第2の実施形態)
本発明の収納ケースにおいて、第2側面板の少なくとも一部が第1側面板よりも低いことが要件であり、第2側面板の奥行方向の一部を低くするだけでも物品の出し入れが容易になる。
【0027】
図2の収納ケース2は、第2側面板22の奥行方向の中央部22aが第1側面板11よりも低く、両端部22bは第1側面板11と同じ高さである。前記第2側面板22の高さの低い部分の奥行方向の寸法D1は、物品の出し入れを容易にするために、全体の寸法D0の80%以上に設定することが好ましい。また、前記収納ケース2は前面板13および後面板14が第1側面板11と同じ高さであり、第2側面板22の両端部22bは前面板13および後面板14と同じ高さである。このように、第2側面板22の両端部22bをこれらに続く前面板13および後面板14と同じ高さにすることによって箱体の強度を高めることができる。
(第3の実施形態)
本発明の収納ケースにおいて、前面板および後面板の高さは自由に設定することができ、第1側面板より低い、高い、同じのいずれでもよい。但し、前面板および後面板の高さは第2側面板の高さと同一またはそれ以上であることが好ましい。
【0028】
図3の収納ケース3は、前面板33の高さH3および後面板34の高さH4が第1側面板31の高さH1よりも低い。前記第2側面板32の高さH2が第1側面板31の高さH1よりも低いことに加えて、前面板33および後面板34のうちの少なくとも一方を第1側面板31よりも低くすると、複数個の収納ケースを積み重ねたときのかさばりを抑えることができる。また、前面板33を第1側面板31よりも低くすると、前方からケース内の物品を視認することができる。
【0029】
また、前記第1側面板31の上端後方部は上方に突出して、後述する棚の框に係止する突出部40が形成されている。前記突出部40は、第1側面板31から上方に延長された延長部分41からなり、延長部分41の前方側の根元に水平方向のスリット42を設けることによって延長部分41の一部が第1側面板31から切り離され、切り離した部分を内側に90°屈曲させることによって係止部43が形成されている。
【0030】
なお、上述した第1側面板31の高さH1に前記突出部40の突出高さは含まれない。前記収納ケース3の突出部40を含む全高さHはH1より大きい。
【0031】
前記突出部40の係止部43は内方に突出しているので、複数個の収納ケース3を積み重ねる際に邪魔になることがある。前記収納ケース3においては、第2側面板32の高さH2と後面板14の高さH4を等しくして、これらのピッチで積み重ねられるように設計されている。このとき、下段の収納ケース3の係止部43が上段の収納ケース3の第1側面板31に干渉すると直立した状態で積み重ねることができない。そこで、前記収納ケース3では、
図3、4に示すように、第1側面板31の係止部43の下方に該係止部43を嵌合する孔36を穿設して積み重ね時の干渉を回避している。
【0032】
図4は、
図3の収納ケース3と同形の4個の収納ケース3A、3B、3C、3Dを積み重ねた状態を示している。
図4に示すように、最下段の収納ケース1Aの係止部43Aを2段目の収納ケース3Bの孔36Bに嵌合させ、2段目の収納ケース3Bの係止部43Bを3段目の収納ケース3Cの孔36Cに嵌合させる。この手順で複数個の収納ケース3を直立した状態で積み重ねることができる。
(第4の実施形態)
本発明の収納ケースは、第1側面板と第2側面板の高さの関係を規定するものであり、実寸法は規定されない。各面板の実寸法は収納ケースを使用する空間の寸法に応じて自由に設定することができる。また、前面板および後面板の幅で表される間口寸法、第1側面板および第2側面板の幅で表される奥行寸法の実寸法も規定されず、使用する空間に応じて自由に設定することができる。
【0033】
また、各面板は高さが一定であることにも限定されない。
図5に示す収納ケース4は、第1側面板37の後端が延長され、延長部分37aを内側に折り曲げて後面板の一部を構成している。上述したように、スタッキング時のかさばりを抑えるためには低い後面板が好ましいが、ケース強度を高める方法として高い後面板が好ましい。前記収納ケース4は後面板の一部を高くすることによって強度を高めている。また、前面板38は第2側面板32と同じ高さに設定されている。
(その他の形態)
図3の収納ケース3は、第1側面板31の後方上端部に棚の框に係止する突出部40を有している。前記突出部40は本発明の後部突出部に対応し、収納ケースを載置した棚の前方への転落を防止する機能を有している。本発明の後部突出部は第1側面板の後方上端部の他、後面板の上端部に設けた場合も同等の効果を奏することができる。後部突出部を後面板に設ける場合は後部突出部の上端が第1側面部よりも高くなるようにする。
【0034】
また、背面板の無いラックを壁から離して設置する場合は、収納ケースが棚の奥に入り込まないように前部突出部を第1側面板の前方上端または前面板の上端に設けてもよい。前記前部突出部に対しては、収納ケースを載置する棚の上段の棚の前面側下部に該前部突出部が当接するストッパーを設ける。
図12の収納ケース6は第1側面板45の前方上端に前部突出部46が設けられている。この前部突出部46は、前記収納ケース3の後部突出部40と同様に、第1側面板45を上方に延長し、延長部分の根元に水平方向のスリットを設けて第1側面板から切り離し、切り離した部分を屈曲させたものである。図示例の収納ケース6は前部突出部46と後部突出部40の両方を備えているが、前部突出部46のみを有する収納ケースも本発明に含まれる。
【0035】
本発明の収納ケースの材料や製造方法に何ら制限はない。金属以外の材料として、樹脂、硬質パルプ、段ボールを例示できる。樹脂製の場合は透明の収納ケースを作製することができ、収納した物品をケースのどの面からでも識別できる。
[仕分け収納ラック]
図6の仕分け収納ラック5はラック50と複数個の収納ケース3を備えている。
【0036】
ラック50は、四隅に配置された4本の支柱51と、これらの支柱51の間に架け渡される複数個の棚60とを備えている。前記支柱51は任意の高さに棚受け金具を取り付けることができ、棚60を所望の高さに架け渡すことができる。図示例では8個の棚60が取り付けられ、最上位置の棚60は実質的に天井板として機能し、7段の収納空間が形成されている。
【0037】
前記棚60は長方形の金属板の前後左右の周囲4辺がそれぞれ下方に折り曲げられて、載置面部61の前後左右縁に框が形成されている。
図8は、載置面部61の前縁から下方に折り曲げ、さらに後方に折り曲げ、さらに先端部を上向きに折り曲げた前框62を示している。即ち、前記前框62は、載置面部61に続く前下がり部62a、載置面部61に平行する底部62b、前下がり部62aに平行する先端部62cが順次屈曲して形成され、これらのうちの先端部62cが本発明におけるストッパーに対応する。
【0038】
前記棚60に複数個の収納ケース3が隙間無く並べられている。
図6は下方4段の棚60に収納ケース3を載置した例を示している。前記棚60の載置面部61と上段の棚60の前框62の下端との間の寸法は、前記収納ケース3の第1側面板31の高さH1よりも僅かに大きく、かつ突出部40を含む全高さHよりも小さい。収納ケース3の寸法の一例として、底面板10が幅:290mm×奥行:500mm、第1側面板31の高さH1:265mm、第1側面板31の全高さH:280mm、第2側面板32の高さH2:50mmを例示できる。この寸法の収納ケース3に対して前記先端部62cがストッパーとして機能するのは、棚60間の空間の高さが第1側面板31の高さH1:265mmよりも大きく全高さH:280mmよりも小さい場合である。また、第1側面板31の高さH1は、商品の混入を防ぐ上で棚60間の空間の高さに近づけるのが好ましい。
【0039】
なお、
図6は下4段の棚60に収納ケース3を載置した例であるが、任意の棚に収納ケース3を載置することができる。また、
図6は同一寸法の収納ケース3を用いた例であるが、間口寸法の異なる複数種の収納ケースを混在させることもできる。
【0040】
図7に示すように、収納ケース3に物品の出し入れを行う時は、引手15に手を掛けてケースを手前に引き出す。収納ケース3は左側の収納ケース3の第2側面板32および右側の収納ケース3の第1側面板31をガイドとしてスムーズに引き出される。引き出された収納ケース3は第1側面板31の突出部40の係止部43が棚60の前框62の先端部62cに当たり、先端部62cがストッパーとして機能してそれ以上の引き出しが阻止され(
図8参照)、収納ケース3の棚60の前方からの転落が防がれる。
【0041】
手前に引き出した収納ケース3への物品の出し入れは第2側面板32側から行う。前記収納ケースを手前に引き出すことによってケース内を奥まで見渡せ、第2側面板32は第1側面板31よりも低いので物品をたやすく出し入れできる。左右の側面板が同じ高さのケースではどちらの側面から出し入れしても出し入れの難易は同じであり、左右ともに低くすると出し入れは容易であるが背の高い物品の収納が不安定になり、左右ともに高くすると出し入れがしにくくなる。本発明の収納ケースは第2側面板を第1側面板よりも低くすことで、物品を安定して収納し、かつ出し入れを容易にしている。
【0042】
また、前記第2側面板32に、収納されている物品の識別情報を印刷したラベル39やICタグを貼付しておくと、出し入れの際に物品の確認を速やかに行うことができる。前記第2側面板32は右隣り収納ケース3のスライド用ガイドとなるので擦れるが、ラベル39の貼付部位に凹みを形成しておくことでラベル39の剥離や摩耗を防ぐことができる。また、収納ケース3内を可動仕切り100等で奥行方向に複数室に区切るようにすれば奥行き方向にも異品種の物品を収納して仕分けることができる。複数室に区切る場合に、前記第2側面板32の奥行方向に複数のラベル用凹みを形成しておけば、各室の物品に対応するラベル39を貼付することができる。
【0043】
なお、前記収納ケース3は突出部40の一部を屈曲させて前框62に平行な係止部43を形成することによって、前框62との接触面積を拡大させている。このように両者の接触面積を拡大することによって収納ケース3の転落防止効果が高められる。ただし、本発明は、突出部に棚の前框に平行な部分が設けられていることに限定されない。図示例の収納ケース3は金属板の曲げ加工品であるが、突出部40を曲げずに金属板の小口面で前框62に当接させた場合でも収納ケースの転落を防止することができる。
【0044】
上述した仕分け収納ラック5は、棚60の前框62の先端部62cをストッパーとして利用したものである。本発明におけるストッパーは、収納ケース3の第1側面板31よりも高い位置にあって第1側面板31がくぐり抜けることができ、かつ突出部40に当接する高さに設けられていることが条件である。ただし、収納ケース3を手前に引き出す際に、第1側面板31の前記突出部40がストッパーに到達する以前に干渉するものが存在している場合はストッパーの位置を変更する必要がある。
【0045】
図9の棚70は載置面部61および前框62の構造は
図8の棚60と同じであり、載置面部61の裏面に、前框62と同じ高さの補強材71が裏面から突出する態様で取り付けられている。前記棚70においては、収納ケース3の突出部40が前框62に到達する以前に補強材71に当たって収納ケース3を十分に引き出すことができない。このような棚70に対しては、前框62に別途ストッパー80を取り付けることにより収納ケース3を前框62の位置まで引き出すことができる。前記ストッパー80は、収納ケース3の突出部40に当接させる当て板81aと、前框62に取り付けるための取り付け板81bが逆V字形の屈曲部81cを介して一体となった金属板の曲げ加工品であり、当て板81aを前框62の先端部62cの外側面に沿わせて取付板81bを前框62の底部62bの内側面にネジ止めすると、当て板81aが先端部62aに沿って垂下し、その先端が補強材71の下端よりも低くなる。前記ストッパー80を取り付けた棚70に対しては、第1側面板31の高さH1がストッパー80の当て板81aの下端よりも低く設定され、突出部40が補強材71よりも低くかつ当て板81aに当接する高さに設定された収納ケース3を用いる。
【0046】
図10の棚90は、前框92の前下がり部92aが
図8および
図9の前框62よりも長く延長されて先端が補強材71よりも低い位置に達し、底面部92bに続く先端部92cがストッパーとして機能する。前記棚90に対しては、第1側面板31が前框92の下端よりも低い高さに設定され、突出部40が前框92の先端部92cに当接する高さに設定された収納ケース3を用いる。
【0047】
本発明において収納ケースの前部および後部の突出部の有無は任意である。転落防止機能を持たない収納ケースでも第2側面板側からの物品の出し入れがし易いという効果を享受できる。また、収納ケースは物品のピッキング設備のような規模の大きいラックに用途を限定されるものではない。住宅やオフィスにおいても本棚やキャビネット等で使用できる。
[ピッキング方法]
図11は
図6の仕分け収納ラック5を用いたピッキング方法を示している。本図は2台の仕分け収納ラック5を連接して設置した例である。
【0048】
作業者は目的の収納ケース3を引き出し第2側面板32に向かって物品を取り出していく。このため、収納域にアクセスしやすく、収納ケース3の奥にある物品も容易に取り出すことができる。また、4辺の面板が等しいケースは上から覗き込まなければ収納物品を把握できないが、本発明の収納ケース3では低くした第2側面板32の側方からでも把握することができ、目線の高さ位置まで収納ケース3を配置することが可能となる。これにより、同じスペースでも従来より収納ケース3を多く配置することができると共に、少ない作業動線で効率よくピッキング作業を行うことができる。
【0049】
図示例の仕分け収納ラック5は(後部)突出部40を有する収納ケース3とストッパーを有するラック50を組み合わせたものであるが、収納ケースにおける後部突出部の有無およびストッパーの有無は収納ケースの前方への転落防止にのみ関係する。第2側面板が第1側面板よりも低い本発明の収納ケースを用いる限り、後部突出部およびストッパーの有無に関係なく、上述した収納ケースの多数配置やピッキング作業の効率化を図ることができる。
【0050】
また、
図12の収納ケース6に対しては、ラックの前面側上部、即ち収納ケース6を載置する棚の上段の棚の前面側下部にストッパーを設けて前部突出部46を当接させることによって、収納ケース6が奥に入り込むのを防ぎ、かつ並べた複数個の収納ケース6の奥行き方向の位置を揃えることができる。なお、上述した後部突出部と同様に、前部突出部およびストッパーの有無に関係なく、収納ケースの多数配置やピッキング作業の効率化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の収納ケースは他品種の物品を仕分けして収納するラックに利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1、2、3、3A、3B、3C、3D、4、6…収納ケース
5…仕分け収納ラック
10…底面板
11、31、37、…第1側面板
12、22、32…第2側面板
13、33、38…前面板
14、34…後面板
15…引手
36、36A、36B、36C…孔
40…突出部(後部突出部)
43、43A、43B…係止部
46…前部突出部
50…ラック
60、70…棚
61…載置面部
62…前框
62c…先端部(ストッパー)
80…ストッパー
H1…第1側面板の高さ
H2…第2側面板の高さ