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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】モータアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20230907BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H02K7/116
H02K7/08 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019163706
(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2021044882
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220125
【氏名又は名称】東京パーツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小柳 尚久
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩和
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-240143(JP,A)
【文献】特開2012-235549(JP,A)
【文献】特開平09-308188(JP,A)
【文献】特開平08-237907(JP,A)
【文献】特開昭64-074342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部と底部を有する有底筒状のモータケースと、前記筒状部の内周面に固定された永久磁石からなる固定子と、前記固定子に対向するように前記モータケース内に設けられた電機子と回転軸を有する回転子と、前記モータケースの開口端部に装着されたブラケットと、前記モータケースと前記ブラケットに固定されて前記回転軸を軸支するラジアル軸受と、を有するモータと、
前記モータケースの前記底部から突出した前記回転軸の先端側に固定されたウォームギアと、
前記ウォームギアと噛合するウォームホイールと、
下ケースと上ケースで構成され、前記モータと前記ウォームギアと前記ウォームホイールを収容するハウジングと、
前記下ケースに固定された弾性体と、
を備え、
前記モータの無通電時と通電時の双方において、前記電機子の軸方向の磁気中心が、前記永久磁石の軸方向の磁気中心より、前記ブラケット側に位置しており、かつ、前記弾性体が、前記回転軸の先端を常に軸方向に押圧しており、
前記弾性体は、
前記モータの無通電時において、前記回転軸の後端と前記ブラケットとの間には軸方向に隙間が設けられ、
前記回転軸の先端側への最大移動時において、前記電機子が前記底部に接触せず、
前記回転軸の後端側への最大移動時において、前記弾性体と前記先端が離間しない、
ように調整されている、
ことを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項2】
前記下ケースは、底板と、前記底板の周縁から立設された側板を有し、
前記弾性体は前記底板に立設された弾性板であり、
前記モータの無通電時と通電時の双方において、前記弾性板は前記側板に接触しない、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータアクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用空調装置における送風経路切換ドアを作動させるためのモータアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータは、回転軸のスラスト方向の摩擦を減らすため、有底筒状のハウジング(モータケース)内に配された電機子(回転子)が、このハウジングを閉塞するブラケットに設けられたスラスト軸受側にスラスト吸引されているのが一般的である。
【0003】
このようなモータの使用例として、モータと、モータの出力軸となる回転軸に取り付けられたウォームギヤと、ウォームギヤと噛合する減速ギヤ(ウォームホイール)とを備えるモータアクチュエータがある。
【0004】
しかしながら、上記のモータアクチュエータでは、回転軸がスラスト軸受を支点として回転するため、回転軸がラジアル方向に振動するときは、振動幅が大きくなるという問題がある。
【0005】
この問題を解決するため、例えば、特許文献1には、ハウジング内に配された電機子が有底筒状のハウジングの底部側にスラスト吸引させるように構成したモータと、このモータの回転軸に取り付けられたウォームギヤと、このウォームギヤと噛合する歯車と、を有するアクチュエータが記載されている。このアクチュエータによれば、回転軸がラジアル方向に振動するときの支点が回転軸の後端ではなく、回転軸の先端側になり、回転軸のラジアル方向の振動が抑制できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-240143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のアクチュエータでは、電機子がハウジングの底部側に吸引される構成のため、回転軸が正逆転する場合、回転軸の一端がハウジングから突出する方向に移動すると、回転軸が軸方向にスラスト隙間分加速する。このため、特許文献1の図1図2の場合では電機子とハウジングの軸受との間にて、または、特許文献1の図3図4の場合ではウォームギヤ若しくは回転軸の一端と、ケースの接触部分の間にて、衝突が発生して、異音が増大することが危惧される。
【0008】
そこで、本発明は、回転軸が正逆転する際の異音の発生を抑制できるモータアクチュエータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のモータアクチュエータは、
筒状部と底部を有する有底筒状のモータケースと、前記筒状部の内周面に固定された永久磁石からなる固定子と、前記固定子に対向するように前記モータケース内に設けられた電機子と回転軸を有する回転子と、前記モータケースの開口端部に装着されたブラケットと、前記モータケースと前記ブラケットに固定されて前記回転軸を軸支するラジアル軸受と、を有するモータと、
前記モータケースの前記底部から突出した前記回転軸の先端側に固定されたウォームギアと、
前記ウォームギアと噛合するウォームホイールと、
下ケースと上ケースで構成され、前記モータと前記ウォームギアと前記ウォームホイールを収容するハウジングと、
前記下ケースに固定された弾性体と、
を備え、
前記モータの無通電時と通電時の双方において、前記電機子の軸方向の磁気中心が、前記永久磁石の軸方向の磁気中心より、前記ブラケット側に位置しており、かつ、前記弾性体が、前記回転軸の先端を常に軸方向に押圧しており、
前記弾性体は、
前記モータの無通電時において、前記回転軸の後端と前記ブラケットとの間には軸方向に隙間が設けられ、
前記回転軸の先端側への最大移動時において、前記電機子が前記底部に接触せず、
前記回転軸の後端側への最大移動時において、前記弾性体と前記先端が離間しない、
ように調整されている、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のモータアクチュエータでは、弾性体が常に回転軸の先端を押圧しているため、回転軸の先端と弾性体との間において衝突が生じない。このため、回転軸の機械的な異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態例に係るモータアクチュエータであって、(a)は上ケース20のみを内側から見た平面図であり、(b)は上ケースを除いた平面図である。
図2】(a)は図1(b)の矢視Aにおける下ケースのみの断面図であり、(b)は図1(b)の矢視Aにおけるモータと下ケースのみの断面図でありモータの無通電時を示す。
図3】(a)はモータの無通電時におけるモータと下ケースのみの断面図であり、(b)はモータの通電時に回転軸の先端がモータケースの底部から突出する方向に最大移動した状態の断面図であり、(c)はモータの通電時に回転軸の後端がブラケットに接触した状態の断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態例に係るモータアクチュエータであって、(a)は下ケースのみの断面図であり、(b)はモータの無通電時におけるモータと下ケースのみの断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態例に係るモータアクチュエータであって、(a)は下ケースのみの断面図であり、(b)はモータの無通電時におけるモータと下ケースのみの断面図である。
図6】本発明の実施形態例に係るモータアクチュエータの変形例でありモータの無通電時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、図2(b)において、上ケース20と下ケース10の組み込み方向を「組み込み方向」と呼びXで表し、組み込み方向に対して垂直な方向を「軸方向」と呼びYで表す。
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に説明する。
【0014】
(第1の実施形態例)
本発明の第1の実施形態例に係るモータアクチュエータ1を図1から図3を用いて説明する。
本例のモータアクチュエータ1は、例えば空調装置の気流調節弁の駆動源として用いることができる。
【0015】
モータアクチュエータ1は、下ケース10と上ケース20で構成されるハウジングと、モータ30と、ウォームギア35fと、減速ギヤ40と、出力軸50と、コネクタ側ターミナル70等を有する。
【0016】
下ケース10は、略四辺形の底板11と、底板11から一体に立設された平板状の弾性体(弾性板14)と、底板11の周縁から立設された側板12と、側板12により形成された開口端部を有する樹脂の一体成形品からなる。
上ケース20は、略四辺形の上板21と、上板21の周縁から下設された側板22と、側板22により形成された開口端部を有する樹脂の一体成形品からなる。
なお、本明細書では、図2の上側を上方とし下側を下方として記載するが、これは説明の便宜上のものであって、モータアクチュエータの使用時には上下が逆であっても、左右であってもよい。したがって、本発明において、例えば、下ケースは上ケースと、上ケースは下ケースと言い換えることもできる。
【0017】
上ケース20の開口端部が下ケース10の開口端部に組み付けられて、所定の内部空間を有するハウジングが形成されている。このハウジングの内部には、モータ30と、ウォームギア35fと、減速ギヤ40と、出力軸50と、コネクタ側ターミナル70等が配されている。
【0018】
また、下ケースと上ケースの側板12、22の一つには、その側板12、22から突出する1個の外部コネクタの差し込み口15、25が形成されている。この差し込み口15、25には、外部装置から不図示のコネクタが差し込まれる。外部装置は、そのコネクタを差し込み口15、25に差し込んだとき、差し込み口15、25に設けられたコネクタピンに電気的に接続されている。
【0019】
下ケース10には、モータ30を挿入して固定する凹部13が形成されており、また、上ケース20には、モータ30を挿入して固定する凹部23が形成されている。
モータ30が下ケースの凹部13に固定されると、モータ30の軸方向は、下ケースの底板11の上面に対して平行となる。
【0020】
モータ30が下ケースの凹部13に固定される前、平板状の弾性板14は、下ケース10と上ケース20の組み込み方向(X方向)に対して平行に立設されている。また、弾性板14と側板12の間には空隙が形成されており、弾性板14は、側板12と非接触に配置されている。
【0021】
この弾性板14は、モータ30のモータケース31の底部から突出した回転軸35aの先端が当接される押圧面14aと、この押圧面14aの裏側の裏面14bを有し、弾性板14の下端を固定端として、弾性板14の上端を自由端とする。弾性板14の上端は、下ケース10に固定されたモータ30の回転軸35aの先端より高く形成されている。
【0022】
モータ30は、モータケース31と、ブラケット32と、固定子34と、回転子35と、モータ用ブラシ33と、を有し、下ケースと上ケースの凹部13、23に挿入されて固定されている。
【0023】
モータケース31は、金属材料により形成され、円筒状の筒状部と底部からなる有底筒状を成し、底部の中央部にラジアル軸受36が圧入されている。
ブラケット32は、モータケース31の開口端部に嵌着され、樹脂等の絶縁材料によって一体成形されている。ブラケット32の中央部には、円形の凹部が形成されており、凹部の底面はスラスト軸受37となっている。凹部にはラジアル軸受36が圧入されている。
また、ブラケット32には、後述の整流子35dに摺接して電流を流すように一対のモータ用ブラシ33が設けられている。
【0024】
固定子34は、モータケース31の円筒部の内周面に固着されており、円筒形状で円周方向に沿ってN極、S極が交互に着磁された永久磁石からなる。
回転子35は、回転軸35aに固定された電機子を有する。この電機子は、回転軸35aに固定され薄い鋼鈑を複数枚積層してなる電機子コア35bと、電機子コア35bにコイル状に巻回された銅線35cと、回転軸35aに固定されて銅線35cに電気的に接続された整流子35dと、電機子コア35bに対して整流子35dとは反対側の回転軸35aに固定された樹脂製の環状部材35eを有する。
【0025】
回転軸35aは、ラジアル軸受36に挿通されて回転自在に支承されている。回転軸35aの先端は、モータケース31の底部から突出しており、回転軸35aの先端にはウォームギア35fが圧入固定され、回転軸35aの後端はラジアル軸受36とスラスト軸受37により支承されている。
【0026】
また、電機子の軸方向の磁気中心M1が、永久磁石の軸方向の磁気中心M2より、ブラケット32側に位置している。よって、電機子がモータケース31の底部側にスラスト吸引されて、回転軸35aの先端がモータケース31の底部から突出する方向に付勢される。本発明ではこの付勢力をスラスト吸引力と呼ぶ。よって、下ケースに組み込む前のモータの完成単品では、電機子の環状部材35eがモータケース31の底部に接触しており、回転軸35aの後端とスラスト軸受37との間には若干のスラスト隙間が存在する。このスラスト隙間により、回転軸が正逆転する場合、回転軸が軸方向に若干移動する。
【0027】
モータ30が下ケース10の凹部13に挿入されて固定されると、図2(b)のように、回転軸35aの先端が弾性板14を押圧する。すると、弾性板14は押圧されて変位する。このときの変位量は、下ケース単品の弾性板の押圧面14aから回転軸先端までの変位量Liniとして表される。この弾性板14は、押圧面14aと裏面14bを貫く軸方向に適度なバネ性を持って略弧状に撓み、元の形状に戻ろうとする。なお、本発明における弾性体は、変形後に元の形状に戻る弾性領域を使用するものである。
【0028】
次に、回転軸35aの軸方向の移動と弾性板14の変位との関係を説明する。
まず、モータの無通電時(回転軸が停止している場合)、図3(a)に示すように、スラスト吸引力と弾性板14の弾性力が均衡して、回転軸35aの後端とブラケット32との間には軸方向に隙間が設けられた状態で、回転軸35aと弾性板14が静止する。このとき、電機子の環状部材35eとモータケース31の底部との間には、軸方向に隙間G1が設けられている。
【0029】
一方、モータの通電時(回転軸が正逆転している場合)、ウォームギア35fとウォームホイール41の噛合により、回転軸35aの先端がモータケース31の底部から突出する方向に移動した場合、あるいは、回転軸35aの後端がブラケット32に接触する方向に移動した場合、弾性板14はバネ性により回転軸35aの先端から離れることなく追従して、常時、回転軸の先端に接触し、回転軸の先端を押圧している。
【0030】
より具体的に説明する。モータが無通電時から通電時となり、例えば、回転軸35aの先端が弾性板14を押圧する力が、図3(a)の弾性板14の弾性力より大きくなり、回転軸35aの先端がモータケース31の底部から突出する方向に最大に移動すると、図3(a)から図3(b)の状態となる。このときの弾性板14の変位量は、下ケース単品の弾性板14の押圧面14aから回転軸先端までの変位量Lとして表される。このとき、回転軸35aの先端が弾性板14を押圧する力が、図3(b)の弾性板14の弾性力と均衡する。また、弾性板14は側板12と非接触に配置されている。また、電機子の環状部材35eとモータケース31の底部との間には、軸方向に隙間G2が設けられている。
【0031】
一方、モータの通電方向が逆になり、回転軸35aの後端がブラケット32に接触する方向に移動して、回転軸35aの後端がスラスト軸受37に接触すると、図3(b)から図3(c)の状態となる。このときの弾性板14の変位量は、下ケース単品の弾性板14の押圧面14aから回転軸先端までの変位量Lとして表される。このとき、弾性板14は傾斜しているため、回転軸35aの先端を押圧している。また、電機子の環状部材35eとモータケース31の底部との間には、軸方向に隙間G3が設けられている。
【0032】
また、モータの通電方向が逆になり、回転軸35aの先端がモータケース31の底部から突出する方向に移動すると、図3(c)から図3(b)の状態となり、以後、繰り返す。そして、モータの通電時から無通電時になると、図3(a)に示す状態に戻る。
【0033】
このように、モータの無通電時、あるいは、モータの通電時で回転軸が正逆転して回転軸35aが軸方向に移動した場合、弾性板14は、回転軸35aの先端を軸方向に所定のバネ性を保ち押圧しているため、回転軸35aの先端から離れることなく追従して、回転軸35aの先端に、常時、接触している。
より具体的には、図3(a)に示すモータの無通電時の状態において、回転軸35aの後端とブラケット32との間の軸方向の隙間よりも、弾性板14の撓み量Liniが大きくなるように設定することにより、モータの無通電時と通電時の双方において、弾性体14で回転軸35aの先端を押圧することができる。
【0034】
また、モータの通電時に回転軸35aが軸方向に移動した場合、回転軸35aの軸方向の押圧力を受ける弾性板14により、回転軸35aが軸方向に移動できるスラスト移動範囲が設計上決められている。つまり、このスラスト移動範囲は、回転軸35aの後端がスラスト軸受37に接触した状態の回転軸35aの先端の位置から、最大の変位量Lになった弾性板14に接触する回転軸35aの先端の位置までである。
【0035】
また、回転軸35aが軸方向に移動できるスラスト移動範囲は、電機子の環状部材35eとモータケース31の底部との軸方向の隙間G3より短くなるように設定されており、電機子の環状部材35eとモータケース31の底部との間には、常に、軸方向に隙間が設けられている。
【0036】
上述のような弾性板14は、回転軸35aが弾性板14を押圧する最大押圧力やバネ性や耐久性やスラスト吸引力等が考慮されて、位置や材質や板厚や高さ等が設計されている。
【0037】
減速ギヤ40は、ウォームギア35fに噛合されるウォームホイール41を有している。
出力軸50は、減速ギヤ40に噛合されるフランジ状の出力ギヤを有している。また、出力軸50は、下ケース10と上ケース20に形成された軸孔により軸支されている。
【0038】
上述の構成により、モータの駆動力を、ウォームギア35f、減速ギヤ40および出力軸50を介して、例えば空調装置の気流調節弁の操作軸に伝達することができる。
【0039】
以上説明した本例のモータアクチュエータ1は、モータ30の無通電時と通電時の双方において、電機子の軸方向の磁気中心M1が、永久磁石の軸方向の磁気中心M2より、ブラケット32側に位置しており、かつ、弾性板14が、回転軸35aの先端を押圧している。
【0040】
よって、本例のモータアクチュエータ1では、回転軸35aの先端と弾性板14との間において衝突が生じず異音が発生しないため、モータの回転軸が正逆転する場合、回転軸の機械的な異音の発生頻度が半減される。
また、モータの通電時、回転軸35aの後端がブラケット32に接触する方向に移動した際、弾性板14が回転軸35aの先端を押圧して回転軸が加速するものの、電機子の軸方向の磁気中心M1が永久磁石の軸方向の磁気中心M2よりブラケット32に位置することにより、スラスト吸引力が抵抗となり回転軸が減速するため、回転軸の後端とスラスト軸受との衝突が生じた際の異音が低減される。
【0041】
また、本例のモータアクチュエータ1では、モータの無通電時と通電時の双方において、弾性板14は下ケース10の側板12に接触しないため、弾性板14が下ケース10に衝突せず異音が発生しない。
【0042】
また、本例のモータアクチュエータ1では、モータの無通電時と通電時の双方において、電機子はモータケース31の底部に衝突せず異音が発生しない。
【0043】
(第2の実施形態例)
次に、本発明の第2の実施形態例に係るモータアクチュエータの構成を図4により説明する。
図4において、図1ないし図3中の部材と同一の部材には同一の符号を付しており、これらの部材については説明を省略する。
【0044】
第1の実施形態例では、弾性板14と側板12の間には、空隙が形成されており、他の部材が存在しない。
一方、本例では、弾性板14と側板12の間には、第2の弾性体としてバネ部材60が配置されている。このバネ部材60は、弾性板14と側板12の双方に当接しており、弾性板14の変形に伴って変形する。
【0045】
本例のモータアクチュエータでは、第1の実施形態の作用効果を有すると共に、バネ部材60を弾性板14と側板12の間に追加することにより弾性板14のバネ性を容易に高められると共に、より確実に弾性板14が側板12に衝突するのを防ぐことができる。
【0046】
(第3の実施形態例)
次に、本発明の第3の実施形態例に係るモータアクチュエータの構成を図5により説明する。
図5において、図1ないし図4中の部材と同一の部材には同一の符号を付しており、これらの部材については説明を省略する。
【0047】
第1の実施形態例では、モータ30が下ケースの凹部13に固定される前、弾性板14は、下ケース10と上ケース20の組み込み方向に対して平行に立設されている(図2(a)参照)。
一方、本例では、図5(a)に示すように、モータが下ケースの凹部13に固定される前、弾性板114は若干傾斜している。
【0048】
本例のモータアクチュエータでは、第1の実施形態の作用効果を有すると共に、弾性板114は、回転軸35aの先端がモータケース31の底部から突出する方向に傾斜しているため、モータを下ケースの凹部13に容易に組み込むことができる。
【0049】
以上、本発明の3つの実施形態例について説明したが、本発明はこれらの実施形態例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能である。
【0050】
上述の実施形態の説明では、弾性板14、114は、下ケース10に一体成形されているが、本発明はこれに限らない。
【0051】
例えば、弾性板14、114は、下ケース10に固定された下ケース10の材料と別体のゴム材でもよく、この場合、モータ30が下ケースの凹部13に固定されると、回転軸の先端はゴム材を圧縮変形して、上述のような作用効果を有する。
【0052】
また、回転軸35aの先端が弾性板14に直接接触している構成を説明したが、これに限らない。
例えば、図6に示すように、回転軸535aに固定されたウォームギア535fの先端を弾性板14に直接接触させることもできる。なお、この場合は、回転軸の先端とは、ウォームギアの先端を意味する。
【符号の説明】
【0053】
1 モータアクチュエータ
10 下ケース
11 下ケースの底板
12 下ケースの側板
13 下ケースの凹部
14 弾性板(弾性体)
14a 押圧面
14b 裏面
15 下ケースの差し込み口
20 上ケース
21 上ケースの上板
22 上ケースの側板
23 凹部
25 上ケースの差し込み口
30 モータ
31 モータケース
32 ブラケット
33 モータ用ブラシ
34 固定子(永久磁石)
35 回転子
35a 回転軸
35b 電機子コア
35c 銅線
35d 整流子
35e 環状部材
35f ウォームギア
36 ラジアル軸受
37 スラスト軸受
40 減速ギヤ
41 ウォームホイール
50 出力軸
60 バネ部材(第2の弾性体)
70 コネクタ側ターミナル
114 弾性板(弾性体)
535 回転子
535a 回転軸
535f ウォームギア
M1 電機子の軸方向の磁気中心
M2 永久磁石の軸方向の磁気中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6