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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ロータリソレノイド
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/08 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
H01F7/08 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020012313
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021118318
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302038741
【氏名又は名称】新電元メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111899
【弁理士】
【氏名又は名称】永山 陽二
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信秀
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-142257(JP,A)
【文献】実開昭62-60008(JP,U)
【文献】実開平2-54203(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全部又は一部が磁性材料からなると共に、略円筒状に形成され、かつ、第1の端面に開口している貫通孔が形成されたケースと、
前記ケースの内部に設けられたコイルと、
前記ケースに固定された、又は、前記ケースと一体に形成されたベースと、
前記コイルに通電したときに、前記ベースに吸引されて前記ケースの前記第1の端面とは反対側の第2の端面に向かって直動するように設けられたプランジャと、
前記プランジャに固定されると共に、第1の端部及びその近傍部分が前記ケースの前記第1の端面に開口している前記貫通孔から突出し、第2の端部及びその近傍部分が前記ケースの内部に位置するように設けられたシャフトと、
前記ケースの内部に設けられると共に略円板状又は略円環板状に形成され、かつ、前記シャフトの前記第2の端部及びその近傍部分に固定されると共に前記ケースの前記第2の端面側の面に、所定回転方向に向かって漸次深くなる円弧状の複数の溝が形成された第1の溝構成部材と、
前記ケースの内部に設けられると共に略円板状又は略円環板状に形成され、かつ、前記第1の溝構成部材に対向した状態で前記ケースに固定されると共に前記所定回転方向に向かって漸次深くなる円弧状で、かつ、前記第1の溝構成部材の前記複数の溝と対向する複数の溝が形成された第2の溝構成部材と、
前記第1の溝構成部材の前記複数の溝と前記第2の溝構成部材の前記複数の溝との間にそれぞれ配置されると共に、前記第1の溝構成部材の前記複数の溝及び前記第2の溝構成部材の前記複数の溝を軌道として転動することによって、前記シャフトの中心軸を中心として前記第2の溝構成部材を回転させる複数の転動体を有することを特徴とするロータリソレノイド。
【請求項2】
前記第1の溝構成部材は、前記複数の溝が形成された第1の凹部形成板と、該第1の凹部形成板が固定されると共に、中央に形成された貫通孔に前記シャフトの前記第2の端部及びその近傍部分が圧入された第1の保持部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のロータリソレノイド。
【請求項3】
前記第2の溝構成部材は、前記複数の溝が形成された第2の凹部形成板と、該第2の凹部形成板の前記ケースの前記第2の端面側の面に固定されると共に、前記複数の溝に対応する部位にそれぞれ開口部が形成された第2の補強板を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータリソレノイド。
【請求項4】
前記ケースの内部であって、前記コイルよりも前記ケースの前記第2の端面側となる位置に設けられた別のコイルと
前記ケースの内部であって、前記ベースよりも前記ケースの前記第2の端面側となる位置に設けられると共に、前記ケースに固定された、又は、前記ケースと一体に形成され、かつ、前記シャフトを挿通する貫通孔が形成された別のベースと、
前記ケースの内部であって、前記別のベースよりも前記ケースの前記第1の端面側となる位置に設けられ、かつ、前記シャフトが固定されると共に、前記別のコイルに通電したときに、前記別のベースに吸引されて直動するように設けられた別のプランジャをさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のロータリソレノイド。
【請求項5】
前記ケースは、前記第1の端面の前記貫通孔の周辺領域が前記ケースの外側に突出していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のロータリソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリソレノイドに関し、特に、直動運動の力を回転運動の力に変換する動力変換手段が外部に露出していない構成を有するロータリソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリソレノイドにおいて、いわゆるボールレースの構成を有するものは、他の構成よりも回転角を大きくすることが容易である上に、比較的に大きなトルクが得られることから、広く普及している。図9は、従来技術に係るロータリソレノイドを示し、(a)は通電前の断面図、(b)は通電によって回転した後の断面図である。図9において、90はロータリソレノイド、91はケース、91aは第4の溝形成部、92は溝構成部材、92aは第1の溝形成部、93は鋼球、94はプランジャ、95はベース、96はシャフト、97は復帰用スプリング、98はコイル、99はシャフト用軸受である。
【0003】
図9は、特開2012-199457号公報で開示されているロータリソレノイドである。ロータリソレノイド90は、ボールレースの構成を有しており、プランジャ94の直動運動をシャフト96の回転運動に変換して出力する。すなわち、図9(a)に示すように、プランジャ94は、ケース91の内部に設けられている。さらに、いわゆるアキシャル方向、すなわちシャフト96の中心軸に沿って形成されたプランジャ94の貫通孔にシャフト96が圧入されることによって、プランジャ94に対してシャフト96が固定されている。シャフト96はシャフト用軸受99に摺動可能に支持されており、シャフト96及びプランジャ94はシャフト96の中心軸方向に一体的に摺動する。また、プランジャ94は、ケース91の外部に露出した部分が溝構成部材92の開口部に圧入されている。溝構成部材92は、円環板状に形成されており、さらに第1の溝形成部92aと図示していない2つの溝形成部が形成されている。第1の溝形成部92aと他の2つの溝形成部は、円弧状に、かつ、ケース91に対向する側の面が凹陥するように形成されている。同様に、ケース91には、溝構成部材92に対向する側の面に第4の溝形成部91aと図示していない2つの溝形成部が形成されている。第1の溝形成部92aと他の2つの溝形成部も、円弧状に、かつ、ケース91に対向する側の面が凹陥するように形成されている。これら3組の溝形成部は、同じ角度で緩やかに形成している。そして、第1の溝形成部92a及び第4の溝形成部91aと他の2組の溝形成部のグループは、鋼球93と図示していない2つの鋼球を上下から挟むように、かつ、回転可能な状態でそれぞれ保持している。
【0004】
くわえて、シャフト96は、ケース91の外部にある部分に対して復帰用スプリング97が接続されている。復帰用スプリング97は、その弾発力によってシャフト96を溝構成部材92側に常時付勢している。また、プランジャ94は、コイル98への通電によって生成される磁界によってベース95に吸引される。プランジャ94がベース95に吸引されると、鋼球93と図示していない2つの鋼球は、プランジャ94の推力によって強く押圧され、第1の溝形成部92a及び第4の溝形成部91aと他の2組の溝形成部に挟まれた状態のまま転動する。そうすると、鋼球93と図示していない2つの鋼球は、ケース91に形成された第4の溝形成部91aと他の2つの溝形成部の最も深いところに転動して行く。プランジャ94は、この転動に従って回転し、図9(b)に示すようにベース95側に摺動する。コイル98への通電を停止すると、復帰用スプリング97の弾発力によって図9(a)に示す状態に復帰する。以上のように、ボールレースの構成を有するロータリソレノイドは、直動型ソレノイドにおけるプランジャやベースの構成をそのまま応用できる。例えば、プランジャ94及びベース95のように、互いの対向する面に凹凸を形成して、コイル98への通電開始後、直ちに大きな推力を得られるようにするなど、推力特性を最適なものに近づけることが容易である。
【0005】
ところで、ロータリソレノイド90は、溝構成部材92がケース91の外部に露出しているので、ロータリソレノイド90を負荷装置に実装する際に、周囲に十分な間隙を確保する必要がある。すなわち、コイル98に接続したリード線等が振動や外部からの衝撃によって溝構成部材92に当接し、溝構成部材92の回転を妨げることのないように配慮する必要がある。さらに、溝構成部材92を負荷装置に固定することができないので、負荷装置に実装する際の向きにも制約がある。溝構成部材92を保護するためのカバーを設ければ、この課題を解決することは可能である。しかしながら、カバーをケースに固定するために、例えばケースを肉厚にした上でカバーとケースとを貫通するネジを設けるなど新たな構成を付加することによって、ロータリソレノイドの容積が増加することになるので、好ましい解決策とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-199457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、溝構成部材が外部に露出することなく、かつ、ロータリソレノイドの容積をほとんど増加させない構成を有するロータリソレノイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、全部又は一部が磁性材料からなると共に、略円筒状に形成され、かつ、第1の端面に開口している貫通孔が形成されたケースと、前記ケースの内部に設けられたコイルと、前記ケースに固定された、又は、前記ケースと一体に形成されたベースと、前記コイルに通電したときに、前記ベースに吸引されて前記ケースの前記第1の端面とは反対側の第2の端面に向かって直動するように設けられたプランジャと、前記プランジャに固定されると共に、第1の端部及びその近傍部分が前記ケースの前記第1の端面に開口している前記貫通孔から突出し、第2の端部及びその近傍部分が前記ケースの内部に位置するように設けられたシャフトと、前記ケースの内部に設けられると共に略円板状又は略円環板状に形成され、かつ、前記シャフトの前記第2の端部及びその近傍部分に固定されると共に前記ケースの前記第2の端面側の面に、所定回転方向に向かって漸次深くなる円弧状の複数の溝が形成された第1の溝構成部材と、前記ケースの内部に設けられると共に略円板状又は略円環板状に形成され、かつ、前記第1の溝構成部材に対向した状態で前記ケースに固定されると共に前記所定回転方向に向かって漸次深くなる円弧状で、かつ、前記第1の溝構成部材の前記複数の溝と対向する複数の溝が形成された第2の溝構成部材と、前記第1の溝構成部材の前記複数の溝と前記第2の溝構成部材の前記複数の溝との間にそれぞれ配置されると共に、前記第1の溝構成部材の前記複数の溝及び前記第2の溝構成部材の前記複数の溝を軌道として転動することによって、前記シャフトの中心軸を中心として前記第2の溝構成部材を回転させる複数の転動体を有することを特徴とするロータリソレノイドである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の溝構成部材は、前記複数の溝が形成された第1の凹部形成板と、該第1の凹部形成板が固定されると共に、中央に形成された貫通孔に前記シャフトの前記第2の端部及びその近傍部分が圧入された第1の保持部材を備えていることを特徴とするロータリソレノイドである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記第2の溝構成部材は、前記複数の溝が形成された第2の凹部形成板と、該第2の凹部形成板の前記ケースの前記第2の端面側の面に固定されると共に、前記複数の溝に対応する部位にそれぞれ開口部が形成された第2の補強板を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明において、ロータリソレノイドである。前記ケースの内部であって、前記コイルよりも前記ケースの前記第2の端面側となる位置に設けられた別のコイルと前記ケースの内部であって、前記ベースよりも前記ケースの前記第2の端面側となる位置に設けられると共に、前記ケースに固定された、又は、前記ケースと一体に形成され、かつ、前記シャフトを挿通する貫通孔が形成された別のベースと、前記ケースの内部であって、前記別のベースよりも前記ケースの前記第1の端面側となる位置に設けられ、かつ、前記シャフトが固定されると共に、前記別のコイルに通電したときに、前記別のベースに吸引されて直動するように設けられた別のプランジャをさらに有することを特徴とするロータリソレノイドである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記ケースは、前記第1の端面の前記貫通孔の周辺領域が前記ケースの外側に突出していることを特徴とするロータリソレノイドである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、ケースの内部に設けたコイルに通電すると、プランジャに固定されたシャフトは、プランジャがベースに吸引されることによって、ケースの第2の端面側に直動する。シャフトに固定された第1の溝構成部材もケースの第2の端面側に直動するので、複数の転動体は第1の溝構成部材から押圧されて転動して行く。ところが、第2の溝構成部材はケースに固定されているので、第2の溝構成部材が回転することはなく、第1の溝構成部材が直動しながら回転することになる。したがって、第1の溝構成部材及び第2の溝構成部材をケースの内部に設けているので、負荷装置に実装する際にケースの周囲に間隙を確保する必要はない。その一方、シャフト、プランジャ、第1の溝構成部材及び第2の溝構成部材は、従来技術に係るロータリソレノイドよりも外径を大きくすることなく大きなトルクが得られる。また、第1の溝構成部材及び第2の溝構成部材が内装されているので、耐塵を備えており、汚損環境でも問題なく使用できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、第1の溝構成部材を第1の凹部形成板及び第1の保持部材からなるものとしたので、第1の凹部形成板の板厚を薄いものにすることができ、比較的深い溝を容易に形成することができる。また、第1の凹部形成板をシャフトに固定するのではなく、第1の保持部材を介して固定するので、第1の凹部形成板及び第1の補強板をシャフトに対して精確に直交させつつ強固に固定することが容易になる。また、第1の凹部形成板は磁気回路から磁気的に絶縁されているので、磁気回路を構成するケースやプランジャを機械的な性質に配慮することなく理想的な磁気的性質を有するもので構成することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、第2の溝構成部材を第2の凹部形成板及び第2の補強板からなるものとしたので、第2の凹部形成板の板厚を薄いものにすることができると共に、第2の凹部形成板と前記ケースとの間に第2の補強板の板厚分の距離を確保できるので、比較的深い溝を容易に形成することができる。また、第2の凹部形成板は磁気回路から磁気的に絶縁されているので、磁気回路を構成するケースやプランジャを機械的な性質に配慮することなく理想的な磁気的性質を有するもので構成することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、2つのプランジャによって推力を生成するので、シャフトから出力されるトルクを大幅に増大させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ケースの第1の端面の貫通孔をさらに長く形成できるので、ケースの第1の端面の貫通孔にさらに長い軸受を設けることができ、ロータリソレノイドの動作がよりスムーズになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの通電前の状態における断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの通電後の状態における断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの通電前の状態を示し、(a)は平面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの各ケース構成部材を示す図(1)であり、(a)は第1のケース構成部材の断面図、(b)は第2のケース構成部材の断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの各ケース構成部材を示す図(2)であり、(c)は第3のケース構成部材の断面図、(d)は第4のケース構成部材の断面図、(e)は第4のケース構成部材の底面図である。
図6】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの動力変換手段を示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は第2の補強板の底面図、(e)は第1の凹部形成板の底面図である。
図7】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの動力変換手段を示す図(2)であり、(d)はA-A線断面図、(e)はB-B線断面図、(f)は第2の溝構成部材及び鋼球を透視した平面図である。
図8】本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドにおける動力変換の概要を示す説明図である。
図9】従来技術に係るロータリソレノイドを示し、(a)は通電前の断面図、(b)は通電によって回転した後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの通電前の状態における断面図である。図1において、10はロータリソレノイド、15は動力変換手段、19は鋼球、21は第1の凹部形成板、30は第2の溝構成部材、35は第2の補強板、40は第1のケース構成部材、41は肉厚側端部領域、41aは突出部、42は肉厚側中間領域、43は肉薄側中間領域、44は圧入用端部領域、45は第2のケース構成部材、46は第1の圧入用端部領域兼第1のベース領域、47は中間領域、48は第2の圧入用端部領域、50は第3のケース構成部材、51は第1の圧入用端部領域、52は肉厚側中間領域、53は第2のベース領域、54は肉薄側中間領域、55は第2の圧入用端部領域、56は第4のケース構成部材、56は第4のケース構成部材、56bはリベット孔、57b及び58bはリベット、57は肉厚側端部領域、60は第1のプランジャ、60aはシャフト圧入用貫通孔、61は第2のプランジャ、61aはシャフト圧入用貫通孔、62はシャフト、63aは第1の端部及びその近傍部分、63bは中間部、63cは第2の端部及びその近傍部分、64は第1の保持部材、64aは大径部、64bは小径部、65は軸受、70は第1のコイル、71は第1のコイルボビン、72は第2のコイル、73は第2のコイルボビンである。さらに、図2は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの通電後の状態における断面図である。図2において用いた符号は、すべて図1と同じものを示す。くわえて、図3は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの通電前の状態を示し、(a)は平面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。図3において、16はケース、16aは第1の端面、16bは第2の端面、58a、58b及び58cはリベットであり、その他のものは図1と同じものを示す。また、図8は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドにおける動力変換の概要を示す説明図である。図8において用いた符号は、すべて図1と同じものを示す。なお、ロータリソレノイド10においては、シャフト62の中心軸は、第1のプランジャ60、第2のプランジャ61、第1のケース構成部材40、第2のケース構成部材45、第3のケース構成部材50、第4のケース構成部材56、第1のコイル70及び第2のコイル72の中心軸と一致している。そこで、以下の説明において「中心軸」と記載した場合は、シャフト62を初めとするこれらの構成部材に共通する中心軸を指すものとする。
【0020】
まず、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイド10の概要について説明する。ロータリソレノイド10は、いわゆるボールレースの構成を有するものであり、直動による動力を回転による動力に変換して出力するものである。すなわち、ロータリソレノイド10は、図3に示すように、ケース16が略円筒状に形成されており、ケース16の第1の端面16aからシャフト62の端部及びその近傍部分63aが外部に突出し、第2の端面16bの側は第4のケース構成部材56によって閉止されている。また、ケース16は、ロータリソレノイド10の組立を容易にするために、第1のケース構成部材40、第2のケース構成部材45、第3のケース構成部材50及び第4のケース構成部材56の4つの部材に分割されている。さらに、図8に示すように、ロータリソレノイド10は、第1のプランジャ60と第2のプランジャ61との2つのプランジャの直動による動力を動力変換手段15においてシャフト62の回転力に変換して出力する構成となっている。このような動力変換手段は従来技術に係るロータリソレノイドと同様であるが、この実施の形態に係るロータリソレノイド10においては、動力変換手段15がケース16の内部に完全に内装されている点が相違している。
【0021】
続けて、実施の形態に係るロータリソレノイド10を構成する各部材について詳しく説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの各ケース構成部材を示す図(1)であり、(a)は第1のケース構成部材の断面図、(b)は第2のケース構成部材の断面図である。図4において、41bはシャフト用貫通孔、42aは第1のプランジャ用中空部、43aは第1のコイルボビン用中空部、44aは第2のケース構成部材用中空部、49aはシャフト挿通用貫通孔、49bは第2のプランジャ用中空部であり、その他の符号は図1と同じものを示す。さらに、図5は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの各ケース構成部材を示す図(2)であり、(c)は第3のケース構成部材の断面図、(d)は第4のケース構成部材の断面図、(e)は第4のケース構成部材の底面図である。図5において、51aは第1の圧入用中空部、52aは第2のコイルボビン用中空部、53aはシャフト用貫通孔、54aは動力変換手段用中空部、55は第2の圧入用端部領域、55aは第2の圧入用中空部、56a及び56cはリベット孔であり、その他の符号は図1と同じものを示す。くわえて、図6は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの動力変換手段を示す図(1)であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は第2の補強板の底面図、(e)は第1の凹部形成板の底面図である。図6において、20は第1の溝構成部材、22は第1の溝形成部、23は第2の溝形成部、24は第3の溝形成部、24aは凹部、30aは中央開口部、31は第2の凹部形成板、32は第4の溝形成部、33は第5の溝形成部、34は第6の溝形成部、35は第2の補強板、35aは中央開口部、36は第4の開口部、37は第5の開口部、38は第6の開口部、29a、29b及び29cはリベット孔、30は第2の溝構成部材、31は第2の凹部形成板、31aは中央開口部、32は第4の溝形成部、33は第5の溝形成部、34は第6の溝形成部、35は第2の補強板、35aは中央開口部、36は第4の開口部、37は第5の開口部、38は第6の開口部、39a、39b及び39cはリベット孔であり、その他の符号は図1と同じものを示す。また、図7は、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイドの動力変換手段を示す図(2)であり、(d)はA-A線断面図、(e)はB-B線断面図、(f)は第2の溝構成部材及び鋼球を透視した平面図である。図7において、17及び18は鋼球、21aは圧入用開口部、29a、29b及び29cはリベット孔、34aは凹部、64cは圧入用開口部であり、その他の符号は図1及び図6と同じものを示す。
【0022】
ロータリソレノイド10は、図1及び図2に示すように、中心軸方向に直列に配置された第1のプランジャ60及び第2のプランジャ61を備えている。第1のプランジャ60と第2のプランジャ61とは、中心軸に沿ってシャフト圧入用貫通孔60aとシャフト圧入用貫通孔61aとが形成されており、さらにこれらの貫通孔に対してシャフト62の中間部63bが圧入によって固定されている。また、第1のプランジャ60と第2のプランジャ61とは、第1のコイル70と第2のコイル72との中空部にそれぞれ配置されている。後述するように、第1のプランジャ60と第2のプランジャ61とは第1のコイル70と第2のコイル72とに通電することによって直動するので、シャフト62も直動するが、後述するように直動と同時に回転するように構成されている。また、シャフト62は、第2の端部及びその近傍部分63cに動力変換手段15が接続されている。
【0023】
動力変換手段15は、シャフト62の直動運動をシャフト62自体の回転運動に変換して出力する機能を持っている。すなわち、動力変換手段15は、図1及び図6に示すように、シャフト62に接続された第1の溝構成部材20と、ケース16の第4のケース構成部材56に固定された第2の溝構成部材30とを備えている。第1の溝構成部材20と第2の溝構成部材30とは、中心軸方向から見たときに、円形の外形を有しており、互いに重なり合うように配置されている。さらに、第1の溝構成部材20は、図6及び図7に示すように、第1の凹部形成板21及び第1の保持部材64を備えている。これに対して、第2の溝構成部材30は、第2の凹部形成板31及び第2の補強板35を備えており、第1の溝構成部材20と第2の溝構成部材30との構成部材は相違している。なお、必要に応じて、第1の溝構成部材20に対して、第2の補強板35と同じ構成の第1の補強板を設けることも可能である。転動体である鋼球17、18及び19は、転動することによってシャフト62の直動運動をシャフト62自体の回転運動に変換する。なお、第1の溝構成部材20及び第2の溝構成部材30を構成する部材は、非磁性材から形成されている。
【0024】
第1の凹部形成板21は、図6及び図7に示すように、第3の溝形成部24の凹部24a、並びに、第1の溝形成部22及び第2の溝形成部23の図示していない凹部が第2の溝構成部材30の側を向くように配置されている。よって、これらの凹部の裏面である凸部は、それぞれ第1の端面16aの側を向くことになる。また、第1の溝形成部22、第2の溝形成部23及び第3の溝形成部24は、中心軸から同じ距離離隔したところに、つまり、同心円を描くように、かつ、図8に示している回転方向に向かって漸次深くなるように形成されている。また、第1の溝形成部22、第2の溝形成部23及び第3の溝形成部24は、鋼球17、18及び19を転動可能な状態で保持するために好適な幅に形成されている。また、第1の凹部形成板21は、第1の保持部材64を圧入するために、中央に圧入用開口部21aが形成されている。
【0025】
第1の保持部材64は、シャフト62に対して第1の溝構成部材20を固定する機能を持つ。すなわち、第1の保持部材64は、中央に圧入用開口部64cが形成されており、圧入用開口部64cに対してシャフト62の第2の端部及びその近傍部分63cを圧入した上に、第1の保持部材64を複数箇所でかしめることによって、シャフト62に対して強固に固定されている。また、第1の保持部材64は、その厚み、つまり、中心軸方向における長さが第1の凹部形成板21よりもかなり長いので、シャフト62に対して強固に固定できる。以上のように、第1の凹部形成板21は、第1の保持部材64を介してシャフト62に対して固定されている。さらに、第1の保持部材64を介して固定することによって、ロータリソレノイド10の組立時や使用時に第1の凹部形成板21に対して過大な応力が加わることを防止できると共に、シャフト62に対して強固に固定することが可能となる。
【0026】
第2の溝構成部材30は、第1の溝構成部材20とは異なり、第2の凹部形成板31と第2の補強板35とから構成されている。すなわち、第2の溝構成部材30の第2の凹部形成板31は、第1の凹部形成板21の第1の溝形成部22、第2の溝形成部23及び第3の溝形成部24に対向するように、第4の溝形成部32、第5の溝形成部33及び第6の溝形成部34が形成されている。第4の溝形成部32、第5の溝形成部33及び第6の溝形成部34は、中心軸から同じ距離離隔したところに、つまり、同心円を描くように、かつ、図8に示している回転方向に向かって漸次深くなるように形成されている。よって、第4の溝形成部32、第5の溝形成部33及び第6の溝形成部34は、相対向する第1の凹部形成板21の第1の溝形成部22、第2の溝形成部23及び第3の溝形成部24とは逆の傾斜を持つようにそれぞれ形成されていることになる。これらの溝の深さは、鋼球17、18及び19がスムーズに転動するように設定されている。くわえて、第4の溝形成部32、第5の溝形成部33及び第6の溝形成部34は、鋼球17、18及び19を転動可能な状態で保持するために好適な幅に形成されている。また、中央開口部31aは第1の保持部材64が接近したときに、第1の保持部材64の縁辺部と間隙が確保される径に設定されている。
【0027】
第2の溝構成部材30の第2の補強板35は、第2の凹部形成板31を補強するものである。さらに、第2の補強板35は、第2の凹部形成板と前記ケースとの間に間隙、つまり、第2の補強板の板厚分の距離を確保し、第4の溝形成部32、第5の溝形成部33及び第6の溝形成部34が第2の端面16bの側に突出されるための間隙を確保する役割も持つ。また、第2の補強板35は、第1の凹部形成板21に対して密着されるために、第4の溝形成部32、第5の溝形成部33及び第6の溝形成部34に対応する位置及び範囲に第4の開口部36、第5の開口部37及び第6の開口部38が形成されている。くわえて、第2の補強板35は、その中央付近に中央開口部35aが形成されている。
【0028】
さらに、第2の凹部形成板31と第2の補強板35とは、リベット孔29a、29b及び29cと、リベット孔39a、39b及び39cとがそれぞれ形成されている。リベット孔29a、29b及び29cと、リベット孔39a、39b及び39cとには、図1及び図3に示すように、第4のケース構成部材56のリベット孔56a、56b及び56cまで貫通するリベット57a、57b及び57cを打ち込むことによって、第2の凹部形成板31、第2の補強板35及び第4のケース構成部材56が一体化されている。なお、第1の補強板25の板厚は、第1の凹部形成板21と第4のケース構成部材56との間に必要となる間隙によって適宜変更可能である。
【0029】
続けて、ケース16について説明する。ケース16は、前述のように、ロータリソレノイド10の組立を容易にすることを目的として、第1のケース構成部材40、第2のケース構成部材45、第3のケース構成部材50及び第4のケース構成部材56の4つに部材に分割した状態に構成されている。また、ケース16は、第1のケース構成部材40、第2のケース構成部材45及び第3のケース構成部材が磁性材から形成されており、第1のコイル70及び第2のコイル72への通電時に第1のプランジャ60及び第2のプランジャ61と共に磁気回路を構成し、さらに、その一部が第1のプランジャ60及び第2のプランジャ61に対するベースとして機能する。さらに、第4のケース構成部材56は、非磁性材から形成されており、第2の溝構成部材30を支持すると共に、動力変換手段15を保する役割を持つ。なお、ケース16は、ロータリソレノイドの構成によっては5つ以上の部材に分割してもよい。
【0030】
第1のケース構成部材40は、ケース16の最も第1の端面16a側に配置される部材であり、図4(a)に示すように、略有底円筒状に形成されている。肉厚側端部領域41は、第1の端面16aに開口しているシャフト用貫通孔41bが形成されている。シャフト用貫通孔41bには、シャフト62が直動自在な状態で挿通されており、さらに、シャフト62の直動を支持するための軸受65が圧入によって固定されている。なお、プランジャが相当に長い場合など、ロータリソレノイド10が相当に長くなる場合などには軸受を2つ以上設けてもよい。突出部41aは、シャフト用貫通孔41bの中心軸方向における長さを十分に確保し、できる限り長い軸受を固定可能とするために形成されている。肉厚側中間領域42は、第1のプランジャ用中空部42aに第1のプランジャ60を摺動可能な状態で収納するのに好適な肉厚に形成されている。また、肉薄側中間領域43は、第1のコイルボビン用中空部43aに第1のコイルボビン71を収納するのに好適な肉厚に形成されている。圧入用端部領域44は、第2のケース構成部材用中空部44aに第2のケース構成部材45を圧入するために、内周面の肉を切削することによって形成されている。
【0031】
第2のケース構成部材45は、図4(b)に示すように、第1の圧入用端部領域兼第1のベース領域46が第2のケース構成部材用中空部44aに圧入される。さらに、第1の圧入用端部領域兼第1のベース領域46は、第1のコイル70への通電時に第1のプランジャ60を吸引するベースとして機能する。また、中間領域47は、外部に露出する部分である。第2の圧入用端部領域48は、第3のケース構成部材50に圧入される。また、シャフト挿通用貫通孔49aは、シャフト62を挿通する空間となる。第2のプランジャ用中空部49bは、第2のプランジャ61が収納される。
【0032】
第3のケース構成部材50は、図5(c)に示すように、略円筒状に形成されている。第1の圧入用端部領域51は、第1の圧入用中空部51aに第2のケース構成部材45を圧入するために、内周面の肉を切削することによって形成されている。肉厚側中間領域52は、第2のプランジャ61及び第2のコイル72を収納する第2のコイルボビン用中空部52aを形成するために好適な肉厚になされている。さらに、肉薄側中間領域54は、動力変換手段15を収納する動力変換手段用中空部54aを形成するために好適な肉厚になされている。また、第2の圧入用端部領域55は、第2の圧入用中空部55aに第4のケース構成部材56を圧入するために、内周面の肉を切削することによって形成されている。くわえて、第2のコイルボビン用中空部52aと動力変換手段用中空部54aとの間には、第2のベース領域53が隔壁のように形成されている。第2のベース領域53は、第2のコイル72への通電時に第2のプランジャ61を吸引するベースとして機能する。また、第2のベース領域53の中央には、シャフト用貫通孔53aが形成されている。シャフト用貫通孔53aは、シャフト62が挿通されている孔である。
【0033】
第4のケース構成部材56は、非磁性材から形成されており、第3のケース構成部材50の第2の圧入用中空部55aに圧入によって固定されている。また、第4のケース構成部材56は、図5(d)に示すように、その全体が円板状に形成されており、さらに、第2の溝構成部材30のリベット孔34a、34b及び34cに対応する位置にリベット孔56a、56b及び56cが形成されている。図1及び図3(c)に示すように、リベット孔56a、56b及び56cと、第2の溝構成部材30のリベット孔34a、34b及び34cとには、リベット58a、58b及び58cが打ち込まれている。
【0034】
続けて、ロータリソレノイド10の他の構成部材について説明する。シャフト62は、図1及び図3に示すように、第1の端部及びその近傍部分63aがケース16の第1の端面16aからケース16の外部に突出している。また、中間部63bにおいて、ケース16の第1の端面16a寄りの部位に第1のプランジャ60が圧入され、ケース16の第2の端面16b寄りの部位に第2のプランジャ61が圧入されている。さらに、中間部63bにおいて、第1のプランジャ60に圧入されている部位よりも第1の端部及びその近傍部分63a側の部位が軸受65に挿通されている。よって、シャフト62は、軸受65によって直動可能に、かつ、回転可能に安定的に支持されている。また、第2の端部及びその近傍部分63cは、第1の溝構成部材20が固定されており、第1のコイル70及び第2のコイル72への通電時に第1の溝構成部材20を第2の溝構成部材30側に直接押圧する。
【0035】
さらに、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイド10の動作について説明する。第1のコイル70と第2のコイル72とに通電していないときには、図1に示すように、第1の溝構成部材20と第2の溝構成部材30とは互いに最も離れた状態で静止している。第1のコイル70と第2のコイル72とに通電すると、第1のプランジャ60、第2のケース構成部材45の第1の圧入用端部領域兼第1のベース領域46、第1のケース構成部材40の圧入用端部領域44、肉薄側中間領域43、肉厚側中間領域42を経由して、第1のプランジャ60に戻る磁束と、第2のプランジャ61、第3のケース構成部材の第2のベース領域53、肉厚側中間領域52、第1の圧入用端部領域51、第2のケース構成部材45の第2の圧入用端部領域48を経由して、第2のプランジャ61に戻る磁束とが生成される。
【0036】
これらの磁束によって、第1のプランジャ60は第1の圧入用端部領域兼第1のベース領域46に吸引され、第2のプランジャ61は第2のベース領域53に吸引され、シャフト62と共にケース16の第2の端面16b側へ直動する。シャフト62の第2の端部及びその近傍部分63cには第1の溝構成部材20が固定されている。したがって、第1の溝構成部材20も、第2の端面16b側へ直動し、第2の溝構成部材30に接近して第2の溝構成部材30を押圧する。この押圧力によって、第1の溝構成部材20と第2の溝構成部材30との間に配置されている鋼球17、18及び19は、第1の溝構成部材20からの押圧力によって転動する。このとき、第2の溝構成部材30が第4のケース構成部材56に固定されていることから、第1の溝構成部材20が自らの押圧力によって回転して行く。第1の溝構成部材20が固定されているシャフト62も同時に回転する。
【0037】
以上のように、本発明の実施の形態に係るロータリソレノイド10においては、ケース16の内部に設けた第1のコイル70及び第2のコイル72に通電すると、第1のプランジャ60及び第2のプランジャ61に固定されたシャフト62は、第1のプランジャ60と第2のプランジャ61とが第1の圧入用端部領域兼第1のベース領域46と第3のケース構成部材の第2のベース領域53とにそれぞれ吸引されることによって、ケース16の第2の端面16b側に直動する。シャフト62に固定された第1の溝構成部材20もケースの第2の端面16b側に直動するので、鋼球17、18及び19は第1の溝構成部材20から押圧されて転動して行く。ところが、第2の溝構成部材30はケースに固定されているので、第2の溝構成部材30が回転することはなく、第1の溝構成部材20が直動しながら回転することになる。したがって、第1の溝構成部材20及び第2の溝構成部材30をケース16の内部に設けているので、負荷装置に実装する際にケース16の周囲に間隙を確保する必要はない。その一方、シャフト62、第1のプランジャ60及び第2のプランジャ61、第1の溝構成部材20及び第2の溝構成部材30は、従来技術に係るロータリソレノイドと同等の大きさにできるので、ロータリソレノイド10の容積も従来技術に係るものと同等のものとなる。
【0038】
また、第2の溝構成部材30を第2の凹部形成板31、第2の補強板35からなるものとしたので、第2の凹部形成板31の板厚を薄いものにすることができ、比較的深い溝を容易に形成することができる。さらに、第2の補強板35によって第2の凹部形成板31を補強しているので、第1のプランジャ60及び第2のプランジャ61の推力を非常に大きなものにしても変形することがない。くわえて、第1の補強板25をシャフト62に固定するのではなく、第1の保持部材64を介して固定するので、第1の凹部形成板21をシャフト62に対して精確に直交させつつ強固に固定することが容易になる。また、第1のプランジャ60と第2のプランジャ61との2つのプランジャによって推力を生成するので、シャフト62から出力されるトルクを大幅に増大させることができる。さらに、第1のケース構成部材40に突出部41aを形成したので、ケース16の第1の端面16aのシャフト用貫通孔41bをさらに長く形成できるので、シャフト用貫通孔41bにさらに長い軸受を設けることができ、ロータリソレノイド10の動作がよりスムーズものになる。
【0039】
本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、本発明の第2の実施の形態に係るロータリソレノイドおいて第1のプランジャ60と第2のプランジャ61との2つのプランジャを設けるのではなく1つのみ設ける、第1の圧入用端部領域兼第1のベース領域46及び第3のケース構成部材の第2のベース領域53においてベース領域を別部材にするなど、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の構成にすることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 ロータリソレノイド
15 動力変換手段
16 ケース
16a 第1の端面
16b 第2の端面
17 鋼球
18 鋼球
19 鋼球
20 第1の溝構成部材
21 第1の凹部形成板
21a 圧入用開口部
22 第1の溝形成部
23 第2の溝形成部
24 第3の溝形成部
24a 凹部
29a リベット孔
29b リベット孔
29c リベット孔
30 第2の溝構成部材
31 第2の凹部形成板
31a 中央開口部
32 第4の溝形成部
33 第5の溝形成部
34 第6の溝形成部
34a 凹部
35 第2の補強板
35a 中央開口部
36 第4の開口部
37 第5の開口部
38 第6の開口部
39a リベット孔
39b リベット孔
39c リベット孔
40 第1のケース構成部材
41 肉厚側端部領域
41a 突出部
41b シャフト用貫通孔
42 肉厚側中間領域
42a 第1のプランジャ用中空部
43 肉薄側中間領域
43a 第1のコイルボビン用中空部
44 圧入用端部領域
44a 第2のケース構成部材用中空部
45 第2のケース構成部材
46 第1の圧入用端部領域兼第1のベース領域
47 中間領域
48 第2の圧入用端部領域
49a シャフト挿通用貫通孔
49b 第2のプランジャ用中空部
50 第3のケース構成部材
51 第1の圧入用端部領域
51a 第1の圧入用中空部
52 肉厚側中間領域
52a 第2のコイルボビン用中空部
53 第2のベース領域
53a シャフト用貫通孔
54 肉薄側中間領域
54a 動力変換手段用中空部
55 第2の圧入用端部領域
55a 第2の圧入用中空部
56 第4のケース構成部材
56a リベット孔
56b リベット孔
56c リベット孔
57a リベット
57b リベット
57c リベット
58a リベット
58b リベット
58c リベット
60 第1のプランジャ
60a シャフト圧入用貫通孔
61 第2のプランジャ
61a シャフト圧入用貫通孔
62 シャフト
63a 第1の端部及びその近傍部分
63b 中間部
63c 第2の端部及びその近傍部分
64 第1の保持部材
64a 大径部
64b 小径部
64c 圧入用開口部
65 第1の軸受
70 第1のコイル
71 第1のコイルボビン
72 第2のコイル
73 第2のコイルボビン
90 ロータリソレノイド
91 ケース
91a 第4の溝形成部
92 溝構成部材
92a 第1の溝形成部
93 鋼球
94 プランジャ
95 ベース
96 シャフト
97 復帰用スプリング
98 コイル
99 シャフト用軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9