IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アール.アイ.ピー.,リミテッド ライアビリティー カンパニーの特許一覧

特許7344567コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具
<>
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図1
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図2
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図3
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図4
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図5
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図6
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図7
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図8
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図9
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図10
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図11
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図12
  • 特許-コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】コネクタ付きの睡眠時無呼吸用の経口器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/56 20060101AFI20230907BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61F5/56
A61M16/06 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020541527
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019016198
(87)【国際公開番号】W WO2019152749
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】62/624,730
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】321005434
【氏名又は名称】アール.アイ.ピー.,リミテッド ライアビリティー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】R.I.P.,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ベイス,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン,ジョン
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0216716(US,A1)
【文献】特表2002-512075(JP,A)
【文献】特開昭60-053139(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202075(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0073582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/56
A61M 16/06
A61C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者のいびきおよび/または睡眠時無呼吸を治療するための口腔器具であって、
(1)前部、後部、右側、左側、頬側、舌側、および外面を有する上部歯科用トレイであって、
(a)対象者の上顎歯列を受け入れるための前記上部歯科用トレイの内面を境界とするレセプタクルと、
(b)前記上部歯科用トレイの頬側の前記上部歯科用トレイの右側外面に取り付けられた右側コネクタ取付部であって、
(i)近位端および遠位端を有する横方向に延びる支持体であって、前記近位端は前記上部歯科用トレイに固定され、前記遠位端はフランジを含む、支持体と、
(ii)前記上部歯科用トレイに固定されたバックストップであって、前記横方向に延びる支持体に面する係合面を含み、前記横方向に延びる支持体から離間しているバックストップと、を含む右側コネクタ取付部と、
(c)前記上部歯科用トレイの頬側の前記上部歯科用トレイの左側外面に取り付けられた左側コネクタ取付部であって、
(i)外面、近位端、および遠位端を有し、前記近位端は上部歯科用トレイに固定され、遠位端はフランジを含む、横方向に延びる支持体と、
(ii)前記上部歯科用トレイに固定されたバックストップであって、前記横方向に延びる支持体に面する係合面を含み、前記横方向に延びる支持体から離間しているバックストップとを含む、左側コネクタ取付部と、
を含む上部歯科用トレイと、
(2)前部、後部、右側、左側、頬側、舌側、および外面を有する下部歯科用トレイであって、
(a)対象の下顎歯列を受け入れるための、前記下部歯科用トレイの内面を境界とするレセプタクルと、
(b)前記下部歯科用トレイの頬側の前記下部歯科用トレイの右側外面に取り付けられた右側コネクタ取付部であって、
(i)外面、近位端、および遠位端を有し、前記近位端は前記下部歯科用トレイに固定され、前記遠位端はフランジを含む、横方向に延びる支持体と、
(ii)前記下部歯科用トレイに固定されたバックストップであって、前記横方向に延びる支持体に面する係合面を含み、前記横方向に延びる支持体から離間しているバックストップとを含む、右側コネクタ取付部と、
(c)下部歯科用トレイの頬側の前記下部歯科用トレイの左側外面に取り付けられた左側コネクタ取付部であって、
(i)近位端および遠位端を有し、前記近位端は前記下部歯科用トレイに固定され、前記遠位端はフランジを含む、横方向に延びる支持体と、
(ii)前記下部歯科用トレイに固定されたバックストップであって、前記横方向に延びる支持体に面する係合面を含み、前記横方向に延びる支持体から離間しているバックストップとを含む、左側コネクタ取付部と、
を含む下部歯科用トレイと、
(3)近位端、遠位端、内面、外面、上面、下面、第1の側面、第2の側面、前記第1の側面と前記第2側面との間の内部チャネル、第1の開口部を有する前記近位端の第1の受容部、第2の開口部を有する前記遠位端の第2の受容部を有する右側コネクタであって、
前記上部歯科用トレイの前記右側コネクタ取付部の前記横方向に伸びる支持体は、前記第1の受容部の前記第1開口部に嵌合し、前記横方向に延びる支持体の外面は、前記右側コネクタの前記近位端の前記内面に面しており、前記右側のコネクタの前記近位端の前記外面は、前記上部歯科用トレイの前記バックストップの前記係合面に面しており、
前記下部歯科用トレイの前記右側コネクタ取付部の前記横方向に延びる支持体は、前記第2の受容部の前記第2の開口部に嵌合し、前記横方向に延びる支持体の前記外面は、前記右側コネクタの前記遠位端の前記内面に面し、前記右側コネクタの前記遠位端の前記外面は、前記下部歯科用トレイの前記バックストップの前記係合面に面している、右側コネクタと、
(4)近位端、遠位端、内面、外面、上面、下面、第1の側面、第2の側面、前記第1の側面と前記第2の側面との間の内部チャネル、第1の開口部を有する前記近位端の第1の受容部、第2の開口部を有する前記遠位端の第2の受容部を有する左側コネクタであって、
前記上部歯科用トレイの前記左側コネクタ取付部の前記横方向に延びる支持体は、前記第1の受容部の前記第1開口部に嵌合し、前記横方向に延びる支持体の前記外面は、前記右側コネクタの前記近位端の前記内面に面し、前記右側コネクタの前記近位端の前記外面は、前記上部歯科用トレイの前記バックストップの前記係合面に面しており、
前記下部歯科用トレイの前記左側コネクタ取付部の前記横方向に延びる支持体は、前記第2の受容部の前記第2の開口部に嵌合し、前記横方向に延びる支持体の前記外面は、前記右側コネクタの前記遠位端の前記内面に面し、前記右側のコネクタの前記遠位端の前記外面は、前記下部歯科用トレイの前記バックストップの前記係合面に面している、
左側コネクタと、
を含むことを特徴とする口腔器具。
【請求項2】
請求項1に記載の口腔器具において、前記上部歯科用トレイ前記コネクタ取付部が前記上部歯科用トレイと一体的に形成され、前記下部歯科用トレイの前記コネクタ取付部が前記下部歯科用トレイと一体的に形成されていることを特徴とする口腔器具。
【請求項3】
請求項1に記載の口腔器具において、1又はそれ以上の前記コネクタ取付部の前記横方向に延びる支持体および前記バックストップがベースに取り付けられ、前記ベースが前記上部歯科用トレイまたは前記下部歯科用トレイに固定されていることを特徴とする口腔器具。
【請求項4】
請求項3に記載の口腔器具において、前記横方向に延びる支持体および前記バックストップは、前記ベースと一体的に形成されることを特徴とする口腔器具。
【請求項5】
請求項1に記載の口腔器具において、1又はそれ以上の前記コネクタ取付部の前記横方向に延びる支持体のフランジが、前記横方向に延びる支持体の前記遠位端の周りで円周方向に延びていることを特徴とする口腔器具。
【請求項6】
請求項5に記載の口腔器具において、前記フランジが円形の外縁を有することを特徴とする口腔器具。
【請求項7】
請求項1に記載の口腔器具において、1又はそれ以上の前記コネクタ取付部のフランジが、前記コネクタのうちの1つの上面に面する下面を有することを特徴とする口腔器具。
【請求項8】
請求項1に記載の口腔装置において、前記第1の受容部は、前記上部歯科用トレイの横方向に延びる支持体を受容する第1の開口部を有し、前記第2の受容部は、前記下部歯科用トレイの前記横方向に延びる支持体を受容する第2の開口部を有することを特徴とする口腔装置。
【請求項9】
請求項1に記載の口腔器具において、前記バックストップの前記係合面は、実質的に平面であることを特徴とする口腔器具。
【請求項10】
請求項1に記載の口腔器具において、前記バックストップの係合面は、丸みを帯びていることを特徴とする口腔器具。
【請求項11】
請求項1に記載の口腔器具において、前記上部歯科用トレイの前記右側コネクタおよび前記左側コネクタが、対象者の犬歯または第1小臼歯に隣接する前記上部歯科用トレイの前記前部に配置され、前記下部歯科用トレイの前記右側コネクタおよび前記左側コネクタは、対象者の第1大臼歯または第二大臼歯に隣接する前記下部歯科用トレイの前記後部に配置されていることを特徴とする口腔器具。
【請求項12】
請求項1に記載の口腔器具において、前記下部歯科用トレイの前記右側コネクタおよび前記左側コネクタが、対象者の犬歯または第1小臼歯に隣接する前記上部歯科用トレイの前記前部に配置されており、前記上部歯科用トレイの前記右側コネクタおよび前記左側コネクタは、対象者の第1大臼歯または第2大臼歯に隣接する前記下部歯科用トレイの前記後部に配置されていることを特徴とする口腔器具。
【請求項13】
請求項1に記載の口腔器具において、前記右側コネクタおよび/または前記左側コネクタが第1の側方部材および第2の側方部材を含み、前記第1の側方部材および前記第2の側方部材が湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の口腔装置。
【請求項14】
請求項1に記載の口腔装置において、前記受容部は、前記コネクタのうちの少なくとも一方の前記内面から内側に延びる少なくとも1つの突起を含むことを特徴とする口腔装置。
【請求項15】
請求項1に記載の口腔装置において、前記歯科用トレイは、軟質プラスチック材料から形成されていることを特徴とする口腔装置。
【請求項16】
請求項1に記載の口腔器具において、さらに、第1の歯列矯正トレイおよび第2の歯列矯正トレイを含み、前記第1の歯列矯正トレイは前記上部歯科用トレイの前記レセプタクル内に受容され、前記第2の歯列矯正トレイは前記下部歯科用トレイの前記レセプタクル内に受容され得ることを特徴とする請求項1に記載の口腔装置。
【請求項17】
請求項1に記載の口腔器具において、さらに、一連の第1の歯列矯正トレイおよび一連の第2の歯列矯正トレイを含み、
前記一連のトレイのうちの各歯矯正トレイは、対象者の歯の位置および/または対象者の顎の形状を変更するために異なる構成を含み、
前記第1の歯列矯正トレイは前記上部歯科用トレイの前記レセプタクル内に受容され、前記第2の歯矯正トレイは前記下部歯科用トレイの前記レセプタクル内に受容され得ることを特徴とする口腔器具。
【請求項18】
請求項1に記載の口腔器具において、さらに、一連の上部歯科用トレイおよび一連の下部歯科用トレイを含み、前記一連の上部歯科用トレイおよび前記一連の下部歯科用トレイのそれぞれが、対象者の歯の位置および/または対象の顎の形状を変えるために異なる構成を含むことを特徴とする口腔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月31日に提出され「SLEEP APNEA ORAL APPLIANCE WITH CONNECTORS」と題される米国特許出願第62/624,730号に基づいて、35U.S.C.§120の規定に基づく優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸は、睡眠中における呼吸の異常な休止または異常に低い呼吸の事例を特徴とする疾患である。無呼吸と呼ばれる呼吸の各休止は、数秒から数分続き(通常は20?40秒続く)、1時間に5~30回以上発生することがある。睡眠時無呼吸は、対象者の気道の部分的ないしは完全な閉塞に起因する。気道を通過する空気速度が増加すると、動圧が増加し、それに対応して静圧が低下する。静圧の低下により、下顎と舌が引き戻され、気道が閉塞する場合がある。この閉塞は完全になり、少なくとも一時的に呼吸を中断するまで増加する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
対象者は一般に、過体重であるか、糖尿病、高血圧、慢性的な鼻づまりなどの症状がある場合、睡眠時無呼吸のリスクが高くなる。しかしながら、睡眠時無呼吸を引き起こす可能性のあるさまざまな要因がある。1つの要因は、対象者の狭い上顎および/または下顎の存在である。上顎の収縮は、鼻の抵抗を増加させ、舌の姿勢を変え、舌下気道を狭める可能性がある。上顎および/または下顎の収縮は、一般に口腔内の空気量を減らし、舌を後部気道空間に押し戻す傾向があり、睡眠中に閉塞性睡眠時無呼吸を引き起こす。
【0004】
歯列矯正は、審美的またはその他の理由、例えば、対象者の歯の「過密」による対象者の歯と顎の再配置に焦点を当てた歯科の分野である。歯列矯正法は、典型的に、結果を達成するために、対象者が一定期間歯科器具を継続的に使用することを必要とする。このような器具の使用は、睡眠時無呼吸を治療するための現在利用可能な口腔器具の同時使用を排除する。したがって、睡眠時無呼吸を経験する歯列矯正器具のユーザを含む、睡眠時無呼吸を治療するための改善されたデバイスおよび方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
対象者のいびきおよび/または睡眠時無呼吸を治療するための口腔器具が開示されており、これは、一般に上部歯科用トレイ、下部歯科用トレイ、および上部および下部歯科用トレイを機械的に結合する一対のコネクタを含む。上部歯科用トレイと下部歯科用トレイは、一般にレセプタクル部分、右側コネクタ取付部、および左側コネクタ取付部を含むとともに、それぞれ、前部、後部、右側、左側、頬側、舌側、および外面を有する。レセプタクルは、上部歯科用トレイの内面で囲まれており、場合によっては対象者の上顎または下顎歯列、または対応する歯科矯正トレイを受容する。
【0006】
コネクタ取付部はそれぞれ、歯科用トレイに固定された近位端とフランジを含む遠位端とを有する横方向に延びる支持体を含む。フランジは円形の外側リムを有しており、好ましくは、横方向に延びる支持体の遠位端の周りで円周方向に延びる。コネクタ取付部のバックストップは、同様に歯科用トレイに固定され、横方向に延びる支持体に面するが支持体から離間した係合面を含む。係合面は、好ましくは平面または実質的に平面であるが、丸みを帯びていてもよい。上部歯科用トレイの右側コネクタは取付部で、上部歯科用トレイの頬側の上部歯科用トレイの右側の外面に結合される一方、左側のコネクタ取付部は、上部歯科用トレイの頬側の上部歯科用トレイの左側の外面に取り付けられる。同様に、下側の歯科用トレイの右側のコネクタ取付部は、下部歯科用トレイの頬側の下部歯科用トレイの右側の外面に結合される一方、左側のコネクタ取付部は、下部歯科用トレイの頬側にある下部歯科用トレイの左側の外面に取り付けられる。
【0007】
本器具はさらに、それぞれ近位端、遠位端、内面、外面、上面、下面、第1の側面、第2の側面、第1の側面と第2の側面との間の内部チャネル、第1の開口部を有する近位端の第1の受容部、第2の開口部を有する遠位端の第2の受容部を有する右側および左側の取付部を含み、受容部は、好ましくは、コネクタの内面から内側に延びる少なくとも1つの突起部を含む。コネクタ取付部の横方向に延びる支持体は受容部の開口部内に嵌合し、横方向に延びる支持体の外面は、コネクタのそれぞれの端の内面に面し、コネクタのそれぞれの端の外面は、バックストップの係合面に面している。横方向に延びる支持体のフランジは、好ましくは、コネクタがコネクタ取付部に取り付けられたときに、コネクタの上面に面する下面を有する。また、コネクタの側面は、湾曲した第1および第2の側方部材を備え得る。
【0008】
上部歯科用トレイおよび/または下部歯科用トレイのコネクタ取付部は、上部歯科用トレイと一体的に形成することができる。代替的に、1又はそれ以上のコネクタ取付部の横方向に延びる支持体およびバックストップは、上部歯科用トレイまたは下部歯科用トレイに固定されるベースに取り付けられ、および/またはベースと一体的に形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、コネクタを備えた本器具の実施形態の左側斜視図である。
図2図2は、図1の器具の右側斜視図である。
図3図3は、図1の器具の左側立面図である。
図4図4は、図1の器具の正面図である。
図5図5は、図1の器具の背面図である。
図6図6は、ベースを有するコネクタ取付部の実施形態の側面図である。
図7図7は、図6のコネクタ取付部の平面図である。
図8図8は、一実施形態における一対のコネクタの平面図である。
図9図9は、図8のコネクタのうちの1つの底面図である。
図10図10は、コネクタの一端に取り付けられた図6のコネクタ取付部の平面図である。
図11図11は、図10のコネクタ取付部およびコネクタの側面図である。
図12図12は、一体的に形成されたコネクタ取付部を備えた本器具の実施形態の左側斜視図である。
図13図13は、本器具の代替的実施形態の左側斜視図である。
【0010】
図面の参照番号は、本器具の以下の構成要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
明細書で使用する場合、以下の用語およびその変形は、このような用語が使用される文脈によって異なる意味が意図されていない限り、以下に示す意味を有する。位置と向きに関する用語(たとえば、「上」、「下」、「右」、「左」、「外側」、「内側」、「前方」、「後方」等)は、絶対的ではなく相対的な用語として理解される。したがって、例えば、「右」および「左」は、本製品の構成要素の反対側の側面を示すために使用される。便宜上、これらの用語は一般に、対象者が器具を着用したときの器具またはその構成要素の配置または向きに関して使用される。
【0012】
「約」および「およそ」は、そのような使用の状況で別の意味が示されない限り、参照された数量または距離の10%以内の数量または距離を指す。
【0013】
「前方」とは、本器具を対象者が装着した際の対象者の口の前部(開口部)の方向または前部またはそれに隣接することを意味する。
【0014】
「バックストップ」とは、構成要素または構造が、別の構成要素または構造の移動またはさらなる前進を妨げることを指す。
【0015】
「頬側」とは、本装具を対象者が装着したときの頬の方向または頬側を意味する。対象者の歯に関して、これは頬に面する歯の側面を指す。
【0016】
「前頭面」とは、頭から足まで体を貫通し、体を前半分と後半分に分割する仮想平面を指す。
【0017】
「冠状」は、歯の遠位端上またはそれに向かう位置(すなわち、咬合面が位置する場所)または方向を指す。したがって、冠状面は歯の咬合面であり、これは、後歯では一般に咬合面と呼ばれ、前歯では切縁面と呼ばれる。
【0018】
「歯科用トレイ」は、対象者の歯を受容するための、および/または対象者の歯に装着された歯列矯正トレイを受容するためのレセプタクルを含む構造を指す。レセプタクルは、着用された歯または歯列矯正トレイを受容するための開口部、および対象者が着用した歯または歯列矯正トレイと接触する内面を有する。
【0019】
「下方」および「下方に」とは、本器具を対象者が装着したときの対象者の体の下部の方向またはその方向を意味する。「上方」および「上方に」とは、反対方向、すなわち、対象者の体の上部の方向または上に向かう方向を意味する。
【0020】
「細長い」とは、その幅よりも長い長さを有する構成または形状を指す。
【0021】
「フランジ」とは、物体の突出した周縁部、環状部、またはリブを指す。
【0022】
本器具に関して「水平」とは、本器具が対象者に装着されたときに、対象者の矢状面および/または前頭面に略垂直な面、すなわち、そのような垂直面から15度以内の配置を指す。
【0023】
「唇側」とは、本装具を対象者が装着したときの対象者の唇の方向、その方向、またはそれに隣接する方向を意味する。対象者の歯に関して、これは前歯の唇に面する側を指す。
【0024】
「側方」とは、本器具を対象者が装着しているときに、対象者の矢状面から離れていることを意味する。
【0025】
「左」とは、本器具を対象者が装着したときの対象者の視点から、対象者の中心矢状面の左側を意味する。
【0026】
「舌側」とは、本器具が対象者に装着されたときの対象者の舌の方向、方向、またはそれに隣接することを意味する。対象者の歯に関して、これは舌に面する歯の側を指す。
【0027】
「下側」とは、本器具が対象者に装着されたときに対象者の体の下部により近い、または対象者に近い、本器具の構成要素の相対的な位置を指す。
【0028】
「下顎」とは下側の顎を指す。
【0029】
「下顎歯列」は下顎の歯を指す。
【0030】
「上顎」とは上側の顎を指す。
【0031】
「上顎歯列」とは、上顎の歯を指す。
【0032】
「機械的に結合されている」とは、直接的な物理的接触に基づく結合または別の構造体を介した物理的な結合を意味する。
【0033】
「内側」とは、本器具が対象者に装着されたときに対象者の中心矢状面に向かうことを意味する。
【0034】
(動詞としての)「取り付ける」とは、この場合はコネクタである構成要素を、支持体といった別の構成要素にまたはその周囲に配置することを指しており、これにより、取り付けられ構成要素(コネクタ)の少なくとも一部が、支持体の最も遠位の部分の近位に配置される。
【0035】
「歯列矯正」は、対象者の歯および/または顎を再配置する態様または器具を指す。
【0036】
「ポスト」とは、表面から突き出ており、別の構成要素の接続点として機能する構成要素を指す。
【0037】
「後方」とは、本器具が対象者に装着されたときの対象者の口の後部の方向、またはそれに向かって、またはそれに隣接することを意味する。
【0038】
「レセプタクル」とは、何かを収容するために使用される物体またはスペースを指す。
【0039】
「右」とは、本器具を対象者に装着したときの対象者の中心矢状面の右側を意味する。
【0040】
「矢状面」とは、対象者の体の上から下に垂直に移動し、それを左右の部分に分割する仮想平面を指す。
【0041】
「軟質プラスチック」とは、プラスチックに力を加えると弾性変形できるポリマー材料を指しており、すなわち、力が取り除かれた後、物体がその元の形状に戻るように一時的に形状が変化する。
【0042】
「対象者」は、本器具のユーザ、通常は人間のユーザを指す。
【0043】
「支持体」は、構造体の別の構成要素から力を受け、通常または予期される動作条件下で固定されたままの構成要素または構造体を指す。
【0044】
「熱可塑性」とは、可逆的な物理的プロセスにおいて、熱によって軟化し、冷却によって硬化することができる材料、一般的にはポリマー材料を指す。本器具のいくつかの構成要素で使用される熱可塑性材料は、100°Fでも形状を保持し、好適には212°F以下の温度で柔らかく(変形可能)になる。
【0045】
本明細書で使用される「トレイ」および「歯科用トレイ」は、対象者の上顎または下顎の歯を受容するための、または、場合によっては、対象者が着用する歯列矯正用トレイを受容するための、開口領域を含む本器具の概してU字型の部分を指す。
【0046】
「上部」とは、本器具が対象者に装着されたときに、対象者の体の上部により近い、または上部に向かう、本器具の構成要素の相対的な位置を指す。
【0047】
本器具に関して「垂直」とは、対象者の矢状面および/または冠状面に略平行な面、すなわち、そのような平行面から15度以内の面における配置を指す。好ましくは、垂直とは、本器具が対象者によって着用されたときの対象者の頭または足に向かうまたは離れる方向を指す。
【0048】
「備える」という用語、ならびに「備えている」および「含む」といったそのバリエーションは、他の追加形、構成要素、整数またはステップを除外することを意図していない。本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語および同様の指示語は、文脈での使用が他を示さない限り、単数および複数の双方をカバーすると解釈されるべきである。
【0049】
口腔器具
本器具10は、上部歯科用トレイを下部歯科用トレイに取り付けるコネクタを外すリスクなしに、対象者の顎の横方向の動きを可能にする器具に対する長年の必要性に対処する。これにより、本器具10は、器具を使用する対象者が器具を外すことなく快適に対象者の口を開閉することを可能にする。これは、顎を横方向に動かす能力を阻害せず、同時に下顎骨が後方に下がっていびきや無呼吸を引き起こすのを防止または阻害するため、特に、横方向の歯ぎしりをしているユーザ(すなわち、睡眠中に歯を左右にすりつぶしているユーザ)にとって重要である。
【0050】
本器具10は一般に、睡眠時無呼吸を回避するように対象者の顎を位置決めするように協働する一対の歯科用トレイ15、上部トレイ120および下部トレイ140を備える。上部トレイ120は対象者の上顎歯列に取り付けられる一方、下部トレイ140は対象者の下顎歯列に取り付けられる。本器具のトレイ15はそれぞれ、右側12、左側14、頬側13、舌側15、前部16、後部18、外面17、および従来の歯列矯正器具の方法で、またはブランド名INVISALIGNで販売され、Align Technology、Inc.によって製造されたものなどの歯列矯正トレイの上に、対象の歯列にフィットするようにトレイ15の1つの水平面に形成された略U字形の歯受けレセプタクル20を含む。レセプタクル20は、対象者の歯(または歯列矯正トレイ)を受容し、内面25上の??歯(または歯列矯正トレイ)に接触するよう構成される。レセプタクル20は、対象者の歯の冠状面に面する底面から上顎または下顎に向かって、すなわち頬壁22および舌壁24にそれぞれ延びる側壁21を備えており、対象者の歯の一部または全部の頬側および舌側の一部または全部を覆う。トレイ15の外側部分は、レセプタクル20の反対側のトレイの水平側、すなわちトレイ15の外側に形成された冠状面30をさらに含む。トレイ15は、好ましくは、対象者の既存の形状に適合するように形成することができ、好ましい実施形態では、トレイ15は、既存の歯列および/または対象者の下顎骨および/または上顎骨の形状の変化を、以下にさらに記載されているように、歯列矯正器具の方法で達成するように形成することができる。
【0051】
上部トレイ120および下部トレイ140は、コネクタ200およびコネクタ取付部300を使用することによって互いに機械的に接続される。コネクタ取付部300は、それぞれの各側面で上部トレイ120および下部トレイ140に取り付けられるか、または一体的に形成され、コネクタ取付部300が上部トレイ120の右側12と左側14に取り付けられ、また下部トレイ140の右側12と左側14にも取り付けられるように、頬側を外側に向ける。図1~3に示すように、ユーザの下顎を上顎に対して比較的前方の位置に維持し、それによってユーザのいびきおよび/または無呼吸を治療するために、コネクタ取付部300は、ユーザの犬歯および/または第1小臼歯の右側と左側にそれぞれ隣接するような比較的前方の位置で上部トレイ120に配置される。次に、コネクタ取付部300は、ユーザの第1大臼歯または第2大臼歯に隣接するなど、比較的後方の位置で下部トレイ140に配置される。図13に示す代替的実施形態では、上部デンタルトレイ120および下部デンタルトレイ140上のコネクタ取付部300の相対位置を逆にすることができ、この場合、上部トレイ120のコネクタ取付部300は比較的後方の位置に配置され、下側トレイ120のコネクタ取付部300は、比較的前方の位置に配置される。
【0052】
コネクタ200は、図8および9に最もよく見られ、近位端202、遠位端204、第1の側面206、第2の側面208、上面217、下面219、及び2つの横部材215を有する細長い形式を具える。コネクタは、熱可塑性材料または他のポリマー材料といった、当技術分野で知られている材料から形成することができる。第1の側方部材216は、コネクタ200の一方の側の近位端202から遠位端204まで延在し、第2の側方部材218は、コネクタの他方の側の近位端202から遠位端204まで延在する。第1および第2の側方部材216、218は、それぞれコネクタの近位端および遠位端で互いに接続されおよび/または取り付けられ、内部チャネル230の外側境界を形成する。内部チャネル230は、以下でさらに説明するように、トレイ15に取り付けられた横方向に延びる支持体320のポスト322を受け入れて保持する。第1および第2の側方部材216、218は直線または曲線であり得るが、第1および第2の横方向部材216、218の内面214の間でそれらの長手方向の範囲に沿ってほぼ等しい距離が維持されることが好ましい。
【0053】
いくつかの実施形態は、複数の内部チャネル230を含むことができる。例えば、図8に示されるように、コネクタは、第2の内部チャネル233とは別個の第1の内部チャネル231を含むことができる。図8および9の実施形態では、第1の内部チャネル231および第2の内部チャネル233は、コネクタ200の近位端202および遠位端204間の中間部分205で第1の側方部材216と第2の側方部材218との間に延びるブレース235によって分離される。ブレース235は、第1および第2の内部チャネル231、233において、第1の側方部材216の内面214と第2の側方部材218の内面214との間に所定の距離を維持して、その中のポスト322の移動のための十分な空間を可能にするのに役立つ支持体である。
【0054】
コネクタ200の近位端202および遠位端204のそれぞれは、受容部または部分的包囲部210をさらに含む。受容部210は、受容部210の内部と内部チャネル230との間の連絡を提供する開口部201を有する。図4の実施形態において、コネクタ200の近位端202は第1の受容部211を含み、遠位端204は、第2の受容部213を含む。受容部210は、上部トレイ120と下部トレイ140を機械的に接続して柔軟に取り付けるために、ポスト322を受容および保持するようなサイズおよび構成である。受容部210は、受容部210内でポスト322をより適切に保持するために、少なくとも1つの保持部材220、好ましくは内側に延びる突起を含むことが好ましい。図8および9の実施形態では、受容部211、213はそれぞれ、受容部210と内部チャネル230との間の開口部201に隣接する1対の保持部材220を有する。この実施形態の保持部材220は、各側方部材216、218から、例えば、各側方部材216、218の内面214から内向きに延びる突出構造(「先端部」)を含む。保持部材220は、所定量の力がコネクタ200および/またはポスト322に加えられてポスト322を内部チャネル230の中に押し出すまでポスト322を受容部210内に保持するのに十分な剛性を有するが、好ましくは、十分な力が加えられたときに曲げられるように十分に可撓性(すなわち、弾性変形可能)を有する。保持部材220および/または側方部材216、218は共に、保持部材220の弾性限界を壊したり超えたりすることなく、ポスト322を受容部210から内部チャネル230の中に移動させるのに十分な可撓性がある。代替的実施形態では、単一の内側に延びる保持部材220を使用することができ、または、保持部材を省くことができる。あるいは、受容部の開口部201において内部チャネル230を、ポスト322の直径よりも短い距離に狭めることは、保持部材220の代わりにコネクタ200に含まれ得る。
【0055】
コネクタ200は、トレイ15の各側面に取り付けられたコネクタ取付部300によって、上部トレイ120と下部トレイ140とを機械的に接続する。コネクタ取付部300はそれぞれ、一般に、横方向に延びる支持体または支柱320およびバックストップ340を備える。図1~3、6、および7に示す実施形態では、図示のコネクタ取付部300は、上面312、下面314、近位端316、および遠位端318を有するベース310をさらに備える。横方向に伸びる支持体320とバックストップ340は、本明細書に記載されているように、コネクタ200を保持して上部トレイ120および下部トレイ140間の結合を維持するのに十分な強度がある限り、歯科用トレイ15の各側面に直接取り付けるか、一体に形成できることが理解されよう。好ましくは、図12に示すように、横方向に延びる支持体320およびバックストップ340は、トレイ15が製造されるときに各トレイ15と一体的に形成される。図6および7の実施形態では、コネクタ取付部300は、歯科用トレイ15とは別に製造できる別個の構造として示される。このような実施形態では、ベース310は、横方向に延在する支持体320およびバックストップ340を適切なそれぞれの位置に維持するとともに、これらの構造に支持を提供する。
【0056】
コネクタ取付部300の横方向に延びる支持体320は、概して、トレイ15の各側面から横方向外向きに、すなわち本器具10が対象者によって着用されたときに頬側に延びるポスト322を含む。ポスト322は、場合によっては、ベース310取り付けられまたはトレイ15に直接取り付けられた近位端321と、ポスト322の長手方向範囲に沿ってトレイの表面から遠位に外側に配置された遠位端323とを有する。ポスト322の遠位端323は、コネクタ200の受容部210により良好に保持されるように(ポスト322の長手方向の範囲に対して)横方向及び外方に延びるフランジ330を含む。図6、10、および11を参照すると、フランジ330は、ポスト322の遠位端の周りに円周方向に延在し、円形の外側リム332を有し、これにより「ボタン」を形成する。ポスト322は、その幅が側方部材215間の距離以下であり、好ましくはそれよりも小さいようなサイズであり、これにより、ポスト322は、コネクタ200の内部チャネル230の中に適合し、内部に保持され得る。ポスト322の近位端321および遠位端323もまた、少なくとも側方部材215の厚さ、すなわち、それぞれの側方部材215の上面217と下面219との間の距離と同じ長さである。フランジ330の直径は、コネクタ200が張力を受けていない(すなわち、弾性変形している)とき、第1の側方部材216の内面214と第2の側方部材218の内面214との間の距離よりも大きいことが好ましく、ポスト322は、内部チャネル230内および/または受容部210内に配置され、フランジ230の外縁の少なくとも一部は、一方または双方の側方部材215の内面214を超えて延びており、すなわち、フランジ230の下面が一方または双方の側方部材215の上面217に接触または隣接するようにする。側方部材215および横方向に延びる支持体320は、コネクタ200の内部チャネル230内にポスト322を配置することができるように、第1の側方部材216および第2の側方部材218が、フランジ330上に嵌合することができるのに十分に互いに離れるように撓み、曲げ、または伸ばすことができ、好ましくは、離れるように付勢される前のそれらの張力がかかっていない構成、すなわち第1の横部材216および第2の横部材218の構成に戻るのに十分な弾性を有する。
【0057】
コネクタ取付部300は、ポスト322に面する係合面342を有するバックストップ340をさらに含む。係合面342は、図11および他の図示の実施形態に示すように、好ましくは平坦または実質的に平坦であるが、それぞれの端部の一方または双方がポスト322から離れる方向に湾曲する凸状構成も可能である。係合面342は、横方向に延びる支持体320のポスト322および/または外側リム332から十分に離れて位置しており、図10および図11に示すように、側方部材215および/または受容部210の近位端または遠位端が、係合面342とポスト322との間、および/または係合面342と外側リム332との間に嵌合することを可能にする。図10および11に示すように、横方向に延びる支持体320のポスト322が、コネクタ200の近位端202および/または遠位端204の受容部210内に保持されているとき、および、近位端202または遠位端204の外面212がバックストップ340の係合面342に面しているとき、コネクタ200の近位端または遠位端の係合面342の方向への移動は、コネクタ200の長手方向端部(202または204)の先端209の外面212とバックストップ340の係合面と342の間の接触によって停止される。バックストップ340の係合面342が、略垂直に向けられるように、すなわち、例えば図1~3に示されるように、係合面342が前方または後方を向くようにトレイ15の側面に取り付けられるとき、バックストップ340は、本器具10が装着されている間、ポスト322が受容部210から外れてコネクタ200の中間部分205に向かって押しやられるのを防止する。下顎を比較的前向きに維持するために、図1~3の実施形態におけるいびきおよび/または無呼吸を防ぐために、バックストップ340は、係合面342が前方を向いている(これらの向きは図13の実施形態では逆になっている)状態で、好ましくは、下部歯科用トレイ140の各側面(右側12および左側14)の比較的前方の位置に取り付けられる。これにより、可撓性材料がコネクタ200として使用されている場合でも、本器具10が対象者によって着用されている間、上部歯科用トレイ120および下部歯科用トレイ140を互いによりしっかりと結合することができる。コネクタ200用のこのような可撓性材料は、本装具10を着用している間、対象者の顎の横方向の動きを可能にする一方で、バックストップ340が、コネクタ200がトレイ15から外れる危険性がある方向へのコネクタ200の動きを防止する。
【0058】
コネクタ200を取り外しまたは交換することが望まれる場合、コネクタ200の近位端202または遠位端204の先端209を回転させて、その外面212が、もはやバックストップ340の係合面342に面しないように、または、隣接しないようにすることによって、ポスト322を受容部210から取り外すことができる。例えば、図5Aに示すコネクタ200が、コネクタ取付部300のポスト322の周りでいずれかの方向に90°回転される場合、先端209の外面212は、もはやバックストップ340の係合面342に面しておらず、コネクタ200は、ポスト322を受容部210から移動させるように押し出すことができる。そして、コネクタ200の側方部材215は、コネクタ200をコネクタ取付部300から取り外すために、撓ませ、曲げ、または伸ばすことができる。
【0059】
好ましい実施形態では、コネクタ200の近位端202および遠位端204は、同じサイズおよび形態を有し、交換可能に使用することができ、その結果、コネクタ200のいずれかの端部を、上部トレイ120に取り付けることができ、同様に、いずれかの端部を、下部トレイ140に取り付けることができる。この実施形態では、近位端202および遠位端204の受容部220は、同一または本質的に同一のサイズおよび形状を有し、コネクタの横方向に延びる支持体320は、同様に、コネクタ200の長手方向のいずれかの端部を受容するよう構成される。
【0060】
本装具10の歯科用トレイ15、コネクタ200、およびコネクタ取付部は、様々な経口的に適合性のある材料、典型的にはポリマーから形成することができる。一実施形態では、アクリルが、本器具のトレイ15およびコネクタ取付部300を形成するために使用される。ある程度の柔軟性を保持する軟質プラスチック材料を使用して、トレイ15およびコネクタ取付部300を形成することもできる。コネクタ200には、軟質プラスチック材料が好ましく、これは、ユーザの顎の横方向の動きを可能にするためであり、コネクタ200が軟質プラスチック材料から作られる場合、コネクタ200の弾性変形によって可能になる。
【0061】
発明の器具を形成するために熱可塑性ポリマーが典型的に使用されるが、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、および他の材料も使用することができる。使用される熱可塑性材料は、対象者が使用するときにその形状を保持できなければならず、したがって、好ましくは、少なくとも約100°Fで固体のままであり、好ましくは、110°F、120°F又はそれ以上といったやや高い温度で固体のままである。本発明のトレイを形成するために熱可塑性材料が使用される場合、それらは、好ましくは、212°F以下の温度で変形可能となり、沸騰水中に置くことによりそれらをプラスチックにすることができる。好ましくは、材料は120°F未満、好ましくは145°F以上で変形可能ではない。
【0062】
一実施形態では、本器具の歯科用トレイ15を形成するために軟質熱可塑性材料が使用される。器具10を特定の患者の歯列に適合させるために、軟質熱可塑性材料は、「沸騰および咬合」器具の方法で、すなわち器具10の歯科用トレイ15を沸騰水に数秒から1分の間数回入れておくことにより軟化される。次に、歯科用トレイは、対象者の歯に揃えて対象者の口の中に配置され、対象者は、軟化した材料を噛み込んで軟化した材料に歯形を作るように指示される。次に、材料を約1分間口の中で冷やし、その後、本器具を冷水にさらに1分間浸すことが好ましい。
【0063】
トレイ、コネクタ、およびそれらの構成要素は、真空成形といった当技術分野で知られている他の方法で形成することもできる。以下に記載される歯列矯正トレイといった特定のユーザの歯列用に構成されたトレイは、有利なことに、3D印刷またはフライス加工によって形成することができる。このような実施形態では、個人の歯列の形状およびサイズは、個人の歯列を直接走査することによって、または歯列の型を走査することによって、測定することができる。次に、個人の歯列を受容するように構成されたレセプタクル部分20を有するトレイは、個人の歯列に関するスキャンされたデータを使用して適切なソフトウェア(すなわちCAD-CAMソフトウェア)によって設計され得る。次に、トレイ15は、例えば、3Dプリンタを使用する3D印刷によって、またはコンピュータ数値制御機械といった当技術分野で知られている装置を使用するフライス加工または機械加工によって製造することができる。このようにして、例えば3D印刷によって製造されるトレイは、歯科用トレイ15に一体的に含まれるコネクタ取付部300とともに有利に作られる。このような実施形態では、コネクタ取付部300は、ポスト322(横方向に延びる支持体)およびバックストップ340が、歯科用トレイ15の外面17から直接伸びることができるため、ベース310を含む必要がなく、図12の実施形態に示すように、バックストップ340は、歯科用トレイ15の外面17から直接延びることができる。
【0064】
矯正トレイ
一実施形態では、トレイ15は、対象者による使用のための一連の歯科矯正歯科トレイとして形成することができる。本実施形態では、異なる構成のレセプタクル部分20を有するトレイ15は、個々の歯を連続するステップで再配置するため、および/または対象者の下顎および/または上顎の構成を変更するために、経時的に対象者に適用される。いくつかのそのような歯科用トレイ15を連続して使用すると、個々の歯を小さな増分で、通常2mm未満、好ましくは1mm未満、より好ましくは0.5mm未満移動させる(単一の器具を使用した結果として歯の任意の点の最大の直線移動に関する)ように各器具を構成できる。
【0065】
歯科用トレイ15の歯の受容レセプタクル部分20は、典型的には、対象者を対象とする中間または端部の歯の配置に対応する形状を有する。このようなトレイ15が対象者によって最初に着用されるとき、歯のいくつかは、トレイ15のレセプタクル部分20の変形されていない幾何学形状に対して位置ズレするであろう。この実施形態において、トレイ15は、ズレた歯に適応または適合する十分に弾性のある材料から形成されるが、そのようなずれた歯に対して十分な弾性力を加えて、その治療ステップに望ましい中間または端部配置に歯を再配置する。本器具は、必ずしもではないが、好ましくは、上顎または下顎に存在するすべての歯の上にフィットする。場合によっては、特定の歯のみが再配置される一方、再配置すべき1つまたは複数の歯に対して弾性再配置力を適用するときに、再配置用器具を所定の位置に保持するためのベースまたはアンカー領域が提供される。
【0066】
対象者の歯は、一連の段階的な位置調整器具を対象者の口の中に配置することにより、初期の歯の配置から最終的な歯の配置に再配置される。一連の器具のうちの最初のトレイ器具は、最初の歯の配置から最初の中間の配置に歯を再配置するように選択された形状を有する。最初の中間配置に接近または中間位置を達成した後、1つ以上の追加の(中間)器具が歯に連続して配置され、このような追加の器具は、最初の中間配置から連続する中間配置を通じて歯を徐々に再配置するように選択された形状を有する。治療は、最終的な器具を対象者の口に配置することによって終了するが、最終的な器具は、最後の中間配置から最終的な歯の配置に歯を徐々に再配置するように選択された形状を有する。
【0067】
特定の対象者の歯を再配置する一連の歯科用トレイ15を設計するために、初期の歯の配置および最終的な歯の配置を表すデジタルデータセットを決定することができる。視覚的な画像として提示できる初期の歯の配置を表す初期のデータセットを操作して、個々の歯の位置を変更する。次に、再配置された歯を備えた最終的な歯の配置を表す最終的なデジタルデータセットが生成される。初期のデジタルデータセットは、X線画像のデジタル化、コンピュータ支援断層撮影(CATスキャン)によって生成された画像、磁気共鳴画像法(MRI)によって生成された画像、および/または対象者の歯の3次元デジタル表現を生成するための、当技術分野で既知の他の方法を含む従来の技術によって提供され得る。代替的に、初期のデジタルデータセットは、たとえば従来の手法で対象者の歯の石膏ギプスを(治療前に)作成することで提供され、その後、レーザーまたは他のスキャン装置を使用して石膏ギプスをスキャンし、対象者の歯の石膏ギプスの高解像度デジタル表現を生成できる。
【0068】
最初と最後のデータセットが決定されると、対象者の歯の中間の歯の位置を表す一連の中間データセットが決定される。連続する中間デジタルデータセットは、好ましくは、初期データセットおよび最終データセットにおける選択された個々の歯の間の位置差を決定し、その差を補間することによって生成される。そのような補間は、3つの異なる歯科用トレイ、より頻繁には少なくとも10個の歯科用トレイ、時として少なくとも25個の歯科用トレイ、時として40個以上で実施される少なくとも3つの別個の段階にわたって実行され得る。この補間は、位置の違いの一部またはすべてに対する線形補間であるか、または代替的に非線形であってもよい。位置の違いは歯の動きに対応し、歯の任意の点の最大直線運動は、好ましくは2mm以下、通常は1mm以下、好ましくは0.5mm以下である。
【0069】
中間データセットと最終データセットが決定されると、ラピッドプロトタイピングデバイス又はデジタルプリンタなどを使用して本器具を製造できる。好ましくは、本器具はポリマーであり、Tru-Tainの0.03インチの熱成形歯科用材料(Tru-Tain Plastics、Rochester、MN 55902)などの適切なエラストマーポリマーの薄いシートから形成される。歯科用トレイ器具のそれぞれに対応する1つの構造が製造される。
【0070】
上述の歯科用トレイ器具および歯列矯正治療におけるそれらの使用は、米国特許第5975893号、および、米国特許第621562号、6217325号、6398548号、6626666号、6629840号、6699037号、7134874号、7474307号、8100580号、および8562340号を含む、Align Technology、Inc.に譲渡された他の特許広報に記載されている。
【0071】
歯列矯正治療が成功した後など、歯または顎の再配置が不要かまたは望ましくない実施形態では、上部および下部歯科用トレイ15は、当技術分野で知られている方法で形成することができる。例えば、本器具が熱可塑性ポリマーから形成される場合、上部歯科用トレイ120および下部歯科用トレイ140は、対象者の口との適合について最初に評価でき、その後、好ましくは数秒から1分の間、本器具を沸騰水中に置くことによってトレイを軟化させることができる。次に、軟化した器具を対象者の上下の歯に合わせて対象者の口に入れ、軟化した材料に歯の型を作るために軟化した材料を噛むように対象者に指示する。次に、トレイ材料を口の中で約1分間冷却し、その後、本器具を冷水にさらに1分間浸すことが好ましい。他の方法で本器具のトレイにカスタマイズされた歯科用の型を作成し、他の材料を使用することは、既知の方法を使用して当業者によって達成することができる。
【0072】
本発明は、特定の好ましい実施形態を参照してかなり詳細に説明されたが、他の実施形態も可能である。本方法について開示されたステップは、例えば、限定することを意図したものではなく、各ステップが必ずしも本方法に必須であることを示すことを意図したものではなく、例示的なステップのみを示す。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示に含まれる好ましい実施形態の説明に限定されるべきではない。
【0073】
本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に含まれる各個別の値を個々に参照するための簡略法として役立つことを単に意図している。本明細書で別段の指定がない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本出願が優先権を主張する特許出願を含む、本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13