(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】気泡/金属イオン複合体の製造装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20230907BHJP
B01F 23/20 20220101ALI20230907BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
B01F23/20
(21)【出願番号】P 2021065426
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】518174606
【氏名又は名称】WEF技術開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】青山 章
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-245817(JP,A)
【文献】特開2007-038125(JP,A)
【文献】特開2009-297622(JP,A)
【文献】特開2013-240727(JP,A)
【文献】特開2009-131770(JP,A)
【文献】特開2015-030656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0000164(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46-1/48
B01F 21/00-25/90
C02F 1/20-1/26,1/30-1/38
A61K 31/33-33/44
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子及び炭粒子から構成され水と接触することにより金属イオン水を生成させる金属イオン発生部と、
気体及び金属イオン水を混合し
、金属イオンと水酸化物イオンとが再結合する前に気泡と金属イオンとを複合化させて気泡/金属イオン複合体含有水を生成させる複合体形成部とを備えることを特徴とする気泡/金属イオン複合体の製造装置。
【請求項2】
金属粒子が、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子である請求項1に記載の気泡/金属イオン複合体の製造装置。
【請求項3】
気体が空気、酸素、二酸化炭素及び水素からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の気泡/金属イオン複合体の製造装置。
【請求項4】
気泡/金属イオン複合体
含有水に含まれる気泡の個数平均粒子径が0.02~100μmである請求項1~3のいずれかに記載の気泡/金属イオン複合体の製造装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載された気泡/金属イオン複合体の製造装置を用いて、
金属イオン発生部で金属イオン水を生成させた後、複合体形成部で気体及び金属イオン水を混合して気泡/金属イオン複合体含有水を生成させるか、
または金属イオン発生部で金属イオン水を生成させながら複合体形成部で気体及び金属イオン水を混合することを繰り返して、気泡/金属イオン複合体含有水を生成させることにより気泡/金属イオン複合体を製造することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡/金属イオン複合体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気泡及び金属イオンを生成する装置として、「電気分解でAgイオンを生成するAgイオン生成部と、マイクロバブルを発生するマイクロバブル発生部と、マイクロバブル発生部から発生するマイクロバブルをAgイオン生成部に導くための接続部とを備える、抗菌水生成装置」が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置では、気泡/金属イオン複合体を効率よく製造できないという問題がある。
本発明の目的は、簡便に、効率よく、気泡/金属イオン複合体を製造できる製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置の特徴は、金属粒子及び炭粒子から構成され水と接触することにより金属イオン水を生成させる金属イオン発生部と、
気体及び金属イオン水を混合し、金属イオンと水酸化物イオンとが再結合する前に気泡と金属イオンとを複合化させて気泡/金属イオン複合体含有水を生成させる複合体形成部とを備える点を要旨とする。
【0006】
本発明の製造方法は、上記の気泡/金属イオン複合体の製造装置を用いて、
金属イオン発生部で金属イオン水を生成させた後、複合体形成部で気体及び金属イオン水を混合して気泡/金属イオン複合体含有水を生成させるか、
または金属イオン発生部で金属イオン水を生成させながら複合体形成部で気体及び金属イオン水を混合することを繰り返して、気泡/金属イオン複合体含有水を生成させることにより気泡/金属イオン複合体を製造する点を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置は、簡便に、効率よく、気泡/金属イオン複合体を製造できる。
【0008】
本発明の製造方法によれば、上記の製造装置を用いるので、簡便に、効率よく、気泡/金属イオン複合体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例で例示した本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置の一形態を表す概念図である。
【
図2】本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置の一形態(金属イオン水の生成と気体及び金属イオン水の混合とを直列的に繰り返す方法)を表す概念図である。
【
図3】本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置の一形態(金属イオン水の生成と気体及び金属イオン水の混合とを並列的に繰り返す方法)を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
金属粒子としては、水と激しく反応する金属でなく、水中で炭と接触することにより水中にイオンとして溶出できる金属粒子であれば制限はないが、還元電位の観点から、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫、鉛及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子が好ましく、さらに好ましくはマグネシウム、アルミニウム、亜鉛及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子である。
【0011】
金属粒子は、谷と山との差が5~1500μmである蛇腹状の凹凸を有する金属粒子であることが好ましい。この谷と山との差の下限値は10μmがさらに好ましく、特に好ましくは20μmである。
【0012】
谷と山との差は、光学式非接触3次元測定機{たとえば、非接触微細形状測定機Infinte Focus SL、ブルカー・アリコナ社(オーストリア)}により計測できる。
【0013】
蛇腹状の凹凸は、金属粒子の表面のいずれかに存在すればよく、すべての面に存在している必要はない。谷と山との差が20~1500μmである蛇腹状の凹凸を有する金属粒子は、金属加工して調製してもよいが、切削屑をそのまま使用できる場合がある。コストの面から切削屑を活用することが好ましい。
【0014】
金属粒子の大きさに特に制限はないが、上限として、-8mm(ふるい網の目開き8mm、JIS Z8801-1:2006、線径2mm、2.5メッシュ相当)程度が好ましく、さらに好ましくは-4mm(ふるい網の目開き4mm、JIS Z8801-1:2006、線径1.4mm、4.7メッシュ相当)程度、特に好ましくは-2mm(ふるい網の目開き2mm、JIS Z8801-1:2006、線径0.9mm、9メッシュ相当)である。また、下限として、+355μm(ふるい網の目開き355μm、JIS Z8801-1:2006、線径224μm、44メッシュ相当)程度が好ましい。
【0015】
金属イオン水の生成の持続性及び安定性をよりよくするため、金属粒子の大きさに関して、大きな金属粒子と小さな金属粒子との両方を含むことが好ましく、金属粒子の大きさを均一にしないことが好ましい。
【0016】
金属粒子は、市場から容易に入手でき、たとえば、株式会社関東金属、有限会社古谷商店、富源商事株式会社及びイチイ産業株式会社から入手できる。
【0017】
炭粒子としては、有機物を蒸し焼きにして得られる炭化物であれば制限なく使用できる。炭粒子の原料となる有機物としては、炭化できる物であれば制限がないが、品質等の観点から、ヤシガラ、竹及び木が好ましい。竹及び木のうち、環境保護等の観点から、廃材(建築廃材、家具廃材、使用済み割りばし、廃パレット)、植木剪定材及びこれらの破砕物を圧縮成形した圧縮成型体等を用いることができる。
【0018】
炭粒子のうち、竹及び木を原料とする場合、縦型炭化炉で製造されることが好ましい。炭化温度(℃)としては、500~1000程度が好ましく、さらに好ましくは700~800程度である。気泡/金属イオン複合体をヒトや動物に使用する場合、安全性の観点等から活性炭等が好ましく、ヒトや動物以外に使用する場合この限りではない。
【0019】
炭粒子は、必ずしも多孔質である必要はないが、多孔質であることにより、水との接触部位が増大するため、多孔質であることが好ましい。
【0020】
炭粒子の精練度は、0~6程度が好ましく、さらに好ましくは0~5、特に好ましくは0~4、最も好ましくは0~3である。
【0021】
精錬度とは、炭化の度合いを表した数字であり、精錬計{たとえば、株式会社三陽電機製作所製の木炭精錬計}で測定試料表面の2点間の電気抵抗値(Ω/cm)を測定し、この電気抵抗値の指数部分の数字を精錬度としたものである。この精錬度の値が小さい程、電気抵抗が小さく、グラファイト構造を多く含むということができる。
【0022】
炭粒子の原料となる有機物の大きさは、2~10cm程度以内の大きさに破砕してから炭化させることが好ましい。
【0023】
炭粒子は、破砕等により粒子を小さくしてもよく、さらに、スクリーン(金網等)により篩い分けしてもよい。
【0024】
炭粒子の大きさに特に制限はないが、上限として、-8mm(ふるい網の目開き8mm、JIS Z8801-1:2006、線径2mm、2.5メッシュ相当)程度が好ましく、さらに好ましくは-4mm(ふるい網の目開き4mm、JIS Z8801-1:2006、線径1.4mm、4.7メッシュ相当)程度、特に好ましくは-2mm(ふるい網の目開き2mm、JIS Z8801-1:2006、線径0.9mm、9メッシュ相当)である。また、下限として、+355μm(ふるい網の目開き355μm、JIS Z8801-1:2006、線径224μm、44メッシュ相当)程度が好ましい。
【0025】
金属イオン水の生成の持続性及び安定性をよりよくするため、炭粒子の大きさに関して、大きな炭粒子と小さな炭粒子との両方を含むことが好ましく、炭粒子の大きさを均一にしないことが好ましい。
【0026】
金属粒子及び炭粒子の含有量には特に制限はないが、イオン水の生成効率等の観点から次の範囲が好ましい。
金属粒子の含有量(重量%)は、金属粒子及び炭粒子の重量に基づいて、10~90が好ましく、さらに好ましくは20~80、特に好ましくは24~70である。
炭粒子の含有量(重量%)は、金属粒子及び炭粒子の重量に基づいて、10~90が好ましく、さらに好ましくは20~80、特に好ましくは30~76である。
【0027】
金属粒子と炭粒子とは接している必要があるが、金属粒子と炭粒子との接触は電子の授受ができる程度に接していれば足りる(金属粒子及び炭粒子、水により部分電池が構成され、電子の授受により金属イオンが発生する。)。金属粒子及び炭粒子から構成される金属イオン発生部内に水が自由に出入りできる隙間を設けられている。すなわち、金属粒子及び炭粒子は多孔質であることが好ましい。金属粒子及び炭粒子は金属イオン発生部内で流動するように構成していてもよいが、金属粒子と炭粒子との接触により電子の授受が効率よくできるように、金属粒子及び炭粒子は常に接触しこれらの流動は少ないことが好ましい。
【0028】
金属イオン発生部は、金属粒子及び炭粒子が常に非接触とならなければ、どのように構成されていてもよく、水の流入口及び金属イオン水の排出口をもつ容器(カートリッジ)内に金属粒子及び炭粒子を充填した構成としてもよい。また、この場合、流入口や排出口にフィルター、ストレーナー又は網を設けてもよい。水道水等の加圧水を水の流入口に導入する場合、ポンプを設ける必要はないが、流入口へ導入する水の圧力によって、水の流入口及び/又は金属イオン水の排出口にポンプを設けてもよい。
【0029】
金属イオン発生部は、タンク、循環ポンプ及び循環ラインと上記のカートリッジとを接続して、金属イオン水を循環させてもよい。この場合、水の流入口及び金属イオン水の排出口は必ずしも上記のカートリッジに設ける必要はなく、タンクや循環ラインに設けてもよい。
【0030】
気体としてはガス状であれば制限ないが、空気、酸素、二酸化炭素及び水素からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。気体は、水に溶存している気体(通常、空気が溶存しているが、気体の種類を変更する場合、加圧及び/又はバブリングにより置換できる。)や、金属イオン発生部で発生する気体(水素等)をそのまま使用してもよいし、さらに複合体形成部に気体導入口を設けて気体を導入してもよい。
【0031】
気体の大きさには制限はないが、気泡/金属イオン複合体の安定性の観点等から、この個数平均粒子径は、0.02~100μmが好ましく、さらに好ましくは0.05~1μm、特に好ましくは0.1~0.3μmである。
【0032】
個数平均粒子径は、JIS Z8825:2013「粒子径解析-レーザ回折・散乱法」に準拠して体積平均粒子径を求め、この値から算出してもよいし、JIS Z8836:2017「コロイド分散系-ゼータ電位の光学的測定法」に準拠して求めてもよい(以下同じである。)。
【0033】
複合体形成部において、形成される気泡/金属イオン複合体含有水に含まれる気泡の大きさには制限はないが、気泡/金属イオン複合体含有水に含まれる気泡の安定性等の観点から、この個数平均粒子径は、0.02~100μmが好ましく、さらに好ましくは0.05~1μm、特に好ましくは0.1~0.3μm(この大きさになると可視光線より小さいため、形成される複合体含有水は透明となる。)である。
【0034】
複合体形成部は、気体と金属イオン水を混合して気泡/金属イオン複合体含有水を生成できればどのように構成されていてもよく、<1>金属イオン水の流入口、気泡/金属イオン複合体含有水の排出口及び気体流入口をもつように構成してもよいし、<2>金属イオン水の流入口及び気泡/金属イオン複合体含有水の排出口をもつように構成してもよい。加圧された金属イオン水を流入口に導入する場合、ポンプを設ける必要はないが、流入口へ導入する金属イオン水の圧力によって、流入口及び/又は排出口にポンプを設けてもよい。複合体形成部は、気泡/金属複合体含有水の排出口に循環ラインを設けてストックタンクに接続し、ストックタンクから再度ポンプで気泡/金属複合体含有水の排出口に循環させてもよい。
【0035】
金属イオン水の流入口から気泡/金属イオン複合体含有水の排出口までの間に気体を細分化させる部材を設けてもよい。気体を細分化させる部材としては、攪拌羽根やディフューザーストーン(エアストーン)、ガラスフィルター、アスピレーター、エジェクター、邪魔板、オリフィスノズル、羽根車及び噴射ノズル等を適宜組み合わせて構成してもよい。
【0036】
気体を細分化させる部材としては、公知の部材(特許第6310359号、特許第6449531号、特開2012-040448号、WO2013/012069、特開2013-215421号、特開2014-121689号、特開2015-062906号、WO2018/021330及び特開2021-020153号等)が使用でき、たとえば、ファビー及びフォームジェット(株式会社ワイビーエム)、UFBノズル組み込み高圧ポンプ(株式会社シバタ)並びにミクロスター(株式会社富喜製作所、「ミクロスター」は同社の登録商標である。)が含まれる。
【0037】
上記の気泡/金属イオン複合体の製造装置を用いて、金属イオン発生部で金属イオン水を生成させた後、複合体形成部で気体及び金属イオン水を混合して気泡/金属イオン複合体含有水を生成させてもよいし(
図1参照)、または金属イオン発生部で金属イオン水を生成させながら複合体形成部で気体及び金属イオン水を混合することを繰り返して(すなわち、金属イオン水の発生と気体及び金属イオン水の混合とを直列的又は並列的に繰り返して)、気泡/金属イオン複合体含有水を生成させてもよい(
図2及び3参照)。
なお、金属イオン水の生成と気体及び金属イオン水の混合を直列的に繰り返す場合、金属イオン生成部及び複合体形成部の複数個が直列的に繋がっていてもよいし、これらが一体化していてもよい(一体化している場合、金属イオン生成部及び複合体形成部のそれぞれが明確に区別できない場合も含む。)。
【0038】
気泡/金属イオン複合体含有水に含まれる気泡/金属イオン複合体は、JIS Z8836:2017「コロイド分散系-ゼータ電位の光学的測定法」に準拠して、ゼータ電位の測定により確認できる。すなわち、気体及び金属イオン水を混合して得た気泡/金属イオン複合体のゼータ電位と、気体及び水を混合して得た気泡含有水(金属イオンを含まない)のゼータ電位と比較し、これらのゼータ電位に大きな差異がある場合、気泡/金属イオン複合体が生成していると考えられる(マイナス電荷の気泡に金属イオンがくっつくことにより気泡の電荷がプラス側に変化すると考えられる。)。なお、異なる金属イオン同士を比較した場合、イオン電荷やイオン半径等がゼータ電位の測定に影響するため、比較するのは同じ金属イオン同士に限る。また、ゼータ電位の測定の際、同時に測定できる気泡数も複合体の形成を確認するのに役立つ(気泡数が少な程、複合体も少なく、気泡数が多い程複合体が多いと予測できる。)。なお、気泡/金属イオン複合体の構造は、必ずしも明らかではないが、気泡表面に金属イオンが吸着した構造、1若しくは複数の金属イオンにより複数の気泡が連結若しくは凝集した構造又はこれらの組み合わさった構造等が考えられ、気泡の大きさや、気泡及び金属イオンの濃度等によっても変化し得ると予想される。
【実施例】
【0039】
<実施例1>
木質廃パレット(南洋材)を破砕して得たチップ(最長長さ2~10cm)を、縦型炭化炉(草・木チップ連続製炭機、TYPE180kg/Hr、村井鉄工所)で炭化させた後(700~800℃、30~40分間)、目開き2.8mmの金網を通過させて、最長長さ0.1~2.8cmの炭粒子(C1)を得た。炭粒子(C1)の精練度は3であった。
炭粒子(C1)30g及び金属粒子{M1;マグネシウム、株式会社関東金属、粒度分布(メッシュ/重量%):+8/0、+10/20.4、+40/79.2、-40/0.4、谷と山との差20~1500μmの蛇腹状凹凸を持つ。}70gをプラスチック製カートリッジ(内径25mm、長さ350mmの円筒形であり、底面及び上面に内径15mmの水の出入口を有する。)に詰め、この底部の水の入口に循環ポンプの吐出口を配管し、上部の水の出口は貯水タンクへ配管した。貯水タンクには循環ポンプの吸込口への配管と水の流入口と金属イオン水の排出口を設けて、金属イオン発生部を得た。
【0040】
金属イオン発生部の金属イオン水の排出口と、気泡/金属イオン複合体含有水の排出口を持つ複合体形成部(UFBノズル組み込み高圧ポンプ:気体を細分化させる部材と高圧ポンプが一体なったもの、株式会社シバタ)の流入口とを配管して、本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置(1)を調製した。
【0041】
<実施例2>
備長炭(精錬度2)を破砕してから、目開き2.8mmの金網を通過させて、最長長さ0.1~2.8cmの炭粒子(C2)を得た。
「炭粒子(C1)30g及び金属粒子{M1;マグネシウム}70g」を「炭粒子(C2)76g及び金属粒子(M1;マグネシウム)24g」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置(2)を調製した。
【0042】
<実施例3>
「金属粒子{M1;マグネシウム}」を「金属粒子{M2;アルミニウム、アルミダライ粉、有限会社古谷商店、谷と山との差10~1500μmの蛇腹状凹凸を持つ}」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置(3)を調製した。
【0043】
<実施例4>
「炭粒子(C1)30g及び金属粒子{M1;マグネシウム}70g」を「炭粒子(C3;ヤシガラ活性炭)76g及び金属粒子{M3;亜鉛、亜鉛ダライ粉、有限会社古谷商店、谷と山との差10~500μmの蛇腹状凹凸を持つ。}24g」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置(4)を調製した。
【0044】
<実施例5>
「炭粒子(C1)30g及び金属粒子{M1;マグネシウム}70g」を「炭粒子(C2)76g及び金属粒子{M4;鉄、鉄切り子、有限会社古谷商店、谷と山との差5~100μmの蛇腹状凹凸を持つ。}24g」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置(5)を調製した。
【0045】
<比較例1>
特許文献1の実施例1において、Agプレートをマグネシウムプレートに変更したこと以外同様にして、金属イオン水生成装置(h1)を得た。
なお、「金属粒子{M1;マグネシウム}70g」を「金属粒子(銀)70g」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、金属イオン水生成装置を調製したが、銀イオンは発生しないことを確認した(銀の酸化還元電位が高いため、金属粒子及び炭粒子、水により部分電池を構成できず、電子の授受もできないので、結果として銀イオンが発生しない。)ので、上記の通り電気分解を試みた。
【0046】
<比較例2>
実施例1で調製した金属イオン発生部と同じものを用いて、この流入口と、水の流入口を持つ複合体形成部(UFBノズル組み込み高圧ポンプ、株式会社シバタ)の排出口とを配管して、比較用の金属イオン発生装置(h2)を得た(金属イオン発生部と複合体形成部との結合を実施例とは後先逆にした例:特許文献1に記載された装置の順序で構成した。)。
なお、金属イオン発生部の排出口は、気泡/金属イオン複合体含有水の排出口に相当する。
【0047】
<比較例3>
実施例4で調製した金属イオン発生部と同じものを用いて、この流入口と、水の流入口を持つ複合体形成部(UFBノズル組み込み高圧ポンプ、株式会社シバタ)の排出口とを配管して、比較用の金属イオン発生装置(h3)を得た(金属イオン発生部と複合体形成部との結合を実施例とは後先逆にした例:特許文献1に記載された装置の順序で構成した。)。
なお、金属イオン発生部の排出口は、気泡/金属イオン複合体含有水の排出口に相当する。
【0048】
<気泡/金属イオン複合体の調製>
実施例1~5で調製した気泡/金属イオン複合体の製造装置(1)~(5)を用いて、金属イオン発生部の貯水タンクに水道水5Lを注水し、これを循環ポンプでプラスチック製カートリッジ及び貯水タンク間を4L/分の流量で1時間循環させてから、金属イオン発生部の金属イオン水の排出口から金属イオン水を排出させて、複合体形成部の流入口へ流入させて、2L/分の流量で気泡/金属イオン複合体含有水の排出口から、気泡/金属イオン複合体含有水を排出させた。
また、金属イオン水を水道水に変更したこと以外、上記と同様にして気泡含有水を調製した。
【0049】
比較例1で調製した金属イオン水生成装置(h1)を用いて、特許文献1に準拠して金属イオン水を調製した。
また、電極間に電解をかけずに(電気分解をせずに)マイクロバブルを含む水を調製した。
【0050】
比較例2又は3で調製した金属イオン発生装置(h2又はh3)を用いて、水道水を2L/分で複合体形成部に流入させて、排出口から排出された気泡含有水を貯水タンクに10Lためた後、これを循環ポンプでプラスチック製カートリッジ及び貯水タンク間を4L/分の流量で1時間循環させて、気泡/金属イオン複合体含有水を調製した。
また、複合体形成部の排出口から排出された気泡含有水の一部を保存した。
【0051】
<ゼータ電位及び気泡径の測定>
ゼータ電位測定装置(Zeta View、 Particle Metrix GmbH)を用いて、気泡/金属イオン複合体含有水及び金属イオン水について、それぞれゼータ電位(1;mV)を測定し、同様に、気泡含有水及びマイクロバブルを含む水について、それぞれゼータ電位(2;mV)を測定し、それぞれ3回の測定値の平均値を下表に示した。
また、同時に、気泡/金属イオン複合体含有水、金属イオン水、気泡含有水及びマイクロバブルを含む水に含まれる気泡の個数平均粒子径(nm)及び気泡数(個)を測定し、それぞれ3回の測定値の平均値を下表に示した。
同じ金属イオン同士において、ゼータ電位(1)及びゼータ電位(2)の差が大きい程、気泡/金属イオン複合体の含有量が多いと考えられる。また、気泡数が多い程、気泡/金属イオン複合体の含有量が多いと考えられる。
【0052】
【表1】
「測定不能*」は測定中にアラームが発生し、測定不能となった(原因不明)。
【0053】
上記の通り、本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置は、比較用の金属イオン水生成装置に比べ、簡便に、効率よく、気泡/金属イオン複合体を製造できた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
金属が水に溶解する際、対イオンと共に金属イオンとして溶解するが、水酸化物イオン(OH-)がヒトや動物に対する安全性の高い対イオンであると考えられる。そして、金属の電気分解(たとえば比較例1)や本発明で使用する金属イオン発生部から生成する金属イオン水には、金属イオンと水酸化物イオン(OH-)が含まれる。しかし、金属イオンは水酸化物イオンと再結合して金属水酸化物となって沈殿する場合が多い。
一方、気泡の表面はマイナスに帯電しており、金属イオンと水酸化物イオンとが再結合する前に、気泡と金属イオンとを複合化できれば、高濃度の金属イオンを含む水を調製できる。
そして、本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置は、金属イオンと水酸化物イオンとが再結合する前に、気泡と金属イオンとを複合化でき、安定な(沈殿しがたい)気泡/金属イオン複合体を容易に調製できる。
また、本発明の気泡/金属イオン複合体の製造装置によれば、腐食性気体(たとえば水素が金属容器を脆くするような場合)であっても、腐食性気体が金属イオンと複合化する(腐食性気体が金属イオンにより覆われる)ことにより、その腐食性を低減できると期待できる。また、溶解度の低い気体(1気圧、20℃の水1cm3に溶解する気体の溶解度(cm3)として、空気0.019、酸素0.031、二酸化炭素0.88、水素0.019等)であっても、水に高濃度で保持することが期待できる。また、気体が複合体を形成しており、各種材料を透過しにくいため、保存容器の選択の幅が広がることが期待できる。
【0055】
また、気泡/金属イオン複合体の大きさが小さい程、水への安定性が高まると考えられる他に、さらに、小さな気泡(マイクロバブル)は細胞表面(皮フ等)から吸収されるという報告が多数存在する(たとえば、ファインバブル活用事例集、経済産業省九州経済産業局、2018年1月)。
このような小さな気泡/金属イオン複合体は、気泡と共に金属イオンを細胞内に容易に取り込むことができると考えられる。そうすると、ヒトや動物、植物の疲労回復、成長、疾患改善(頭皮ケア、アトピーケア等)等のために、気体と共に金属イオンを細胞表面(皮フ等)から直接吸収させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 金属イオン発生部
2 複合体形成部
3 プラスチック製カートリッジ
4 循環ポンプ
5 貯水タンク
6 水の流入口
7 金属イオン水の排出口
8 金属イオン水の流入口
9 高圧ポンプ
10 気体を細分化させる部材
11 気泡/金属イオン複合体含有水の排出口