(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/223 20060101AFI20230907BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20230907BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20230907BHJP
G01N 23/205 20180101ALI20230907BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20230907BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01N23/223
G01N23/04 340
G01N23/046
G01N23/205
G01T7/00 A
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2021104943
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 渉
(72)【発明者】
【氏名】中村 利廣
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-181754(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0076991(US,A1)
【文献】特開2021-069169(JP,A)
【文献】特表2010-526604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N、G01T
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の所与の領域に対して所定の物理量の測定を行い、該所与の領域における各位置を表す座標と関連付けて測定値を取得する測定部と、
前記測定値の統計的な代表値と散布度を算出し、前記測定値と前記代表値との相違の大きさにより、座標ごとに前記測定値を前記散布度によって区分された複数の分類のいずれかに割り当てる演算部と、
前記分類に応じた表示態様にて各座標の表示を行う表示部と、
を有し、
前記演算部は、さらに、
前記分類ごとの頻度を表すヒストグラムに2個以上のピークが含まれる場合に、前記測定対象の所与の領域のうち特定の1個のピークと対応する領域における新たな統計的な代表値を算出し、
前記測定値と前記新たな統計的な代表値との相違の大きさにより、前記特定の1個のピークと対応する領域内で、前記測定値を新たな統計的な散布度によって区分された複数の分類のいずれかに割り当てる情報処理装置。
【請求項2】
前記代表値は、前記測定値の平均値または中央値または最頻値であり、
前記散布度は、前記測定値の標準偏差または拡張不確かさまたは標準得点またはn分位である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示態様は、前記分類に応じて異なる色または濃淡で表示する表示態様である請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示態様は、前記分類に応じて異なる高さで表示する表示態様である請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の情報処理装置を含む
測定装置であって、
前記測定値は、蛍光X線分析装置またはX線CT装置またはX線回折装置または走査型電子顕微鏡または透過型電子顕のいずれかによって取得されることを特徴とする測定装置。
【請求項6】
測定対象の所与の領域に対して所定の物理量の測定を行い、該所与の領域における各位置を表す座標と関連付けて測定値を取得する測定ステップと、
前記測定値の統計的な代表値と散布度を算出し、前記測定値と前記代表値との相違の大きさにより、座標ごとに前記測定値を前
記散布度によって区分された複数の分類のいずれかに割り当てる演算ステップと、
前記分類に応じた表示態様にて各座標の表示を行う表示ステップと、
を有し、
前記演算ステップにおいて、さらに、
前記分類ごとの頻度を表すヒストグラムに2個以上のピークが含まれる場合に、前記測定対象の所与の領域のうち特定の1個のピークと対応する領域における新たな統計的な代表値を算出し、
前記測定値と前記新たな統計的な代表値との相違の大きさにより、前記特定の1個のピークと対応する領域内で、前記測定値を新たな統計的な散布度によって区分された複数の分類のいずれかに割り当てる情報処理方法。
【請求項7】
測定対象の所与の領域に対して所定の物理量の測定を行い、該所与の領域における各位置を表す座標と関連付けて測定値を取得する測定ステップと、
前記測定値の統計的な代表値と散布度を算出し、前記測定値と前記代表値との相違の大きさにより、座標ごとに前記測定値を前
記散布度によって区分された複数の分類のいずれかに割り当てる演算ステップと、
前記分類に応じた表示態様にて各座標の表示を行う表示ステップと、
を情報処理装置に実行させるプログラムであって、
前記演算ステップにおいて、さらに、
前記分類ごとの頻度を表すヒストグラムに2個以上のピークが含まれる場合に、前記測定対象の所与の領域のうち特定の1個のピークと対応する領域における新たな統計的な代表値を算出し、
前記測定値と前記新たな統計的な代表値との相違の大きさにより、前記特定の1個のピークと対応する領域内で、前記測定値を新たな統計的な散布度によって区分された複数の分類のいずれかに割り当てるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象の所与の領域に対して所定の物理量の測定を行い、測定値を視認しやすいようにマッピング表示することが行われている。例えば、レントゲン撮影といったX線イメージングでは、透過した最大のX線強度を0とし、濃淡をマッピング表示することが行われている。また、電子顕微鏡(SEM)、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)、蛍光X線分析装置などの測定装置を用いた測定値を、どの部分に集積しているか見やすくするため等の定性的な用途でマッピング表示することもある。
【0003】
具体的には、試料上の2次元領域内の多数の測定点についてそれぞれ所定の分析を行ってデータを取得することが可能な分析装置により得られたデータに基づいて、当該2次元領域の全体又はその一部の領域における信号強度値や定量値等の分布を示す画像を作成して表示する分析データ表示処理装置がある(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、試料表面上の測定領域内に電子線を照射することにより発生するX線の検出信号に基づいて画像を表示させるX線画像表示装置がある(下記特許文献2参照)。
【0005】
上記のようなマッピング表示は、測定位置に対して当該測定位置における測定値と対応する色や濃淡を割り当てることで行われる。色や濃淡を用いて表示された画像を見やすくするため、累積輝度分布を用いて画像に対する階調補正を行うこともある(下記特許文献3参照)。
【0006】
ところで、測定対象の所与の領域に対する測定は、面内の均質性を評価するために行われる場合がある。例えば、複数の特性X線強度のばらつきに関する変動係数εと標準偏差σとをもとに試料の均質性の評価を行う手法が知られている(下記特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-040520号公報
【文献】特開2018-179862号公報
【文献】特開2000-102033号公報
【文献】特開2005-201640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術においては、測定位置に対して当該測定位置における測定値と対応する色や濃淡が割り当てられていたが、例えば測定値を最大から最小をレンジとして、または、最大から0をレンジとして測定値の分類が行われていた。最大値は測定毎に変化するため、測定毎に濃淡と配色にばらつきが生まれてしまう。また、面内分布に有意差が存在するか判断が難しく、分布による定量的評価が困難である。
【0009】
また、上記特許文献4では、標準偏差σを用いて均質性が評価されているものの、測定結果を図示化し視覚的に定量評価する手段として示されていない。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、測定値に対して統計的手法を用いて色や濃淡などを割り当てることにより、視覚的に定量評価を行うことができる情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面に係る情報処理装置は、測定対象の所与の領域に対して所定の物理量の測定を行い、該所与の領域における各位置を表す座標と関連付けて測定値を取得する測定部と、前記測定値の統計的な代表値と散布度を算出し、前記測定値と前記代表値との相違の大きさにより、座標ごとに前記測定値を前記散布度に基づいた複数の分類のいずれかに割り当てる演算部と、前記分類に応じた表示態様にて各座標の表示を行う表示部と、を有する。
【0012】
本発明の別の一側面に係る情報処理装置において、前記代表値は、前記測定値の平均値または中央値または最頻値であり、前記散布度は、前記測定値の標準偏差または拡張不確かさまたは標準得点またはn分位である。
【0013】
本発明の別の一側面に係る情報処理装置において、前記演算部は、さらに、前記分類ごとの頻度を表すヒストグラムに2個以上のピークが含まれる場合に、前記測定対象の所与の領域のうち特定の1個のピークと対応する領域における新たな統計的な代表値を算出し、前記測定値と前記新たな統計的な代表値との相違の大きさにより、前記特定の1個のピークと対応する領域内で、前記測定値を新たな統計的な散布度に基づいた複数の分類のいずれかに割り当てる。
【0014】
本発明の別の一側面に係る情報処理装置において、前記表示態様は、前記分類に応じて異なる色または濃淡で表示する表示態様である。
【0015】
本発明の別の一側面に係る情報処理装置において、前記表示態様は、前記分類に応じて異なる高さで表示する表示態様である。
【0016】
本発明の一側面に係る蛍光X線分析装置またはX線CT装置またはX線回折装置または走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡は、上記のいずれかの情報処理装置を含む。
【0017】
本発明の一側面に係る情報処理方法は、測定対象の所与の領域に対して所定の物理量の測定を行い、該所与の領域における各位置を表す座標と関連付けて測定値を取得する測定ステップと、前記測定値の統計的な代表値と散布度を算出し、前記測定値と前記代表値との相違の大きさにより、座標ごとに前記測定値を前期散布度に基づいた複数の分類のいずれかに割り当てる演算ステップと、前記分類に応じた表示態様にて各座標の表示を行う表示ステップと、を有する。
【0018】
本発明の一側面に係る情報処理装置で実行されるプログラムは、測定対象の所与の領域に対して所定の物理量の測定を行い、該所与の領域における各位置を表す座標と関連付けて測定値を取得する測定ステップと、前記測定値の統計的な代表値と散布度を算出し、前記測定値と前記代表値との相違の大きさにより、座標ごとに前記測定値を前期散布度に基づいた複数の分類のいずれかに割り当てる演算ステップと、前記分類に応じた表示態様にて各座標の表示を行う表示ステップと、を前記情報処理装置に実行させる。
【発明の効果】
【0019】
測定値に対して統計的手法を用いて色や濃淡などを割り当てることにより、視覚的に定量評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置の一例の概略を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る測定部の一例の概略を示す図である。
【
図3】情報処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】標準偏差を用いた分類結果をカラー表示した一例である。
【
図5】
図4に対する比較例をカラー表示した一例を示す図である。
【
図6】
図4に対する比較例をカラー表示した他の一例を示す図である。
【
図7】Alの測定値のヒストグラムを示す図である。
【
図8】Mnの測定値のヒストグラムを示す図である。
【
図9】八分位数を用いた分類結果をカラー表示した一例である。
【
図10】標準偏差を用いた分類結果をグレースケール表示した一例である。
【
図11】
図10に対する比較例をグレースケール表示した一例を示す図である。
【
図12】
図10に対する比較例をグレースケール表示した他の一例を示す図である。
【
図13】八分位数を用いた分類結果をグレースケール表示した一例である。
【
図14】標準偏差を用いた分類結果と比較例を3次元マップ表示した一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
図1は、情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図1に示す例では、情報処理装置100は、一般的なコンピュータと測定部102とを含む。当該コンピュータは、入出力部104と、演算部106と、記憶部108と、表示部110と、データバス112とを含む。
【0022】
入出力部104は、例えば、ネットワークアダプタ、USBポート、光ディスクドライブなどであって、測定部102との間でデータの送受信を行うインタフェースである。演算部106は、例えばCPU(Central Processing Unit)であって、各種演算を行う。記憶部108は、例えばRAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive)であって、演算部106が行う演算に用いるパラメータや測定部102が測定した測定値等を記憶する。表示部110は、フラットパネルディスプレイ(例えば、液晶モニター)などの表示デバイスであって、画像を表示する。入出力部104、演算部106、記憶部108及び表示部110はデータバス112により相互に電気信号のやり取りができるよう接続されている。なお、ここで示したコンピュータのハードウェア構成は一例であり、これ以外の構成のものであってもよい。また、演算部106及び表示部110の詳細については後述する。
【0023】
本開示に係る測定ステップ、演算ステップ、及び表示ステップを情報処理装置100に実行させるプログラムは、HDDに記憶され、必要に応じてRAMに読みだされてCPUにより実行される。当該プログラムは、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等のコンピュータが読み込むことができる情報記録媒体に記録されて提供されても、入出力部104を介して外部のインターネット等の情報通信回線を介して提供されてもよい。
【0024】
測定部102は、測定対象の所与の領域に対して所定の物理量の測定を行い、該所与の領域における各位置を表す座標と関連付けて測定値を取得する。具体的には一例として、測定部102が測定対象に1次X線を照射し、出射される2次X線の強度に基づいて、測定対象に含まれる元素の分析を行う蛍光X線分析装置である場合について説明する。
【0025】
図2は、蛍光X線分析装置の概略を示す図である。
図2に示すように、蛍光X線分析装置は、試料台202と、X線源204と、コリメータ208と、検出器210と、を含む。試料台202は、x-yステージであり、測定対象である試料212が配置される。X線源204で発生した1次X線は、コリメータ208で絞られ、測定対象である試料212の表面に照射される。コリメータ208は、1次X線を集光するポリキャピラリーでもよい。この際、試料台202の移動により、1次X線は、測定対象である試料212の所与の領域に対して照射される。1次X線が照射された所与の領域から、蛍光X線が出射される。検出器210は、蛍光X線が入射する位置に配置される。蛍光X線分析装置は、検出器210に入射した蛍光X線のエネルギーと強度に基づいて、該所与の領域における各位置を表す座標と関連付けて試料212に含まれる元素の種類と含有率を測定値として取得する。
【0026】
なお、測定部102は、測定対象の所与の領域に対して所定の物理量の測定を行うことができれば、X線CT装置、X線回折装置、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡など他の測定装置であってもよい。また、所定の物理量は、測定対象の所与の領域における各位置を表す座標と関連付けて測定される物理量であればよく、元素の種類と含有率に限られない。物理量は、例えば、元素の密度、測定対象から発生する二次電子の強度、測定対象の表面高さ等であってもよい。
【0027】
続いて、本開示に係る代表値の算出、分類の割り当て及び当該分類に応じた表示を行う方法について説明する。
図3は、当該方法を示すフローチャートである。まず、測定部102は、測定値を取得する(S302)。具体的には、例えば、蛍光X線分析装置である測定部102は、Al,Si,Mn,Znを含む測定対象に対して、少なくとも一辺が3.1cmの正方形状の領域に1次X線を照射する。そして、測定部102は、当該正方形状の領域から出射される蛍光X線のエネルギー及び強度に基づいて、Al,Si,Mn,Znの含有率を取得する。この時、測定部102は、Al,Si,Mn,Znの各元素について、それぞれ正方形状の領域における座標ごとに各元素の含有率を取得する。ここで、座標は、一辺が3.1cmの正方形状の領域における位置を表す情報であって、正方形状の領域の一辺と対応するx座標と、該一辺と直交するy座標で表される。例えば、コリメータ208の照射径を0.1cmとし、試料台212をx軸方向及びy軸方向に0.1cmごとに駆動させると、1辺が3.1cmの正方形状の領域に1次X線が照射される。この場合、当該正方形状の領域には961個の座標が含まれる。従って、測定部102は、一辺が3.1cmの正方形状の領域からAl,Si,Mn,Znの含有率を961個ずつ取得する。なお、蛍光X線のエネルギー及び強度から各元素の含有率を取得する方法は、公知の技術を用いて行われる。
【0028】
次に、演算部106は、測定値の統計的な代表値と散布度を算出する(S304)。具体的には、例えば、演算部106は、測定値の平均値を統計的な代表値として算出し、測定値の標準偏差を散布度として算出する。上記例では、演算部106は、961個取得されたAlの含有率の平均値を代表値として算出し、測定値の標準偏差を散布度として算出する。演算部106は、Si,Mn,Znについても同様に、961個の含有率の平均値を代表値として算出し、測定値の標準偏差を散布度として算出する。
【0029】
また、演算部106は、測定値の中央値や最頻値を統計的な代表値として算出してもよい。上記例では、演算部106は、961個取得されたAlの含有率の中央値や最頻値を算出してもよい。演算部106は、Si,Mn,Znについても同様に、961個の含有率の中央値や最頻値を算出してもよい。また、演算部106は、測定値の拡張不確かさまたは標準得点またはn分位(nは整数)を散布度として算出してもよい。当該実施形態については後述する。
【0030】
次に、演算部106は、測定値と代表値との相違の大きさにより、座標ごとに測定値を散布度に基づいた複数の分類のいずれかに割り当てる(S306)。例えば、演算部106は、測定値と平均値との相違の大きさにより、各座標の測定値を標準偏差によって区分された分類のいずれかに割り当てる。具体的には、演算部106は、座標ごとに該座標の測定値を標準偏差σに基づいた8個の分類(以下第1分類乃至第8分類と呼称する)のいずれかに割り当てる。例えば、第1分類は、-3σ未満である。第2分類は、-3σ以上-2σ未満である。第3分類は、-2σ以上-σ未満である。第4分類は、-σ以上0未満である。第5分類は、0以上σ未満である。第6分類は、σ以上2σ未満である。第7分類は、2σ以上3σ未満である。第8分類は、3σ以上である。
【0031】
次に、表示部110は、分類に応じた表示態様にて各座標の表示を行う(S308)。具体的には、表示部110は、S306で割り当てられた分類に応じて、各座標を異なる色で表示する。例えば、表示部110は、第1分類に割り当てられた座標を黒で表示する。表示部110は、第2分類に割り当てられた座標を紫で表示する。表示部110は、第3分類に割り当てられた座標を青で表示する。表示部110は、第4分類に割り当てられた座標を水色で表示する。表示部110は、第5分類に割り当てられた座標を黄緑で表示する。表示部110は、第6分類に割り当てられた座標を緑で表示する。表示部110は、第7分類に割り当てられた座標を橙で表示する。表示部110は、第8分類に割り当てられた座標を赤で表示する。
図4は、測定部102が上記4個の元素について、それぞれ3.1cmの正方形状の領域における座標ごとに各元素の含有率(質量パーセント濃度)を取得した場合において、各座標に割り当てられた分類に応じて、各座標を異なる色で表示した図(Al:
図4左上,Si:
図4右上,Mn:
図4左下,Zn:
図4右下)である。各座標のx軸方向及びy軸方向の間隔は、それぞれ0.1cmである。
【0032】
図5及び
図6は、
図4の比較例であって、従来技術を用いて表示した図である。
図5は、測定値の0値から最大値までを等間隔に8個の領域(第1分類から第8分類)に区分し、各座標の測定値をそれぞれ該当する第1分類から第8分類のいずれかに分類し、各分類に応じて異なる色で表示した図である。
図6は、最小値から測定値の最大値までを等間隔に8個の領域(第1分類から第8分類)に区分し、各座標の測定値をそれぞれ該当する第1分類から第8分類のいずれかに分類し、各分類に応じて異なる色で表示した図である。
【0033】
図4のAlの測定結果は、測定領域の全域にわたって、水色(第4分類)または緑色(第5分類)で表示されている。また、微小な領域において黒色(第1分類)で表示されている。従って、当該図を一見するだけで、Alの測定値が測定領域の全域にわたって平均値に近い値であり、かつ測定値の面内ばらつきが小さいことが分かる。また、平均値±3σの範囲外の測定値を異常と判定する場合、黒色(第1分類)で表示された微小な領域において異常値が現れていることがわかる。一方、
図5のAlの測定結果は、測定領域の全域にわたって、赤色(第8分類)で表示されている。当該図を一見しただけでは、測定領域における測定値のばらつきが小さいように見えるものの、赤色で表示される測定値の範囲が大きいため、実際にばらつきが大きいのか把握しづらい。また、
図6のAlの測定結果は、測定領域の全域にわたって、水色(第4分類)または緑色(第5分類)で表示され、一部青色(第3分類)で表示されている。当該図を一見すると、測定値の面内ばらつきが小さいことは予測できるものの、測定領域全域にわたって異常値が含まれているかは把握することができない。
【0034】
図7は、Alの測定値のヒストグラムを示す図である。
図7に示すように、Alの測定値は、およそ正規分布しており、一部の測定値が-3σ未満である第1分類に含まれることが分かる。従って、平均値±3σの範囲外の測定値を異常と判定する場合、
図4に示す表示方法であれば全ての測定値の中に異常値が含まれていることを容易に把握することができる。一方、
図7に示すように、測定値の最小値から測定値の最大値までを等間隔に8個の領域(第1分類から第8分類)に区分した場合、-3σ未満に該当する座標が黒色で表示されていたとしても、当該座標の測定値が異常値に該当するか否かは判断することができない。
【0035】
図4のSi及びZnの測定結果は、測定領域の大半の全域において、青色(第3分類)、水色(第4分類)、黄緑(第5分類)及び緑色(第6分類)で表示されているが、一部の領域は黒色(第1分類)及び赤色(第8分類)で表示されている。従って、当該図を一見するだけで、黒色及び赤色で表示された領域において異常な測定値が取得されたことが分かる。一方、
図5のSiの測定結果は、測定領域の全域にわたって、青色(第3分類)または水色(第4分類)で表示されている。
図5のZnの測定結果は、測定領域の全域にわたって、橙色(第7分類)で表示されている。
図6のSi及びZnの測定結果は、測定領域の全域にわたって、青色(第3分類)または水色(第4分類)で表示されている。従って、
図5及び
図6のSi及びZnの測定結果を一見しても、異常な測定値が含まれているか把握することができない。
【0036】
図4のMnの測定結果は、中央付近の領域において、赤色(第8分類)で表示され、周辺領域において、黒色(第1分類)で表示されている。当該図を一見するだけで、Mnの含有率の高い領域(測定領域の中央付近)と、Mnの含有率の低い領域(測定領域の周辺領域)と、の2つの領域が存在していることが分かる。このような結果が得られた場合、黒色(第1分類)で表示された領域と赤色(第8分類)で表示された領域の測定値は、いずれも異常値というわけではなく、各領域において個別に再評価が必要であることがわかる。一方、
図5のMnの測定結果は、中央に近いほど、水色(第4分類)及び黄緑(第5分類)で表示された領域が多く、外側に近いほど青色(第3分類)で表示された領域が多い。また、
図6のMnの測定結果は、中央に近いほど、青色(第3分類)及び水色(第4分類)で表示された領域が多く、外側に近いほど紫(第2分類)で表示された領域が多い。従って、
図5及び
図6のMnの測定結果を一見すると、中央に近いほどMnの含有率が高く外側に近いほどMnの含有率が低いことが分かるものの、Mnの含有率が高い領域と低い領域の2つの領域が存在していることは把握できない。
【0037】
図8は、Mnの測定値のヒストグラムを示す図である。
図8に示すように、測定値が-3σ未満に該当する領域と、測定値が3σ以上に該当する領域と、が明確に分離していることがわかる。このような場合、ユーザは、再評価を行ってもよい。例えば、演算部106は、分類ごとの頻度を表すヒストグラムに2個以上のピークが含まれる場合に、測定対象の所与の領域のうち特定の1個のピークと対応する領域における新たな統計的な代表値を算出してもよい。具体的には、ユーザは、
図4のMnの測定結果が表示された画面上で、黒色(第1分類)で表示された領域を選択してもよい。例えば、ユーザはマウスを操作することでMnの測定結果が表示された画面上で再評価を所望する領域を選択してもよいし、キーボード等に入力することで再評価を所望する座標を入力してもよい。例えばユーザが黒色(第1分類)で表示された領域において1.1cm角の矩形の領域を指定した場合、演算部106は、当該領域に含まれる121個の測定値について、新たな平均値を算出する。当該新たな平均値は、S304で算出された値とは異なる。さらに、演算部106は、測定値と新たな統計的な代表値との相違の大きさにより、上記特定の1個のピークと対応する領域内で、測定値を新たな統計的な散布度に基づいた複数の分類のいずれかに割り当ててもよい。具体的には、当該1.1cm角の矩形の領域において、S306と同様の割り当てを行う。さらに、当該割り当てられた分類に基づいて、S308と同様の表示を行うことにより、Mnの含有率の低い領域において、異常値が含まれるか否かを容易に判断することができる。同様に、ユーザが赤色(第8分類)で表示された領域を選択することにより、Mnの含有率の高い領域において、異常値が含まれるか否かを容易に判断することができる。
【0038】
以上のように、全測定値から代表値を算出し、各測定値と代表値との相違の大きさにより、座標ごとに測定値を複数の分類のいずれかに割り当て、各座標を色分けして表示することによって、測定領域に含まれる異常値を容易に発見することができる。
【0039】
なお、代表値と散布度の算出及び座標の分類を行う方法は上記に限られない。例えば、S304において、代表値は、測定値の中央値または最頻値であってもよい。また、散布度は、測定値の標準偏差または拡張不確かさまたは標準得点またはn分位であってもよい。具体的には、例えば、S302において上記と同様の測定値が取得されたものとして説明する。
【0040】
S304において、演算部106は、961個取得されたAlの含有率の中央値を算出する。演算部106は、Si,Mn,Znについても同様に、961個の含有率の中央値を算出する。
【0041】
さらに、S306において、演算部106は、例えば、数1を用いて各測定値を分類する。
(数1)
中央値±4NIQR
【0042】
すなわち、演算部106は、座標ごとに該座標の測定値を8個の分類のいずれかに割り当てる。第1分類は、12.5%未満(第1八分位数未満)である。第2分類は、12.5%以上25.0%未満(第1八分位数以上第2八分位数未満)である。第3分類は、25.0%以上37.5%未満(第2八分位数以上第3八分位数未満)である。第4分類は、37.5%以上50.0%未満(第3八分位数以上第4八分位数未満)である。第5分類は、50.0%以上62.5%未満(第4八分位数以上第5八分位数未満)である。第6分類は、62.5%以上75.0%未満(第5八分位数以上第6八分位数未満)である。第7分類は、75.0%以上87.5%未満(第6八分位数以上第7八分位数未満)である。第8分類は、87.5%以上(第7八分位数以上)である。
【0043】
図9は、
図4乃至
図6に示した測定結果を、上記方法によって各座標に割り当てた分類を表す図(Al:
図9左上,Si:
図9右上,Mn:
図9左下,Zn:
図9右下)である。上記方法によれば
図9に示すように、測定領域の中で、測定値が低い領域と高い領域とを一見して把握することができる。本方法によれば、データの偏りに依存しにくくロバストネスな表示結果を得ることが出来る。
【0044】
また、散布度が拡張不確かさである場合、座標ごとに該座標の測定値を95%信頼区間に含まれるか否かのいずれかに割り当ててもよい。例えば、測定値が95%信頼区間に含まれる場合に当該測定値の座標を第1分類に割り当て、測定値が95%信頼区間に含まれない場合に当該測定値の座標を第2分類に割り当ててもよい。
【0045】
また、散布度が標準得点(例えば、zスコア)である場合、座標ごとに該座標の測定値をzスコアの値に応じた分類に割り当ててもよい。具体的には、第1分類は、-3未満である。第2分類は、―3以上―2未満である。第3分類は、―2以上―1未満である。第4分類は、―1以上0未満である。第5分類は、0以上1未満である。第6分類は、1以上2未満である。第7分類は、2以上3未満である。第8分類は、3以上である。
【0046】
また、表示態様は、分類に応じて異なる色で表示する態様に限られない。例えば、表示部110は、割り当てられた分類に応じて、各座標をグレースケールで表示してもよい。具体的には、表示部110は、第1分類に割り当てられた座標を0階調で表示する。表示部110は、第2分類に割り当てられた座標を36階調で表示する。表示部110は、第3分類に割り当てられた座標を72階調で表示する。表示部110は、第4分類に割り当てられた座標を108階調で表示する。表示部110は、第5分類に割り当てられた座標を144階調で表示する。表示部110は、第6分類に割り当てられた座標を180階調で表示する。表示部110は、第7分類に割り当てられた座標を216階調で表示する。表示部110は、第8分類に割り当てられた座標を255階調で表示する。
図10乃至
図13は、
図4乃至
図7をグレースケール表示した図である。グレースケール表示を行った場合でも、上記と同様、測定領域に異常値が含まれるか否かを容易に判断することができる。また、表示された画像を保存する際に、画像のデータサイズを小さくすることができる。
【0047】
また、例えば、表示部110は、割り当てられた分類に応じて、各座標を異なる高さで表示してもよい。具体的には、例えば、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、表示部110は、第1分類の高さが最も高く、第8分類の高さが最も低くなるように、各座標を3次元マップ表示してもよい。なお、
図14(a)は、
図4のAlの測定結果を3次元マップで表示した図であり、
図14(b)は、
図5のAlの測定結果を3次元マップで表示した図である。上記と同様、比較例である
図14(b)と異なり、
図14(a)を一見しただけで測定領域に異常値が含まれるか否かを容易に判断することができる。
【0048】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上記蛍光X線分析装置200の構成は一例であって、これに限定されるものではない。上記の実施例で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成する構成で置き換えてもよい。例えば、上記においては、演算部106によって算出される代表値が1個である場合について説明したが、複数の値(例えば第n八分位数に対応する値)であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
100 情報処理装置、102 測定部、104 入出力部、106 演算部、108 記憶部、110 表示部、112 データバス、202 試料台、204 X線源、208 コリメータ、210 検出器、212 試料。