(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】連続炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/10 20060101AFI20230907BHJP
F27D 15/00 20060101ALI20230907BHJP
F27B 9/38 20060101ALI20230907BHJP
F27B 9/39 20060101ALI20230907BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20230907BHJP
B09B 3/40 20220101ALN20230907BHJP
B09B 101/75 20220101ALN20230907BHJP
【FI】
F27B9/10
F27D15/00 Z
F27B9/38
F27B9/39
F27D7/06 B
B09B3/40
B09B101:75
(21)【出願番号】P 2022081896
(22)【出願日】2022-05-18
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】522198760
【氏名又は名称】株式会社Feel
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】赤田 衆
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3174130(JP,U)
【文献】特開2008-115414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/00- 9/40
F27D 3/00-15/02
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を加熱する連続炉であって、
前記対象物を搬送しながら加熱する加熱部と、
前記対象物を前記加熱部に投入する投入部と、
前記加熱部によって加熱された前記対象物を排出する排出部と、を備え、
前記投入部は、水中の前記対象物を前記加熱部へ搬入する搬入装置を含み、
前記排出部は、前記加熱部によって加熱された前記対象物を水中へ投下させる投下部を含む
、連続炉。
【請求項2】
前記排出部は、前記投下部によって水中へ投下された前記対象物を水中から搬出する搬出装置を含む、請求項
1に記載の連続炉。
【請求項3】
前記加熱部の内部の空間と前記搬入装置の内部の空間とが繋がっている、請求項1に記載の連続炉。
【請求項4】
前記搬入装置の内部の空間と前記投下部の内部の空間とが繋がっている、請求項
1に記載の連続炉。
【請求項5】
対象物を加熱する連続炉であって、
前記対象物を搬送しながら加熱する加熱部と、
前記対象物を前記加熱部に投入する投入部と、
前記加熱部によって加熱された前記対象物を排出する排出部と、を備え、
前記投入部は、水中の前記対象物を前記加熱部へ搬入する搬入装置を含み、
前記加熱部に過熱水蒸気を導入する過熱器を備える
、連続炉。
【請求項6】
対象物を加熱する連続炉であって、
前記対象物を搬送しながら加熱する加熱部と、
前記対象物を前記加熱部に投入する投入部と、
前記加熱部によって加熱された前記対象物を排出する排出部と、を備え、
前記投入部は、水中の前記対象物を前記加熱部へ搬入する搬入装置を含み、
前記対象物から生じた溶融物を収容する第1タンクを備える
、連続炉。
【請求項7】
対象物を加熱する連続炉であって、
前記対象物を搬送しながら加熱する加熱部と、
前記対象物を前記加熱部に投入する投入部と、
前記加熱部によって加熱された前記対象物を排出する排出部と、を備え、
前記投入部は、水中の前記対象物を前記加熱部へ搬入する搬入装置を含み、
前記対象物から生じたガスを収容する第2タンクを備える
、連続炉。
【請求項8】
対象物を加熱する連続炉であって、
前記対象物を搬送しながら加熱する加熱部と、
前記対象物を前記加熱部に投入する投入部と、
前記加熱部によって加熱された前記対象物を排出する排出部と、を備え、
前記投入部は、水中の前記対象物を前記加熱部へ搬入する搬入装置を含み、
前記搬入装置の内部に位置する水面の位置が、前記搬入装置の周囲に位置する水面の位置よりも低い
、連続炉。
【請求項9】
前記投下部の内部に位置する水面の位置が、前記投下部の周囲に位置する水面の位置よりも低い、請求項
1に記載の連続炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物などの対象物を加熱する連続炉に関する。本発明は特に、金属及び樹脂を含む廃棄物を加熱することにより、廃棄物に含まれる樹脂を溶融させて回収する連続炉に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物に含まれる樹脂を溶融させて回収する装置は、油化装置とも呼ばれる。様々な方式の油化装置が提案されている。例えば、樹脂を溶融させて回収するだけでなく、残った有機物を炭化させる複合油化装置が提案されている。また、油化装置の大型化への要求に応えるため、連続炉を用いた油化装置も提案されている。連続炉は、廃棄物などの対象物を炉の内部で移動させながら連続的に対象物を加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油化装置の大型化や複合化が進むと、内部の雰囲気の制御の難易度が高くなる。この点を考慮し、可動のシャッターや蓋などを用いて内部を複数の空間に区画することが提案されている。しかしながら、機械的に可動する構成要素が増えるほど、熱変形に起因する故障、人為的ミスに起因する事故のリスクなどが高くなる。このようなリスクは、装置が大型になるほど、また装置の内部の温度が高くなるほど、高くなる。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、高い安全性を実現できる連続炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対象物を加熱する連続炉であって、
前記対象物を搬送しながら加熱する加熱部と、
前記対象物を前記加熱部に投入する投入部と、
前記加熱部によって加熱された前記対象物を排出する排出部と、を備え、
前記投入部は、水中の前記対象物を前記加熱部へ搬入する搬入装置を含む、連続炉である。
【0007】
本発明による連続炉において、前記排出部は、前記加熱部によって加熱された前記対象物を水中へ投下させる投下部を含んでいてもよい。
【0008】
本発明による連続炉において、前記排出部は、前記投下部によって水中へ投下された前記対象物を水中から搬出する搬出装置を含んでいてもよい。
【0009】
本発明による連続炉において、前記加熱部の内部の空間と前記搬入装置の内部の空間とが繋がっていてもよい。
【0010】
本発明による連続炉において、前記搬入装置の内部の空間と前記投下部の内部の空間とが繋がっていてもよい。
【0011】
本発明による連続炉は、前記加熱部に過熱水蒸気を導入する過熱器を備えていてもよい。
【0012】
本発明による連続炉は、前記対象物から生じた溶融物を収容する第1タンクを備えていてもよい。
【0013】
本発明による連続炉は、前記対象物から生じたガスを収容する第2タンクを備えていてもよい。
【0014】
本発明による連続炉において、前記搬入装置の内部に位置する水面の位置が、前記搬入装置の周囲に位置する水面の位置よりも低くてもよい。
【0015】
本発明による連続炉において、前記投下部の内部に位置する水面の位置が、前記投下部の周囲に位置する水面の位置よりも低くてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、連続炉の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る連続炉について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。図面の寸法比率は、説明の都合上、実際の比率とは異なる場合がある。また、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0019】
連続炉
図1は、連続炉1の一例を示す図である。連続炉1は、廃棄物などの対象物を加熱する。対象物は、樹脂などの有機物を含む。対象物は、有機物に加えて金属を含んでいてもよい。廃棄物などの対象物は、連続炉1によって加熱処理されることにより、有機物と金属とに分離されて回収され得る。有機物は、さらに、溶融樹脂と炭化物とに分離されて回収されてもよい。
【0020】
連続炉1は、加熱部10、投入部20及び排出部30を少なくとも備える。連続炉1は、過熱器40、第1タンク50、第2タンク60などを更に備えていてもよい。
【0021】
(加熱部)
加熱部10は、対象物を搬送しながら加熱する。加熱部10は、筒状の炉壁11と、炉壁11の内部に位置する搬送装置12と、を含む。搬送装置12は、対象物を加熱部10の上流側(
図1における右側)から下流側(
図1における左側)へ搬送する。搬送装置12は、例えば、軸13と、軸13に螺旋状に取り付けられた羽根14と、を含む。軸13が回転することにより、矢印A3で示すように、対象物が下流側へ搬送される。
【0022】
炉壁11の下面は、下流側から上流側に向かうにつれて下方へ変位するよう傾いていてもよい。これにより、対象物から生じた溶融樹脂が炉壁11の下面に沿って下流側から上流側へ流れることができる。水平面に対する炉壁11の下面の傾斜角度は、例えば5度以上10度以下である。
【0023】
炉壁11は、セラミックによって構成されていてもよい。これにより、炉壁11の耐食性を高めることができる。また、後述するように電磁誘導を利用する場合に、炉壁11を効率よく加熱できる。
【0024】
(投入部)
投入部20は、対象物を加熱部10に投入する。投入部20は、水5の中を通った対象物を加熱部10へ搬入するよう構成されている。例えば、矢印A1で示すように、大気中にある対象物は、第1貯水槽3に貯えられた水5の中に第1水面S1から投入される。投入部20は、水中の対象物を加熱部10へ搬入する搬入装置21を含む。搬入装置21は、炉壁11の上流部分に接続された導入パイプ22と、導入パイプ22の内部に位置する軸23及び羽根24と、を含む。導入パイプ22は、炉壁11から水5に向かって下方へ延びている。水5は導入パイプ22の内部にも浸入しており、導入パイプ22の内部に第2水面H2が位置している。
【0025】
軸23が回転することにより、矢印A2で示すように、水5の中の対象物が軸23に沿って上方へ搬送されて第2水面H2から取り出され、炉壁11の内部に搬入される。第2水面H2は、加熱部10の内部の雰囲気に接している。
【0026】
複数の対象物の隙間に存在していた空気の大半は、水5の中で泡となって大気に戻る。このため、空気が加熱部10の内部に入ることを抑制できる。
【0027】
水5を利用することにより、加熱部10の内部の雰囲気を大気から遮断できる。このため、加熱部10の内部の雰囲気における酸素の濃度を低減できる。これにより、対象物に含まれる有機物が分解して燃焼や爆発が生じることを抑制できる。
【0028】
加熱部10の内部の雰囲気が水5によって大気から遮断されているので、搬入装置21の内部の空間を、加熱部10の内部の空間と繋げることができる。例えば、搬入装置21と加熱部10との間に、可動のシャッターや蓋などの、機械的に可動する構成要素を設置する必要がない。このため、機械的に可動する構成要素の固着、詰まり、変形などに起因する故障や事故が生じることを抑制できる。
【0029】
(排出部)
排出部30は、加熱部10によって加熱された対象物を連続炉1から排出する。例えば、排出部30は、矢印A4で示すように、加熱部10によって加熱された対象物を、第2貯水槽4に貯えられた水5の中へ投下させる投下部31を含む。投下部31は、例えば、炉壁11の下流部分に接続されたパイプを含む。パイプは、炉壁11から水5に向かって下方へ延びている。第2貯水槽4と上述の第1貯水槽3とは、繋がっていてもよい。水5は投下部31の内部に浸入していてもよい。この場合、投下部31の内部に第3水面H3が位置している。
【0030】
また、排出部30は、投下部31によって水5の中へ投下された対象物を水5の中から搬出する搬出装置32を含む。搬出装置32は、水5の中から上方へ延びる排出パイプ33と、排出パイプ33の内部に位置する軸34及び羽根35と、を含む。排出パイプ33の上端は、第4水面H4よりも上方に位置している。軸34が回転することにより、矢印A5で示すように、水5の中の対象物が軸34に沿って上方へ搬送されて第4水面H4から取り出され、連続炉1の外部に排出される。第4水面H4は、大気に接している。
【0031】
投下部31の内部の空間は、搬入装置21の内部の空間と繋がっていてもよい。例えば、搬入装置21と投下部31との間に、可動のシャッターや蓋などの、機械的に可動する構成要素が存在していなくてもよい。これにより、機械的に可動する構成要素の固着、詰まり、変形などに起因する故障や事故が生じることを抑制できる。
【0032】
(過熱器)
過熱器40は、加熱部10に過熱水蒸気を導入する。過熱器40によって生成された過熱水蒸気は、炉壁11の下流部分に接続された吸気管41を介して炉壁11の内部に導入される。過熱水蒸気は、矢印Bで示すように、加熱部10の内部で下流側から上流側へ流れる。過熱水蒸気が流れる向きは、対象物が搬送される向きの反対である。過熱水蒸気を用いることにより、対象物を迅速に加熱できる。
【0033】
(第1タンク)
第1タンク50は、対象物から生じた溶融物を収容する。第1タンク50は、第1接続管51を介して加熱部10に接続されている。第1接続管51は、上流側に位置する炉壁11の下面に接続されている。加熱部10において対象物から生じた溶融樹脂が、第1接続管51を介して第1タンク50へ流れ込む。
【0034】
(第2タンク)
第2タンク60は、対象物から生じたガスを収容する。第2タンク60は、第1出口62を介して加熱部10に接続されている。第1出口62は、上流側に位置する炉壁11の上面に接続されている。加熱部10において対象物から生じたガスが、第2接続管61を介して第2タンク60へ流れ込む。
【0035】
第2タンク60は、ガス分解部を含んでいてもよい。ガス分解部は、熱として利用され得るガスの成分を抽出する。熱として利用され得るガスの成分は、第1出口62から排出される。その他の成分は、第2出口63から排出される。
【0036】
処理方法
連続炉1を用いて廃棄物などの対象物を加熱処理する方法を説明する。
【0037】
対象物は、矢印A1で示すように、大気に接する第1水面H1から水5の中に投入される。水5の中の対象物は、矢印A2で示すように、投入部20によって水5の中から取り出され、第2水面H1を通って加熱部10に投入される。
【0038】
図2は、加熱部10を示す図である。加熱部10に投入された対象物は、矢印A3で示すように、搬送装置12によって上流側から下流側へ搬送される。加熱部10の内部には、矢印Bで示すように、過熱水蒸気が下流側から上流側へ流れている。対象物は、上流側から下流側へ搬送されている間に、過熱水蒸気によって加熱される。過熱器40から加熱部10に導入される過熱水蒸気の温度は、例えば500℃以上800℃以下である。
【0039】
炉壁11から投下部31へ落下する直前の対象物に向けて過熱水蒸気が噴射されるよう、連続炉1が構成されていてもよい。例えば、吸気管41は、投下部31よりも下流側の位置で炉壁11に接続されていてもよい。
【0040】
上流側から下流側へ搬送されている対象物の温度が、対象物に含まれる樹脂の融点よりも高くなると、矢印C1で示すように、樹脂が溶融して対象物から分離される。加熱部10のうち対象物中の樹脂の溶融が生じる区間のことを、溶融区間とも称し、符号R2で表す。溶融区間R2における加熱部10の雰囲気の温度は、例えば200℃以上350℃以下である。搬送装置12の軸13の端部は、溶融区間R2に位置していてもよい。
【0041】
溶融区間R2における加熱部10の内部空間の高さK1は、可能な限り小さいことが好ましい。例えば、高さK1が、搬送装置12の羽根14の直径K2の2倍以下であることが好ましい。これにより、加熱部10の内部において対象物の間の隙間を流れる過熱水蒸気の流速を高めることができる。流速が高いほど、炉壁11の下面と上面との間の温度差が低減される。このため、加熱部10の雰囲気温度を精度よく調整できる。また、調整に要する時間を低減できる。
【0042】
溶融区間R2の上流側に位置する加熱部10の区間のことを、予熱区間とも称し、符号R1で表す。予熱区間R1における加熱部10の雰囲気の温度は、例えば200℃以下である。上述の第1接続管51及び第2接続管61は、予熱区間R1において炉壁11に接続されている。
【0043】
溶融区間R2の下流側に位置する加熱部10の区間のことを、ガス化区間とも称し、符号R3で表す。ガス化区間R3における加熱部10の雰囲気の温度は、例えば350℃以上である。上述の吸気管41は、ガス化区間R3において炉壁11に接続されている。
【0044】
溶融した樹脂は、矢印C2で示すように、炉壁11の下面に沿って上流側へ流れる。その後、溶融した樹脂は、第1接続管51を介して第1タンク50へ流れ込む。加熱部10は、予熱区間R1に位置する炉壁11の温度を制御する温度制御器15を含んでいてもよい。温度制御器15は、例えば、予熱区間R1において炉壁11の外面又は内部に設けられた熱媒体を含む。熱媒体は、例えば電磁誘導によって炉壁11を加熱する。これにより、溶融区間R2から予熱区間R1を通って第1接続管51に至る間に、炉壁11に沿って流れる樹脂が固化することを抑制できる。
【0045】
矢印D1で示すように、対象物に含まれる、低い沸点を有する材料が昇華してガスが生じることがある。ガスは、矢印D2で示すように、過熱水蒸気の流れに乗って上流側へ流されて、第2接続管61へ流入する。
【0046】
ガス化区間R3においては、350℃以下の融点を有する樹脂が分離された後の対象物が、高温の過熱水蒸気によって加熱される。対象物は、金属、有機物などの固形物を含む。ガス化区間R3においては、有機物が炭化されてもよい。金属、炭化された有機物などの固形物は、矢印A4で示すように、投下部31から水5の中へ投下される。その後、搬出装置32によって固形物が連続炉1の外部へ排出される。
【0047】
ガス化区間R3においては、高温の過熱水蒸気が固形物との間で熱交換を行うことにより、過熱水蒸気の温度が急激に低下する。好ましくは、過熱水蒸気の温度は、樹脂の溶融が完了する地点、例えば溶融区間R2とガス化区間R3の間の境界付近で、350℃以下まで低下する。溶融区間R2及びガス化区間R3における加熱部10の雰囲気の温度は、過熱器40において生成される過熱水蒸気の温度と、過熱器40から加熱部10へ導入される過熱水蒸気の流量とによって調整されてもよい。温度制御器15によって調整される炉壁11の温度は、一定に維持されてもよい。
【0048】
過熱水蒸気を用いて加熱部10の雰囲気を制御することにより、雰囲気温度を精度よく調整できる。これにより、溶融区間R2において材料が昇華してガスが生じることを抑制できる。
【0049】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態においては、連続炉1の上流側において、加熱部10の内部の雰囲気が水5によって外気から遮断されている。これにより、酸素を除去するための処理室を加熱部10の上流側に設けることなく、加熱部10に酸素が流入することを抑制できる。このため、連続炉1の構成を簡略化できる。例えば、搬入装置21と加熱部10との間に、可動のシャッターや蓋などの、機械的に可動する構成要素を設置する必要がない。このため、機械的に可動する構成要素の固着、詰まり、変形などに起因する故障や事故が生じることを抑制できる。
【0050】
また、加熱部10の内部の空間が、搬入装置21の内部の第2水面H2まで連続的に続いているので、加熱部10の内部の雰囲気の圧力の変化に応じて、第2水面H2が上下に変位できる。例えば、加熱部10の内部の雰囲気の圧力が上昇すると、
図1に示すように、第2水面H2の位置が、大気に接する第1水面H1の位置よりも低くなる。このように、連続炉1による加熱処理の間の、加熱部10の内部の雰囲気の圧力の変化を、第2水面H2の位置の変化によって緩和できる。これにより、加熱部10の上流側から排出される過熱水蒸気の圧力の安定性を高めることができる。従って、加熱部10の内部の温度をより精度良く調整できる。
【0051】
また、本実施の形態においては、連続炉1の下流側においても、加熱部10の内部の雰囲気が水5によって外気から遮断されている。これにより、下流側から加熱部10に酸素が流入することを抑制できる。また、加熱部10の内部の空間が、投下部31の内部の第4水面H4まで連続的に続いているので、加熱部10の内部の雰囲気の圧力の変化に応じて、第4水面H4が上下に変位できる。例えば、加熱部10の内部の雰囲気の圧力が上昇すると、
図1に示すように、第3水面H3の位置が、大気に接する第4水面H4の位置よりも低くなる。このため、連続炉1による加熱処理の間の、第3水面H3の位置の変化によっても、加熱部10の内部の雰囲気の圧力の変化を緩和できる。
【0052】
(対象物)
連続炉1によって加熱処理される対象物の特徴の例を以下に列挙する。対象物は、下記の特徴(1)~(10)のうちの1つを有していてもよく、複数を有していてもよい。
(1)対象物は、金属及び合成樹脂からなる。
(2)対象物は、炭化する有機物及び合成樹脂からなる。
(3)対象物は、搬送装置12の羽根14の直径K2の1/3以下の粒径を有する複数の粒を含む。
(4)対象物は、(3)の特徴を有するよう破砕された状態で連続炉1に投入される。
(5)対象物は、水5に溶けない性質を有する。
(6)対象物は、液状ではなく固形である。
(7)対象物は、水5に沈む性質を有する。
(8)対象物は、連続炉1の内部で搬送される間に破砕されて粉体にならない程度の凝集力を有する。
(9)対象物における水分の含有率が10重量%以下。
(10)対象物の間の隙間に過熱水蒸気が通りやすい。
【符号の説明】
【0053】
1 連続炉
3 第1貯水槽
4 第2貯水槽
5 水
10 加熱部
11 炉壁
12 搬送装置
13 軸
14 羽根
15 温度制御器
20 投入部
21 搬入装置
22 導入パイプ
23 軸
24 羽根
30 排出部
31 投下部
32 搬出装置
33 排出パイプ
34 軸
35 羽根
40 過熱器
41 吸気管
50 第1タンク
51 第1接続管
60 第2タンク
61 第2接続管
62 第1出口
63 第2出口
【要約】
【課題】連続炉の安全性を高める。
【解決手段】対象物を加熱する連続炉は、対象物を搬送しながら加熱する加熱部と、対象物を前記加熱部に投入する投入部と、加熱部によって加熱された対象物を排出する排出部と、を備える。投入部は、水中の対象物を加熱部へ搬入する搬入装置を含む。
【選択図】
図1