IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社メーサイの特許一覧

<>
  • 特許-地質調査装置 図1
  • 特許-地質調査装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】地質調査装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
E02D1/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022177731
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520036776
【氏名又は名称】株式会社メーサイ
(74)【代理人】
【識別番号】100190702
【弁理士】
【氏名又は名称】筧田 博章
(72)【発明者】
【氏名】中野 真治
(72)【発明者】
【氏名】山口 博久
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071164(JP,A)
【文献】特開2021-119277(JP,A)
【文献】特開2022-165533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0377003(US,A1)
【文献】特開2012-047588(JP,A)
【文献】特開昭62-280411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に貫入可能な貫入部と、
前記貫入部の貫入状況を計測する計測部と、
警告を発することが可能な警告部と、
前記計測部および前記警告部に接続する制御部と、
を備え、
前記制御部は、制御指標に基づいて、前記警告部に警告させ、
前記制御指標は、前記計測部で計測された計測値または前記制御部により前記計測値から算出される値であり、
前記制御部に接続し、前記計測部に供給される電力の状況を計測する電力計測部を備え、
前記制御部は、前記電力計測部の計測値に基づいて前記計測部の計測の異常の有無を判定し、異常があると判断した場合には、前記警告部に警告をさせるまたはさらに備えられる出力部に前記計測部の計測の異常を出力する地質調査装置。
【請求項2】
地盤に貫入可能な貫入部と、
前記貫入部の貫入状況を計測する計測部と、
警告を発することが可能な警告部と、
前記計測部および前記警告部に接続する制御部と、
を備え、
前記制御部は、制御指標に基づいて、前記警告部に警告させ、
前記制御指標は、前記計測部で計測された計測値または前記制御部により前記計測値から算出される値であり、
前記計測部は、前記貫入部の貫入力を計測する第1計測部と、前記貫入部の長手方向における前記貫入部の速度または変位を計測する第2計測部と、を含み、
前記制御指標は、制御部により算出されるものであって、時間をtと表すと、前記貫入部の貫入力F(t)を前記貫入部の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)である地質調査装置。
【請求項3】
地盤に貫入可能な貫入部と、
前記貫入部の貫入状況を計測する計測部と、
警告を発することが可能な警告部と、
前記計測部および前記警告部に接続する制御部と、
を備え、
前記制御部は、制御指標に基づいて、前記警告部に警告させ、
前記制御指標は、前記計測部で計測された計測値または前記制御部により前記計測値から算出される値であり、
前記計測部は、前記貫入部の貫入力を計測する第1計測部と、前記貫入部の長手方向における前記貫入部の変位を計測する第2計測部と、を含み、
前記制御部は、前記貫入部の貫入力および変位に基づいて、地中の空洞の有無を判定する地質調査装置。
【請求項4】
前記警告部は、複数の異なる態様で警告を発することが可能であり、
前記制御部は、前記制御指標の値の大きさに応じて、前記警告部の警告の態様を変える請求項1~3のいずれか1項に記載の地質調査装置。
【請求項5】
前記警告部は、色の異なる複数のランプを備え、
前記制御部は、点灯させる前記ランプを変えるまたは複数の前記ランプを点灯させることにより警告の態様を変える請求項に記載の地質調査装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記制御指標に基づいて、前記計測部の計測の異常の有無を判定し、異常があると判断した場合には、前記警告部に警告をさせるまたはさらに備えられる出力部に前記計測部の計測の異常を知らせる情報を出力する請求項2または3に記載の地質調査装置。
【請求項7】
前記計測部は、前記貫入部の貫入力を計測する第1計測部を含み、
前記制御指標は、時間をtと表すと、前記貫入部の貫入力F(t)である請求項1に記載の地質調査装置。
【請求項8】
前記計測部は、前記貫入部の地盤への貫入方向における前記貫入部の速度または変位を計測する第2計測部を含み、
前記制御指標は、時間をtと表すと、計測されるまたは前記制御部により前記貫入部の変位から算出される前記貫入部の速度V(t)である請求項1に記載の地質調査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地質調査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地質調査において地盤の硬さを調べる装置として、例えば特許文献1記載の装置等、様々な地質調査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6967617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロッド等の貫入部を地盤に貫入して地質調査を行う装置は、地質調査の際、貫入部が予期せぬ地中に埋設された配管等の埋設物を破損する可能性がある。
【0005】
本発明は、埋設物の破損を回避または低減することができる地質調査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
地質調査装置は、地盤に貫入可能な貫入部と、貫入部の貫入状況を計測する計測部と、警告を発することが可能な警告部と、計測部および警告部に接続する制御部とを備えている。制御部は、制御指標に基づいて、警告部に警告させる。制御指標は、計測部で計測された計測値または制御部により計測値から算出される値である。
【0007】
地質調査装置は、警告部が、複数の異なる態様で警告を発することが可能であり、制御部が、制御指標の値の大きさに応じて、警告部の警告の態様を変えるものであってもよい。
【0008】
地質調査装置は、警告部が、色の異なる複数のランプを備え、制御部が、点灯させるランプを変えるまたは複数のランプを点灯させることにより警告の態様を変えるものであってもよい。
【0009】
地質調査装置は、制御部が、制御指標に基づいて、計測部の計測の異常の有無を判定し、異常があると判断した場合には、警告部に警告をさせるまたはさらに備えられる出力部に計測部の計測の異常を知らせる情報を出力するものであってもよい。
【0010】
地質調査装置は、制御部に接続し、計測部に供給される電力の状況を計測する電力計測部を備え、制御部が、電力計測部の計測値に基づいて計測部の計測の異常の有無を判定し、異常があると判断した場合には、警告部に警告をさせるまたはさらに備えられる出力部に計測部の計測の異常を出力するものであってもよい。
【0011】
地質調査装置は、計測部が、貫入部の貫入力を計測する第1計測部を含み、制御指標が、時間をtと表すと、前記貫入部の貫入力F(t)であってもよい。
【0012】
地質調査装置は、計測部が、貫入部の地盤への貫入方向における貫入部の速度または変位を計測する第2計測部を含み、制御指標が、時間をtと表すと、計測されるまたは前記制御部により前記貫入部の変位から算出される貫入部の速度V(t)であってもよい。
【0013】
地質調査装置は、計測部が、貫入部の貫入力を計測する第1計測部と、貫入部の長手方向における貫入部の速度または変位を計測する第2計測部と、を含み、制御指標が、制御部により算出されるものであって、時間をtと表すと、貫入部の貫入力F(t)を貫入部の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)であってもよい。
【0014】
地質調査装置は、計測部が、貫入部の貫入力を計測する第1計測部と、貫入部の長手方向における前記貫入部の変位を計測する第2計測部と、を含み、制御部が、貫入部の貫入力および変位に基づいて、地中の空洞の有無を判定するものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
地質調査装置は、地質調査の際、埋設物の破損を回避または低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の地質調査装置を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態の地質調査装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に示すように、地質調査装置は、本体10と、警告部70と、制御部80とを備えている。
なお、以下の説明において、後述する本体10のリーダ14および貫入部20の長手方向は、それぞれ上下方向に平行になっているものとする。
【0018】
本体10は、図1に示すように、自走式の装置であって、ベース部11と、走行部12と、動力部13と、リーダ14と、傾斜装置15と、移動部16と、振動部17と、回転部18と、駆動制御部19と、貫入部20と、計測部とを備えている。
【0019】
ベース部11は、本体10の各構成が備えられる部分である。ベース部11には、操作者が乗車するシート11aが備えられている。また、ベース部11には、操作者が地質調査装置の各種操作を行うためのレバー等の操作部11bが備えられている。走行部12は、地質調査装置を自走させるためのものである。本実施形態では、走行部12は、クローラであり、ベース部11の下側に備えられている。走行部12は、ベース部11に設けられるエンジン等の動力部13により駆動される。なお、走行部12は、車輪等であってもよい。
【0020】
リーダ14は、後述する移動部本体16aの移動をガイドするためのものである。本実施形態では、リーダ14は、柱状のものであり、左右方向を軸として傾斜可能にベース部11に連結している。リーダ14は、ベース部11に備えられている傾斜装置15により傾斜する。本実施形態では、傾斜装置15は、油圧シリンダで構成されており、その基部側が左右方向を軸として傾斜可能にベース部11に支持されており、先端側が左右方向を軸として傾斜可能にリーダ14に連結している。傾斜装置15自体の傾斜は、動力部13により駆動される。リーダ14は、傾斜装置15の伸縮および傾斜により、左右方向を軸として傾斜する。
【0021】
移動部16は、後述する貫入部20をその長手方向に移動させるためのものである。本実施形態では、移動部16は、移動部本体16aと、移動駆動部16bとを備えている。
【0022】
移動部本体16aは、リーダ14の長手方向において移動可能にリーダ14に備えられている。移動部本体16aは、移動駆動部16bの駆動によりリーダ14の長手方向において移動する。また、移動部本体16aは、移動駆動部16bの駆動によらず、移動部本体16aならびに後述する振動部17、回転部18および貫入部20の自重によりリーダ14の長手方向において移動することもできる。
【0023】
振動部17は、貫入部20をその長手方向において振動させるためのものである。本実施形態では、振動部17として、バイブロハンマが用いられており、移動部本体16aの前面に設けられている。振動部17は、振動部17自体が貫入部20(リーダ14)の長手方向において振動することにより、貫入部20をその長手方向において振動させる。
【0024】
回転部18は、貫入部20をその軸(長手方向)回りに回転駆動させるためのものである。
【0025】
振動部17、回転部18および貫入部20は、移動部本体16aの移動により、リーダ14の長手方向、言い換えれば貫入部20の長手方向に移動する。
【0026】
駆動制御部19は、操作部11bの操作に基づいて、動力部13、傾斜装置15、移動駆動部16b、振動部17および回転部18などの駆動を制御するためのものである。駆動制御部19は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)からなるメモリとを含んで構成されている。駆動制御部19は、ベース部11内に備えられている。
【0027】
貫入部20は、地盤に貫入可能なものである。本実施形態では、貫入部20は、図1に示すように、主軸22と、ロッド30と、コーン40とを備えている。
【0028】
主軸22は、金属製で円柱状のものであり、振動部17および回転部18に通されており、その長手方向はリーダ14の長手方向に平行となっている。主軸22は、その軸を中心として回転可能に振動部17および回転部18に支持されている。主軸22は、ロッド30(ロッド部材32)および後述する第1計測部50と連結および分離可能となっている。
なお、ロッド30(ロッド部材32)がその軸を中心として回転可能に直接振動部17に支持される場合、主軸22は不要である。
【0029】
ロッド30は、柱状のものであり、本実施形態では、複数のロッド部材32をその長手方向に連結したものにより構成されている。各ロッド部材32は、金属製で円管状のものであり、その長手方向の端部において他のロッド部材32と連結および分離可能となっている。ロッド30は、その長手方向をリーダ14の長手方向に平行にした状態で、後述する第1計測部50を介して、主軸22に同軸で連結されている。ロッド30は、貫入部20を地盤に貫入する深さに応じて、適宜ロッド部材32を継ぎ足すことができる。
【0030】
コーン40は、貫入部20を地盤に貫入する際、最も先端に位置する部分であり、ロッド30の先端に連結している。コーン40は、金属で形成された柱状のものであり、先端が円錐状に尖っている。コーン40は、ロッド30(ロッド部材32)に対し、連結および分離できるようになっている。なお、貫入部20の先端部分は、サンプラーなどコーン40以外のものであってもよい。
【0031】
上記貫入部20は、移動部16の移動に伴って、貫入部20の長手方向に移動する。また、貫入部20は、振動部17により、貫入部20の長手方向において振動する。また、貫入部20は、回転部18により、貫入部20の軸(長手方向)回りに回転する。
【0032】
計測部は、貫入部20の(地盤への)貫入状況を計測するものである。貫入部20の貫入状況としては、例えば、貫入部の貫入力、変位および速度が挙げられる。本実施形態では、計測部は、第1計測部50と、第2計測部60とを備えている。
【0033】
第1計測部50は、地盤に貫入する貫入部20の貫入力(地盤の硬さ)を計測するものであり、貫入部20に設けられている。本実施形態では、第1計測部50は、図1に示すように、ケース52と、貫入力センサ58と、アンプ110と、AD変換装置112とを備えている。ケース52は、主軸22およびロッド部材32に対し、連結および分離できるようになっている。貫入力センサ58は、地盤に貫入する貫入部20の貫入方向(長手方向)における貫入力(地盤の硬さ)を計測するものであり、ケース52内に備えられている。貫入力センサ58としては、ロードセルが用いられている。貫入力センサ58は、ケーブル59によりアンプ110およびAD変換装置112を介して制御部80に接続している。貫入力センサ58の出力信号は、アンプ110に通され、AD変換装置112によりデジタル化され制御部80に出力される。第1計測部50は、貫入部20のうち地盤に貫入されない位置に備えられる。本実施形態では、第1計測部50(ケース52)は、主軸22とロッド30(ロッド部材32)との間でこれらに連結されている。
【0034】
第2計測部60は、貫入部20の貫入方向(長手方向)における貫入部20の変位または速度を計測するものである。本実施形態では、第2計測部60は、図1に示すように、貫入部20の貫入方向(長手方向)における変位を計測する変位計測センサ62と、パルスカウンタ120とを備えている。変位計測センサ62としては、変位計測センサ本体62aに対するワイヤ62bの引き出しおよび引き戻しに応じて貫入部20の変位をエンコーダにより計測するワイヤ式変位センサが用いられている。変位計測センサ62は、変位計測センサ本体62aが、振動部17より上方において取付部材14aを介してリーダ14に取り付けられており、ワイヤ62bが、貫入部20の長手方向と略平行になるようにして、その先端が振動部17に取り付けられている。変位計測センサ62は、ケーブル69によりパルスカウンタ120を介して制御部80に接続している。パルスカウンタ120は、変位計測センサ62から出力されるパルス信号のパルス数をカウントし、制御部80にデジタル出力する。
【0035】
第1計測部50および第2計測部60への電力の供給は、どのようなものであっても構わないが、本実施形態では第1計測部50の貫入力センサ58は、アンプ110から電力の供給を受け、第2計測部60の変位計測センサ62は、パルスカウンタ120から電力の供給を受ける。
【0036】
なお、上述した本体10は、上記自走式以外のものであってもよく、少なくとも貫入部20と、計測部とを備えていればよい。また、貫入部20の地盤への貫入について、地質調査装置は、振動部17による振動によるものではなく、貫入部20を静的に地盤に貫入するものであってもよく、貫入部20を地盤に貫入させる形態または機構はどのようなものであってもよい。
【0037】
警告部70は、警告を発するものである。本実施形態では、警告部70は、色の異なる複数(4つ)のランプ71,72,73,74を備えている。各ランプは、透光性を有するカバーと、発光する発光体とを備えている。各ランプは、上下方向に積み重ねられており、カバーまたは発光体の色が異なっている。ここでは、各ランプは、カバーの色が異なっており、上のランプほど注意を喚起する色となっている。具体的には、各ランプは、下から上に向かって、青色のランプ71、緑色のランプ72、黄色のランプ73および赤色のランプ74となっている。赤色のランプ74が最も注意を喚起するランプとなる。警告部70(各ランプ)は、制御部80と有線または無線で接続している。警告部70は、さらに警告音を発生させるブザー76を備えてもよい。
【0038】
制御部80は、制御指標等に基づいて、警告部70の制御、第1計測部50および第2計測部60の計測の異常(故障)の判定および地中の空洞の有無の判定を行うためのものである。制御指標は、計測部で計測された計測値(情報)または制御部80により計測値から算出される値である。計測値とは、計測部で計測された計測信号またはこれを物理量に変換した値であり、例えば貫入部20の貫入力、変位および速度が該当する。なお、以下の説明において、「○○に基づいて」という文言には、○○を用いて算出する値が含まれることがあるものとする。
【0039】
制御部80は、CPU(Central Processing Unit)と、記憶部と、通信IF(Interface)とを備えており、これらの各構成はバスで接続されている。CPUは、後述する機能的構成を実現するためのプログラムを実行する。記憶部は、情報(データ)やプログラム等を記憶する。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびハードディスク等を備えている。通信IFは、他の装置と通信を行うためのインターフェースである。制御部80は、上記制御部80の各構成に電力を供給するために電源を備えている。電源は、そのような機能を奏するものであればどのようなものであっても構わないが、本実施形態では、充電可能なバッテリーである。制御部80は、例えばスマートフォン、タブレット型端末またはパーソナルコンピュータ等である。なお、制御部80は、本体10に備えられていてもよく、例えば、駆動制御部19が制御部80を兼ねてもよい。
【0040】
制御部80は、図2に示すように、機能的構成として、取得部81と、算出部82と、警告制御部83と、空洞判定部84と、異常判定部85とを備えている。これら各機能的構成は、記憶部に記憶された各機能的構成に対応するプログラムをCPUが実行することによりその機能が実現される。
【0041】
取得部81は、第1計測部50および第2計測部60の出力を取得する。
【0042】
算出部82は、警告部70等を制御するための制御指標を算出する。本実施形態では、時間をtとすると、算出部82は、第1計測部50の出力から地盤に対する貫入部20の貫入力F(t)を算出し、第2計測部60の出力から貫入部20の変位D(t)を算出する。また、算出部82は、貫入部20の変位から貫入部20の変位の変化量(変化幅)ΔD(t)を算出する。貫入部20の変位の変化量は、例えば前後の時刻の貫入部20の変位の差(ΔD(t)=D(t)-D(ti-1)、iは時系列における時間ステップ番号を表す整数)として算出する。また、算出部82は、貫入部20の変位の時間的変化から貫入部20の速度V(t)(=ΔD(t)/Δt、Δt:変位の時間間隔(サンプリング間隔))を算出する。また、算出部82は、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)を算出する。また、算出部82は、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)で除した値F(t)/ΔD(t)を算出する。
【0043】
また、算出部82は、貫入力F(t)の絶対値|F(t)|、貫入部20の速度の絶対値|V(t)|、貫入部20の変位の変化量の絶対値|ΔD(t)|、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値の絶対値|F(t)/V(t)|および貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)で除した値の絶対値|F(t)/ΔD(t)|を算出するものであってもよい。
【0044】
貫入部20の貫入力F(t)、貫入部20の速度V(t)、貫入部20の変位の変化量ΔD(t)、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)で除した値F(t)/ΔD(t)およびこれらの絶対値|F(t)|、|V(t)|、|ΔD(t)|、|F(t)/V(t)|、|F(t)/ΔD(t)|の1または複数が制御指標となる。
【0045】
算出部82は、必要に応じて、算出した貫入力F(t)、貫入部20の速度V(t)、貫入部20の変位の変化量ΔD(t)、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)で除した値F(t)/ΔD(t)およびこれらの絶対値|F(t)|、|V(t)|、|ΔD(t)|、|F(t)/V(t)|、|F(t)/ΔD(t)|の全部または一部を記憶部に記憶させる。
【0046】
ところで、地中に埋設された構造物に貫入部20が接触すると、貫入部20の貫入力は大きくなり、貫入部20の変位の変化量および貫入部20の速度は小さくなる。このような性質を踏まえ、地盤への貫入部20の貫入において、算出した制御指標に基づいて、地中に埋設された配管等の埋設物への貫入部20の接触を判断することができる。例えば、制御指標と閾値との比較により、地中に埋設された埋設物への貫入部20の接触を判断することができる。具体的には、貫入部20の貫入力F(t)、変位D(t)および速度V(t)の符号について貫入部20の貫入方向(長手方向のうち先端向き)を正とすると、貫入部20の貫入力F(t)もしくはその絶対値|F(t)|、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)もしくはその絶対値|F(t)/V(t)|または貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)で除した値F(t)/ΔD(t)もしくはその絶対値|F(t)/ΔD(t)|は、貫入部20が地中に埋設された埋設物に接触すると、所定の値(閾値)より大きくなる。また、貫入部20の変位の変化量ΔD(t)もしくはその絶対値|ΔD(t)|または貫入部20の速度V(t)もしくはその絶対値|V(t)|は、貫入部20が地中に埋設された埋設物に接触すると、所定の値(閾値)より小さくなる。
そこで、貫入部20の貫入力F(t)およびその絶対値|F(t)|、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)およびその絶対値|F(t)/V(t)|ならびに貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)で除した値F(t)/ΔD(t)およびその絶対値|F(t)/ΔD(t)|の少なくとも一つが、所定の値(閾値)より大きくなる場合、貫入部20が地中に埋設された埋設物に接触したと判断することができる。また、貫入部20の変位の変化量ΔD(t)およびその絶対値|ΔD(t)|ならびに貫入部20の速度V(t)およびその絶対値|V(t)|の少なくとも一つが、所定の値(閾値)より小さくなる場合、貫入部20が地中に埋設された埋設物に接触したと判断することができる。貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)およびその絶対値|F(t)/V(t)|ならびに貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)で除した値F(t)/ΔD(t)およびその絶対値|F(t)/ΔD(t)|は、2つの指標を用いており、また貫入部20が地中に埋設された埋設物に接触した場合に値が非常に大きくなるので、他の制御指標に比べ、地中に埋設された埋設物への貫入部20の接触をより精度よく判断することができる。
【0047】
なお、算出部82は、貫入力F(t)、貫入部20の速度V(t)、貫入部20の変位の変化量ΔD(t)、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)で除した値F(t)/ΔD(t)およびこれらの絶対値|F(t)|、|V(t)|、|ΔD(t)|、|F(t)/V(t)|、|F(t)/ΔD(t)|の全てを算出するものでなくてもよく、その一部を算出するものであってもよい。また、算出部82は、取得部81で取得する第1計測部50および第2計測部60の出力が貫入力および変位そのものである場合には、貫入力F(t)および変位D(t)を算出しなくてもよい。
【0048】
警告制御部83は、算出部82で算出した制御指標に基づいて、警告部70に警告させるとともに、制御指標の値に応じて警告部70による警告の態様を変える。本実施形態では、制御指標は、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)とし、警告制御部83は、F(t)/V(t)に基づいて、警告部70のランプ(赤色のランプ74)を点灯させる。また、警告制御部83は、F(t)/V(t)の値に応じて、警告部70の点灯させるランプを変える。具体的には、警告制御部83は、F(t)/V(t)の値が大きくなるにしたがい、警告部70の下側のランプから順次上側のランプを点灯させる。より具体的には、警告制御部83は、F(t)/V(t)の値が1.0(kNs/mm)以下であれば青色のランプ71を点灯させ、1.0(kNs/mm)より大きく4.0(kNs/mm)以下であれば緑色のランプ72を点灯させ、4.0(kNs/mm)より大きく5.0(kNs/mm)以下であれば黄色のランプ73を点灯させ、5.0(kNs/mm)より大きければ赤色のランプ74を点灯させる。赤色のランプ74の点灯は、貫入部20が地中に埋設された構造物に接触している可能性があることを意味する。警告制御部83は、赤色のランプ74の点灯の際、ブザー76に警告音を発生させるものであってもよい。
【0049】
なお、制御指標を貫入部20の貫入力F(t)およびその絶対値|F(t)|、貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値の絶対値|F(t)/V(t)|ならびに貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)で除した値F(t)/ΔD(t)およびその絶対値|F(t)/ΔD(t)|の一または複数とする場合、警告制御部83による警告部70の制御は、点灯させるランプを変える数値を除いて上記と同様である。制御指標を貫入部20の変位の変化量ΔD(t)およびその絶対値|ΔD(t)|ならびに貫入部20の速度V(t)およびその絶対値|V(t)|の一または複数とする場合、警告制御部83は、これら指標の値が小さくなるに従い、警告部70の下側のランプから順次上側のランプを点灯させる。また、地質調査装置は、警告部70が例えば赤色のランプ74のみ備え、警告制御部83が、地中に埋設された構造物に貫入部20が接触またはその可能性がある場合に、ランプを点灯させるものであってもよい。
【0050】
空洞判定部84は、算出部82で算出した制御指標に基づいて、地中における空洞の有無を判定する。貫入部20が地中の空洞に貫入すると、貫入部20の貫入力は非常に小さくなる。このような性質を踏まえ、本実施形態では、空洞判定部84は、貫入部20の貫入力F(t)および貫入部20の変位D(t)に基づいて、地中における空洞の有無を判定する。具体的に説明すると、空洞判定部84は、貫入力F(t)が所定の貫入力値(貫入力の閾値)より小さくなる貫入部20の貫入区間ΔDiが所定の幅(貫入区間の閾値)を超える場合に、その貫入区間に空洞があると判定する。貫入力が所定の貫入力値より小さくなる貫入部20の貫入区間ΔDiは、貫入力が所定の貫入力値より小さくなる貫入部20の変位の終点Deと貫入力が所定の貫入力値より小さくなる貫入部20の変位の始点Dsとの差により算定する。空洞判定部84が地中に空洞があると判断した場合、貫入力F(t)が所定の貫入力値(貫入力の閾値)より小さくなる貫入部20の貫入区間ΔDiは、空洞の厚さとみなすことができる。
【0051】
異常判定部85は、制御指標に基づいて、計測部の計測の異常の有無を判定し、異常があると判断した場合には、警告部70に警告をさせるまたはさらに備えられる出力部に計測部の計測の異常を出力する。異常判定部85による警告部70の警告の態様は、警告制御部83による警告部70の警告とは異なる態様であることが好ましい。
本実施形態では、異常判定部85は、制御指標に基づいて、第1計測部50および第2計測部60の両方または一方の計測の異常を判定し、異常があると判断した場合には、警告部70により警告させる。より具体的に説明すると、異常判定部85は、第1計測部50については、貫入部20の貫入力F(t)が所定の値(貫入力の閾値)より小さくなる時間が所定の時間(時間の閾値)を超える場合に第1計測部50に異常があると判定する。また、異常判定部85は、第2計測部60については、貫入部20の変位D(t)または速度V(t)が所定の値(貫入力の閾値)より小さくなる時間が所定の時間(時間の閾値)を超える場合に第2計測部60に異常があると判定する。異常判定部85は、第1計測部50に異常があると判定した場合には、警告部70の1または複数のランプを点滅させる。異常判定部85は、第2計測部60に異常があると判定した場合には、警告部70のランプ71,72,73,74のうち、第1計測部50に異常があると判定した場合に点滅させるランプとは別の1または複数のランプを点滅させる。
【0052】
異常判定部85は、第1計測部50および第2計測部60の出力が電圧値または電流値である場合には、電圧値または電流値に基づいて、具体的には電圧値または電流値が所定の値より小さくなる時間が所定の時間を超える場合に異常と判定してもよい。また、第1計測部50および第2計測部60に供給される電力の状況、例えば電圧または電流を計測する電力計測部90を備え、異常判定部85が、電力計測部90で計測される電圧または電流に基づいて、具体的には計測される電圧値または電流値が所定の値以下となった場合に第1計測部50または第2計測部60に異常があると判定してもよい。電力計測部90は、図2に示すように、第1計測部50および第2計測部60と制御部80とに接続する。
【0053】
なお、異常判定部85は、計測部の異常を警告部70に代えてディスプレイ等の出力部に計測部の異常を知らせる情報を出力するものであってもよい。
【0054】
次に、上記地質調査装置の使用方法について説明する。地質の調査地点において、移動部16および振動部17により貫入部20をその長手方向に移動させながら振動させて地盤(地中)に貫入する。貫入部20の地盤への貫入の際、第1計測部50および第2計測部60により貫入部20の貫入力および変位を計測する。警告制御部83(制御部80)は、制御指標を貫入部20の貫入力F(t)を貫入部20の速度V(t)で除した値F(t)/V(t)の値に応じて、点灯するランプを変える。警告部70のランプ71,72,73,74のうち赤色のランプ74が点灯した場合には、貫入部20が地中に埋設された構造物に接触している可能性があるため、貫入部20の地中への貫入を停止する。
【0055】
異常判定部85により、警告部70のランプが点滅する場合にも、第1計測部50および第2計測部60の両方または一方に異常があるため、地中への貫入部20の貫入を停止する。
【0056】
地質調査装置は、貫入部20の貫入状況を計測する計測部と、警告部70とを備え、制御部80が制御指標である計測部の計測値または計測部から算出する算出値に基づいて、警告部70に警告させるので、貫入部20の地盤への貫入よる地中に埋設された構造物の破損を回避または低減することができる。
【0057】
地質調査装置は、警告部70が、複数の異なる態様で警告することが可能であり、制御部80が、制御指標の値の大きさに応じて、警告部70の警告の態様を変えることにより、貫入部20の地盤への貫入状況が把握しやすくなる。
【0058】
地質調査装置は、警告部70が色の異なる複数のランプを備え、制御部80が点灯させるランプを変えるまたは複数のランプを点灯させることにより警告の態様を変えるので、作業者がより警告を気づきやすくなるとともに、貫入部20の地盤への貫入状況がより一層把握しやすくなる。
【0059】
地質調査装置は、制御部80が、制御指標または電力計測部90の計測値に基づいて、計測部の計測の異常の有無を判定し、異常があると判断した場合には、警告部70等に警告をさせるので、計測部の異常を迅速に把握することができる。
【0060】
地質調査装置は、制御部80が前記貫入部20の貫入力および変位に基づいて、地中の空洞の有無を判定するので、地中の空洞を発見することができる。
【0061】
本発明は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 本体
11 ベース部
11a シート
11b 操作部
12 走行部
13 動力部
14 リーダ
14a 取付部材
15 傾斜装置
16 移動部
16a 移動部本体
16b 移動駆動部
17 振動部
18 回転部
19 駆動制御部
20 貫入部
22 主軸
30 ロッド
32 ロッド部材
40 コーン
50 第1計測部
52 ケース
58 貫入力センサ
59 ケーブル
60 第2計測部
62 変位計測センサ
62a 変位計測センサ本体
62b ワイヤ
69 ケーブル
70 警告部
71,72,73,74 ランプ
76 ブザー
80 制御部
81 取得部
82 算出部
83 警告制御部
84 空洞判定部
85 異常判定部
90 電力計測部
110 アンプ
112 AD変換装置
120 パルスカウンタ
【要約】
【課題】
埋設物の破損を回避または低減することができる地質調査装置を提供する。
【解決手段】
地質調査装置は、地盤に貫入可能な貫入部と、貫入部の貫入状況を計測する計測部と、警告を発することが可能な警告部と、計測部および警告部に接続する制御部とを備えている。制御部は、制御指標に基づいて、警告部に警告させる。制御指標は、計測部で計測された計測値または制御部により計測値から算出される値である。
【選択図】 図1
図1
図2