(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】整形外科患者のためのリハビリプログラムの選択と実行を支援するための遠隔診療支援システム。
(51)【国際特許分類】
G16H 20/30 20180101AFI20230907BHJP
【FI】
G16H20/30
(21)【出願番号】P 2023537300
(86)(22)【出願日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2023017282
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2022077164
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522182312
【氏名又は名称】株式会社UTヘルステック
(74)【代理人】
【識別番号】100126826
【氏名又は名称】二宮 克之
(72)【発明者】
【氏名】栗原裕也
(72)【発明者】
【氏名】紺野慎一
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-244916(JP,A)
【文献】特開2016-119006(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022102(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/008771(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立運動が可能な整形外科患者のためのリハビリプログラムの選択と実行を支援する遠隔診療支援システムであって、
医療機関に設置されたシステムサーバーと、患者の体に装着されて患者の運動生体情報を収集して前記システムサーバーに無線で測定データを送信可能な着用型電子端末機を含み、
前記システムサーバーは、
患者のプロファイルと疾患の種類の入力を受け付ける手段と、
患者の健康状態を定量的に評価した評価スコアの入力を受け付け
る手段と、
前記入力された評価スコアに基づいて前記患者のリハビリ指数を決定する手段と、
自立運動を実行した患者の運動生体情報の測定データを前記着用型電子端末機から受信する手段と、
患者の疾患の種類と健康状態に応じて作成された複数のリハビリプログラムを記憶したメモリを備えており、前記複数のリハビリプログラムは、プログラムで指示された自立運動を実行することによって患者にかかる負荷の大きさに応じた複数のグレードから構成されており、各グレードには患者の健康状態の評価スコアに基づいて決定されるリハビリ指数が登録されており、
前記
遠隔診療支援システムは、
前記メモリに記憶された複数のリハビリプログラムの中から前記患者に処方するグレードのリハビリプログラムを、前記入力された患者の疾患の種類
と、前記患者の健康状態の評価スコアに基づいて決定されるリハビリ指数
とに基づいて選択し、
前記患者が前記選択されたリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した場合に示すことが期待される運動目標値を、前記入力された患者のプロファイルに基づいて決定し、
前記選択されたグレードのリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した患者の運動生体情報の測定データを前記着用型電子端末機によって収集して前記システムサーバーに送信し、
前記患者から収集された運動生体情報の測定データと前記患者の前記決定された運動目標値を比較して、前記選択されたリハビリプログラムが指示する自立運動の負荷が所定の基準に照らして患者にとって過剰又は過少であると判断される場合には、前記選択されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が低い又は高いグレードのリハビリプログラムを提案する、
前記自立運動が可能な整形外科患者のためのリハビリプログラムの選択と実行を支援する、遠隔診療支援システム。
【請求項2】
前記運動目標値は、患者の心拍数、消費カロリー、歩行距離、歩行速度、歩数の全部又は一部の目標値である、請求項1に記載の遠隔診療支援システム。
【請求項3】
前記リハビリプログラムは、患者が一定の期間内に所定の回数所定の時間継続して自立運動をするプログラムを含む、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【請求項4】
前記選択されたリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した患者の心拍数、消費カロリー、歩行距離、歩行速度及び歩数の測定データのいずれか一つがそれぞれの目標値を満たさない場合には、前記自立運動の負荷は前記患者にとって過剰であると判断し、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が低いグレードの自立運動を指示するリハビリプログラムを提案する、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【請求項5】
前記選択されたリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した患者の心拍数、消費カロリー、歩行距離、歩行速度及び歩数の測定データのいずれか一つがそれぞれの目標値を2回以上連続して満たさない場合には、前記自立運動の負荷は前記患者にとって過剰であると判断し、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が低いグレードの自立運動を指示するリハビリプログラムを提案する、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【請求項6】
前記着用型電子端末機は、患者が所定の時間に歩行した歩行距離を測定し、リハビリプログラムで指示された歩行運動で指示された目標行距離と患者が実際に歩行した距離とを比較して、患者が実際に歩行した距離が目標歩行距離に満たない場合には前記自立運動の負荷は前記患者にとって過剰であると判断し、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が低いグレードの自立運動を指示するリハビリプログラムを提案する、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【請求項7】
前記着用型電子端末機は、さらに患者の歩行速度を測定し、リハビリプログラムで指示された歩行運動で指示された目標歩行速度と患者が実際に歩行した歩行速度とを比較して、患者が実際に歩行した歩行速度が目標歩行速度に満たない場合には、前記自立運動の負荷は前記患者にとって過剰であると判断し、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が低いグレードの自立運動を指示するリハビリプログラムを提案する、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【請求項8】
前記着用型電子端末機は患者が処方されたリハビリプログラムで指示された距離を歩くのに要した歩数を測定し、リハビリプログラムで指示された歩行距離を歩くための目標歩数と患者が実際に歩行した歩数とを比較して、患者が実際に歩行した歩数が目標歩数よりも上回る場合には、前記自立運動の負荷は前記患者にとって過剰であると判断し、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が低いグレードの歩行運動を指示するリハビリプログラムを提案する、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【請求項9】
前記患者の健康状態の定量的評価に用いられる尺度は、疾患特異的尺度と疾患非特異的尺度を含む、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【請求項10】
前記リハビリ指数は、疾患特異的尺度による評価スコアと疾患非特異的尺度による評価スコアの平均値に基づいて決定される、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【請求項11】
前記リハビリプログラムは動画として患者に処方される、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【請求項12】
前記患者の疾患は、腰痛、膝痛、捻挫、又はアキレス腱断裂である、請求項1又は2に記載の
遠隔診療支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立運動が可能な整形外科患者のためのリハビリプログラムの選択と実行を支援する遠隔診療支援システムと方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運動器疾患・障害の整形外科患者は、疾患の治療が完了した後も運動能力が低下しているので、患者の健康状態を回復するためには、一定期間のリハビリが必要である。リハビリは、疾患の治療が完了した後における患者の健康状態と運動機能の回復を目的として行われる。
【0003】
自立歩行が可能な整形外科患者に対するリハビリ指導は、医師が患者を診察して、診察によって確認された患者の状態に合わせた歩行運動の指導として提供される。リハビリは、疾患の種類と程度にもよるが通常数か月以上かかり、患者の状態は回復の過程で変動するので、リハビリの期間中患者は定期的に医療機関に通院して診察を受けて、その時々における患者の状態を確認し、その状態に適合したリハビリプログラムに更新していかなければならない。その結果、患者は長期間にわたって定期的に通院して診察を受けることを余儀なくされ、病院は外来患者で常に混みあっている状況である。
【0004】
近時、患者に対するリハビリ指導にコンピュータネットワークシステムを用いた遠隔診療システムを用いることが提案されている。コンピュータネットワークを介して患者に動画を配信することによって、患者は病院に通院することなくして容易かつ効果的にリハビリ指導を受けることが可能である。
【0005】
遠隔診療システムでは、医師は患者と直接面談して触診することができないので、診察には問診を用いることができる。問診は、予め用意した多数の質問項目について患者に回答を求め、質問に対する患者の回答に基づいて患者の状態を把握する。現在用いられている問診表は、患者の健康状態を健康関連QOL尺度(例SF-36)に従って作成された質問項目と、患者の有する疾患に関連する疾患特異的尺度(例RDQ)に従って作成された質問項目とからなる。医療現場において患者の疾患の回復状態を評価するためには、両尺度を組み合わせて用いる場合が多い。
【0006】
患者の疾患の回復状態に応じたリハビリ指導をするためには、問診の評価結果は定量的なデータとして提出されることが望ましい。SF-36は、健康関連QOL(HRQOL: Health Related Quality of Life)を定量的に評価するための科学的で信頼性・妥当性を持つ尺度である。RDQ(Roland-Morris Disability Questionnaire)は、腰痛による日常生活の障害を患者自身が定量的に評価する尺度である。 これらの尺度は多数の質問項目からなり、質問に対する回答に基づいて患者の疾患の回復状態を各質問に割り振られたスコアの合計値によって評価する。これらの尺度に基づく患者の疾患の回復状態の定量的評価は国際的に承認された信頼性が高いものである。
【0007】
しかし、問診は問診表の質問項目が如何に適切に作成されていても、患者の自己申告に頼るものであり、問診の結果が正しいためには、患者が質問内容を正確に理解する能力を有していて、尚且つ質問された事項に関して患者が自らの健康状態を正確に認識していることが必要である。患者が認知症を患っている老人であるような場合には、多数の質問について回答を求めること自体が難しい。それ故、問診表の使用には自ずから限界があり、そのことが、遠隔診療システムを用いて、患者に適切なリハビリ指導を行う上で大きな障害であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】腰痛症のリハビリテーションに必須の評価法と活用法 工藤大輔、島田洋一Jpn Rehabil Med 2017: 54:835-840 Vol.54 No. 11 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような状況下で、医師又は理学療法士が問診表に完全に頼ることなく患者の健康状態を定量的に評価して、その定量的評価結果に基づいてリハビリプログラムを処方し、患者が処方されたリハビリプログラムで指示された自立運動を遂行していく過程で、患者のその時々の状態の評価を更新し、更新された評価に基づいて患者に処方するリハビリプグラムを更新することができる遠隔診療支援システムが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者等は、自立運動が可能な整形外科患者のためのリハビリプログラムの選択と実行を支援する遠隔診療支援システムであって、
医療機関に設置されたシステムサーバーと、患者の体に装着されて患者の運動生体情報を収集して前記システムサーバーに無線で測定データを送信可能な着用型電子端末機を含み、
前記システムサーバーは、
患者のプロファイルと疾患の種類の入力を受け付ける手段と、
患者の健康状態を定量的に評価した評価スコアの入力を受け付け、前記入力された評価スコアに基づいて前記患者のリハビリ指数を決定する手段と、
自立運動を実行した患者の運動生体情報の測定データを前記着用型電子端末機から受信する手段と、
患者の疾患の種類と健康状態に応じて作成された複数のリハビリプログラムを記憶したメモリを備えており、前記複数のリハビリプログラムは、プログラムで指示された自立運動を実行することによって患者にかかる負荷の大きさに応じた複数のグレードから構成されており、各グレードには患者の健康状態の評価スコアに基づいて決定されるハビリ指数が登録されており、
前記システムは、
前記メモリに記憶された複数のリハビリプログラムの中から前記患者に処方するグレードのリハビリプログラムを、前記入力された患者の疾患の種類とリハビリ指数に基づいて選択し、
前記患者が前記選択されたリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した場合に示すことが期待される運動目標値を、前記入力された患者のプロファイルに基づいて決定し、
前記選択されたグレードのリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した患者の運動生体情報の測定データを前記着用型電子端末機によって収集して前記システムサーバーに送信し、
前記患者から収集された運動生体情報の測定データと前記患者の前記決定された運動目標値を比較して、前記選択されたリハビリプログラムが指示する自立運動の負荷が所定の基準に照らして患者にとって過剰又は過少であると判断される場合には、前記選択されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が低い又は高いグレードのリハビリプログラムを提案する、
前記自立運動が可能な整形外科患者のためのリハビリプログラムの選択と実行を支援する遠隔診療支援システム、という発明に到達した。
【0012】
本発明の発明者者等はさらに、自立運動が可能な整形外科患者のためのリハビリプログラムの選択と実行を支援する遠隔診療支援方法であって、
医療機関に設置されたシステムサーバーと、患者の体に装着されて患者の運動生体情報を収集して前記システムサーバーに無線で測定データを送信可能な着用型電子端末機を用意し、
前記システムサーバーには、患者のプロファイルと疾患の種類の入力を受け付ける手段と、患者の健康状態を定量的に評価した評価スコアの入力を受け付け、前記入力された評価スコアに基づいて前記患者のリハビリ指数を決定する手段と、自立運動を実行した患者の運動生体情報の測定データを前記着用型電子端末機から受信する手段と、患者の疾患の種類と健康状態に応じて作成された複数のリハビリプログラムを記憶したメモリを備えており、前記複数のリハビリプログラムは、プログラムで指示された自立運動を実行することによって患者にかかる負荷の大きさに応じた複数のグレードから構成されており、前記リハビリプログラムの各グレードには患者の健康状態の評価スコアに応じたリハビリ指数が登録されており、
前記方法は、
前記メモリに記憶された複数のリハビリプログラムの中から前記患者に処方するグレードのリハビリプログラムを、前記患者の疾患の種類とリハビリ指数に基づいて選択し、
前記入力されたプロファイルを有する前記患者が前記選択されたリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した場合に示すことが期待される運動目標値を所定の方法によって決定して、前記選択されたリハビリプログラムに登録し、
前記選択されたリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した患者の運動生体情報の測定データを前記着用型電子端末機によって収集して前記システムサーバーに送信し、
前記収集された運動生体情報の測定データと前記選択されたリハビリプログラムに登録されている前記運動目標値を比較して、前記選択されたリハビリプログラムが指示する自立運動の負荷が所定の基準に照らして患者にとって過剰又は過少であると判断される場合には、前記選択されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が低い又は高いグレードのリハビリプログラムを提案する、
前記自立運動が可能な整形外科患者のためのリハビリプログラムの選択と実行を支援する遠隔診療支援方法、という発明に到達した。
【0013】
好ましくは、前記運動目標値は、患者の目標心拍数、目標消費カロリー、目標歩行距離、目標歩行速度、目標歩数の全部又は一部である。
【0014】
好ましくは、前記リハビリプログラムは、患者が一日又は一週間に所定の回数所定の時間継続して自立運動を行うプログラムを含む。
【0015】
好ましくは、前記選択されたリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した患者の心拍数、消費カロリー、歩行距離、歩行速度及び歩数の測定データのいずれか一つがそれぞれの目標値を満たさない場合には、前記自立運動の負荷は前記患者にとって過剰であると判断し、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が一つ低いグレードの自立運動を指示するリハビリプログラムを提案する。
【0016】
好ましくは、前記選択されたリハビリプログラムで指示された自立運動を実行した患者の心拍数、消費カロリー、歩行距離、歩行速度及び歩数の測定データのいずれか一つがそれぞれの目標値を2回以上連続して満たさない場合には、前記自立運動の負荷は前記患者にとって過剰であると判断し、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が一つ低いグレードの自立運動を指示するリハビリプログラムを提案する。
【0017】
好ましくは、前記着用型電子端末機は、患者が所定の時間に歩行した歩行距離を測定し、リハビリプログラムで指示された歩行運動で指示された目標行距離と患者が実際に歩行した距離とを比較して、患者が実際に歩行した距離が目標歩行距離に満たない場合には前記自立運動の負荷は前記患者にとって過剰であると判断し、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が一つ低いグレードの自立運動を指示するリハビリプログラムを提案する。
【0018】
好ましくは、前記運動生体情報は、患者の心拍数及び/又は消費カロリーの測定データを含む。
【0019】
好ましくは、前記リハビリプログラムで指示された運動は歩行運動であり、前記運動生体情報は、患者の歩行距離及び/又は歩数の測定データを含む。
【0020】
好ましくは、前記評価スコアは、問診表に対する回答に基づいて、患者の健康関連QOL(Health Related Quality of Life)を定量的に評価したスコアである。
【0021】
好ましくは、前記患者の健康関連QOLは、疾患特異的尺度と疾患非特異的尺度を用いて評価する。
【0022】
好ましくは、前記リハビリ指数は、疾患特異的尺度による評価スコアと疾患非特異的尺度による評価スコアの平均値に基づいて算出される。
【0023】
好ましくは、前記評価スコアは、医師又は理学療法士が前記患者の健康状態に加えて患者の性別、年齢、身長、体重、安静時心拍数等の患者のプロファイルを考慮して決める。
【0024】
好ましくは、前記システムのシステムサーバーは、表示画面を備えた電子端末機と接続されており、前記リハビリプログラムは前記電子端末機を介して動画として患者に処方される。
【0025】
好ましくは、前記患者の疾患は、腰痛、膝痛、捻挫、変形性関節症、又はアキレス腱断裂を含む。
【0026】
好ましくは、前記着用型電子端末機によって所定の時間に患者が歩行した歩行距離を測定し、リハビリプログラムで指示された歩行運動で指示された目標行距離と患者が実際に歩行した距離とを比較して、患者が実際に歩行した距離が目標歩行距離に満たない場合には、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が一つ低いグレードの自立運動を指示する。
【0027】
好ましくは、前記着用型電子端末機によって所定の時間に患者が歩行した歩行距離を測定し、リハビリプログラムで指示された歩行運動で指示された目標行距離と患者が実際に歩行した距離とを比較して、患者が実際に歩行した距離が目標歩行距離を一定以上上回る場合には、前記処方されたリハビリプログラムよりも患者に対する負荷が一つ高いグレードの自立運動を指示する。
【0028】
好ましくは、前記システムは患者が前記処方されたリハビリプログラムで指示された自立運動をその実行期間内において忠実に実行していたかどうかを判断し、その判断結果を患者に提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明のシステムと方法は、患者の健康状態を信頼性が高い方法で定量的に評価し、その定量的評価値と患者の体に装着された着用型電子端末機によって収集された測定値に基づいて、リハビリプログラムを選択・更新するので、信頼性が高く、安全に使用することができる。
【0030】
本発明のシステムと方法は、リハビリプログラムに個々の患者のプロファイルに応じた運動目標値を設定し、患者の体に装着された着用型電子端末機によって収集された患者の運動生体情報の測定データが前記運動目標値の範囲内か否かを判断するので、個々の患者の特徴に合わせて自立運動を選択して更新することが可能である。
【0031】
本発明のシステムと方法は、患者の健康状態を健康関連QOL尺度に従って問診して得られた疾患非特異的スコアと、疾患特異的尺度に従って得られた疾患特異的スコアの両者に基づいて患者の状態を把握するので、患者の疾患の回復状況に応じたレベルのリハビリプログラムを選択することができる。
【0032】
本発明のシステムと方法は、問診によって得られた患者の健康状態の評価スコアに個々の患者の年齢、身長、体重等の特徴をスコアとして加えた結果を評価スコアし、その評価スコアに基づいてリハビリ指数を算出することができるので、複数のリハビリプログラムの中から個々の患者の特徴に適合したリハビリプログラムを選択することができる。
【0033】
本発明のシステムと方法は、リハビリプログラムを選択するために、患者に対する問診に加えて、患者の体に装着された着用型電子端末機によって収集されたデータから患者の運動能力を測定し、リハビリ指数と共に患者から測定した運動能力を満たすリハビリプログラムを選択するので、問診に依存するシステムに比べて信頼性と安全性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は本発明のシステムのネットワークの概念図を示す。
【
図2】
図2は本発明のシステムに用いるサーバーの機能構成図を示す。
【
図3】
図3は本発明のシステムに用いる医療機関端末の構成図を示す。
【
図4】
図4は本発明のシステムに用いる患者側端末(着用型電子端末機)の機能構成図を示す。
【
図5】
図5は本発明のシステムに用いるシステムサーバーの表示画面の例を示す。
【
図6】
図6は本発明のシステムに用いる患者側端末(着用型電子端末機)の表示画面の例を示す。
【
図7】
図7は本発明のシステムに用いるSF-36問診表の例を示す。
【
図8】
図8は本発明のシステムに用いるRDQ問診表の例を示す。
【
図9】
図9は本発明のシステムに用いる腰痛の問診による評価スコアと対応するリハビリ指数とリハビリプログラムの関係を示す。
【
図10】
図10は本発明の一つの実施例における1kmを歩行した患者の目標心拍数と消費カロリーを示す。
図10(A)は男性患者の場合を示し、
図10(B)は女性患者の場合を示す。
【
図11】
図11は本発明の一つの実施例において、リハビリプログラムを選択して更新する方法を示す。
【
図12】
図12は本発明の一つの実施例において使用する、問診表の質問項目を示す。
【
図13】
図13は本発明の一つの実施例において、システムサーバーのメモリに登録されるリハビリプログラムのグレード別の構成を示す。
【
図14】
図14は本発明の一つの実施例における運動目標値の決定方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
定義
【0036】
<自立運動>
本発明において、「自立運動」とは、患者が医師又は理学療法士の指導のもとに自ら行うことができる運動をいい、筋力増強運動、筋持久力増強運動、心肺能力増強運動(全身持久力増強運動)柔軟性向上運動、巧緻性改善運動、協調性改善運動、走能力向上運動を含む。歩行運動は筋力増強、筋持久力増強運動、心肺能力増強運動に該当し、椅子から立ち上がり運動は筋力増強、筋持久力増強運動に該当する。
【0037】
<健康関連QOL評価尺度>
本発明において「健康関連QOL」とは、疾患や治療が,患者の主観的健康感(メンタルへルス,活力,痛み,など)や,毎日行っている仕事,家事,社会活動にどのようなインパクトを与えているかを定量化したものをいう。「健康関連QOL評価尺度」とは、健康関連QOLを客観的に評価するために用いられる尺度をいい、それには、疾患非特異的尺度(例:SF-36)と、疾患特異的尺度(例:RDQ)が使用されている。
【0038】
<評価スコア>
本発明において、「評価スコア」は問診表の各質問に対する患者の回答に基づいて患者の健康状態を定量的に評価した合計スコアをいい、リハビリ指数を算出するための基礎として用いられる。本発明の好ましい実施態様において、問診表は非疾患特異的質問項目及び/又は疾患特異的質問項目を含み、これらの質問項目に対する患者による回答に基づいて、患者の健康状態を定量的なスコアの形で評価する。しかし、患者から多数の質問項目に対する回答を得るのが難しいような場合には、医師又は理学療法士問診表のスコア配分を考慮しながら評価スコアを自ら算出することもできる。さらに、評価スコアには、医師又は理学療法士が患者の性別、年齢、身長、体重等に基づいた数値を加味することができる(
図12参照)。
【0039】
<疾患非特異的スコア>
本発明において「疾患非特異的スコア」とは、患者の有する特定の疾患とはかかわりあいなく、健康関連QOL評価尺度に基づく問診によって得られたスコアである。SF-36は、疾患非特異的スコアとして代表的に用いられている(
図7参照)。
【0040】
<疾患特異的スコア>
本発明において「疾患特異的スコア」とは、患者の有する特定の疾患との関係で算出されるスコアであり、疾患特異的QOL尺度に基づく問診によって得られたスコアに基づいて算出される。RDQ(Roland-Morris Disability Questionnaire)は、腰痛による日常生活の障害を患者自身が定量的に評価する尺度である(
図8参照)。
【0041】
<患者のプロファイル>
本発明において「患者のプロファイル」とは、患者の性別、年齢、身長、体重、安静時心拍数等、患者に処方するリハビリプログラムの運動負荷を決定するにあたって考慮されるべき患者の特徴をいう。本発明の実施態様において、患者のプロファイルを問診表の質問項目の中に入れて、その質問に対する回答にスコアを付与することによって、個々の患者のプロファイルを患者の評価スコアに反映させることができる。
【0042】
<リハビリ指数>
本発明において「リハビリ指数」とは、問診表を用いて定量的に評価した評価スコアに基づいて所定の基準で複数のスケールで算出したものをいう。本発明の好ましい実施例において、問診表としてSF-36を用いる場合は、SFのスコア1~100を十段階に分けて、1~10がリハビリ指数1,11~20がリハビリ指数2,21~30がリハビリ指数3,31~40がリハビリ指数4,41~50がリハビリ指数5,51~60がリハビリ指数6,61~70がリハビリ指数7,71~80がリハビリ指数8,81~90がリハビリ指数9,91~100がリハビリ指数10,とする(
図9参照)。特定の患者をSF-36で問診した結果のスコア合計が43であれば、当該患者のリハビリ指数は5となる。
図9を参照して、問診に疾患非特異的スコア(SF-36)と疾患特異的スコア(RDQ)を用いる場合には、SF-36の評価スコアとRDQの評価スコアを合計して2で割った平均値が36であれば、当該患者のリハビリ指数は4となる。本発明では、リハビリ指数に基づいて、患者に当初処方されるリハビリプログラムの運動負荷(グレード)が決定される(
図13参照)。
【0043】
腰痛等の疾患の原因としては、原因が明確な疾患特異的要因に加えて、原因が不明確な疾患非特異的要因が大きく関与している場合が多い。腰痛のリハビリプログラムの選択においてはRDQが患者の腰の疾患に関連する評価基準であるが、腰痛は、腰の疾患以外の要因による場合があるので、それについて疾患非特異的尺度による評価する必要がある。本発明の好ましい実施態様において、整形外科患者の疾患を、疾患特異的尺度に基づく問診項目と疾患非特異的尺度に基づく問診項目の両者によって問診し、その両者の質問項目による問診結果に基づいてリハビリ指数を算出し、そうやって算出したリハビリ指数に基づいて、特定の疾患を有する患者用のリハビリプログラムを選択する。
【0044】
本発明の好ましい実施態様において、SF-36、RDQ等を用いた問診スコアに加えて、医師又は理学療法士は、そのような問診では評価されていない患者の別の特徴又はプロファイルを考慮して、リハビリ指数を最終的に決定することができる。例えば、患者が高齢でかつ身長に対して体重が重い場合には、処方するリハビリプログラムは、負荷が軽いものである方が望ましいので、リハビリ指数は、問診スコアから算出されるものよりも小さくすることができる。
【0045】
<運動目標値>
本発明において「運動目標値」とは、患者に処方されたリハビリプログラムで指示された運動を実行した患者が示すことが期待される目標値をいう。本発明の一つの実施例において、運動目標値は、目標心拍数、目標消費カロリー、目標歩行距離、目標歩行速度、目標歩数として設定される。本発明において運動目標値は、システムサーバーに入力された患者のプロファイル(年齢、性別、身長、体重、安静時心拍数)に基づいて算出される。
図14は、本発明における運動目標値の決定方法の一つの例を示す。
【0046】
<目標心拍数>
本発明において「目標心拍数」とは、患者に処方されたリハビリプログラムで指示された運動を実行した患者が示すことが期待される心拍数をいう。一般的傾向として、患者の心拍数は運動によってかかった負荷が大きいと増加し、負荷が小さいと少なくなる。指示された運動を行うことによって患者にかかる負荷は、個々の患者の性別、年齢、身長、体重等によって変わるので、本発明において目標心拍数は、患者の安静時心拍数をもとにして、患者の性別、年齢、身長、体重等に応じて設定される。
【0047】
本発明の好ましい実施態様において、処方されたリハビリプログラムで指示された歩行運動を実行した患者の体に装着された着用型電子端末機によって収集された心拍数の測定値が目標心拍数を上回る場合には、その運動は、当該患者にとって負荷が高すぎると判断される。逆に、収集された心拍数の測定値が目標心拍数を一定以上下回る場合には、その運動は当該患者にとって負荷が低すぎると判断される。
【0048】
<目標消費カロリー>
本発明において「目標消費カロリー」とは、患者に処方されたリハビリプログラムで指示された運動を実行した患者が消費することが期待されるカロリーをいう。一般的傾向として、患者の消費カロリーは運動によってかかる負荷が大きいと多くなり、負荷が小さいと少なくなる。指示された運動を行うことによって患者にかかる負荷は、個々の患者の性別、年齢、身長、体重等によって変わるので、本発明において目標消費カロリーは、患者の性別、年齢、身長、体重等に応じて設定される。本発明の好ましい実施例では、処方されたリハビリプログラムで指示された運動を実行した患者の体に装着された着用型電子端末機によって収集された消費カロリーの測定値が目標消費カロリーを上回る場合には、その運動は、当該患者にとって負荷が高すぎると判断され、逆に、収集された消費カロリーの測定値が目標消費カロリーを一定以上下回る場合には、その運動は当該患者にとって負荷が低すぎると判断される。
【0049】
<目標歩行距離>
本発明において「目標歩行距離」とは、患者に処方されたリハビリプログラムで指示された歩行運動を実行した患者が所定の時間内に歩行することが期待される距離をいう。目標歩行距離は、厚生労働省が出している性年代別目標歩数に従って設定することができる。本発明では、処方されたリハビリプログラムで指示された歩行運動を実行した患者の体に装着された着用型電子端末機によって収集された歩行距離の測定値が目標歩行距離を下回る場合には、その運動は、当該患者にとって負荷が高すぎると判断される。逆に、収集された歩行距離の測定値が目標歩行距離を一定以上上回る場合には、その運動は、当該患者にとって負荷が低すぎると判断される。
【0050】
<目標歩行速度>
本発明において「目標歩行速度」とは、患者に処方されたリハビリプログラムで指示された歩行運動を実行した患者が所定の時間内に歩行する場合に期待される歩行速度をいう。目標歩行速度は、厚生労働省が出している性年代別目標歩数に従って設定することができる。本発明では、処方されたリハビリプログラムで指示された歩行運動を実行した患者の体に装着された着用型電子端末機によって収集された歩行速度の測定値が目標歩行速度を下回る場合には、その運動は、当該患者にとって負荷が高すぎると判断される。逆に、収集された歩行速度の測定値が目標歩行速度を一定以上上回る場合には、その運動は、当該患者にとって負荷が低すぎると判断される。
【0051】
〈目標歩数〉
本発明において「目標歩数」とは、患者に処方されたリハビリプログラムで指示された歩行運動を実行した患者が所定の時間内に歩行する場合に期待される歩数をいう。
目標歩数は、厚生労働省が出している性年代別目標歩数に従って設定することができる。本発明では、処方されたリハビリプログラムで指示された歩行運動を実行した患者の体に装着された着用型電子端末機によって収集された歩数の測定値が目標歩数を下回る場合には、その運動は、当該患者にとって負荷が高すぎると判断される。逆に、収集された歩数の測定値が目標歩数を一定以上上回る場合には、その運動は、当該患者にとって負荷が低すぎると判断される。
【0052】
本発明の実施形態
図1は、本発明の一つの実施例のシステムのネットワーク構成を示す。システムサーバー100は、医療機関端末機10と患者の体に装着された着用型電子端末機21,22,23,と無線又は有線で連絡されている。
【0053】
(システムの機能構成)
図2は、システムサーバー100の機能構成を示す。システムサーバー100のCPUは医療機関端末10、ウエラブルデバイス21,22,23,から受信したデータを処理して、結果を医療機関端末機10、患者の体に装着された着用型電子端末機21,22,23,に出力する。
図3は、医療機関端末機20の機能構成を示す。SF36、RDQによる問診結果を入力する問診結果入力部、データをシステムサーバー100に送信する通信部を備える。
図4は、患者の体に装着される着用型端末機(ウエラブルデバイス)20の機能構成を示す。センサーによって患者の体から収集した生体情報データをシステムサーバー100に送信する通信部を備える。
図5は、本発明の一つの実施態様で用いられるシステムサーバー100の表示画面の例を示し、
図6は、本発明の一つの実施態様で用いられる患者の体に装着された着用型電子端末機20の表示画面の例を示す。
【0054】
(問診表)
図7は、本発明の一つの実施態様で用いられるSF-36の問診表の例を示し、
図8は、本発明の一つの実施態様で用いられるRDQの問診表の例を示す。本発明の一つの実施態様では、患者の健康状態をSF-36の問診表とRDQの問診表の質問項目に対する回答に基づいて付与されるスコアの合計値によって定量的に評価する。
【0055】
(リハビリプログラムの選択)
本発明の一つの実施態様において、システムサーバー100のメモリには、患者の疾患の種類(腰痛、膝痛、捻挫、変形性関節症、アキレス腱断裂等)ごとに異なった内容の複数のリハビリプログラムが登録されている。さらに、各疾患ごとに登録されたリハビリプログラムには、患者の定量的に評価された健康状態に応じて複数のグレードに分かれた運動プログラムが用意されている。
図13は本発明のリハビリプログラムの構成の一つの例を示す。
【0056】
システムサーバー100に問診表の質問項目に対する患者の回答に基づいて付与されるスコアの合計値と疾患の種類を入力することによって、当該患者に処方されるリハビリプログラムのグレードが選択される。
【0057】
(運動目標値の決定)
システムサーバーに入力した患者のプロファイルに基づいて、処方されたリハビリプログラムを実行した場合に患者に期待される運動目標値を所定の方法によって決定する。
図14は、目標心拍数、目標消費カロリー、目標歩行距離、目標歩行速度、目標歩数を、患者のプロファイル(年齢、性別、身長、体重、安静時心拍数)に基づいて決定する一つの例を示す。このようにして算出された運動目標値を修正する入力をすることが可能である。又は医師又は理学療法士が、自らの専門的判断によって個々の患者に合わせて運動目標値を設定することも可能である。
【0058】
(リハビリプログラムの更新)
電子端末から受信した患者の運動生体情報の測定データと患者のプロファイルに基づいて決定された運動目標値を比較し、その結果処方されたリハビリプログラムで指示された運動による負荷が患者にとって過剰又は過少なものだったかどうかを判断する。過剰と判断される場合には、負荷のグレードが一つ低いリハビリプログラムを提案し、過少と判断される場合には、負荷のグレードが一つ高いリハビリプログラムを提案する。
【0059】
運動の負荷が患者にとって過剰又は過少の判断基準は、本発明のシステム・装置の使用者が整形外科医療の専門的判断に基づいて設定することができる。歩行運動の負荷が過剰と判断される場合の例としては、歩行後の心拍数、消費カロリー、歩行距離、歩行速度、歩数の5項目について、例えば:
1. 測定心拍数が目標心拍数よりも20回以上低い場合1点、目標心拍数より20回以上高い場合100点を付与しそれ以外の場合において10点とする、
2. 測定消費カロリーが、目標消費カロリーよりも20kcal以上低い場合1点、設定値より20kcal上高い場合100点を付与しそれ以外の場合において10点とする、
3. 測定歩行距離が、目標歩行距離(性年代別目標値)を満たしていた場合10点、満たさなかった場合100点を付与する。
4. 測定歩行速度が、目標歩行速度(性年代別目標値)を満たしていた場合10点、満たさなかった場合100点を付与する。
5. 測定歩数が、目標歩数(性年代別目標値)を満たしていた場合10点、満たさなかった場合100点を付与する。
以上の判定により5項目中2項目特に心拍数、消費カロリーが低い場合、取りうる値のパターンは31点もしくは32点となり、40点以下をもって負荷が小さいと判断する。また同様に運動による負荷が大きい場合、心拍数や消費カロリー、歩行距離、歩行速度、歩数に関してそれぞれ2項目以上で100点を取る場合に該当し200点以上で負荷が大きいと判断する。
【実施例1】
【0060】
65歳男性 腰痛によりクリニックに来院。
外来受診時、身長170cm、体重85kg、SF-36スコア PCS 48,RDQスコア38、両者を合計して2で除した評価スコアが43となり、問診結果よりリハビリ指数3と判定された。その結果、週に3回 各20分間で1km歩行するというプログラムが選択された(
図9、
図11参照)。患者男性の安静時心拍数、身長、体重から、選択されたリハビリプログラムの目標心拍数は150/分、目標消費カロリーは110 kcalと設定された(
図10参照)。
リハビリでは20分間で1 km歩行することができたものの最大心拍数が160/分となり消費カロリーは120 kcalであった。
患者の心拍数と消費カロリーがリハビリプログラムで設定された目標値を上回ったため、リハビリプログラムのグレードを一つ落として、グレード4:1週間に2回 各10分間で1km歩行するというプログラムに移行した(
図9、
図11参照)。
【実施例2】
【0061】
60歳女性 腰痛によりクリニックに来院。
外来受診時、身長150cm、体重60kg、SF-36スコア PCS 26、 RDQスコア 24、両者を合計して2で除した評価スコアが25となり、問診結果よりリハビリ指数3と判定された(
図9、
図11参照)。その結果、週に各2回 15分間で1km歩行するというプログラムが処方された。患者女性の安静時心拍数、身長、体重から選択されたリハビリプログラムの目標心拍数は155/分、目標消費カロリーは110 kcalと設定された。
リハビリでは15分間で800mしか歩けず、またその時の最大心拍数 160 /分、消費カロリー 110 kcalとなった。
処方されたリハビリプログラムに設定された目標歩行距離を達成できなかったこと、及び最大心拍数 150 /分、消費カロリー 110 kcalであったことにより、グレードを一つ下げて週に2回 各20分間で1 km歩行するというプログラムに移行する(
図9、
図11参照)。
【実施例3】
【0062】
45歳男性 腰痛によりクリニックに来院。
外来受診時、身長160cm、体重75kg、SF-36スコア PCS 60 RDQスコア62、両者を合計して2で除した評価スコアが61となり、問診結果よりリハビリ指数7と判定された(
図9、
図11参照)。その結果、週に3回各10分間で1km歩行するというプログラムが処方された。
患者男性の安静時心拍数、身長、体重から、処方されたリハビリプログラムの目標心拍数は140/分、目標消費カロリーは100 kcalと設定された(
図10参照)。
1回目のリハビリでは15分間で1 km歩行した結果、その時の最大心拍数 130 /分、消費カロリー 90 kcalとなった。
2回目のリハビリでは15分間で1 km歩行した結果の最大心拍数が125/分、消費カロリーが85kcalであった。
以上より2回連続して、運動目標値を大きく上回ったため、グレードを一つ上げて週に3回各15分間で1 km歩行するというプログラムに移行する(
図9、
図11参照)。
【実施例4】
【0063】
60歳女性 変形性膝関節症によりクリニックに来院。
外来受診時、身長156cm、体重52kg、SF-36スコア PCS 43 WOMACスコア 46となり、両者を合計して2で除した評価スコアが44.5となった。問診結果よりリハビリ指数4と判定された。その結果、週に3回 各10分で30回(10回×3セット)椅子からの立ち座り運動をするというプログラムが選択された。
患者女性の身長、体重から、選択されたリハビリプログラムの目標心拍数は145/分、目標消費カロリーは100 kcalと設定された。
1回目のリハビリでは10分で20回しか立ち上がり運動ができず、またその時の最大心拍数 150 /分、消費カロリー 110 kcalとなった。
2回目のリハビリでは10分間で30回立ち上がり運動ができたものの最大心拍数が150 回となり消費カロリーも110 kcalであった。
以上より連続して2項目以下となったため、週に3回 10分間で20回(10回×2セット)立ち上がり運動するというプログラムに移行する。
【符号の説明】
【0064】
10 医療機関端末
20 患者側端末
21 患者端末1
22 患者端末2
23 患者端末3
100 システムサーバー
【要約】
【課題】整形外科患者のための継続的リハビリプログラムを遠隔診療システムで提供する。
【解決手段】
健康関連QOL評価尺度を用いた問診表に基づいて算出されたスコアによって患者の健康状態を定量的に評価した評価スコアに基づいて患者に適したリハビリプログラムを選択し、その後、選択されたリハビリプログラムの運動を実行した患者の健康状態を患者の体に装着された着用型電子端末機によって収集し、収集したデータがリハビリプログラムに設定された運動目標値を満たしているかどうかを判断することによって、選択したリハビリプログラムを、患者の体により適した負荷がかかるプログラムに更新する。
【選択図】
図1