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特許7344631サンプル収集関連応用、分析および診断のためのデバイス、溶液および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】サンプル収集関連応用、分析および診断のためのデバイス、溶液および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230907BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20230907BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20230907BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
G01N33/569 L
C12Q1/06
C12M1/26
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017560470
(86)(22)【出願日】2016-02-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 US2016017147
(87)【国際公開番号】W WO2016130543
(87)【国際公開日】2016-08-18
【審査請求日】2019-02-07
(31)【優先権主張番号】15164155.2
(32)【優先日】2015-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15164567.8
(32)【優先日】2015-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15196908.6
(32)【優先日】2015-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15173040.5
(32)【優先日】2015-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15154381.6
(32)【優先日】2015-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16153712.1
(32)【優先日】2016-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517276527
【氏名又は名称】アボゲン, インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュース, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ビアディラ, ユーセフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン, マナシ
(72)【発明者】
【氏名】フランク, デイビッド エス.
(72)【発明者】
【氏名】ゼマン, ジョン アール.
(72)【発明者】
【氏名】タックニー, チャールズ ティー.
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0137741(US,A1)
【文献】特表2012-523572(JP,A)
【文献】特表2015-500988(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0227303(US,A1)
【文献】米国特許第05871905(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336159(US,A1)
【文献】特表2014-531902(JP,A)
【文献】特表2002-514084(JP,A)
【文献】特表2000-501931(JP,A)
【文献】特表2008-545418(JP,A)
【文献】特表2014-526032(JP,A)
【文献】特表2014-527615(JP,A)
【文献】米国特許第06291178(US,B1)
【文献】特開2002-357599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0121697(US,A1)
【文献】Maria Cristina Dos-Santos et al.,Cell phenotyping in saliva of individuals under psychological stress,Cellular Immunology,260, 1,2009年,39-43
【文献】Mordechai Yigla et al.,Oxidative stress indices in COPD-Broncho-alveolar lavage and salivary analysis,Archives of Oral Biology,52, 1,2007年,36-43
【文献】Andelko Vidovic et al.,Determination of leucocyte subsets in human saliva by flow cytometry,Archives of Oral Biology,57, 5,2012年,577-583
【文献】Samuel Baron et al.,Why is HIV Rarely Transmitted by Oral Secretions?,Arch Intern Med.,159, 3,1999年,303-310
【文献】Richard Pink et al.,Saliva as a Diagnostic medium,Biomed Pap Med Fac Univ Palacky Olomouc Czech Repub,153, 2,2009年,103-110
【文献】Maria Cristina Dos-Santos et al.,Cell phenotyping in saliva of individuals under psychological stress,Cellular Immunology,260, 1,2009年,39-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
C12Q 1/06
C12Q 1/68
C12M 1/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ンパク質、浮遊性DNAおよび浮遊性RNAを病状の指標とする方法であって、前記方法は、
唾液サンプルを前記唾液サンプル中の細胞、タンパク質、浮遊性DNAおよび浮遊性RNAを安定させるための保存溶液と接触させて混合物を形成し、そうすることで前記唾液サンプル中の細胞、タンパク質、浮遊性DNAおよび浮遊性RNAを安定させるステップであって、前記タンパク質、浮遊性DNAおよび浮遊性RNAは、前記唾液サンプルの細胞外成分であり、前記保存溶液が、パラホルムアルデヒドと、ヒトおよび/または他の動物種からの少なくとも1つの血清タンパク質と、アジ化ナトリウムとを含み、前記保存溶液が6.4~8.4のpHに緩衝される、ステップと、
前記混合物を室温で貯蔵するステップと、
その後、前記細胞から、前記タンパク質、浮遊性DNAおよび浮遊性RNAを分離するステップと
を含むことを特徴とし、
ここで、前記サンプルからの前記タンパク質、浮遊性DNAおよび浮遊性RNAから選択される2つまたはそれを上回る分析物が分析されて前記病状を示し、
前記病状が、癌である、
方法。
【請求項2】
前記分析するステップは、分子分析を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌が、肺癌、肺癌腫、白血病または非小細胞肺癌腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒトおよび/または他の動物種からの少なくとも1つの血清タンパク質が、ウシ胎仔血清を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記保存溶液が、1%(v/v)のパラホルムアルデヒドと、1%(v/v)のウシ胎仔血清と、0.01%(w/v)のアジ化ナトリウムとを含み、前記保存溶液が7.4のpHに緩衝される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記唾液サンプルおよび前記保存溶液が、1:1の体積比で接触される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
記タンパク質、浮遊性DNAおよび/または浮遊性RNAが、前記細胞から遠心分離により分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分析するステップは、シークエンシングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分析するステップは、全ゲノムシークエンシングを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分析するステップは、RNAシークエンシングを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記分析するステップは、DNAシークエンシングを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記分析するステップは、エピジェネティックシークエンシングを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
対象が薬物で処置されることが示される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞を分析するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(開示の分野)
本開示は、有害および/または毒性物質、特に、自然に発現された体液(例えば、口腔液、尿)を含む体液または他の物質のサンプルを収集するためのデバイス、溶液、および方法に関する。加えて、または代替として、本開示は、概して、そのような液体からの細胞および/または細胞外成分の保存に関する。加えて、または代替として、本開示は、概して、機能的ゲノム学に関する。加えて、または代替として、本開示は、(例えば)診断、遺伝学、機能的ゲノム、エピジェネティック研究、ならびにバイオマーカ発見のうちのいずれかにおける研究のためのそのような体液からの細胞および/または細胞外成分の単離および/または保存に関する。加えて、または代替として、本開示は、概して、天然に発現する体液を使用することによる疾患または感染症の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
個人化医療は、1つの全体用治療モデルとは対照的な個人への治療のカスタマイズである。個人化医療は、体調に基づいて患者をカテゴライズし、そのカテゴリのためだけに最適な医療解決策を設計することを伴う。個人化医療の進展は、治療のために、ならびにスクリーニングおよび早期疾患検出のための診断の開発のために集団を階層化するためのバイオマーカの発見、検証、および商業化に依存する。
【0003】
エピジェネティック研究は、医学研究の最先端を担っており、癌、肥満、糖尿病、統合失調症、およびアルツハイマー病を含むいくつかの身体および精神疾患の病因に関与する(Alikaら、2010;Grantら、2010;McGowenら、2009;McGowenおよびSzyf、2010;Plazas-MayorcaおよびVrana、2011;ならびにPortelaおよびEsteller、2010)。加えて、エピジェネティックスは、癌、糖尿病、薬剤統合、薬剤有効性、小児期攻撃性、自殺行動、加齢、炎症、疼痛、肥満、統合失調症、および他の精神疾患を含むが、それらに限定されない、多くの科学および医療分野で特に有望であり得る(Abdolmalekyら、2005;Costaら、2003;Iwamoto & Kato、2009;Kuratomiら、2007;McGowan & Kato、2007;McGowenおよびSzyf、2010;Peedicayil、2007;Petronisら、1999;McGowenおよびSzyf、2010;Plazas-MayorcaおよびVrana、2011;ならびにZawiaら、2009)。
【0004】
当該分野内の主な課題は、全ゲノム分析研究を含む、大規模エピジェネティック研究のために十分である、在宅サンプル収集用の適切な原試料の識別を含む。エピジェネティックスは、エピジェネティック機構が環境的体験の分子記憶を提供し得ることを増加しつつある証拠が示唆するように、遺伝子・環境相互作用の機構を理解することの手掛かりであり得る(Ho,2010;Kappeler and Meaney,2010:McGowen et al.,2009;McGowen and Szyf,2010;Portela and Esteller,2010;Richards,2008;Russo et al.,2010;Tsai et al.,2010;およびVlaanderen et al.,2010)。一部のヒトからの予備データは、末梢血液細胞中の明確に異なるメチル化パターンが、小児期攻撃性、自殺行動、および加齢を含む、社会的行動と関連付けられることを示唆する(Kappeler and Meaney,2010;McGowen et al.,2009;McGowen and Szyf,2010;Portela and Esteller,2010;Russo et al.,2010;Tierling et al.,2010;Tsai et al.;2010およびZhang et al.,2011)。
【0005】
ヒトの疾患、特に、精神疾患の異種性質、および寄与する病因的因子の複雑な相互作用に少なくとも部分的に起因して、研究は、信頼性があり、かつ有意な効果を提供するために大型サンプルサイズを必要とする。しかしながら、エピジェネティック研究用のサンプル収集のための現在の研究オプションは、「大型サンプルサイズ」という本要件を満たさない。研究用の大型サンプルサイズの必要性はまた、ヒト・環境相互作用もまた多くの寄与する要因を伴う非常に複雑な性質であるため、これらの相互作用を研究することに関して有意な効果を生じるために当てはまる。大規模な「人口規模」(少なくとも数百から数千の対象サンプル数の)エピジェネティック研究を行う能力は、ヒト・環境相互作用の新しい理解を導入し、現代医学の進歩に不可欠なエピジェネティックベースのスクリーニング診断の開発を促進する、縦断研究の完成を促進することができる。本エピジェネティック研究は、どのようにして環境が我々のエピゲノムに影響を及ぼすか、およびどのようにしてこれが個体の健康転帰に関するかにつながり得、さらに、高リスクと見なされる個体のための予防介入、および診断を含むがそれに限定されない、これらの健康格差のための診断法の開発につながり得る。
【0006】
ヒト集団内の環境および他の複雑な相互作用を定量化しようとする、いくつかのエピジェネティック研究は、実験のための原試料として血液を使用する。血液は、以下であるため、大集団規模の研究を行う研究者の能力を制約し得る。
1. 概して、医学的監視を必要とする
2. 収集のための侵襲的手技を伴う
3. 参加を制限する悪い印象がある
4. 収集して輸送することが高価である
【0007】
自然に発現された体液、例えば、唾液および尿は、以下であるため、在宅サンプル収集用の付加的または代替的な適切な原試料であり得る。
1. 侵襲的技法を必要としない
2. 血液と同一の悪い印象がない
3. 専門家の監視を必要としない
4. 収集することが安価であり得る
【0008】
加えて、少なくとも唾液は、白血球を含有することが示されている(Dos-Santos et al.,2009)。体液、例えば、口腔液、尿の使用は、大規模な「人口規模」エピジェネティック研究を可能にし得る。加えて、口腔液または尿の在宅サンプル収集は、参加者の数を大いに増加させることができ、サンプルが世界中のどこからでも対象によってより容易に出荷/輸送されることができるため、はるかに広い範囲の研究オプションを利用可能にし得る。例えば、世界中のどこからでもサンプルをより容易に出荷する能力は、サンプルが研究室インフラストラクチャを有していない国からであるときに特に有用であり得る。
【0009】
生物のゲノムは、その遺伝情報を含有し、有機体の全細胞中で同一である、固定配列である。有機体のエピゲノムは、対照的に、細胞型の間で変動し、有機体の生涯にわたって変化する。したがって、エピジェネティック研究は、これらの差異を制御するように、サンプル材料源として単一の細胞型を含んでもよい(Johnson and Tricker,2010;Lister et al.,2009;およびRangwala et al.,2006)。例えば、ヒトの唾液は、上皮細胞、血液中で通常見出される細胞(すなわち、T細胞およびB細胞)、細菌、および残渣(Dos-Santos et al.,2009およびViet and Schmidt,2008)を含む、多数の細胞型を含有する。後成的にプロファイル作成するために最も重要である唾液中の細胞は、これらの細胞が全身からエピジェネティック情報を伝えるため、血流に由来するものである(Kappeler and Meaney,2010;McGowen and Szyf, 2010;McGowen and Szyf,2010;Righini et al,2007;Rosas et al.,2011;Vlaanderen et al.,2010およびZhang et al.,2011)。
【0010】
加えて、唾液中の細胞の圧倒的多数を構成する(Dos-Santos et al.,2009)、上皮細胞等の血液中で見出されない唾液中の細胞が、少数の細胞の影響を弱めることによってT細胞(血液中で生じた細胞)で見られるエピジェネティック影響を「隠す」能力を有する(Dos Santos et al.,2009、Lister et al.,2009;およびTierling et al.,2010)ため、唾液DNA全体を使用することは実用的ではない場合がある。これらの懸念に対処するために、AboGenは、細胞特異的マーカおよび(例えば、磁気的)単離技法を利用することによって、唾液等の体液中で見出される異なる細胞型を分離して抽出する方法を開発した。この方法は、大規模機能的ゲノム研究(例えば、エピゲノム研究)を含む、下流生物学的用途に使用されることができる、濃縮細胞を生じさせるために、唾液等の体液の実用的な量を使用する。例えば、唾液サンプル処理技術は、収集されたサンプルが単一細胞型に処理され、それらのエピゲノムをプロファイル作成させることを可能にする。
【0011】
さらに、唾液(および他の体液)は、以下等の理由により、下流実験に関する血液細胞用の原試料としての細胞単離について課題を提示し得る。
1. 血液は、輸送体流体である一方で、唾液は、プロテアーゼ、酵素、および分泌された物質が豊富であり得る消化液であり、尿は、所望されない老廃物から成る排泄液である。
2. 細胞は、長期間にわたって唾液中で無傷で生存しない。細胞が数週間も(またはいくつかの細胞型については数年さえも)血液中で生存することができる一方で、唾液中の細胞生存は、典型的には、1時間未満である。15、45、および90分後に生存する唾液中の細胞の割合は、それぞれ、わずか約66%、33%、および27%であることが報告されている。唾液は、その生理学的性質によって、分析または診断のための全細胞保存に適さない環境を提示する。いくつかの研究は、細胞の95%が60分まで生存できないことを実証している(Baron et al.,1999)。
3. いくつかの流体は、広いpH範囲を有し得、唾液等の報告されたpH値のうちのいくつかは、血液がそのpHに達した場合に死をもたらすであろう(唾液は6.2~7.4、尿は4.5~8、血液は7.35~7.45である)。
4. いくつかの流体は、血液より多くの細菌を含有する。
5. いくつかの流体は、個体の間で変動し、細胞単離に干渉する、非細胞物質を含有する。
6. いくつかの流体は、血液中で豊富であり得るが、唾液または尿等の他の自然に発現された体液中では希少であり、血液中と異なり、上皮細胞等の他の細胞型が大いに数が上回って、T細胞等の血液細胞を含む。
7. 唾液等のいくつかの体液中のリンパ球のサブセットは、血液中のこれらの細胞型の集団と大いに異なる。例えば、CD4+CD8-T細胞のみが、唾液中で見出されることが報告されている。
8. 唾液等のいくつかの流体は、個体あたり1日に約0.5~1.5リットルの割合で毎日産生される。
【0012】
したがって、唾液、口腔液、および他の自然に発現された体液から希少な細胞(すなわち、T細胞)を単離する新しい方法の必要性がある。
【0013】
広く地理的に分散している人々の大きな集団から唾液サンプルを収集する(例:機能的ゲノム研究または医療診断法)ために、いくつかの要件が、最適なサンプル収集デバイスについて満たされる必要があり得る。例えば、閉鎖チャンバの中に毒性保存溶液をしっかりと収納させるサンプル収集デバイスを有することが有益であり得る。加えて、サンプル収集デバイスは、安全に封入された毒性溶液とともにドナーに発送されることが可能であり得る。サンプル収集デバイスはまた、毒性溶液にドナーを暴露するリスクを伴わずに、ヒトの唾液または尿等のドナー検体の容易かつ安全な収集も可能にし得る。さらに、サンプル収集デバイスは、毒性溶液または任意の他の危険にドナーを暴露するリスクを伴わずに、ドナーが(検体の保存のために)毒性溶液および検体を安全に混合することを可能にし得る。サンプル収集デバイスはまた、ドナーが、サンプル収集デバイスをしっかりと閉鎖した後に、概して「そのまま」処理するために、サンプル収集デバイスに加えてサンプルを研究室に発送することも可能にし得る。最後に、サンプル収集デバイスはさらに、研究室技術者がサンプル収集デバイスを受領し、概して、いかなる危険への暴露のリスクも伴わずに処理するために、それを安全に開くことを可能にし得る。
【0014】
加えて、精製プロセスは、細胞がそれらの抗原プロファイルを維持することを必要とし、エピゲノムプロファイル作成は、それらのエピゲノムが維持されることを要求する。この目的のために、細胞が、概して、これらの特徴を維持することができるような方法で、細胞を処置する必要がある。現在利用可能な処置は、概して、この必要性を満たさない。例えば、米国特許第7,267,980号および第7,749,757号は、血液からの細胞を安定させるためのリシン、グリシン、およびホルムアルデヒドを含有する溶液を開示すると理解される。米国特許第6,912,932号は、ともに混合させられたときに、血小板を含有する血液サンプルを安定させるためのホルムアルデヒドアンモニウム錯体の複数の種を生成する、反応物質を開示すると理解される。しかしながら、そのような溶液は、主に、血液の生理学的に負担をかけない環境に対処し、唾液の異なる性質に対処できない。唾液中で損傷されていない細胞および細胞外成分を保存することの困難は、過小評価されるべきではない。上記で参照される溶液は、唾液の生理学的に厳しい環境から細胞を保護せず、特に、唾液が現在提案されている様式における分析または診断用の効果的なサンプル媒体であるために十分な数で、すでに唾液中の比較的わずかな量で希少な細胞を保存することができない。したがって、特に、在宅サンプル収集を可能にするように、唾液、口腔液、および他の自然に発現された体液等の体液中の細胞の抗原性ならびにエピゲノムを保存し得る、新しい溶液および方法の必要性がある。
【0015】
個体化医療は、1つの全体用処置モデルとは対照的な個体への処置のカスタマイズである。個体化医療は、患者の体調に基づいて患者をカテゴリ化し、独占的にそのカテゴリのために最適な医療解決策を設計することを伴う。個体化医療の進展は、処置のために、ならびにスクリーニングおよび早期検出のための診断の開発のために、集団を階層化するためのバイオマーカの発見、検証、および商業化に依存する。
【0016】
エピジェネティック研究は、医学研究の最先端を担っており、癌、肥満、糖尿病、統合失調症、およびアルツハイマー病を含む、いくつかの身体および精神疾患の病因に関与する。加えて、エピジェネティックスは、癌、糖尿病、薬物統合、薬物有効性、小児期攻撃性、自殺行動、加齢、炎症、疼痛、肥満、統合失調症、および他の精神疾患を含むが、それらに限定されない、多くの科学および医療分野で特に有望であり得る。
【0017】
上記で議論されるものに対する類似考慮事項はまた、唾液中で運搬される細胞外成分、例えば、タンパク質、ウイルス、および浮遊性DNA/RNAにも適用される。そのような成分はまた、唾液の厳しい環境に起因して、急速に分解する。一般的な血液ベースの保存技法は、実践では唾液にとって効果的ではないであろうし、本理由により、唾液は、そのような細胞外成分を研究するための実用的な代替的媒体としてこれまで使用されておらず、特に、遠隔在宅サンプル収集では使用されていない。例えば、現在の技法を用いて、唾液の細胞外成分を研究するために、唾液は、即時に凍結されなければならない。凍結が即時ではない場合、これは、サイトカイン等の因子の分解に起因して、これらの因子の濃度の変化を引き起し得る。凍結後のみの唾液の細胞外因子の研究の実施例は、タンパク質のインターロイキンファミリーならびに付加的サイトカインを含む。
国際公開第WO2012/177656号および国際公開第WO2015/112496号は、エピジェネティック研究のために好適な唾液サンプルの在宅収集および保存のためのデバイス、溶液、ならびに方法を提案する。これらの文書の内容全体は、ここで完全に再現された場合のように参照することによって本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第7,267,980号明細書
【文献】米国特許第7,749,757号明細書
【文献】米国特許第6,912,932号明細書
【文献】国際公開第2012/177656号
【文献】国際公開第2015/112496号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(開示の要旨)
以下は、本開示のいくつかの側面の基本的な非限定的理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態は、国際公開第WO2012/177656号および/または国際公開第WO2015/112496号内の原理を基礎とする。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態は、添付の請求項で規定される。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態は、口腔液(例えば、唾液または痰もしくは肺吸引物の流体)または尿等の自然に発現された体液のサンプル中の細胞および/または細胞外成分を保存するための溶液を提供する。随意に、溶液は、ドナーから流体サンプルを収集するためのデバイスと組み合わせて規定されてもよい。
【0023】
本明細書で使用されるように、「細胞外」という用語は、全細胞ではなく、全細胞内に存在しない、任意および/または全ての成分を指し得る。例えば、「細胞外」は、細胞が除去された場合に残留する成分を指し得る。細胞外成分は、例えば、タンパク質、ウイルス、浮遊性DNA、および/または浮遊性RNAのうちのいずれかを含んでもよい。
【0024】
本開示のいくつかの実施形態は、(例えば、体液と混合することに先立って)血液に対して高張性である保存溶液を提供する。
【0025】
いかなる具体的理論にも拘束されることを所望するわけではないが、本発明者らは、唾液の張度(またはオスモル濃度)が、唾液を細胞生存のために厳しい環境にする有意な要因であり得ることを理解している。唾液、特に、供与されたサンプル中で収集される唾液は、血液(したがって、細胞)に対して低張性であることが分かっている。個体の唾液の中に入る血液からの細胞は、流体を細胞に引き込む破壊的浸透を受け、細胞を膨張させ、損傷させ、最終的に破裂させる。これは、唾液中で無傷で生存することが報告されている少数の細胞を説明し得る。事実上、唾液は、細胞を溶解し、このことが唾液を生存全細胞のサンプルを取得するための反直感的な媒体にする、天然の溶解溶液である。
【0026】
血液に対して高張性である保存溶液を提供することによって、この溶液は、唾液サンプルと混合させられたときに、(血液および/または細胞に対する)等張性環境に向かって張度を中和することができる。そのような環境は、収集されたサンプル中の細胞に対する浸透圧を回避するか、または少なくとも有意に低減させることができ、それによって、保存された無傷細胞の有意に向上した収率を可能にする。
【0027】
例えば、唾液中の細胞を保存するための高張性非溶解保存溶液は、血液サンプル中の全細胞を保存するか、または安定させるために意図される保存溶液からの明確な区別を表すことが留意され得る。これは、たとえ血液を保存することに焦点を当てる従来技術の教示で確認されていなくても、唾液および血液の張度の間の有意差を反映する。非溶解血液保存剤は、血液の中性の等張性環境を変化させないよう、かつ細胞に対する浸透圧を上昇させることを回避するよう、等張性であるべきである。高張保存溶液が血液と混合させられた場合、これは、血液の張度を変化させ、細胞への損傷という危険を生じるであろう。同様に、唾液サンプル中の細胞を保存するために使用される従来の等張性血液保存剤は、唾液の低張性環境に対して十分に細胞を保護できず、従来技術の教示の不足として以前に記述されたように、保存された細胞の不十分な収率を生じるであろう。
【0028】
いくつかの実施形態では、自然に発現された体液は、例えば、細胞にとって自然に低張性であるタイプであってもよいが、(例えば、唾液を含有する)口腔液に限定されず、特に、唾液自体に限定されない。
【0029】
本明細書で使用されるように、流体が、概して、1リットルにつき240~320ミリオスモル(mOsm/L)を含めた範囲内のオスモル濃度を有するときに、流体は、血液に対して等張性と見なされ得る。血液の実際のオスモル濃度は、概して、275~295mOsm/Lを含めた範囲内、随意に、約290mOsm/Lであってもよい。したがって、本明細書で使用されるような「等張性」という用語は、オスモル濃度、したがって、浸透圧の差異が有意ではない、限界を含む。流体は、240mOsm/L未満のオスモル濃度を有するときに、血液に対して低張性と見なされ得る。流体は、320mOsm/Lより大きいオスモル濃度を有するときに、血液に対して高張性と見なされ得る。
【0030】
本明細書で開示される、いくつかの実施形態では、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液のオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)240Osm/Lの「n」倍であるものとして規定され得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、13、14、または15であってもよい。
【0031】
本明細書で開示される、いくつかの実施形態では、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液のオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)275Osm/Lの「n」倍であるものとして規定され得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、13、14、または15であってもよい。
【0032】
本明細書で開示される、いくつかの実施形態では、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液のオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)290Osm/Lの「n」倍であるものとして規定され得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、13、14、または15であってもよい。
【0033】
加えて、または代替として、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液における凝集物塩イオンオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)290Osm/Lの「n」倍であり得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってもよい。
【0034】
本明細書で開示される、いくつかの実施形態では、(例えば、体液と混合することに先立った)血液と比べた溶液のオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)血液の「n」倍であるものとして規定され得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってもよい。
【0035】
加えて、または代替として、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液における塩化ナトリウム(NaCl)の濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)濃度「m」の「n」倍であり得、「m」は、1リットル当たり8.0~9.0グラム(g/L)を含めた範囲の値であり、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってもよい。
【0036】
加えて、または代替として、溶液は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)血液等張PBS濃度の「n」倍である(例えば、体液と混合することに先立った)濃度のリン酸緩衝化食塩水(PBS)を含み得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、流体の張度/オスモル濃度を測定するための技法は、その電気伝導度を測定することである。伝導度は、オスモル濃度と関連付けられ得る、イオンの存在を示す。いくつかの実施形態では、溶液は、少なくとも15ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)の伝導度、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)15.5mS/cm、16mS/cm、16.5mS/cm、17mS/cm、17.5mS/cm、18mS/cm、18.5mS/cmの群から選択される値を有する。
【0038】
電気伝導度は、単独で、または随意に、溶液の特性を定量化するための1つまたはそれを上回る他の実験的パラメータ、例えば、以下の一つもしくは両方と組み合わせて、規定されてもよい。
(i)pH-例えば、約6.4~約8.4を含めた、いくつかの実施形態では、約7.2~約7.6を含めた、随意に、約7.3~7.6を含めた範囲内の値、および/または
(ii)密度-例えば、1~1.015Kg/リットルを含めた、いくつかの実施形態では、1.0090~1.0112kg/リットルを含めた範囲内の値。
【0039】
いくつかの実施形態では、(低張性の自然に発現された体液のサンプルと混合することに先立った)溶液は、体液の収集されたサンプルと混合する際に、溶液と体液との一緒の混合物が等張性であるように、高張度を有し、張度は、血液に対して規定される。
【0040】
いくつかの実施形態では、(唾液サンプルと混合することに先立った)溶液は、収集された唾液サンプルと混合する際に、溶液と唾液の一緒の混合物が等張性であるように、張度を有し、張度は、血液に対して規定される。
【0041】
等張性溶液を取得することは、唾液サンプルの保存(例えば、固定)の間だけではなく、保存された細胞が処理または分析を待って貯蔵される期間の間でも有利であり得る。例えば、保存および/または固定された細胞は、細胞壁を通した流体移動に影響を及ぼす浸透圧条件に応じて、細胞を膨張させて破裂させ、ならびに/もしくは圧潰させて内破させ得る、浸透圧効果を依然として受けやすくあり得る。
【0042】
上記のうちのいずれかに加えて、または代替として、いくつかの実施形態では、溶液は、少なくとも1週間、随意に、少なくとも2週間、随意に、少なくとも3週間、随意に、少なくとも1ヶ月、随意に、少なくとも2ヶ月、随意に、少なくとも3ヶ月の周期にわたって、少なくとも所定の有効性まで、自然に発現された体液サンプル(例えば、唾液、痰、肺吸引物の流体、もしくは尿)中の細胞および/または細胞外成分を保存することができる。
【0043】
本開示の目的で、「保存する」とは、例えば、細胞がそれらの抗原に基づいて精製または濃縮されることができるように、細胞がそれらの抗原を分解させることを防止することと、細胞エピゲノムの変化を防止することとを指す。「エピゲノム」とは、DNAまたはDNAに結合したタンパク質の共有結合修飾による、ゲノムDNAの変化の状態もしくはパターンを指す。そのような変化の実施例は、CpGジヌクレオチド中のシトシンの第5位におけるメチル化、ヒストンのリジン残基のアセチル化、および根本的DNA配列の変化に起因しない他の遺伝的または非遺的変化を含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、「有効性」という用語は、元の体液サンプル中の少なくとも所定の割合の細胞が保存されることを意味し得る。所定の割合は、随意に、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、随意に、少なくとも75%、随意に、少なくとも80%、随意に、少なくとも85%、随意に、少なくとも90%、随意に、少なくとも95%であり得る。(保存溶液との元のサンプルの混合が混合物の正味体積を増加させ、それによって、細胞濃度を希釈するため、単位体積あたりの細胞濃度は、元の体液サンプルと比較して低減させられ得る。)
【0045】
加えて、または代替として、有効性は、単位体積あたりの細胞(例えば、ある型の、例えば、T細胞)の数を指し得る。例えば、(例えば、そのような)細胞の数は、1mlあたり少なくとも約5000、随意に、1mlあたり少なくとも約10000、随意に、1mlあたり少なくとも約12000であり得る。
【0046】
加えて、または代替として、いくつかの実施形態では、溶液は、室温において少なくとも1ヶ月、随意に、少なくとも2ヶ月、随意に、少なくとも3ヶ月、随意に、少なくとも4ヶ月の保存期間を有し得る。
【0047】
加えて、または代替として、いくつかの実施形態では、口腔液(例えば、唾液および/または痰)ならびに尿等の体液中の細胞および/または細胞外成分(例えば、タンパク質、ウイルス、浮遊性DNA、および/または浮遊性RNAのうちのいずれか)を保存するための溶液が、細胞型および細胞外成分へのさらなる分離のために、ならびに下流分析のために提供される。随意に、細胞に関して、溶液は、唾液中の細胞が貯蔵の間にそれらの抗原性および細胞構造を保持することを可能にし得る。加えて、または代替として、随意に、細胞外成分に関して、溶液は、細胞外成分(例えば、タンパク質)が、分解に対して、および/または細胞外タンパク質の生物反応性を保存することなく、保存されることを可能にし得る。いくつかの実施形態では、溶液は、唾液サンプル中の細胞および細胞外成分を両方とも保存し得る。
【0048】
溶液は、限定されないが、パラホルムアルデヒド等の少なくとも1つの化学固定剤と、少なくとも1つのプロテアーゼ阻害剤とを含むことができる。いくつかの実施形態では、溶液はさらに、例えば、少なくとも1つの抗菌剤、ヒトおよび/または他の動物種からの血清タンパク質のうちの1つ以上のものを含み得る。加えて、または代替として、溶液は、約6.4~約8.4、いくつかの実施形態では、約7.2~約7.6のpHで緩衝され得る。
【0049】
保存剤による細胞の化学的固定は、細胞の機械的強度を増加させることができ、細胞が無傷で保存され、時間とともに、自然分解および浸透圧により良く耐えることを可能にする。具体的には、数分を上回って固定剤中で細胞を貯蔵すること(いわゆる「過固定」)は、細胞の耐溶解性を増加させることが報告されている。
【0050】
タンパク質等の細胞外成分の化学的固定は、タンパク質を他の物質、例えば、他のタンパク質またはDNAと架橋することによって、これらタンパク質を結合することができる。例えば、他の物質に生物学的に結合されたタンパク質は、架橋によって、同じ物質とより堅く化学的に結合され得る。他の材料と単に近接していたタンパク質は、架橋によってその物質に結合されてもよい。架橋は、より小さいセグメント(例えば、ペプチド)への望ましくない分解に対してタンパク質を補強することによって、タンパク質を保存し得る。
【0051】
架橋は、少なくとも部分的に可逆的であり得る。架橋を逆転させることは、例えば、タンパク質等の細胞外成分の分析のための、例えば、以降の下流処理におけるステップであり得る。
【0052】
上記のうちのいずれかに加えて、または代替として、いくつかの実施形態では、溶液は、実質的に洗剤(detergent)を含まない。洗剤は、時として、細胞材料を通した透過を促進するために、生物学的サンプルの特定の処理で使用されるが、本明細書では、増加した細胞損傷および細胞損失を犠牲にすると考えられる。本開示のいくつかの実施形態によると、洗剤の存在を回避することは、保存された細胞の数を増進することができ、これは、特定の着目細胞の唾液サンプル中の比較的わずかな量を念頭に置いて、特に有利であり得る。
【0053】
前述のように、溶液は、随意に、血液に対して高張性であり得る。
【0054】
上記のうちのいずれかに加えて、または代替として、いくつかの実施形態では、自然に発現された体液(例えば、唾液、痰、または他の口腔液、もしくは尿)の保存されたサンプルを含有する、サンプル収集デバイスが提供され、保存されたサンプルは、血液に対して等張性である。随意に、保存されたサンプルは、(i)自然に発現された体液の収集されたサンプルおよび(ii)保存溶液の混合物であってもよい。
【0055】
上記のうちのいずれかに加えて、または代替として、本開示のいくつかの実施形態は、結果として生じる混合物の張度を等張性にするように、低張性の自然に発現された体液のサンプルと混合するための高張性保存溶液の使用を提供し、張度は、血液に対して規定される。実施例のみとして、体液は、唾液であってもよいか、または唾液を含有してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、1つ以上の体液中の細胞を保存する方法は、例えば、細胞がそれらの抗原性およびエピゲノムを保持することを可能にする、本開示の1つおよび/または別の実施形態による、収集された細胞を溶液と接触させることを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る体液中の細胞外成分を保存するための方法は、特定の細胞外成分、例えば、タンパク質が、随意に、生物反応性を保持することなく、それらの構造を保持することを可能にする、本開示の一実施形態および/または別の実施形態による溶液と体液の収集されたサンプルとを接触させるステップを含む。
【0058】
例えば、口腔液、唾液、痰、肺吸引物の流体、尿のうちの1つまたはそれを上回るものを含む、体液は、自然に発現されてもよい。いくつかの場合には、肺吸引物はまた、人工的に吸引されてもよい、または促されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、化学的に固定された体液(例えば、唾液または別の口腔液、もしくは尿)中の細胞から特定の細胞外成分(例えば、タンパク質、ウイルス、浮遊性DNA、および/または浮遊性RNAのうちのいずれか)を分離するための方法は、サンプルを液体形態の上記特定の細胞外成分と、例えば、細胞のペレットとに分離させるように、サンプルを遠心分離するステップを含む。ペレットおよび液体成分は、別個に処理されてもよい。例えば、液体成分は、特定の細胞外成分の分析のために処理されてもよい。加えて、または代替として、ペレットは、細胞分析のために処理されてもよい。随意に、同じサンプルは、(i)細胞および(ii)上記細胞外成分(例えば、タンパク質、ウイルス、浮遊性DNA、および/または浮遊性RNAのうちのいずれか)の両方の分析のための材料を提供してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、体液、例えば、唾液または尿から収集される、化学的に固定された細胞から細胞を単離する方法は、細胞、細菌、および破片のペレットから、例えば、DNAおよび/または他の可溶性物質を分離するように、細胞を遠心分離することと、ペレットの他の内容物から白血球を濃縮するステップと、細胞特異的マーカに標的化された磁気ビーズに結合した抗体を使用して、具体的細胞(例えば、白血球)を単離することとを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、1つ以上の体液(例えば、唾液および/または尿)から、特定のタイプの細胞、例えば、一種の白血球(例えば、リンパ球)を単離する方法は、以下のステップのうちの1つ以上のもの(および実施形態に応じて、以下のステップのうちのいくつかまたは全て)を含む:化学的に固定された細胞を含む体液のサンプルを提供するステップ、随意に、細胞を含むペレットを得るように体液サンプルを遠心分離するステップ、随意に、緩衝液中にペレットを再懸濁させるステップ、(リンパ球を含む)白血球型の混合物の層を得るように、再懸濁したペレットに密度勾配分離を受けさせるステップ、特定のタイプの白血球上で見出されるエピトープのための具体的結合剤を含む溶液と細胞型の混合物を接触させるステップ、白血球型の混合物から(リンパ球を含む)特定のタイプの白血球を分離するステップ。
【0062】
いくつかの実施形態では、具体的結合剤は、特定のタイプの白血球上で見出されるエピトープに特異的な抗体に連結される磁気ビーズであり得、次いで、分離ステップにおいて、例えば、(他の細胞分離技法が本開示の範囲内であるが)白血球型の混合物から(リンパ球を含む)特定のタイプの白血球を磁気的に分離することを含み得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、体液(例えば、唾液、痰(または他の口腔液)、または尿)は、化学固定溶液と混合させられることができ、混合物は、ペレットから除去されることができる。次いで、ペレットは、緩衝液中に再懸濁させられることができる。再懸濁したペレットは、随意に、遠心分離され、緩衝液中で1回以上洗浄され得る。次いで、洗浄されたペレットは、勾配を形成するように親水性多糖類混合物に適用され得る。保存のための化学固定後の他の体液(例えば、唾液、尿)中の細胞の密度が、密度勾配を通して処理される細胞のために勾配の時間、温度、および/または密度の変化を必要とする、保存された細胞の異なる密度により、異なり得るため、この勾配は、血液に使用されるものと異なり得る。
【0064】
加えて、いくつかの実施形態では、白血球は、勾配に層を形成することができる。白血球層は、勾配から抽出され、残りの勾配混合物を除去するように緩衝液中で洗浄されて再ペレット化され得る、別の遠心分離管の中に配置されることができる。次いで、ペレットは、磁気ビーズに結合され、単離される細胞型に特異的である抗原に特異的である抗体を含む、緩衝液中で再懸濁させられ、培養され得る。いくつかの実施形態では、単離される細胞型は、T細胞であり、抗原は、T細胞特異的抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、CD4である。緩衝液中の再懸濁した細胞は、抗体によって結合され、抗体結合磁気ビーズに結合した細胞を管の側面に磁気的に引き付ける磁場を受けることができる。次いで、残りの液体は、管から除去され得、管は、緩衝液中で洗浄される。次いで、単離されたT細胞は、管の側面に誘引されたままであり、(例えば)以降の下流実験のための凍結等のさらなる処理の準備ができている。
【0065】
いくつかの実施形態では、自然に発現された体液中の細胞および/または細胞外成分を保存する方法は、開示される実施形態のうちのいずれかによる保存溶液と体液を接触させることを含む。
【0066】
(i)希少な、すなわち、わずかな数の細胞、および/または(ii)細胞外成分(例えば、タンパク質、ウイルス、浮遊性DNA、ならびに/もしくは浮遊性RNAのうちのいずれか)の使用に適した収率を提供するように保存される、自然に発現された体液のサンプルを取得する能力は、(i)患者の病状の診断のため、および/または(ii)処置の効果を監視するために、採血の代替的技法を提供し得る。処置される病状を診断するための診断ツールとして使用されるとき、本プロセス/製品は、時として、本明細書では「コンパニオン診断」と称され得る。例えば、MGMTプロモータメチル化を測定するMGMT唾液ベースのアッセイが、コンパニオン診断として使用されてもよい。処置の効果(例えば、特定の処置が功を奏しているかどうか、または投与量の増加もしくは減少が効果的であるかどうか、または処置が完全に功を奏するであろうかどうか)を監視するための監視ツールとして使用されるとき、本プロセス/製品は、時として、本明細書では「コンパニオンバリデータ」と称され得る。
【0067】
そのような技法はさらに、患者または研究対象からサンプルを取得することの容易性を促進し、サンプルの在宅収集を可能にし得、ひいては、研究、診断、もしくは監視プログラムに参加することができる患者または研究対象の数を大いに拡張し得る。
【0068】
血液サンプル中の特異的細胞型または他のバイオマーカを識別するために使用される技法もまた、自然に発現された体液中のそのような細胞または他のバイオマーカを識別するために(修正を伴って、または伴わずにのいずれかで)使用されてもよい。
【0069】
一例のみとして、細胞または細胞外物質は、以下のうちの1つまたはそれを上回るものを示すか、もしくは識別するように分析されてもよい。
(a) 疾患の退行または攻撃性を識別するマーカ(細胞もしくは分子)を伴う細胞。疾患は、例えば、癌(随意に、限定されないが白血病)であり得る。痰であるか、または痰を含有する流体の場合、疾患は、肺癌、肺癌腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺炎、もしくは結核のうちのいずれか1つまたはそれを上回るものであり得る。
(b) 出生前細胞。
(c) (例えば、転移性または別様の)循環腫瘍細胞。
(d) 正常な細胞の希少な形態、例えば、以下のうちのいずれか1つまたはそれを上回るもの:
-骨髄異形成症候群のような未熟細胞
-疾患を示し、口から生じない上皮細胞亜型
-例えば(限定されないが)、血液疾患の診断のためのランゲルハンス細胞
(e) 肥満を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(f) (抗生物質の不必要かつ不適切な処方を回避するために有用な)細菌感染症対ウイルス感染症を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(g) 自閉症を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(h) アルツハイマー病を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(i) 血液(hetotological)疾患を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(j) 心血管疾患もしくは障害を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(k) 糖尿病を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(l) 例えば、免疫細胞活性に関する、不安定プラーク(plack)を示す1つまたはそれを上回るバイオマーカ、および/もしくは免疫細胞バイオマーカ。
(m) 疾患または感染症の休眠および/または潜伏ならびに/もしくは隠密形態を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカならびに/もしくは1つまたはそれを上回る放出された因子。例えば、そのような疾患は、LTBIであり得る。加えて、または代替として、そのような因子は、ペプチドおよび/またはサイトカインであり得る。
(n) 随意に、細胞内HIVウイルスを検出することによる、細胞中のHIV感染の存在。
(o) 癌を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(p) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(q) 薬物耐性結核を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(r) 血液検査、電解質レベル、脂質プロファイル検査、ビタミンレベル、肝炎検査、鉄欠乏検査、肝機能検査、腎臓プロファイル検査、糖尿病スクリーニング検査、血液像検査、甲状腺プロファイル検査というカテゴリから、1つまたはそれを上回る検査を複製および/もしくは代用するために好適な1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(s) 「喘息COPDオーバーラップ症候群(ACOS)」のタイプを示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。随意に、そのようなバイオマーカは、COPDがACOSであることを検出するために、コンパニオン診断をCOPDの一般診断に提供することができる。加えて、または代替として、そのようなバイオマーカは、ACOSを処置標的にすることの有効性を監視するように、コンパニオンバリデータを提供することができる。加えて、または代替として、COPDの一般診断は、例えば、上記の(p)で参照されるバイオマーカを使用して行われてもよいか、そして/またはCOPDの一般診断は、他の従来の診断検査を使用して行われてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、自然に発現された体液(例えば、唾液、痰、尿)中の希少な細胞の診断に独占的に限定されないが、随意に、患者の病状を診断するために使用される技法は、以下のうちの1つまたはそれを上回るものを含んでもよい。
(a) フローサイトメトリ
(b) 蛍光活性化細胞分類(FACS)
(c) 免疫組織化学
(d) 分子分析(例えば、限定されないが、エピジェネティック;遺伝子;翻訳;翻訳後のうちのいずれか)
(e) 細胞学
(f) タンパク質レベル(翻訳後)分析技法
(g) 遺伝子発現を測定するためのRNAレベル(翻訳後)分析
(h) 例えば、エピジェネティック、および/またはDNAメチル化ならびにヒストン修飾を含む、DNA。
【0071】
本明細書に開示されるサンプル収集デバイスのいくつかの実施形態が、体液の収集を伴う用途について記載されるが、同デバイスはまた、有害および/または毒性流体を含む、任意の他の物質の収集を伴う特定の用途も有することが注目に値する。
【0072】
実施形態のいくつかは、全細胞および/または細胞外物質を保存するための保存剤を使用することに関するが、他の実施形態は、収集されたサンプル中の核酸を抽出および保存することに関し得る。核酸は、DNAおよび/またはRNAであってもよい。
【0073】
例えば、核酸を抽出するように収集されたサンプル中の細胞を溶解し、核酸を保存する溶液が、使用されてもよい。
【0074】
一例のみとして、その内容全体が本開示の一部として本明細書に組み込まれる、本説明に添付される付属書類1が参照される。
【0075】
本開示を限定することなく、本明細書に開示される、特定の特徴および/または側面の番号付けされた項目別リストが、以下に続く。
【0076】
項目別番号:
1. さらなる下流分析のため、および/または病状の診断のために、自然に発現された体液中の細胞ならびに/もしくは細胞外成分を保存するための溶液であって、血液に対して高張性である溶液。
2. 前記自然に発現された体液は、口腔液、唾液、痰、尿、肺吸引物の流体から選択される、1つまたはそれを上回るものを含む、項目1に記載の溶液。
3. 自然に発現された体液は、本来低張性である、項目1または2に記載の溶液。
4. 溶液のオスモル濃度が、約または少なくとも240mOsm/Lの「n」倍であり、「n」は、2~15を含めた自然数である、項目1、2または3に記載の溶液。
5. 溶液のオスモル濃度が、約または少なくとも275mOsm/Lの「n」倍であり、「n」は、2~15を含めた自然数である、項目1、2、3または4に記載の溶液。
6. 溶液のオスモル濃度が、約または少なくとも290mOsm/Lの「n」倍であり、「n」は、2~15を含めた自然数である、項目1、2、3、4または5に記載の溶液。
7. 血液と比べた溶液の張度は、約または少なくとも血液の「n」倍であり、「n」は、2~15を含めた自然数である、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
8. 溶液における凝集物塩イオンオスモル濃度は、約または少なくとも290mOsm/Lの「n」倍であり、「n」は、2~15を含めた自然数である先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
9. 溶液における塩化ナトリウム(NaCl)の濃度は、約または少なくとも濃度「m」の「n」倍であり、「m」は、1リットル当たり8.0~9.0グラム(g/L)を含めた範囲の値であり、「n」は、2~15を含めた自然数である、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
10. 溶液は、約または少なくとも血液等張PBS濃度の「n」倍である濃度のリン酸緩衝化食塩水(PBS)を含み、「n」は、2~15を含めた自然数である、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
11. 溶液は、体液の収集されたサンプルと混合する際に、溶液と体液との混合物が一緒に略等張性であるように、高張度を有し、張度は、血液に対して規定される、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
12. 溶液は、少なくとも15mS/cmの電気伝導度を有する、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
13. 溶液は、以下のさらなるパラメータのうちの少なくとも1つ、すなわち、
(i) 6.4~約8.4を含めた範囲内のpH値、および/または
(ii) 1~1.015kg/リットルを含めた範囲内の密度
を有する、項目12に記載の溶液。
14. 溶液は、少なくとも2週間、または少なくとも3週間、または少なくとも1ヶ月、または少なくとも2ヶ月、または少なくとも3ヶ月から選択される持続時間にわたって細胞を保存するために効果的である、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
15. 溶液は、以下の温度または温度範囲のうちの少なくとも1つ、すなわち、4℃~40℃、4℃~30℃、ほぼ室温、約4℃、約30℃、約40°Cとして選択される温度で保たれるときに、細胞を保存するために効果的である、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
16. 溶液は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月のうちの少なくとも1つから選択される、保存可能期間を有する、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
17. 保存可能期間は、室温での保存可能期間である、項目11に記載の溶液。
18. 溶液は、体液の当初のサンプルから少なくとも所定の割合の細胞を保存するために効果的であり、所定の割合は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%から選択される、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
19. 1mlあたりの保存された細胞または所定の細胞型の数は、少なくとも約5,000、または少なくとも約10,000、もしくは少なくとも約12,000個である、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
20. 細胞は、T細胞である、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
21. 溶液は、約6.4~約8.4のpHで緩衝される、少なくとも1つの化学的固定剤と、少なくとも1つのプロテアーゼ阻害剤とを含む、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
22. さらなる下流分析のため、および/または病状の診断のために、自然に発現された体液中の少なくとも細胞外成分を保存するための、随意の先行項目のうちのいずれかに記載の溶液であって、溶液は、随意に、約6.4~約8.4のpHで緩衝される、少なくとも1つの化学的固定剤を含む、溶液。
23. 化学的固定剤は、アルデヒドから成る群から選択される、項目21または22に記載の溶液。
24. 化学的固定剤は、パラホルムアルデヒドである、項目23に記載の溶液。
25. 化学的固定剤は、約1%(v/v)の濃度で存在する、項目21、22、23、または24に記載の溶液。
26. 少なくとも1つの抗菌剤ならびにヒトおよび/または他の動物種からの血清タンパク質のうちの1つもしくはそれを上回るものをさらに含む、項目21~25のうちのいずれかに記載の溶液。
27. 抗菌剤は、抗菌性および抗真菌性抗生物質から成る群から選択される、項目26に記載の溶液。
28. 上記または特定のプロテアーゼ阻害剤は、アスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、トレオニンプロテアーゼ阻害剤、トリプシン阻害剤、クニッツSTIプロテアーゼ阻害剤、および前述のうちのいずれかの組み合わせから成る群から選択される、項目21~27のうちのいずれかに記載の溶液。
29. 上記または特定のプロテアーゼ阻害剤は、アジ化ナトリウム、PMSF、アプロチニン、ロイペプチン、ペプスタチン、天然もしくは合成プロテアーゼ阻害剤、天然および合成の両方のプロテアーゼ阻害剤の混合物、ならびに前述の任意の組み合わせから成る群から選択される、項目21~28のうちのいずれかに記載の溶液。
30. 上記または特定のプロテアーゼ阻害剤は、アジ化ナトリウムである、項目21~29のうちのいずれかに記載の溶液。
31. 溶液は、約7.2~約7.6のpHで緩衝される、先行項目のうちのいずれかに記載の溶液。
32. 緩衝液は、バルビタール、トリスリン酸、クエン酸、カコジル酸、他の非リン酸緩衝液、および前述の任意の組み合わせから成る群から選択される、項目21~31のうちのいずれかに記載の溶液。
33. 緩衝液は、リン酸緩衝液である、項目21~31のうちのいずれかに記載の溶液。
34. 体液を先行項目のうちのいずれかによる保存溶液と接触させるステップを含む、自然に発現された体液中の細胞および/または細胞外成分を保存するための方法。
35. 体液を高張性保存溶液と接触させるステップを含む、低張性の自然に発現された体液中の細胞および/または細胞外成分を保存するための方法であって、張度は、血液に対して規定される、方法。
36. 自然に発現された体液の収集のためのサンプル収集デバイスであって、項目1~33のうちのいずれかに記載の保存溶液を含有する、サンプル収集デバイス。
37. 項目1~33のうちのいずれかに記載の溶液を含む、サンプル収集キット。
38. 流体サンプル中の細胞および/または細胞外成分の下流分析のための流体サンプルであって、前記流体サンプルは、保存溶液と混合させられる自然に発現された低張性体液を含み、前記サンプル流体は、略等張性であり、張度は、血液に対して規定される、流体サンプル。
39. 自然に発現された体液は、唾液である、項目38に記載の流体サンプル。
40. 項目38または39に記載の流体サンプルを含有する、サンプル収集デバイス。
41. 病状を診断および/または監視する方法であって、
自然に発現された体液のサンプルを取得するステップと、
サンプルをサンプル中の細胞および/または細胞外成分を安定させるための保存溶液と接触させるステップと、
病状を識別、診断、もしくは監視するために、サンプルからの安定化細胞および/または細胞外成分を分析するステップと、
を含む、方法。
42. 自然に発現された体液は、口腔液、唾液、痰、尿、肺吸引物の流体から選択される、1つまたはそれを上回るものを含む、項目41に記載の方法。
43. 自然に発現された体液は、唾液である、項目41または42に記載の方法。
44. サンプルを保存溶液と接触させるステップに先立って、サンプルを前処理剤と接触させるステップをさらに含み、前処理剤は、病状を示す1つまたはそれを上回る因子の放出を刺激するように構成される、項目41、42、または43に記載の方法。
45. 前処理剤は、病状と関連付けられる1つまたはそれを上回る抗原を含む、項目44に記載の方法。
46. 上記方法がさらに、少なくとも特定の細胞外成分から少なくとも特定の細胞を分離するステップを含む、項目41~45のうちのいずれかに記載の方法。
47. 上記少なくとも特定の細胞外成分は、タンパク質、ウイルス、浮遊性DNA、および/または浮遊性RNAから選択される、1つもしくはそれを上回るものを含む、項目46に記載の方法。
48. 分析のステップに先立って、安定化細胞を濃縮するステップをさらに含む、項目41~47のうちのいずれかに記載の方法。
49. 分析のステップに先立って、安定化細胞から1つまたはそれを上回る細胞型を単離するステップをさらに含む、項目41~48のうちのいずれかに記載の方法。
50. 分析するステップは、疾患の退行または攻撃性を識別する細胞マーカもしくは分子マーカを用いて細胞および/または細胞外成分を識別するステップを含む、項目41~49のうちのいずれかに記載の方法。
51. 疾患は、癌、白血病、肺癌、肺炎、および/または結核から成る群から選択される、1つもしくはそれを上回るものである、項目50に記載の方法。
52. 分析するステップが循環腫瘍細胞を識別することを含む、項目41~51のいずれかに記載の方法。
53. 分析するステップが出生前細胞を識別することを含む、項目41~52のいずれかに記載の方法。
54. 分析するステップが正常な細胞の希少な形態を識別することを含む、項目41~53のいずれかに記載の方法。
55 正常な細胞の希少な形態は、未熟細胞、骨髄異形成症候群を示す未熟細胞、疾患を示し、そして口から生じない上皮細胞亜型、および/またはランゲルハンス細胞から成る群から選択される、1つもしくはそれを上回るものを含む、項目54に記載の方法。
56. 分析するステップがフローサイトメトリを含む、項目41~55のいずれかに記載の方法。
57. 分析するステップが蛍光活性化細胞分類(FACS)を含む、項目41~56のいずれかに記載の方法。
58. 分析するステップが免疫組織化学を含む、項目41~57のいずれかに記載の方法。
59. 分析するステップが分子分析を含む、項目41~58のいずれかに記載の方法。
60. 分子分析は、エピジェネティック分析、遺伝子分析、翻訳分析、および/または翻訳後分析から成る群から選択される、いずれか1つまたはそれを上回るものを含む、項目59に記載の方法。
61. 分析するステップが細胞学を含む、項目41~60のいずれかに記載の方法。
62. 分析するステップが肥満を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~61のいずれかに記載の方法。
63. 分析するステップが肥満を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~62のいずれかに記載の方法。
64. 分析するステップが細菌感染症を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~63のいずれかに記載の方法。
65. 分析するステップが自閉症を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~64のいずれかに記載の方法。
66. 分析するステップがアルツハイマー病を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~65のいずれかに記載の方法。
67. 分析するステップが血液疾患を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~66のいずれかに記載の方法。
68. 分析するステップが心血管疾患もしくは障害を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~67のいずれかに記載の方法。
69. 分析するステップが糖尿病を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~68のいずれかに記載の方法。
70. 分析するステップが不安定プラークを示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~69のいずれかに記載の方法。
71. 分析するステップが潜伏結核感染を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~70のいずれかに記載の方法。
72. 分析するステップが、保存溶液と接触させるステップの前のサンプルの抗原による処理によって放出された因子を識別することを含む、項目41~70のいずれかに記載の方法。
73. 抗原は、結核菌のペプチドを含み、因子は、インターフェロンガンマを含む、項目72に記載の方法。
74. 分析するステップがHIV感染を示すバイオマーカを識別することを含む、項目41~73のいずれかに記載の方法。
75. 分析するステップが、サンプル中の検出可能な抗体の存在に先立ってHIVウイルス感染を識別することを含む、項目41~74のいずれかに記載の方法。
76. 分析するステップがサンプル中の細胞内HIVウイルスを識別することを含む、項目41~75のいずれかに記載の方法。
77. 分析するステップが、T細胞、随意に、CD4+T細胞内のHIVウイルスを識別することを含む、項目41~76のいずれかに記載の方法。
78. 分析するステップが、随意に、HIV感染および/またはAIDSを示す、免疫不全症を識別するために、CD4+T細胞の量を査定することを含む、項目41~77のいずれかに記載の方法。
79. 分析するステップが、(i)COPDを示す、および/または(ii)ACOSを示す、ならびに/もしくは(iii)COPDのACOS型と非ACOS型とを区別するためのバイオマーカを識別することを含む、項目41~78のいずれかに記載の方法。
80. HIV感染を診断する方法であって、
個体からの自然に発現された体液、随意に、唾液の保存されたサンプルを提供するステップと、
個体におけるHIV感染を診断するためにサンプル中の細胞内HIVウイルスを識別するステップと、
を含む、方法。
81. 細胞内HIVウイルスを識別するステップは、サンプルのT細胞、随意に、CD4+T細胞内のHIVウイルスを識別するステップを含む、項目80に記載の方法。
82. 提供するステップは、自然に発現された体液の固定されたサンプルを提供するステップを含む、項目81に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0077】
非限定的実施形態が、付随の図面を参照して、一例のみとして以下に説明される。
【0078】
図1図1は、自然に発現された体液のサンプルの収集および処理のためのステップを図示する、概略フロー図である。
【0079】
図2図2は、いくつかの実施形態による、0、1、2、および7日後の室温で化学的固定溶液中に貯蔵されたサンプル内のDNA収率の時間経過、ならびに各サンプルからのT細胞から抽出されたDNAを示す。
【0080】
図3図3は、保存溶液によって接触された唾液サンプル中の細胞の保存を実証するグラフである。
【0081】
図4図4は、第1の例示的サンプル収集デバイスを通る概略断面図である。
【0082】
図5図5は、第2の例示的サンプル収集デバイスを通る概略断面図である。
【0083】
図6図6は、血液からのT細胞の収率と比較した、1mlの開始材料(例えば、体液のサンプル)あたりの抽出されたT細胞の相対収率を図示する、チャートである。
【0084】
図7図7は、いくつかの実施形態による、1mlの唾液あたりの単離されたT細胞DNAのマイクログラム量の唾液用量曲線を示す。
【0085】
図8図8は、添加される保存組成物の体積に依存する、単位体積あたりのサンプル濃度の変動を図示する概略グラフである(付属書類1)
【0086】
サンプル収集、保存、単離、および分析のデバイス、溶液、および方法は、以下の図面、発明を実施するための形態、および請求項を踏まえて、さらに理解されるであろう。種々の図面中の類似参照記号は、類似要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
(実施形態の詳細な説明)
いくつかの実施形態では、本開示が仕上げ得る、国際公開第WO2012/177656号および/または国際公開第WO2015/112496号の開示が参照される。
【0088】
いくつかの実施形態では、唾液、痰、肺吸引物の流体、口腔液、および/または尿等の1つまたはそれを上回る自然に発現された体液中の細胞ならびに/もしくは細胞外成分(例えば、タンパク質、ウイルス、浮遊性DNA、および/または浮遊性RNAのうちのいずれか)を保存するための溶液が開示される。溶液は、細胞型および/または細胞外成分へのさらなる分離、ならびに体液中の細胞および/または細胞外成分の貯蔵を可能にする下流分析のために有益であり得る。細胞は、それらの抗原性および細胞構造を保持するように保存されてもよい。細胞外成分は、劣化および分解を回避するように保存されてもよい。タンパク質は、それらの生物反応性を保存することなく保存されてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、溶液は、随意に、家庭での使用に好適であるか、または少なくとも医学研究室を訪問する必要がない、サンプル収集デバイスと組み合わせて開示される。いくつかの実施形態では、溶液は、収集された体液サンプルと混合することに先立って「供給されたままの」状態で参照される。いくつかの実施形態では、溶液は、収集された体液サンプルと混合した後のその状態で参照される。
【0090】
図1を参照すると、自然に発現された体液を収集して処理するための技法が図示される。本プロセスは、最も困難な例として、唾液を含有する口腔液に関して説明される。しかしながら、同一の原理が他の自然に発現された体液の収集および処理に適用され得ることが理解され得る。唾液の言及は、そのような自然に発現された体液、具体的には、口腔液全般、および/または痰、ならびに/もしくは肺吸引物の流体、および/または尿のうちのいずれか他のものによって置換されてもよい。
【0091】
図1を参照すると、第1のステップ30は、ドナーが、流体、例えば、唾液のサンプルを提供することであってもよい。提供は、収集デバイスの中へ唾を吐くことによって、または綿棒を使用することによる等の任意の他の技法により唾液を収集することによって、達成されてもよい。
【0092】
第2のステップ32は、収集された唾液サンプル中の全細胞を保存するため、および/または収集された唾液サンプル中の細胞外成分を保存するための保存溶液と、収集された唾液サンプルを接触させる、ならびに/もしくは混合することであってもよい。細胞および/または細胞外成分を保存するための溶液は、細胞型および/または細胞外成分へのさらなる分離、ならびに下流分析のために有益であり得る。本明細書で以前に議論されたように、唾液は、着目細胞にとって、かつ細胞外成分にとって生理学的に厳しい環境を提示する。着目細胞は、サンプルが収集される数分以内に損傷されて破壊され始め得る。いくつかの実施形態では、ステップ32は、収集されたサンプル中の無傷細胞および保存された細胞外成分の収率に対する唾液の悪影響を回避するか、または低減させるために、ステップ30の比較的すぐ後に実行されてもよい。
【0093】
本明細書で使用される場合、「細胞を保存する」とは、細胞がそれらの抗原に基づいて精製または濃縮されることができるように、細胞が、それらの抗原が分解させられることを防止することと、細胞エピゲノムの変化を防止することとを指す。「エピゲノム」とは、DNAまたはDNAに結合したタンパク質の共有結合修飾による、ゲノムDNAの変化の状態もしくはパターンを指す。そのような改変の例は、CpGジヌクレオチド中のシトシンの第5位におけるメチル化、ヒストンのリシン残基のアセチル化、および基礎的DNA配列の変化に起因しない他の遺伝的または非遺伝的変化を含む。加えて、または代替として、「細胞を保存すること」は、唾液中の細胞が貯蔵中にそれらの抗原性および細胞構造を保持することを意味し得る。
【0094】
本明細書で使用される場合、保存の「有効性」という用語は、元の体液サンプル中の少なくとも所定の割合の細胞が保存されることを意味し得る。所定の割合は、随意に、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、随意に、少なくとも75%、随意に、少なくとも80%、随意に、少なくとも85%、随意に、少なくとも90%、随意に、少なくとも95%であり得る。(保存溶液との元のサンプルの混合が混合物の正味体積を増加させ、それによって、細胞濃度を希釈するため、単位体積あたりの細胞濃度は、元の体液サンプルと比較して低減させられ得る。)
【0095】
加えて、または代替として、有効性は、単位体積あたりの細胞(例えば、ある型の、例えば、T細胞)の数を指し得る。例えば、(例えば、そのような)細胞の数は、1mlあたり少なくとも約5000、随意に、1mlあたり少なくとも約10000、随意に、1mlあたり少なくとも約12000であり得る。
【0096】
加えて、または代替として、タンパク質等の細胞外成分を保存することは、タンパク質がより小さい断片(例えば、ペプチド)に分解もしくは切断されることを防止することを意味する。タンパク質を保存することはまた、タンパク質を、保存に先立ってタンパク質が生物学的に結合され得たあらゆる材料に、および/または保存後にそれらが結合する近接近している他の材料に結合することによって、タンパク質を固定化することを含んでもよい。タンパク質の生物反応性は、例えば、質量分光法によって、タンパク質が以降の下流ステップで分析されることを可能にするように、中和されてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、第2のステップ32に先立って、唾液を前処理剤、例えば、溶液、粉末、または固体作用物質と混合するように、随意の前処理ステップ42が実行されてもよい。前処理は、いくつかの実施形態では、生物学的作用物質または非生物学的作用物質、もしくは生物学的作用物質および非生物学的作用物質の混合物であってもよい。前処理剤は、いくつかの実施形態では、唾液中の特定の1つまたは複数の因子と反応する、および/またはその放出を刺激する、ならびに/もしくは別様にその産生を引き起こすために使用されてもよい。加えて、または代替として、前処理剤は、唾液の生物反応的応答を刺激してもよい。
【0098】
そのような生物反応的応答は、例えば、固定によって、唾液が保存された後に、あまり効果的ではない場合がある(または全く効果的ではない場合がある)。
【0099】
前処理剤の一例は、唾液が関連疾患および/または感染症に感染した個体に由来するかどうかを判定するように、リンパ球等の細胞からの特定の因子の放出を刺激するか、もしくは引き起こすための抗原であってもよい。例えば、前処理剤は、ペプチドを含んでもよい。以降で説明される潜伏結核感染(LTBI)の検出で使用される1つの具体的な例では、ペプチドは、リンパ球によって認識され、唾液がLTBIに感染した個体に由来する場合に、インターフェロンガンマ等の因子の放出の形態で生物応答を刺激する、結核菌からのペプチドであってもよい。前処理剤は、随意に、1つより多くの抗原および/または1つより多くのペプチドを含んでもよい。
【0100】
本開示のいくつかの実施形態は、(例えば、体液と混合することに先立って)血液に対して高張性であるそのような保存溶液を提供する。
【0101】
いかなる具体的理論にも拘束されることを所望するわけではないが、本明細書において前述で説明されるように、唾液の張度(またはオスモル濃度)が、唾液を細胞生存のために厳しい環境にする有意な要因であり得ると考えられる。唾液、特に、供与されたサンプル中で収集される唾液は、血液に対して低張性であることが分かっている。個体の唾液の中に入る血液からの細胞は、流体を細胞に引き込む破壊的浸透圧を受け、細胞を膨張させ、損傷させ、最終的に破裂させる。これは、唾液中で損傷されずに生存することが報告されている少数の細胞を説明し得る。これはまた、例えば、HIVが他の体液によってよりも唾液によってあまり伝染しない理由も説明し得、血液から唾液の中へ入るHIV感染細胞を含む細胞は、浸透の結果として細胞が破裂するため、長く生存することができない。類似の破壊および細胞損傷が、一般に、血液から唾液の中へ入る細胞に付与される。身体は、高速の血流を唾液腺に提供し、口の中で死滅する細胞の補充を可能にすることによって、そのような細胞破壊を補償する。唾液腺への血流は、弛緩筋状態の骨格筋への血流を約100倍上回ると報告されている。運動する骨格筋への血流は、最大で約10倍増加するが、その時でさえ、唾液腺への血流は依然として、運動する筋肉の血流の優に約10倍を超える。これは、唾液の厳しい環境および唾液中の急速な細胞死へのさらなる証拠を提供し、したがって、細胞の一定の補充を必要とする。
【0102】
血液に対して高張性である保存溶液を提供することによって、この溶液は、唾液サンプルと混合させられたときに、唾液の低張度を中和し、等張性環境に向かって張度を平衡化することができる。そのような環境は、収集されたサンプル中の細胞に対する浸透圧を回避するか、または少なくとも有意に低減させることができ、それによって、保存のために細胞が損傷されずに生存することを可能にし、分析または診断のために保存された細胞の有意に向上した収率を可能にする。
【0103】
等張性溶液を取得することは、唾液サンプルの保存(例えば、固定)の間だけではなく、保存された細胞が処理または分析を待って貯蔵される期間の間でも有利であり得る。例えば、保存および/または固定された細胞は、細胞壁を通した流体移動に影響を及ぼす浸透圧条件に応じて、細胞を膨張させて破裂させ、ならびに/もしくは圧潰させて内破させ得る、浸透圧効果を依然として受けやすくあり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、自然に発現された体液は、例えば、自然に低張性であるタイプであってもよいが、(例えば、唾液を含有する)口腔液に限定されず、特に、唾液自体に限定されない。
【0105】
本明細書で開示される、いくつかの実施形態では、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液のオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)240mOsm/Lの「n」倍であるものとして規定され得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、13、14、または15であってもよい。
【0106】
本明細書で開示される、いくつかの実施形態では、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液のオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)275mOsm/Lの「n」倍であるものとして規定され得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、13、14、または15であってもよい。
【0107】
本明細書で開示される、いくつかの実施形態では、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液のオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)290mOsm/Lの「n」倍であるものとして規定され得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、13、14、または15であってもよい。
【0108】
加えて、または代替として、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液における凝集物塩イオンオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)290mOsm/Lの「n」倍であり得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってもよい。
【0109】
本明細書で開示される、いくつかの実施形態では、(例えば、体液と混合することに先立った)血液と比べた溶液のオスモル濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)血液の「n」倍であるものとして規定され得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってもよい。
【0110】
加えて、または代替として、(例えば、体液と混合することに先立った)溶液における塩化ナトリウム(NaCl)の濃度は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)濃度「m」の「n」倍であり得、「m」は、1リットル当たり8.0~9.0グラムを含めたの範囲の値であり、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってもよい。
【0111】
加えて、または代替として、溶液は、随意に、約または少なくとも(いずれの場合も)血液等張PBS濃度の「n」倍である(例えば、体液と混合することに先立った)濃度のリン酸緩衝化食塩水(PBS)を含み得、「n」は、2~15を含めた自然数である。例えば、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15であってもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、(低張性の自然に発現された体液のサンプルと混合することに先立った)溶液は、体液の収集されたサンプルと混合する際に、溶液と体液との一緒の混合物が等張性であるように、高張度を有し、張度は、血液に対して規定される。
【0113】
いくつかの実施形態では、(唾液サンプルと混合することに先立った)溶液は、収集された唾液サンプルと混合する際に、溶液と唾液の一緒の混合物が等張性であるように、張度を有し、張度は、血液に対して規定される。
【0114】
保存溶液は、限定されないが、パラホルムアルデヒド等の少なくとも1つの化学固定剤と、少なくとも1つのプロテアーゼ阻害剤とを含み得る。いくつかの実施形態では、溶液はさらに、少なくとも1つの抗菌剤、ヒトおよび/または他の動物種からの血清タンパク質のうちの1つ以上のものを含み得る。溶液は、約6.4~約8.4、好ましくは、約7.2~約7.6のpHで緩衝されることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、以下の説明における作用物質の濃度は、サンプル保存溶液自体の濃度であり得る。体液に応じて、そして唾液の場合、溶液および体液のほぼ等しい体積が、ともに混合させられることができる。これは、好ましくは、体液からの細胞に、室温で少なくとも1週間にわたってそれらの抗原性およびDNAを保持させる。
【0116】
本開示のいくつかの実施形態では、デバイス内で保持され、展開される保存溶液の体積は、例えば、尿中の細胞の保存のために関連する、約100~約500mlであり得る。したがって、尿のための保存溶液は、尿に対して約10倍(10x)濃縮溶液~1.5倍(1.5x)溶液のいずれかであり得る。
【0117】
いくつかの実施形態による「化学固定剤」は、細胞が分解に抵抗するように、細胞成分を変化させるために使用される化学架橋結合化合物である。化学固定剤はまた、ヒストンおよび他のDNA結合タンパク質をDNAに架橋結合する役割を果たすこともできる。そのような作用物質は、当技術分野で公知であり、限定ではないが、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド、ホルマリン、アルデヒド、アルコール、酸化剤、水銀剤、ピクリン酸塩、ヘペスグルタミン酸緩衝液介在有機溶媒保護効果(HOPE)、Zambonis固定剤等の固定剤の組み合わせ、アルデヒドの組み合わせ、および合成架橋結合試薬を含み得る。いくつかの実施形態では、化学固定剤は、パラホルムアルデヒドである。いくつかの実施形態では、化学固定剤は、約1%(v/v)の濃度で存在する。
【0118】
タンパク質等の細胞外成分の化学的固定は、タンパク質を他の物質、例えば、他のタンパク質またはDNAと架橋することによって、これらタンパク質を結合することができる。例えば、他の物質に生物学的に結合されたタンパク質は、架橋によって、同じ物質とより堅く化学的に結合され得る。他の材料と単に近接していたタンパク質は、架橋によってその物質に結合されてもよい。架橋は、より小さいセグメントへの望ましくない分解に対してタンパク質を補強することによって(例えば、ペプチドに分解されるのを避ける)、タンパク質を保存し得る。
【0119】
例えば、パラホルムアルデヒドのアルデヒド基は、タンパク質の窒素および他の原子と反応する。本反応は、接近しているタンパク質の間にメチレン橋の形成を引き起こす。これは、DNAを「捕捉する」(例えば、固定が、固定剤との反応に起因して、DNAに結合されたタンパク質(例えば、転写因子)を定位置で固定化させる)。DNAがこれらのメチレン橋の間で捕捉され得るだけではなく、脂質、炭水化物、DNA、およびRNAも捕捉され得る。
【0120】
架橋は、少なくとも部分的に可逆的であり得る。架橋を逆転させることは、例えば、タンパク質等の細胞外成分の分析のための、例えば、以降の下流処理におけるステップであり得る。例えば、細菌タンパク質およびヒトタンパク質は、相互に、または浮遊性DNAと架橋してもよい。以降に下流で架橋結合を逆転させることが、分析を可能にする。
【0121】
体液中に存在するプロテアーゼによる分解から細胞を保護するために、いくつかの実施形態では、溶液は、少なくとも1つのプロテアーゼ阻害剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ阻害剤は、アスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤(例えば、セルピン)、トレオニンプロテアーゼ阻害剤、トリプシン阻害剤、およびクニッツSTIプロテアーゼ阻害剤から成る群から選択されることができる。いくつかの具体的な非限定的実施例は、アジ化ナトリウム、PMSF、アプロチニン、ロイペプチン、ペプスタチン、天然または合成プロテイナーゼ阻害剤、およびプロテアーゼ阻害剤のカクテル混合物を含む。これらの阻害剤の好適な濃度は、限定ではないが、約0.1~1mMにおけるPMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)セリンプロテアーゼ、約1mMにおけるベンズアミジンセリンプロテアーゼ、約1μg/mlにおけるペプスタチンA酸プロテアーゼ、約1μg/mlにおけるロイペプチンチオールプロテアーゼ、約5μg/mlにおけるアプロチニンセリンプロテアーゼ、および約1μg/mlにおけるアンチパインチオールプロテアーゼを含むことができる。ある実施形態では、プロテアーゼ阻害剤は、約0.01%(w/v)の濃度におけるアジ化ナトリウムである。
【0122】
微生物汚染からの細胞への損傷を防止するために、溶液のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの抗菌剤を含む。好適な抗菌剤は、限定ではないが、抗菌性または抗真菌性抗生物質を含む。
【0123】
細胞構造の保存は、随意に、いくつかの実施形態では溶液に添加され得る、血清タンパク質の存在によって増進される。加えて、血清タンパク質は、細胞と溶液との間の浸透圧差を中和するために使用され得る。これらは、ヒトまたは他の動物源に由来し得る。ある場合には、全血清が使用され得る。例えば、ウシ胎仔血清が、いくつかの実施形態では約1%(v/v)で添加され得る。
【0124】
上記のうちのいずれかに加えて、または代替として、いくつかの実施形態では、溶液は、実質的に洗剤(detergent)を含まない。洗剤は、時として、細胞材料を通した透過を促進するために、(例えば、蛍光染料と結合された抗体)生物学的サンプルの特定の処理で使用されるが、本明細書では、増加した細胞損傷および細胞損失を犠牲にすると考えられる。本開示のいくつかの実施形態によると、洗剤の存在を回避することは、保存された細胞の数を増進することができ、これは、特定の着目細胞の唾液サンプル中の比較的わずかな量を念頭に置いて、特に有利であり得る。
【0125】
本開示による溶液は、前述の実施形態の任意の組み合わせを含み得る。
【0126】
本開示のいくつかの実施形態では、1つ以上の体液中の細胞および/または細胞外成分を保存する方法が開示される。細胞および/または細胞外成分を保存する方法は、本開示による溶液と体液を接触させることを含むことができる。体液は、種々の細胞型および/または細胞外成分を含むことができ、体液中の細胞および/または細胞外成分は、本開示による溶液によって保存されることができる。本開示にとって重要ではないが、約1対1の溶液対体液の比が、典型的に使用される。
【0127】
以下の実施例は、体液中の細胞および/または細胞外成分を保存するための溶液および方法のいくつかの実施形態をさらに例証することを意図しており、本開示の範囲を限定すると解釈されるものではない。
【0128】
例えば、pH7.4のPBS、1%パラホルムアルデヒド、1%FBS、および0.01%NaN3の溶液が、唾液と1:1の比で添加されることができ、次いで、T細胞が、精製されてDNA抽出されることができる。そのようなプロセスの結果は、図2に示されている。これらの結果は、T細胞の抗原性およびDNAの完全性が少なくとも1週間にわたって維持されたことを実証することができる。
【0129】
図3に示されるように、さらなる試験は、長期持続時間にわたって、高温でさえも、かつ長期保存期間後でさえも、唾液サンプル中のT細胞を保存することにおいて溶液の有効性を実証している。
【0130】
図3では、水平軸は、分析によって実証されるような1:1の比で保存溶液と混合させられた唾液サンプルの1mlあたりのT細胞の数を(千単位で)表す。細胞濃度は、保存溶液との1:1混合の結果として、元の唾液サンプルと比較して効果的に半分にされる。
【0131】
第1の(最左)円柱は、サンプル収集および保存溶液との混合後に数時間にわたって室温で貯蔵された3つのサンプル中の細胞の数を示す。第1の円柱は、他のサンプル中の細胞数を査定するための基準の役割を果たす。
【0132】
第2、第3、および第4の円柱は、サンプル収集および保存溶液との混合後に、各々が1日、2日、および1ヶ月にわたって室温でそれぞれ貯蔵された、3つのサンプルの3つの群の中の細胞の数を比較する。第2から第3の円柱は、互いまたは第1の円柱との変動をほとんど示さない。
【0133】
第5、第6、第7、および第8の円柱は、サンプル収集および保存溶液との混合後に3ヶ月の期間にわたって各々が貯蔵され、それぞれ、4℃、室温、30℃、および40℃で保たれた、10個のサンプルの群の中の細胞の数を比較する。試験が長期保存に焦点を合わせられたため、(3つのサンプルの代わりに)10個のサンプルが使用された。第5から第8の円柱は、互いまたは第1の円柱との変動をほとんど示さない。
【0134】
最後の円柱は、10個のサンプルのサンプル群を使用して、および4ヶ月にわたって貯蔵された(使用前保存期間)保存溶液を使用して、第2の円柱について試験を繰り返す。上記のように、試験が長期保存期間を実証することに焦点を合わせられたため、(3つのサンプルの代わりに)10個のサンプルが使用された。
【0135】
グラフは、保存溶液が、長期持続時間にわたって、広範囲の温度条件にわたって、かつ長期保存期間後でさえも、唾液中のT細胞を保存するのに極めて効果的であることを図示する。溶液は、他のタイプの細胞のための類似または対応する保存能力を有し得る。異なる円柱における細胞数の間の偏差は、少なくとも、サンプルを提供する異なる人々および/または同一の個対からでも異なるサンプルからの細胞数の通常の差によって説明されることができる。1mlあたりの細胞の数はまた、下流細胞分析を可能にするために著しく十分である。
【0136】
再度、図1を参照すると、ステップ30および32、ならびに随意のステップ42は、任意の好適な装置またはデバイスを使用して実行されてもよい。単純な技法では、ステップ32および/またはステップ42は、保存溶液ならびに/もしくは前処理剤を含有する別個のコンテナを開くこと、保存溶液ならびに/もしくは前処理剤を収集されたサンプルに手動で添加すること、および/または溶液を収集されたサンプルと手動で混合することによって、実行されてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、ステップ30および32、随意に、ステップ42は、図4または5に図示される専用サンプル収集デバイス10を使用して、(34で)ともに実行されてもよい。デバイス10は、家庭での使用に好適であり得るか、または少なくとも研究室を訪問する必要がない、タイプであってもよい。サンプル収集デバイス10は、例えば、ユーザが自然に発現された体液のサンプルを提供するために、携帯用であり得るか、そして/または(例えば、郵便配達もしくは宅配を介して)家にいるユーザに提供されてもよい。代替として、サンプル収集デバイス10はまた、研究室または病院での使用のために便利であり得る。
【0137】
図4および5は、収集デバイス10の2つの代替実施例を図示する。デバイス10は、概して、口18を有し、口18を通してデバイスに導入される自然に発現された体液のための収集領域20を画定する、第1の本体(例えば、管)16を備えてもよい。デバイス10はさらに、提供されたサンプルが導入された後にデバイス10を密閉するように、口18に取り付け可能であるか、またはその上の第2の本体(例えば、密封装置)22を備えてもよい。保存溶液12および/または前処理剤は、随意に、デバイスの少なくとも1つの内部チャンバ14の中に貯蔵され、例えば、ユーザがデバイスを密閉するか、またはデバイス10の特定の他の操作を行うときに、収集された体液サンプルと混合するように放出されてもよい。図4の実施例では、保存溶液12を含有するチャンバ14は、第2の本体(例えば、密封装置)22の中に提供される。図5の実施例では、保存溶液12を含有するチャンバ14は、第1の本体(例えば、管)16の中に提供される。いずれの実施例でも、チャンバ14は、収集領域20と連通するために、機構(24で概略的に示される)によって開放されるように構成される。開放機構24は、第1の本体(例えば、管)16への第2の本体(例えば、密封装置)22の嵌合、またはデバイス10の特定の他の手動操作に応答し得る。内部閉鎖またはキャップの解放、タップの開放、壊れやすい壁の断裂、内部カバーの除去もしくは変位、キャップまたはナットの相対的回転から選択される、1つまたはそれを上回るものを含むが、それに限定されない、種々の機構24が構想される。
【0138】
図示される実施例では、例えば、保存溶液用の単一のチャンバ14のみが図示されている。所望に応じて、さらなるチャンバ(図示せず)が、使用される場合、随意の前処理剤のために提供されてもよい。さらなるチャンバは、上記の開放機構または第2の開放機構によって開放されるように構成されてもよい。さらなるチャンバは、例えば、保存溶液を含有するチャンバの前に開放されてもよい。いくつかの実施形態では、逐次的開放機構が、前処理剤が最初に放出された後のみに保存溶液を放出するように構成されてもよい。
【0139】
随意に、デバイス10および開放機構24の例示的構造のさらなる詳細が、参照することによって本明細書に組み込まれる前述の国際公開第WO2012/177656号で提供される。
【0140】
デバイス10は、自然に発現された体液の所定のサンプル体積「Vs」の収集のために構成されてもよい。本デバイスは、例えば、所定のサンプル体積Vsが達成されたときを示すように、視覚充填スケールまたは充填線(例えば、26で示される)もしくは他の印を含んでもよい。いくつかの実施形態では、サンプル収集空間は、所定の体積Vsに等しいサイズを有してもよいか、またはサンプル収集空間は、体積がより大きくてもよい。一例のみとして、所定の体積Vsは、いくつかの実施形態では、少なくとも約1ml、または少なくとも約2ml、または少なくとも約3ml、または少なくとも約4ml、または少なくとも約5ml、またはより多くであり得る。一例のみとして、所定の体積Vsは、いくつかの実施形態では、約5ml以下、または約4ml以下、または約3ml以下、または約2ml以下、または約1ml以下であり得る。一例のみとして、いくつかの実施形態では、所定の体積Vsは、いくつかの実施形態では、約1ml~約5ml、随意に、約1ml~約4ml,随意に、約1ml~約3ml,随意に、約1ml~約2mlであり得る。一例のみとして、所定の体積Vsは、いくつかの実施形態では、約1ml、または約2ml、または約3ml、または約4ml、または約5mlであり得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、保存溶液12の体積「Vc」は、所定のサンプル体積Vsより実質的に大きくなくてもよい、または随意に、それより小さくてもよい。保存溶液体積Vcは、チャンバ14を充填するためにチャンバ14の内部空間と同一であってもよいか、または保存溶液体積Vcは、より小さくあってもよく、チャンバ14を部分的に充填する。
【0142】
保存溶液体積Vcを所定のサンプル収集体積Vsより実質的に大きくしないか、または随意に、それより小さくすることによって、保存溶液12を収集されたサンプルと混合するときの体積増加は、等しく小さくあり得る。体積増加は、単位体積あたりの細胞濃度に関してサンプルの希釈と等価であり得る。
【0143】
再度、図1を参照すると、ステップ36では、収集されたサンプルは、(随意に、仲介人を介して)処理のために、貯蔵され、そして/または研究室に輸送されてもよい。例えば、家庭で提供されたサンプルの場合、収集デバイス10は、宅配または郵便サービスを介して研究室に、もしくは以降の輸送のために仲介人に発送されてもよい。研究室による分析に先立った輸送および/または貯蔵のための時間は、数分、数時間、数日、数週間、もしくは数ヶ月にさえ及んでもよい。長期に、かつ広範囲の温度にわたって、体液サンプル中の全細胞および/または細胞外成分を安定させて保存する保存溶液の能力は、患者の血液をサンプリングする実行可能な代替案として、広範囲の分析および診断ツールが自然に発現された体液を処理するために使用されることを可能にする。また、希少な、すなわち、わずかな数の細胞を保存する能力を含む、サンプル中の保存された細胞の収率、および細胞外成分の収率は、新しい医学分析、診断、および処置監視用途のために自然に発現された体液を使用することの機会を与える。
【0144】
随意のステップ38では、保存されたサンプルは、細胞濃度を濃縮するように、および/または選択された細胞型を単離するように、ならびに/もしくは特定の細胞外成分(例えば、タンパク質、ウイルス、浮遊性DNA、および/または浮遊性RNAのうちのいずれか)を分離するように、処理されてもよい。
【0145】
本開示のいくつかの実施形態では、化学的に固定された細胞および/または化学的に固定された細胞外成分を含む、唾液もしくは尿等の1つまたはそれを上回る体液のサンプルを提供し、随意に、体液サンプルを遠心分離する、方法が開示される。遠心分離することは、細菌および残渣を含む、細胞のペレットから、特定の細胞外成分(例えば、タンパク質、ウイルス、浮遊性DNA、および/または浮遊性RNAのうちのいずれか)を分離してもよい。
【0146】
特定の着目物質に応じて、ペレットまたは液体細胞外成分のいずれか一方、もしくは両方が、さらに処理または分析されてもよい。
【0147】
例えば、本方法はさらに、ペレットの他の内容物から、リンパ球を含む白血球を濃縮するステップを含むことができる。加えて、特異的細胞が、細胞特異的マーカを標的にする磁気ビーズに結合された抗体を使用して、単離されてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、本開示は、体液(すなわち、唾液、尿など)から、特定のタイプの白血球(限定されないが、特にリンパ球を含む)を単離する方法であって、例えば、以下のうちの1つ以上のもの(およびいくつかの実施形態では、以下のステップのうちのいくつかまたは全て)を含む:化学的に固定された細胞を含むサンプル体液を提供するステップ、随意に、細胞を含むペレットを得るように体液サンプルを遠心分離するステップ、随意に、緩衝液中にペレットを再懸濁させるステップ、(リンパ球を含む)白血球型の混合物の層を得るように、再懸濁したペレットに密度勾配分離を受けさせるステップ、特定のタイプの白血球上で見出されるエピトープのための具体的結合剤を含む溶液と細胞型の混合物を接触させるステップ、白血球型の混合物から(リンパ球を含む)特定のタイプの白血球を分離するステップ。
【0149】
いくつかの実施形態では、特異的結合剤は、特定のタイプの白血球上で見出されるエピトープに特異的な抗体に結合される磁気ビーズを含むことができ、分離するステップは、白血球型の混合物から特定のタイプの白血球(リンパ球を含む)を磁気により分離するステップを含んでもよいが、相互から細胞型を分離するための任意の方法(および対応するシステム/デバイス)が、本開示の範囲内である。磁気分離は、そうするための1つの方法にすぎない。
【0150】
細胞は、本開示による方法を受けることに先立って、化学的に固定されることができる。細胞は、例えば、唾液のサンプルを化学的固定溶液と接触させることによって、化学的に固定されることができる。これは、周囲温度で細胞を経時的に保存するために行われる。これはまた、ヒストン修飾および他のタンパク質-DNA相互作用が堆積した体液サンプルから研究されることを可能にするため、エピゲノムの完全な研究を可能にすることもできる。ヒストンは、研究されるためにDNAに化学的に固定されなければならない。固定がないと、ヒストンは、概して、DNAに結合されたままであることができず、タンパク質は、経時的に分解する。
【0151】
いくつかの実施形態では、緩衝液は、アジ化ナトリウムを含むことができ、緩衝液は、リン酸緩衝化食塩水と、アジ化ナトリウムとを含むことができる。いくつかの実施形態では、緩衝液はさらに、ウシ胎仔血清を含んでもよい。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約7.2~約7.6のpHである。
【0152】
いくつかの実施形態では、細胞は、緩衝液中で1回洗浄される。これは、実践では、可溶性物質を除去し、唾液の場合、「頬」層(Dos-Santos et al,2009)として分類されているものを除去する。
【0153】
いくつかの実施形態では、白血球の混合物は、分離することに先立って緩衝液中で1回またはそれを上回って洗浄される。これは、好ましくは、細胞型の混合物から任意の残存密度勾配溶液を除去するように行われる。
【0154】
本プロセスでは、抗体は、特定のタイプの白血球に結合し、したがって、特定のタイプの白血球を磁気ビーズに結合してもよい。次いで、特定のタイプの白血球は、磁気ビーズを磁場に配置すること、および特定のタイプの白血球の単離された細胞を取得するように任意の残存液体を除去することによって、任意の他の細胞型から分離されることができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、特定のタイプの白血球は、リンパ球であり得、リンパ球は、T細胞であってもよい。そのような実施形態では、使用される抗体は、T細胞に特異的な抗原(例えば、CD4である抗原)に特異的であり得る。いくつかの実施形態では、次いで、単離された血液細胞は、エピジェネティック分析に先立って等、さらなる処理に先立って、凍結させられてもよい。
【実施例
【0156】
以下の実施例は、本開示の例示的な方法の実施形態をさらに例証することを意図し、本開示の範囲を限定することを意図しない。
(実施例1)
【0157】
実施例1:体液(例えば、唾液)からT細胞を単離する。唾液が収集され、唾液が保存溶液と混合させられる。次いで、細胞が遠心分離によってペレット化され、処理溶液が除去される。次いで、細胞は、約6ml緩衝液(PBS、pH7.4、1%FBS、0.01%NaN3)中で再懸濁させられ、次いで、緩衝液中で1回洗浄され、再びペレット化される。ペレットは、約6mLのPBS-15 FBS-0.01%NaN3中で再懸濁させられ、1.082~1.072g/mlのFicoll<登録商標>(GE Healthcare)を使用する密度勾配遠心分離を受ける。白血球は、細菌、残渣、および任意の他の粒子状物質が管の底部でペレット化されている間に、多糖類と緩衝液との界面に遠心分離される。細胞は、管から抽出され、新しい管に入れられる。次いで、細胞は、ハンクス平衡食塩水中で1回洗浄され、次いで、界面から白血球を抽出する間に取り込まれるかも知れない残存密度勾配溶液を除去するために、PBS-NaN3-FBS緩衝液で1回洗浄される。
【0158】
ここで、サンプルは、最小限の細菌および最小限の残渣とともに高度に濃縮された白血球を含む。本ステップはまた、上皮細胞等の他の細胞型を大いに減少させることもできる。次いで、細胞は、磁気ビーズ(Dynabeads(登録商標) Invitrogen(登録商標))に結合されたCD4を標的にする抗体と緩衝液(PBS-NaN3-FBS)中でインキュベートされることができる。次いで、サンプルは、磁場に配置されることができ、ビーズが管の側面に運ばれ、液体が除去される。液体は、抗体を通じてビーズに結合されない全てを含有してもよい。T細胞は、抗体に結合されることができ、磁場に起因して除去されることができない。ビーズおよび付着細胞は、唾液または尿等の体液中で見出される他の細胞、細菌、もしくは他の残渣の任意の非特異的または弱い結合を排除するように、緩衝液中で洗浄されることができる。次いで、細胞は、以降の下流処理および分析のために凍結させられることができる。T細胞の単離は、光学顕微鏡検査によって確認されることができる(T細胞は、上皮細胞および細菌と比較して非常に明確である)(図6参照)。加えて、CD3、CD4、およびCD8に対する抗体を使用するフローサイトメトリならびにF.A.C.S.分析が、単離された細胞の視覚査定を確認することができる。次いで、T細胞は、下流実験のための十分な数の細胞について、唾液または尿等の体液の量を判定するために、体液の単位(ml)あたりのT細胞の数を判定するように、体液から滴定されてもよい(図6および7参照)。単離された細胞は、分解がなく、下流使用のために適切なDNAを有することが示され得る(図2参照)。
【0159】
再度、図1を参照すると、ステップ40では、着目サンプル(随意に、濃縮されるか、もしくはステップ38から分離および/または単離された細胞型を伴う)は、分析または診断のためにさらに処理される。上記のように、ステップ40は、分離された細胞について、または分離された細胞外成分について実行されてもよい。随意に、収集されたサンプルは、全細胞サンプルおよび細胞外成分サンプルの両方を提供してもよく、ステップ40は、それぞれについて別個に行われてもよい。ステップ40は、それぞれについて同一もしくは類似分析を含んでもよいか、または異なる分析を含んでもよい。
【0160】
希少な、すなわち、わずかな数の細胞および/または細胞外成分の使用可能な収率を提供するために保存される、自然に発現された体液のサンプルを取得する能力は、患者の病状の診断ならびに/もしくは監視のために、採血への代替的技法を提供し得る。細胞および細胞外分析は、コンパニオン診断として、および/またはコンパニオンバリデータとして使用されてもよい。
【0161】
血液サンプル中の特異的細胞型または他のバイオマーカを識別するために使用される技法もまた、自然に発現された体液中のそのような細胞または他のバイオマーカを識別するために(修正を伴って、または伴わずにのいずれかで)使用されてもよい。
【0162】
一例のみとして、細胞および/または細胞外成分は、以下のうちの1つまたはそれを上回るものを診断する、示す、識別する、および/または監視するよう分析であり得る。
(a) 疾患の退行または攻撃性を識別するマーカ(細胞もしくは分子)を伴う細胞。疾患は、例えば、癌(随意に、限定されないが白血病)であり得る。痰であるか、または痰を含有する流体の場合、疾患は、肺癌、肺癌腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺炎、もしくは結核のうちのいずれか1つまたはそれを上回るものであり得る。
(b) 出生前細胞。
(c) (例えば、転移性または別様の)循環腫瘍細胞。
(d) 正常な細胞の希少な形態、例えば、以下のうちのいずれか1つまたはそれを上回るもの:
-骨髄異形成症候群のような未熟細胞
-疾患を示し、口から生じない上皮細胞亜型
-例えば(限定されないが)、血液疾患の診断のためのランゲルハンス細胞
(e) 肥満を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。(下で考察される)
(f) (抗生物質の不必要かつ不適切な処方を回避するために有用な)細菌感染症対ウイルス感染症を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。例えば、
・ TRAILタンパク質(TNF関連アポトーシス誘発リガンド)は、感染症(細菌対ウイルス)を判別するために使用されることができる。これは、抗生物質耐性菌に対抗するために非常に有用である。
・ TRAILタンパク質は、殆どの細胞によって分泌され、リガンドとしてアポトーシスのプロセスを誘発する、サイトカインである。
(g) 自閉症を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。例えば、
オキシトシン-親和結合の確立に影響を及ぼす。負の影響として、ASD中のオキシトシンは、5-HTと負に相関する。オキシトシン受容体をコードするOXTR遺伝子の多型は、自閉症、対結合(pair-conding)、社会的行動、情動的影響、およびASD形質と関連付けられる。
メラトニン-24時間周期および季節リズム、ならびに免疫応答および神経可塑性の変調で良好に役割を果たすように確立されている。メラトニンは、酵素、すなわち、アセチルセロトニンメチルトランスフェラーゼ(ASMT)を介して、N-アセチルセロトニン、次いで、メラトニンに変換される、5-HTから合成される。プロセスは、日中/光によって阻害される。ASD患者の血漿中の低いレベルのメラトニンは、本ASMT酵素の欠如に起因すると考えられる(エピジェネティック(DNA、タンパク質、およびRNA適用可能分析))。ASMT遺伝子バリアントは、ASDと関連付けられる。同じ遺伝子はまた、437人の対照のいずれにも認められなかったのに対して、398(1.51%)人のASD個体のうちの6人において破壊的コーディング変異を宿している。
自閉症の免疫学的バイオマーカ(細胞外および細胞内):
-上昇したIL-1(インターロイキン1)
-上昇したIFN-γ(インターフェロンガンマ)
-抗炎症性サイトカイン、IL-10(インターロイキン10)の過剰産生
-増加したネイティブおよび減少した分化(すなわち、CD4+およびCD8+)T細胞数を伴うTリンパ球の異常な成熟(post-thymic maturation)
(h) アルツハイマー病を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(i) 血液(hetotological)疾患を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(j) 心血管疾患もしくは障害を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(k) 糖尿病を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
(l) 例えば、免疫細胞活性に関する、不安定プラーク(plack)を示す1つまたはそれを上回るバイオマーカ、および/もしくは免疫細胞バイオマーカ。
(m) 疾患または感染症の休眠および/または潜伏ならびに/もしくは隠密形態を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカならびに/もしくは1つまたはそれを上回る放出された因子。例えば、そのような疾患は、LTBIであり得る。加えて、または代替として、そのような因子は、ペプチドおよび/またはサイトカインであり得る。
【0163】
いくつかの実施例では、前処理剤が、保存ステップの前に唾液に添加されてもよい(上記で説明される図1のステップ42)。前処理剤は、例えば、疾患または感染症がある個体に由来する場合、唾液中に特定の因子の放出を引き起こすか、もしくは刺激するために、検出される疾患または感染症への抗原を含んでもよい。LTBIは、リンパ球によって認識され、感染した個体からの唾液中のインターフェロンガンマ等の因子の放出を引き起こす、抗原(例えば、結核菌のペプチド)の前処理剤を使用することによって、検出されてもよい。インターフェロンガンマ等の放出された因子は、次いで、保存された唾液から(例えば、定量的または定性的に)アッセイされることができ、診断が行われることができる。
【0164】
加えて、または代替として、いくつかの実施例では、リンパ球、例えば、T細胞は、結核菌からのペプチドが細胞に添加されるときに細胞にインターフェロンガンマを放出させる変化に基づいて、LTBIについて後成的に分析されてもよい(転写および/または翻訳分析を含む)。これは、例えば、抗原とともに前処理剤を使用する、添加ステップ42を伴って、または伴わずに行われてもよい。
【0165】
(n) 細胞中のHIV感染の存在。
【0166】
ここで、HIV感染に対する非限定的議論が続く。付加的および/または代替実施例もまた、以下でさらに説明される。
【0167】
現在の唾液ベースの放出抗体/因子検査のうちのいずれかが、本開示の保存技法の使用によって増進されてもよい。
【0168】
しかしながら、現在の唾液ベースの技法は、概して、少なくとも6週間の遅延を伴う、検出されることができる抗体/因子を生成するようにヒト免疫系に依拠するという欠点を抱えている。そのような技法は、細胞外因子に基づいて分類され得る。本時間中に、既存の唾液ベースの検査は、個体におけるHIV感染の存在を診断することができず、特定の場合には、誤解を招く恐れの特定の結果につながり得、および/または個体が無意識に感染を他人に広げることにつながり得る。
【0169】
本開示はまた、(i)身体の免疫系が検出されることができる抗体/因子を生成する前の期間に、および/または(ii)個体の感染後に少なくとも6週間の遅延を伴わずに、HIV感染の検出を可能にするように、唾液(または別の自然に発現された体液)の使用も提案する。
【0170】
いくつかの実施形態では、本開示は、唾液(または別の自然に発現された体液)の保存された感染細胞内のHIVウイルスの分析を可能にする。血液細胞、例えば、CD4+T細胞を含むT細胞は、細胞内のHIVウイルスの存在を識別するように、保存および/または単離ならびに/もしくは分析されてもよい。したがって、本開示は、例えば、唾液からの細胞内分析を可能にし、感染後に上記の細胞外検査よりもはるかに早く、例えば、少なくとも6週間またはそれを上回って早く、HIVウイルスの検出を可能にする。
【0171】
いくつかの実施形態では、T細胞内で、ウイルスRNAまたは逆転写されたDNA、もしくはウイルスがそれとともに運ぶタンパク質(例えば、逆転写酵素、プロテアーゼ、リボヌクレアーゼ、およびインテグレラーゼのうちのいずれか)が、分析されてもよい。
【0172】
いくつかの実施形態では、例えば、唾液の保存およびCD4+T細胞の単離後、細胞が、溶解させられてもよく、DNAおよび/またはRNAならびに/もしくは細胞内タンパク質が、取得および/または単離されてもよい。随意に、PCRが、HIVウイルスに特有の配列を標的にするプローブを用いて行われてもよい。加えて、または代替として、診断プラットフォームは、初期感染中にHIVがDNAゲノムに組み込むために使用する、タンパク質を検査し得る。そのような分析は、本質的にプロテオミクスであり得、例として、質量分光法、ELISA、または他の抗体媒介分析等のアッセイを含み得る。抗体分析は、(上記で説明されるような免疫細胞によって放出されるものではなく)HIVウイルスのタンパク質に関して行われてもよい。
【0173】
加えて、または代替として、HIVが身体の免疫レパートリからCD4+細胞を積極的に排除し、AIDSを引き起こすため、サンプル(例えば、唾液)中のCD4+細胞の数の測定は、それ自体がHIV感染を示し得る。本開示のいくつかの実施形態では、CD4+細胞の数は、保存されたサンプルからそのような指標を提供するように、例えば、フローサイトメトリおよび/またはFACSによって査定されてもよい。
【0174】
(o) 癌を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
【0175】
(p) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
【0176】
(q) 薬物耐性結核を示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
【0177】
(r) 血液検査、電解質レベル、脂質検査、ビタミンレベル、肝炎検査、鉄欠乏検査、肝機能検査、腎臓プロファイル検査、糖尿病スクリーニング検査、血液像検査、甲状腺プロファイル検査というカテゴリから、1つまたはそれを上回る検査を複製および/もしくは代用するために好適な1つまたはそれを上回るバイオマーカ。
【0178】
(s) 「喘息COPDオーバーラップ症候群(ACOS)」のタイプを示す、1つまたはそれを上回るバイオマーカ。随意に、そのようなバイオマーカは、COPDがACOSであることを検出するために、コンパニオン診断をCOPDの一般診断に提供することができる。加えて、または代替として、そのようなバイオマーカは、ACOSを処置標的にすることの有効性を監視するように、コンパニオンバリデータを提供することができる。加えて、または代替として、COPDの一般診断は、例えば、上記の(p)で参照されるバイオマーカを使用して行われてもよいか、そして/またはCOPDの一般診断は、他の従来の診断検査を使用して行われてもよい。
【0179】
上記の(a)に関して、非小細胞肺癌(NSCLC)についてのさらなる情報が、一例のみとしてここで説明される。全ての肺癌の約80%が、NSCLC(5)である。NSCLCに対する早期診断および処置が、転帰を最適化する(12)。従来の診断の主要な構成要素は、顕微鏡による疑わしい癌細胞の直接視覚化を伴う(6)。これは、肺生検材料を伴う確立された研究室用途である。
【0180】
対照的に、本開示の技法を使用する口腔液のサンプル収集は、呼吸器癌細胞源へのより容易なアクセスを提供してもよい。口腔液検査は、現在の臨床実践(3、4、7)を少なくとも支援し、増進することさえ可能な「液体生検」を提供し得ると考えられる。口腔液診断法は、他の癌(48)、ならびに本マトリクスに適しているいくつかの他の疾患(49)に拡張し得ると考えられる。
【0181】
推定癌細胞、具体的には、癌幹細胞(CSC)の検出および識別は、現在の癌研究ならびに患者管理の活動中の部分である(8)。近年の科学研究データ所見に依拠して、(すでに診断された患者における)NSCLC/CSCの識別を可能にする適度なバイオマーカパネルが、有意な利点を提供し得ると考えられる。
【0182】
例示的バイオマーカは、CD133および/またはEpCAMを含んでもよい(10,11)。加えて、または代替として、例示的バイオマーカは、EGFRおよび/またはALKを含んでもよい。
【0183】
いくつかのバイオマーカは、例えば、体液サンプルの保存された全細胞中で検出されることができる。加えて、または代替として、いくつかのバイオマーカは、例えば、(例えば、本開示のいくつかの実施形態で核酸にアクセスする保存溶液を使用して(随意に付属書類1参照))収集された体液からの溶解細胞の保存されたサンプル中で検出されてもよい。
【0184】
CD133は、不死化細胞(幹細胞)と強く関連付けられるバイオマーカであり、EpCAM(上皮細胞接着分子)は、上皮または上皮由来新生物において独占的に発現される周知のバイオマーカである。EpCAMは、種々の固形組織癌に対する診断マーカとして使用されることができる。これは、腫瘍の発生および癌腫の転移において役割を果たすようである。したがって、これはまた、潜在的な予後マーカおよび免疫療法方略のための潜在的標的の役割を果たすこともできる。EpCAM捕捉/検出は、すでに臨床実践されている、全血における既存の循環腫瘍細胞(CTC)アッセイの重要な構成要素である。
【0185】
本開示の技法を介して反射および監視臨床アッセイとしてともに使用され、医師は、患者の進行および予後について貴重な情報を取得し得る。検査に適しているそのような付加的標的のレパートリ(遺伝子再構成、SNP等)は、任意の腫瘍および積極的研究の対象のために広範であり得る(5、6、13)。
【0186】
利点としては、本開示の技法は、患者サンプル調達および安定化が他のアプローチを用いるよりも容易に達成されることを可能にし得る。後続のアッセイが、「液体生検」提案を介して、保持された患者材料を用いて促進されてもよい(14)。反射検査によって評価され得る、無数の魅力的なバイオマーカがある(5、6、13)。例えば、NSCLCと診断された患者では、残念ながら薬物耐性がゲノム配列変異を介して発生し、薬物処置に先立った、またはその間の任意の時間に起こり得るため、早期薬物処置および後続のオプションを判定できることが高度に有利である。
【0187】
患者管理に関連し得る2つのアッセイは、処置薬物耐性および監視に関与することが公知であるいくつかの遺伝子のうちのいずれかにおける変異の検査を伴う(5、6、15、16)。進行した症例では、上皮成長因子受容体遺伝子(EGFR)の変異およびALK遺伝子の染色体再配列が、薬物選択のために重要であり得る。より細かいレベルで、いくつかの他の遺伝子もまた、VEGF等の疾患処置にとって重要であるが、EGFR/ALKが、処置的調節の主要な直接焦点である(50)。
【0188】
EGFR特異的薬物、すなわち、ゲフィチニブ((Iressa)-Astra Zeneca)、エルロチニブ((Tarceva)-Genentech)、アファチニブ((Gilotrif)-Boehringer Ingelheim)は、EGFR配列変化の分析および監視を必要とする。ALKに焦点を当てた薬物、すなわち、クリゾチニブ((Xalkori)-Pfizer)およびセリチニブ((Zykadia)-Novartis)もまた、患者遺伝子再構成の監視を必要とする。
【0189】
重要な利点が、初期および継続中の患者遺伝子配列の安全性情報管理(vigilance)に関して達成され得る。これらの検査は、例えば、保存された溶解体液サンプルを使用する(例えば、付属書類1の技法を使用する)腫瘍細胞調査を介して、促進され得る。
【0190】
アッセイが、保存された全細胞サンプルに基づく先進的な細胞学的方法(例えば、IHC、FISH)(9、18)を介して、または保存された溶解サンプルを使用する(例えば、核酸を単離するように最適化される付属書類1の技法を使用する(19))核酸ハイブリダイゼーション検査によってより直接的に行われてもよい。
【0191】
随意に、(限定されないが)EGFR/ALK等の薬物耐性関連遺伝子の反射アッセイが後に続く、口腔液が運ぶ細胞のCD133/EpCAM調査を使用する検査が構想される。NSCLC腫瘍の約10%が、EGFRまたはALK変異を呈し得る(50)。
【0192】
上記の(e)に関して、さらなる情報が、一例のみとしてここで説明される。エピジェネティックスの大域的かつ遺伝子特異的な変化(DNAメチル化およびヒストンアセチル化)は、肥満と相関性がある。発現が肥満と因果関係がある可能性が高い、選択された遺伝子(タンパク質およびRNAレベルの分析):
・ レプチン(LEP)
・ レプチン受容体(LEPR)
・ 脳由来神経栄養因子(BDNF)
・ プロオピオメラノコルチン(POMC)
・ シングルマインディドホモログ1(SIM1)
・ 神経栄養チロシンキナーゼ受容体2型(NTRK2)
・ FTO(脂肪塊および肥満)
肥満と関連することが示される、選択されたエピジェネティックバイオマーカ:
【表A-1】
【表A-2】
【0193】
上記の(n)を参照すると、以下は、付加的および/または代替的な例示的情報を提供する。核酸の増幅、検出、ならびに配列決定に関して、過去10年に大幅な進歩があった(一般論評27、37、38)。試薬、プライマ配列、およびプロトコルが存在し、容易に入手可能である。高いスループットおよび難解な検査以外に、別様に慣用的な用途における簡易サンプル取扱い、ならびに処理の必要性が存在し続ける。唾液および口腔液全般は、近年、核酸検査のための新規のマトリクスとして進歩が見られる(39、40、41)。種々の遺伝子/配列検出方法のために、この比較的「使いやすい」流体を利用することに大きな関心が寄せられている(42)。
【0194】
BRACA1遺伝子配列(乳癌体質)に対する唾液ベースの検査が、開発中であると発表され(Color Genomics)、既存の細胞血液ベースの検査の代わりとして初期有用性を示した。遺伝子配列プラットフォームの殆どの確立された提供者は、唾液マトリクスのための具体的プロトコルに適応しており(43)、したがって、唾液が、将来、他の感染性病原体、被分析物、および核酸配列改変の検出に使用されることが可能であることを予期する正当な理由がある(44、45)。
【0195】
今後の参照のために、本明細書の資料リンクの関連コレクション(47、48)が、使用可能な技法に関して提供される。
【0196】
HIV配列検出のための例示的バイオマーカは、例えば、FISH/IHC方法を介した分析のためのCD4細胞であり得る。PCRを介したさらなるバイオマーカ検出もまた、以降に以下で議論される。
【0197】
本明細書に開示される技法は、唾液または誘発された痰からの細胞のスペクトルの保存および単離を可能にする、唾液サンプル収集デバイスを提供する。これらの細胞は、いくつかの顕微鏡方法によって視覚化されてもよい(9)。NSCLCについて上記で説明されるように、本既存のシステムはまた、無数の免疫組織化学的方法(IHC)による固定された細胞の調査も可能にする(18)。本分析は、いくつかのHIVタンパク質バイオマーカのうちのいずれかを示す、CD4細胞の検出を含んでもよい。豊富なIHC適格検出抗体が、本目的で市販されている(9)。本明細書に開示されるサンプル収集技法は、遺伝子特異的FISH(蛍光原位置ハイブリダイゼーション)等の配列特異的核酸増幅および検出方法に適し得る(51)。これは、一般的な顕微鏡検査および撮像技法による固定された細胞内のDNA/RNA配列(天然ゲノムおよびウイルスの両方)の検出を可能にする、細胞学的分析に類似する広く受け入れられている重要な方法である。本方法に利用可能な広く受け入れられており、かつ有効なプロトコルがある。HIVウイルスの種々のゲノム領域を対象とする、最適化されたハイブリダイゼーションプローブおよびPCRプライマの選択が、広く理解されており、容易に利用可能である(52)。
【0198】
組み込まれたプロウイルスならびにビリオン粒子の両方としての特異的HIVウイルス配列の検出は、周知のHIVゲノム配列に特異的な「標識」ハイブリダイゼーションプローブを用いた、保存された口腔液細胞を含有する、顕微鏡スライドガラスの処理を伴う。具体的には、ウイルスのライフサイクルが最も良く理解されている、CD4細胞では、染色体に組み込まれた「プロウイルス」配列が、化学的に標識されたプローブにハイブリダイズされ、次いで、視覚化され得る(53)。低いコピーウイルス負荷についても正当性が立証されている、高感度プロトコルが存在する(54)。これらのプローブは、ウイルスゲノム配列への合成合致であり、「標識」部分(ビオチン/ストレプトアビジン、フェリチン、HRP酵素、蛍光体等)を生成する、いくつかの利用可能なシグナルのうちのいずれかを担持し得る。
【0199】
HIV配列検出のためのさらなるまたは代替的な例示的バイオマーカは、PCRを伴ってもよい。PCRによるHIV配列の検出は、技術的に複雑ではなく、多くの試薬システムおよび増幅検出オプションが利用可能である。配列、プローブ、およびプライマが、広く理解されており、かつ入手可能である。多くの確立されたプロトコルが存在する(論評37、38、47)。
【0200】
HIVウイルスおよび抗HIV抗体が両方とも、唾液中で検出されることができ、HIV抗体を検出してHIV感染を診断するように、血液の代替物を提供する(42、43)。適切な唾液検体収集のための専用デバイスを用いた唾液HIV抗体検査が、近年、米国食品医薬品局(FDA)によって許可されている(例えば、OraSure)。これらの検査は、資源が限定された設定、ならびに迅速な検査および使用しやすさが好まれる国内公共診療所で使用されている。
【0201】
疾患管理センター(Centers for Disease Control;CDC)は、HIV予防プログラムのためのその方針推奨の一部として、迅速かつ頻繁なHIV検査を含んでいる(http://www.cdc.gov/hiv/testing/clinical/)。ビリオン粒子の場合、限定されたデータは、横断的感染性が低くあり得る一方で、それでもなお、ウイルスゲノム配列が敏感なPCR「ウイルス負荷」アッセイによって検出可能であり得ることを示す。これは、感染症の初期段階中、おそらく、抗体が最初に出現する「ウインドウ」期間中に、特に当てはまるようである(39、40、55)。
【0202】
初期の研究は、初期HIV感染がある個体の42%~91%が、唾液マトリクスを使用する敏感なPCRアッセイによって陽性であったことを示した(41、55)。実際に、HIV RNAの劇的な低減が、併用薬物療法を開始した患者で見られた。したがって、十分にフォーマットされたHIV特異的PCR検出システムとシームレスに統合することが可能な口腔液/唾液サンプル収集デバイスは、臨床および監視設定で多大な利点を提供する可能性を有する。
【0203】
上記の(p)を参照すると、さらなる情報が、一例のみとしてここで説明される。COPDは、明白に診断することが極めて困難である複雑な呼吸器炎症性疾患である(20、21、22)。これは、他の呼吸器症候群に類似する臨床症状を提示し、体系全体の「炎症」の指標として以外に、それら自体では特異的ではない複雑な血清バイオマーカ変化につながる。しかしながら、これは、世界中で4番目に高い死因であると理解される。これは現在、治癒可能ではないが、寿命を延長する処置がある。
【0204】
本開示の原理を使用して、以下のバイオマーカのうちの1つまたはそれを上回るもの、すなわち、VAP-1、CD44、CD11b、好酸球レベル(例えば、口腔液好酸球レベルおよび/または痰好酸球レベル)が、収集された体液サンプル中でCOPDを検出するために好適であり得る。
【0205】
処置管理のための最も適切な診断バイオマーカ(単数または複数)オプションに関して、重要な継続中の議論がある。近年の研究データは、炎症および疾患進行の付加的な新しいバイオマーカを識別しており、当分野は、より有効な介入を提供し得る、浸潤および炎症の両方のより特異的な細胞マーカを急速に識別している(23、24)。本明細書に説明されるサンプル収集および分析技法は、呼吸衰弱の早期細胞診断指標を直接評価し、早期処置介入に寄与する、簡易ツールを提供し得る。
【0206】
呼吸/炎症性疾患の現在のバイオマーカのうちの多くは、血液中で容易かつ慣用的に測定される、可溶性被分析物であるが、侵襲性好中球および好酸球が気道衰弱において重要な役割を果たすことを示す新たなデータもある(25、26、27、28、29)。
【0207】
1つの近年の研究は、結果として、炎症プロセスに関与する浸潤好中球を仲介および緩和することを担う、接着カスケードの初期に分子「ブレーキ」要素として気道内皮細胞上に存在する、新規のバイオマーカVAP-1を識別している(30)。本リガンドを阻害する実験的薬物は、呼吸疾患の動物モデル、具体的には、COPDモデルで劇的効果を有することが示されている。
【0208】
肺防御における好中球の適切な機能には、微小血管系から退出し、組織を通して標的部位まで移動する、それらの能力が一体化している。器官の損傷に応じて、好中球は、特異的細胞表面受容体の発現(CD44およびCD11bの同時発現、ならびにその他)を上方調整し、これらのバイオマーカは、次いで、VAP-1等の内皮細胞上の接着分子に結合する(31、32、33)。内皮細胞ライニングを通した下層の実質の中への好中球の移動を可能にすることは、健康のために不可欠であるが、本プロセスが限定されない場合、制御されていない炎症が結果として起こる。好中球PBMC上のCD44およびCD11bは、そのような上方調整挙動を有することが示されており、COPD関連気道好中球浸潤の初期インジケータとしての機能を果たすとともに、おそらく、疾患進行または処置の継続的監視を可能にし得る。実際に、(例えば、痰で測定されるような)浸潤好中球の特異的サブセットがCOPDを伝播またはCOPDを悪化させ得るという考えが、新規の処置への関心を生成してきた。
【0209】
加えて、または代替として、好酸球レベルは、特にACOSに対するバイオマーカとして、さらなる指標を提供し得る((s)については、さらに以下の実施例を参照)。
【0210】
上記の(q)に関して、結核についてのさらなる情報が、一例のみとしてここで説明される。結核菌の診断および処置は、発展途上ならびに先進国の両方で主要な健康の懸念であり続ける。過去10年で、細菌が現在利用可能な限定された軍備または処置薬への耐性を生じ得ることが明確になっている。加えて、耐性関連変異のタイプおよび頻度に関する限り、個々の患者の状態を理解することは、医師が新しい感染性病原体の脅威的シフトおよび大流行をより良好に処置し、予想することさえ可能にするであろう。これは、核酸配列分析および薬物耐性対立遺伝子に関する広範な遺伝子データベースを伴う技術的課題である。感染性生物が明確に気道作用因子であるため、患者管理の容易性および安全性を含む、本開示の技法は、患者管理のための重要な利点を提供し得る。
【0211】
いくつかのバイオマーカは、例えば、体液サンプルの保存された全細胞中で検出されてもよい。加えて、または代替として、いくつかのバイオマーカは、例えば、(例えば、本開示のいくつかの実施形態では核酸にアクセスする、保存溶液を使用して(随意に、付属書類1参照))収集された体液からの溶解細胞の保存されたサンプル中で検出されてもよい。
【0212】
上記の(r)に関して、これまで、慣用的に行われている血液検査を唾液ベースの検査と置換することは実行可能ではなかった。しかしながら、本開示の技法を使用することによって、殆どの慣用的血液検査(全血算および多くの診断マーカの評価の殆ど)が、現在、唾液を用いて実行可能になり得る。
【0213】
以下は、採血を必要とする医師によって一般的に指図される(全てではないが)多くの検査を列挙する表である(第1の列)。本第1の列は、ともに受けると患者の健康および適切な平衡状態を確実にする、血液中の重要な因子の殆どを評価する種々の検査を列挙する。これらの検査の殆どは、具体的な独立型診断法ではないが、診断に寄与して役立つ因子である。中央の列は、現在考えられているような、本開示の技法、ならびに血液サンプルの代わりに唾液サンプルを使用する、代用および/または代替検査を実装することの実行可能性を示す。右の列は、現在入手可能であるかどうかにかかわらず、遺伝分析用の市販の唾液キットが、最良の考えおよび理解に従って、これらの検査を行うために使用され得ることを示す。
【0214】
評価される血液因子のカテゴリ:
電解質:血中電解質測定は、患者の一般健康の監視および評価のために慣用的に指図される。電解質測定は、体内の任意の不均衡の検出および酸塩基平衡異常の監視を可能にする。任意の個別の電解質の平衡異常は、さらなる調査ならびに監視の正当な理由となり、および/またはより大きな健康問題を示し得る。
【0215】
脂質:血液中に含有される脂質は、患者が心血管疾患を発症する危険性があるかどうかを査定するように、心臓リスク査定スクリーニングの一部として評価される。したがって、これらの検査はまた、患者の薬物および/または薬物の薬量の変更の必要性を判定することにも役立つ。
【0216】
ビタミン:ビタミンDおよびビタミンB12は、多くの場合、欠乏、または欠乏の場合は十分な補給を判定するために測定を必要とする。さらに、ビタミンB12は、多くの場合、神経障害および特定の貧血の診断で検査される。
【0217】
肝炎:HBsAgは、B型肝炎ウイルス上の表面抗原である。血液中の本因子の検出は、B型肝炎の診断を確定する。
【0218】
鉄欠乏プロファイル:これらの検査は、多すぎるまたは少なすぎるかどうか、患者の体内の鉄のレベル、および対応する補給の必要性を評価するために使用される。
【0219】
肝機能検査:肝炎および肝疾患について選別し、それを検出して監視すること。急性および慢性肝炎の両方ならびに肝臓障害が、これらの因子および酵素の変動によって評価される。
【0220】
腎臓プロファイル:本一連の検査は、腎臓が関係する症状の管理および診断に役立つ。これらの検査は、単純に腎臓の適切な機能を確実にするように、慣用的な血液検査の一部を構成し得る、または腎臓疾患を発症する危険性を有するか、もしくは危険性がある患者を選別および/または追跡する機能する役割を果たし得る。
【0221】
糖尿病スクリーニング:これらは、患者が糖尿病であるかどうかを診断するとともに、血糖の制御のレベルを評価することによって、患者の糖尿病を監視および管理することに役立つように指図される検査である。
【0222】
血液像:全血算(CBC)としても公知であり、患者の一般健康を評価し、貧血、感染症、およびある癌等の多数の疾患を検出する、広いスクリーニングツールである。CBCは、血液の細胞成分の査定(赤血球、白血球、血小板、およびそれらの比率)、ならびに血液中の種々の側面および因子の測定を含む。
【0223】
甲状腺プロファイル:甲状腺の適切な機能を査定するため、または甲状腺疾患を示す平衡異常を診断するための一連の検査。
上記で参照される表が、ここで以下に続く。
【表B-1】
【表B-2】
【表B-3】
【表B-4】
【0224】
上記の(s)に関して、「喘息COPDオーバーラップ症候群」(ACOS)についてのさらなる情報が、一例のみとしてここで説明される。ACOSは、患者がCOPDおよび喘息の両方に罹患するときに起こる症状である。上記の(p)についてすでに説明されているように、「慢性閉塞性肺疾患」(COPD)は、人口のほぼ5%に影響を及ぼし、高い罹患率および死亡率の両方に関連付けられる疾患である。病状は、患者における慢性的に不良な空気流ならびに肺気腫および慢性気管支炎の両方を伴うことによって特徴付けられる。近年、COPDの新しい亜型である「喘息COPDオーバーラップ症候群」(ACOS)が、患者の10~40%を悩ませていることが見出されている(Leena George, 2016)。ACOSは、全てCOPDのより極端な形態につながる、COPDおよび喘息の症状ならびに混合病理を提示する症状である。典型的には、ACOSの発症の年齢は、他のCOPD患者より早く、これらの患者のための1年あたりの医療費は、3倍高い(喘息患者:$2,307、COPD患者:$4,879、ACOS患者:$14,917)(Fadia T.Shaya,2009)。
【0225】
ACOSは、GOLD(Global initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)およびGINA(Global Initiative for Asthma)によって、「通常は喘息と関連付けられるいくつかの特徴および通常はCOPDと関連付けられるいくつかの特徴を伴って、持続的空気流制限によって特徴付けられる」として共同で規定されている。本規定の曖昧性に起因して、ACOSは、現在、不十分に規定されているだけではなく、診療所での提示に基づいて診断することが困難である。しかしながら、ACOSに罹患している患者が通常のCOPD処置に準最適的に応答し得ることが理解されるため、正しい診断が重要である。逆に、ACOS処置は、高価であり、大抵は失敗なく処置される可能性が高い症状がある患者で標的化されるはずである。
【0226】
本明細書に説明されるサンプル収集、保存、および分析技法は、同一のサンプルからの他の重要な細胞および関連バイオマーカの検出を同時に可能にしながら、保存および患者好酸球数の後続の染色ならびに計測を可能にするために特に適し得る(上記参照)。これらの技法は、COPD患者の処置を評価して監視する貴重な新しいセラノスティックツールを臨床医に提供し得る。
【0227】
さらなる臨床データが発展すると、本出願はまた、例えば、喘息の鑑別診断において役割を果たしてもよい。
【0228】
ACOSは、安定した状態で患者を管理し、より重要なこととして、悪化を管理して予防することに役立ち得る、特定の薬物により応答することが示されている。1つのそのような薬物群は、吸引および経口コルチコステロイド療法である。ステロイドは、好酸球性気管支粘膜炎症を減少させるそれらの能力に起因して、ACOSを管理することへの広域アプローチと見なされる(Leena George,2016)。好酸球性/Th-2媒介炎症を特異的に標的化するであろう、他の狭域スペクトル処置法が、現在、ACOSで使用するために研究されている(Leena George,2016)。そのような処置法は、症状および悪化を管理することによって、ACOS患者の生活の質を向上させるだけではなく、医療費および生じた経済負担を減少させる可能性を有する。
【0229】
ACOSおよび進行中の処置法の本理解に基づいて、ACOSの診断に役立ち得るだけではなく、処置法の有効性の正当性を立証するようにコンパニオン診断および/またはコンパニオンバリデータとしての役割も果たし得る、十分かつ効率的な診断ツールが開発されることがさらに重要になる。血液検査および気管支鏡検査の従来のオプションはそれぞれ、それらの制限および不利点を有する。痰検査は、炎症細胞の局所浸潤に起因して、COPD患者において利点であることが示されており、したがって、より高い濃度の好酸球等の炎症細胞が痰に存在し得ることを示唆する。しかしながら、痰サンプルはまた、取得することが面倒かつ困難でもある。口腔液は、唾液および痰を含有することが示されており、COPD/ACOS患者における増加した痰産生に起因して、口腔液は、多くの細胞および炎症バイオマーカの診断ならびに評価のための低侵襲手段を提示し得る。口腔液の全ての内容物の保存ならびに好酸球および主要バイオマーカの単離および評価のための本明細書に説明される技法の使用は、これまで達成も構想もされていなかった有意な利点を提供することができる。
【0230】
異なる病状について検出または分析され得るバイオマーカについて議論してきたが、以下の説明は、例えば、上記のうちの多くを行うために使用され得る、異なる技法をここで説明する。
【0231】
いくつかの実施形態では、自然に発現された体液(例えば、唾液、痰、尿)中の希少な細胞の分析、および/または細胞外成分の分析に独占的に限定されないが、随意に、患者の病状を診断または監視するために使用される技法は、以下のうちの1つまたはそれを上回るものを含んでもよい。
(a) フローサイトメトリ
(b) 蛍光活性化細胞分類(FACS)
(c) 免疫組織化学
(d) 分子分析(例えば、限定されて、エピジェネティック;遺伝子;翻訳;翻訳後のうちのいずれか)
(e) 細胞学
(f) タンパク質レベル(翻訳後)分析技法
(g) 遺伝子発現を測定するためのRNAレベル(翻訳後)分析
(h) 例えば、エピジェネティック、および/またはDNAメチル化ならびにヒストン修飾を含む、DNA。
【0232】
以下のさらなる実施例は、本開示の例示的な方法の実施形態をさらに例証することを意図し、本開示の範囲を限定することを意図しない。
(実施例1)
【0233】
フローサイトメトリが、種々の形態の癌を診断するために使用されてもよい。これは、例えば、白血病およびリンパ腫を診断するために、例えば、Cancer Treatment Center of Americaによって使用される検査である。フローサイトメトリはまた、他のタイプの細胞、例えば、血液中の血小板細胞の分析に使用されてもよい。例えば、Quest Diagnosticsは、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PHN)を診断するためにフローサイトメトリを利用する。
(実施例2)
【0234】
FACSが、癌に対するマーカを含む、種々の細胞マーカを診断するために使用されてもよい。これは、例えば、CD57、CD8、CD3等の細胞マーカの診断のためにQuestによって使用される検査である。FACS分析はまた、CD4検査を調査することを介してHIV/AIDS処置の状態を監視するために有用であり得、BD Biosciencesは、例えば、高信頼CD4検査のために設計されるシステムである、FACS CountTMを提供する。FACS分析はまた、細胞死およびミトコンドリア損傷の形態を査定するためにも使用され、例えば、EMD Milliporeは、細胞健康および完全性を査定するための種々の検査を提供する。
(実施例3)
【0235】
免疫組織化学が、癌および他の障害/疾患に対するマーカを含む、種々の細胞マーカを診断するために使用されてもよい。これは、例えば、疾患に関与する多数の細胞マーカの診断のためにQuestによって使用される検査である。一例のみとして、http://www.questdiagnostics.com/home/physicians/testing-services/specialists/hospitals-lab-staff/specimen-handling/immunohistochemistry.htmlが参照され得る。
【0236】
免疫組織化学はまた、サイトケラチンの検出を介した癌腫およびいくつかの肉腫の診断で使用されてもよい。例えば、Invitrogenは、サイトケラチンの検出用の免疫組織化学キットを提供する。
(実施例4)
【0237】
分子分析(例えば、限定されないが、エピジェネティック、遺伝子、翻訳、翻訳後のうちのいずれか)。分子分析は、例えば、亜硫酸水素塩シークエンシングおよびメチル化DNA沈降(MDIP)を含む方法によって、癌等の種々の疾患の診断のためのDNAメチル化および他のエピジェネティックマークを査定するために、Qiagenならびに他の企業によって使用される。分子分析は、例えば、腫瘍組織サンプルのDNAで見出される種々のバイオマーカの分子プロファイリングのために、Cancer Treatment Center of Americaによって使用される。そのような検査は、癌、例えば、大腸癌の診断を可能にするだけではなく、個別化処置を促進する。
(実施例5)
【0238】
細胞学が、甲状腺癌および他の障害/疾患に対するマーカを含む、種々の細胞マーカを診断するために使用されてもよい。これは、例えば、甲状腺癌の診断のためにQuestによって使用される検査である。一例のみとして、http://www.questdiagnostics.com/testcenter/testguide.action?dc=TG_Thyroid_Cancerが参照され得る。
(実施例6)
【0239】
タンパク質レベル(転写後)。下流分析技法の実施例は、質量分析、ウェスタンブロット、およびアレイを使用するプロテオミクスバイオマーカパネルの分析を含み得る。細胞内タンパク質発現(レベル)の分析は、薬物、化学、非化学的阻害剤、またはタンパク質もしくは一連のタンパク質の生物学的阻害剤の効果を分析するために使用され得る。
【0240】
これは、RNAまたはタンパク質もしくは非コーディングDNA配列を改変し得る、遺伝子に関するノックダウン/ノックアウト/阻害または活性化の効果についての測定を含む。これは、エピゲノムのタンパク質/RNA(DNAメチラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、ヒストンデメチラーゼ、ヒストンアセチラーゼ、およびヒストンデアセチラーゼ等の酵素(具体的には、これは、酵素DNMT1/2/3および全ての亜型、MBD2、MeCP2、ならびにヒストン(デ)アセチラーゼ(デ)メチラーゼ等の全てのヒストン修飾酵素等を含む))を含み、エピジェネティック下流効果の分析(大域的または遺伝子特異的レベルのいずれか一方におけるDNAメチル化もしくはヒストンの修飾、および/またはRNAならびに/もしくはDNA分析等)と併用され得る。
(実施例7)
【0241】
遺伝子発現を測定するRNAレベル(転写)。疾患/障害を判別するために個別に、またはパネル上でのいずれかで使用される、もしくは癌、神経疾患、奇病、および小児の疾患/障害を含む、多数の疾患ならびに障害の薬理学的および/または処置介入のためのコンパニオン診断もしくはバイオマーカとして使用される、文献で識別される多数の候補遺伝子がある。さらに、異なるタイプのRNAが、単離された細胞から分析されることができる(これは、ミクロRNAおよびメッセンジャRNA等を含む)。分析技法は、(いくつか例を挙げると)PCR、全ゲノムアレイ、およびバイオマーカパネルを含む。
【0242】
RNA下流用途は、siRNAもしくは他の化学および/または非化学的阻害剤等の阻害剤を使用して、RNAまたはmRNA干渉について細胞を分析するステップを含んでもよい。これは、種々の形態のPCR、発現アレイ(実施例は、特定の疾患または障害に対する既知のバイオマーカを含む場合もあり、含まない場合もある、affymetirxまたはagilentヒトゲノム発現アレイおよびカスタムアレイを含む)によってRNAのレベルを測定するステップを含む。
(実施例8)
【0243】
DNA(DNAメチル化およびヒストン修飾を含む、遺伝およびエピジェネティック)。これは、バイオマーカパネル、亜硫酸水素塩シークエンシング分析、メチル化免疫沈降分析、および全ゲノムアレイプラットフォーム(遺伝子パネルに基づくものを含む、agilent、affymetrix、およびカスタマイズされたアレイ)を伴う使用等の技法を含んでもよい。
【0244】
DNA分析が、大域的および遺伝子特異的の両方でメチル化および脱メチル化の阻害の効果を測定するために使用されてもよい。大域的の場合、阻害剤は、生物学的および化学なものを含み得る(例えば、5azaC)。加えて、これは、例えば、アレイ、ウェスタンブロット、および質量分析を使用して、ヒストンへの影響を測定するために使用され得る。
【0245】
本願の中で提示される、特許、特許出願、論文、ウェブページ、本等を含むが、それらに限定されない、出版物または他の文書のあらゆる言及は、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0246】
いくつかの変形例が上記で詳細に説明されているが、他の修正も可能である。例えば、付随の図面で描写され、本明細書に説明される任意の論理フローは、望ましい結果を達成するために、示される特定の順序または順番を必要としない。他の実装も、以下の例示的請求項のうちの少なくともいくつかの範囲内であり得る。
【0247】
デバイス、システム、および方法の例示的実施形態が、本明細書に説明された。いずれかに記載されるように、これらの実施形態は、例証目的のためだけに説明され、限定ではない。他の実施形態も、本明細書に含まれる教示から明白であろうように、可能性として考えられ、本開示によって網羅される。したがって、本開示の範疇および範囲は、前述の実施形態のいずれかによって限定されるべきではなく、本開示およびそれらの均等物によって支持される請求項に従ってのみ規定されるべきである。また、本開示の実施形態は、体液(例えば、唾液、尿)からの細胞の収集、保存、分離、および単離、ならびに毒性および/または有害物質/流体を含む他の物質の収集(ならびにその成分の保存、分離、および単離)に対応する、ありとあらゆる要素を含む、任意の他の開示される方法、システム、およびデバイスからのありとあらゆる要素をさらに含み得る、方法、システム、およびデバイスを含んでもよい。言い換えると、1つまたは別の開示される実施形態からの要素は、他の開示される実施形態からの要素と置換可能であり得る。
参考文献(参照することによって本明細書に組み込まれる)
【0248】
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
(上記で参照される)付属書類1が、本開示の一部として以下に続く。
付属書類1
【0249】
本開示は、加えて、有害および/または毒性物質を含む、体液もしくは他の物質、具体的には、自然に発現された体液(例えば、唾液、尿)のサンプルを収集するためのデバイス、溶液、ならびに方法に関する。加えて、または代替として、本開示は、概して、機能的遺伝学、および/または(例えば)以降の遺伝研究のためのそのような体液からのDNAの単離ならびに保存に関する。加えて、または代替として、本開示は、概して、家庭での使用に好適であるそのような特徴に関する。
【0250】
国際公開第WO2003/104251号(DNA Genotek Inc.)は、唾液の収集されたサンプルから核酸を保存および抽出するための組成物ならびに方法を説明する。この組成物は、DNAおよび/またはRNAのために望ましい範囲内で組成物のpHを維持するように、キレート剤、変性剤、緩衝液を含む。組成物はまた、還元剤および/または抗菌剤を含んでもよい。その文書はまた、組成物を含有するチャンバを有する唾液サンプル収集コンテナ、およびキャップがコンテナに嵌合されるときに分離障壁の解体によって組成物を放出するための技法も説明する。
【0251】
内蔵型収集および保存デバイスの概念は、ドナーが物理的に研究室を訪問することを要求することなく、多くの異なる遺伝子検査用途の可能性を有するが、そのような可能性は、組成物の有効性、および保存された溶液の質によって厳しく限定され得る。本発明のいくつかの非限定的側面は、そのような問題を少なくとも軽減することを求め得る。
【0252】
本明細書では、国際公開第WO2012/177656号および/または国際公開第WO2015/112496号で説明される改良型サンプル収集デバイスが参照される。これらの出願の内容は、その全体として本明細書で複製される場合のように、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0253】
以下は、本開示の基本的な非限定的理解を提供するために、付属文書1の開示の簡略化された概要を提示する。
【0254】
一側面では、例えば、研究室を訪問する必要なく、サンプルドナーによって使用するために好適である、(例えば、携帯用)収集デバイスが説明される。このサンプル収集デバイスは、自然に発現された体液、例えば、唾液または尿を受容するためのコンテナを備える。本デバイスはさらに、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するための組成物を含有する、チャンバを備え、組成物は、細胞小器官から核酸を抽出して保存することに効果的である。細胞小器官は、(同一の原理が他の細胞小器官に適用され得るが)ミトコンドリアであってもよい。
【0255】
加えて、または代替として、一側面では、組成物は、自然に発現された体液のサンプルを収集し、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するためのサンプル収集デバイスで使用するために説明され、組成物は、細胞小器官から核酸を抽出して保存することに効果的である。細胞小器官は、(同一の原理が他の細胞小器官に適用され得るが)ミトコンドリアであってもよい。
【0256】
核酸は、所望に応じて、DNAおよび/またはRNAであってもよい。
【0257】
ミトコンドリアDNAは、以下の核DNAと非常に異なる特性を有し得る。
(i)ミトコンドリアDNAは、核DNAと比較して非常に小さい。これは、16600bpから成る、わずか36個の遺伝子をコードする最小染色体を有する。
(ii)ミトコンドリアDNAはまた、核DNAと比較して濃度が比較的わずかである。1つの細胞につき、ミトコンドリアDNAの約100~約10,000の別個のコピーが存在し得る。
(iii)ミトコンドリアDNAは、母親のみから受け継がれる。
(iv)ミトコンドリアDNAは、環状である。
(v)ミトコンドリアDNAは、変異の影響を非常に受けやすい。これは、核DNAよりも変異またはマークされることが可能であるため、ミトコンドリアDNAを研究および分析のために着目させる1つの要因である。例えば、特定の変異は、核DNAから検出することが困難(または不可能)であり得る、有用な指標または神経疾患であり得ると考えられる。
【0258】
しかしながら、本明細書に開示されるタイプのサンプル収集デバイスを用いてミトコンドリアDNAを抽出して保存することは、これまで知られていない。上記の特性は、ミトコンドリアDNAを抽出して保存しにくくする。第1に、変異に対する感受性は、ミトコンドリアDNAが、DNAを抽出するようにサンプル細胞を溶解させるために使用される従来のプロセスによる損傷および変異の影響を特に受けやすいことを意味する。第2に、ミトコンドリアDNAのわずかな濃度および小さいサイズは、下流分析のための良質なサンプルを提供するために十分な量の損傷されていないミトコンドリアDNAを取得することの困難を悪化させる。
【0259】
いくつかの実施形態では、組成物は、細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)を溶解させるように構成されてもよい。例示的組成物が、以降で説明される。
【0260】
上記のうちのいずれかに加えて、または代替として、一側面では、組成物が、自然に発現された体液のサンプルを収集し、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するためのサンプル収集デバイスで使用するために説明され、(i)組成物は、従来の組成物よりも溶解および/または保存剤が有意に高濃度であり、ならびに/もしくは(ii)組成物は、組成物が意図される体液サンプルの体積より実質的に大きくない体積を有する。
【0261】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物が意図される体液サンプルの体積より小さい体積を有してもよい。
【0262】
組成物が意図される体液サンプルの体積より実質的に大きくない組成物体積を使用することによって、組成物を収集されたサンプルと混合するときの体積増加は、同等に小さくあり得る。比較的小さい体積を提供することは、結果として生じる混合物中の核酸の濃度への体積増加の影響を低減させ、および/または単位体積あたりのDNA濃度に関して組成物体積の希釈効果を低減させる。
【0263】
例えば、一実施形態では、収集された体液サンプルの体積に対する組成物の体積の比は、約1:1であってもよい。そのような比を用いると、単位体積あたりの抽出および保存された核酸の濃度は、正味体積が2倍になるため半減される。したがって、濃度は、比較的高いままであり得る。組成物のより小さい体積を使用することによって、体積増加の影響は、さらに低減させられ得ることが考えられる。例えば、組成物の体積が体液サンプルの体積の約半分である場合、単位体積あたりの抽出および保存された核酸の濃度は、半分の代わりに元の濃度の3分の2であり得ることが考えられる。それによって、単位体積あたりの濃度は、1:1の実施形態と比較して、約33%増進させられる。
【0264】
増加した濃度の溶解および/または保存剤を使用することは、低減した体積の組成物を補償することができる。
【0265】
加えて、または代替として、増加した濃度の溶解および/または保存剤を使用することは、急速な溶解ならびに/もしくは保存作用、および/または細胞内の細胞小器官の溶解を提供することができ、そのいずれか一方または両方は、細胞小器官DNA(例えば、ミトコンドリアDNA)の変異が起こり得る時間を短縮することができる。
【0266】
上記の側面のうちのいずれかに加えて、または代替として、組成物が、自然に発現された体液のサンプルを収集し、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するためのサンプル収集デバイスで使用するために説明され、組成物は、少なくとも1つの溶解剤および/または少なくとも1つの保存剤を含む。
【0267】
随意に、組成物は、少なくとも2つの溶解剤、随意に、少なくとも3つの溶解剤を含んでもよい。
【0268】
加えて、または代替として、組成物は、随意に、少なくとも1つの保存剤として、タンパク質および/またはDNAアーゼを遮断するための少なくとも1つの化学阻害剤ならびに/もしくは変性剤を含んでもよい。随意に、組成物は、少なくとも2つのそのような化学阻害剤および/または変性剤、随意に、少なくとも3つのそのような化学阻害剤および/または変性剤を含んでもよい。
【0269】
例示的組成物の詳細が、以下でさらに説明される。
【0270】
上記の側面のうちのいずれかに加えて、または代替として、いくつかの実施形態では、以下のうちの1つ、または2つもしくは3つ全ての任意の組み合わせを含む、組成物が説明される。
サンプル細胞から核酸を解放するための少なくとも1つの溶解剤であって、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、トリトン、トリトン-X、トリトン100、トリトン-X100、デオキシコール酸塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)、コール酸塩(例えば、コール酸ナトリウム)、ラウロイルサルコシンナトリウム(および/またはサルコシル)、マルトシド(例えば、n-ドデシル-β-D-マルトピラノシドおよび/またはDDM)、グリコシド(例えば、ジギトニン)、Tween(例えば、Tween 20および/またはTween 80)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(および/またはCHAPS)、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(および/またはTergitol型NP-40および/またはNP-40)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)、もしくは前述のうちのいずれかの誘導体(例えば、市販の誘導体)から選択される、少なくとも1つ、随意に、少なくとも2つ、随意に、少なくとも3つを含む、少なくとも1つの溶解剤。
トリスおよび/またはメチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、緩衝剤。
タンパク質および/またはDNAアーゼを遮断するための少なくとも1つの化学阻害剤ならびに/もしくは変性剤であって、2-メルカプトエタノール、Ca2+イオン、エチエレングリコール四酢酸(EGTA)、メチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ヨード酢酸、尿素から選択される、少なくとも1つ、随意に、少なくとも2つ、随意に、少なくとも3つを含む、少なくとも1つの化学阻害剤ならびに/もしくは変性剤。
【0271】
上記の側面のうちのいずれかに加えて、または代替として、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのイオン性界面活性剤(またはイオン性洗剤)と、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(または非イオン性洗剤)と、塩とを含む、組成物が説明される。組成物は、細胞および/または細胞小器官を溶解させるための溶液であってもよい。
【0272】
イオン性および非イオン性界面活性剤の組み合わせは、ミセル形成への相乗安定化効果を有し、ミセル形成を高い塩濃度に対してより耐性にさせ得ることが考えられる。これは、比較的高い界面活性剤濃度および/または高い塩濃度でさえも界面活性剤のうちの1つもしくはそれを上回るものの望ましくない沈降を回避することができる。溶液が高いミセル界面活性剤濃度ならびに高い塩濃度の両方を有することを可能にすることは、溶液の細胞および/または細胞小器官溶解能力を増進させ得る。
【0273】
イオン性界面活性剤または洗剤の例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)、コール酸塩(例えば、コール酸ナトリウム)、ラウロイルサルコシンナトリウム(および/またはサルコシル)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(および/またはCHAPS)、前述のうちのいずれかの誘導体(例えば、市販の誘導体)のうちのいずれか1つもしくはそれを上回るものを含む。
【0274】
いくつかの実施形態では、イオン性界面活性剤(または洗剤)は、両性イオン界面活性剤(または洗剤)を含んでもよく、CHAPSが例である。他の実施形態では、イオン性界面活性剤(または洗剤)は、随意に、両性イオン界面活性剤を含み得ない。例えば、イオン性界面活性剤(または洗剤)は、アニオン性もしくはカチオン性界面活性剤(または洗剤)を含んでもよい。
【0275】
非イオン性界面活性剤または洗剤の例は、トリトン、トリトン-X、トリトン100、トリトン-X100、マルトシド(例えば、n-ドデシル-β-D-マルトピラノシドおよび/またはDDM)、グリコシド(例えば、ジギトニン)、Tween(例えば、Tween 20および/またはTween 80)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(および/またはCHAPS)、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(および/またはTergitol型NP-40および/またはNP-40)、前述のうちのいずれかの誘導体(例えば、市販の誘導体)のうちのいずれか1つもしくはそれを上回るものを含む。
【0276】
塩の例は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)のうちのいずれか1つまたはそれを上回るものを含む。
【0277】
別の側面では、付属書類1は、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するための組成物を備える、自然に発現された体液(例えば、唾液)の収集のための体液サンプル収集デバイスを開示する。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞小器官から核酸を抽出して保存することに効果的である。細胞小器官は、ミトコンドリアであってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、複数の溶解剤を組み合わせる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つのイオン性洗剤と、少なくとも1つの非イオン性洗剤と、塩とを含む。
【0278】
本開示を限定することなく、付属書類1に開示される、特定の特徴および/または側面の番号付けされた項目別リストが、以下に続く。
【0279】
項目別番号:
1. 自然に発現された体液サンプルのサンプルを収集するためのサンプル収集デバイスで使用するための組成物であって、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するために効果的であって、細胞小器官から核酸を抽出して保存することに効果的である、組成物。
2. 細胞小器官は、ミトコンドリアである、項目1に記載の組成物。
3. 核酸は、DNAを含む、項目1または2に記載の組成物。
4. 組成物は、細胞小器官を溶解させるための少なくとも1つの溶解剤を含む、項目1、2、または3に記載の組成物。
5. 組成物は、少なくとも2つ、随意に、少なくとも3つの溶解剤を含む、項目4に記載の組成物。
6. 組成物および/または溶解剤は、界面活性剤、洗剤、塩から選択される、少なくとも1つを含む、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
7. 組成物および/または溶解剤は、その誘導体を含め以下;
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、トリトン、トリトン-X、トリトン100、トリトン-X100、デオキシコール酸塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)、コール酸塩(例えば、コール酸ナトリウム)、ラウロイルサルコシンナトリウム(および/またはサルコシル)、マルトシド(例えば、n-ドデシル-β-D-マルトピラノシドおよび/またはDDM)、グリコシド(例えば、ジギトニン)、Tween(例えば、Tween 20および/またはTween 80)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(および/またはCHAPS)、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(および/またはTergitol型NP-40および/またはNP-40)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)
から選択される、少なくとも1つ、随意に、少なくとも2つ、随意に、少なくとも3つを含む、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
8. 組成物は、(i)トリトンまたはその誘導体と、(ii)SDSまたはその誘導体と、(iii)塩とを組み合わせて含む、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
9. 組成物は、タンパク質および/またはDNAアーゼを遮断するための少なくとも1つの化学阻害剤ならびに/もしくは変性剤を含む、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
10. 組成物は、2-メルカプトエタノール、Ca2+イオン、エチエレングリコール四酢酸(EGTA)、メチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ヨード酢酸、尿素から選択される、少なくとも1つ、随意に、少なくとも2つ、随意に、少なくとも3つを含む、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
11. 自然に発現された体液のサンプルのサンプルを収集するためのサンプル収集デバイスで使用するための組成物であって、
組成物は、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するのに有効であり、
組成物は、以下のうちの少なくとも1つ、または2つもしくは3つ全ての任意の組み合わせを含む、
サンプル細胞から核酸を解放するための少なくとも1つの溶解剤であって、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、トリトン、トリトン-X、トリトン100、トリトン-X100、デオキシコール酸塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)、コール酸塩(例えば、コール酸ナトリウム)、ラウロイルサルコシンナトリウム(および/またはサルコシル)、マルトシド(例えば、n-ドデシル-β-D-マルトピラノシドおよび/またはDDM)、グリコシド(例えば、ジギトニン)、Tween(例えば、Tween 20および/またはTween 80)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(および/またはCHAPS)、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(および/またはTergitol型NP-40および/またはNP-40)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)からその誘導体を含めて選択される、少なくとも1つ、随意に、少なくとも2つ、随意に、少なくとも3つを含む、少なくとも1つの溶解剤;
トリスおよび/またはメチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、緩衝剤;
タンパク質および/またはDNAアーゼを遮断するための少なくとも1つの化学阻害剤ならびに/もしくは変性剤であって、2-メルカプトエタノール、Ca2+イオン、エチエレングリコール四酢酸(EGTA)、メチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ヨード酢酸、尿素から選択される、少なくとも1つ、随意に、少なくとも2つ、随意に、少なくとも3つを含む、少なくとも1つの化学阻害剤ならびに/もしくは変性剤。
12. pH緩衝液をさらに含む、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
13. 緩衝液は、トリスである、またはそれを含む、項目12に記載の組成物。
14. 組成物は、約8を上回るpHを有する、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
15. 組成物はさらに、プロテイナーゼKを含む、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
16. 組成物は、249mM、250mM、275mM、300mM、325mM、350mMから選択される、少なくとも1つを上回る総塩濃度を有する、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
17. 組成物は、300mM、2000mM、1000mM、750mM、500mMから選択される、少なくとも1つを上回らない総塩濃度を有する、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
18. 組成物は、5ml、4ml、3ml、2ml、1ml、750μl、500μl、250μl、100μlから選択される、少なくとも1つを上回らない体積を有する、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
19. トリス、SDS、トリトン、NaCl、およびEDTAを含む、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
20 プロテイナーゼK、デオキシコール酸ナトリウム、尿素から選択される、1つまたはそれを上回るものをさらに含む、項目19に記載の組成物。
21. 組成物中の構成要素の濃度は、
トリス:約(R+1)*10mM
SDS:約(R+1)*1%(v/v)
トリトン:約(R+1)*1%(v/v)
NaCl:約(R+1)*250mMを上回るまたはそれに等しい
EDTA:(R+1)*5mM
によって規定され、
Rは、比Vs/Vであり、
Vsは、濃度が使用中に混合させられることを意図している、サンプルVsの所定の体積であり、
Vcは、組成物の体積である、
項目19または20に記載の組成物。
22. 随意に、先行項目のうちのいずれかに記載の細胞材料を溶解させるための組成物であって、少なくとも1つのイオン性界面活性剤(またはイオン性洗剤)と、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤(または非イオン性洗剤)と、塩とを含む、組成物。
23. 少なくとも1つのイオン性界面活性剤または洗剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)、コール酸塩(例えば、コール酸ナトリウム)、ラウロイルサルコシンナトリウム(および/またはサルコシル)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(および/またはCHAPS)、前述のうちのいずれかの誘導体のうちのいずれか1つもしくはそれを上回るものとして選択される、項目22に記載の組成物。
24. 少なくとも1つのイオン性界面活性剤または洗剤が、トリトン、トリトン-X、トリトン100、トリトン-X100、マルトシド(例えば、n-ドデシル-β-D-マルトピラノシドおよび/またはDDM)、グリコシド(例えば、ジギトニン)、Tween(例えば、Tween 20および/またはTween 80)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(および/またはCHAPS)、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(および/またはTergitol型NP-40および/またはNP-40)、前述のうちのいずれかの誘導体のうちのいずれか1つもしくはそれを上回るものとして選択される、項目22または23に記載の組成物。
25. 塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)から選択される、いずれか1つまたはそれを上回るものである、項目22、23、または24に記載の組成物。
26. 組成物は、249mM、250mM、275mM、300mM、325mM、350mMから選択される、少なくとも1つを上回る、総塩濃度を有する、項目22~25のいずれかに記載の組成物。
27. イオン性および非イオン性界面活性剤または洗剤は、混合ミセル集団ならびに/もしくは混合ミセルを形成する、項目22~26のいずれかに記載の組成物。
28. エタノールをさらに含む、先行項目のうちのいずれかに記載の組成物。
29. 組成物は、実質的にエタノールを含まない、項目1~27のいずれかに記載の組成物。
30. 自然に発現された体液を受容するためのコンテナと、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するための組成物を含有するチャンバとを備える、自然に発現された体液の収集のための体液サンプル収集デバイスであって、組成物は、先行項目のうちのいずれかに従って規定される通りである、体液サンプル収集デバイス。
31. 自然に発現された体液のサンプルを受容するためのコンテナと、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するための組成物の第2の体積を含有するチャンバを備える、自然に発現された体液の所定の第1の体積の収集のための、随意に、項目30に記載の体液サンプル収集デバイスであって、第2の体積は、第1の体積を実質的に上回らない、随意に、それより小さい、体液サンプル収集デバイス。
32. 第2の体積が、第1の体積の約100%以下;第1の体積の約90%以下;第1の体積の約80%以下;第1の体積の約70%以下;第1の体積の約60%以下;第1の体積の約50%以下;第1の体積の約40%以下;第1の体積の約30%以下;第1の体積の約20%以下;第1の体積の約90%;第1の体積の約80%;第1の体積の約70%;第1の体積の約60%;第1の体積の約50%;第1の体積の約40%;第1の体積の約30%;第1の体積の約20%;第1の体積の約3の1;第1の体積の約4分の1から選択される少なくとも1つによって規定される、項目31に記載の体液サンプル収集デバイス。
33. 第1の体積は、約0.5ml~約2.25ml、約0.75ml~約2.25ml、約1ml~約2ml、約1ml~約1.5ml、約1mlのうちの少なくとも1つによって規定される、項目31または32に記載のデバイス。
34. 第1の体積は、約1mlであり、第2の体積は、約250μlである、項目31、32、または33に記載のデバイス。
35. 自然に発現された体液のサンプルを受容するためのコンテナと、収集されたサンプル中の核酸を抽出して保存するための組成物を含有するチャンバとを備える、自然に発現された体液のサンプルの収集のための、随意に、項目30~34のいずれかに記載の体液サンプル収集デバイスであって、組成物の体積は、約100μl~約1ml、少なくとも約100μlおよび1ml未満、約250μl~約750μl、少なくとも約100μl、少なくとも約250μl、少なくとも約500μl未満、1ml未満、約750μl未満、約500μl未満、約100μl、約250μl、約500μl、または約750μlから選択される、少なくとも1つによって規定される、体液サンプル収集デバイス。
36. 自然に発現された体液のサンプル中の核酸を抽出して保存するための項目1~29のいずれかに記載の組成物のサンプル収集デバイスにおける使用。
37. 家庭で使用するためのサンプル収集デバイスを使用する、ミトコンドリアDNAの抽出および保存のためのプロセスにおけるプロテイナーゼKの使用。
【0280】
本開示の種々の側面が上記で強調されているが、これは、本開示の範囲を限定しない。それが強調されているかどうかにかかわらず、保護が、本明細書に説明されるおよび/または図面に図示される任意の新規の特徴ならびに/もしくは概念のために請求される。
【0281】
付属書類1に関する非限定的実施形態が、付随の図面の4、5、および8を参照して、一例のみとして以下で説明される。
【0282】
図4および5を参照すると、家庭での使用に好適であり得るか、または少なくとも研究室を訪問する必要がないタイプのサンプル収集デバイス10が、描写されている。サンプル収集デバイス10は、例えば、ユーザが自然に発現された体液のサンプルを提供するために、携帯用であり得るか、および/または(例えば、郵便配達もしくは宅配を介して)家にいるユーザに提供されてもよい。体液は、例えば、唾液または尿であってもよい。以下の説明は、唾液に焦点を当てるが、同一の原理が、尿に、または別の自然に発現された体液に適用され得ることが理解され得る。
【0283】
付属書類1の図示される実施例では、組成物12が、収集された体液サンプル中の核酸を抽出および/または保存するために提供される。使用時に、組成物は、例えば、本デバイスを密閉するようにそれを閉鎖する際に、収集された体液サンプルと混合させられることを意図している。次いで、デバイス10は、発送者に返送されてもよいか、または分析、例えば、遺伝分析のために、収集代理人もしくは研究室に発送されてもよい。
【0284】
組成物12の機能は、体液サンプルから核酸を抽出すること、および/または抽出された核酸(もしくは体液サンプル)を保存することであってもよい。核酸は、DNAおよび/またはRNAであってもよい。
【0285】
いくつかの実施形態では、組成物12は、細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)を溶解させ、および/または抽出された細胞小器官核酸を保存するために効果的であり得る。
【0286】
いくつかの実施形態では、組成物12は、収集されたサンプル中のDNAの変異、損傷、または他の分解を回避し、または低減させ、それによって、分析のためにデバイスが返送されるための十分な時間を提供し得る。組成物12は、室温、または少なくとも1週間、随意に、少なくとも2週間、随意に、少なくとも3週間、随意に、少なくとも1ヶ月、もしくはさらに長い周期で、抽出された核酸を保存するために効果的であり得る。
【0287】
組成物12は、液体であってもよい。組成物の実施例のさらなる詳細が、以降に以下で議論される。
【0288】
組成物12は、随意に、デバイスの内部チャンバ14の中に貯蔵され、例えば、ユーザがデバイスを密閉するか、またはデバイス10の特定の他の操作を行うときに、収集された体液サンプルと混合するように放出されてもよい。
【0289】
図4および5は、収集デバイス10の2つの代替実施例を図示する。デバイス10は、概して、口18を有し、口18を通してデバイスに導入される自然に発現された体液のための収集領域20を画定する、第1の本体(例えば、管)16を備えてもよい。デバイス10はさらに、提供されたサンプルが導入された後にデバイス10を密閉するように、口18に取付可能であるか、またはその上の第2の本体(例えば、密封装置)22を備えてもよい。図4の実施例では、保存溶液12を含有するチャンバ14は、第2の本体(例えば、密封装置)22の中に提供される。図5の実施例では、組成物を含有するチャンバ14は、第1の本体(例えば、管)16の中に提供される。いずれの実施例でも、チャンバ14は、収集領域20と連通するために、機構(24で概略的に示される)によって開放されるように構成される。開放機構24は、第1の本体(例えば、管)16への第2の本体(例えば、密封装置)22の嵌合、またはデバイス10の特定の他の手動操作に応答し得る。内部閉鎖またはキャップの解放、タップの開放、壊れやすい壁の断裂、内部カバーの除去もしくは変位、キャップまたはナットの相対的回転から選択される、1つまたはそれを上回るものを含むが、それに限定されない、種々の機構24が構想される。
【0290】
随意に、デバイス10および開放機構24の例示的構造のさらなる詳細が、参照することによって本明細書に組み込まれる、前述の国際公開第WO2012/177656および国際公開第WO2015/112496で提供される。
【0291】
デバイス10は、自然に発現された体液の所定のサンプル体積「Vs」の収集のために構成されてもよい。本デバイスは、例えば、所定のサンプル体積Vsが達成されたときを示すように、視覚充填スケールまたは充填線(例えば、26で示される)もしくは他の印を含んでもよい。いくつかの実施形態では、サンプル収集空間は、所定の体積Vsに等しいサイズを有してもよいか、またはサンプル収集空間は、体積がより大きくてもよい。一例のみとして、所定の体積Vsは、いくつかの実施形態では、少なくとも約1ml、または少なくとも約2ml、または少なくとも約3ml、または少なくとも約4ml、または少なくとも約5ml、またはより多くであり得る。一例のみとして、所定の体積Vsは、いくつかの実施形態では、約5ml以下、または約4ml以下、または約3ml以下、または約2ml以下、または約1ml以下であり得る。一例のみとして、いくつかの実施形態では、所定の体積Vsは、いくつかの実施形態では、約1ml~約5ml、随意に、約1ml~約4ml、随意に、約1ml~約3ml、随意に、約1ml~約2mlであり得る。一例のみとして、所定の体積Vsは、いくつかの実施形態では、約1ml、または約2ml、または約3ml、または約4ml、または約5mlであり得る。
【0292】
いくつかの実施形態では、保存溶液12の体積「Vc」は、所定のサンプル体積Vsより実質的に大きくなくてもよいか、または随意に、それより小さくてもよい。一例のみとして、組成物体積Vcは、いくつかの実施形態では、Vsの約100%以下、またはVsの約90%以下、またはVsの約80%以下、またはVsの約70%以下、またはVsの約60%以下、またはVsの約50%以下、またはVsの約40%以下、またはVsの約30%以下、またはVsの約20%以下であり得る。一例のみとして、組成物体積Vcは、いくつかの実施形態では、Vsの約100%、またはVsの約90%、またはVsの約80%、またはVsの約70%、またはVsの約60%、またはVsの約50%、またはVsの約40%、またはVsの約30%、またはVsの約20%であり得る。一例のみとして、組成物体積Vcは、いくつかの実施形態では、Vsの約3分の1、またはVsの約4分の1であり得る。組成物体積Vcは、チャンバ14を充填するためにチャンバ14の内部空間と同一であってもよいか、または組成物体積Vcは、より小さくあってもよく、チャンバ14を部分的に充填する。
【0293】
組成物体積Vcを所定のサンプル収集体積Vsより実質的に大きくしないか、または随意に、それより小さくすることによって、保存溶液12を収集されたサンプルと混合するときの体積増加は、等しく小さくあり得る。体積増加は、単位体積あたりのDNA濃度に関してサンプルの希釈と等価であり得る。図8は、組成物体積Vcに依存する、単位体積あたりのDNAサンプル濃度への希釈の影響を概略的に図示する。水平軸は、1/1~5/1の比R=Vs/Vcの範囲(またはR=1~5)にわたって、組成物体積Vcに対するサンプル体積Vsの比Rを表す。垂直軸は、当初のサンプル体積と比較して、組成物体積と混合した後の単位体積あたりのDNA濃度の割合を表す。値は、関数Vs/(Vs+Vc)として変動し、組成物体積による希釈と等価である。
【0294】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、比Vs/Vcは、約1/1(またはRは約1)であってもよい。図8では、そのような組成物体積Vcが、単位体積あたりのDNA濃度を、著しく十分である当初の量の50%まで低減させることが分かり得る。しかしながら、(組成物体積Vcに対するサンプル体積Vsのより大きい比と等価である)より小さい組成物体積Vcを使用することによって、単位体積あたりのDNAの濃度が、1/1比の実施形態と比較して増加させられ得ると考えられる。例えば、2/1(R=2)のサンプル体積Vs対組成物体積Vc比に等しいサンプル体積の半分の組成物体積を使用すると、DNAの濃度は、例えば、元の量の最大66%だけ増大させられ得ると考えられ、これは、1/1比の実施形態と比較して30%の改善である。3/1(R=3)のサンプル体積Vs対組成物体積Vc比に等しいサンプル体積Vsの3分の1の組成物体積Vcを使用すると、DNAの濃度は、例えば、元の量の最大75%だけ増大させられ得ると考えられ、これは、1/1比の実施形態と比較して50%の改善である。4/1(R=4)のサンプル体積Vs対組成物体積Vc比に等しいサンプル体積Vsの4分の1の組成物体積Vcを使用すると、DNAの濃度は、例えば、元の量の最大80%だけ増大させられ得ると考えられ、これは、1/1比の実施形態と比較して60%の改善である。
【0295】
単位体積あたりの望ましく高いDNA濃度を達成することは、下流分析のための重要な利点を提供し得る。第1に、現代の自動検査手順は、小さいサンプル体積のみを使用する傾向がある。抽出および保存後に、小さい体積のサンプルさえも良好な濃度のDNAを含有することを確実にすることは、自動検査から利益を得ることができるために重要である。第2に、収集されたサンプルでは、ミトコンドリアDNAは、はるかに優勢な核DNAと比較して、濃度がはるかにわずかである。単位体積あたりのDNAの全体的濃度を向上させることは、そのようなわずかなDNAに対する自動検査の感度を増加させることに役立つ。これは、現在市販されているデバイスを使用して可能ではないことが理解される、比較的単純な収集デバイスの中で収集されるサンプルの自動検査を使用して、ミトコンドリアDNAの検出を可能にすることに寄与し得る。
【0296】
一つの具体的な例では、所定のサンプル体積Vsは約2mlであり得、組成物体積Vcは約2mlであり得る。別の具体的な例では、所定のサンプル体積Vsは約1mlであり得、組成物体積Vcは約1mlであり得る。別の具体的な例では、所定のサンプル体積Vsは約1mlであり得、組成物体積Vcは約250μlであり得る。
【0297】
上記のいずれかに対して付加的または代替的に、かつ、一例のみとして、組成物体積Vcは、いくつかの実施形態では、約100μl~約1mlを含めて(または随意に1ml未満)あり得る。付加的または代替的に、組成物体積Vcは、随意に、少なくとも約100μl、随意に、少なくとも約250μl、随意に、少なくとも約500μlであり得る。付加的または代替的に、組成物体積は、随意に、約1ml、随意に、1ml未満、随意に、約750μl未満、随意に、約500μl未満であり得る。一例のみとして、組成物体積Vcは、いくつかの実施形態では、約100μl、または約250μl、または約500μl、または約750μlであり得る。
【0298】
組成物12の活性成分の濃度は、小さい組成物体積Vcを使用することを補償するように、適宜、変動させられてもよい。例えば、基準の約半分の組成物体積Vcを使用するとき、組成物12の活性成分の濃度は、基準組成物12の活性成分の濃度と比較して、2倍またはそれを上回ってもよい。活性成分の組成物を変動させることは、より小さい組成物体積Vcにもかかわらず、少なくとも同一の(またはより良好な)抽出および保存能力を提供することができる。成分濃度のさらに詳細な説明が、以降で議論される。
【0299】
小さい組成物体積Vc(例えば、サンプル体積Vsより実質的に大きくないか、または随意に、それより小さい)を使用することによって希釈を低減させる上記の特徴に加えて、または代替として、本開示のさらなる特徴は、組成物12の構成要素に関し得る。構成要素に関する、これらの特徴は、組成物体積Vcに対するサンプル体積Vsの比に関係なく使用されてもよいが、比は、組成物中の構成要素の好適な濃度を判定するために有用であり得る。
【0300】
いくつかの実施形態では、組成物は、以下から選択される、いずれか1つまたはそれを上回るものを含んでもよい。
(i)そこから核酸を解放するように細胞および/または細胞小器官を溶解させるための少なくとも1つの細胞ならびに/もしくは細胞小器官溶解剤。好適な溶解剤は、1つまたはそれを上回る界面活性剤、および/もしくは1つまたはそれを上回る洗剤、および/もしくは1つまたはそれを上回る塩を含んでもよい。例示的界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であってもよいが、加えて、または代替として、他の界面活性剤が使用されてもよい。例示的洗剤は、トリトン(例えば、トリトン-X、トリトン100、トリトン-X100)、および/またはデオキシコール酸塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム)であってもよいが、加えて、または代替として、他の洗剤が使用されてもよい。例示的塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、および/または塩化リチウム(LiCl)、ならびに/もしくは塩化カリウム(KCl)から選択されてもよいが、加えて、または代替として、他の塩が使用されてもよい。付加的界面活性剤および/または洗剤が、以下でさらに説明される。誤解を避けるために、文脈が許可する場合、「界面活性剤」および「洗剤」という用語は、同義的に使用されてもよく、同義的に読み取られることを意図している。また、界面活性剤または洗剤が名前で記述される場合、範囲は、任意の誘導体(例えば、市販の誘導体)を同等に網羅することを意図している。
【0301】
界面活性剤および/または洗剤は、膜を破るように細胞ならびに膜成分を可溶化することができる。塩は、オスモル濃度を調整することができる。
【0302】
いくつかの実施形態では、(例えば、上記から選択される)少なくとも2つの溶解剤が、組み合わせて使用され、随意に、(例えば、上記から選択される)少なくとも3つの溶解剤が、組み合わせて使用される。
【0303】
いくつかの実施形態では、(組成物12および/またはサンプルと組み合わせられたときの組成物12の組み合わせの中の)塩濃度は、少なくとも250mM、随意に、250mMを上回り得る。本塩濃度は、総塩濃度、または少なくとも1つもしくはそれを上回る主要塩成分の濃度であってもよい。いくつかの実施形態では、本塩濃度は、少なくとも300mM、随意に、300~750mMの範囲内であってもよい。そのような濃度は、従来使用されるであろうよりも高く、組成物12の細胞小器官溶解能力に寄与し得る。
【0304】
いくつかの実施形態では、イオン性界面活性剤および/または洗剤(例えば、SDS)と組み合わせて非イオン性界面活性剤および/または洗剤(例えば、トリトン)を使用することが有益と考えられる。イオン性ならびに非イオン性界面活性剤および/または洗剤は、相互を緩衝し、(例えば、前の段落のように)比較的高い塩濃度でさえも望ましくミセルを形成するように、界面活性剤の凝集を安定させてもよい。例えば、トリトンは、そうでなければ比較的高い塩濃度で起こり得るSDSの沈降の危険性を防止するか、または低減させる、SDSへの安定化効果を有し得る。加えて、または代替として、例えば、SDSは、比較的高い塩濃度の存在下でさえもトリトンミセルの形成を安定させ得る。
【0305】
イオン性ならびに非イオン性界面活性剤および/または洗剤の組み合わせの安定化効果は、以下によって説明され得るが、これは、本開示の範囲をいかようにも限定することを意図していないと考える。いくつかの実施形態では、組成物は、(i)界面活性剤/洗剤および(ii)塩成分を両方とも含んでもよい。洗剤は、界面活性剤であり、それらは、細胞膜を破壊するために使用され、したがって、細胞溶解を支援し、可溶形態で細胞内物質の放出を促進する。洗剤は、タンパク質・タンパク質、タンパク質・脂質、および脂質・脂質会合を破壊する。さらに、洗剤は、タンパク質および種々の他の高分子を変性させ、免疫化学アッセイの非特異的結合およびタンパク質結晶化を防止する。
【0306】
溶液中で溶解させられた界面活性剤/洗剤は、いわゆるミセルを形成するように凝集する傾向があり得る。特定濃度における全ての洗剤は、ミセルを形成し、この濃度は、臨界ミセル濃度(CMC)と称される。いったんCMCに達すると、洗剤単量体がミセルを形成する。CMCより高い濃度で、ミセルおよび単量体は両方とも、水中で可溶性でないかもしれない、他の非ミセル相とともに溶液中に存在する。
【0307】
イオン性界面活性剤/洗剤(例えば、SDS)は、イオン性ミセルを形成する。これらのミセルが(単独である場合)、高い塩濃度に暴露されるとき、ミセルが破壊し、SDSが溶液から凝結して沈降し、溶液内で所望の効果を有さない。
【0308】
トリトンXは、別の洗剤であるが、SDSが、イオン性である一方で、トリトン-xは、非イオン性である。SDSおよびトリトンが両方とも溶液中で溶解させられるとき、ミセル集団は、イオン性(SDS)および非イオン性(トリトン)ミセルの両方のうちの1つであり、混合ミセル集団と見なされる。本混合ミセル集団は、塩濃度へのはるかに高い耐性を有し、非イオン性ミセルは、イオン性ミセルへの塩の影響を緩衝する。
【0309】
温度、pH、および塩濃度はそれぞれ、溶液のCMCに影響を及ぼし得る(それぞれの詳細な説明については以下を参照)。したがって、上記のうちのいずれかを改変することは、沈殿物の形成につながり得る。ミセルを形成するために必要とされる洗剤の濃度は、特異的である。本明細書で議論される例示的緩衝液は、臨界ミセル濃度を減少させ、したがって、CMCを劇的に超え、相補的イオン性/非イオン性界面活性剤の存在がなければ凝結して沈降するように、SDSの沈降の危険を冒す、NaClの形態で付加的ナトリウムを含有する。
【0310】
SDSおよびトリトンXの組み合わせは、CMCを低下させ、より大きい混合イオン性/非イオン性ミセルの形成につながることに関して、相乗的である。2つの洗剤の濃度および比は、ミセルの安定性を判定することに役割を果たす。したがって、これらの混合洗剤ミセルは、高塩濃度塩緩衝液中でより安定し、したがって、SDSのいかなる沈降も防止し得る。SDSおよびトリトン-Xの組み合わせは、おそらく、増進した安定性を伴う、より大きい混合ミセル、ならびに(NaCl濃度に起因する)より優れた水分子会合を形成し、SDS沈降の欠如にともに寄与している。
【0311】
相乗的に、NaClの存在はまた、CMCを低減させ、形成されるミセルのサイズを増加させること、およびミセルと非特異的に結合される、より多数の水分子によって、トリトン-Xのミセル形成を生じさせてもよい。これはまた、本明細書に開示される原理によると、混合ミセル集団(すなわち、イオン性ミセルの付加)によって緩衝され得ることが考えられる。
【0312】
使用され得、生物学的活性を改変しない、他の洗剤は、2%Tween-20、NP40、デオキシコール酸塩0.1~1%を含む。
【0313】
以下は、例示的洗剤の2つの非限定的な表である。表1は、洗剤のカテゴリを列挙し、表2は、本明細書に説明されるような各洗剤の例示的用途を列挙する。
【表1】
【0314】
【表2】
【0315】
(ii)例えば、トリスおよび/またはメチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むか、もしくはそれから成る、緩衝剤。トリスおよびEDTAの組み合わせは、溶液を緩衝し、マグネシウムを排除することができる(DNAアーゼを阻害する)。この組み合わせは、塩基性DNA貯蔵緩衝液を提供することができる。EDTAは、(所望に応じて)RNAを分解することができる。
【0316】
いくつかの実施形態では、サンプルおよび組成物のpHは、ともに混合した後、例えば、約7.4~約8のわずかに塩基性であり得る。(例えば、サンプルと混合することに先立った)組成物12単独のpHは、より高くあり得る。組成物12単独のpHは、少なくとも約8、随意に、8を上回り、例えば、約8.3であってもよい。
【0317】
(iiI)タンパク質および/またはDNAアーゼを遮断する少なくとも1つの化学阻害剤ならびに/もしくは変性剤。好適な阻害剤および/または変性剤は、2-メルカプトエタノール、Ca2+イオン、エチエレングリコール四酢酸(EGTA)、メチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ヨード酢酸、尿素から選択される、1つまたはそれを上回るものを含んでもよい。
【0318】
上記のように、EDTAは、DNAアーゼンクレアーゼの補因子であるMg2+等の二価陽イオンのキレート剤である。いくつかの実施形態では、EDTAは、同時に緩衝剤および変性剤としての機能を果たす。
【0319】
(iv)タンパク質を排除するためのプロテイナーゼK。プロテイナーゼKは、SDSと組み合わせるて、より効果的であり得る。例えば、プロテイナーゼKは、変性させられたタンパク質に対して最大約10倍効果的であり得、SDSは、タンパク質変性剤として効果的である。プロテイナーゼKは、SDSまたはEDTA、溶液中のもしくは他の化学物質およびタンパク質阻害剤によって阻害されることを回避し得る。プロテイナーゼKの長期安定性が問題と見なされる、いくつかの実施例では、これは、概して、組成物12中のプロテイナーゼKの量を増加させることによって克服されることができ、それによって、経時的な予期される部分損失を事前に補償する。一例のみとして、組成物12中、および/またはともに混合した後の組成物12ならびにサンプルの組み合わせの中のプロテイナーゼKの量は、約30~70mg/ml、随意に、約40~60mg/ml、随意に、約50mg/mlであってもよい。
【0320】
いくつかの実施形態では、総塩濃度は、約3000mM未満、随意に、約2000mM未満、随意に、約1000mM未満、随意に、約750mM未満、随意に、約500mM未満であってもよい。塩濃度は、(例えば、EDTAを含む)組成物12中の全ての塩成分の間で付加的であり得る。過剰に高い総塩濃度は、遺伝分析のための収集および保存されたサンプルの以降の処理においてDNAを単離する能力を制約し得る。塩濃度は、唾液と混合させられたときに参照される濃度、または組成物単独の濃度であってもよい。
【0321】
組成物12の1つの具体的実施例は、トリス、SDS、トリトン、NaCl、およびEDTAを含んでもよい。随意に、組成物は、プロテイナーゼK、デオキシコール酸ナトリウム、尿素から選択される、1つまたはそれを上回るものを含んでもよい。一実施例では、ともに混合させられた組成物12および唾液サンプルの両方の組み合わせで判定される、構成要素の相対濃度は、以下の表3の通りであってもよい。
【表3】
【0322】
濃度は、個別に、かつ独立して、本具体的実施例の範囲内で、最大5%、随意に、最大10%、随意に、最大20%変動させられてもよい。
【0323】
上記のように、濃度は、組成物12および唾液サンプルを両方とも含有する溶液中の所望の濃度である。組成物12単独中の構成要素の濃度は、本明細書で以前に説明されたように、組成物体積Vcに対するサンプル体積Vsの比R(R=Vs/Vc)に依存し得る。濃度は、(R+1)または((Vs/Vc)+1)の濃度乗数に従って変動してもよい。一般的値およびいくつかの具体的実施例が、以下の表4に図示される。
【表4】
【0324】
再度、濃度は、個別に、かつ独立して、これらの具体的実施例の範囲内で、最大5%、随意に、最大10%、随意に、最大20%変動させられてもよい。
【0325】
本開示はまた、その範囲内で、以下も企図する。
(a)0%まで(SDSを省略する)を含む、SDSの割合を変動させるステップ。
(b)0%まで(トリトンを省略する)を含む、トリトンの割合を変動させるステップ。
(c)NaClの代用として(NaClを省略する)、もしくは相補体としてNaClと組み合わせてのいずれかで、KClおよび/またはLiCl(緩衝液のイオン性強度を維持する塩)を添加するステップ。
(d)個別および/または総塩濃度を変動させるステップ。
(e)例えば、上記で説明されるような数量で、プロテイナーゼKを添加するステップ。
(f)膜および細胞成分を可溶化することが可能な生物学的洗剤であり、細胞小器官溶解を増加させ得る、0.1~1%のデオキシコール酸ナトリウムを添加するステップ。デオキシコール酸ナトリウムは、SDSおよび/またはトリトンを代替するために使用されてもよい、もしくは両方と組み合わせて使用されてもよい。SDSおよび/またはトリトンの相対的割合もまた、変動させられてもよい。(例えば、上記で引用される範囲は、唾液と混合させられたときの組成物を参照し得る。濃度は、本明細書に説明される因数R+1に従って、組成物単独中で増加させられてもよい。)
(g)尿素を添加するステップ。尿素は、タンパク質変性を増加させ、細胞溶解を増加させてもよい。SDSおよび/またはトリトンならびに/もしくは他の変性剤の割合は、変動させられてもよい。
(h)SDSおよび/またはトリトンに加えて、もしくはそれの代替物として、1つまたはそれを上回る他のイオン性ならびに/もしくは非イオン性界面活性剤および/または洗剤を使用するステップ。
【0326】
所望に応じて、意図された用途によると、組成物12はさらに、エタノールを含んでもよい。代替として、所望に応じて、組成物12は、実質的にエタノールを含まなくてもよい。
【0327】
いくつかの実施形態では、組成物12は、細胞小器官から核酸を抽出して保存することに効果的である。細胞小器官は、例えば、ミトコンドリアであってもよい。
【0328】
ミトコンドリアDNAを抽出して保存することは、困難であることが公知である。ミトコンドリアDNAは、従来の溶解技法による変異の影響を高度に受けやすく、核DNAと比較して、濃度が非常にわずかである。これは、特に、家庭で使用するためのタイプのサンプル収集デバイスを使用して、下流分析のためにそのようなDNAを十分な数量で抽出して損傷されていない状態で保存しにくくさせる。家庭で使用するためのサンプル収集デバイスと異なる研究室環境では、ミトコンドリアDNAを取得するための一般知識は、ミトコンドリアDNAへの損傷の危険性を低減させるよう、有意な環境的影響を提示しない制御された条件下で、非常にゆっくりと繊細に細胞を溶解させることである。
【0329】
本開示のいくつかの実施形態は、異なるアプローチを提示する。それぞれ、提案された用途の高い範囲内で、複数の溶解剤、例えば、少なくとも2つの溶解剤、随意に、少なくとも3つの溶解剤、またはそれを上回る溶解剤を組み合わせて使用することによって、細胞膜だけではなく、細胞小器官膜もまた、細胞小器官から核酸を迅速に解放するように溶解させられ得、それによって、溶解損傷が起こり得る時間を短縮することが考えられる。
【0330】
加えて、または代替として、それぞれ、提案された用途の高い範囲内で、複数の化学阻害剤および/または変性剤、例えば、少なくとも2つのそのような薬物、随意に、少なくとも3つのそのような薬物を組み合わせて使用することによって、抽出された核酸が周辺環境物質による損傷から迅速に保護されることができ、それによって、損傷される細胞小器官DNAの量を低減させることが考えられる。
【0331】
上記の技法の両方は、細胞小器官DNAへの有意な環境的影響を提示しない制御された条件下での低速かつ繊細なアプローチという従来の研究室知識と比較して、驚くべき利点を提供する。上記の技法を組み合わせて使用することは、驚くべき有効性を提供することができる。
【0332】
本明細書に説明される組成物は、細胞成分を抽出するように細胞物質を溶解させるための多くの異なる用途で使途を見出し得る。好ましい実施形態が、DNA抽出、例えば、細胞小器官DNA抽出との関連で説明されるが、組成物は、そのような使途のみに限定されない。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
病状を診断および/または監視する方法であって、
自然に発現された体液のサンプルを取得するステップと、
前記サンプルを前記サンプル中の細胞および/または細胞外成分を安定させるための保存溶液と接触させるステップと、
前記病状を識別、診断、もしくは監視するために、前記サンプルからの安定化された細胞および/または細胞外成分を分析するステップと、
を含む、方法。
(項目2)
前記自然に発現された体液は、口腔液、唾液、痰、尿、肺吸引物の流体から選択される、1つまたはそれを上回るものを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記サンプルを前記保存溶液と接触させるステップに先立って、前記サンプルを前処理剤と接触させるステップをさらに含み、前記前処理剤は、病状を示す1つまたはそれを上回る因子の放出を刺激するように構成される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記方法はさらに、少なくとも特定の細胞外成分から少なくとも特定の細胞を分離するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記分析するステップは、フローサイトメトリを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記分析するステップは、蛍光活性化細胞分類(FACS)を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記分析するステップは、免疫組織化学を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記分析するステップは、分子分析を含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記分析するステップは、前記サンプル中の検出可能な抗体の存在に先立ってHIVウイルス感染を識別するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記分析するステップは、T細胞、随意に、CD4+T細胞内のHIVウイルスを識別するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記分析するステップは、随意に、HIV感染および/またはAIDSを示す、免疫不全症を識別するために、CD4+T細胞の量を査定するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記分析するステップは、(i)COPDを示す、および/または(ii)ACOSを示す、ならびに/もしくは(iii)COPDのACOS型と非ACOS型とを区別するためのバイオマーカを識別するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記分析するステップは、電解質測定、脂質測定、ビタミン測定、肝炎検出、鉄欠乏プロファイル測定、肝機能検査、腎臓プロファイル測定、糖尿病スクリーニング検査、血液像測定、甲状腺プロファイル測定のうちの少なくとも1つを行うステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記保存溶液は、血液に対して高張性である、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記サンプルを保存溶液と接触させるステップの後に、前記保存溶液と混合させられた前記サンプルの組み合わせは、略等張性であり、張度は、血液に対して規定される、項目1に記載の方法。
(項目16)
さらなる下流分析のため、および/または病状の診断のために、自然に発現された体液中の細胞ならびに/もしくは細胞外成分を保存するための溶液であって、血液に対して高張性である溶液。
(項目17)
前記自然に発現された体液は、口腔液、唾液、痰、尿、肺吸引物の流体から選択される、1つまたはそれを上回るものを含む、項目1に記載の溶液。
(項目18)
流体サンプル中の細胞および/または細胞外成分の下流分析のための流体サンプルであって、前記流体サンプルは、保存溶液と混合させられる自然に発現された低張性体液を含み、前記サンプル流体は、略等張性であり、張度は、血液に対して規定される、流体サンプル。
(項目19)
自然に発現された体液のサンプルを収集するためのサンプル収集デバイスであって、前記サンプル収集デバイスは、前記自然に発現された体液中の細胞および/または細胞外成分を保存するための溶液を含有し、もしくは含み、前記溶液は、血液に対して高張性である、サンプル収集デバイス。
(項目20)
流体サンプルを含有する、サンプル収集デバイスであって、前記流体サンプルは、(ii)保存溶液と混合させられる(i)自然に発現された低張性体液を含み、前記サンプル流体は、略等張性であり、張度は、血液に対して規定される、サンプル収集デバイス。
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