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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019089585
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020185503
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大井 満
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0099600(US,A1)
【文献】特開2018-019458(JP,A)
【文献】国際公開第2018/052027(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
H02K 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体と、
前記可動体を所定の移動方向に移動可能に支持する支持機構と、
前記可動体を前記移動方向に移動させる磁気駆動機構と、
前記可動体、前記支持機構、および前記磁気駆動機構を収容するケースと、を有し、
前記ケースは、磁性部材からなり、
前記磁気駆動機構は、前記可動体に固定された駆動コイルと、前記移動方向と交差する交差方向で前記駆動コイルに向き合う駆動マグネットと、
前記ケースの内壁面に固定されたマグネットホルダを有し、
前記マグネットホルダは、前記交差方向に延びる枠部を備え、
前記駆動マグネットは、前記枠部の内側に嵌っていることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記駆動マグネットは、前記ケースの内壁面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記交差方向と前記移動方向とは直交しており、
前記駆動コイルは、前記交差方向に中心開口を向けており、
前記駆動マグネットは、前記移動方向に沿ってハルバッハ配列された複数のマグネットを備えることを特徴とする請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記マグネットホルダと前記駆動マグネットとの間、および前記ケースの内壁面において前記枠部の内側に位置する内壁面部分と前記駆動マグネットとの間には、接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記可動体は、前記移動方向における前記駆動コイルの一方側に位置する錘を備え、
前記錘は、前記移動方向で前記枠部と向き合う錘側対向面を備え、
前記枠部は、前記移動方向で前記錘側対向面と向き合う枠部側対向面を備え、
前記錘側対向面および前記枠部側対向面の一方には、緩衝部材が固定されていることを特徴とする請求項4に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記錘側対向面および前記枠部側対向面は、前記移動方向と垂直であることを特徴とする請求項5に記載のリニアモータ。
【請求項7】
前記支持機構は、前記可動体と前記ケースとの間に架け渡された板バネであることを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか一項に記載のリニアモータ。
【請求項8】
前記駆動コイルに電気的に接続されるとともに、前記可動体から前記ケースの側に引き出されて当該ケースに固定されたフレキシブルプリント基板を有し、
前記板バネは、前記ケースに固定されたケース側固定部と、前記可動体に固定された可動体側固定部と、前記ケース側固定部と前記可動体側固定部とを接続する変位部と、を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記可動体と前記ケースとの間に、前記変位部に沿って引き回された引き回し部分と、前記引き回し部分から前記移動方向に湾曲する湾曲部分と、前記湾曲部分の前記引き回し部分とは反対側の端から延びて前記移動方向から見た場合に当該引き回し部分と重なる重なり部分と、を備えることを特徴とする請求項7に記載のリニアモータ。
【請求項9】
前記ケースは、前記移動方向に平行に延びる第1端板および第2端板と、前記交差方向に延びて前記第1端板および第2端板の外周縁を接続する枠板とを、備え、
前記駆動マグネットは、前記第1端板に固定されており、
前記駆動コイルは、前記駆動マグネットと前記第2端板との間に位置することを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは、特許文献1に記載されている。同文献のリニアモータは、コイルを有する静止部と、振動体と、弾性部材と、を有する。静止部は、カバーと、ベースプレートと、基板と、コイルと、を有する。カバーとベースプレートとは、筐体を構成する。振動体は、おもりと、バックヨークと、磁石部と、を有する。弾性部材は、一方向および縦方向に延びて形成される板バネであり、一端をおもりに固定され、他端をカバーに固定される。リニアモータは、コイルに電流を供給することにより、コイルに発生する磁束と磁石部による磁束との相互作用により、振動体が一方向に往復運動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-30855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルと磁石部とから構成される磁気駆動機構の磁束がケース(筐体)から外部に漏れると、漏れ磁束がリニアモータを搭載している外部の機器に影響を及ぼす可能性がある。また、磁気駆動機構の磁束がケースから外部に漏れると、磁気駆動機構が発生させる磁気駆動力が低下する可能性がある。
【0005】
ここで、ケースを磁性部材とすれば、磁気駆動機構の磁束が外部に漏れることを防止できる。しかし、ケースを磁性部材とした場合には、ケースと、可動体に搭載したマグネット(振動体の磁石部)と、の間に磁気吸引力が働く。従って、可動体がケースに吸引されて、可動体の移動が阻害されるという問題がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、可動体の移動を阻害せずにケースからの磁束の漏れを防止或いは抑制できるリニアモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のリニアモータは、可動体と、前記可動体を所定の移動方向に移動可能に支持する支持機構と、前記可動体を前記移動方向に移動させる磁気駆動機構と、前記可動体、前記支持機構、および前記磁気駆動機構を収容するケースと、を有し、前記ケースは、磁性部材からなり、前記磁気駆動機構は、前記可動体に固定された駆動コイルと、前記移動方向と交差する交差方向で前記駆動コイルに向き合う駆動マグネットと、前記ケースの内壁面に固定されたマグネットホルダを有し、前記マグネットホルダは、前記交差方向に延びる枠部を備え、前記駆動マグネットは、前記枠部の内側に嵌っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ケースが磁性部材である。従って、駆動コイルと駆動マグネットとからなる磁気駆動機構の磁束がケースから外部に漏れることを防止或いは抑制できる。よって、漏れ磁束に起因して磁気駆動機構の駆動力が低下することを防止できる。また、可動体には駆動コイルが搭載され、駆動マグネットは搭載されていない。従って、ケースを磁性部材とした場合でも、可動体がケースに吸引されて、可動体の移動が阻害されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、リニアモータの外観斜視図である。
図2図2は、可動体の移動方向に沿って切断したリニアモータの断面図である。
図3図3は、ケースの第2端板を取り除いたリニアモータの平面図である。
図4図4は、第2端板および可動体を取り除いたリニアモータの斜視図である。
図5図5は、第2端板が位置する側から見た場合の可動体の斜視図である。
図6図6は、図5とは反対側から見た場合の可動体の斜視図である。
図7図7は、可動体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したリニアモータの実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、リニアモータの外観斜視図である。図2は、リニアモータを可動体の移動方向に沿って切断した断面図である。図3は、ケースの第2端板を取り除いたリニアモータの平面図である。図4は、第2端板および可動体を取り除いたリニアモータの斜視図である。
【0012】
図1に示すように、リニアモータ1は、全体として直方体形状のケース3を備える。ケース3の短手方向の一方の側面からは、フレキシブルプリント基板4が外部に引き出されている。図2に示すように、ケース3は、互いに平行に延びる第1端板5および第2端板6を備える。第1端板5は、長手方向に延びる長方形形状の端板本体部8と、端板本体部8から短手方向の一方側に突出する基板支持部9と、を備える。基板支持部9には、フレキシブルプリント基板4において、ケース3から引き出された部分が載せられている。第2端板6の平面形状は、第1端板5の端板本体部8と重なる長方形形状である。また、図1に示すように、ケース3は、第1端板5と第2端板6とが向き合う方向に延びて第1端板5の外周縁と第2端板6の外周縁とを接続する枠板7とを備える。
【0013】
枠板7は、ケース3の長手方向で向き合って短手方向に平行に延びる第1枠板部11および第2枠板部12を備える。また、枠板7は、ケース3の短手方向で向き合って長手方向に平行に延びる第3枠板部13および第4枠板部14を備える。ケース3は、磁性部材であり、金属製である。ケース3は強磁性体である。
【0014】
図2に示すように、ケース3は、可動体15と、可動体15を所定の移動方向に移動可能に支持する支持機構16と、可動体15を移動させる磁気駆動機構17と、を収容する。磁気駆動機構17は、可動体15に固定された駆動コイル18と、ケース3に固定された駆動マグネット19と、を備える。駆動マグネット19は、可動体15の移動方向と交差する交差方向で駆動コイル18に向き合う。駆動マグネット19およびケース3は固定体20を構成する。
【0015】
ここで、以下の説明では、互いに交差する3方向をX方向、Y方向、Z方向とする。また、X方向の一方側を-X方向、他方側を+X方向とする。Y方向の一方側を-Y方向、他方側を+Y方向とする。Z方向の一方側を-Z方向、他方側を+Z方向とする。X方向は、ケース3の長手方向であり、可動体15が移動する移動方向である。-X方向は第1枠板部11が位置する側であり、+X方向は第2枠板部12が位置する側である。Y方向は、ケース3の短手方向である。-Y方向は、第3枠板部13が位置する側であり、+Y方向は第4枠板部14が位置する側である。基板支持部9は端板本体部8から+Y方向に突出する。フレキシブルプリント基板4は、ケース3から+Y方向に引き出されている。Z方向は、移動方向と交差する交差方向である。また、Z方向は、駆動コイル18と駆動マグネット19と向き合う方向である。-Z方向は、第1端板5が位置する側であり、+Z方向は、第2端板6が位置する側である。
【0016】
図4に示すように、駆動マグネット19は、ケース3の内壁面に固定されている。すなわち、駆動マグネット19は、第1端板5の+Z方向の第1面5aに固定されている。より詳細には、第1端板5の第1面5aのX方向の中央部分には、マグネットホルダ22が固定されている。マグネットホルダ22は、Z方向の延びる枠部23と、枠部23の-Z方向の端部分からX方向の両側に突出する第1固定部24および第2固定部25と、を備える。
【0017】
枠部23をZ方向から見た場合の形状は矩形である。枠部23は、X方向で向かい合いY方向に平行に延びる第1枠部部分26および第2枠部部分27と、Y方向で向かい合いX方向に平行に延びる第3枠部部分28および第4枠部部分29と、を備える。第1枠部部分26は第2枠部部分27の-X方向に位置する。第3枠部部分28は第4枠部部分29の-Y方向に位置する。第1固定部24は、第1枠部部分26から-X方向に延びる。第2固定部25は、第2枠部部分27から+X方向に延びる。マグネットホルダ22は、非磁性金属からなる。マグネットホルダ22は、第1固定部24および第2固定部25が、それぞれ第1端板5に溶接されている。
【0018】
図2図4に示すように、駆動マグネット19は、枠部23の内側に、嵌っている。また、駆動マグネット19は、接着剤により第1端板5に固定される。従って、マグネットホルダ22(枠部23)と駆動マグネット19との間、およびケース3の内壁面(第1端板5の第1面5a)において枠部23の内側に位置する内壁面部分と駆動マグネット19との間には、接着剤層30が設けられている。
【0019】
駆動マグネット19は、X方向(移動方向)に沿ってハルバッハ配列された複数のマグネット31、32、33を備える。本例では、駆動マグネット19は、X方向の中央に配置された第1マグネット31と、第1マグネット31の-X方向に隣り合う第2マグネット32と、第1マグネット31の+X方向に隣り合う第3マグネット33とを備える。第1マグネット31は、+Z方向にN極を向け、-Z方向にS極を向けている。第2マグネット32は、+X方向(第1マグネット31の側)にN極を向け、-X方向にS極を向けている。第3マグネット33は、-X方向(第1マグネット31の側)にN極を向け、+X方向にS極を向けている。なお、駆動マグネット19を構成するマグネット31の磁極の向きは、本例に限られるものではない。また、駆動マグネット19を構成するマグネット31の数は3に限られるものではない。
【0020】
ここで、マグネットホルダ22の第1枠部部分26の-X方向を向く面、および、第2枠部部分27の+X方向を向く面には、それぞれ緩衝部材35が固定されている。各緩衝部材35は、一定厚さを備えるシート状の弾性部材である。また、各緩衝部材35は、多孔質部材である。各緩衝部材35は、接着剤により枠部23に貼り付けられている。
【0021】
(可動体)
図5は、第2端板6が位置する側から見た場合の可動体15の斜視図である。図6は、図5とは反対側から見た場合の可動体15の斜視図である。図7は、可動体15の分解斜視図である。図5図6、および図7に示すように、可動体15は、板状のフレーム41と、フレーム41のX方向の中央部分にフレキシブルプリント基板4を介して固定された駆動コイル18と、フレーム41に固定された錘42と、を備える。フレーム41は、非磁性金属である。
【0022】
図5に示すように、フレーム41は、X方向に延びるフレーム本体部43と、フレーム41本体の-X方向の端部分における+Y方向の端縁から-Z方向に屈曲するフレーム屈曲部44と、を備える。フレーム本体部43をZ方向から見た場合の平面形状は、全体として、X方向に長い長方形形状をしている。フレーム本体部43は、X方向の中央部分に
、Y方向の両側に張り出す張出部分を備える。
【0023】
図6に示すように、駆動コイル18はZ方向に中心開口18aを向けている。Z方向から見た場合に、駆動コイル18は、X方向よりもY方向に長い。駆動コイル18は、X方向で向かい合いY方向に平行に延びる第1コイル部分45および第2コイル部分46と、第1コイル部分45の-Y方向の端部分と第2コイル部分46の-Y方向の端部分とを接続する第3コイル部分47と、第1コイル部分45の+Y方向の端部分と第2コイル部分46の+Y方向の端部分とを接続する第4コイル部分48とを備える。第1コイル部分45は第2コイル部分46の-X方向に位置する。第3コイル部分47は第4コイル部分48の-Y方向に位置する。第1コイル部分45、第2コイル部分46、第3コイル部分47、および第4コイル部分48によって囲まれた空間は、駆動コイル18の中心開口18aである。駆動コイル18はフレキシブルプリント基板4に固定されている。また、駆動コイル18はフレキシブルプリント基板4に電気的に接続されている。
【0024】
図7に示すように、フレキシブルプリント基板4は、駆動コイル18が固定されるコイル固定部分51と、コイル固定部分51の+Y方向の側から-X方向に延びて+Y方向に屈曲する屈曲部分52と、屈曲部分52のコイル固定部分51とは反対側の端から-Z方向に折り曲げられた可動体側固定部分53と、可動体側固定部分53から引き出された延設部分54と、を備える。駆動コイル18は、コイル固定部分51の-Z方向を向く面に固定されている。また、フレキシブルプリント基板4は、延設部分54の可動体側固定部分53とは反対側に連続するケース側固定部分55と、ケース側固定部分55の-Z方向の端から+Y方向に折り曲げられた突出部分56と、を備える。図1に示すように、突出部分56はケース3から外側に突出する。突出部分56は、ケース3の第1端板5の基板支持部9に載せられる。
【0025】
図6図7に示すように、錘42は、矩形枠状である。錘42は、非磁性金属である。本例では、錘42は、タングステン合金製である。錘42は、X方向で向かい合いY方向に平行に延びる第1錘部61および第2錘部62と、第1錘部61の-Y方向の端部と第2錘部62の-Y方向の端部とを接続する第1接続部63と、第1錘部61の+Y方向の端部と第2錘部62の+Y方向の端部とを接続する第2接続部64と、を備える。第1錘部61は第2錘部62の-X方向に位置する。第1接続部63は第2接続部64の-Y方向に位置する。また、錘42は、X方向の中央に、第1錘部61、第2錘部62、第1接続部63および第2接続部64によって区画された矩形の開口部65を備える。
【0026】
図7に示すように、第1錘部61の+Z方向の端面における+Y方向の端面部分には、溝部67が設けられている。溝部67は、-X方向に延びた後に+Y方向に屈曲する平面形状である。また、第1接続部63の+Z方向の端面には、第1溝部68が設けられている。第1溝部68は、第1接続部63を-Y方向から切り欠いた切欠き溝である。第1溝部68はY方向に延びて開口部65に連通する。第2接続部64の+Z方向の端面には、第2溝部69が設けられている。第2溝部69は、第2接続部64を+Y方向から切り欠いた切欠き溝である。第2溝部69は、Y方向に延びて開口部65に連通する。
【0027】
フレキシブルプリント基板4は、コイル固定部分51に駆動コイル18が固定された状態で、コイル固定部分51および屈曲部分52がフレーム本体部43に固定される。また、フレキシブルプリント基板4は、可動体側固定部分53が、フレーム屈曲部44に固定される。
【0028】
錘42は、+Z方向の端面がフレーム本体部43に固定される。この際に、駆動コイル18の第3コイル部分47は錘42の第1溝部68に配置される。駆動コイル18の第4コイル部分48は、錘42の第2溝部69に配置される。また、フレキシブルプリント基
板4の屈曲部分52は、錘42の溝部67に配置されて、フレーム41と第1錘部61との間に配置される。
【0029】
(支持機構)
図3に示すように、支持機構16は、可動体15とケース3との間に架け渡された第1板バネ71と第2板バネ72とを備える。第1板バネ71と第2板バネ72とは同一の部材である。第1板バネ71は、ケース3に固定された第1ケース固定部74と、可動体15に固定された第1可動体固定部75と、第1ケース固定部74と第1可動体固定部75とを接続する第1変位部76と、を備える。
【0030】
第1ケース固定部74、および、第1可動体固定部75は、第1板バネ71の厚み方向をY方向に向けて、X方向に延びる。第1ケース固定部74は、ケース3の第4枠板部14に固定されている。第1ケース固定部74の-Y方向を向く面(可動体15が位置する側の面)には、シート状のケース側緩衝部材91が固定されている。第1可動体固定部75は、第1錘部61の-Y方向の端面に固定されている。第1可動体固定部75の-Y方向を向く面(ケース3の第3枠板部13が位置する側の面)には、シート状の可動体側緩衝部材92が固定されている。第1変位部76は、第1ケース固定部74から、錘42の-X方向を迂回して、第1可動体固定部75に連続する。
【0031】
第1変位部76は、第1ケース固定部74から-X方向に延びて-Y方向に湾曲する第1湾曲板部分77と、第1湾曲板部分77の-Y方向の端から-Y方向に向かって+X方向に延びる傾斜板部分78と、傾斜板部分78の-Y方向の端から-Y方向に向かって+X方向に湾曲する第2湾曲板部分79と、を備える。第2湾曲板部分79の+X方向の端は、第1可動体固定部75に連続する。傾斜板部分78における-Y方向の側の部分には、直方体形状の第1緩衝部材80が固定されている。第1緩衝部材80の+X方向の端面は、接着剤などにより第1錘部61に固定されている。傾斜板部分78は、第1緩衝部材80をY方向で斜めに貫通している。
【0032】
第2板バネ72は、ケース3に固定された第2ケース固定部81と、可動体15に固定された第2可動体固定部82と、第2ケース固定部81と第2可動体固定部82とを接続する第2変位部83と、を備る。第2ケース固定部81、および、第2可動体固定部82は、厚み方向をY方向に向けて、X方向に延びる。第2ケース固定部81は、ケース3の第4枠板部14に固定されている。第2ケース固定部81の-Y方向を向く面(可動体15が位置する側の面)には、シート状のケース側緩衝部材91が固定されている。第2可動体固定部82は、第2錘部62の-Y方向の端面に固定されている。第2可動体固定部82の-Y方向を向く面(ケース3の第3枠板部13が位置する側の面)には、シート状の可動体側緩衝部材92が固定されている。第2変位部83は、第2ケース固定部81から、錘42の+X方向を迂回して、第2可動体固定部82に連続する。
【0033】
第2変位部83は、第2ケース固定部81から+X方向に延びて-Y方向に湾曲する第1湾曲板部分77と、第1湾曲板部分77の-Y方向の端から-Y方向に向かって-X方向に延びる傾斜板部分78と、傾斜板部分78の-Y方向の端から-Y方向に向かって-X方向に湾曲する第2湾曲板部分79と、を備える。第2湾曲板部分79の-X方向の端は、第2可動体固定部82に連続する。傾斜板部分78における-Y方向の側の部分には、直方体形状の第2緩衝部材84が固定されている。第2緩衝部材84の-X方向の端面は、接着剤などにより第2錘部62に固定されている。傾斜板部分78は、第2緩衝部材84をY方向で斜めに貫通している。
【0034】
第1板バネ71および第2板バネ72を介して可動体15がケース3に支持されると、図2に示すように、マグネットホルダ22および駆動マグネット19は、可動体15の錘
42の開口部65の内側に位置する。駆動マグネット19と駆動コイル18とは、Z方向で僅かなギャップを開けて向かい合う。駆動コイル18は、駆動マグネット19とケース3の第2端板6との間に位置する。また、マグネットホルダ22の第1枠部部分26と錘42の第1錘部61とは、X方向で隙間を開けて向き合う。マグネットホルダ22の第2枠部部分27と錘42の第2錘部62とは、X方向で隙間を開けて向き合う。
【0035】
ここで、錘42において、マグネットホルダ22の枠部23と向き合う第1錘部61の第1錘側対向面61aと、マグネットホルダ22において錘42(第1錘部61)と向き合う枠部23の第1枠部部分26の第1枠部側対向面26aとは、互いに平行で、Y方向に延びる。また、錘42において、マグネットホルダ22の枠部23と向き合う第2錘部62の第2錘側対向面62aと、マグネットホルダ22において錘42(第2錘部62)と向き合う枠部23の第2枠部部分27の第2枠部側対向面27aとは、互いに平行で、Y方向に延びる。2つの緩衝部材35のうち、-X方向に位置する緩衝部材35は、第1枠部側対向面26aに固定されており、第1錘側対向面61aとX方向で隙間を開けて向き合う。+X方向に位置する緩衝部材35は、第2枠部側対向面27aに固定されており、第2錘側対向面62aとX方向で隙間を開けて向き合う。
【0036】
また、第1板バネ71および第2板バネ72を介して可動体15がケース3に支持されたときに、フレキシブルプリント基板4の延設部分54は、第1板バネ71の第1変位部76に沿って引き回された引き回し部分85と、引き回し部分85から+X方向に湾曲する湾曲部分86と、湾曲部分86の引き回し部分85とは反対側の端から延びてX方向から見た場合に引き回し部分85と重なる重なり部分87と、を備える。引き回し部分85は、第1変位部76の第1湾曲板部分77と傾斜板部分78の+X方向の側を、第1湾曲板部分77および傾斜板部分78に沿って延びる。湾曲部分86は、引き回し部分85の-Y方向端から+X方向に湾曲する。重なり部分87は、引き回し部分85と+X方向に隙間を開けた位置でY方向に延びる。
【0037】
また、フレキシブルプリント基板4の延設部分54は、引き回し部分85の湾曲部分86とは反対側の端から+Y方向に向かって+X方向に湾曲してケース側固定部分55に連続するケース側湾曲部分88を備える。さらに、フレキシブルプリント基板4の延設部分54は、重なり部分87の湾曲部分86とは反対側の端から+Y方向に向かって+X方向に湾曲して可動体側固定部分53に連続する可動体側湾曲部分89を備える。ここで、フレキシブルプリント基板4のケース側固定部分55は、ケース側緩衝部材91および第1板バネ71の第1ケース固定部74を介して、ケース3の第4枠板部14に固定される。
【0038】
(リニアモータの動作)
駆動コイル18に電力を供給すると、磁気駆動機構17が発生させる駆動力により、可動体15がX方向の一方側に移動する。また、駆動コイル18を流れる電流の向きを反転させると、可動体15は、X方向の他方側に移動する。これにより、可動体15はX方向で振動する。
【0039】
(作用効果)
本発明では、磁気駆動機構17を収容するケ-ス3は磁性部材からなる。従って、駆動コイル18と駆動マグネット19とからなる磁気駆動機構17の磁束がケース3から外部に漏れることを防止或いは抑制できる。よって、漏れ磁束に起因して磁気駆動機構17の駆動力が低下することを抑制できる。また、可動体15には駆動コイル18が搭載され、駆動マグネット19は搭載されていない。従って、ケース3を磁性部材とした場合でも、可動体15がケース3に吸引されて、可動体15の移動が阻害されることはない。
【0040】
また、駆動マグネット19は、ケ-ス3の内壁面に固定されている。従って、ケ-ス3
が駆動マグネット19のバックヨ-クとして機能する。よって、磁気駆動機構17の駆動力を確保しやすい。
【0041】
さらに、ケ-ス3は、X方向(移動方向)に平行に延びる第1端板5および第2端板6と、Z方向に延びて第1端板5および第2端板6の外周縁を接続する枠板7とを、備える。駆動マグネット19は、第1端板5に固定されており、駆動コイル18は、駆動マグネット19と第2端板6との間に位置する。従って、ケース3から外部への磁束の漏れを確実に防止できる。
【0042】
また、駆動マグネット19は、複数のマグネット31、32、33をハルバッハ配列したものである。従って、駆動マグネット19からZ方向に磁束を飛ばすことができる。一方、駆動コイル18は、Z方向に中心開口18aを向けている。従って、磁気駆動機構17により、可動体15をX方向に移動させる駆動力を発揮できる。
【0043】
次に、本発明は、ケ-ス3の内壁面に固定されたマグネットホルダ22を有し、マグネットホルダ22は、Z方向に延びる枠部23を備える。駆動マグネット19は、枠部23の内側に嵌っており、マグネットホルダ22と駆動マグネット19との間、およびケ-ス3の内壁面において枠部23の内側に位置する内壁面部分と記駆動マグネット19との間には、接着剤層30が設けられている。かかる構成によれば、駆動マグネット19は、ケ-ス3に固定されたマグネットホルダ22に保持される。従って、リニアモ-タ1が落下するなどして衝撃を受けた場合に、ケ-ス3に固定した駆動マグネット19が脱落することを防止或いは抑制できる。また、リニアモ-タ1が落下するなどして衝撃を受けた場合でも、マグネットホルダ22がケース3に固定されているので、駆動マグネット19の位置がずれることがない。さらに、ハルバッハ配列した複数のマグネット31、32、33は、互いに接触した状態でケ-ス3などに固定することが困難であるが、枠部23の内側に固定すれば、複数のマグネット31、32、33の固定が容易である。
【0044】
また、2つの緩衝部材35のうち、-X方向の側に位置して第1枠部側対向面26aに固定された第1の緩衝部材35は、錘42の第1錘側対向面61aとX方向で隙間を開けて向き合う。さらに、また、2つの緩衝部材35のうち、+X方向の側に位置して第2枠部側対向面27aに固定された第2の緩衝部材35は、錘42の第2錘側対向面62aとX方向で隙間を開けて向き合う。従って、リニアモ-タ1が落下するなどして衝撃を受けた場合に、錘42とマグネットホルダ22(枠部23)とが衝突して、異音を発生させることを防止できる。
【0045】
さらに、第1錘側対向面61aおよび第1枠部側対向面26aは、Y方向に平行に延びる。同様に、第2錘側対向面62aおよび第2枠部側対向面27aは、Y方向に平行に延びる。すなわち、第1錘側対向面61aおよび第1枠部側対向面26aはX方向(移動方向)と垂直であり、第2錘側対向面62aおよび第2枠部側対向面27aは、はX方向(移動方向)と垂直である。従って、第1枠部側対向面26aに固定された第1の緩衝部材35と、第1錘側対向面61aとの間の距離を正確に規定できる。また、第2枠部側対向面27aに固定された第2の緩衝部材35と、第2錘側対向面62aとの間の距離を正確に規定できる。これにより、可動体15の振動範囲を規定することが容易となる。
【0046】
また、本発明は、駆動コイル18に電気的に接続されるとともに、可動体15からケ-ス3の側に引き出されてケ-ス3に固定されたフレキシブルプリント基板4を有する。第1板バネ71は、ケ-ス3に固定された第1ケース固定部74と、可動体15に固定された第1可動体固定部75と、第1ケース固定部74と第1可動体固定部75とを接続する第1変位部76と、を備える。フレキシブルプリント基板4は、可動体15とケ-ス3との間に、第1変位部76に沿って引き回された引き回し部分85と、引き回し部分85か
らX方向(移動方向)に湾曲する湾曲部分86と、湾曲部分86の引き回し部分85とは反対側の端から延びてX方向(移動方向)から見た場合に当該引き回し部分85と重なる重なり部分87と、を備える。かかる構成によれば、可動体15が移動したときに、フレキシブルプリント基板4は、第1板バネ71の変位部に沿って撓む。従って、フレキシブルプリント基板4が、第1板バネ71と可動体15との間で潰されて塑性変形することを防止或いは抑制できる。また、フレキシブルプリント基板4の変位部は、湾曲部分86において、引き回し部分85と、重なり部分87とに、折り返されている。従って、可動体15と固定体20との間に引き出されたフレキシブルプリント基板4の延設部分54の長さを確保することが容易である。
【0047】
(変形例)
2つの緩衝部材35のうち、-X方向の側に位置する第1の緩衝部材35は、第1錘側対向面61aに固定されていてもよい。また、2つの緩衝部材35のうち、+X方向の側に位置する第2の緩衝部材35は第2錘側対向面62aに固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…リニアモ-タ、3…ケース、4…フレキシブルプリント基板、5…第1端板、5a…第1面、6…第2端板、7…枠板、8…端板本体部、9…基板支持部、11…第1枠板部、12…第2枠板部、13…第3枠板部、14…第4枠板部、15…可動体、16…支持機構、17…磁気駆動機構、18…駆動コイル、18a…中心開口、19…駆動マグネット、20…固定体、22…マグネットホルダ、23…枠部、24…第1固定部、25…第2固定部、26…第1枠部部分、26a…第1枠部側対向面、27…第2枠部部分、27a…第2枠部側対向面、28…第3枠部部分、29…第4枠部部分、30…接着剤層、31…第1マグネット、32…第2マグネット、33…第3マグネット、35…緩衝部材、41…フレーム、42…錘、43…フレーム本体部、44…フレーム屈曲部、45…第1コイル部分、46…第2コイル部分、47…第3コイル部分、48…第4コイル部分、51…コイル固定部分、52…屈曲部分、53…可動体側固定部分、54…延設部分、55…ケース側固定部分、56…突出部分、61…第1錘部、61a…第1錘側対向面、62…第2錘部、62a…第2錘側対向面、63…第1接続部、64…第2接続部、65…開口部、67…溝部、68…第1溝部、69…第2溝部、71…第1板バネ、72…第2板バネ、74…第1ケース固定部、75…第1可動体固定部、76…第1変位部、77…第1湾曲板部分、78…傾斜板部分、79…第2湾曲板部分、80…第1緩衝部材、81…第2ケース固定部、82…第2可動体固定部、83…第2変位部、84…第2緩衝部材、85…引き回し部分、86…湾曲部分、87…重なり部分、88…ケース側湾曲部分、89…可動体側湾曲部分、91…ケース側緩衝部材、92…可動体側緩衝部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7