(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置及びそれを備えたレンズユニット、カメラ
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20230907BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 E
(21)【出願番号】P 2019090461
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】武田 義弘
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-107671(JP,A)
【文献】特開2002-354332(JP,A)
【文献】特開平04-249209(JP,A)
【文献】特開2013-048550(JP,A)
【文献】実開昭62-198842(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
H02K 5/00 - 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを直線移動させるためのレンズ駆動装置であって、
送りねじが形成された回転軸と、
この回転軸を回転駆動する駆動用モータと、
上記送りねじに螺合され、上記回転軸が回転駆動されると、上記回転軸の軸線方向に移動されるキャリッジと、
上記回転軸を、上記回転軸の軸線方向に、第1の方向に付勢する第1弾性部材と、
上記回転軸を、上記回転軸の軸線方向に、第1の方向とは反対の第2の方向に付勢する第2弾性部材と、
上記第1弾性部材と上記回転軸の一方の端面との間、及び上記第2弾性部材と上記回転軸の他方の端面との間に夫々配置され、上記第1弾性部材及び上記第2弾性部材よりも外径が大きい摺動部材と、
上記回転軸の一方の側に、上記第1弾性部材及び上記摺動部材を収容するように設けられた第1の凹部と、
上記回転軸の他方の側に、上記第2弾性部材及び上記摺動部材を収容するように設けられた第2の凹部と、を有し、
上記第1弾性部材及び上記第2弾性部材は、樹脂材料又はゴム材料から構成されたブロックであり、弾性圧縮されることにより付勢力を発生させ、
上記第1弾性部材と上記第1の凹部の内周壁面の間、及び上記第2弾性部材と上記第2の凹部の内周壁面の間には、
上記回転軸の軸線と直交する方向に夫々隙間が形成されていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
上記第1弾性部材は、上記回転軸の一方の端面を上記第1の方向に付勢し、上記第2弾性部材は、上記回転軸の他方の端面を上記第2の方向に付勢するように構成されている請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
上記回転軸の上記両端面は、夫々球面形状に形成されている請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
レンズ駆動装置を備えたレンズユニットであって、
レンズ鏡筒と、
このレンズ鏡筒の中に配置されたレンズと、
このレンズを光軸方向に移動させるための、請求項1乃至3の何れか1項に記載のレンズ駆動装置と、
を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項5】
レンズユニットを備えたカメラであって、
カメラボディと、
このカメラボディに取り付けられた、請求項4記載のレンズユニットと、
を有することを特徴とするカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ駆動装置に関し、特に、レンズを直線移動させるためのレンズ駆動装置、及びそれを備えたレンズユニット、カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-195349号公報(特許文献1)には、モータが記載されている。このモータは、デジタルカメラ等に内蔵され、レンズ等を移動させるために使用される。モータは、回転軸を回転させるように構成されており、回転軸には螺旋溝が形成されている。回転軸を回転させることにより、螺旋溝と係合している可動部が回転軸の軸線方向に移動され、レンズ等が移動される。
【0003】
特許文献1記載のモータのように、携帯機器に搭載されるモータでは、落下時等を想定して高い耐衝撃性が要求される。また、特許文献1記載のモータは、回転軸を備えたロータと、ロータの周りに配置された筒状のステータと、モータ軸線方向の一方側で回転軸を回転可能に支持する軸受部材と、を備えている。さらに、このモータは、軸受部材に対して回転軸とは反対側に配置され、回転軸をモータ軸線方向の他方側に向けて付勢する板バネ部を備えた付勢部材と、付勢部材に対して回転軸とは反対側でステータに固定されて軸受部材のモータ軸線方向の抜けを防止するとともに、板バネ部を一方側で覆って板バネ部のモータ軸線方向の変形を制限する端板と、を備えている。このため、回転軸は、板バネ部によって軸受部材に弾性をもって押しつけられ、回転軸の軸線方向のガタつきが抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のモータでは、回転軸の一端に配置された板バネ部によって回転軸の軸線方向のガタつきを抑えているので、十分な耐衝撃性を得ることが困難である。この問題は、特に、回転軸によって駆動すべき可動部の重量が大きい場合に、回転軸に作用する衝撃力が大きくなり顕著となる。
従って、本発明は、重量の大きいレンズに適用した場合であっても、落下等によって加えられた衝撃力に対する十分な耐衝撃性を得ることができるレンズ駆動装置、及びそれを備えたレンズユニット、カメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、レンズを直線移動させるためのレンズ駆動装置であって、送りねじが形成された回転軸と、この回転軸を回転駆動する駆動用モータと、送りねじに螺合され、回転軸が回転駆動されると、回転軸の軸線方向に移動されるキャリッジと、回転軸を、回転軸の軸線方向に、第1の方向に付勢する第1弾性部材と、回転軸を、回転軸の軸線方向に、第1の方向とは反対の第2の方向に付勢する第2弾性部材と、を有することを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明によれば、回転軸の軸線方向に、第1の方向に回転軸を付勢する第1弾性部材と、回転軸の軸線方向に、第1の方向とは反対の第2の方向に回転軸を付勢する第2弾性部材と、を備えている。このため、回転軸がどの方向に衝撃荷重を受けた場合でも、いずれかの弾性部材が圧縮されるので、衝撃力を吸収することができ、十分な耐衝撃性を得ることができる。
【0008】
また、本発明は、レンズ駆動装置を備えたレンズユニットであって、レンズ鏡筒と、このレンズ鏡筒の中に配置されたレンズと、このレンズを光軸方向に移動させるための、本発明のレンズ駆動装置と、を有することを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明は、レンズユニットを備えたカメラであって、カメラボディと、このカメラボディに取り付けられた、本発明のレンズユニットと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレンズ駆動装置、及びそれを備えたレンズユニット、カメラによれば、重量の大きいレンズに適用した場合であっても、落下等によって加えられた衝撃力に対する十分な耐衝撃性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態によるカメラの概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態によるレンズ駆動装置の断面図である。
【
図3】本発明の実施形態によるレンズ駆動装置に備えられた駆動用モータを拡大して示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態によるレンズ駆動装置に備えられた軸受け支持機構を拡大して示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態によるレンズ駆動装置の回転軸の端部を拡大して示す図である。
【
図6】本発明の実施形態によるレンズ駆動装置の変形例による回転軸の端部を拡大して示す図である。
【
図7】本発明の実施形態によるレンズ駆動装置において、軸受け支持機構の取り付け位置調整方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<カメラの構成>
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置、及びそれを備えたレンズユニット、カメラを説明する。
図1は、本発明の実施形態によるカメラの概略断面図である。
図2は、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置の断面図である。
図3は、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置に備えられた駆動用モータを拡大して示す断面図である。
図4は、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置に備えられた軸受け支持機構を拡大して示す断面図である。
図5は、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置の回転軸の端部を拡大して示す図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施形態によるカメラ1は、レンズユニット2と、このレンズユニット2が取り付けられたカメラボディ4と、を有する。レンズユニット2は、レンズ鏡筒6と、このレンズ鏡筒6の中に配置された複数のレンズ8と、レンズ駆動装置10と、が内蔵されている。レンズ駆動装置10は、レンズユニット2の光軸A方向にキャリッジ12aを移動可能に構成されており、これにより、キャリッジ12aに取り付けられたフォーカシングレンズ12が直線移動されるようになっている。
【0014】
一方、カメラボディ4には撮像素子14が内蔵されている。レンズユニット2に入射した光は、レンズ鏡筒6内の各レンズ8及びフォーカシングレンズ12によって、撮像素子14上に合焦される。オートフォーカス設定時には、カメラボディ4から送られる制御信号に基づいてレンズ駆動装置10が作動され、ピント調整が実行される。マニュアルフォーカス設定時には、レンズユニット2に設けられたフォーカスリング6aの操作に基づいてレンズ駆動装置10が作動され、ピント調整が実行される。
【0015】
<レンズ駆動装置の全体構成>
次に、
図2乃至
図5を参照して、本発明の実施形態によるレンズ駆動装置10の構成を説明する。
図2に示すように、レンズ駆動装置10は、回転軸16と、この回転軸16を駆動する駆動用モータ18と、回転軸16の先端を回転可能に支持する軸受け部20と、駆動用モータ18と軸受け部20を連結するフレーム部材22と、を有する。なお、本明細書においては、レンズ駆動装置10の、駆動用モータ18が配置されている側(
図2における右側)を「モータ側」又は「基端側」と呼び、その反対側(
図2における左側)を「先端側」と呼ぶ。
【0016】
回転軸16は、リードスクリューとして機能するシャフトであり、その外周面の一部には雄ねじ山が形成されており、これが送りねじ16aを構成している。回転軸16の一方の端部には駆動用モータ18が取り付けられ、駆動用モータ18は、回転軸16を回転可能に支持すると共に、回転軸16を回転駆動するように構成されている。回転軸16の他方の端部は、軸受け部20によって回転可能に支持されている。従って、回転軸16は、送りねじ16aの両側で回転可能に支持されている。また、送りねじ16aの雄ねじ山には、キャリッジ12aに形成された雌ねじが螺合されており、回転軸16を回転させることにより、キャリッジ12aが光軸Aと平行に、回転軸16の軸線方向に直線移動される。
【0017】
フレーム部材22は、細長い薄板から形成されたベースプレート22aと、このベースプレート22aの先端部に取り付けられた軸受け支持部材22bと、を有する。ベースプレート22aのモータ側は、ほぼ直角に折り曲げられており、この曲げられた部分に駆動用モータ18が取り付けられている。また、駆動用モータ18の反対側の、ベースプレート22aの端部には、軸受け支持部材22bが取り付けられ、軸受け部20の一部を構成している。
【0018】
<駆動用モータの構成>
次に、
図3を参照して、レンズ駆動装置10に備えられた駆動用モータ18の構成を説明する。
図3に示すように、駆動用モータ18は、モータケース24と、このモータケース24に取り付けられたステータコア26と、このステータコア26に取り付けられたコイル28と、回転軸16に取り付けられたマグネット30と、を有する。また、駆動用モータ18の、先端側の端部には、モータ側ラジアル滑り軸受け32が設けられており、回転軸16を回転可能に支持している。
【0019】
モータケース24は、ステータコア26及びモータ側ラジアル滑り軸受け32を支持するように形成された強化樹脂製の部材であり、ベースプレート22aの折り曲げられた部分に固定されている。モータ側ラジアル滑り軸受け32は、これらのベースプレート22aの折り曲げ部分及びモータケース24を貫通して延び、回転軸16を回転可能に支持している。なお、本実施形態においては、モータ側ラジアル滑り軸受け32として、焼結含油軸受けが使用されている。
【0020】
また、モータケース24の、基端側の端部には、スラスト受け凹部24aが形成されている。このスラスト受け凹部24aの中には、第1弾性部材であるモータ側のゴムダンパ34と、摺動部材であるモータ側のスラスト受け36が保持されている。
【0021】
ステータコア26は、円板部26aと、この円板部26aの周囲から延びる6本の脚部26b(
図3には2本のみ図示)を有するスチール製の部材である。円板部26aは、回転軸16に直交する方向に向けられた円板状の部分であり、この中心を貫通するようにモータ側ラジアル滑り軸受け32が取り付けられている。6本の脚部26bは、円板部26aの周囲から延びる細長い板状の部分であり、円板部26aの周囲に等間隔に設けられている。また、各脚部26bは、円板部26aに対してほぼ直角に曲げられ、回転軸16の端部を取り囲むように、基端側に向けて回転軸16とほぼ平行に延びている。なお、本実施形態においては、ステータコア26に6本の脚部26bが設けられているが、脚部の数は、これに限定されるものではない。
【0022】
コイル28は、ステータコア26の各脚部26bの基端部に夫々導線を巻くことにより形成されている。これらのコイル28に電流を流すことにより、ステータコア26の各脚部26bが磁化され、マグネット30との間に駆動力が発生する。
【0023】
マグネット30は、ほぼ円筒形に形成された永久磁石であり、回転軸16の端部に固定され、回転軸16はマグネット30内側を貫通して延びている。マグネット30は、その円周に沿ってS極とN極が交互に形成されており、マグネット30の周囲に配置されているステータコア26の各脚部26bが順次磁化されることにより、マグネット30に回転力が発生する。
【0024】
モータケース24のスラスト受け凹部24aは、マグネット30を貫通して延びる回転軸16の端面に対向するように設けられており、スラスト受け凹部24aの中にはモータ側のゴムダンパ34とスラスト受け36が配置されている。ゴムダンパ34は、スラスト受け凹部24a内に配置されたシリコーンゴム製のブロックであり、弾性圧縮されることにより、その弾性回復力で回転軸16を先端側に向けて第1の方向(
図3においては左方向)に付勢している。スラスト受け36は、スラスト受け凹部24aに、ゴムダンパ34を覆うように配置されたPEEK樹脂製の円形の薄板であり、回転軸16の端面と、ゴムダンパ34の間に配置されている。従って、スラスト受け36はゴムダンパ34の弾性回復力によって回転軸16の端面に押しつけられ、ゴムダンパ34は、スラスト受け36を介して回転軸16の端面をスラスト方向に付勢する。
【0025】
なお、モータ側のゴムダンパ34として、シリコーンゴムの他、ウレタンゴムやニトリルゴム等の樹脂材料又はゴム材料の弾性部材を使用することができる。また、モータ側のスラスト受け36として、PEEK樹脂の他、ポリスライダー等を使用することができる。
【0026】
<軸受け部の構成>
次に、
図4を参照して、本実施形態のレンズ駆動装置10の軸受け部20の構成を説明する。
図4に示すように、軸受け部20は、駆動用モータ18の反対側で、回転軸16の先端を回転可能に支持するように構成されている。軸受け部20は、軸受け支持部材22bと、先端側のラジアル滑り軸受け38と、このラジアル滑り軸受け38を支持する軸受け支持機構40と、から構成されている。
【0027】
軸受け支持部材22bはフレーム部材22の一部を構成しており、駆動用モータ18の反対側の端部で、ベースプレート22aに固定されている。軸受け支持部材22bは概ね円筒形の部材であり、その内側の保持内壁面22cの中に軸受け支持機構40が受け入れられている。
【0028】
ラジアル滑り軸受け38は、回転軸16の先端側の端部を回転可能に支持する滑り軸受けであり、回転軸16の先端部は、ラジアル滑り軸受け38の中心を貫通して延びている。また、ラジアル滑り軸受け38の外周面は、中心点Cを中心とする球面38aから構成されている。この球面38aの中心点Cは、回転軸16の中心軸線上に位置する。なお、本実施形態においては、ラジアル滑り軸受け38として、焼結含油軸受けが使用されており、回転軸16の外周面とラジアル滑り軸受け38の内周面の間のクリアランスは約5μm~約15μmに設定することが好ましい。また、上述した、モータ側ラジアル滑り軸受け32と回転軸16の外周面との間のクリアランスについても同様である。
【0029】
軸受け支持機構40は、ハウジング42と、このハウジング42の内側に収容された支持部材である一対の軸受け抑え44、45と、軸受け抑えを付勢する板バネであるウェーブワッシャー46と、第2弾性部材である先端側のゴムダンパ48と、摺動部材であるスラスト受け50から構成されている。
【0030】
ハウジング42は、円形断面のキャップ状の部材であり、内部に軸受け支持機構40の各部品を収容している。ハウジング42の外周面42aは、軸受け支持部材22bの保持内壁面22cの内側に受け入れられ、固定されている。なお、ハウジング42の外周面42aは軸受け支持機構40の外周面を構成し、軸受け支持部材22bの保持内壁面22cは、フレーム部材22の保持内壁面を構成している。
【0031】
さらに、ハウジング42の外周面42aと軸受け支持部材22bの保持内壁面22cの間には所定の隙間が設けられている。後述するように、この隙間には、所定の調整を行った後、接着剤58が充填され、軸受け支持機構40がフレーム部材22に固定される。即ち、外周面42aと保持内壁面22cは、所定距離だけ離れて固定されている。なお、保持内壁面22cの内径と、外周面42aの外径の差は約30μm乃至約200μmに設定することが好ましく、本実施形態においては、約50μm(マイクロメートル)に設定されている。
【0032】
ハウジング42の内側には、円形断面の段付きの凹部が形成されており、奥側に位置する小径凹部42bには、ゴムダンパ48、及びスラスト受け50が配置され、手前側に位置する大径凹部42cには、軸受け抑え44、45が配置されている。
【0033】
ゴムダンパ48は、シリコーンゴム製のブロックであり、弾性圧縮されることにより、その弾性回復力で回転軸16を基端側に向けて、第1の方向とは反対の第2の方向(
図4においては右方向)に付勢している。スラスト受け50は、ハウジング42の小径凹部42bに、ゴムダンパ48を覆うように配置されたPEEK樹脂製の円形の薄板であり、回転軸16の先端側の端面と、ゴムダンパ48の間に配置されている。従って、スラスト受け50はゴムダンパ48の弾性力によって回転軸16の端面に押しつけられ、ゴムダンパ48は、スラスト受け50を介して回転軸16の端面をスラスト方向に付勢する。
【0034】
なお、先端側のゴムダンパ48として、シリコーンゴムの他、ウレタンゴムやニトリルゴム等の樹脂材料又はゴム材料の弾性部材を使用することができる。また、先端側のスラスト受け50として、PEEK樹脂の他、ポリスライダー等を使用することができる。
【0035】
上述したように、回転軸16の基端側の端面は、ゴムダンパ34及びスラスト受け36によって先端側に向けて付勢され(
図3)、回転軸16の先端側の端面は、ゴムダンパ48及びスラスト受け50によって基端側に向けて付勢されている(
図4)。このため、回転軸16は、スラスト方向にガタ無く支持されている。加えて、回転軸16の各端面は、PEEK樹脂製のスラスト受け36、50を介して付勢されているため、回転軸16と各スラスト受けの間の摺動抵抗が小さく、駆動用モータ18が発生するトルクのロスを抑制することができる。
【0036】
さらに、
図5に示すように、回転軸16の両側の端面は(
図5には片側のみ図示)、球面から構成された球面形状16bにされており、回転軸16は、その中心軸線付近で、非常に小さな接触面積で各スラスト受けと接触する。これにより、回転軸16と各スラスト受け36、50との間の接触に基づいて発生する回転抵抗を更に小さくすることができる。また、球面形状16bの曲率半径は、回転軸16の半径よりも大きく形成されているが、変形例として、球面形状の曲率半径を小さく形成することもできる。
【0037】
図6は、変形例による回転軸の端部を拡大して示す図である。
図6に示すように、変形例による回転軸116は、その球面形状116bの曲率半径が回転軸116の半径とほぼ等しく形成されている。これにより、本変形例による回転軸116の端面は、概ね半球面から構成される。回転軸端部の球面形状の曲率半径は、各スラスト受けの材質、各ゴムダンパによる付勢力の大きさ、回転軸の材質等に基づいて、回転抵抗が小さく、耐摩耗性が高くなるように適宜設定することができる。
【0038】
次に、
図4を再び参照して、先端側のラジアル滑り軸受け38の支持構造を説明する。
図4に示すように、ラジアル滑り軸受け38は、ハウジング42の大径凹部42cの中で、一対の軸受け抑え44、45によって挟まれることにより、支持されている。
【0039】
軸受け抑え44、45は、概ね円環状の部材であり、ラジアル滑り軸受け38の両側に、ラジアル滑り軸受け38を挟むように配置されている。これら軸受け抑え44、45の外径は、ハウジング42の大径凹部42cの内径と略同一であり、軸受け抑え44、45は、ガタ無く大径凹部42cの中に受け入れられている。
【0040】
また、上述したように、ラジアル滑り軸受け38の外周には球面38aが形成されている。一方、各軸受け抑え44、45の内周には、球面38aと当接する支持面が設けられており、ラジアル滑り軸受け38を球面38aの中心点Cを中心に回動可能に支持している。即ち、軸受け抑え44、45には、球面38aと合致した形状の支持球面44a、45aが夫々形成されており、ラジアル滑り軸受け38は、これらの支持球面44a、45aによって両側から挟まれて支持される。これにより、ラジアル滑り軸受け38によって支持されている回転軸16は、中心点Cを支点として傾くことが許容され、レンズ駆動装置10を構成する各部材の形状誤差、組み立て誤差等を吸収することができる。
【0041】
さらに、ハウジング42の大径凹部42cと小径凹部42bの間の段部には、球面付勢部材であるウェーブワッシャー46が配置されている。ウェーブワッシャー46は、ドーナツ型の薄い金属板を波形に湾曲させることにより形成されている。このウェーブワッシャー46は、圧縮力を加えることにより、波形が弾性変形して、厚さが薄くなるように構成されている。
【0042】
軸受け支持機構40の組み立てに際しては、まず、ハウジング42の小径凹部42bの中に、ゴムダンパ48、スラスト受け50を順に配置する。次いで、ハウジング42の大径凹部42cの中に、奥側から順に、ウェーブワッシャー46、軸受け抑え44、ラジアル滑り軸受け38、軸受け抑え45を配置する。この状態で、ハウジング42の中に押し込むように、軸受け抑え45を所定の力で押圧すると、ウェーブワッシャー46が弾性変形される。さらに、ウェーブワッシャー46が所定量弾性変形された状態で、ハウジング42と軸受け抑え45の接触部に接着剤52を塗布し、硬化させる。なお、本実施形態においては、接着剤52として、紫外線の照射、又は空気を遮断することによって硬化する紫外線硬化・嫌気性硬化接着剤が使用されている。しかしながら、接着剤52として、必要な接着力を有する任意の接着剤を使用することができる。
【0043】
接着剤52が硬化した状態では、軸受け抑え44は、ウェーブワッシャー46の弾性回復力によってラジアル滑り軸受け38に向けて付勢される。この付勢力により、軸受け抑え44の支持球面44a及び軸受け抑え45の支持球面45aは、ラジアル滑り軸受け38の球面38aに押しつけられる。即ち、ラジアル滑り軸受け38の球面38aは、支持球面44a、45aによって両側から挟まれ、ラジアル滑り軸受け38は、軸受け抑え44、45によってガタ無く、回動可能に支持される。
【0044】
<軸受け支持機構の位置調整方法>
次に、
図7を参照して、軸受け支持機構の取り付け位置調整方法を説明する。
図7は、軸受け支持機構40の取り付け位置調整方法を概略的に示す図である。
【0045】
上述したように、軸受け支持機構40を構成するハウジング42の外周面42aと、フレーム部材22を構成する軸受け支持部材22bの保持内壁面22cの間には、所定の隙間が設けられている(
図4)。従って、軸受け支持機構40のハウジング42を、フレーム部材22の保持内壁面22cに挿入した状態では、これらの間にガタが存在する。軸受け支持機構の取り付け位置調整においては、
図7に示すように、この状態まで組み立てられたレンズ駆動装置10を、駆動用モータ18を下側にして、調整台54に縦方向に取り付ける。
【0046】
次に、軸受け支持機構40のハウジング42に押圧ロッド56を上方から押しつけ、所定の力でハウジング42を下方に押し下げる。これにより、モータケース24のスラスト受け凹部24aに収容されたゴムダンパ34(
図3)、及びハウジング42の小径凹部42bに収容されたゴムダンパ48(
図4)が所定量弾性変形される。これに伴い、回転軸16には、両端からスラスト方向に所定の付勢力が加えられる。
【0047】
この状態で、駆動用モータ18のコイル28に電流を流し、回転軸16を一定の回転数で回転させる。次いで、回転軸16を回転させながら調整台54を水平方向に微少距離移動させると共に、駆動用モータ18のコイル28に流れる電流を計測する。なお、調整台54は、
図7に矢印で示す方向の他、図の紙面に垂直な方向にも移動させる。このような調整台54の移動に伴い、軸受け支持部材22bに受け入れられているハウジング42は、保持内壁面22cの中で僅かに移動される。また、調整台54の移動に伴い、ラジアル滑り軸受け38によって支持されている回転軸16も、球面38aの中心点Cを支点として僅かに傾斜される。
【0048】
このように、調整台54を水平面内で二次元的に移動させながら駆動用モータ18のコイル28に流れる電流を計測し、電流が最少となる位置に調整台54を固定する。即ち、ハウジング42が保持内壁面22cの中の適正な位置に位置決めされた状態では、回転軸16の回転抵抗が最小になるため、所定速度で駆動用モータ18を駆動するために必要な電流が最少となる。このように、レンズ駆動装置10の各部品が適正位置に位置決めされた状態で、ハウジング42と保持内壁面22cの間の隙間に接着剤58を充填し、硬化させる。なお、本実施形態においては、接着剤58として、紫外線の照射、又は空気を遮断することによって硬化する紫外線硬化・嫌気性硬化接着剤が使用されている。しかしながら、接着剤58として、必要な接着力を有する任意の接着剤を使用することができる。これにより、軸受け支持機構40の位置調整、及びフレーム部材22への取り付けが完了する。
【0049】
<本発明の実施形態の効果>
本発明の実施形態のレンズ駆動装置10によれば、回転軸16の軸線方向に、第1の方向に回転軸16を付勢する第1弾性部材であるゴムダンパ34と、回転軸16の軸線方向に、第1の方向とは反対の第2の方向に回転軸16を付勢する第2弾性部材であるゴムダンパ48と、を備えている。このため、回転軸16がどの方向に衝撃荷重を受けた場合でも、いずれかのゴムダンパが圧縮されるので、衝撃力を吸収することができ、十分な耐衝撃性を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態のレンズ駆動装置10によれば、ゴムダンパ34は、回転軸16の一方の端面を軸受け部20の方に付勢し、ゴムダンパ48は、回転軸16の他方の端面を駆動用モータ18の方に付勢するように構成されているので、摺動部材である各スラスト受け36、50と回転軸16の接触面積を小さくすることができ、回転軸16の回転抵抗を低下させることができる。
【0051】
さらに、本実施形態のレンズ駆動装置10によれば、回転軸16の両端面は、夫々球面形状16bに形成されているので、各スラスト受け36、50と回転軸16の接触面積を更に小さくすることができ、回転軸16の回転抵抗を極小にすることができる。
【0052】
また、本実施形態のレンズ駆動装置10によれば、ゴムダンパ34及びゴムダンパ48は、摺動部材であるスラスト受け36、50を介して夫々回転軸16を付勢するので、回転軸16と各スラスト受け36、50との間で作用する摩擦力を低下させることができ、回転軸16の回転抵抗を極小にすることができる。
【0053】
さらに、本実施形態のレンズ駆動装置10によれば、第1、第2弾性部材であるゴムダンパ34、48は、ゴム材料から構成され、弾性圧縮されることにより付勢力を発生させるので、弾性的な変形量を大きく確保することができ、損傷されることなく大きな衝撃エネルギーを吸収することができる。これにより、耐衝撃性を向上させることができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、レンズ駆動装置はフォーカシングレンズを直線移動させるために使用されていたが、本実施形態のレンズ駆動装置は、フォーカシングレンズ以外の任意のレンズの移動に適用することができる。また、上述した実施形態においては、撮像素子を備えたディジタルスチルカメラに本発明が適用されていたが、ビデオカメラや、フィルムカメラに本発明を適用することもできる。また、上述した実施形態においては、回転軸の両側の端面が夫々スラスト方向に付勢されていたが、回転軸の途中に段部を設け、この段部にスラスト方向の付勢力を加えることもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 カメラ
2 レンズユニット
4 カメラボディ
6 レンズ鏡筒
6a フォーカスリング
8 レンズ
10 レンズ駆動装置
12 フォーカシングレンズ
12a キャリッジ
14 撮像素子
16 回転軸
16a 送りねじ
16b 球面形状
18 駆動用モータ
20 軸受け部
22 フレーム部材
22a ベースプレート
22b 軸受け支持部材
22c 保持内壁面
24 モータケース
24a スラスト受け凹部
26 ステータコア
26a 円板部
26b 脚部
28 コイル
30 マグネット
32 モータ側ラジアル滑り軸受け
34 ゴムダンパ(第1弾性部材)
36 スラスト受け(摺動部材)
38 ラジアル滑り軸受け
38a 球面
40 軸受け支持機構
42 ハウジング
42a 外周面
42b 小径凹部
42c 大径凹部
44 軸受け抑え(支持部材)
44a 支持球面
45 軸受け抑え(支持部材)
45a 支持球面(支持面)
46 ウェーブワッシャー(球面付勢部材)
48 ゴムダンパ(第2弾性部材)
50 スラスト受け(摺動部材)
52 接着剤
54 調整台
56 押圧ロッド
58 接着剤
116 回転軸
116b 球面形状