(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電気料金按分支援装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230907BHJP
G06Q 50/16 20120101ALI20230907BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q50/16
(21)【出願番号】P 2019122791
(22)【出願日】2019-07-01
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】村上 健治
(72)【発明者】
【氏名】堀 信久
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特許第4600946(JP,B2)
【文献】特開2006-158146(JP,A)
【文献】特開2013-254308(JP,A)
【文献】特開2007-257383(JP,A)
【文献】特開2002-073753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力会社と契約している需要家が管理する需要家施設の一部を借りる賃借人毎に、前記賃借人が使用した消費電力量を示す電力量データを取得するデータ取得部と、
前記需要家が契約
している料金プラン、及び前記データ取得部が取得した前記電力量データを基に、前記需要家に請求される電気料金の負担分として各賃借人に請求すべき請求額を算出する請求額算出部と、
を備え
、
前記データ取得部は、前記需要家が前記電力会社と契約可能な各種料金プランに対応した時間間隔で、前記賃借人毎に前記電力量データを取得し、
前記請求額算出部は、前記賃借人毎に取得した前記時間間隔毎の前記電力量データに、前記需要家が契約している料金プランにおいて決められた時間帯別単価を乗じて時間間隔毎使用料金を算出し、その時間間隔毎使用料金を使用期間の総和で集計し、集計結果に基づいて各賃借人に請求すべき前記請求額を算出する
電気料金按分支援装置。
【請求項2】
前記賃借人毎に、前記請求額の算出における変更内容を指定可能な設定データを記憶する記憶部、を更に備え、
前記請求額算出部は、前記記憶部に記憶された前記設定データを参照し、前記請求額を算出する、
請求項1に記載の電気料金按分支援装置。
【請求項3】
前記設定データは、前記賃借人毎に前記記憶部に記憶され、
前記請求額算出部は、前記記憶部に記憶された前記設定データを前記賃借人毎に参照し、前記請求額を算出する、
請求項2に記載の電気料金按分支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家に請求される電気料金の按分のための電気料金按分支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電力の供給を受けて使用する需要家には、様々な料金プランが用意されている。そのため、電力消費の使用実態に沿う最適な料金プランの選択を需要家が行うのを支援可能なシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
需要家のなかには、自身が管理する施設の一部を賃借人に貸すものも存在する。多くの場合、施設を管理する需要家は、契約する電力会社に対し、施設全体で使用した消費電力量に応じた電気料金を支払うようになっている。そのような電気料金を支払う需要家は、各賃借人に対し、個別に電気料金の負担分を徴収する必要がある。
【0005】
需要家に対する電気料金を各賃借人に割り振る按分を行うためには、賃借人毎に、負担分として請求する請求額を適切に計算する必要がある。これは、各賃借人で不公平感が生じないようにする必要があるためである。しかし、適切な請求額を計算するためには、料金プランに応じて、消費電力量の各種集計を行う必要がある。例えば施設全体の消費電力量によって単価、つまり単位消費電力量当たりの課金額が変化する料金プランでは、同じ単価が適用される範囲毎に、消費電力量を求める必要がある。時間帯、曜日等によって単価が変化する料金プランでは、時間帯毎、曜日毎に、消費電力量を求める必要がある。基本料金ありの料金プランでは、各賃借人に請求すべき基本料金の負担分の金額を計算する必要がある。
【0006】
このようなことから、需要家に対する電気料金を各賃借人に割り振る按分を行うためには、面倒な処理が必要である。そのため、電気料金の按分は、需要家側の負担が大きく、容易に行うことができない。
【0007】
本発明は、電気料金の各賃借人の負担分として適切な請求額を提示可能な電気料金按分支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気料金按分支援装置は、電力会社と契約している需要家が管理する需要家施設の一部を借りる賃借人毎に、賃借人が使用した消費電力量を示す電力量データを取得するデータ取得部と、需要家が契約している料金プラン、及びデータ取得部が取得した電力量データを基に、需要家に請求される電気料金の負担分として各賃借人に請求すべき請求額を算出する請求額算出部と、を備え、データ取得部は、需要家が電力会社と契約可能な各種料金プランに対応した時間間隔で、賃借人毎に電力量データを取得し、請求額算出部は、賃借人毎に取得した時間間隔毎の電力量データに、需要家が契約している料金プランにおいて決められた時間帯別単価を乗じて時間間隔毎使用料金を算出し、その時間間隔毎使用料金を使用期間の総和で集計し、集計結果に基づいて各賃借人に請求すべき請求額を算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気料金の各賃借人の負担分として適切な請求額を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電気料金按分支援装置を用いて構築されたシステム、及びそのシステムがサービスの提供を想定する需要家施設の例を説明する図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る電気料金按分支援装置の機能構成例を示す図である。
【
図4】変更関連設定データ群のデータ構成例を説明する図である。
【
図5】請求額算出処理の例を示すフローチャートである。
【
図6】請求額算出処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態1に係る電気料金按分支援装置を実現可能なハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電気料金按分支援装置の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す変形例を含む実施の形態は一例であり、これらの実施の形態に本発明は限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気料金按分支援装置を用いて構築されたシステム、及びそのシステムがサービスの提供を想定する需要家施設の例を説明する図である。
【0013】
各需要家施設1は、電力会社2と契約し、その契約によって電力会社2から供給される電力を使用する需要家が管理する施設である。各需要家施設1全体で使用された消費電力量は、取引用電力量計3により計量される。各取引用電力量計3は、例えば計量した消費電力量を示す電力量データを外部に送信する通信機能を備えたスマートメーターである。需要家施設1は、具体的には、例えばオフィスビル、ショッピングセンター、百貨店、遊園地、レジャー施設、道路休憩施設、などである。サービスエリア(SA:Service Area)は、道路休憩施設の一種である。
【0014】
本実施の形態では、需要家施設1として、その一部を賃借契約により賃借人に貸す施設を想定している。
図1では、賃借人が管理する営業用の施設をテナント11として示している。各需要家施設1には、多数のテナント11が存在している。以降、説明上、便宜的に、「テナント11」は賃借人を指す意味でも用いる。
【0015】
各テナント11で使用される消費電力量は、按分用電力量計12によって計量される。各按分用電力量計12も取引用電力量計3と同じく、例えばスマートメーターである。需要家施設1には、需要家施設1側で管理する設備群13が存在する。設備群13は、個々のテナント11とは関係なく、需要家施設1の運営、或いは維持に必要な設備をまとめたものである。この設備群13によって使用される消費電力量は、需要家が負担すべき分である。
【0016】
本実施の形態に係る電気料金按分支援装置は、電気料金按分支援装置42として実現されている。この電気料金按分支援装置42は、
図1に示すように、自動検針システム4の構築に用いられている。自動検針システム4は、各需要家施設1を管理する需要家に対し、電気料金の一部を各テナント11の賃借人に請求する按分を容易に行えるように支援する按分支援サービスを提供するために構築されたシステムである。按分支援サービスを提供するために、自動検針システム4は、各需要家施設1で営業する各テナント11が使用した消費電力量を確認する検針を自動的に、例えば一定時間毎に行い、各テナント11の賃借人に電気料金の負担分として請求すべき請求額を算出する。自動検針のために、各取引用電力量計3、及び各按分用電力量計12として、電力量データを送信する通信機能を備えた電力量計、例えばスマートメーター、或いは電子式電力量計が用いられている。なお、以降、混乱を避けるために、特に断らない限り、「電気料金」は需要家に電力会社2が請求するものを指す意味で用いる。
【0017】
自動検針システム4は、
図1に示すように、電力量収集装置41、及び電気料金按分支援装置42をネットワーク43に接続させた構成である。
【0018】
電力量収集装置41は、自動検針用の装置である。自動検針のために、電力量収集装置41は、各取引用電力量計3、及び各按分用電力量計12が接続されたネットワーク5と接続されている。それにより、電力量収集装置41は、ネットワーク5を介して、各取引用電力量計3、及び各按分用電力量計12から、例えば定められた時間間隔で電力量データを取得することができる。電力量収集装置41は、取得した電力量データ毎に、その電力量データが示す電力量から、前回、取得した電力量データが示す電力量を減算して、その時間間隔で使用された消費電力量を計算する。消費電力量は、テナント11毎に算出して保存される。
【0019】
計算される消費電力量は、各テナント11に請求する請求額の算出に必要なデータである。そのため、電力量収集装置41が自動検針を行う時間間隔、言い換えれば電力量データを取得する時間間隔は、需要家が電力会社2と契約可能な各種料金プランに対応可能な時間間隔とする必要がある。ここでは便宜的に、時間間隔は1時間と想定する。
【0020】
電気料金按分支援装置42は、テナント11毎に、電気料金の負担分として請求すべき請求額を計算する。請求額の計算は、電気料金を各テナント11に割り振る按分を行うことに相当する。そのため、需要家は、計算された請求額により、各テナント11から電気料金の負担分を請求することができる。このことから、電気料金按分支援装置42を含む自動検針システム4は、各需要家が按分を容易に行えるように支援することができる。
【0021】
電気料金按分支援装置42は、各テナント11に対する請求額を、そのテナント11が入っている需要家施設1が電力会社2と契約した料金プランに沿って算出する。これは、需要家に対して電力会社2が請求する電気料金は、その料金プランに沿って計算された金額である、各テナント11が使用した消費電力量はその電気料金に反映される、といった理由からである。そのため、料金プランに沿って請求額を計算することにより、各テナント11に不公平感が生じ難い適切な請求額を提示することができる。言い換えれば、料金プランに沿って請求額を計算することにより、より適切な請求額を計算することができる。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態1に係る電気料金按分支援装置の機能構成例を示す図である。次に
図2を参照し、電気料金按分支援装置42の機能構成について具体的に説明する。
【0023】
図2に示す機能構成例は、表示装置450、及び入力装置460を電気料金按分支援装置42が備えていないと想定した場合の例である。言い換えれば電気料金按分支援装置42を、表示装置450、及び入力装置460を備えていない情報処理装置により実現させた場合の例である。電気料金按分支援装置42として用いる情報処理装置としては、例えば
図7に示すように、プロセッサ71、及びメモリ72を備えたものが考えられる。入力装置460は、具体的には、例えばキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル等である。入力装置460は、2台以上であっても良い。
【0024】
電気料金按分支援装置42は、
図2に示すように、機能構成として、表示制御部421、入力制御部422、主制御部423、設定部424、記憶部425、請求額算出部426、及び通信制御部427を備える。
【0025】
表示制御部421は、表示装置450の画面上に画像を表示させる。表示させる画像の変更は、主制御部423の指示に従って行われる。画像を表示させるための画像データは、主制御部423から入力される。
【0026】
入力可能なデータ、及び有効な操作は、表示装置450に表示される画面によって変化する。入力装置460は、オペレータが行った操作内容を示す情報を出力する。入力制御部422は、入力装置460から出力された情報を解析し、入力装置460への操作により入力すべきデータを特定し、特定したデータを主制御部423に出力する。ここでのデータは、実際に入力されるデータの他に、画面への有効な操作が含まれる。
【0027】
主制御部423は、電気料金按分支援装置42全体を制御する。入力制御部422から入力したデータに応じて、主制御部423は必要な処理を行う。表示制御部421が表示装置450の画面上に表示される画像の切り換えは、その処理の一つの例に相当する。
【0028】
本実施の形態では、需要家の意向、或いはテナント11との契約により、電気料金の按分方法、つまり電気料金の負担分として算出する請求額の算出方法を変更できるようにしている。設定部424は、請求額を計算するうえでの変更内容を設定可能な機能である。
【0029】
請求額の算出方法を変更可能にすることにより、請求額が高いとテナント11に感じさせることは意図的により回避できるようになる。また、変更内容によっては、電気料金の負担分を明確に優遇することができる。それにより、請求額の算出方法の変更内容は、賃借契約を考える人に対し、その賃借契約を結ぶ気になるようにする優遇条件として提示することができる。このようなことから、請求額の算出方法を変更可能にすることは、需要家にとっての利点として活用することができる。
【0030】
請求額の算出方法の変更内容は、テナント11毎に設定しても良く、全てのテナント11で同じとしても良い。ここでは、説明上、便宜的に、請求額の算出方法の変更内容は、テナント11毎に設定するものと想定する。請求額の算出方法の変更内容を指定可能な設定は、以降「変更関連設定」と表記し、変更関連設定の内容を示すデータは「変更関連設定データ」と表記する。
【0031】
記憶部425は、各種データの保存が可能な1種類以上の記憶装置を含む。記憶部425に記憶されるデータには、電力会社2と契約可能な料金プランの内容を示す料金プランデータの集合である料金プランデータ群425a、及び変更関連設定データの集合である変更関連設定データ群425bが含まれる。各料金プランデータは、より具体的には、基本料金の有無、基本料金があればその金額、時間帯毎、曜日毎、或いは季節毎の単価等を表すデータである。変更関連設定データ群425bは、需要家施設1毎に存在する。そのため、按分支援サービスを提供する需要家により、複数の需要家施設1が管理されている場合、変更関連設定データ群425bが複数、記憶部425に保存される。ここでは、混乱を避けるため、需要家と需要家施設1との間の関係は一対一と想定する。
【0032】
請求額算出部426は、需要家施設1単位の按分支援のために、需要家施設1毎に、その需要家施設1に入っている各テナント11に対して電気料金の負担分として請求すべき請求額を算出する。請求額の算出のために、料金プランデータ群425aのうちの1つの料金プランデータ、及び変更関連設定データ群425bが参照される。他に、電力量収集装置41が1時間間隔で行う自動検針により得られた1時間分の消費電力量が参照される。
【0033】
通信制御部427は、例えばネットワーク43を介した通信を実現させるハードウェアである。電力量収集装置41が1時間間隔で需要家施設1毎、テナント11毎に計算した消費電力量を示すデータ群は、通信制御部427によって電力量収集装置41から受信され、記憶部425に保存される。電力量収集装置41からのデータ群の受信は、主制御部423が通信制御部427を制御することにより実現させても良いが、電力量収集装置41からのデータ群の送信により行うようにしても良い。本実施の形態におけるデータ取得部は、狭義には通信制御部427が相当する。通信制御部427は、主制御部423によって制御されることから、広義には、通信制御部427、及び主制御部423が相当する。
【0034】
請求額算出部426は、電力量収集装置41から受信されたデータ群を参照し、需要家が電力会社2と契約した料金プランに沿って、消費電力量を集計する。これは、料金プランにより、時間帯、曜日、季節、或いは需要家施設1全体の消費電力量によって単価が異なるためである。そのため、必要に応じて、需要家施設1の消費電力量も参照し、請求額算出部426は、テナント11毎に1時間間隔で計算された消費電力量を区分して集計を行う。請求額算出部426は、区分毎に、集計によって得られた消費電力量に単価を乗算し、乗算結果を合計して、消費電力量に応じた従量分の課金額を算出する。
【0035】
基本料金ありの料金プランを需要家が契約している場合、請求額算出部426は、従量分の課金額を用いて、基本料金の負担分の金額を算出する。本実施の形態では、需要家施設1全体での従量分の課金額をA、基本料金をB、テナント11の従量分の課金額をCとした場合、基本料金の負担分Dは、以下のように求めている。
D=B・C/A ・・・ (1)
【0036】
複数の単価が適用される料金プランでは、電力会社2は、電力量の余裕分を考慮して単価を設定する。電力量の余裕分が小さいほど、単価も高く設定されるのが普通である。そのため、従量分の課金額Cが大きいテナント11ほど、節電が求められていると考えられる面がある。その節電を促す意味もあり、本実施の形態では、各テナント11の基本料金の負担分Dの計算に、従量分の課金額Cを用いている。基本料金の負担分Dの計算は、他の情報、例えば消費電力量を用いて行っても良い。
【0037】
各テナント11に請求すべき請求額は、基本料金の負担分D、及び課金額Cの合計値である。そのため、請求額Eは、以下の式により算出される。
E=D+C ・・・ (2)
【0038】
請求額算出部426は、このようにして算出した請求額Eを、例えば基本料金の負担分D、課金分C、及び区分毎に集計した消費電力量と共に記憶部425に保存する。それにより、各テナント11は、請求額Eが得られた内訳、及び消費電力量の使用実績を確認することができる。需要家は、各テナント11への按分内容を使用実績と共に確認することができる。
【0039】
図3は、契約内容設定画面の例を示す図である。この契約内容設定画面30は、需要家の意向、或いはテナント11との契約により、変更関連設定を設定するための画面である。次に
図3を参照し、契約内容設定画面30、及びその契約内容設定画面30上で設定可能な変更関連設定について具体的に説明する。
【0040】
上記のように、本実施の形態では、変更関連設定はテナント11毎に設定するものと想定している。そのため、契約内容設定画面30は、1テナント11の変更関連設定用となっている。
【0041】
契約内容設定画面30は、契約者表示エリア31と、契約内容表示エリア32とを含む画面構成となっている。契約者表示エリア31には、3つのテキストボックス311~313が配置されている。そのため、オペレータは、需要家名はテキストボックス311により、テナント11はテキスト卜す312により、確認することができる。需要家が契約した料金プランは、テキストボックス313により確認することができる。テキストボックス311に表示される需要家名、テキストボックス312に表示されるテナント名は、それぞれ、プルダウンボタン311a、312aへの操作により、変更することができる。テキストボックス313に表示される料金プランは、テキストボックス311に表示される需要家名に応じて自動的に切り換わる。
【0042】
本実施の形態では、
図3に示すように、基本料金の負担分D、及び従量分である課金額Cの両方を調整できるようにしている。それらの調整は、何れも基本的に割引の位置付けで行えるようにしている。契約内容表示エリア32は、それらの調整を可能にするエリアである。
【0043】
基本料金の負担分Dの割引、つまり基本料金分の割引に係わる設定では、「なし」「割引率」「定額割引」のうちの一つを選択させる。そのために、3つのラジオボタン321a~321cが配置されている。それにより、3つのラジオボタン321a~321cは、基本料金分の割引種類を示す基本料金分割引モードの入力用となっている。
【0044】
割引率を選択する場合、オペレータは、ラジオボタン321b内に点を表示させる。その点の表示により、期間1エリア322、及び期間2エリア323に配置されたテキストボックスへの数値入力が有効となる。同様に、定額割引を選択する場合、オペレータは、ラジオボタン321c内に点を表示させる。その点の表示により、期間1エリア322、及び期間2エリア323に配置されたテキストボックスへの数値入力が有効となる。割引を行わない場合、オペレータは、ラジオボタン321a内に点を表示させれば良い。
【0045】
期間1エリア322には、
図3に示すように、4つのテキストボックス3221~3224が配置されている。テキストボックス3223、3224は、割引率(%)、及び金額(円)の入力用である。ラジオボタン321bに点が表示されている状態では、テキストボックス3223が有効であり、ラジオボタン321cに点が表示されている状態では、テキストボックス3224が有効である。テキストボックス3221、3222は、テキストボックス3223に入力された割引率、或いはテキストボックス3224に入力された金額が適用される期間の指定用である。
【0046】
期間2エリア323にも、
図3に示すように、4つのテキストボックス3231~3234が配置されている。テキストボックス3233、3234は、割引率(%)、及び金額(円)の入力用である。ラジオボタン321bに点が表示されている状態では、テキストボックス3233が有効であり、ラジオボタン321cに点が表示されている状態では、テキストボックス3234が有効である。テキストボックス3231、3232は、テキストボックス3233に入力された割引率、或いはテキストボックス3234に入力された金額が適用される期間の指定用である。
【0047】
テキストボックス3223、3233、或いはテキストボックス3224、3234に入力された数値は、基本料金の負担分を算出するうえでの変更内容を直接的に指定する。テキストボックス3221、3222、3231、3232に入力された年月日は、基本料金の負担分の算出方法を変更すべき条件を指定する。契約内容設定画面30上で設定可能なものを変更関連設定と表記しているのは、このような条件も指定可能なことも理由である。
【0048】
課金額Cの割引、つまり従量分の割引に係わる設定も、基本料金分の割引に係わる設定と同様に行うことができる。そのために、3つのラジオボタン331a~331c、期間1エリア332、期間2エリア333が配置されている。期間1エリア332には、4つのテキストボックス3321~3322が配置されている。期間2エリア333にも、4つのテキストボックス3331~3334が配置されている。
【0049】
契約内容設定画面30に配置されたOKボタン341は、契約内容設定画面30の現在の表示内容で変更関連設定データの更新を指示するためのボタンである。キャンセルボタン342は、変更関連設定データの更新を行わないことを指示するためのボタンである。それにより、オペレータは、変更関連設定データの更新、及び契約内容設定画面30への操作の無効を含む変更関連設定データの非更新を指示することができる。
【0050】
図4は、変更関連設定データ群のデータ構成例を説明する図である。次に
図4を参照し、変更関連設定データ群425bについて具体的に説明する。
【0051】
図4に示す変更関連設定データ群425bは、一つの需要家施設1を想定したものである。
図4中に表記の「○○○○ SA」は需要家名、「料金プラン:3」は、契約した料金プランに割り当てられた数値コードが3であることを表している。1行のデータ群は、1テナント11の狭義の変更関連設定データに相当する。広義の変更関連設定データには、需要家名、及び料金プランを示す数値コードが含まれる。
【0052】
変更関連設定データは、
図4に示すように、テナント名、契約開始日、基本料金分割引モード、基本料金分設定値1、基本料金分設定値2,基本料金分期間1、基本料金分期間2、従量分割引モード、従量分設定値1、従量分設定値2、従量分期間1、及び従量分期間2の各データを含む。
【0053】
テナント名は、対応するテナント11を示す識別データである。契約開始日は、賃借契約が開始する年月日を示すデータである。この契約開始日により、請求額算出部426は、請求額Eを算出するうえで無効とすべき範囲を特定することができる。
【0054】
基本料金分割引モードは、上記のように、ラジオボタン321a~321cによって入力可能となるデータである。例えば1は、基本料金分の割引はしないことを示す。同様に、2は割引率による割引、3は定額による割引が有効であることを示す。基本料金分設定値1は、テキストボックス3223、或いは3224に入力された数値である。同様に、基本料金分設定値2は、テキストボックス3233,或いは3234に入力された数値である。基本料金分期間1は、テキストボックス3221、3222にそれぞれ入力された年月日のデータである。同様に、基本料金分期間2は、テキストボックス3231、3232にそれぞれ入力された年月日のデータである。
【0055】
従量分割引モード、上記のように、ラジオボタン331a~331cによって入力可能となるデータである。例えば1は、従量分の割引はしないことを示す。同様に、2は割引率による割引、3は定額による割引が有効であることを示す。従量分設定値1は、テキストボックス3323、或いは3324に入力された数値である。同様に、従量分設定値2は、テキストボックス3333,或いは3334に入力された数値である。従量分期間1は、テキストボックス3321、3322にそれぞれ入力された年月日のデータである。同様に、従量分期間2は、テキストボックス3331、3332にそれぞれ入力された年月日のデータである。
【0056】
変更関連設定データには、上記のような各種データが含まれている。そのため、請求額算出部426は、従量分割引モードが2或いは3であった場合、従量分期間1、及び従量分期間2の各データを参照し、テナント11毎に1時間間隔で計算された消費電力量を再度、区分して集計を行う。それにより、変更関連設定データを反映させた課金額Cを再度、算出する。基本料金の負担分Dも同様に、基本料金分割引モードが2或いは3であった場合、基本料金分期間1、及び基本料金分期間2の各データを参照し、それら2つの期間と請求額Eを算出する計算対象期間との間の関係に応じて、基本料金の負担分Dを再度、算出する。そのようにして、変更関連設定データを請求項Eの算出に反映させる。このため、需要家は、自身の意向、或いはテナント11との契約により、実際に算出される請求額Eを任意に管理することができる。
【0057】
図5、及び
図6は、請求額算出処理の例を示すフローチャートである。この請求額算出処理は、各需要家施設1に入っている各テナント11の電気料金の負担分とする請求額Eを算出するための処理である。この請求額算出処理は、例えば電力会社2の検針日の到来により起動されるサブプログラムを実行することにより実現される。請求額算出部426は、この請求額算出処理を電気料金按分支援装置42が実行することにより実現される。次に
図5、及び
図6を参照し、請求額算出処理について詳細に説明する。
【0058】
図5、及び
図6では、便宜的に、各需要家施設1を管理する需要家は互いに異なると想定している。つまり、需要家と需要家施設1とは一対一に対応するものと想定している。また、電力会社2の各需要家施設1の検針日は、全て同じと想定している。上記A~E、つまり需要家施設1全体での従量分の課金額A、基本料金B、テナント11の従量分の課金額C、基本料金の負担分D、及び請求額Eは、全て変数として扱っている。そのため、ここでは、例えば請求額は「請求額E」とは表記しないようにしている。
【0059】
電気料金按分支援装置42としては、上記のように、
図7に示すプロセッサ71、及びメモリ72を備えた情報処理装置を用いることができる。そのような情報処理装置を電気料金按分支援装置42として用いた場合、
図7に示すように、メモリ72には、料金プランデータ群425a、変更関連設定データ群425bに加え、電気料金按分支援装置42として動作させるためのプログラム721が記憶される。このプログラム721は、請求額算出処理を実現させるサブプログラムを含むものである。電気料金按分支援装置42は、プロセッサ71がプログラム721を実行することにより、実現される。このことから、ここでは、説明上、便宜的に、請求額算出処理を実行する主体として、プロセッサ71を想定する。
【0060】
先ず、ステップS11では、プロセッサ71は、電力量収集装置41が収集したデータを取得する。取得するデータは、上記のように、電力量収集装置41が各需要家施設1、及び各テナント11の1時間間隔で算出した消費電力量を示すデータ群である。
【0061】
次のステップS12では、プロセッサ71は、各テナント11の請求額を算出すべき需要家を選択する。次に移行するステップS13では、プロセッサ71は、メモリ72に記憶された料金プランデータ群425aのうちで、選択した需要家に対応するものを読み出す。また、選択した需要家に対応する変更関連設定データ群425bもメモリ72から読み出される。
【0062】
その後に移行するステップS14では、プロセッサ71は、読み出した料金プランデータを参照し、選択した需要家、つまり選択した需要家施設1の消費電力量を区分毎に集計して、区分毎の課金額を算出し、算出した課金額の合計値を変数Aに代入する。課金額の合計値は、需要家施設1全体の消費電力量に応じた課金分に相当する。区分毎の消費電力量の集計、区分毎の課金額の算出の何れも、対応する料金プランデータを参照して行われる。
【0063】
ステップS14に続くステップS15では、プロセッサ71は、基本料金がありの料金プランか否か判定する。対象とする需要家が基本料金ありの料金プランを契約していた場合、ステップS15の判定はYESとなってステップS16に移行する。対象とする需要家が基本料金なしの料金プランを契約していた場合、ステップS15の判定はNOとなってステップS17に移行する。
【0064】
ステップS16では、プロセッサ71は、料金プランに定められた基本料金を変数Bに代入する。その後はステップS17に移行する。
【0065】
ステップS17では、プロセッサ71は、対象とする需要家と賃借契約をしたテナント11のうちの一つを選択する。続くステップS18では、プロセッサ71は、ステップS13で読み出した変更関連設定データ群425bのうちから、選択したテナント11に対応する変更関連設定データを抽出する。その後はステップS19に移行する。
【0066】
ステップS19では、プロセッサ71は、ステップS13で読み出した料金プランデータを参照し、区分毎に消費電力量を集計して、区分毎の課金額を算出し、算出した課金額の合計値を変数Cに代入する。その後は
図6のステップS20に移行する。
【0067】
図6のステップS20では、プロセッサ71は、基本料金がありの料金プランか否か判定する。テナント11が賃借契約をした需要家が基本料金ありの料金プランを契約していた場合、ステップS20の判定はYESとなってステップS21に移行する。その需要家が基本料金なしの料金プランを契約していた場合、ステップS20の判定はNOとなってステップS24に移行する。
【0068】
ステップS21では、プロセッサ71は、変数Cの値に変数Bの値を乗算した乗算結果を変数Aの値で除算して得られる値(=B・C/A)を変数Dに代入する。次に移行するステップS22では、プロセッサ71は、テナント11に対応する変更関連設定データ、つまりステップS18で抽出した変更関連設定データを参照し、請求額を計算する計算対象期間内に基本料金分の割引を行うべき割引対象期間が含まれているか否か判定する。変更関連設定データ中の基本料金分期間1、及び基本料金分期間2がそれぞれ示す期間のうちの少なくとも一方と、計算対象期間との間で重なっている期間が存在する場合、ステップS22の判定はYESとなってステップS23に移行する。基本料金分期間1、及び基本料金分期間2がそれぞれ示す期間ともに、計算対象期間との間で重なっている期間が存在しない場合、ステップS22の判定はNOとなってステップS25に移行する。基本料金分割引モードが1となっている場合、基本料金分期間1、及び基本料金分期間2は共に無効なことから、ステップS22の判定はNOとなる。
【0069】
ステップS23では、プロセッサ71は、基本料金分期間1、及び基本料金分期間2がそれぞれ示す期間と計算対象期間とが重なっている期間に応じて、変数Dの値を更新する。変数Dの値の更新は、例えば計算対象期間を重なっている期間、重なっていない期間に分け、重なっている期間での基本料金の負担分に対する割引分を求め、求めた割引分を変数Dの現在値から減算し、その減算結果を変数Dに新たに代入することで行うことができる。割引分の計算には、基本料金分期間1、及び基本料金分期間2のうち、重なった期間が設定されている方に対応する設定値が用いられる。例えば基本料金分期間1が示す期間内に計算対象期間と重なる部分が存在する場合、設定値として、基本料金分設定値1が用いられる。そのような変数Dの値の更新を行った後、ステップS25に移行する。
【0070】
ステップS20の判定がNOとなって移行するステップS24では、変数Dに0を代入する。その後、ステップS25に移行する。
【0071】
ステップS25では、プロセッサ71は、変更関連設定データを参照し、請求額を計算する計算対象期間内に従量分の割引を行うべき割引対象期間が含まれているか否か判定する。変更関連設定データ中の従量分期間1、及び従量分期間2がそれぞれ示す期間のうちの少なくとも一方と、計算対象期間との間で重なっている期間が存在する場合、ステップS25の判定はYESとなってステップS26に移行する。従量分期間1、及び従量分期間2がそれぞれ示す期間ともに、計算対象期間との間で重なっている期間が存在しない場合、ステップS25の判定はNOとなってステップS27に移行する。従量分割引モードが1となっている場合、従量分期間1、及び従量分期間2は共に無効であることから、ステップS25の判定はNOとなる。
【0072】
ステップS26では、プロセッサ71は、重なった期間を加え、1時間間隔の消費電力量を再度、区分して集計し、区分毎に課金額を算出し、算出した課金額の合計値を変数Cに代入する。そのようにして変数Cの値を更新した後、ステップS27に移行する。
【0073】
ステップS27では、プロセッサ71は、選択したテナント11に請求すべき請求額を算出し、算出した請求額を変数Eに代入する。請求額の算出は、変数Dの値に変数Cの値を加算することで行われる。
【0074】
ステップS27に続くステップS28では、変数C~Eの各値、変数Eの値の算出に用いた各種データを保存する。各種データには、変数C、Dの値を更新している場合、更新前の値が含まれる。区分毎に集計した消費電力量も含まれる。そのような各種データを含む1テナント11分の結果を保存した後、ステップS29に移行する。
【0075】
ステップS29では、プロセッサ71は、請求額を計算すべき他のテナント11が存在するか否か判定する。選択した需要家と賃借契約しているテナント11のうちで請求額を計算しているテナント11が存在する場合、ステップS29の判定はYESとなって
図5のステップS17に戻る。それにより、請求額を計算していないテナント11が選択される。一方、選択した需要家と賃借契約している全てのテナント11の請求額を計算した場合、ステップS29の判定はNOとなってステップS30に移行する。
【0076】
ステップS30では、プロセッサ71は、テナント11の請求額を計算していない他の需要家が存在するか否か判定する。按分支援サービスを提供すべき需要家のうちでテナント11の請求額を計算していない需要家が存在する場合、ステップS30の判定はYESとなって
図5のステップS12に戻る。それにより、テナント11の請求額を計算していない需要家が選択される。一方、按分支援サービスを提供すべき全ての需要家でテナント11の請求額を計算した場合、ステップS30の判定はNOとなり、ここで請求額算出処理が終了する。
【0077】
なお、本実施の形態では、各テナント11が使用した1時間間隔の消費電力量を示すデータ群を電力量収集装置41から取得するようにしているが、そのデータ群を電気料金按分支援装置42に生成させるようにしても良い。つまり、電気料金按分支援装置42に自動検針を行わせるようにしても良い。そのため、取得する電力量を示すデータは、各電力量計3、各按分用電力量計12から得られるものであっても良い。また、変更関連設定データの内容、言い換えれば契約内容設定画面30で設定可能な内容は、上記のようなものに限定されない。請求額E、基本料金の負担分D、従量分の課金額Cの各算出方法についても、上記のようなものに限定されない。何れも各種変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 需要家施設、2 電力会社、3、12 電力量計、4 自動検針システム、5、43 ネットワーク、11 テナント、41 電力量収集装置、42 電気料金按分支援装置、71 プロセッサ、72 メモリ、421 表示制御部、422 入力制御部、423 主制御部、424 設定部、425 記憶部、425a 料金プランデータ群、425b 変更関連設定データ群、426 請求額算出部、427 通信制御部(データ取得部)、450 表示装置、460 入力装置。