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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】制御装置および変速システム
(51)【国際特許分類】
   B62M 25/08 20060101AFI20230907BHJP
   F16H 59/48 20060101ALI20230907BHJP
   F16H 59/64 20060101ALI20230907BHJP
   F16H 59/66 20060101ALI20230907BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20230907BHJP
   F16H 59/44 20060101ALI20230907BHJP
   B62M 9/123 20100101ALI20230907BHJP
【FI】
B62M25/08
F16H59/48
F16H59/64
F16H59/66
F16H61/02
F16H59/44
B62M9/123
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019126979
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021011206
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 充彦
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-156139(JP,A)
【文献】特開2001-280464(JP,A)
【文献】特開2016-047719(JP,A)
【文献】特表2018-511510(JP,A)
【文献】特開2013-116729(JP,A)
【文献】特開2005-096537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 25/08
B61M 9/12、9/122、9/132
B62M 11/16
B62J 45/40
F16H 59/44-59/48、59/64-59/66
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車の走行に関する走行情報に基づいて設定され、前記第1変速条件とは異なる第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件が成立する場合であっても前記第2変速条件に基づいて前記人力駆動車の変速比を変更し、
前記人力駆動車の走行に関する走行情報は、前記人力駆動車の走行状態に関する第1走行情報を含み、
前記第1走行情報は、前記人力駆動車の減速度を含み、
前記制御部は、所定期間における前記減速度が第1所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立していると判定する、制御装置。
【請求項2】
第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車の走行に関する走行情報に基づいて設定され、前記第1変速条件とは異なる第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件が成立する場合であっても前記第2変速条件に基づいて前記人力駆動車の変速比を変更し、
前記人力駆動車の走行に関する走行情報は、前記人力駆動車の走行状態に関する第1走行情報を含み、
前記第1走行情報は、前記人力駆動車の減速度を含み、
前記制御部は、前記減速度が第1所定値よりも大きい第2所定値以上である場合、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する、制御装置。
【請求項3】
前記第1走行情報は、前記人力駆動車のクランクに作用するトルクを含み、
前記制御部は、前記トルクの値が、所定値以上である場合、前記第2変速条件が成立していると判定し、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車の走行に関する走行情報に基づいて設定され、前記第1変速条件とは異なる第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件が成立する場合であっても前記第2変速条件に基づいて前記人力駆動車の変速比を変更し、
前記人力駆動車の走行に関する走行情報は、前記人力駆動車の走行状態に関する第1走行情報を含み、
前記第1走行情報は、前記人力駆動車のクランクに作用するトルクを含み、
前記制御部は、前記トルクの値が、所定値以上である場合、前記第2変速条件が成立していると判定し、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する、制御装置。
【請求項5】
前記第1走行情報は、前記人力駆動車の減速度を含み、
前記制御部は、所定期間における前記減速度が第1所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立していると判定する、請求項2または4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2変速条件が成立した場合、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する、請求項1または5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記所定期間における前記減速度が前記第1所定値以上であるかを複数回判定し、前記減速度が前記第1所定値以上である回数が1回である場合、前記第2変速条件が成立していないと判定する、請求項1、5、および6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記第1走行情報は、前記人力駆動車の車速をさらに含み、
前記制御部は、前記車速が所定速度以上の場合、前記第2変速条件が成立していないと判定する、請求項1、および5から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第1走行情報は、前記人力駆動車の減速度を含み、
前記制御部は、前記減速度が第1所定値よりも大きい第2所定値以上である場合、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する、請求項1または4に記載の制御装置。
【請求項10】
記第1走行情報は、ケイデンス、パワー、前記人力駆動車の車速、前記人力駆動車の加速度の少なくとも1つを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記第1変速条件は、第1閾値および前記第1閾値よりも小さい第2閾値を含み、
前記制御部は、前記第1参照値が前記第1閾値以上になると、前記人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を実行し、前記第1参照値が前記第2閾値以下になると、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する、請求項1から10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記第1参照値は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、パワー、および、前記人力駆動車の車速の少なくとも1つを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記走行情報は、前記人力駆動車の走行環境に関する第2走行情報を含み、
前記第2走行情報は、路面の状態に関する路面情報、空気抵抗に関する空気抵抗情報、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記路面情報は、前記人力駆動車が走行する路面の傾斜角度に関する情報を含む、請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記傾斜角度が所定角度以上である場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する、請求項14に記載の制御装置。
【請求項16】
第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車の走行に関する走行情報に基づいて設定され、前記第1変速条件とは異なる第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件が成立する場合であっても前記第2変速条件に基づいて前記人力駆動車の変速比を変更し、
前記走行情報は、前記人力駆動車の走行環境に関する第2走行情報を含み、
前記第2走行情報は、路面の状態に関する路面情報、空気抵抗に関する空気抵抗情報、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む、制御装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記第1変速条件と前記第2変速条件とが成立した場合、前記第2変速条件に基づいて前記変速装置を制御する、請求項1から16のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記変速装置と、を備える変速システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および変速システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の人力駆動車の走行状態の検出結果に基づいて、変速装置を制御する変速制御装置が知られている。特許文献1は、従来知られている変速制御装置の一例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-96537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、人力駆動車の快適な走行に貢献できる制御装置および変速システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車の変速比を変更する変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記人力駆動車の走行に関する走行情報に基づいて設定される第2変速条件が成立する場合、前記第1変速条件に関わらず前記人力駆動車の変速比を変更する。
上記第1側面の制御装置によれば、第2変速条件が成立している場合に、第1変速条件に関わらず、人力駆動車Aの変速比が変更される。変速装置による好適な変速が実行されるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記第1変速条件は、第1閾値および前記第1閾値よりも小さい第2閾値を含み、前記制御部は、前記第1参照値が前記第1閾値以上になると、前記人力駆動車の変速比が大きくなる第2変速を実行し、前記第1参照値が前記第2閾値以下になると、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する。
上記第2側面の制御装置によれば、変速比の変更が好適に実行されるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0007】
前記第1または第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記第1参照値は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、パワー、および、前記人力駆動車の車速の少なくとも1つを含む。
上記第3側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比を適切に変更できる。
【0008】
前記第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の制御装置において、前記人力駆動車の走行に関する走行情報は、前記人力駆動車の走行状態に関する第1走行情報を含み、前記第1走行情報は、ケイデンス、前記人力駆動車のクランクに作用するトルク、パワー、前記人力駆動車の車速、前記人力駆動車の加速度、および、前記人力駆動車の減速度の少なくとも1つを含む。
上記第4側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比を適切に変更できる。
【0009】
前記第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記第1走行情報は、前記人力駆動車の減速度を含み、前記制御部は、所定期間における前記減速度が第1所定値以上の場合、前記第2変速条件が成立していると判定する。
上記第5側面の制御装置によれば、減速時に好適な変速動作が実行されるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0010】
前記第5側面に従う第6側面の制御装置において、前記制御部は、前記第2変速条件が成立した場合、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する。
上記第6側面の制御装置によれば、減速時に変速比が小さくなるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0011】
前記第5または第6側面に従う第7側面の制御装置において、前記制御部は、前記所定期間における前記減速度が前記第1所定値以上であるかを複数回判定し、前記減速度が前記第1所定値以上である回数が1回である場合、前記第2変速条件が成立していないと判定する。
上記第7側面の制御装置によれば、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0012】
前記第5から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記第1走行情報は、前記人力駆動車の車速をさらに含み、前記制御部は、前記車速が所定速度以上の場合、前記第2変速条件が成立していないと判定する。
上記第8側面の制御装置によれば、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0013】
前記第4から第8側面のいずれか1つに従う第9側面の制御装置において、前記第1走行情報は、前記人力駆動車の減速度を含み、前記制御部は、前記減速度が第1所定値よりも大きい第2所定値以上である場合、前記人力駆動車の変速比の変化を抑制する。
上記第9側面の制御装置によれば、例えば急停止する場合に変速が実行されないため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0014】
前記第4から第9側面のいずれか1つに従う第10側面の制御装置において、前記第1走行情報は、前記人力駆動車のクランクに作用するトルクを含み、前記制御部は、前記トルクの値が、所定値以上である場合、前記第2変速条件が成立していると判定し、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する。
上記第10側面の制御装置によれば、好適に第1変速が実行されるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0015】
前記第1から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の制御装置において、前記走行情報は、前記人力駆動車の走行環境に関する第2走行情報を含み、前記第2走行情報は、路面の状態に関する路面情報、空気抵抗に関する空気抵抗情報、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む。
上記第11側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比を好適に変更できる。
【0016】
前記第11側面に従う第12側面の制御装置において、前記路面情報は、前記人力駆動車が走行する路面の傾斜角度に関する情報を含む。
上記第12側面の制御装置によれば、人力駆動車の変速比を好適に変更できる。
【0017】
前記第12側面に従う第13側面の制御装置において、前記制御部は、前記傾斜角度が所定角度以上である場合、前記第2変速条件が成立したと判定し、前記人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する。
上記第13側面の制御装置によれば、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0018】
前記第1から第13側面のいずれか1つに従う第14側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1変速条件と前記第2変速条件とが成立した場合、前記第2変速条件に基づいて前記変速装置を制御する。
上記第14側面の制御装置によれば、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0019】
本発明の第15側面に従う変速システムは、前記制御装置と、前記変速装置と、を備える。
上記第15側面の変速システムによれば、第2変速条件が成立している場合に、第1変速条件に関わらず、人力駆動車Aの変速比が変更される。変速装置による好適な変速が実行されるため、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の制御装置および変速システムによれば、人力駆動車の快適な走行に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の変速システムを含む人力駆動車の側面図。
図2】第1実施形態の制御装置と各種の要素との電気的な接続関係を示すブロック図。
図3】第1実施形態の制御装置が実行する変速装置の制御に用いられる第1変速条件の一例を示すマップ。
図4】第1実施形態の制御装置が実行する変速制御の一例を示すフローチャート。
図5】第1実施形態の制御装置が実行する第1変速促進制御の一例を示すフローチャート。
図6】第2実施形態の制御装置が実行する第2変速促進制御の一例を示すフローチャート。
図7】第3実施形態の制御装置が実行する第3変速促進制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1を参照して、変速システム10を含む人力駆動車Aについて説明する。
ここで、人力駆動車は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両を意味し、電動で人力を補助する車両を含む。人力以外の原動力のみを用いる車両は、人力駆動車には含まれない。特に、内燃機関のみを原動力に用いる車両は、人力駆動車には含まれない。通常、人力駆動車には、小型軽車両が想定され、公道での運転に免許を要しない車両が想定される。図示される人力駆動車Aは、電気エネルギを用いて人力駆動力を補助する電動補助ユニットEを有する。具体的には、図示される人力駆動車Aは、トレッキングバイクである。人力駆動車Aは、フレームA1、フロントフォークA2、車輪W、ハンドルH、および、ドライブトレインBをさらに含む。車輪Wは、前輪WFおよび後輪WRを含む。
【0023】
ドライブトレインBは、例えばチェーンドライブタイプである。ドライブトレインBは、クランクC、フロントスプロケットD1、リアスプロケットD2、および、チェーンD3を含む。クランクCは、フレームA1に回転可能に支持されるクランク軸C1、および、クランク軸C1の両端部のそれぞれに設けられる一対のクランクアームC2を含む。各クランクアームC2の先端には、ペダルPDが回転可能に取り付けられる。ドライブトレインBは、任意のタイプから選択でき、ベルトドライブタイプ、または、シャフトドライブタイプであってもよい。
【0024】
フロントスプロケットD1は、クランク軸C1と一体に回転するようにクランクCに設けられる。リアスプロケットD2は、後輪WRのハブHRに設けられる。チェーンD3は、フロントスプロケットD1およびリアスプロケットD2に巻き掛けられる。人力駆動車Aに搭乗する搭乗者によってペダルPDに加えられる人力駆動力は、フロントスプロケットD1、チェーンD3、および、リアスプロケットD2を介して後輪WRに伝達される。
【0025】
電動補助ユニットEは、人力駆動車Aの推進をアシストするように動作する。電動補助ユニットEは、例えばペダルPDに加えられる人力駆動力に応じて動作する。電動補助ユニットEは、モータE1を含む。電動補助ユニットEは、人力駆動車Aに搭載されるバッテリBTから供給される電力によって動作する。
【0026】
変速システム10は、制御装置12と、変速装置20とを備える。制御装置12は、例えば電動補助ユニットEのハウジングE2内に収容される。制御装置12は、バッテリBTから供給される電力によって動作する。
【0027】
変速装置20は、外装変速機を含む。一例では、変速装置20は、フロントディレーラ22およびリアディレーラ24の少なくとも1つを含む。フロントディレーラ22は、フロントスプロケットD1付近に設けられる。フロントディレーラ22の駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるフロントスプロケットD1が変更され、人力駆動車Aの変速比が変更される。人力駆動車Aの変速比は、フロントスプロケットD1の歯数とリアスプロケットD2の歯数との関係に基づいて規定される。一例では、人力駆動車Aの変速比は、フロントスプロケットD1の回転速度に対するリアスプロケットD2の回転速度の割合で定義される。すなわち、人力駆動車Aの変速比は、リアスプロケットD2の歯数に対するフロントスプロケットD1の歯数の割合で定義される。リアディレーラ24は、フレームA1のリアエンドA3に設けられる。リアディレーラ24の駆動に伴って、チェーンD3が巻き掛けられるリアスプロケットD2が変更され、人力駆動車Aの変速比が変更される。フロントスプロケットD1およびリアスプロケットD2の構成は、任意に選択される。フロントスプロケットD1の枚数は、例えば1枚である。一例では、フロントスプロケットD1は、歯数が34TのフロントスプロケットD1を含む。この場合、フロントディレーラ22の構成を省略してもよい。リアスプロケットD2の枚数は、例えば11枚である。一例では、リアスプロケットD2は、歯数が46T、37T、32T、28T、24T、21T、19T、17T、15T、13T、および、11TのリアスプロケットD2を含む。別の例では、フロントスプロケットD1の枚数は、2枚である。フロントスプロケットD1は、歯数が34Tおよび24TのフロントスプロケットD1を含む。リアスプロケットD2の枚数は、例えば12枚である。リアスプロケットD2は、歯数が51T、45T、39T、33T、28T、24T、21T、18T、16T、14T、12T、および、10TのリアスプロケットD2を含む。変速装置20は、外装変速機に代えて内装変速機を含んでいてもよい。この場合、内装変速機は、例えば後輪WRのハブHRに設けられる。変速装置20は、外装変速機に代えて無段変速機を含んでいてもよい。この場合、無段変速機は、例えば後輪WRのハブHRに設けられる。変速装置20は、変速操作装置SLからの操作信号に応じて、人力駆動車Aの変速比を変更する。
【0028】
図2を参照して、変速システム10の具体的な構成について説明する。
制御装置12は、人力駆動車Aに搭載されるコンポーネントを制御する制御部14を備える。人力駆動車Aのコンポーネントには、少なくとも変速装置20が含まれる。一例では、制御部14は、人力駆動車Aに関する情報に応じて、人力駆動車Aの変速比が変化するように変速装置20を制御する。一例では、制御部14は、人力駆動車Aに関する情報を含む所定の変速条件に応じて、変速装置20を制御する。一例では、所定の変速条件は、第1変速条件および第2変速条件の少なくとも1つを含む。一例では、第1変速条件は、人力駆動車Aの変速比を変化させるか否かを決める。第2変速条件は、人力駆動車Aの変速比の変化を促進するか否かを決める。変速比の変化の促進とは、第1変速条件により決められる変速比の変化、および、第1変速条件により決められる変速段の変化に代えてまたは加えて変速比の変化を実行することを含む。
【0029】
制御装置12は、第1参照値に基づいて規定される第1変速条件に応じて、人力駆動車Aの変速比を変更する変速装置20を制御する制御部14を備える。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)およびMPU(Micro Processing Unit)の少なくとも1つを含む。制御部14は、変速操作装置SLの操作に応じて変速装置20を制御することもできる。制御部14は、人力駆動車Aの変速装置20以外に、人力駆動車Aに搭載される各種のコンポーネントをさらに制御してもよい。制御装置12は、各種の情報を記憶する記憶部16をさらに備える。記憶部16は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。記憶部16は、例えば制御のための各種プログラム、および、予め設定される情報等を記憶する。
【0030】
人力駆動車Aは、外部からの入力を受け付ける操作装置ODを含む。操作装置ODは、変速操作装置SLを少なくとも含む。変速装置20は、例えば変速操作装置SLの操作に応じて機械的または電気的に駆動されるように構成される。変速装置20が電気的に駆動される場合、変速装置20は、バッテリBTから供給される電力、または、変速装置20に搭載される専用の電源から供給される電力によって動作する。変速操作装置SLは、変速段を変更できるように構成される。変速段は、変速比に対応するように設定される。変速操作装置SLが操作されると、人力駆動車Aの変速段および変速比が変化するように変速装置20が動作する。一例では、変速操作装置SLが操作されると、人力駆動車Aの変速比が小さくなるように変速装置20が動作する。別の例では、変速操作装置SLが操作されると、人力駆動車Aの変速比が大きくなるように変速装置20が動作する。変速操作装置SLは、制御部14と有線または無線通信可能に構成される。以下、変速装置20が人力駆動車Aの変速比を小さくする変速を第1変速と称し、変速装置20が人力駆動車Aの変速比を大きくする変速を第2変速と称する場合がある。第1変速は、変速段が小さくなるシフトダウン変速と同義である。第2変速は、変速段が大きくなるシフトアップ変速と同義である。
【0031】
人力駆動車Aは、各種の情報を検出するための検出装置DDをさらに含む。検出装置DDは、例えば第1参照値および人力駆動車Aの走行に関する走行情報を検出する。第1参照値は、ケイデンス、人力駆動車AのクランクCに作用するトルク、パワー、および、人力駆動車Aの車速の少なくとも1つを含む。ケイデンスは、クランクCの回転数と同義である。パワーは、ケイデンスとトルクの積である。人力駆動車Aの走行に関する走行情報は、人力駆動車Aの走行状態に関する第1走行情報を含む。第1走行情報は、ケイデンス、人力駆動車AのクランクCに作用するトルク、パワー、人力駆動車Aの車速、人力駆動車Aの加速度、および、人力駆動車Aの減速度の少なくとも1つを含む。一例では、検出装置DDは、クランクCの回転数を検出し、ケイデンスを検出するためのセンサ、人力駆動車AのクランクCに作用するトルクを検出するためのセンサ、パワーを検出するためのセンサ、人力駆動車Aの車速を検出するためのセンサ、人力駆動車Aの加速度、および、人力駆動車Aの減速度を検出するためのセンサの少なくとも1つを含む。人力駆動車Aの加速度、および、人力駆動車Aの減速度は、単位時間あたりの車速の変化量、および、車速の2乗の関数である運動エネルギの変化量の少なくとも1つを含む。検出装置DDは、第1走行情報を算出してもよい。検出装置DDは、人力駆動車Aの変速比をさらに検出する。走行情報は、人力駆動車Aの走行環境に関する第2走行情報を含む。第2走行情報は、路面の状態に関する路面情報、空気抵抗に関する空気抵抗情報、天候に関する天候情報、および、気温に関する気温情報の少なくとも1つを含む。路面情報は、人力駆動車Aが走行する路面の傾斜角度に関する情報を含む。検出装置DDは、第2走行情報が検出可能に構成される。一例では、検出装置DDは、第2走行情報の少なくとも1つが検出可能なセンサを含む。別の例では、検出装置DDは、第2走行情報の少なくとも1つを外部から入手可能な通信部を含む。制御部14は、検出装置DDが検出した各種の情報を有線または無線通信で取得する。
【0032】
制御部14は、第1変速条件が成立する場合、人力駆動車Aの変速比に関する目標の変速比を変更する。制御部14は、人力駆動車Aの変速比が変更後の目標の変速比に一致するように変速装置20を制御する変速制御を実行する。目標の変速比が変更される場合、変更前の目標の変速比に対応する変速段と、変更後の目標の変速比に対応する変速段との差は、1段または2段以上のいずれかである。第1変速条件は、第1閾値TH1および第1閾値TH1よりも小さい第2閾値TH2を含む。制御部14は、第1参照値が第1閾値TH1以上になると、人力駆動車Aの変速比が大きくなる第2変速を実行する。制御部14は、第1参照値が第2閾値TH2以下になると、人力駆動車Aの変速比が小さくなる第1変速を実行する。
【0033】
図3は、第1参照値と第1閾値TH1との関係および第1参照値と第2閾値TH2との関係を示す。制御部14は、人力駆動車Aに搭載される検出装置DDから第1参照値を取得する。第1参照値の一例は、ケイデンスである。制御部14は、第1参照値と第1閾値TH1との関係に応じて、第2変速を実行するように変速装置20を制御する。制御部14は、第1参照値と第2閾値TH2との関係に応じて、第1変速を実行するように変速装置20を制御する。第1閾値TH1および第2閾値TH2は、第1参照値に関する所定の範囲を規定する。第1閾値TH1は、所定の範囲の上限を規定する。第2閾値TH2は、所定の範囲の下限を規定する。所定の範囲は、第2閾値TH2超かつ第1閾値TH1未満の範囲である。一例では、第1参照値が所定の範囲に含まれる場合、第1変速および第2変速が実行されない。制御部14は、第1参照値が第1閾値TH1以上になると第2変速を実行するように変速装置20を制御する。制御部14は、第1参照値が第2閾値TH2以下になると第1変速を実行するように変速装置20を制御する。制御部14は、第1参照値が第1閾値TH1以上、かつ、現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比の場合、人力駆動車Aの変速比を維持するように変速装置20を制御する。人力駆動車Aの最大変速比は、フロントスプロケットD1とリアスプロケットD2との関係に基づく最大の変速比である。制御部14は、第1参照値が第2閾値TH2以下、かつ、現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比の場合、人力駆動車Aの変速比を維持するように変速装置20を制御する。人力駆動車Aの最小変速比は、フロントスプロケットD1とリアスプロケットD2との関係に基づく最小の変速比である。第1閾値TH1、および、第2閾値TH2は、任意に設定される。第1例では、第1閾値TH1は、80rpmである。第2閾値TH2は、60rpmである。所定の範囲は、20rpmである。第2例では、第1閾値TH1は、85rpmである。第2閾値TH2は、55rpmである。所定の範囲は、30rpmである。
【0034】
制御部14は、人力駆動車Aの走行に関する走行情報に基づいて設定される第2変速条件が成立する場合、第1変速条件に関わらず人力駆動車Aの変速比を変更する。第1変速条件に関わらず人力駆動車Aの変速比を変更するとは、第1変速条件が成立しているか否かを参照しないで変速比を変更すること、および、第1変速条件が成立していてもいなくても変速比を変更することの少なくとも1つを含む。制御部14は、人力駆動車Aの変速比が変更されるように変速装置20を制御する変速促進制御を実行する。制御部14は、人力駆動車Aの走行に関する走行情報に応じて、変速促進制御を実行する。変速促進制御では、人力駆動車Aの変速比が、所定の時点の変速比から変化するように、または、所定の時点の変速比が目標の変速比に近づくように、所定の時点の変速比が目標の変速比に一致するように、変速装置20を制御する。一例では、所定の時点は、第2変速条件が成立していると判定された時点である。
【0035】
変速制御では、制御部14は、人力駆動車Aに関する第1情報に応じて、人力駆動車Aの変速比が変化するように変速装置20を制御する。変速促進制御では、人力駆動車Aに関する第2情報に応じて、人力駆動車Aの変速比が変更されるように変速装置20を制御する。制御部14は、第2情報として第1情報とは異なる種類の情報を参照する。
【0036】
第1情報は、例えば変速操作装置SLの操作に関する操作情報、および、第1参照値の少なくとも1つを含む。第2情報は、例えば人力駆動車Aの走行に関する第1走行情報および第2走行情報を含む。第1参照値には、例えば第1走行情報と比較して、搭乗者の負荷が相対的に強く反映されるという特徴が含まれる場合がある。第1走行情報には、例えば第1参照値と比較して、搭乗者の意図しない人力駆動車Aの挙動が相対的に強く反映されるという特徴が含まれる場合がある。
【0037】
変速制御では、制御部14は、操作情報および第1参照値の少なくとも1つに応じて変速装置20を制御する。操作情報は、変速段を指定する指定情報を含む。指定情報は変速段を変化させる段数(以下「変化段数」という)および変速段を変化させる方向(以下「変化方向」という)に関する情報を含む。変化段数は、1段または2段以上のいずれかである。変化方向はアップまたはダウンである。変化段数および変化方向は、目標の変速段を決める。
【0038】
操作情報に基づいた変速制御について説明する。制御部14は、変速操作装置SLから操作情報を取得する。制御部14は、操作情報によって決められる目標の変速段と実際の変速段とが異なる場合、実際の変速段が目標の変速段に一致するように変速装置20を制御する。制御部14は、目標の変速段と実際の変速段とが一致する場合、変速段が維持されるように変速装置20を制御する。
【0039】
操作情報に代えてまたは加えて第1参照値に基づいた変速制御について説明する。制御部14は、検出装置DDから第1参照値を取得する。制御部14は、第1参照値に基づいて第1変速条件が成立するか否かを判定する。第1変速条件が成立した場合、制御部14は、変速実行条件に基づいて変速装置20を制御する。変速実行条件は、複数の変速実行条件を含む。一例では、複数の変速実行条件は、第1から第4変速実行条件を含む。第1変速実行条件は、変化段数が1段かつ変化方向がアップとなるよう目標の変速段を決める。第2変速実行条件は、変化段数が1段かつ変化方向がダウンとなるよう目標の変速段を決める。第3変速実行条件は、変化段数が2段以上のいずれか、かつ、変化方向がアップとなるよう目標の変速段を決める。第4変速実行条件は、変化段数が2段以上のいずれか、かつ、変化方向がダウンとなるよう目標の変速段を決める。一例では、第1変速実行条件は、第1参照値が第1閾値以上である場合に成立する。第2変速実行条件は、第1参照値が第2閾値以下である場合に成立する。第3変速実行条件は、第1参照値が第1閾値以上であり、かつ、変速操作装置SLから操作情報を取得した場合に成立する。第4変速実行条件は、第1参照値が第2閾値以下であり、かつ、変速操作装置SLから操作情報を取得した場合に成立する。制御部14は、第2変速実行条件および第4変速実行条件により第1変速を実行する。制御部14は、第1変速実行条件および第3変速実行条件により第2変速を実行する。制御部14は、第1変速条件が成立しない場合、変速実行条件を設定しない。
【0040】
制御部14は、各変速実行条件のいずれか1つが成立する場合、その変速実行条件によって決められる目標の変速段を暫定の目標の変速段に設定する。制御部14は、変速制御によって設定する暫定の目標の変速段と、変速促進制御によって設定する変速促進要求との関係に応じて最終の目標の変速段を設定する。制御部14は、変速促進要求が設定されない場合、暫定の目標の変速段を最終の目標の変速段に設定する。制御部14は、最終の目標の変速段と実際の変速段とが異なる場合、実際の変速段が最終の目標の変速段に一致するように変速装置20を制御する。制御部14は、最終の目標の変速段と実際の変速段とが一致する場合、実際の変速段が維持されるように変速装置20を制御する。
【0041】
走行情報に基づいた変速促進制御について説明する。制御部14は、走行情報として第1走行情報および第2走行情報の少なくとも1つを参照する。一例では、第1走行情報は、人力駆動車Aの減速度を含む。一例では、人力駆動車Aの減速度は、単位時間あたりの車速の変化量である。制御部14は、所定期間における減速度が第1所定値以上の場合、第2変速条件が成立していると判定する。制御部14は、第2変速条件が成立した場合、人力駆動車Aの変速比が小さくなる第1変速を実行する。所定期間は、任意に設定される。第1例では、クランクCの回転角度が所定回転角度を超えたことである。第2例では、人力駆動車Aの走行距離が所定走行距離を超えたことである。一例では、初速度が大きいほど、第1所定値は大きな値になる。一例では、初速度が15km/hの場合、第1所定値は1.0m/sである。
【0042】
制御部14は、所定期間における減速度が第1所定値以上であるかを複数回判定し、減速度が第1所定値以上である回数が1回である場合、第2変速条件が成立していないと判定する。一例では、複数回は2回である。別の例では、複数回は3回以上である。制御部14は、減速度が第1所定値よりも大きい第2所定値以上である場合、人力駆動車Aの変速比の変化を抑制する。一例では、初速度が大きいほど、第2所定値は大きな値になる。一例では、第2所定値は第1所定値の1.5倍以上である。一例では、初速度が15km/hの場合、第2所定値は3.0m/sである。一例では、制御部14は、減速度が第2所定値以上である場合、第2変速条件が成立していないと判定する。別の例では、制御部14は、第1変速条件が成立した場合でも、変速比の変化を抑制するように変速装置20を制御する。
【0043】
制御部14は、第2変速条件が成立した場合、促進実行条件に基づいて変速装置20を制御する。促進実行条件は、複数の促進実行条件を含む。一例では、複数の促進実行条件は、第1から第3促進実行条件を含む。第1促進実行条件は、暫定の目標の変速段を最終の目標の変速段に指定する変速促進要求を設定する。第2促進実行条件は、最終の目標の変速段と現在の変速段との差の絶対値が、暫定の目標の変速段と現在の変速段との差よりも小さくなるように、最終の目標の変速段を指定する変速促進要求を設定する。暫定の変速段は、現在の変速段よりも小さい変速段である。第3促進実行条件は、暫定の目標の変速段をクリアし、別の暫定の目標の変速段を最終の目標の変速段に指定する変速促進要求を設定する。第3促進実行条件において、暫定の目標の変速段と別の暫定の目標の変速段とで変速段の変化方向が異なる場合を含む。
【0044】
制御部14は、第2変速条件が成立する場合、第1から第3促進実行条件の少なくとも1つに対応する変速促進要求を設定する。制御部14は、変速制御において第1変速条件が成立している場合、第1から第3促進実行条件の少なくとも1つの変速促進要求を設定する。制御部14は、変速制御において第1変速条件が成立していない場合、第1から第3促進実行条件の少なくとも1つに対応する変速促進要求を設定する。
【0045】
制御部14は、第1変速条件と第2変速条件とが成立した場合、第2変速条件に基づいて変速装置20を制御する。制御部14は、第1変速条件が成立、かつ、変速促進要求を設定する場合、変速促進要求に応じて最終の目標の変速段を設定する。第1変速条件が成立したことによる暫定の目標の変速段は、最終の目標の変速段には設定されずクリアされる。
【0046】
図4を参照して、制御装置12が実行する変速制御について説明する。変速制御は、制御部14が第1参照値に基づいて、第1変速条件が成立するか否かを判定し第1変速および第2変速の少なくとも1つを実行する制御である。
【0047】
制御部14は、例えば以下の処理に従って変速制御を実行する。制御部14は、ステップS11において、第1参照値を取得する。具体的には、制御部14は、検出装置DDから第1参照値であるケイデンスを取得する。
【0048】
制御部14は、ステップS12において、第1参照値が第1閾値TH1以上であるか否かを判定する。第1参照値が第1閾値TH1以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS13の処理を実行する。第1参照値が第1閾値TH1以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS15の処理を実行する。
【0049】
制御部14は、ステップS13において、現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比であるか否かを判定する。現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比であると判定した場合、制御部14は、ステップS11の処理を実行する。現在の人力駆動車Aの変速比が最大変速比ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS14の処理を実行する。
制御部14は、ステップS14において、変速実行条件に基づいて人力駆動車Aの変速比が大きくなる第2変速を実行する。ステップS14の終了後、制御部14は、制御を終了する。
【0050】
制御部14は、ステップS15において、第1参照値が第2閾値TH2以下か否かを判定する。第1参照値が第2閾値TH2以下であると判定した場合、制御部14は、ステップS16の処理を実行する。第1参照値が第2閾値TH2以下ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS11の処理を実行する。
【0051】
制御部14は、ステップS16において、現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比であるか否かを判定する。現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比であると判定した場合、制御部14は、ステップS11の処理を実行する。現在の人力駆動車Aの変速比が最小変速比ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS17の処理を実行する。
【0052】
制御部14は、ステップS17において、変速実行条件に基づいて人力駆動車の変速比が小さくなる第1変速を実行する。ステップS17の終了後、制御部14は、制御を終了する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS11からステップS17の処理を含む第1自動変速制御を繰り返し実行する。
【0053】
図5を参照して、制御装置12が実行する第2変速条件に基づいた第1変速促進制御について説明する。第1変速促進制御は、制御部14が第1走行情報に基づいて、変速比の変更を実行する制御である。第1走行情報は、人力駆動車Aの減速度を含む。制御部14は、変速制御と並行して第1変速促進制御を実行する。
【0054】
制御部14は、例えば以下の処理に従って第1変速促進制御を実行する。制御部14は、ステップS21において、人力駆動車Aの減速度を検出装置DDから取得する。制御部14は、ステップS22において、減速度は第1所定値以上か否かを判定する。減速度は第1所定値以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS23の処理を実行する。減速度は第1所定値以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS21の処理を実行する。
【0055】
制御部14は、ステップS23において、減速度は第2所定値以上か否かを判定する。減速度は第2所定値以上であると判定した場合、制御部14は、制御を終了する。減速度は第2所定値以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS24の処理を実行する。
【0056】
制御部14は、ステップS24において、所定期間経過したか否かを判定する。所定期間経過したと判定した場合、制御部14は、ステップS25の処理を実行する。所定期間経過していないと判定した場合、制御部14は、ステップS24の処理を実行する。
【0057】
制御部14は、ステップS25において、人力駆動車Aの減速度を検出装置DDから取得する。制御部14は、ステップS26において、減速度は第1所定値以上か否かを判定する。減速度は第1所定値以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS27の処理を実行する。減速度は第1所定値以上ではないと判定した場合、制御部14は、制御を終了する。
【0058】
制御部14は、ステップS27において、促進実行条件に基づいて変速装置20を制御する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS21からステップS27の処理を含む第1変速促進制御を繰り返し実行する。
【0059】
<第2実施形態>
図6を参照して、第2実施形態の変速システム10について説明する。第2実施形態の変速システム10では、制御部14が走行情報として人力駆動車Aの車速とトルクを参照して、変速促進制御を実行する。なお、第2実施形態における変速促進制御を第2変速促進制御と称する場合がある。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0060】
制御部14は、第1変速促進制御に代えてまたは加えて第2変速促進制御を実行する。第2変速促進制御は、制御部14が第1走行情報に基づいて、変速比の変更を実行する制御である。第1走行情報は、人力駆動車AのクランクCに作用するトルクを含む。第1走行情報は、人力駆動車Aの車速をさらに含む。制御部14は、車速が所定速度以上の場合、第2変速条件が成立していないと判定する。一例では、所定速度は25km/hである。制御部14は、トルクの値が、所定値以上である場合、第2変速条件が成立していると判定し、人力駆動車Aの変速比が小さくなる第1変速を実行する。一例では、所定値は5Nmである。
【0061】
制御部14は、例えば以下の処理に従って第2変速促進制御を実行する。制御部14は、ステップS31において、第1走行情報を取得する。具体的には、人力駆動車Aの車速およびトルクを検出する。
制御部14は、ステップS32において、車速は所定速度以上か否かを判定する。車速は、所定速度以上であると判定した場合、制御部14は制御を終了する。車速は所定速度以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS33の処理を実行する。
【0062】
制御部14は、ステップS33において、トルクは所定値以上か否かを判定する。トルクは所定値以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS34の処理を実行する。トルクは所定値以上ではないと判定した場合、制御部14は、ステップS31の処理を実行する。
【0063】
制御部14は、ステップS34において、促進実行条件に基づいて変速装置20を制御する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS31からステップS34の処理を含む第2変速促進制御を繰り返し実行する。
【0064】
<第3実施形態>
図7を参照して、第3実施形態の変速システム10について説明する。第3実施形態の変速システム10では、制御部14が走行情報として第2走行情報を参照して、変速促進制御を実行する。なお、第3実施形態における変速促進制御を第3変速促進制御と称する場合がある。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0065】
制御部14は、第1変速促進制御および第2変速促進制御に代えてまたは加えて第3変速促進制御を実行する。第3変速促進制御は、制御部14が第2走行情報に基づいて、変速比を変更する制御である。第2走行情報は、人力駆動車Aが走行する路面の傾斜角度に関する情報を含む。制御部14は、傾斜角度が所定角度以上である場合、第2変速条件が成立したと判定し、人力駆動車Aの変速比が小さくなる第1変速を実行する。一例では、所定角度は15パーセントの斜度に相当する角度である。
【0066】
制御部14は、例えば以下の処理に従って第3変速促進制御を実行する。制御部14は、ステップS41において、人力駆動車Aの第2走行情報を取得する。具体的には、人力駆動車Aが走行する路面の傾斜角度を取得する。制御部14は、ステップS42において、傾斜角度は所定角度以上か否かを判定する。傾斜角度は所定角度以上であると判定した場合、制御部14は、ステップS43の処理を実行する。傾斜角度は所定角度以上ではないと判定した場合、制御部14は、制御を終了する。
【0067】
制御部14は、ステップS43において、促進実行条件に基づいて変速装置20を制御する。制御部14は、例えば人力駆動車Aの走行中において、ステップS41からステップS43の処理を含む第3変速促進制御を繰り返し実行する。
【0068】
<変形例>
各実施形態に関する説明は、本発明に従う制御装置および変速システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う制御装置および変速システムは、例えば以下に示される各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
・第1変速促進制御および第2変速促進制御の少なくとも1つを実行する第1制御モードと第1変速促進制御および第2変速促進制御を実行しない第2制御モードとを備え、操作装置ODにより変更可能に構成されていてもよい。第1制御モードおよび第2制御モードに関する情報は、例えば記憶部16に記憶される。
【0070】
・車速が所定車速以下の場合には、制御部14は、第1変速促進制御および第2変速促進制御をしないように構成されていてもよい。所定車速の一例は、10km/hである。
【0071】
・制御部14は、第1参照値として人力駆動車Aの車速と現在の変速比との関係から演算される推定ケイデンスを使用してもよい。制御部14は、ケイデンスを検出するセンサにより検出されたケイデンスの値と推定ケイデンスの値とを比較し、大きい値を第1参照値として使用してもよい。
【0072】
・制御部14は、第1走行情報として、人力駆動車Aの運動エネルギが第1所定値以上変化した場合に変速促進制御を実行するように構成されてもよい。この場合、人力駆動車Aの減速度は、人力駆動車Aの運動エネルギの減少量である。人力駆動車Aの運動エネルギは、人力駆動車Aの車速および質量により演算される。人力駆動車Aの質量は、予め記憶部16に記憶される。一例では、制御部14は、運動エネルギが所定期間において第1所定値以上減少した場合、促進実行条件に基づいて変速装置20を制御する。一例では、人力駆動車Aの運動エネルギは、人力駆動車Aの車速の2乗の関数にて表わされる参照値である。制御部14は、車速の2乗の関数にて表わされる参照値が所定期間において第1所定値以上減少した場合、促進実行条件に基づいて変速装置20を制御する。
【0073】
・検出装置DDは、人力駆動車Aの搭乗者に関する搭乗者情報を検出可能に構成されていてもよい。搭乗者情報は、搭乗者の心拍数、筋電位、発汗量、および、体温の少なくとも1つを含む。
【0074】
・人力駆動車Aの種類は、任意に変更可能である。人力駆動車Aは、ロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイク、シティサイクル、カーゴバイク、リカンベント、および、キックスケータの少なくとも1つに変更可能である。
【0075】
・本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、その選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0076】
10…変速システム、12…制御装置、14…制御部、20…変速装置、A…人力駆動車、C…クランク、TH1…第1閾値、TH2…第2閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7