(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/08 20060101AFI20230907BHJP
D06F 39/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
D06F39/08 301A
D06F39/02 Z
D06F39/08 331
D06F39/08 301B
D06F39/08 321
(21)【出願番号】P 2019131174
(22)【出願日】2019-07-16
【審査請求日】2022-03-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瞬
(72)【発明者】
【氏名】内山 具典
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-107066(JP,A)
【文献】特開2009-056361(JP,A)
【文献】特開2018-118175(JP,A)
【文献】登録実用新案第3141846(JP,U)
【文献】国際公開第2010/035421(WO,A1)
【文献】特開2018-079003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/08
D06F 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、
前記水槽に供給する水にナノバブルを含む微細気泡を析出させる微細気泡発生器と、
前記水槽に供給する水又は水槽に供給された水に菌の増殖を抑制する機能を有する金属イオンを溶出させる金属イオン供給器と、
を備え、
前記金属イオン供給器は、前記微細気泡発生器の上流側に設けられており、
前記微細気泡発生器は、前記金属イオン供給器の下流側であって、前記金属イオン供給器を通過して前記金属イオンを含んだ水が通過する位置に設けられている、
洗濯機。
【請求項2】
外部の水源に接続される給水弁と、
洗濯処理剤を収容する洗濯処理剤収容部と、
前記洗濯処理剤収容部を収容し、前記給水弁を介して前記外部の水源から供給された水を受けて前記水槽に注水する注水ケースと、を更に備え、
前記金属イオン供給器は、前記給水弁から前記注水ケースの出口に至る経路上に設けられている、
請求項
1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記微細気泡発生器及び前記金属イオン供給器は、前記給水弁から前記洗濯処理剤収容部に至る経路であって同一の経路上に設けられている、
請求項
2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記微細気泡発生器及び前記金属イオン供給器は、前記洗濯処理剤収容部を通らない経路であって同一の経路上に設けられている、
請求項
2に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記微細気泡発生器は、前記給水弁から前記洗濯処理剤収容部に至る経路上に設けられ、
前記金属イオン供給器は、前記洗濯処理剤収容部から前記注水ケースの出口に至る経路上に設けられている、
請求項
2に記載の洗濯機。
【請求項6】
外部の水源に接続される給水弁と、
前記給水弁を介して前記外部の水源から供給された水を受けて前記水槽に注水する注水ケースと、
内部に洗濯処理剤を収容する洗濯処理剤収容部が設けられ、前記注水ケースに出し入れ可能に構成された洗濯処理剤ケースと、
を更に備え、
前記金属イオン供給器は、前記洗濯処理剤ケースに設けられている、
請求項
5に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記微細気泡発生器と前記金属イオン供給器とのうち、一方は前記給水弁から前記洗濯処理剤収容部に至る経路上に設けられ、他方は前記洗濯処理剤収容部を通らない経路上に設けられており、
前記微細気泡発生器を通った水と、前記金属イオン供給器を通った水とは、前記注水ケース内で合流して前記出口から前記水槽に注水される、
請求項
2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の洗濯機においては、洗濯水やすすぎ水に銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを溶出させて添加することで、例えば抗菌機能のように、菌の増殖を抑制する機能を付加することが考えられている。しかしながら、従来構成においては、金属イオンが洗濯物に及ぼす菌の増殖抑制効果について改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、金属イオンが洗濯物に及ぼす菌の増殖抑制効果の向上を図ることができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の洗濯機は、水槽と、前記水槽に供給する水にナノバブルを含む微細気泡を析出させる微細気泡発生器と、前記水槽に供給する水又は水槽に供給された水に菌の増殖を抑制する機能を有する金属イオンを溶出させる金属イオン供給器と、を備える。前記金属イオン供給器は、前記微細気泡発生器の上流側に設けられており、前記微細気泡発生器は、前記金属イオン供給器の下流側であって、前記金属イオン供給器を通過して前記金属イオンを含んだ水が通過する位置に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態によるドラム式洗濯機の一例を概略的に示す図
【
図2】第1実施形態による縦型洗濯機の一例を概略的に示す図
【
図3】第1実施形態について、注水装置の内部構成の一例を概略的に示す図
【
図4】第1実施形態について、微細気泡発生器の一例を示す断面図
【
図5】第1実施形態について、微細気泡発生器の一例を
図4のX5-X5線に沿って示す断面図
【
図6】第2実施形態について、注水装置の内部構成の一例を概略的に示す図
【
図7】第3実施形態について、注水装置の内部構成の一例を概略的に示す図
【
図8】第3実施形態について、注水装置の内部構成の他の例を概略的に示す図
【
図9】第4実施形態について、注水装置の内部構成の一例を概略的に示す図
【
図10】第5実施形態について、注水装置の内部構成の一例を概略的に示す図
【
図11】第6実施形態について、注水装置の内部構成の一例を概略的に示す図
【
図12】第7実施形態について、注水装置の内部構成の一例を概略的に示す図
【
図13】第7実施形態によるドラム式洗濯機の一例を概略的に示す図
【
図14】第7実施形態による縦型洗濯機の一例を概略的に示す図
【
図15】第8実施形態によるドラム式洗濯機の一例を概略的に示す図
【
図16】第8実施形態による縦型洗濯機の一例を概略的に示す図
【
図17】第7、第8実施形態について、注水装置の内部構成の他の例を概略的に示す図(その1)
【
図18】第7、第8実施形態について、注水装置の内部構成の他の例を概略的に示す図(その2)
【
図19】第7、第8実施形態について、注水装置の内部構成の他の例を概略的に示す図(その3)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態で実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。各実施形態は、
図1に示す横軸または斜め軸型のドラム式洗濯機、及び
図2に示す縦軸型の洗濯機のいずれにも適用することができる。
【0008】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示す洗濯機10は、外箱11、水槽12、回転槽13、モータ14、排水経路15、排水弁16、フィルタ装置17、循環経路18、及び循環ポンプ19を備えている。なお、
図1において、洗濯機10の設置面側つまり鉛直下側を洗濯機10の下側とし、設置面と反対側つまり鉛直上側を洗濯機10の上側とする。洗濯機10は、回転槽13の回転軸が水平へ向かう横軸型又は後方へ向かって下降傾斜した斜め軸型のドラム式洗濯機である。この場合、水槽12及び回転槽13は、洗濯物を収納する洗濯槽として機能する。
【0009】
図2に示す洗濯機20は、外箱21、水槽22、回転槽23、モータ24、排水経路25、排水弁26、フィルタ装置27、循環経路28、及び循環ポンプ29を備えている。なお、
図2において、洗濯機20の設置面側つまり鉛直下側を洗濯機20の下側とし、設置面と反対側つまり鉛直上側を洗濯機20の上側とする。洗濯機20は、回転槽23の回転軸が鉛直方向を向いた縦型洗濯機である。この場合、水槽22及び回転槽23は、洗濯物を収納する洗濯槽として機能する。なお、循環ポンプ29に換えて、バッフル231の裏側に水をかき上げる羽根部材を設け、バッフル231の駆動により、回転槽23と水槽22との間に設けた図示しない循環水路を通して水槽22内の水を循環させる構成としても良い。
【0010】
図1に示すドラム式洗濯機10及び
図2に示す縦型洗濯機20において、水槽12、22は、外箱11、21内に配置されて図示しないサスペンションによって弾性的に支持されている。回転槽13、23は、水槽12、22内に回転可能に配置されており、モータ14、24によって回転駆動される。
【0011】
排水経路15、25は、水槽12、22内に貯留されている水を洗濯機10、20の機外に排出するための経路である。排水経路15、25は、例えば可撓性を有する排水ホースで構成されており、一方の端部が排水弁16、26に接続され、他方の端部が洗濯機10、20の機外に引き出されている。
【0012】
排水弁16、26は、電磁的に開閉動作が可能な液体用の開閉弁である。排水弁16、26は、水槽12、22の底部に設けられた排水口121、221と、排水経路15、25との間に設けられている。排水弁16、26は、図示しない制御装置からの制御信号に基づき、排水経路15、25を開閉する。
【0013】
フィルタ装置17、27は、排水口121、221と排水弁16、26との間に設けられている。フィルタ装置17、27は、内部に網目状のフィルタ171、271を有しており、そのフィルタ171、271によって、フィルタ装置17、27内を通過する水に含まれるリントやゴミを捕集する。
【0014】
循環経路18、28は、水槽12、22内に貯留されている水を汲み上げて、その汲み上げた水を水槽12、22の上部から再び水槽12、22内に供給するための経路である。循環経路18、28は、水槽12、22の外部に設けられている。循環経路18、28の一方の端部は、フィルタ装置17、27を介して水槽12、22の排水口121、221に接続されており、他方の端部は、水槽12、22の上部に設けられたノズル部181、281に接続されている。ノズル部181、281は、詳細は図示しないが、ノズル部181、281から吐出された水が水槽12、22の中央側へ向かうように構成されている。
【0015】
循環ポンプ19、29は、循環経路18、28上に設けられている。排水弁16、26によって排水経路15、25が閉じられた状態で循環ポンプ19、29が駆動すると、循環ポンプ19、29は、排水口121、221を通して水槽12、22内の水を汲み上げて、ノズル部181、281から再び水槽12、22内へ注水する。これにより、循環ポンプ19、29は、水槽12、22内に貯留されている水を、循環経路18、28を通して循環させる。
【0016】
また、
図1及び
図2に示すように、洗濯機10、20は、それぞれ注水装置30を備えている。注水装置30は、それぞれ外箱11、21の上部に設けられている。注水装置30は、
図1及び
図2に示すように、給水ホース100を介して、例えば図示しない水道の蛇口など外部の水源に接続される。注水装置30は、洗濯処理剤を内部に収容可能に構成されており、水道水や風呂水等、外部から供給された水を受けて洗濯処理剤を水槽12、22内に流し落とす機能を有する。なお、本実施形態において、洗濯処理剤とは、例えば粉末洗剤や液体洗剤等の洗剤、及び柔軟剤や香り付け剤等の仕上げ剤を含む概念である。
【0017】
注水装置30は、
図3に示すように、給水ホース接続口31、給水弁32、33、注水ケース40、及び洗濯処理剤ケース50を有している。給水ホース接続口31は、ホース100を介して水道の蛇口等の給水源に接続される。給水ホース接続口31の下流側は、給水弁32、33を介して注水ケース40に接続されている。本実施形態の場合、給水ホース接続口31の下流側は2つに分岐している。そして、給水ホース接続口31から分岐した一方は給水弁32を介して注水ケース40に接続されており、他方は給水弁33を介して注水ケース40に接続されている。
【0018】
給水弁32、33は、電磁的に開閉動作可能な液体用の開閉弁である。給水弁32、33の流入側は給水ホース接続口31に接続され、吐出側は注水ケース40に接続されている。本実施形態では、2つの給水弁32、33のうち一方の給水弁32を洗剤用給水弁32と称し、他方の給水弁33を仕上げ剤用給水弁33と称する。
【0019】
注水ケース40は、注水装置30の外殻を構成するものであり、例えば樹脂製であって内部に空間を有する箱状に形成されている。この場合、注水ケース40は、内部に収容空間41を有しているとともに、下部に出口42を有している。出口42は、注水ケース40の内部の収容空間41と外部とを連通しており、水槽12、22側へ向かって開口している。この出口42は、注水ケース40内に流入した水を水槽12、22内に注水する機能を有しており、注水口42とも称する。
【0020】
また、注水ケース40は、ケース内流路43、44を有している。ケース内流路43、44は、給水弁32、33と注水ケース40の収容空間41とを接続する流路である。すなわち、ケース内流路43、44は、給水弁32、33を通って注水ケース40内に流入した水を、収容空間41の所定の位置に導くための流路である。
【0021】
この場合、ケース内流路43、44は、洗濯処理剤ケース50が注水ケース40の収容空間41に収容されている状態で洗濯処理剤ケース50の内部に接続されている。そして、給水弁32、33を通った水は、それぞれケース内流路43、44を通って収容空間41内に収容されている洗濯処理剤ケース50内に注がれる。各ケース内流路43、44は、注水ケース40に溝形状を形成すること等により注水ケース40と一体に設けられた構造であっても良いし、注水ケース40とは別部材で構成されていても良い。
【0022】
洗濯処理剤ケース50は、例えば上面側に開口部を有し、注水ケース40の収容空間41に対して出し入れ可能に構成された引出し式の容器である。洗濯処理剤ケース50は、例えば2つの洗濯処理剤収容部51、52を有している。各洗濯処理剤収容部51、52は、それぞれ洗剤又は仕上げ剤を収容する部分である。なお、本実施形態の場合、各洗濯処理剤収容部51、52は、共通する1つの洗濯処理剤ケース50に設けられているが、それぞれ別体のケースとして構成しても良い。
【0023】
また、本実施形態の場合、2つの洗濯処理剤収容部51、52のうち一方、この場合、洗濯処理剤収容部51は、洗濯処理剤として粉末又は液体の洗剤を収容するものである。また、2つの洗濯処理剤収容部51、52のうち他方、この場合、洗濯処理剤収容部52は、洗濯処理剤として柔軟剤や香り付け剤等の液体の仕上げ剤を収容するものである。以下の説明において、各洗濯処理剤収容部51、52を区別する場合は、各洗濯処理剤収容部51、52のうち洗剤を収容する方を洗剤収容部51と称し、仕上げ剤を収容する方を仕上げ剤収容部52と称する。
【0024】
この場合、ケース内流路43、44のうち一方は、洗剤収容部51に接続されており、他方は仕上げ剤収容部52に接続されている。すなわち、2つのケース内流路43、44のうち一方の流路43は、洗剤収容部51へ水を供給するための経路であり、他方の流路44は、仕上げ剤収容部52へ水を供給するための経路である。以下の説明において、各ケース内流路43、44を区別する場合は、ケース内流路43、44のうち洗剤収容部51に接続されている方を洗剤用流路43と称し、仕上げ剤収容部52に接続されている方を仕上げ剤用流路44と称する。
【0025】
洗剤収容部51は、洗剤流出部511を有している。洗剤流出部511は、例えば洗剤収容部51の底部に設けられた1つ又は複数の穴であり、収容空間41内において洗剤収容部51の内部と外部とを連通している。この場合、洗剤流出部511は、注水ケース40の収容空間41における底部に向かって開口している。
【0026】
洗剤用給水弁32を介して洗剤用流路43に流入した水は、収容空間41内に流出し、洗剤収容部51内に注がれる。このとき、洗剤収容部51内に洗剤が収容されていれば、その洗剤は、洗剤収容部51内に注がれた水に押し流されて、洗剤流出部511から洗剤収容部51外へ流れ落ちる。そして、洗剤流出部511から流出した洗剤は、水とともに収容空間41内における底部に流れ、その後、注水ケース40の出口42つまり注水口42から水槽12、22及び回転槽13、23内へ流し落とされる。
【0027】
また、仕上げ剤収容部52は、仕上げ剤流出部521を有している。仕上げ剤流出部521は、仕上げ剤収容部52の底部に設けられたサイフォン構造であり、仕上げ剤収容部52の内部と外部とを連通している。この場合、仕上げ剤流出部521も、注水ケース40の収容空間41における底部に向かって開口している。
【0028】
仕上げ剤用給水弁33を介して仕上げ剤用流路44に流入した水は、収容空間41内に流出し、仕上げ剤収容部52内に注がれる。そして、仕上げ剤収容部52に一定量の水が溜まると、その水は、仕上げ剤流出部521のサイフォン構造によって仕上げ剤流出部521から仕上げ剤収容部52外に流れ落ち、その後、注水口42から水槽12、22及び回転槽13、23内へ注水される。このとき、仕上げ剤収容部52内に仕上げ剤が収容されていれば、その仕上げ剤は、仕上げ剤収容部52から流れ出る水に溶かされて、注水口42から水槽12、22及び回転槽13、23内へ流し落とされる。
【0029】
また、洗濯機10、20は、
図3に示すように、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70を更に備えている。微細気泡発生器60は、水槽12、22に供給する水にナノバブルを含む微細気泡を析出させる機能を有する。本実施形態において、微細気泡発生器60は、洗剤用給水弁32から注水ケース40の出口42つまり注水口42に至る経路上に設けられている。この場合、微細気泡発生器60は、洗剤用流路43上に設けられている。
【0030】
この場合、微細気泡発生器60は、洗剤用流路43を通る水に多量の微細気泡を含ませることで微細気泡水を生成する。本実施形態において微細気泡水とは、微細気泡発生器60を通過することによって、微細気泡発生器60を通過する以前に比べて粒子径がナノオーダーの微細気泡いわゆるウルトラファインバブルを多く含んだ水をいう。すなわち、本実施形態において、微細気泡水とは、何ら処理を行っていない通常の水道水や風呂水等に比べてナノオーダーの微細気泡を多く含んだ水をいう。なお、本実施形態において、ナノオーダーの微細気泡、ナノバブル、及びウルトラファインバブルは、いずれも同義であり、粒子径がナノオーダーの気泡を意味する。
【0031】
ここで、一般に微細気泡は、その気泡の粒子径によって次のように分類されている。例えば、粒子径が数μmから50μm程度つまりマイクロオーダーの気泡は、マイクロバブル又はファインバブルと称されている。これに対し、粒子径が数百nm~数十nm以下つまりナノオーダーの気泡は、上述したようにナノバブル又はウルトラファインバブルと称されている。
【0032】
気泡の粒子径が数百nm~数十nm以下になると、光の波長よりも小さくなるため視認することができなくなり、液体は透明になる。そして、ナノオーダーの微細気泡は、マイクロオーダー以上の気泡に比べて、総界面面積が大きいこと、浮上速度が遅いこと、内部圧力が大きいこと等の特性を有している。例えば、粒子径がマイクロオーダーの気泡は、その浮力によって液体中を急速に上昇し、液体表面で破裂して消滅するため、液体中の滞在時間が比較的短い。一方、粒子径がナノオーダーの微細気泡は、浮力が小さいため液体中での滞在時間が長い。
【0033】
粒子径がナノオーダーの微細気泡を含む微細気泡水は、界面活性剤等を含む洗剤を用いずに、洗濯運転や、水槽12、22及び回転槽13、23の洗浄運転を行った場合でも、水道水に比べてある程度の洗浄性能の向上が見込まれる。しかしながら、粒子径がナノオーダーの微細気泡いわゆるウルトラファインバブルを、界面活性剤が溶けた洗浄液中に混ぜることで、微細気泡を含まない通常の洗浄液で洗浄を行った場合に比べて更に効率良く洗浄性能を向上させることができる。
【0034】
すなわち、ナノオーダーの微細気泡を含む水に洗剤を溶解させるなどして濃縮洗剤水に微細気泡を付与すると、疎水相互作用と称される分子間に働く引力的相互作用によって洗剤中の界面活性剤と微細気泡が吸着し、これにより界面活性剤の凝集つまりミセルがほぐれて水中に分散し易くなる。その結果、界面活性剤の分子が汚れと短時間で反応し易い状態となって洗浄能力が向上する。
【0035】
このため、ナノオーダーの微細気泡を含む水に洗剤を溶解させて洗濯液を生成することで、洗剤中の界面活性剤と微細気泡との相互作用が働き、その結果、水道水に洗剤を溶かしただけの単なる洗濯液と比べて、洗浄能力を格段に高めることができる。また、汚れが乳化されて水中に分散し易くなるため、衣類に汚れが再付着することを防ぐ効果も期待できる。このような理由により、微細気泡水に洗剤を溶かした洗濯液は、通常の水道水に洗剤を溶かした洗濯液よりも洗浄能力が高いものとなっている。その結果、洗濯機10、20は、高い洗浄能力を発揮することができる。
【0036】
なお、微細気泡発生器60は、洗剤用流路43を構成する注水ケース40と別体に形成されていても良いし、一体に構成されていても良い。また、微細気泡発生器60は、洗剤用流路43を構成する注水ケース40に着脱可能に構成されていても良いし、着脱不可に構成されていても良い。
【0037】
本実施形態において、微細気泡発生器60の直径及び全長は、数mm~数十mm程度、具体的には直径が最大約15mmで長さが約10mmに設定されている。そして、微細気泡発生器60は、注水ケース40とは別部材であって、洗剤用流路43に対して着脱可能に構成されている。
【0038】
また、本実施形態において、微細気泡発生器60は、水の通過可能な面積を局所的に縮小することにより微細気泡発生器60を通過する水に微細気泡を含ませて微細気泡水を生成する。具体的には、微細気泡発生器60は、
図4に示すように、絞り部61、上流側ストレート部62、衝突部63、及び下流側ストレート部64を有している。絞り部61、上流側ストレート部62、及び下流側ストレート部64は、微細気泡発生部60の長手方向へ向かって貫いた穴であり、微細気泡発生部60の流路を構成する。
【0039】
絞り部61は、微細気泡発生器60の流入側つまり上流側に設けられている。絞り部61は、微細気泡発生器60の長手方向の上流側端部から途中部分にかけて流路の断面積つまり内径が連続的に徐々に減少するようないわゆる截頭円錐形のテーパ管状に形成されている。上流側ストレート部62は、絞り部61の下流側に設けられている。上流側ストレート部62は、内径が変化しない、すなわち流路の断面積つまり液体の通過可能な面積が変化しない円筒形、いわゆるストレート管状に形成されている。
【0040】
衝突部63は、上流側ストレート部62と下流側ストレート部64との境界部分に設けられている。すなわち、衝突部63は、上流側ストレート部62の下流側の端部でかつ下流側ストレート部64の上流側の端部に設けられている。衝突部63は、微細気泡発生器60における水の通過可能な断面積を局所的に縮小することで、微細気泡発生器60を通過する液体中に微細気泡を発生させることができる。すなわち、衝突部63は、上流側ストレート部62の断面積を局所的に縮小することで、上流側ストレート部62を通過する液体中に微細気泡を発生させることができる。
【0041】
下流側ストレート部64は、衝突部63の下流側つまり微細気泡発生器60の流出側に設けられている。下流側ストレート部64は、上流側ストレート部62と同様に、内径が変化しない、すなわち流路の断面積つまり液体の通過可能な面積が変化しない円筒形、いわゆるストレート管状に形成されている。下流側ストレート部64は、衝突部63を通過した水の速度を高速に維持し、これにより微細気泡の発生を促進させる。
【0042】
なお、本実施形態の場合、微細気泡発生器60は、
図4に示すように、例えば絞り部61、上流側ストレート部62、及び衝突部63を有する上流側の部材601と、下流側ストレート部64を有する下流側の部材602との2つの部材に分割して構成されている。しかし、微細気泡発生器60はこの構成に限られない。微細気泡発生器60は、例えば上流側の部材601と下流側の部材602とを一体に構成し、絞り部61、上流側ストレート部62、衝突部63、及び下流側ストレート部64を1つの部材に設けた構成であっても良い。
【0043】
本実施形態の場合、衝突部63は、
図5に示すように、例えば先端が尖った4本の棒状の部分で構成され、ストレート部62の内周面からこのストレート部62の断面における中心方向へ向かって突出している。4本の衝突部63は、ストレート部62の断面の周方向に向かって相互に等間隔に離間した状態で配置されている。この場合、各衝突部63の下流側の面は、平坦面に形成されている。
【0044】
洗剤用給水弁32が開放されて、微細気泡発生器60の上流側に水が流入すると、截頭円錐テーパ形状に縮小するように形成された絞り部61において流路断面積が絞られることによって、流体力学のいわゆるベンチュリ効果により流速が高められる。そして、その高速流がストレート部62を通過する際に衝突部63に衝突することで圧力が急激に低下される。これにより、微細気泡発生器60は、微細気泡発生器60内を通過する水の中に溶存している空気をナノオーダーの微細な気泡として多量に析出させて、洗剤用流路43にナノバブルを多量に含む微細気泡水を供給することができる。
【0045】
本実施形態の微細気泡発生器60は、外部から気体の供給を能動的つまり積極的に得ることなく、微細気泡発生器60を通過する水にナノバブルを多量に含ませた微細気泡水を生成することができる。すなわち、微細気泡発生器60は、通常の水圧つまり水道の圧力以外には、微細気泡を発生させるための専用のポンプ等の駆動源を必要としない。
【0046】
なお、例えば微細気泡発生器60は、絞り部61又はストレート部62の内部と外部とを連通する穴を有し、微細気泡発生器60内を流れる水に外部の空気を取り込むようにしても良い。これによれば、水中に溶存する空気の量を増大させることができ、その結果、析出される微細気泡の量も増大させることができる。
【0047】
各微細気泡発生器60で生成された微細気泡水は、その後、金属イオン供給器70を通過して洗剤収容部51に供給された後、洗剤収容部51に収容された洗濯処理剤と共に注水口42から水槽12、22及び回転槽13、23内へ注がれる。
【0048】
金属イオン供給器70は、例えば金属イオン源71を有している。金属イオン供給器70は、水槽12、22に供給する水又は水槽12、22に供給された水に、例えば抗菌性のように菌の増殖を抑制する機能を有する金属イオンを金属イオン源71から溶出させて添加し、これにより金属イオン供給器70を通過した水に抗菌作用を付加して抗菌水を生成する機能を有する。金属イオン供給器70が添加する金属イオンとしては、例えば銀イオン(Ag+)や銅イオン(Cu+)などプラス電位のものが望ましい。このような銀イオンや銅イオンなどは、除菌・抗菌作用といった菌の増殖を抑制する機能を有していることが知られている。
【0049】
水に対して金属イオンを添加する方法は、大別して次の2つの方法がある。1つは、水路上、この場合、洗剤用流路43上に金属イオン源として添加したい金属イオンを含む金属電極を配置し、その金属電極に電圧を印加して電気分解することで金属イオンを溶出させる方法である。例えば、洗剤用流路43を流れる水に銀イオン(Ag+)を添加したい場合は、洗剤用流路43に銀電極を配置する。これによれば、電圧を印加するタイミングや期間、印加電圧の大きさを制御することで、水に添加する金属イオンの発生量時期や期間、発生量等を任意に調整することができる。
【0050】
もう1つは、水路上に金属イオン源として添加したい金属イオンを含む金属イオン添加剤を配置し、金属イオンを水に溶解させる方法である。例えば、洗剤用流路43を流れる水に銀イオン(Ag+)を添加したい場合は、洗剤用流路43に銀イオン(Ag+)を添加する銀イオン添加剤を配置する。これによれば、金属電極やこの金属電極に電圧を印加するための電源等の特別な構成を必要とせず、また、特別な制御や駆動電力を必要としないため、比較的簡単で安価に構成することができる。
【0051】
金属イオン添加剤としては、例えば緩水溶性ガラスに有効成分としての金属イオンを溶かし込み、粉状、粒状、又はペレット状、若しくはハニカム構造のようして内部を通水可能に形成したものがある。金属イオン添加剤に水が接触することにより、その水中に金属イオンが徐々に溶け出し、これにより水に対して金属イオンが添加される。この場合、金属イオン添加剤は、長期間、例えば10年間程度交換することなく使用できるように、水に対する溶出量や容器に収容する量が調整されている。
【0052】
本実施形態の場合、金属イオン供給器70は、微細気泡発生器60を通過してナノーダーの微細気泡を含んだ水に金属イオンを溶出させて添加することができる位置に設けられている。つまり、金属イオン供給器70は、微細気泡発生器60を通過して生成された微細気泡水が接触する位置に設けられている。
【0053】
本実施形態の場合、金属イオン供給器70は、微細気泡発生器60の下流側に設けられている。換言すれば、微細気泡発生器60は、金属イオン供給器70の上流側に設けられている。具体的には、金属イオン供給器70は、洗剤用給水弁32から洗剤収容部51に至る経路であって微細気泡発生器60が設けられた経路と同一の経路上に設けられている。この場合、金属イオン供給器70は、微細気泡発生器60が設けられている洗剤用流路43と同じ洗剤用流路43上にあって、微細気泡発生器60の下流側に設けられている。
【0054】
このため、洗剤用流路43を通る水は、まず微細気泡発生器60を通過してナノバブルを多量に含み、その後、金属イオン供給器70を通過して金属イオンが添加される。これにより、ナノオーダーの微細気泡いわゆるウルトラファインバブルにより洗浄能力やすすぎ能力が向上し、かつ、金属イオンにより除菌・抗菌作用が付加された水が、水槽12、22に注水される。
【0055】
ここで、ウルトラファインバブルすなわちナノバブルは、粒径がナノオーダーであり、また、マイナスの電位を帯びている。一方、銀イオン(Ag+)や銅イオン(Cu+)は、イオン径がピコオーダーであるためナノバブルより十分に小さく、また、プラスの電位を有している。そのため、ナノバブルを含む微細気泡水を金属イオン供給器70に通過させて金属イオンを溶出させると、マイナスの電位を帯びたナノバブルの周囲にプラス電位の金属イオンが吸着される。これにより、ナノバブルを含まない通常の水を用いた場合に比べて、金属イオン供給器70による金属イオンの溶出効率が向上する。そのため、少量の金属イオン源であっても、金属イオン源に接触する水に対して短時間で多量の金属イオンを添加することができる。そして、水中のナノバブルの表面に金属イオンが配位することで、ナノバブルは安定化して消滅し難くなり、これによりナノバブルが水中に滞留する期間も長くなる。
【0056】
本実施形態の洗濯機10、20は、回転槽13、23内の洗濯物を洗う洗濯運転や、回転槽13、23内の洗濯物をすすぐすすぎ運転、又は、水槽12、22及び回転槽13、23を洗浄する槽洗浄運転等を行う際に、微細気泡発生器60を通ってナノバブルを多量に含み、かつ、金属イオン供給器70を通って金属イオンを多量に含んだ水を利用する。
【0057】
この場合、ナノバブル及び金属イオンを多量に含む水に洗剤を溶かし、洗濯物を洗う洗濯水として使用した場合には、ナノバブルと洗剤に含まれる界面活性剤との相互作用により洗剤の洗浄能力を向上させることができる。更に、金属イオンの作用により水に含まれる雑菌や洗濯物に付着している雑菌を除菌し、洗濯物に雑菌等が付着することを抑制することで、洗濯物を清潔に保つことができるとともに例えば生乾きの際の臭いを抑制することができる。
【0058】
また、ナノバブル及び金属イオンを多量に含む水を、洗濯物をすすぐすすぎ水として使用した場合には、ナノバブルの作用により洗濯物の汚れや残存している洗剤成分つまり界面活性剤成分を吸着し、これによりすすぎの性能が向上する。更に、ナノバブルの作用により洗濯物の表面から汚れや洗剤成分が除去され易くなることで、洗濯物の表面に金属イオンが付着し易くなる。これにより、洗濯物の洗浄性能を向上させつつ除菌及び抗菌作用といった菌の増殖抑制効果を更に向上させることができる。特に、すすぎ行程を1回、或いは複数回行う運転においては、少なくとも最終のすすぎ行程で使用するすすぎ水にナノバブル及び金属イオンを多量に含ませることで、そのまま脱水行程を経て乾燥することにより衣類に抗菌機能を残すことができ、その衣類の着用時にも清潔さを維持することができる。
【0059】
また、ナノバブル及び金属イオンを多量に含む水を、水槽12、22及び回転槽13、23を洗浄するための洗浄水として使用した場合には、ナノバブルの作用により水槽12、22の内側表面、及び回転槽13、23の内側及び外側の表面が効果的に洗浄される。更に、水中に含まれる金属イオンが水槽12、22の内側表面、及び回転槽13、23の内側及び外側の表面に付着することで、水槽12、22及び回転槽13、23に金属イオンの除菌・抗菌作用が添加される。これにより、水槽12、22及び回転槽13、23を清潔に保つことができる。
【0060】
以上説明した実施形態によれば、洗濯機10、20は、水槽12、22と、微細気泡発生器60と、金属イオン供給器70と、を備えている。微細気泡発生器60は、水槽12、22に供給する水にナノオーダーのナノバブルいわゆるウルトラファインバブルを含む微細気泡を析出させる機能を有する。すなわち、微細気泡発生器60は、水槽12、22に供給する水に多量のナノバブルを含ませて微細気泡水に変質させる機能を有する。金属イオン供給器70は、水槽12、22に供給する水又は水槽12、22に供給された水に除菌・抗菌性といった菌の増殖抑制作用を有する金属イオンを溶出させる機能を有する。この場合、金属イオン供給器70は、水槽12、22に供給する水に金属イオンを含ませて除菌抗菌水にする機能を有する。
【0061】
これによれば、洗浄能力の向上に寄与するナノオーダーの微細気泡と、除菌・抗菌作用のように菌の増殖抑制作用を発揮する金属イオンとの両方を含んだ水を用いて、洗濯物を洗う洗濯運転や、洗濯物をすすぐすすぎ運転、又は水槽12、22及び回転槽13、23を洗浄する槽洗浄運転等を行うことで、水道水等の通常の水を用いた場合に比べて、洗濯物や水槽12、22及び回転槽13、23に対する洗浄能力が向上するのと同時に、洗濯物や水槽12、22及び回転槽13、23に対する除菌・抗菌効果も得られる。
【0062】
そして、ナノオーダーの微細気泡によって洗浄力を高めて洗濯物の汚れを落とすことで、洗濯物に金属イオンが付着し易くなる。これにより、従来のように微細気泡を含まずに金属イオンのみ含む水で洗い等を行った場合に比べて、より多くの金属イオンを洗濯物に付着させることができ、その結果、金属イオンが洗濯物に及ぼす除菌・抗菌効果の向上を図ることができる。
【0063】
更に、マイナス電位のナノバブルとプラス電位の金属イオンを同時に用いることで、ナノバブルの周囲に金属イオンが配位し、これにより、ナノバブル及び金属イオンが安定化する。その結果、ナノバブルや金属イオンが水中に存在する期間を長期間化することができ、ナノバブルや金属イオンがその効果を発揮する前に消失してしまうことを抑制できる。その結果、ナノバブル及び金属イオンをそれぞれ単独で使用した場合に比べて、ナノバブルと金属イオンとの相乗効果により、ナノバブルの洗浄効果や金属イオンの除菌及び抗菌作用をより効率良く長期的に発揮させることができる。
【0064】
本実施形態において、微細気泡発生器60は、金属イオン供給器70の上流側に設けられている。そして、金属イオン供給器70は、微細気泡発生器60を通過してナノオーダーの微細気泡を多量に含んだ水に、除菌及び抗菌性といった菌の増殖を抑制する機能を有する金属イオンを溶出させることができる位置に設けられている。すなわち、金属イオン供給器70は、微細気泡水に接触することで、その微細気泡水の中に金属イオンを溶出する。
【0065】
これによれば、金属イオン供給器70は、ナノオーダーの微細気泡を含まない単純な水を用いた場合に比べて、水中に多くの金属イオンを添加することができる。そのため、本実施形態によれば、金属イオン源が少量であっても、短時間で多量の金属イオンを添加することができ、除菌抗菌水の除菌・抗菌効果を更に高いものとすることができる。
【0066】
また、洗濯機10、20は、注水装置30を備えている。注水装置30は、給水弁32、33と、洗濯処理剤収容部51、52と、注水ケース40と、を備えている。給水弁32、33は、水道の蛇口など外部の水源に接続される。洗濯処理剤収容部51、52は、洗剤や柔軟剤等の洗濯処理剤を収容する。
【0067】
注水ケース40は、洗濯処理剤収容部51、52、この場合、洗濯処理剤ケース50を収容し、給水弁32、33を介して外部の水源から供給された水を受けて水槽12、22に注水する。そして、金属イオン供給器70は、給水弁32、33から注水ケース40の出口42に至る経路上、この場合、洗剤用給水弁32から注水口42に至る経路である洗剤用流路43上に設けられている。
【0068】
これによれば、金属イオン供給器70を通って金属イオンが添加された水つまり除菌抗菌水は、一旦注水ケース40内に吐出される。このため、除菌抗菌水に含まれる金属イオンが注水ケース40の内側表面に付着して、除菌及び抗菌作用を発揮させることができる。これにより、注水ケース40内に残留した洗濯処理剤によって注水ケース40内に雑菌が繁殖することを抑制できるとともに、更にカビや黒ずみ、ぬめりの発生も抑制でき、その結果、注水ケース40を清潔に保つことができる。
【0069】
また、本実施形態において、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、給水弁32、33から洗濯処理剤収容部51、52に至る経路であって同一の経路上に設けられている。この場合、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、洗剤用給水弁32から洗剤収容部51に至る経路である洗剤用流路43上に設けられている。これによれば、微細気泡と金属イオンとが、洗剤用流路43から洗剤収容部51に吐出されて空気に触れる以前に、洗剤用流路43を流れる最中の水中で混合するため、微細気泡と金属イオンとの相互作用を更に効果的に引き出すことができる。
【0070】
なお、本実施形態において、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、洗剤用流路43上に設けられていているが、これに限られず、仕上げ剤用流路44上に設けても良い。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図6を参照して説明する。
本実施形態において、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、洗濯処理剤収容部51、52を通らない経路であって同一の経路上に設けられている。具体的には、本実施形態の注水装置30は、洗剤用給水弁32及び仕上げ剤用給水弁33に加えて、バイパス用給水弁34を更に有している。また、注水ケース40は、ケース内流路として、洗剤用流路43及び仕上げ剤用流路44に加えて、バイパス用流路45を更に有している。
【0072】
バイパス用給水弁34は、他の給水弁32、33と同様に、電磁的に開閉動作可能な液体用の開閉弁である。バイパス用給水弁34の流入側は、給水ホース接続口31に接続され、吐出側は注水ケース40内に設けられたバイパス用流路45に接続されている。すなわち、本実施形態の場合、給水ホース接続口31の下流側は3つに分岐している。そして、給水ホース接続口31から分岐した先は、それぞれ洗剤用給水弁32、仕上げ剤用給水弁33、及びバイパス用給水弁34を介して注水ケース40に接続されている。
【0073】
バイパス用流路45は、注水ケース40内に設けられた流路であり、バイパス用給水弁34と注水ケース40の収容空間41とを接続している。バイパス用給水弁34は、収容空間41内でかつ洗濯処理剤収容部51、52の外部に接続されている。この場合、バイパス用給水弁34からバイパス用流路45に流入した水は、洗濯処理剤ケース50と注水ケース40との間の空間に注がれる。
【0074】
そして、本実施形態において、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、バイパス用経路45上に設けられている。この場合、微細気泡発生器60は、金属イオン供給器70の上流側に設けられている。
この構成によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0075】
ここで、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、流路を流れる水の抵抗となる。このため、水圧が同一であれば、流路を流れる水の流量は、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70を通さない場合に比べて、通した場合の方が低下しがちである。これに対し、本実施形態において、注水装置30は、洗剤用流路43及び仕上げ剤用流路44とは別に、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70専用の流路としてバイパス用流路45を備えている。これによれば、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70を設けることにより単位時間当たりの注水量が低下してしまうことを抑制することができる。その結果、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70を設けることにより水槽12、22に対する注水時間が延びてしまうことを抑制することができる。
【0076】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図7を参照して説明する。
本実施形態において、微細気泡発生器60は、給水弁32、33から洗濯処理剤収容部51、52に至る経路上に設けられている。この場合、微細気泡発生器60は、上記第1実施形態と同様に、洗剤用給水弁32から洗剤収容部51に至る洗剤用流路43上に設けられている。
【0077】
これに対し、金属イオン供給器70は、洗濯処理剤収容部51、52から注水ケース40の出口42つまり注水口42に至る経路上に設けられている。本実施形態の場合、金属イオン供給器70は、洗剤流出部511の下流側に設けられている。この場合、金属イオン供給器70は、洗濯処理剤ケース50の底面裏側にあって、洗剤流出部511に対応する位置に取り付けられている。
【0078】
この構成において、洗剤用流路43上の微細気泡発生器60を通過してナノバブルを多量に含む水は、洗剤用流路43から流出して洗剤収容部51に注がれる。そして、洗剤収容部51に注がれた水は、洗剤流出部511から洗剤収容部51外に流出し、金属イオン供給器70を通過して金属イオンが添加される。その後、ナノバブル及び金属イオンを含む水は、注水口42から水槽12、22内に注がれる。
この構成によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0079】
また、金属イオン供給器70は、洗濯処理剤ケース50に設けられている。洗濯処理剤ケース50は、注水ケース40に対して出し入れ可能に構成されている。そのため、金属イオン供給器70の金属イオン源71が消耗して交換又は追加する際に、ユーザは、洗濯処理剤ケース50を取り出すことで、金属イオン供給器70を露出させて金属イオン源71を交換又は追加することができる。これにより、金属イオン供給器70の金属イオン源71を交換又は追加の作業を簡単にすることができる。
【0080】
なお、金属イオン供給器70は、
図8に示すように、注水ケース40の内部、例えば注水口42内に設けられても良い。金属イオン供給器70の交換の作業性以外の作用効果について、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0081】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図9を参照して説明する。
本実施形態において、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、その位置関係が上記第1実施形態のものと逆に構成されている。すなわち、本実施形態において、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、洗剤用流路43上に設けられている。
【0082】
この場合、金属イオン供給器70は、微細気泡発生器60の上流側に設けられている。換言すれば、微細気泡発生器60は、金属イオン供給器70の下流側に設けられている。そして、微細気泡発生器60は、金属イオン供給器70の下流側であって、金属イオン供給器70を通過して金属イオンを含んだ水が通過する位置に設けられている。
【0083】
これによれば、ナノバブルを含む微細気泡による洗浄効果と金属イオンによる抗菌作用について、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、これによれば、微細気泡発生器60は、金属イオン供給器70を通過して金属イオンを含んだ水を用いて微細気泡を析出させる。このとき、プラスの電位の金属イオンが、マイナスの電位となるナノバブルの周囲に配位することで、ナノバブルが安定化する。これにより、ナノバブルが消滅し難くなって、ナノバブルを含む微細気泡の生成効率を向上させることができる。
【0084】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図10を参照して説明する。
本実施形態において、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、その位置関係が上記第2実施形態のものと逆に構成されている。すなわち、本実施形態において、微細気泡発生器60及び金属イオン供給器70は、バイパス用流路45上に設けられている。
【0085】
この場合、金属イオン供給器70は、微細気泡発生器60の上流側に設けられている。換言すれば、微細気泡発生器60は、金属イオン供給器70の下流側に設けられている。そして、微細気泡発生器60は、金属イオン供給器70の下流側であって、金属イオン供給器70を通過して金属イオンを含んだ水が通過する位置に設けられている。
【0086】
これによれば、ナノバブルを含む微細気泡による洗浄効果と金属イオンによる抗菌作用について、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、ナノバブルを含む微細気泡の生成効率の向上については、上記第4実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0087】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、
図11を参照して説明する。
本実施形態は、微細気泡発生器60と金属イオン供給器70の位置関係が上記第2、第5実施形態と異なる。本実施形態において、微細気泡発生器60と金属イオン供給器70とのうち、一方は給水弁33、34から洗濯処理剤収容部51、52に至る経路上に設けられ、他方は洗濯処理剤収容部51、52を通らない経路上に設けられている。そして、微細気泡発生器60を通った水と、金属イオン供給器70を通った水とは、注水ケース40内で合流して注水口42から水槽12、22に注水される。この場合、微細気泡発生器60は、洗剤用流路43上に設けられている。これに対し、金属イオン供給器70は、バイパス用流路45上に設けられている。
【0088】
これによれば、ナノバブルを含む微細気泡による洗浄効果と金属イオンによる抗菌作用について、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
さらに、本実施形態によれば、洗剤用給水弁32とバイパス用給水弁34とを開閉制御することにより、ナノオーダーの微細気泡を含む微細気泡水、金属イオンを含む除菌抗菌水、及び微細気泡と金属イオンとの両方を含む水と、を選択的に水槽12、22に供給することができる。その結果、洗濯機10、20の運転の各工程に適した水を供給することができる。
【0089】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について
図12~
図14を参照して説明する。
本実施形態においても、微細気泡発生器60は、金属イオン供給器70の上流側に設けられている。そして、金属イオン供給器70は、微細気泡発生器60を通過して微細気泡を含んだ水に金属イオンを溶出させることができる位置に設けられている。すなわち、微細気泡発生器60は、
図12に示すように、給水弁32、33から注水ケース40の出口つまり注水口42に至る経路上に設けられている。具体的には、微細気泡発生器60は、洗剤用流路43上に設けられている。
【0090】
これに対し、金属イオン供給器70は、注水ケース40の出口つまり注水口42よりも下流側に設けられている。この場合、金属イオン供給器70は、
図13及び
図14に示すように、水槽12、22の内側面に設けられている。このため、微細気泡発生器60を通過して微細気泡が含まれた水は、水槽12、22内に注水され、その後、水槽12、22内において金属イオン供給器70に接触する。すなわち、金属イオン供給器70は、水槽12、22内において、ナノオーダーの微細気泡を含む微細気泡水に接触し、金属イオンを溶出させて添加する。
【0091】
これによっても、ナノバブルを含む微細気泡による洗浄効果と金属イオンによる抗菌作用については、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、例えば洗い運転やすすぎ運転の際、水槽12、22内に貯留されている洗濯水やすすぎ水は、金属イオン供給器70と接触する。そのため、金属イオン供給器70による金属イオンの溶出期間を長く確保することができ、これにより、より多くの金属イオンを添加することができる。その結果、金属イオンが洗濯物に及ぼす除菌・抗菌効果を更に向上させることができる。
【0092】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について
図15及び
図16を参照して説明する。
本実施形態は、金属イオン供給器70の位置が、上記第7実施形態と異なる。この場合、洗濯機10、20は、上記第7実施形態と同じ構成の注水装置30すなわち
図12に示す注水装置30を備えている。そして、本実施形態において、金属イオン供給器70は、
図15及び
図16に示すように、循環経路28上に設けられている。また、循環経路28の最上流を排水口121、221とし、循環経路28の最下流をノズル部181、271とした場合、金属イオン供給器70は、フィルタ装置17、27の下流側に設けられている。
【0093】
これによっても、ナノバブルを含む微細気泡による洗浄効果と金属イオンによる除菌・抗菌作用については、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、例えば洗い運転やすすぎ運転の際に循環ポンプ19、29を駆動させて洗濯水やすすぎ水を循環させることで、金属イオン供給器70から金属イオンを添加させ続けることができる。これによっても、金属イオン供給器70による金属イオンの溶出期間を長く確保することができるため、より多くの金属イオンを添加することができる。その結果、金属イオンが洗濯物に及ぼす除菌・抗菌効果を更に向上させることができる。
【0094】
なお、上記第7実施形態及び第8実施形態において、微細気泡発生器60は、例えば
図17に示すように、洗剤用流路43と仕上げ剤用流路44との両方に設けられていても良い。また、微細気泡発生器60は、例えば
図18に示すように、洗剤用流路43と仕上げ剤用流路44とには設けられておらず、バイパス用流路45に設けられていても良い。更に微細気泡発生器60は、
図19に示すように、洗剤用流路43と仕上げ剤用流路44とバイパス用流路45との全てに設けられていても良い。
【0095】
なお、上記各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変更は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
図面中、10、20は洗濯機、12、22は水槽、18、28は循環経路、32は洗剤用給水弁(給水弁)、33は仕上げ剤用給水弁(給水弁)、34はバイパス用給水弁(給水弁)、40は注水ケース、42は注水口(注水ケースの出口)、43は洗剤用流路(ケース内流路)、44は仕上げ剤用流路(ケース内流路)、45はバイパス用流路(ケース内流路)、50は洗濯処理剤ケース、51は洗剤収容部(洗濯処理剤収容部)、52は仕上げ剤収容部(洗濯処理剤収容部)、60は微細気泡発生器、70は金属イオン供給器、を示す。