(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ギヤドモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/06 20060101AFI20230907BHJP
F16H 1/20 20060101ALI20230907BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20230907BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20230907BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16H1/20
F16H1/46
F16H25/20 Z
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2019140039
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】陳 ヒョンジュ
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-035425(JP,A)
【文献】特開昭59-019757(JP,A)
【文献】実開昭52-100914(JP,U)
【文献】特開昭61-261587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
F16H 1/20
F16H 1/46
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸線に沿って積層される複数のモータを有するモータ部と、
前記モータの動力を伝達する伝達機構と、
前記モータ部および前記伝達機構を支持するフレームと、を備え、
前記フレームは、
前記モータ部の軸方向一方側に位置し前記伝達機構を支持する支持部と、
前記支持部から軸方向他方側に向かって前記モータ部の側部を延びる梁部と、を有し、
前記モータ部は、軸方向他方側の端部から前記梁部側に延びて前記梁部に固定される第1連結部材を有する、
ギヤドモータ。
【請求項2】
前記梁部の軸方向他方側を向く端面には凹部が設けられ、
前記第1連結部材は、前記凹部に挿入される挿入部を有する、請求項1に記載のギヤドモータ。
【請求項3】
前記梁部の軸方向他方側を向く端面には凸部が設けられ、
前記第1連結部材には、前記凸部が挿入される切欠部が設けられる、請求項1又は2に記載のギヤドモータ。
【請求項4】
前記梁部は、軸方向に沿って延びる被固定面を有し、
前記第1連結部材は、前記
被固定面に溶接固定される、請求項1~3の何れか一項に記載のギヤドモータ。
【請求項5】
前記モータ部は、複数の前記モータ同士の間から延び出て前記梁部に固定される第2連結部材を有する、
請求項1~4の何れか一項に記載のギヤドモータ。
【請求項6】
前記第1連結部材および前記第2連結部材は、板状である、請求項5に記載のギヤドモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の電子機器の精密化に伴い、より薄型かつ高出力のギヤドモータの開発が進められている。例えば、特許文献1には、スライド機構を備えたモバイル電子機器用のギヤボックス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にモータを高出力化するためには、モータの径方向寸法を大型化することがなされる。しかしながら、薄型の電子機器に搭載されるモータにおいては、径方向寸法を大型化することができない。そこで本発明者らは、複数のモータを軸方向に沿って積層することで高出力を得ることを想到した。しかしながら、この場合、モータの支持が不安定になる。また、一方で小型のギヤドモータにおいては、モータを締結して支持する構造を採用すると複雑化して組み立てコストが高まるという問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記問題点に鑑みて、製造コストを抑制しつつモータを安定的に支持できるギヤドモータの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のギヤドモータの一つの態様は、モータ軸線に沿って積層される複数のモータを有するモータ部と、前記モータの動力を伝達する伝達機構と、前記モータ部および前記伝達機構を支持するフレームと、を備える。前記フレームは、前記モータ部の軸方向一方側に位置し前記伝達機構を支持する支持部と、前記支持部から軸方向他方側に向かって前記モータ部の側部を延びる梁部と、を有する。前記モータ部は、軸方向他方側の端部から前記梁部側に延びて前記梁部に固定される第1連結部材を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、製造コストを抑制しつつモータを安定的に支持できるギヤドモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のギヤドモータの斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のギヤドモータの断面図である。
【
図3】
図3は、変形例のギヤドモータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るギヤドモータについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明において特に断りのない限り、モータ軸線J1に平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、-Z側を単に軸方向一方側と呼び、+Z側を、単に軸方向他方側と呼ぶ。
【0011】
図1は、ギヤドモータ1の斜視図である。
図2は、ギヤドモータ1の断面図である。本実施形態のギヤドモータ1は、Y軸方向に沿う寸法が抑制された薄型の電子機器に搭載される。
【0012】
図2に示すように、ギヤドモータ1は、モータ部20と、モータ部20の動力を伝達し出力する伝達機構2と、モータ部20および伝達機構2を支持するフレーム10と、蓋部材19と、を有する。
【0013】
伝達機構2は、遊星歯車機構32と、ギヤ列4と、スライド機構5と、を有する。ギヤ列4は、ドライブギヤ41と中間ギヤ42とカウンタギヤ43とを有する。モータ部20、遊星歯車機構32およびドライブギヤ41は、モータ軸線J1に沿って配置される。中間ギヤ42は、中間軸線J2に沿って配置される。スライド機構5およびカウンタギヤ43は、スライド軸線J3に沿って配置される。
【0014】
モータ軸線J1、中間軸線J2およびスライド軸線J3は、Z軸方向に沿って、互いに平行に延びる。すなわち、中間軸線J2およびスライド軸線J3は、モータ軸線J1と平行である。モータ軸線J1、中間軸線J2およびスライド軸線J3、軸方向から見てX軸方向に直線状に並ぶ。
以下、ギヤドモータ1の各部について詳細に説明する。
【0015】
<モータ部>
モータ部20は、モータ軸線J1に沿って延びる。モータ部20は、全体としてモータ軸線J1を中心とする円柱状である。モータ部20は、軸方向の寸法が、直径に対し2倍以上である。
【0016】
モータ部20は、軸方向に積層される複数(本実施形態では2つ)のモータ21を有する。本実施形態において、モータ21は、ステッピングモータである。モータ21は、モータ軸線J1周りに回転するロータ21aと、ロータ21aをモータ軸線J1の径方向外側から囲むステータ21bと、を有する。
【0017】
複数のモータ21のロータ21a同士は軸方向に繋がり単一の連結ロータ21cを構成する。連結ロータ21cは、モータ軸線J1を中心として軸方向に延びるモータシャフト21dを有する。一方で、複数のモータ21のステータ21b同士は、軸方向に積層され溶接等の結合手段によって互いに結合される。
【0018】
本実施形態によれば、モータ部20が軸方向に積層された複数のモータ21を有するため、複数のモータ21の動力を連結ロータ21cから合算して出力することができる。また、複数のモータ21が軸方向に並ぶため、モータ部20の出力を大きくしつつモータ部20がモータ軸線J1の径方向に大型化することを抑制でき、当該ギヤドモータ1が搭載される電子機器の薄型化を図ることができる。
【0019】
図1に示すように、モータ部20は、軸方向他方側の端部に位置する連結部材(第1連結部材)28を有する。モータ部20の軸方向他方側の端部は、連結部材28においてフレーム10に固定される。また、モータ部20の軸方向一方側の端部は、遊星歯車機構32に固定される。
【0020】
連結部材28は、金属材料から構成される。また、連結部材28は、板状である。このため、連結部材28は、プレス加工によって成型することができ、安価に製造できる。
【0021】
連結部材28は、円盤部28aと、円盤部28aの外縁からモータ軸線J1の径方向外側に延びる挿入部28bと、を有する。円盤部28aは、モータ軸線J1を中心とする円形である。円盤部28aは、溶接などの固定手段によって、最も軸方向他方側に位置するモータ21の軸方向他方側を向く端面に固定される。一方で、挿入部28bは、溶接などの固定手段によって、フレーム10に固定される。挿入部28bとフレーム10との工程構造については、後段においてより詳細に説明する。
【0022】
<遊星歯車機構>
図2に示すように、遊星歯車機構32は、モータ部20に接続される。遊星歯車機構32は、モータ部20から出力された動力を減速する。
【0023】
遊星歯車機構32は、太陽ギヤ33aと、3つの遊星ギヤ33bと、キャリア33cと、筒状部35と、ドライブシャフト30と、を有する。
【0024】
筒状部35は、モータ軸線J1を中心として軸方向に延びる筒状である。筒状部35は、軸方向他方側の開口に設けられた蓋部35bを有する。蓋部35bには、モータシャフト21dが通過する挿通孔が設けられる。筒状部35の内部空間には、遊星歯車機構32の他の部材が収容される。筒状部35は、モータ軸線J1の径方向内側を向く内周面に、インターナルギヤを有する。筒状部35のインターナルギヤには、遊星ギヤ33bが噛み合う。
【0025】
筒状部35の軸方向一方側の端部は、第1溶接部8Aによってフレーム10に固定されている。このため、筒状部35は、フレーム10に対して回転しない。また、筒状部35の軸方向他方側の端部は、第2溶接部8Bによってモータ部20の軸方向一方側の端部に固定されている。したがって、モータ部20は、軸方向一方側の端部において、筒状部35を介しフレーム10に固定される。
【0026】
太陽ギヤ33aは、モータシャフト21dに固定される。太陽ギヤ33aは、モータシャフト21dとともにモータ軸線J1を中心として回転する。3つの遊星ギヤ33bは、モータ軸線J1の周方向に等間隔に配置される。3つの遊星ギヤ33bは、太陽ギヤ33aに噛み合う。3つの遊星ギヤ33bは、太陽ギヤ33aの回転に伴い、モータ軸線J1の周方向に公転回転する。キャリア33cは、円盤部と、円盤部から軸方向一方側に延びて遊星ギヤ33bを回転可能に支持する3本のサブシャフトと、を有する。キャリア33cは、3つの遊星ギヤ33bのモータ軸線J1を中心とする公転回転に伴い、モータ軸線J1を中心として回転する。キャリア33cは、筒状部35の軸方向他方側の端部に装着された滑り軸受35aによって回転可能に支持される。キャリア33cの軸方向他方側の端面には、保持穴33dが設けられる。
【0027】
ドライブシャフト30は、保持穴33dに挿入される。ドライブシャフト30は、遊星歯車機構32から軸方向一方側に延び出る。ドライブシャフト30は、モータ部20の軸方向一方側において、キャリア33cとともにモータ軸線J1周りに回転する。
【0028】
<スライド機構>
スライド機構5は、図示略の外部装置に接続され外部装置に動力を伝える。スライド機構5は、軸方向に延びるリードスクリュー51およびガイドシャフト52と、リードスクリュー51およびガイドシャフト52に挿入されるスライドナット53とを有する。
【0029】
リードスクリュー51は、スライド軸線J3に沿って延びる。リードスクリュー51の外周面には、雄ねじが設けられる。リードスクリュー51は、ギヤ列4を介して伝わるモータ部20の動力によってスライド軸線J3周りに回転する。
【0030】
ガイドシャフト52は、リードスクリュー51と平行に延びる。すなわち、ガイドシャフト52は、スライド軸線J3の軸方向に延びる。ガイドシャフト52は、リードスクリュー51に対して-X側に位置する。ガイドシャフト52の両端部は、それぞれフレーム10に固定される。すなわち、ガイドシャフト52は、フレーム10に支持される。
【0031】
スライドナット53は、リードスクリュー51が挿入されるナット孔53nと、ガイドシャフト52が挿入されるスライド孔53sと、を有する。ナット孔53nの内周面には、リードスクリュー51の雄ねじが嵌る雌ねじが設けられる。スライド孔53sの内周面は、ガイドシャフト52の外周面が接触する。
【0032】
また、スライドナット53は、ベース部53aと、ベース部53aの内部に埋め込まれる滑動部53bと、を有する。滑動部53bは、低摩擦材料から構成される。滑動部53bは、ナット孔53nおよびスライド孔53sの内周面を構成する。スライドナット53は、ガイドシャフト52のスライド軸線J3周りの回転に伴い、ガイドシャフト52にガイドされて軸方向に移動する。
【0033】
<ギヤ列>
ギヤ列4は、ドライブシャフト30からリードスクリュー51に動力を伝達する。ギヤ列4は、ドライブギヤ41と、中間ギヤ42と、カウンタギヤ43と、を有する。ドライブギヤ41、中間ギヤ42およびカウンタギヤ43は、X軸方向に沿ってこの順で並び動力を伝達する。
【0034】
ドライブギヤ41は、ドライブシャフト30の外周面に一体的に設けられる。したがって、ドライブギヤ41は、ドライブシャフト30とともにモータ軸線J1周りに回転する。
【0035】
カウンタギヤ43は、リードスクリュー51に固定される。ドライブギヤ41は、リードスクリュー51とともにスライド軸線J3周りに回転する。
【0036】
中間ギヤ42は、フレーム10から軸方向一方側に延び出る中間シャフト11aに回転可能に支持される。中間シャフト11aは、中間軸線J2に沿って延びる。したがって、中間ギヤ42は、中間軸線J2周りに回転する。
【0037】
中間ギヤ42は、第1ギヤ42aおよび第2ギヤ42bを有する2段ギヤである。第1ギヤ42aは、ドライブギヤ41に噛み合う。第2ギヤ42bは、カウンタギヤ43に噛み合う。第2ギヤ42bは、第1ギヤ42aより小径のギヤである。
【0038】
<フレーム>
フレーム10は、枠状に構成されている。フレーム10は、例えば、金属粉末射出成形(MIM)によって成型される。フレーム10は、モータ部20および伝達機構2を支持する。
【0039】
フレーム10は、X軸方向に沿って延びる第1支持部(支持部)11および第2支持部12と、Z軸方向に沿って延びる第1梁部(梁部)15および第2梁部16と、複数(本実施形態では3つ)の固定部13と、を有する。
【0040】
固定部13は、X-Z平面に沿って延びる板状である。それぞれの固定部13には、板厚方向に貫通する固定孔13pが設けられる。固定孔13pには、ギヤドモータ1を外部部材(図示略)に固定するための固定ネジが挿入される。
【0041】
第1支持部11は、モータ部20、遊星歯車機構32およびスライド機構5の軸方向一方側に位置する。また、第1支持部11は、ギヤ列4の軸方向他方側に位置する。第1支持部11は、伝達機構2を構成する遊星歯車機構32、スライド機構5およびギヤ列4を支持する。
【0042】
第1支持部11は、遊星歯車機構32の軸方向一方側の端部を支持する。より具体的には、第1支持部11の軸方向他方側を向く面には、遊星歯車機構32の筒状部35が、第1溶接部8Aにより溶接固定される。上述したように、筒状部35は、滑り軸受35aを介してキャリア33cを回転可能に支持する。また、キャリア33cには、ドライブシャフト30が固定される。すなわち、第1支持部11は、筒状部35、滑り軸受35aおよびキャリア33cを介してドライブシャフト30を回転可能に支持する。
【0043】
第1支持部11は、スライド機構5の軸方向一方側の端部を支持する。第1支持部11には、軸方向に貫通し、X軸方向に並ぶ第1保持孔11jおよび第2保持孔11kが設けられる。第1保持孔11jは、スライド軸線J3に沿って延びる。第1保持孔11jには、滑り軸受11cが圧入される。第1支持部11は、滑り軸受11cを介してリードスクリュー51の軸方向一方側の端部を回転可能に支持する。第2保持孔11kには、ガイドシャフト52の軸方向他方側の端部が圧入される。これにより、ガイドシャフト52の軸方向他方側の端部は、フレーム10に固定される。
【0044】
第1支持部11の軸方向一方側を向く面には、軸方向一方側に延び出る中間シャフト11aが固定される。中間シャフト11aは、中間軸線J2を中心として軸方向に延びる。上述したように、中間シャフト11aは、中間ギヤ42を回転可能に支持する。第1支持部11の軸方向一方側には、蓋部材19が配置される。蓋部材19は、ギヤ列4を軸方向一方側から覆う。
【0045】
第2支持部12は、スライド機構5の軸方向他方側の端部を支持する。第2支持部12には、軸方向に貫通し、X軸方向に並ぶ第3保持孔12jおよび第4保持孔12kが設けられる。第3保持孔12jは、スライド軸線J3に沿って延びる。第3保持孔12jには、ボールベアリング12cが配置される。第2支持部12は、ボールベアリング12cを介してリードスクリュー51の軸方向他方側の端部を回転可能に支持する。第4保持孔12kには、ガイドシャフト52の軸方向他方側の端部が圧入される。これにより、ガイドシャフト52の軸方向他方側の端部は、フレーム10に固定される。
【0046】
第1梁部15および第2梁部16は、それぞれ第1支持部11と第2支持部12とを繋ぐ。また、第1梁部15と第2梁部16との間には、スライド機構5が配置される。本実施形態によれば、スライド機構5の両端部を支持する支持部(第1支持部11および第2支持部12)が、第1梁部15および第2梁部16によって繋がっている。すなわち、スライド機構5の両端部は、単一の部材であるフレーム10によって支持される。このため、スライド機構5のリードスクリュー51およびガイドシャフト52の平行度を容易に保つことができ、スライド機構5の駆動効率を高めることができる。また、本実施形態によれば、フレーム10がスライド機構5を囲むように枠状に設けられる。これにより、フレーム10の剛性を高めることができ、フレーム10に衝撃等が加わった場合であってもフレーム10の変形が抑制され、スライド機構5の駆動効率の劣化を抑制できる。また、フレーム10が枠状であることで、フレーム10が成型により製造される場合にフレーム10の成型精度を高めやすい。
【0047】
第1梁部15は、第1支持部11から軸方向他方側に向かってモータ部20および遊星歯車機構32の側部を軸方向に沿って延びる。第1梁部15の断面形状は、軸方向に沿って略一様である。
【0048】
図1に示すように、第1梁部15は、モータ軸線J1を中心とする円弧状の対向面15aを有する。対向面15aは、モータ軸線J1の径方向内側を向く。対向面15aの曲率半径は、モータ部20の外周面20aの曲率半径と一致する。対向面15aは、モータ部20の外周面20aに接触する。
【0049】
第1梁部15の軸方向他方側を向く端面には凹部15bが設けられる。凹部15bは、軸方向他方側およびモータ軸線J1の径方向内側に開口する。凹部15bには、連結部材28の挿入部28bが挿入される。凹部15bの側壁面(被固定面)15baと挿入部28bの側端面28baとは互いに対向して第3溶接部8Cによって固定される。すなわち、連結部材28は、第1梁部15に溶接によって固定される。
【0050】
本実施形態によれば、モータ部20は、軸方向他方側の端部から第1梁部15側に延びて第1梁部15に固定される連結部材28を有する。このため、第1梁部15が、軸方向に沿って延びるモータ部20を側方から支持できる。
【0051】
ギヤドモータ1は、薄型の電子機器に搭載するためにY軸方向の寸法が抑制される。このため、本実施形態のモータ部20としては、直径に対する軸方向寸法を十分に大きくして(2倍以上)、出力を確保しつつY軸方向の寸法を抑制した構成が採用される。このため、モータ部20を軸方向一方側の端部の第2溶接部8Bでのみ支持しようとすると、フレーム10がモータ部20を片持ち支持する形となりモータ部20の支持が不安定となる。例えば、ギヤドモータ1に衝撃等が加わった場合に、第2溶接部8Bに過大な負荷が加わる虞がある。
【0052】
本実施形態によれば、モータ部20が連結部材28において第1梁部15に固定されるため、フレーム10によるモータ部20の支持の安定性を高めることができる。したがって、ギヤドモータ1に衝撃が加わった場合であっても、モータ部20とフレーム10との固定部に局所的に大きな負荷が加わることを抑制することができる。
【0053】
本実施形態によれば、連結部材28は、モータ部20の軸方向他方側の端部に位置する。また、モータ部20の軸方向一方側の端部は、第2溶接部8Bにおいて遊星歯車機構32に固定され、さらに遊星歯車機構32は第1支持部11に固定されている。このため、モータ部20の軸方向両側をフレーム10に固定することができ、フレーム10によるモータ部20の支持の安定性を高めることができる。
【0054】
本実施形態によれば、連結部材28の挿入部28bは、第1梁部15の凹部に挿入される。これにより、モータ部20を第1梁部15に対して容易に位置決めすることができる。また、本実施形態によれば、モータ部20の外周面20aが、第1梁部15の対向面15aに接触する。このため、モータ部20を第1梁部15に対して位置決めした状態で、第2溶接部8Bおよび第3溶接部8Cおよび第2溶接部8Bを形成してモータ部20をフレーム10に固定でき、フレーム10に対するモータ部20の位置精度を高めることができる。
【0055】
モータ部20は、複数のモータ21を軸方向に積層して構成される。モータ部20の軸方向に沿う寸法には、積み上げられた各部材の交差寸法の範囲内で個体差が生じる。本実施形態において、連結部材28は、第1梁部15の凹部15bの側壁面15baに溶接固定される。側壁面15baは、軸方向に沿って延びる面である。このため、側壁面15baに対する連結部材28の軸方向位置が個体ごとにばらついていても、側壁面15baに連結部材28を安定的に溶接することができる。
【0056】
(変形例)
図3に、上述の実施形態の変形例のギヤドモータ101の部分断面図を示す。以下
図3を基に、変形例のギヤドモータ101について説明する。本変形例のギヤドモータ101は、モータ部120と第1梁部115との固定構造が主に異なる。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
本変形例のギヤドモータ101は、上述の実施形態と同様に、モータ部120と、伝達機構2と、フレーム110と、蓋部材19と、を有する。また、フレーム110は、上述の実施形態と同様に、第1支持部11、第2支持部12、第1梁部(梁部)115、第2梁部16および固定部13を有する。
【0058】
本変形例のモータ部120は、軸方向に積層される2つのモータ21と、第1連結部材128と、第2連結部材129と、有する。第1連結部材128は、軸方向他方側の端部に位置し、第2連結部材129は、2つのモータ21の間に配置される。第1連結部材128および第2連結部材129は、それぞれ第1梁部115に固定される。
【0059】
第1連結部材128および第2連結部材129は、金属材料から構成される。また、第1連結部材128および第2連結部材129は、板状である。このため、第1連結部材128および第2連結部材129は、プレス加工によって成型することができ、安価に製造できる。
【0060】
第1連結部材128は、第1円盤部128aと、第1円盤部128aの外縁から径方向外側に向かって突出する第1突出部128bと、を有する。第1円盤部128aは、モータ軸線J1を中心とする円形である。第1円盤部128aは、溶接などの固定手段によって、最も軸方向他方側に位置するモータ21の軸方向他方側を向く端面に固定される。また、第1突出部128bの先端には、切欠部128cが設けられる。
【0061】
第2連結部材129は、第2円盤部129aと、第2円盤部129aの外縁から突出する一対の第2突出部129bと、を有する。なお、
図3においては、一対の第2突出部129bのうち一方のみが図示されている。他方の第2突出部129bは、モータ軸線J1を通過するX-Z平面と平行な仮想面に対して、
図3に図示された一方と対称な位置に配置されている。
【0062】
第2円盤部129aは、モータ軸線J1を中心とする円形である。第2円盤部129aは、2つのモータ21の間に配置されて2つのモータ21に溶接などの固定手段によって固定される。第2突出部129bは、第2円盤部129aの外縁からY軸方向に沿って突出する。
【0063】
第1梁部115の軸方向他方側を向く端面には凸部115bが設けられる。凸部115bは、軸方向他方側に突出する。凸部115bは、第1連結部材128に設けられた切欠部128cに挿入される。これにより、モータ部120を第1梁部115に対して容易に位置決めすることができる。また、凸部115bの側壁面(被固定面)115baと切欠部128cの内側面128caとは互いに対向して第3溶接部108Cによって固定される。すなわち、第1連結部材128は、第1梁部115に溶接によって固定される。
【0064】
第1梁部115は、モータ部120の側部において軸方向に沿って延びる一対の支持面115cを有する。支持面115cは、+X側を向く面である。一対の支持面115cは、第2連結部材129の第2突出部129bに接触する。また、第2突出部129bは、支持面115cに第4溶接部108Dによって固定される。すなわち、第2連結部材129は、第1梁部115に溶接によって固定される。
【0065】
本変形例によれば、モータ部120は、軸方向他方側の端部から第1梁部115側に延びて第1梁部115に固定される第1連結部材128を有する。このため、モータ部120は、軸方向他方側でフレーム110に固定されフレーム110によるモータ部120の支持の安定性を高めることができる。
【0066】
本変形例によれば、モータ部120は、複数のモータ21同士の間から延び出て第1梁部115に固定される第2連結部材129を有する。このため、モータ部120は、軸方向全長に対して中程においても、フレーム110に固定され、フレーム110に対する支持の安定性が高められる。
【0067】
なお、第1梁部115の側壁面115baおよび支持面115cは、軸方向に沿って延びる面である。このため、側壁面115baに対する第1連結部材128の軸方向位置および支持面115cに対する第2連結部材129の軸方向位置が、個体ごとにばらついていてもこれらを安定的に溶接することができる。
【0068】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0069】
1,101…ギヤドモータ、2…伝達機構、10,110…フレーム、11…第1支持部(支持部)、13…固定部、15,115…第1梁部(梁部)、15b…凹部、15ba,115ba…側壁面(被固定面)、20,120…モータ部、21…モータ、28、128…連結部材(第1連結部材)、28b…挿入部、115b…凸部、115c…面、128c…切欠部、129…第2連結部材、J1…モータ軸線