(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】浴室洗い場の床構造および浴室ユニット
(51)【国際特許分類】
   E03C   1/20        20060101AFI20230907BHJP        
   A47K   4/00        20060101ALI20230907BHJP        
   E04H   1/12        20060101ALI20230907BHJP        
【FI】
E03C1/20 A 
A47K4/00 
E04H1/12 301 
(21)【出願番号】P 2019158732
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林  真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝  哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池  満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野  寛明
(72)【発明者】
【氏名】飯尾  和典
(72)【発明者】
【氏名】川井  悠暉
【審査官】秋山  斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100015(JP,A)      
【文献】特開2011-94369(JP,A)      
【文献】特開2005-113591(JP,A)      
【文献】特開2006-328772(JP,A)      
【文献】特開2015-190289(JP,A)      
【文献】特開2006-6845(JP,A)      
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C      1/20
A47K      4/00
E04H      1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  長方形状の浴室洗い場の床構造であって、
  内部に排水口を備える排水部と、前記排水部に向かって下り傾斜する
3つの傾斜面部と、を有する床パネルを備え、
  前記傾斜面部同士の境界に形成される
2本の稜線は、一端が前記排水部に位置するとともに、
2つの他端は前記長方形状の長辺上に位置するか、もしくはそれぞれ前記長方形状の1対の短辺上に1つずつ位置し、
            
  前記他端は前記長方形
状の頂点以外に位置する、浴室洗い場の床構造。
【請求項2】
  前記他端が前記長方形状の長辺上に位置し、
            
  浴室の入り口扉が、前記長方形
状の短辺側に位置する、請求項1に記載の浴室洗い場の床構造。
【請求項3】
  前記排水部が、前記長方形
状の長辺側に位置する、
請求項1もしくは請求項2に記載の浴室洗い場の床構造。
【請求項4】
  請求項1~
3のいずれかに記載の床構造を備える、浴室ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、浴室洗い場の床構造および浴室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
  従来、洗い場の床面の排水性を高めるために、排水口に向けて床面を傾斜させることが行われている。例えば、特許文献1に記載されるような洗い場床面では、床面が稜線を境に5分割され、排水口に向けて傾斜している。このように、床面を複数に分割して、排水口に向けて異なる勾配で傾斜させることで、排水口に向けて水の流れを良好に誘導できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  分割した床面の境界部を跨いで椅子や洗面器等の設置面が配置されると、使用時にがたつきが発生する。床面を多数分割して傾斜角度を変えると、この現状が起こりやすくなる。
【0005】
  排水口は一般的に床面の中央部でなく端部に配置されていることが多く、稜線が排水口から長方形状の床面の頂点に延びていると、床面の中心付近を大きく横切ることとなりやすい。このため、任意の箇所に傾斜角が一定の平面部分を配置することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本発明は上記に鑑みてなされたものであり、長方形状の浴室洗い場の床構造であって、内部に排水口を備える排水部と、前記排水部に向かって下り傾斜する少なくとも2つの傾斜面部と、を有する床パネルを備え、前記傾斜面部同士の境界に形成される少なくとも1本の稜線は、一端が前記排水部に位置するとともに、他端は前記長方形の頂点以外に位置する、浴室洗い場の床構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
            
            【
図2】本発明の第1実施形態に係る床構造1を示す図である。
 
            【
図3】本発明の第2実施形態に係る床構造21を示す図である。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
  本実施形態の浴室ユニット100は、長方形状の床構造1と、シャワー2と、水栓3と、浴槽4と、カウンター5と、を有して構成される。さらに床構造1は、3つの傾斜面部10と、排水部11と、を有し、傾斜面部10同士の間には直線谷状の稜線12が形成される。3枚の傾斜面部10は排水部11に向かって(
図2中矢印方向)水が流れるように傾斜しており、良好な排水性を有する。傾斜面部10は、排水性を向上させるため、その傾斜面に撥水性を有していてもよい。
 
【0009】
  3つの傾斜面部10から床構造1を構成することで、排水性を良好にするとともに、平面部分の面積を確保できる。分割枚数が多ければ排水溝までの経路に沿った傾斜をそれぞれ有することで高い排水性を有する。但し、分割枚数が多ければ稜線が多くなり広い平面部分を確保しづらくなる。この点、3枚程度であれば、良好な排水性を維持しつつ、平面部分を広く確保できる。但し、床構造1を構成する傾斜面部10は必ずしも3つでなくともよい。
【0010】
  広い平面部分は、例えばシャワー2や水栓3の周辺に配置するとよい。足元の稜線の谷部を気にせずともよく、且つ椅子等を床面に置いた際にがたつきの発生を抑えられるため、洗体の作業性が向上する。
【0011】
  排水部11は、床構造1中に凹型に形成され、内部に有する排水口を通じて使用後の水を排水する。排水部11には蓋がされ、傾斜した傾斜面部10の表面を流れる水は傾斜面部10と蓋との隙間部分に流れ込み排水される。蓋の上面は傾斜面部10の表面と統一された外観を有し、床構造1の一部をなしている。これにより、排水性を維持しつつ意匠性を向上させている。
【0012】
  排水部11は、床構造1の浴槽4側に配置されている。排水部11は、浴室の入り口から遠い側に配置されることが好ましい。使用者が入室時に通過する位置に洗体後の汚れた水や髪の毛等が集まる排水溝が配置されていると、清潔性が低下するとともに、悪臭の原因となる等、使用者に不快感を生じさせるためである。さらに排水部11は、長方形の短辺側よりも長辺側に配置されることが好ましい。床面上の排水流路が短くなり、床面上の残水が軽減されるためである。
【0013】
  2本の直線谷状の稜線12は、一端が排水部11の外周に、他端が長方形状の床構造1の排水部11が配置されていない側の長辺にある。すなわち、長方形状の床構造1の短辺側へは稜線12は延びていない。これにより、床構造1の短辺側には稜線12のない平面が広くとれる。
【0014】
  したがって、例えば短辺側に入り口扉を配置した場合に、稜線12の谷部が入り口から遠くにあり、安定な平面部分が入り口付近に広く配置されているため、使用者が入室する際に安心感を得ることができる。且つ、入り口扉の真下に谷状の稜線12の他端が来ることがなく、入り口扉下の床面高さを一定にできるため、水漏れ防止のための段差を小さくすることができる。
【0015】
  入り口と反対側の短辺には、カウンター5が設置されている。短辺に稜線12がなく、カウンター付近でも平面を広くとることができるため、カウンター5に近づいて洗体等の作業を行う際に、足元の床構造1の谷部を気にせずともよく、椅子のがたつきも発生しづらくなるため、作業性および快適性が向上する。
【0016】
  床構造1の上部には、タイルを敷き詰めた構成としてもよい。床表面にタイルが敷き詰められていることで意匠性が向上するほか、タイル表面の釉薬によって表面の清掃が容易となる。なお、稜線12上に配置されるタイルには、予め稜線に沿って折れ目を有するV字型のタイルを用いることで、稜線があっても床構造1の上部にタイルを敷き詰めることができる。
【0017】
  以上、本実施形態の洗い場の床構造1によれば、以下のような効果が奏される。
【0018】
  (1)  本実施形態の洗い場の床構造1は、長方形状の浴室洗い場の床構造1であって、内部に排水口を備える排水部11と、排水部11に向かって下り傾斜する3つの傾斜面部10と、を有する床パネルを備え、傾斜面部10同士の境界に形成される2本の稜線12は、一端が排水部11に位置するとともに、他端は前記長方形の頂点以外に位置する、浴室洗い場の床構造1である。
【0019】
  これにより、長方形状の浴室洗い場の床構造1において、任意の箇所に平面部分を広く配置することが可能になる。平面部分を配置した箇所において足元の安定性が向上し、椅子等のがたつきを抑えることができる。入り口を配置したい側の床面に稜線12の端部を配置しないことで、入り口扉下の低段差化が可能である。
【0020】
  (2)  (1)において、稜線12の他端が、前記長方形の長辺に位置している。
【0021】
  これにより、短辺側に平面床を広く配置でき、入り口を短辺側に配置した際に、使用者の入室時に安心感が得られる。短辺側にカウンター5を配置した際に、作業性および快適性が向上する。
【0022】
  (3)  (1)において、前記浴室の入り口扉が、前記長方形の短辺側に位置している。
【0023】
  これにより、入り口扉下に稜線12の端部が配置されないため、入り口扉下の低段差化が可能である。
【0024】
  (4)  (1)において、排水部11が、長方形の長辺側に位置している。
【0025】
  これにより、床面上の排水流路が短くなり、床面上の残水が軽減される。
【0026】
  (5)  本実施形態の浴室ユニット100は、(1)の床パネル10を有して構成される。
【0027】
  これにより、浴室ユニット100は、平面部分を配置した箇所において足元の安定性が向上し、入り口を配置したい側の床面に稜線12の端部を配置しないことで、入り口扉下の低段差化が可能である。
【0028】
  本発明の床構造を備える浴室ユニットの実施形態としては、
図1に示すような浴槽4とシャワーが一体となったタイプのものに限定されず、浴槽4がなくシャワーのみが単独で設けられる浴室ユニットであってもよい。
 
【0029】
<第2実施形態>
  床構造21においては、第1実施形態の床構造とは、稜線の配置が異なる。2本の直線谷状の稜線212の他端はそれぞれ、長方形の短辺上に配置される。これにより、床構造1の排水部211が配置されていない側の長辺付近には稜線12のない平面が広くとれる。
【0030】
  したがって、例えば長辺側に入り口扉を配置した場合に、稜線12による床構造1の谷部が入り口から遠くにあり、安定な平面部分が入り口付近に広く配置されているため、使用者が入室する際に安心感を得ることができる。且つ、入り口扉の真下に谷状の稜線12の他端が来ることがなく、入り口扉下の床面高さを一定にできるため、水漏れ防止のための段差を小さくすることができる。
【0031】
  長辺側に稜線212による谷部のない平面を配置することは、長辺側に大開口の扉を設置する際により有効である。大開口扉は開口をより広くとるために長辺に設置され、入り口の大開口化は主にバリアフリー化等を目的としてなされることが多い。上述したように入り口扉下において稜線12の谷部を配置せず平坦にすることにより入り口扉の低段差化が可能となり、さらに入り口付近の床構造1は安定な平面部分を広くとってあるため、本実施形態の床構造1はバリアフリー化にも親和性が高い。
【0032】
  以上、本実施形態の浴室洗い場の床構造によれば、以下のような効果が奏される。
【0033】
  (5)  本実施形態では、(1)において、稜線12の他端が、前記長方形の短辺に位置している。
【0034】
  これにより、長辺側に平面床を広く配置でき、入り口を長辺側に配置した際に、使用者の入室時に安心感が得られ、快適性が向上する。入り口扉の大開口化を行う際に、床面入り口付近での安全性をより高めることができ、バリアフリー化との親和性も高い。
【0035】
  以上、本発明に係る実施形態について説明した。本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、これらを改良・変更したものも本発明に含まれる。
【0036】
  本発明の床構造の変形例として、例えば、2本の稜線の内、1本の稜線の端部が短辺に、もう1本の稜線の端部が長辺にあってもよい。2本の稜線の内、1本の稜線の端部が頂点に、もう1本の稜線の端部が頂点以外にあってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1,201…床構造、2…シャワー、3…水栓、4…浴槽、5…カウンター、10,210…傾斜面部、11,211…排水部、12,212…稜線、100…浴室ユニット