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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230907BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019172478
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050427
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】本城 良太
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179656(JP,A)
【文献】特開2014-217461(JP,A)
【文献】特開2008-022953(JP,A)
【文献】特表2007-515248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0133036(US,A1)
【文献】特開2005-314842(JP,A)
【文献】特開2019-090157(JP,A)
【文献】特開2019-011532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔面の対象部位を覆うマスク本体部と、前記マスク本体部を前記着用者の耳に係止するための左右一対の耳掛け部と、を備えたマスクであって、
前記マスク本体部は、少なくとも、前記着用者の肌から最も近い面の着用者側シート材と、前記着用者の肌から最も遠い面の外面側シート材と、が積層されてなり、
前記着用者側シート材と前記外面側シート材のうち、前記着用者側シート材のみに前記外面側シート材から離間する方向に隆起した凸部を有するエンボスが形成されており、
前記着用者側シート材におけるエンボスの凸部に選択的に薬液が含浸されていることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記着用者側シート材におけるエンボスの凸部の割合は、30%以上80%以下であることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記着用者側シート材と前記外面側シート材の間にフィルターが介装されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
疾病時、花粉又は黄砂等の粉塵飛来時、その他の日常生活において使用されるマスクとして、マスク本体部にプリーツが形成され、着用時には上下方向に展開させることを可能としたものが存在している。このようなマスクは、プリーツを上下方向に広げて着用することにより、マスク本体部が山型の立体的形状となり、着用者の鼻や口の周辺に空間が形成され、呼吸がし易くなるなど利点がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-24942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近時、これまでにない付加価値を有するマスクが要望されており、本発明者らは鋭意検討し、デザイン性や機能性に優れているマスクを開発するに至った。
【0005】
本発明の目的は、デザイン性や機能性に優れたマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
着用者の顔面の対象部位を覆うマスク本体部と、前記マスク本体部を前記着用者の耳に係止するための左右一対の耳掛け部と、を備えたマスクであって、
前記マスク本体部は、少なくとも、前記着用者の肌から最も近い面の着用者側シート材と、前記着用者の肌から最も遠い面の外面側シート材と、が積層されてなり、
前記着用者側シート材と前記外面側シート材のうち、前記着用者側シート材のみに前記外面側シート材から離間する方向に隆起した凸部を有するエンボスが形成されており、
前記着用者側シート材におけるエンボスの凸部に選択的に薬液が含浸されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成のマスクであれば、着用者側シート材にエンボスが形成されたことでしなやかさが得られ、マスク(マスク本体部)の柔らかさが向上する。
特に、着用者側シート材に外面側シート材から離間する方向に隆起した複数の凸部を有するエンボスが形成されたことで、その着用者側シート材の凸部部分が着用者の肌に触れるようになるので、マスク(マスク本体部)が着用者の肌に触れる面積を低減することができ、肌への負担を軽減することができる。
また、マスクの着用者側シート材にエンボスを形成し、そのエンボスによる模様を施したことで、マスクのデザイン性、意匠性を向上させることができる。このマスクの着用者側シート材に施されたエンボスによる模様は、マスクの着用時には見えないが、マスクを着脱する際には視認されるので、ワンポイントのデザインとして有効に機能する。つまり、このマスクは裏地である着用者側シート材にワンポイントのデザインとなるエンボスによる模様を有しており、その着用者側シート材のエンボス模様を他のマスクと差別化するための付加価値とすることができる。
【0011】
また、このような構成のマスクであれば、着用者側シート材におけるエンボスの凸部に含浸させた薬液が奏する効果(例えば、保湿性などの機能)をマスクに付与しつつ、マスク(マスク本体部)の通気性を確保することができる。
例えば、着用者側シート材における薬液が含浸されている部分は、シート材(例えば不織布)の繊維間に薬液が保持されているため、薬液が含浸されていない部分よりも通気性が低下することがある。そこで、着用者側シート材に薬液が含浸されている部分と薬液が含浸されていない部分を設けることにより、その薬液が含浸されていない部分によって好適な通気性を確保するようにした。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1記載のマスクにおいて、
前記着用者側シート材におけるエンボスの凸部の割合は、30%以上80%以下であることを特徴とする。
【0013】
このような構成のマスクであれば、好適な通気性を確保することができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のマスクにおいて、
前記着用者側シート材と前記外面側シート材の間にフィルターが介装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、デザイン性や機能性に優れたマスクが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のマスクを示す斜視図である。
図2】本実施形態のマスクを示す斜視図である。
図3】本実施形態のマスクを示す正面図である。
図4】本実施形態のマスクを示す背面図である。
図5図3のV-V線における断面図である
図6】マスク本体部の断面を拡大視して示す模式図である。
図7】第1の薬液含浸方法に関する説明図である。
図8】第2の薬液含浸方法に関する説明図である。
図9】第3の薬液含浸方法に関する説明図である。
図10】マスクの変形例を示す断面図(a)(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るマスクの実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
なお、以下においては、図1に示すように、マスクの着用者から見た方向を基準として、前後、左右及び上下を定めて説明する。
【0018】
[構成の説明]
≪全体構成≫
マスク100は、図1から図4に示すように、着用者の顔面の鼻、口、顎等を覆うマスク本体部1と、マスク本体部1を着用者の右耳に掛止するための右耳掛け部2と、マスク本体部1を着用者の左耳に掛止するための左耳掛け部3と、を備えている。なお、マスク100は、マスク本体部1の後面側を着用者の顔面に向けて着用される。
【0019】
<マスク本体部>
マスク本体部1は、図3から図5に示すように、複数のシート材によって正面視略矩形状に形成されている。
マスク本体部1は、左右方向に好ましくは120mmから210mm、さらに好ましくは145mmから175mm、上下方向に好ましくは70mmから100mm、さらに好ましくは80mmから90mmに形成される。
【0020】
マスク本体部1は、図5に示すように、着用者の肌から遠い面から順に、マスク本体部1の最前面(着用者の肌から最も遠い面)に位置する外面側不織布11、フィルター12、マスク本体部1の最後面(着用者の肌から最も近い面)に位置する着用者側不織布13の順にシート材を積層して形成されている。
【0021】
具体的なシート材としては、例えば外面側不織布11及び着用者側不織布13として、ポリプロピレンスパンボンド、ポリエチレンスパンボンド、ナイロンスパンボンド等が用いられ、フィルター12として、ポリプロピレンメルトブロー、レーヨンスパンボンド等が用いられる。
最も好適には、外面側不織布11としてポリプロピレンスパンボンドが用いられ、着用者側不織布13としてナイロンスパンボンドが用いられ、これらの間に介装されるフィルター12としてポリプロピレンメルトブローが用いられる。
【0022】
また、図2図4図5に示すように、マスク本体部1の着用者側不織布13には、外面側不織布11から離間する方向に隆起した複数の凸部13aを有するエンボスが形成されている。
本実施形態では、着用者側不織布13にドット柄(水玉模様)を施すように、小円形状の複数の凸部13aを有するエンボスが形成されている。
なお、着用者側不織布13における凸部13aの間は相対的に窪んでおり、エンボスの凹部を成している。
この着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aは、凹部から相対的に0.2mm~3.0mm隆起するように形成されており、より好ましくは0.4mm~1.6mm隆起するように形成されている。
また、着用者側不織布13に形成されているエンボスの凸部13aの割合は、30~80%であることが好ましく、40~70%であれば更に好ましい。
着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aの割合が30%未満であると、その凸部13aの肌触りが固く感じられることがあり、マスク100の着用感が悪くなることがあるので好ましくない。
【0023】
また、着用者側不織布13には、所定の薬液を塗布などによって含浸させることも可能である。
着用者側不織布13に含浸させる薬液としては、ヒアルロン酸類、アミノ酸類、グリセリン類、コラーゲン類、セラミド類、グリコール類、ワセリン等がある。これらの薬液は、肌を保湿する効果や肌荒れを回復させる効果を有している。
また、着用者側不織布13に含浸させる薬液として、香料など揮発成分を有するものや、消臭機能を有するものや、水蒸気を吸湿するもの(CNF;セルロースナノファイバー等)などを用いることができる。
【0024】
なお、外面側不織布11、フィルター12及び着用者側不織布13は、必ずしも図1から図5に示すように全て同じ大きさに形成されている必要はない。例えば、外面側不織布11のみを上下方向に大きく形成し、これが、フィルター12及び着用者側不織布13の上端部及び下端部を覆って、後ろ側へと巻き込まれるように形成されていてもよい。この場合、フィルター12及び着用者側不織布13の上端部及び下端部の強度を向上することができる。
【0025】
外面側不織布11、フィルター12及び着用者側不織布13は、図3から図5に示すように、上下及び左右の端部付近において、熱・超音波等によって前後に溶着されており、上端部付近に上端部接続部1aが、下端部付近に下端部接続部1bが、右端部付近に右端部接続部1cが、左端部付近に左端部接続部1dが形成されている。
【0026】
マスク本体部1の上部には、後述の鼻部補強部材14を取り付けるため、図1から図5に示すように、鼻部補強部材14を囲むように外面側不織布11、フィルター12及び着用者側不織布13を、熱・超音波等によって溶着した鼻部補強部材周辺接続部1eが形成されている。
鼻部補強部材周辺接続部1eは、正面視において鼻部補強部材14の形状と略一致するように形成されていることが望ましいが、鼻部補強部材14の周囲に若干の間隙が存在し、鼻部補強部材14を動かすことが可能であってもよい。
【0027】
マスク本体部1の上下方向中央部付近には、後述の口部補強部材15を取り付けるため、図3から図5に示すように、口部補強部材15を囲むようにフィルター12及び着用者側不織布13を、熱・超音波等によって溶着した口部補強部材周辺接続部1fが形成されている。
口部補強部材周辺接続部1fは、正面視において口部補強部材15の形状と略一致するように形成されていることが望ましいが、口部補強部材15の周囲に若干の間隙が存在し、口部補強部材15を動かすことが可能であってもよい。
【0028】
また、図1から図5においては夫々の接続部1aから1fが別個に設けられた場合について図示したが、これに限られず、複数の接続部を兼ねる部分が存在していてもよい。例えば、上端部接続部1aと鼻部補強部材周辺接続部1eの上部とが重なり、上端部接続部1aが鼻部補強部材周辺接続部1e上部を兼ねていてもよい。
また、これらの接続部は、前後にシート材が接続されていればよく、必ずしも熱・超音波等による溶着によって形成されている必要はない。
また、図1から図4においてはこれらの接続部が実線状に形成された場合につき図示したが、これに限られず、接続部は例えば破線状に形成されていてもよい。
また、マスク本体部1の構成は上記のものに限定されず、さらに1又は2以上のシート材を積層してもよいし、3枚よりも少数のシート材から形成してもよい。
【0029】
(プリーツ)
マスク本体部1は、図5に示すように上下方向に折り返されており、これによって、前面側に、図1から図5に示すように、上部プリーツ1gと、下部プリーツ1h、1hとが形成されている。マスク100の着用時には、これらを上下方向に展開することによって、マスク本体部1が外側に膨出する山型の立体形状となって、着用者の顔面の鼻、口、顎等が覆われるようになっている。
【0030】
上部プリーツ1gは、図1から図5に示すように、マスク本体部1前面の上下方向中央部よりも上部に形成された、上方に凸となる折り目であり、上下方向に展開することができる。本実施形態においては、上部プリーツ1gは、マスク本体部1の1か所に備えられている。
【0031】
下部プリーツ1h,1hは、図1から図5に示すように、マスク本体部1前面の上下方向中央部よりも下部に形成された、下方に凸となる折り目であり、上下方向に展開することができる。本実施形態においては、下部プリーツ1h,1hは、マスク本体部1の2か所に備えられている。
【0032】
上部プリーツ1g及び下部プリーツ1h,1hは、マスク本体部1の上下方向中央部を含む、上部プリーツ1gと下部プリーツ1h,1hのうち上方に形成されたものとの間の部分の間隔が、最も広くなるように配置され、特に当該部分が、マスク本体部1の上下方向の幅の3分の1以上の幅を有するように配置されていることが望ましい。これによって、着用者の口元の空間を確保し易くなる。
【0033】
また、上部プリーツ1g及び下部プリーツ1h,1hは、これらの配置間隔が全て異なる間隔となるように配置されていることが望ましい。これによって、プリーツごとに配置間隔を変え、適切な位置に配置することが可能となる。
なお、プリーツの配置間隔には、上部プリーツ1gとマスク上端縁との間隔及び下部プリーツ1h,1hのうち下方に形成されたものとマスク下端縁との間隔を含むものとする。
【0034】
(鼻部補強部材)
鼻部補強部材14は、マスク本体部1の上部が着用者の鼻付近の形状に沿って、隙間が生じないようにするためのものであり、図3及び図4に示すように、マスク本体部1の上端縁に沿って備えられている。
鼻部補強部材14は、左右方向に長い可塑性を有する部材であり、マスク本体部1の横幅よりも短く、左右方向に80から135mm、好ましくは90mmから120mmの長さを有し、上下方向に幅3mmから5mm、前後方向に厚み0.5mmから1.0mmとなるように形成されている。
【0035】
鼻部補強部材14の材料としては、可塑性を有する任意の材料を使用可能であるが、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂等が用いられ、最も好適には、ポリプロピレン樹脂が用いられる。
【0036】
鼻部補強部材14は、フィルター12と、着用者側不織布13との間に配置され、外面側不織布11、フィルター12及び着用者側不織布13を、鼻部補強部材14の上下及び左右において熱・超音波等を用いて前後に溶着させることで、鼻部補強部材14を囲むように形成された鼻部補強部材周辺接続部1eによって、マスク本体部1に取り付けられている。
【0037】
なお、鼻部補強部材14は、マスク本体部1の上部に隙間が生じないようにすることが可能であれば、任意の配置及び取り付け方法によってマスク本体部1に取り付けることができる。
例えば、後述の口部補強部材15と同様に、外面側不織布11は溶着されないようにして鼻部補強部材周辺接続部1eを形成し、鼻部補強部材14をマスク本体部1に取り付けてもよい。また、例えば、鼻部補強部材14は、外面側不織布11と、フィルター12との間に配置されていてもよい。
【0038】
(口部補強部材)
口部補強部材15は、マスク本体部1の着用者の口元付近の形状を維持するためのものであり、図3から図5に示すように、マスク本体部1の、上部プリーツ1gと、下部プリーツ1h,1hのうち上方に形成されたものとの間の位置の、マスク本体部1の上下方向中央部付近に取り付けられている。
なお、口部補強部材15の取り付け位置としては、マスク本体部1の上下方向中央部から5mmから10mm程度下方にずれた位置に取り付けられていることが、着用者の下唇付近の空間を広く確保できるため望ましいが、マスク本体部1の着用者の口元付近の形状を維持することができればよく、このような配置位置には限られない。
【0039】
口部補強部材15は、左右方向に長い可塑性を有する部材であり、図3及び図4に示すようにマスク本体部1の横幅よりも僅かに短く、左右方向に100から150mm、好ましくは115mmから145mmの長さを有し、上下方向に幅3mmから5mm、前後方向に厚み0.5mmから1.0mmとなるように形成されている。
【0040】
口部補強部材15の材料としては、可塑性を有する任意の材料を使用可能であるが、例えば、鼻部補強部材14と同様、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂等が用いられ、最も好適には、ポリプロピレン樹脂が用いられる。
【0041】
口部補強部材15は、図5に示すように、フィルター12と、着用者側不織布13との間に配置され、フィルター12と着用者側不織布13とを、口部補強部材15の上下及び左右において、熱・超音波等を用いて前後に溶着させることで、口部補強部材15を囲むように形成された口部補強部材周辺接続部1fによって、マスク本体部1に取り付けられている。
これによって、口部補強部材15が、フィルター12と、着用者側不織布13とに対して固定され、フィルター12、着用者側不織布13及び口部補強部材15が、着用者の口元付近において固定されるが、外面側不織布11については、マスク本体部1の四辺の端部付近以外においては、他の部材に固定されていないこととなる。
【0042】
なお、マスク本体部1としては、着用者の対象部位を覆い、耳掛け部を取り付けた際にマスクとして機能し得るものであれば任意の構成を用いることが可能である。
【0043】
≪耳掛け部≫
右耳掛け部2及び左耳掛け部3は、例えばポリウレタン等によって形成された紐状の部材であり、右耳掛け部2はマスク本体部1の右側に、左耳掛け部3はマスク本体部1の左側に備えられている。右耳掛け部2及び左耳掛け部3は、夫々マスク本体部1の端部に、例えば熱・超音波等によって溶着することにより取り付けられている。
【0044】
[製造方法の説明]
(1)着用者側不織布13に所定の薬液をスプレー塗布する。スプレー塗布する際は、薬液の粘度を、当該薬液を噴霧可能な程度に一時的に低下させた状態でスプレー塗布する。また、スプレー塗布の代わりに浸漬塗布を行うようにしてもよい。
また、薬液を塗布する際は、着用者側不織布13の片面にのみ塗布してもよいし両面に塗布するようにしてもよい。
なお、着用者側不織布13に薬液を塗布した後にエンボスを形成してもよく、また着用者側不織布13にエンボスを形成した後に薬液を塗布してもよい。
また、印刷機により着用者側不織布13に薬液を転写するようにしてもよい。この場合、着用者側不織布13にエンボスを形成しつつ薬液を転写することも可能である。
(2)着用者の顔面から最も遠い面から順に、外面側不織布11、フィルター12、着用者側不織布13の順でシート材を重ね、フィルター12と、着用者側不織布13との間の所定の位置に、鼻部補強部材14及び口部補強部材15を配置する。
(3)外面側不織布11、フィルター12及び着用者側不織布13を、鼻部補強部材14の上下及び左右において熱・超音波等を用いて前後に溶着させ、鼻部補強部材周辺接続部1eを形成する。また、フィルター12と着用者側不織布13とを、口部補強部材15の上下及び左右において熱・超音波等を用いて前後に溶着させ、口部補強部材周辺接続部1fを形成する。
(4)重ねられたシート材を、上部プリーツ1g及び下部プリーツ1h,1hが形成されるように折り畳む。
(5)折り畳まれたシート材の上下及び左右の端部付近を、熱・超音波等を用いて前後に溶着させ、上端部接続部1a、下端部接続部1b、右端部接続部1c及び左端部接続部1dを形成する。
(6)右耳掛け部2の両端部を、シート材の右端部の上下に熱・超音波等を用いて溶着させ、左耳掛け部3の両端部を、シート材の左端部の上下に熱・超音波等を用いて溶着させる。
【0045】
[効果の説明]
本実施形態のマスク100は、着用者の顔面の対象部位を覆うマスク本体部1と、そのマスク本体部1を着用者の耳に係止するための左右一対の耳掛け部2,3と、を備えたマスク100であって、マスク本体部1は、着用者の肌から最も近い面の着用者側不織布13と、着用者の肌から最も遠い面の外面側不織布11と、着用者側不織布13と外面側不織布11との間に設けられるフィルター12と、がそれぞれ積層されてなり、着用者側不織布13には、外面側不織布11から離間する方向に隆起した複数の凸部13aを有するエンボスが形成されている。
このように、マスク100の着用者側不織布13にエンボスが形成されたことでしなやかさが得られ、マスク100(マスク本体部1)の柔らかさが向上する。
特に、着用者側不織布13に複数の凸部13aを有するエンボスが形成されたことで、着用者側不織布13の凸部13a部分が着用者の肌に触れるようになるので、マスク100(マスク本体部1)が着用者の肌に触れる面積を低減することができ、肌への負担を軽減することができる。
また、マスク100の着用者側不織布13にエンボスを形成し、そのエンボスによる模様を施したことで、マスク100のデザイン性、意匠性を向上させることができる。このマスク100の着用者側不織布13に施されたエンボスによる模様は、マスク100の着用時には見えないが、マスク100を着脱する際には視認されるので、ワンポイントのデザインとして有効に機能する。つまり、このマスク100は裏地である着用者側不織布13にワンポイントのデザインとなるエンボスによる模様を有しており、その着用者側不織布13のエンボス模様を他のマスクと差別化するための付加価値とすることができる。
【0046】
また、マスク100の着用者側不織布13には所定の薬液が塗布などによって含浸されている。
これによって、薬液由来の効果がマスク100に付与される。
着用者側不織布13に含浸されている薬液が、ヒアルロン酸類、アミノ酸類、グリセリン類、コラーゲン類、セラミド類、グリコール類、ワセリン等である場合、肌を保湿したり、肌荒れを回復させたりすることができる。
また、着用者側不織布13に含浸されている薬液が香料である場合、その香りによるリラックス効果やリフレッシュ効果などが得られる。
また、着用者側不織布13に含浸されている薬液が消臭剤である場合、不快な臭いが透過するのを低減することができる。
また、着用者側不織布13に含浸されている薬液が吸湿剤である場合、呼気の水蒸気を吸湿することができ、マスク100表面(外面側不織布11の表面)に水滴が発生するのを抑えることができる。
このように、マスク100の着用者側不織布13に所定の薬液を含浸させることによって、マスク100に薬液由来の効果を付与することができ、マスク100の機能性を向上させることができる。
【0047】
このように、デザイン性や機能性に優れたマスク100が得られる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図6に示すように、マスク100(マスク本体部1)の着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aに、所定の薬液が含浸されているようにしてもよい。
着用者側不織布13における薬液が含浸されている部分は、不織布の繊維間に薬液が保持されているため、薬液が含浸されていない部分よりも通気性が低下することがある。
そこで本実施形態のマスク100のように、着用者側不織布13に薬液が含浸されている部分と薬液が含浸されていない部分を設けることにより、その薬液が含浸されていない部分によって好適な通気性を確保することができる。
着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aの割合が、30~80%であれば、粘度の高い薬液が含浸されている場合でも、好適な通気性を確保することができる。また、薬液が奏する効果も好適に発揮される。
なお、着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aの割合が30%未満であると、着用者側不織布13が肌に触れる面積が小さく、薬液由来の効果が十分に発揮できないことがあるので好ましくない。
【0049】
特に、着用者側不織布13のエンボスの凹部はフィルター12や外面側不織布11に近く、その部分のマスク本体部1は相対的に薄い態様を有しているので、通気性を確保し易い。
このようなことから、着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aに薬液を含浸させ、その薬液効果をマスク100に付与しつつ、マスク100(マスク本体部1)の通気性を確保するようにした。
【0050】
ここで、着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aに薬液を含浸させる方法について説明する。
【0051】
[第1の薬液含浸方法]
第1の薬液含浸方法で用いる装置50は、例えば図7(a)に示すように、着用者側不織布13にエンボスを施す第1ユニット501と、着用者側不織布13に薬液Cを塗布する第2ユニット502とを備えている。
第1ユニット501は、外周面に複数の突起51aが設けられているエンボスロール51と、エンボスロール51に対向配置された受けロール52等を備えている。
第2ユニット502は、薬液Cが貯留されるタンク53と、タンク53内の薬液Cを転写ロール55に供給するアニロックスロール54等を備えている。
【0052】
第1の薬液含浸方法は、エンボスロール51によって着用者側不織布13に複数の凸部13aを有するエンボスを形成する工程と、着用者側不織布13に形成したエンボスの凸部13aに薬液Cを塗布する工程と、を有している。
具体的には、エンボスロール51と受けロール52の間を通す着用者側不織布13に所定の圧力を加えることで、着用者側不織布13の一方の面が他方の面から押し出されて隆起した凸部13aを形成した後、図7(b)に示すように、その凸部13aの表面に転写ロール55によって薬液Cを塗布するようになっている。なお、転写ロール55への薬液Cの供給は、アニロックスロール54及びタンク53を用いて行うことができる。
【0053】
つまり、この装置50を作動させると、各ローラーがそれぞれ所定方向に回転し、着用者側不織布13が所定の方向に搬送される。
エンボスロール51と受けロール52が軸回りに回転することにより、エンボスロール51と受けロール52の間を通過する着用者側不織布13にエンボス加工が施される。
また、アニロックスロール54が軸回りに回転することに伴い、タンク53からアニロックスロール54の外周面に薬液Cが供給される。アニロックスロール54の外周面に供給された薬液Cは、アニロックスロール54の外周面と当接する転写ロール55の外周面に供給される。
第1ユニット501でエンボスが施された着用者側不織布13が第2ユニット502に到達すると、着用者側不織布13に施されたエンボスの凸部13aに転写ロール55によって薬液Cが塗布される。
このようにして、着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aに薬液を含浸させることができる。
【0054】
[第2の薬液含浸方法]
第2の薬液含浸方法で用いる装置50は、例えば図8(a)に示すように、着用者側不織布13にエンボスを施す第1ユニット501(エンボスロール51)と、着用者側不織布13に薬液Cを塗布する第2ユニット502とを備えている。
この装置50は、第1ユニット501にて着用者側不織布13にエンボスを施すとともに、第2ユニット502にて着用者側不織布13に薬液Cを塗布するもの(図8(b)参照)であり、第1の薬液含浸方法で用いた装置と同様の工程でエンボスの形成と薬液塗布を行うものである。
このような装置50であっても、着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aに薬液を含浸させることができる。
【0055】
[第3の薬液含浸方法]
第3の薬液含浸方法で用いる装置50は、例えば図9(a)に示すように、外周面に複数の突起51aが設けられているエンボスロール51と、エンボスロール51に対向配置された受けロール52と、薬液Cが貯留されるタンク53と、タンク53内の薬液Cをエンボスロール51に供給するアニロックスロール54等を備えている。
【0056】
第3の薬液含浸方法は、エンボスロール51によって着用者側不織布13に複数の凸部13aを有するエンボスを形成する工程において、そのエンボスの凸部13aに薬液Cを塗布する手法をとっている。
具体的には、図9(b)に示すように、エンボスロール51の突起51aに薬液Cを付着させた状態で、エンボスロール51と受けロール52の間を通す着用者側不織布13に所定の圧力を加えることで、着用者側不織布13の一方の面が他方の面から押し出されて隆起した凸部13aを形成するとともに、その凸部13aの裏面から薬液Cを塗布するようになっている。なお、エンボスロール51への薬液Cの供給は、アニロックスロール54及びタンク53を用いて行うことができる。
【0057】
つまり、この装置50を作動させると、各ローラーがそれぞれ所定方向に回転し、着用者側不織布13が所定の方向に搬送される。
アニロックスロール54が軸回りに回転することに伴い、タンク53からアニロックスロール54の外周面に薬液Cが供給される。アニロックスロール54の外周面に供給された薬液Cは、アニロックスロール54の外周面と当接するエンボスロール51の突起51aに供給される。
そのエンボスロール51が軸回りに回転することにより、エンボスロール51と受けロール52の間を通過する着用者側不織布13にエンボス加工が施されると同時に、着用者側不織布13のエンボスの凸部13aに薬液Cが塗布される。
このようにして、着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aに薬液を含浸させることができる。
【0058】
このように、着用者側不織布13におけるエンボスの凸部13aに選択的に薬液が含浸されているマスク100であれば、薬液効果が付与されたうえに、良好な通気性が確保されたマスクとして好適に使用できる。
特に、このマスク100を着用した場合、薬液が含浸されている着用者側不織布13の凸部13a部分が着用者の肌に触れるようになるので、保湿やスキンケアが効能の薬液を用いるようにすれば、肌への負担をより一層軽減することができる。
また、このマスク100にも着用者側不織布13にエンボスによる模様が施されているので、ワンポイントのデザインとしての付加価値を有しており、デザイン性、意匠性を向上させたマスク100としても好適に使用できる。
【0059】
なお、以上の実施の形態においては、略同じ厚さを有する着用者側不織布13にエンボス加工を施し、その着用者側不織布13にエンボスの凸部13aを形成した場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図10(a)に示すように、エンボスの凸部13a部分がエンボス凹部よりも厚くなるように形成した着用者側不織布13であってもよい。
このような着用者側不織布13のエンボス凹部(エンボスの凸部13aの間)はフィルター12や外面側不織布11に近く、その部分のマスク本体部1は薄い態様を有しているので、通気性を確保することができる。
また、図10(b)に示すように、この着用者側不織布13のエンボスの凸部13aに所定の薬液が含浸されているようにしてもよい。このような着用者側不織布13を用いたマスク本体部1であっても、通気性を確保することができる。
【0060】
また、以上の実施の形態においては、着用者側不織布13にドット柄(水玉模様)を施すように小円形状の複数の凸部13aを有するエンボスが形成されている場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、エンボスパターン(凸部13aの形状)は任意であり、着用者側不織布13に任意の模様を施すようにしてもよい。
【0061】
また、着用者側不織布13にエンボスを形成する手法は、上記実施形態に限られず、グラビア印刷式、フレキソ印刷式、活版印刷式など、任意の手法であってよい。
【0062】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1 マスク本体
2 右耳掛け部
3 左耳掛け部
11 外面側不織布(外面側シート材)
12 フィルター
13 着用者側不織布(着用者側シート材)
13a 凸部
100 マスク
C 薬液
図1
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