(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】未臨界度測定装置および未臨界度測定方法
(51)【国際特許分類】
G21C 19/40 20060101AFI20230907BHJP
G21C 17/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G21C19/40 100
G21C17/06 070
(21)【出願番号】P 2019187858
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 啓基
(72)【発明者】
【氏名】左藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】山路 和也
(72)【発明者】
【氏名】中田 幹裕
(72)【発明者】
【氏名】堀元 俊明
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-003104(JP,A)
【文献】特開昭60-104293(JP,A)
【文献】特開2019-144015(JP,A)
【文献】特開平11-183682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/40
G21C 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料物質の近傍であって少なくとも一つが炉心を囲む炉心槽の内面に配置され
たり、原子炉容器内で炉心における複数の前記核燃料物質の間に配置されたり、原子炉容器内で前記炉心の中央、外側、その中間の少なくとも1つを含む炉心の複数のエリアごとに配置されたりする中性子検出器と、
前記中性子検出器の検出信号を所定時間当たりのカウント値として処理する信号処理部と、
前記信号処理部から得たカウント値から未臨界度を算出する演算部と、
前記演算部により算出された未臨界度、および新規の前記核燃料物質と使用中の前記核燃料物質との配置関係に基づく前記核燃料物質が配置された条件に基づいて未臨界度を評価する監視制御装置と、
を備える未臨界度測定装置。
【請求項2】
前記中性子検出器は、板状に形成され
る、請求項1に記載の未臨界度測定装置。
【請求項3】
前記監視制御装置は、前記未臨界度を表示すると共に前記未臨界度が所定の閾値を下回った場合に報知を行う、
請求項1または2に記載の未臨界度測定装置。
【請求項4】
核燃料物質の近傍であって少なくとも一つが炉心を囲む炉心槽の内面に配置された
り、原子炉容器内で炉心における複数の前記核燃料物質の間に配置されたり、原子炉容器内で前記炉心の中央、外側、その中間の少なくとも1つを含む炉心の複数のエリアごとに配置されたりする中性子検出器を適用し、
原子炉の運転停止中において、前記中性子検出器から得た検出信号を所定時間当たりのカウント値として処理するステップと、
前記カウント値から未臨界度を算出するステップと、
算出された前記未臨界度、および新規の前記核燃料物質と使用中の前記核燃料物質との配置関係に基づく前記核燃料物質が配置された条件に基づいて未臨界度を評価するステップと、
を含む未臨界度測定方法。
【請求項5】
前記中性子検出器は、板状に形成され
る、請求項4に記載の未臨界度測定方法。
【請求項6】
前記カウント値に予め計算した係数を掛けて未臨界度に換算するステップをさらに含む、請求項
4または5に記載の未臨界度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未臨界度測定装置および未臨界度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、原子炉が未臨界状態で停止中に、原子炉内の中性子レベルを測定し原子炉の出力の異常な上昇があった際に原子炉を停止させる方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電用軽水炉心では、例えば、異常事態で一旦炉心を停止してから、炉心冷却などで状態を変化させる場合、再臨界発生を防止するため、炉内外での中性子束などの間接的なパラメータ監視を行う。ただし、間接的なパラメータ監視では、大きな余裕を見込んでおく必要がある。炉心の停止中の反応度である未臨界度が分かれば、再臨界発生までにどの程度の余裕があるかを直接把握することができ、より合理的に炉心防護と再臨界防止を行うことが可能となる。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、未臨界度を精度よく測定することのできる未臨界度測定装置および未臨界度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る未臨界度測定装置は、核燃料物質の近傍に配置される中性子検出器と、前記中性子検出器の検出信号を所定時間当たりのカウント値として処理する信号処理部と、前記信号処理部から得たカウント値から未臨界度を算出する演算部と、を備える。
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る未臨界度測定方法は、核燃料物質の近傍に配置された中性子検出器を適用し、原子炉の運転停止中において、前記中性子検出器から得た検出信号を所定時間当たりのカウント値として処理するステップと、前記カウント値から未臨界度を算出するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、核燃料物質の近傍に配置した中性子検出器により、核燃料物質が発生する中性子を高感度で検出できる。そして、中性子検出器の検出信号を所定時間当たりのカウント値として処理し、カウント値から未臨界度を算出することで、未臨界度を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る未臨界度測定装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る未臨界度測定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る未臨界度測定装置の動作結果の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る未臨界度測定装置の動作結果の一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係る未臨界度測定装置の配置例を示す原子炉の縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す原子炉の炉心の横断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
本実施形態の未臨界度測定装置、未臨界度測定方法および中性子検出器は、原子力発電プラントに適用される。原子力発電プラントは、原子炉容器の内部に、核燃料物質としての燃料集合体が配置される炉心が設けられている。使用済の燃料集合体や、未使用の燃料集合体は、原子力発電プラントの燃料ピットに保管される。使用済の燃料集合体は、キャスクに収納されて保管設備に輸送される。本実施形態の未臨界度測定装置、未臨界度測定方法および中性子検出器は、このような原子力発電プラントにおいて燃料集合体の未臨界度を測定する。なお、核燃料物質としては、核燃料が様々な形態で構成されたものを含み、複数の燃料棒が束ねられた燃料集合体に限定されるものではない。以下の説明では、燃料集合体を例に説明する。また、燃料を扱うプラントとしては、燃料再処理工場や燃料加工施設などがあり、原子力発電プラントに限定されるものではない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る未臨界度測定装置を示す概略構成図である。
【0013】
本実施例に係る未臨界度測定装置1は、検出部2と、信号処理部3と、監視操作部4と、を含み構成されている。
【0014】
検出部2は、中性子検出器21と、プリアンプ22と、を有する。中性子検出器21は、中性子を検出するものである。プリアンプ22は、中性子検出器21から出力される検出信号を増幅する。
【0015】
信号処理部3は、電源装置31と、信号処理装置32と、MCA33と、を有する。電源装置31は、信号処理部3において信号処理装置32およびMCA33に電源を供給する。信号処理装置32は、検出部2においてプリアンプ22により増幅された検出信号を入力し、計測に不要なノイズを除去する。MCA33は、マルチチャンネルアナライザ(Multi-Channel Analyzer)であり、信号処理装置32によりノイズを除去された検出信号を入力し、この検出信号を所定時間当たりのカウント値、即ち高計数率中性子のパルスイベントとして処理する。そして、MCA33は、このパルスイベントを記録する。
【0016】
監視操作部4は、電源装置41と、演算部42と、監視制御装置43と、を有する。電源装置41は、監視操作部4において演算部42および監視制御装置43に電源を供給する。演算部42は、信号処理部3のMCA33が記録するパルスイベントのカウント値から未臨界度を算出する。演算部42は、例えば、コンピュータであり、図には明示しないが、演算処理装置、記憶装置などにより実現され、表示装置、入力装置、音声出力装置、ドライブ装置、および入出力インターフェース装置を有してもよい。演算処理装置は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROMやRAMのようなメモリおよびストレージを含む。演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施する。表示装置は、フラットパネルディスプレイを含む。入力装置は、操作されることにより入力データを生成するもので、キーボードおよびマウスの少なくとも一方を含む。なお、入力装置が表示装置の表示画面に設けられたタッチセンサを含んでもよい。音声出力装置は、スピーカーを含む。ドライブ装置は、処理を実行するためのプログラムなどのデータが記録された記録媒体からデータを読み出す。記録媒体は、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスクなどのように情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリなどの様に情報を電気的に記録する半導体メモリなど、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。入出力インターフェース装置は、演算処理装置と記憶装置と表示装置と入力装置と音声出力装置とドライブ装置との間でデータ通信する。
【0017】
演算部42において、未臨界度の算出は、例えば、ファインマンα法に基づく。また、対象となる燃料集合体の配置状態が未臨界度に影響することから、計測した結果に係数を掛けて未臨界度に換算する。係数は、例えば、炉心の形状に基づき予め計算して得られる。また、未臨界度の算出は、同じような炉心で繰り返し行い、過去データ(パルスイベントのテーブル)をフィードバックして更生することで不確定さをより小さくすることができる。
【0018】
監視制御装置43は、演算部42により算出された未臨界度を監視する。監視制御装置43は、例えば、コンピュータであり、図には明示しないが、演算処理装置、記憶装置などにより実現され、表示装置、入力装置、音声出力装置、ドライブ装置、および入出力インターフェース装置を有してもよい。これらの構成は演算部42と同様であり、監視制御装置43は演算部42と共に構成できる。
【0019】
監視制御装置43において、未臨界度の監視は、演算部42により算出された未臨界度の変動を表示装置にて表示することで実施できる。また、未臨界度の監視は、演算部42により算出された未臨界度の変動において、未臨界度が所定の閾値よりも下回った場合に異常を判定し、表示装置や音声出力装置により報知することで警報を実施できる。
【0020】
監視制御装置43において、未臨界度の監視は、演算部42により算出された未臨界度および燃料集合体が配置された条件に基づいて未臨界度を評価する。燃料集合体が配置された条件は、例えば、燃料集合体の配置や、新規の燃料集合体と使用中の燃料集合体との配置関係などに基づく。未臨界度の評価は、推論規則に基づいて実施される。推論規則は、記憶装置に記憶され、例えば、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクタマシン、および事例ベース推論などによる1または複数からなる。なお、推論規則は、記録媒体やネットワークを介して監視制御装置43に入力され記憶装置に記憶される。また、監視制御装置43では、時々刻々と変わる情報に基づき記憶装置に記憶されている推論規則を更新することができる。そのため、記憶装置には、推論規則を更新する更新プログラムが記憶されている。
【0021】
図2は、本実施形態に係る未臨界度測定装置の動作を示すフローチャートである。
図3および
図4は、本実施形態に係る未臨界度測定装置の動作結果の一例を示すグラフである。
【0022】
図2に示すように、未臨界度測定装置1は、検出部2において中性子検出を行う(ステップ:S1)。次に、未臨界度測定装置1は、信号処理部3において検出部2により検出された中性子の検出信号をカウントする(ステップ:S2)。次に、未臨界度測定装置1は、監視操作部4の演算部42において未臨界度を算出する(ステップ:S3)。次に、未臨界度測定装置1は、監視操作部4の監視制御装置43において未臨界度を表示する(ステップ:S4)。次に、未臨界度測定装置1は、監視操作部4の監視制御装置43において未臨界度の異常を判定する(ステップ:S5)。
【0023】
ステップS2において、検出部2により検出された中性子の検出信号は、
図3に示すように、時間ごとに検出信号の波高をカウントする。また、ステップS3において、未臨界度の算出は、
図3に示すように、ゲート時間ΔTの間の検出信号のカウントに基づいて実施される。また、ステップS4において、未臨界度の表示は、
図4に示すように、時間当たりの未臨界度の変動として表示される。また、ステップS5において、未臨界度の異常の判定は、
図4の表示データにて未臨界度の閾値を任意に設定し、未臨界度が閾値を下回る場合に臨界の可能性がある異常を判定する。ステップS5において、監視操作部4の監視制御装置43は、未臨界度の異常を判定した場合は報知を実施する。
【0024】
図5は、本実施形態に係る未臨界度測定装置の配置例を示す原子炉の縦断面図である。
図6は、
図5に示す原子炉の炉心の横断面概略図である。
【0025】
原子力発電プラントは、図には明示しないが、原子炉として、例えば、加圧水型原子炉が用いられる。加圧水型の原子力発電プラントは、原子炉において、一次冷却材である軽水を加熱した後、高温となった軽水を第一の冷却材配管を介して蒸気発生器に送る。そして、原子力発電プラントは、蒸気発生器において、高温となった軽水を、二次冷却材と熱交換させることにより二次冷却材を蒸発させ、蒸発した二次冷却材の蒸気を蒸気管を介してタービンに送って発電機を駆動させることにより、発電を行っている。また、蒸気発生器に流入した高温の軽水は、二次冷却材と熱交換を行うことにより冷却され、第二の冷却材配管を介して原子炉に戻され再び高温に加熱される。また、タービンで発電に用いられた二次冷却材の蒸気は、復水器で冷却されて液体に戻され復給水管を介して蒸気発生器に戻され一次冷却材との熱交換により再び蒸気となる。そして、原子炉、第一および第二の冷却材配管、蒸気発生器などにより、原子力発電プラントの一次冷却系統が構成され、これら一次冷却系統が原子炉格納容器に収容されている。なお、本実施形態の未臨界度測定装置1および中性子検出器21が適用される原子力発電プラントは、加圧水型原子炉に限らず、例えば沸騰水型原子炉など他の原子炉であってもよい。
【0026】
図5に示すように、加圧水型原子炉において、原子炉容器101は、圧力容器であって、その内部に燃料集合体120を含む炉内構造物が収容できるように、原子炉容器本体101aに対して原子炉容器蓋101bが複数のスタッドボルト121およびナット122により固定されている。原子炉容器本体101aは、原子炉容器蓋101bを取り外すことで上部が開口可能であり、下部が半球形状をなす下鏡101eにより閉塞された円筒形状をなす。
【0027】
炉内構造物について、原子炉容器本体101aの入口側管台101cおよび出口側管台101dより上方に上部炉心支持板123が配置され、下方の下鏡101eの近傍に下部炉心支持板124が配置される。上部炉心支持板123および下部炉心支持板124は、円板形状で図示しない多数の連通孔が形成されている。そして、上部炉心支持板123は、複数の炉心支持ロッド125を介して下方に上部炉心板126が連結されている。上部炉心板126は、図示しない多数の連通孔が形成されている。なお、上部炉心支持板123、および上部炉心支持板123に対して炉心支持ロッド125を介して上部炉心板126が連結された構造物を上部炉心構造物という。
【0028】
また、炉内構造物について、原子炉容器本体101aの内部に、その内壁面と所定の隙間をおいて円筒形状の炉心槽127が配置される。炉心槽127は、下端に下部炉心支持板124が固定される。また、炉心槽127は、その内部下方に下部炉心板128が設けられる。下部炉心板128は、円板形状で図示しない多数の連通孔が形成されており、複数の下部炉心支持柱129を介して下部炉心支持板124に支持される。なお、炉心槽127、および炉心槽127に対して設けられる下部炉心板128、並びに下部炉心支持板124を下部炉心構造物という。そして、この下部炉心構造物の炉心槽127は、上方から上部炉心構造物が挿入され、上端に上部炉心板126が連結される。下部炉心構造物の下部炉心支持板124は、原子炉容器本体101aに固定される。即ち、下部炉心構造物および上部炉心構造物は、下部炉心支持板124を介して原子炉容器本体101aに支持されることとなる。
【0029】
また、炉内構造物について、上部炉心板126と炉心槽127と下部炉心板128とにより炉心130が形成される。炉心130は、多数の燃料集合体120が炉心槽127の内部に配置され、かつ下部炉心板128上に装荷される。また、炉心130は、内部に多数の制御棒135が配置される。この多数の制御棒135は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ136となり、燃料集合体120内に挿入可能に設けられる。上部炉心支持板123は、多数の制御棒クラスタ案内管137が貫通して固定される。
【0030】
原子炉容器101を構成する原子炉容器蓋101bには、磁気式ジャッキの制御棒駆動装置138が設けられる。制御棒駆動装置138は、原子炉容器蓋101bと一体をなすハウジング139内に収容される。そして、制御棒駆動装置138から下方に延出された制御棒クラスタ駆動軸140が、制御棒クラスタ案内管137内を通って燃料集合体120まで延出され、制御棒クラスタ136を把持可能に設けられる。
【0031】
また、原子炉容器101は、上述した構成により、炉心130に対して、炉心槽127の内部であって、上部炉心板126の上方域に出口側管台101dに連通する上部プレナム142が形成される一方、炉心槽127の外部であって、下部炉心支持板124の下方域に下部プレナム143が形成される。そして、原子炉容器101の内壁と炉心槽127との間に入口側管台101cおよび下部プレナム143に連通するダウンカマー部144が形成される。
【0032】
なお、原子炉容器本体101aは、下鏡101eを貫通する多数の計装管台145が設けられる。各計装管台145は、炉内側の上端部に炉内計装案内管146が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ147が連結される。各炉内計装案内管146は、上端部が下部炉心支持板124に連結される。そして、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が装着されたシンブルチューブ148が、コンジットチューブ147から計装管台145および炉内計装案内管146を通り、下部炉心板128を貫通して燃料集合体120まで挿入可能となる。また、各炉内計装案内管146は、振動を抑制するための上下の連接板150,151が取り付けられる。連接板150,151は、支持柱152を介して下部炉心支持板124に連結される。また、連接板150,151は、ショックアブソーバ153により支持される。ショックアブソーバ153は、下鏡101eの最も底に固定される底板154と下側の連接板151との間に配置される。
【0033】
上述した原子炉に対し、本実施形態の未臨界度測定装置1は、
図5および
図6に示すように、検出部2における中性子検出器21が燃料集合体120の近傍である炉心130内に配置される。検出部2におけるプリアンプ22や、信号処理部3や、監視操作部4は、原子炉容器101の外部に配置される。中性子検出器21とプリアンプ22とを接続する信号ケーブルは、例えば、炉内計装案内管146を利用し、中性子検出器21から原子炉容器101の外部に引き出されプリアンプ22に接続される。従って、検出部2におけるプリアンプ22や、信号処理部3や、監視操作部4は、中性子やガンマ線の影響を受けにくい環境に配置できる。
【0034】
中性子検出器21は、
図5および
図6に示すように、燃料集合体120の側面(燃料集合体120の間)や、炉心130を囲む炉心槽127の内面のような狭隘な箇所に配置される。中性子検出器21は、その外形寸法が上述した範囲を満たすことで、中性子検出器21は、燃料集合体120の長さの範囲全体から発生する中性子を検出できるように、
図5に示すように、燃料集合体120の長さに合わせた範囲に配置することが好ましい。これに限らず、中性子検出器21は、燃料集合体120の長さの範囲の複数箇所に配置してもよい。また、中性子検出器21は、
図6に示すように、燃料集合体120を複数配置した炉心130の複数箇所に配置することが好ましい。
図6では、斜線で示す炉心130の中央130Cおよび外側130Oや、その中間130Mのエリアに中性子検出器21を配置した例を示している。また、
図6では、炉心130の周方向の複数箇所に中性子検出器21を配置した例を示している。このように、中性子検出器21を炉心130の複数箇所に配置することで、炉心130の複数のエリアごとに中性子検出器21を配置し、エリアごとの未臨界度を測定することができる。
【0035】
中性子検出器21は、例えば、板状や棒状に形成されることが好ましい。中性子検出器21を板状や棒状に構成することで、
図5および
図6を参照するような狭隘な箇所に配置することができる。このため、燃料集合体120の配置設計を大幅に変更することなく、燃料集合体120の間に配置することができ、炉心槽127の設計を変更することなく、炉心槽127の内面に配置することができる。現状の炉心130の構造のまま、燃料集合体120の数を減らさず中性子検出器21を配置することができれば、現状の原子炉運転中の炉内で発生する中性子数が変わらないため、炉心運転を阻害することがない。また、中性子検出器21を板状や棒状に構成することで、中性子検出器21にガンマ線を透過させてガンマ線の検出感度を低くすることができる。また、中性子検出器21は、検出素子が複数配列されていることが好ましく、多くの検出信号を出力することができる。
【0036】
上述した、本実施形態の未臨界度測定装置1は、燃料集合体(核燃料物質)120の近傍に配置される中性子検出器21と、中性子検出器21の検出信号を所定時間当たりのカウント値として処理する信号処理部3と、信号処理部3から得たカウント値から未臨界度を算出する演算部42と、を備える。
【0037】
燃料集合体120の近傍に中性子検出器21を配置したことで、燃料集合体120が発生する中性子を高感度で検出できる。そして、信号処理部3により中性子検出器21の検出信号を所定時間当たりのカウント値として処理し、演算部42により信号処理部3から得たカウント値から未臨界度を算出する。このため、未臨界度を精度よく測定することができる。
【0038】
ところで、原子炉においては、一次冷却材の温度を280℃から300℃に昇温させた状態で燃料集合体120から制御棒クラスタ136を引き抜いて臨界にする。現状の運用では、制御棒クラスタ136の待機時間を設けて制御棒クラスタ136を徐々に引き抜いて出力を徐々に上げる起動試験を実施している。本実施形態の未臨界度測定装置1では、中性子検出器21を燃料集合体120の近傍に配置するため、原子炉の運転停止中において、一次冷却材の昇温を行う前から未臨界度を測定することができる。一次冷却材の昇温を行う前の未臨界度は、燃料集合体120に挿入されている状態の制御棒クラスタ136の性能に相当する。即ち、本実施形態の未臨界度測定装置1により未臨界度を測定することで、予め制御棒クラスタ136の性能を知ることができる。この結果、原子炉の安全性および信頼性を向上できる。また、予め制御棒クラスタ136の性能を知ることで、炉心130の特性を測定することの代替えとなり、起動時の起動試験を簡略化または無くすことが可能となり、起動時間を短縮することができ、稼働率の向上を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態の未臨界度測定装置1では、未臨界度を表示すると共に未臨界度が所定の閾値を下回った場合に報知を行う監視制御装置43をさらに備える。
【0040】
未臨界度を表示することで、未臨界度の変動を目視により確認できる。この未臨界度の変動において未臨界度が所定の閾値を下回った場合に報知を行うことで、異常を認識し、早急な対応を行うことができる。
【0041】
また、本実施形態の未臨界度測定装置1では、少なくとも一つの中性子検出器21は、原子炉容器101内で炉心130における複数の燃料集合体120の間に配置される。
【0042】
即ち、燃料集合体120の近傍とは、原子炉容器101内で炉心130における複数の燃料集合体120の間であり、ここに中性子検出器21を配置することで、燃料集合体120が発生する中性子を高感度で検出することができる。
【0043】
また、本実施形態の未臨界度測定装置1では、少なくとも一つの中性子検出器21は、原子炉容器101内で炉心130の周囲に配置される。
【0044】
即ち、燃料集合体120の近傍とは、原子炉容器101内で炉心130の周囲であり、ここに中性子検出器21を配置することで、燃料集合体120が発生する中性子を高感度で検出することができる。
【0045】
また、本実施形態の未臨界度測定装置1では、中性子検出器21は、原子炉容器101内で炉心130の複数のエリアごとに配置される。
【0046】
中性子検出器21を炉心130の複数のエリアごとに配置することで、監視制御装置43は、演算部42が算出したエリアごとの未臨界度および、エリアごとに燃料集合体120が配置された条件に基づいて未臨界度を評価することができる。従って、燃料集合体120が配置された条件に基づいてより正確に炉心130の特性を測定することができる。
【0047】
また、本実施形態の未臨界度測定装置1では、前記エリアは、炉心130の中央130C、外側130O、その中間130Mの少なくとも1つを含む。
【0048】
従って、炉心130の中央130C、外側130O、その中間130Mの未臨界度を評価することができる。
【0049】
また、本実施形態の未臨界度測定方法は、燃料集合体120の近傍に配置された中性子検出器21を適用し、原子炉の運転停止中において、中性子検出器21から得た検出信号を所定時間当たりのカウント値として処理するステップと、カウント値から未臨界度を算出するステップと、を含む。
【0050】
燃料集合体120の近傍に中性子検出器21を配置することで、燃料集合体120が発生する中性子を高感度で検出できる。そして、中性子検出器21の検出信号を所定時間当たりのカウント値として処理し、カウント値から未臨界度を算出することで、未臨界度を精度よく測定することができる。
【0051】
また、本実施形態の未臨界度測定方法では、中性子検出器21を燃料集合体120の近傍に配置することができることから、原子炉の運転停止中において、一次冷却材の昇温を行う前から未臨界度を測定することができる。一次冷却材の昇温を行う前の未臨界度は、燃料集合体120に挿入されている状態の制御棒クラスタ136の性能に相当する。即ち、本実施形態の未臨界度測定装置1により未臨界度を測定することで、予め制御棒クラスタ136の性能を知ることができる。この結果、原子炉の安全性および信頼性を向上できる。また、予め制御棒クラスタ136の性能を知ることで、炉心130の特性を測定することの代替えとなり、起動時の起動試験を簡略化または無くすことが可能となり、起動時間を短縮することができ、稼働率の向上を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態の未臨界度測定方法では、カウント値に予め計算した係数を掛けて未臨界度に換算するステップをさらに含む。
【0053】
この未臨界度測定方法によれば、計測した結果に係数を掛けて未臨界度に換算することで、燃料集合体の配置状態などによる未臨界度の影響を補正できる。
【符号の説明】
【0054】
1 未臨界度測定装置
2 検出部
21 中性子検出器
22 プリアンプ
3 信号処理部
31 電源装置
32 信号処理装置
4 監視操作部
41 電源装置
42 演算部
43 監視制御装置
101 原子炉容器
120 燃料集合体(核燃料物質)
127 炉心槽
130 炉心