IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝産業機器システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-母線の配置構造、閉鎖配電盤 図1
  • 特許-母線の配置構造、閉鎖配電盤 図2
  • 特許-母線の配置構造、閉鎖配電盤 図3
  • 特許-母線の配置構造、閉鎖配電盤 図4
  • 特許-母線の配置構造、閉鎖配電盤 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】母線の配置構造、閉鎖配電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/20 20060101AFI20230907BHJP
   H02G 5/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H02B1/20 H
H02B1/20 E
H02G5/06 301
H02G5/06 311
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019206938
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021083175
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】上村 和矢
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-029018(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136112(WO,A1)
【文献】特開昭63-287309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
H02B 13/00 - 13/08
H02G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電盤に複数の水平母線を配置するための母線の配置構造であって、
複数の前記水平母線は、前記配電盤内において、上端と下端とが他の部材によって制限されている配置可能領域内に配置されているとともに、前記配置可能領域の上端の部材と下端の部材との間において、それぞれの前記水平母線が互いに等間隔で上下方向に配置されており、
前記上端の部材および前記下端の部材のうち少なくとも一方は、導体で形成されており、
複数の前記水平母線のうち最上段に配置される前記水平母線と前記上端の部材との間、および、最下段に配置される前記水平母線と前記下端の部材との間は、予め定められている絶縁距離だけ離間しており、
それぞれの前記水平母線は、互いに第1距離(X)を存して等間隔に配置されているとともに、最上段に配置されている前記水平母線は、前記上端の部材との間に第2距離(Y)を存して配置され、最下段に配置されている前記水平母線は、前記下端の部材との間に前記第2距離(Y)を存して配置されており、
前記第1距離(X)および前記第2距離(Y)は、距離の2乗に反比例する値であってそれぞれの前記水平母線に電流を流した際の磁界の変化によって隣り合う水平母線および他の部材に影響を与えるエネルギーが、最も少なくなる距離に設定されている母線の配置構造。
【請求項2】
前記上端の部材および前記下端の部材のうち少なくとも一方は、鋼板で形成されており、
複数の前記水平母線は、銅材料で形成されており、その数によらず、前記第1距離(X)を前記第2距離(Y)で除した比が2.6を基準とした所定の範囲内に配置されている請求項1記載の母線の配置構造。
【請求項3】
前記水平母線に直交して配置される垂直母線を、前記配電盤内を鉛直方向に延びるダクト内に配置した請求項1または2記載の母線の配置構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項記載の母線の配置構造で配置された水平母線と、
導体で形成され、前記水平母線を配置することができる配置可能領域の上端および下端の少なくとも一方に設けられている部材と、
を備える閉鎖配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配電盤内に母線を配置する母線の配置構造、および、その配置構造で配置された母線を備える閉鎖配電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば三相交流電源に接続された水平母線と、その水平母線に接続された垂直母線とを収容する閉鎖配電盤が知られている。このような閉鎖配電盤は、電力が供給された際に母線が発熱することから、例えば特許文献1では、複数組の垂直母線を設けることで発熱を抑えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6173579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、閉鎖配電盤の高集積化に伴って、供給する電力の定格を引き上げることが求められている。
【0005】
しかしながら、定格を引き上げた場合、新たな問題が発生することが判明した。具体的には、定格を引き上げたことにより母線にはより大きな電流が流れることから、母線自体の発熱に加えて、近傍の導体が誘導加熱されて発熱し、閉鎖配電盤内の温度が要求仕様を超えて上昇してしまうおそれがあることが判明した。
【0006】
そこで、母線の発熱による温度上昇を抑制することができる母線の配置構造、および、そのように配置された母線を備える閉鎖配電盤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の母線の配置構造は、配電盤に複数の水平母線を配置するための構造であって、複数の水平母線は、配電盤内において、上端と下端とが他の部材によって制限されている配置可能領域内に配置されているとともに、配置可能領域の上端の部材と下端の部材との間において、それぞれの水平母線が互いに等間隔で上下方向に配置されており、上端の部材および下端の部材のうち少なくとも一方は、導体で形成されている。
【0008】
また、実施形態の閉鎖配電盤は、上記した母線の配置構造で配置された水平母線と、導体で形成され、水平母線を配置することができる配置可能領域の上端および下端の少なくとも一方に設けられている部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の母線の配置構造および閉鎖配電盤を側面視にて模式的に示す図
図2】母線の配置構造および閉鎖配電盤を背面側から視た状態を模式的に示す図
図3】母線の配置構造および閉鎖配電盤を平面視にて模式的に示す図
図4】他の母線の配置構造を模式的に示す図
図5】水平母線の設置時の許容範囲を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
本実施形態による閉鎖配電盤1は、図1に示すように上下方向に長く、図2および図3に示すように前後方向および左右方向が概ね同じ長さに形成された直方体状の筐体2を備えている。以下、図1から図3に示すように、閉鎖配電盤1の上下方向を縦方向とも称し、前後方向を奥行き方向とも称して説明する。
【0012】
この閉鎖配電盤1は、図1に示すように、前板2a側に機器収容室3を備えており、例えばモータ制御装置等の機器を上下方向に複数個収容可能になっている。また、閉鎖配電盤1は、後板2b側に母線収容室4が設けられている。そして、各機器に電力を供給するための導体である水平母線5と垂直母線6とは、この母線収容室4の内部に収容されている。このとき、各水平母線5は、詳細は後述するが、所定の配置可能領域(H)内に収まるように、且つ、所定の母線構造となるように配置されている。
【0013】
閉鎖配電盤1の後板2bつまりは閉鎖配電盤1において水平母線5と対向する側の外板には、下端側に位置して外部に連通する吸気口7と、上部側に位置して外部に連通する排気口8とが設けられている。これら吸気口7および排気口8は、例えば後板2bにスリットを形成したり、後板2bに開口を形成して網部材やフィルタ部材等により目張り可能にしたりすること等によって形成されている。
【0014】
このとき、排気口8は、配置する水平母線5の数にもよるものの、例えば図1のように4本の水平母線5を配置する場合には、最上段に配置される水平母線5よりも上方に位置するように設けることができる。また、吸気口7は、配置する水平母線5の数にもよるものの、最下段に配置される水平母線5よりも下方に位置するように設けることができる。これにより、導入された空気により各水平母線5を冷却することが可能になるとともに、各水平母線5を冷却した空気が排出されることから、冷却効率を向上させることができる。
【0015】
これらの水平母線5は、銅材料で形成されており、三相4線式の配線にて図示しない単一系統の電源に接続されている。また、本実施形態では、水平母線5はいわゆるR相、S相およびT相の3相分の3本と、中点に対応するN相の1本のとの合計4本が設けられている。図1では、R相の水平母線5を5(R)と示し、S相の水平母線5を5(S)と示し、T相の水平母線5を5(T)と示し、N相の水平母線5を5(N)と示している。これらの水平母線5は、図2に示すように、閉鎖配電盤1の左右方向に延びているとともに、接続導体9によってそれぞれ対応する垂直母線6に電気的に接続されている。なお、図2では、垂直母線6の図示を省略している。
【0016】
そして、本実施形態の場合、水平母線5は、閉鎖配電盤1の天板2cと底板2dとの間、つまりは、上端と下端とが他の部材である天板2cと底板2dとによって物理的に制限つまりは物理的に規定された配置可能領域(H)内に配置されている。このとき、天板2cおよび底板2dのうち少なくとも一方は、導体で形成されている。本実施形態の場合、天板2cおよび底板2dの双方が導体で形成されており、その導体として洗浄鋼板を採用している。この洗浄鋼板は、炭素含有率が0.1%程度の鉄合金である。ただし、導体の構成は一例であり、電気的に同等の特性を有するものであれば、例えば炭素含有率が異なる鉄合金を採用することができる。
【0017】
各水平母線5は、互いの間隔が第1距離(X)だけ離間して等間隔に配置されているとともに、最上段の水平母線5が天板2cから第2距離(Y)だけ離間しており、最下段の水平母線5が底板2dから第2距離(Y)だけ離間した状態で配置されている。ただし、第2距離(Y)は、安全規格等により予め定められている絶縁距離を確保できる値以上に設定されている。
【0018】
また、各垂直母線6は、図3に示すように断面視にてL字状に形成されており、上下方向に配設された個別のダクト10内にそれぞれ配置されている。このダクト10は、閉鎖配電盤1内を鉛直方向に延びる概ね細長い四角筒状に形成されている。つまり、ダクト10は、暖められた空気が対流によって上方に移動しやすい構造となっている。また、ダクト10には、機器の接続端子に対応する位置にそれぞれ開口が形成されている。これにより、機器収容室3に収容される機器を前方から挿入して後方へ押し込むことによって、端子部分が垂直母線6のL字状の短辺と噛み合って電源を供給することができる。
【0019】
次に、上記した構成の作用について説明する。
前述のように、閉鎖配電盤1の定格を引き上げた場合、母線にはより大きな電流が流れることから、母線自体の発熱に加えて、近傍の導体が誘導加熱されて発熱し、閉鎖配電盤1内の温度が要求仕様を超えて上昇してしまうおそれがあるという問題がある。そのため、誘導加熱による影響つまりは発熱を抑制するためには、ある水平母線5が他の水平母線5に与える影響が小さくなるような配置とすればよいことになる。
【0020】
さて、ある導体の近傍に他の導体が存在している場合、電流が流れた際の磁束の変化によって他の導体に影響を与えるエネルギーは、導体間の距離に反比例することが知られている。そのため、他の導体に影響を与えるエネルギーを低減するためには、水平母線5間の距離をなるべく広くすればよいことが分かる。そして、上端および下端が他の部材によって制限されている配置可能領域(H)に配置する場合であれば、各水平母線5を最大限に離間させた状態で配置するためには、水平母線5間の距離である第1距離(X)を均等にすればよいことが分かる。
【0021】
そのため、本実施形態では、水平母線5間の第1距離(X)を均等にし、配置可能領域(H)内において各水平母線5を上下方向に等間隔で配置している。これにより、水平母線5同士の影響によるエネルギーを最小にすることができ、誘導加熱によって生じる発熱を抑制することができる。
【0022】
ところで、閉鎖配電盤1の筐体2は一般的に鋼板等で形成されていることから、水平母線5の近傍には、他の水平母線5以外にも導体が存在していることになる。そして、筐体2が誘導加熱された場合にも、閉鎖配電盤1内の温度上昇を招くことになる。そのため、水平母線5に隣り合うように配置されている他の導体、ここでは、配置可能領域(H)の上端と下端とを制限している天板2cや底板2dに対する影響も考慮すれば、より一層発熱を低減する効果を期待できると考えられる。
【0023】
そこで、本実施形態では、他の各水平母線5へ影響を抑制するために第1距離(X)で等間隔に各水平母線5を配置するとともに、最上段の水平母線5(R)と天板2cとの間、ならびに、最下段の水平母線5(N)と天板2cとの間の距離である第2距離(Y)を、以下のようにして設定している。
【0024】
最上段に配置されている水平母線5(R)に着目してみると、隣り合う水平母線5(S)に影響を与えるエネルギー(P1)はP1=α×(1/X)^2であり、天板2cに影響を与えるエネルギー(P2)はP2=β×(1/Y)^2である。そのため、水平母線5(R)については、外部の導体に影響を与えることになるエネルギー(Pr)は、Pr=α×(1/X)^2+β×(1/Y)^2となる。なお、α、βは導体の形状や性質による係数であり、「^」は自乗を示す。
【0025】
また、両隣が他の水平母線5(R、T)に挟まれている水平母線5(S)が隣り合う2本の水平母線5に影響を与えるエネルギー(Ps)、および、両隣が他の水平母線5(S、N)に挟まれている水平母線5(T)が隣り合う2本の水平母線5に影響を与えるエネルギー(Pt)は、それぞれPs=Pt=2×α×(1/X)^2となる。また、最下段に配置されている水平母線5(N)に着目してみれば、最上段の水平母線5(R)と同様に、エネルギー(Pn)は、Pn=α×(1/X)^2+β×(1/Y)^2となる。
【0026】
そして、上記の母線構造において他の導体に影響を与える際の総エネルギー(P)は各エネルギーの総和として求めることができることから、銅材料で形成した水平母線5の電気的特性に基づいてαを設定し、洗浄鋼板で形成した天板2cおよび底板2dの電気的特性に基づいてβを設定することにより、総エネルギー(P)を、XとYの関数として求めることができる。
【0027】
このとき、水平母線5の数をn本とした場合には、H=(n-1)×X+2×Yの関係が成立する。そして、配置可能領域(H)は実質的に閉鎖配電盤1の高さと見なせることから、XとYとの関係を求めることができる。換言すると、YをXの関数として、Y=(H-(n-1)×X)/2と表すことができる。なお、XをYの関数として表すこともできるが、最終的に求まる配置は同じものになる。
【0028】
そして、総エネルギー(P)が最小となるXは、例えば演算によって、あるいは、表計算ソフトに総エネルギー(P)の演算式を設定してXを例えば数mmや数cm単位で変化させることによって求めることができる。また、Xが求まれば、上記の関係からYを特定することができる。これにより、発熱量を最小にすることができるXとYの値、つまりは、発熱量を最小にすることができる水平母線5の配置を特定することができる。
【0029】
さて、上記した総エネルギー(P)が最小となるX、Yを求めた場合、XをYで除した比(X/Y)は、概ね2.64となることが判明した。換言すると、第1距離(X)と第2距離(Y)の比(X/Y)が概ね2.64となるように水平母線5を配置すれば、発熱量を最小にすることができることが判明した。
【0030】
ところで、閉鎖配電盤1には、図4に示すように、例えば8本の水平母線5が配置されることがある。このとき、8本の水平母線5を配置した場合における第1距離(X)は、上記した4本の水平母線5を配置した図2における第1距離(X)よりも短くなっている。なお、図4の場合、本実施形態では1系統の電源から各相について2本の水平母線5に電源供給する構成を想定しているが、異なる2系統の電源から各相の水平母線5にそれぞれ電源供給する構成とすることもできる。
【0031】
このような構成であっても、他の導体に与える影響を考慮して総エネルギーを求めて第1距離(X)と第2距離(Y)とを求めたところ、それらの比(X/Y)は、概ねX/Y=2.64になるという結果が得られた。この結果から、配置する水平母線5の数(n)によらず、第1距離(X)と第2距離(Y)との比(X/Y)が約2.64を中心とした範囲となるように各水平母線5を配置すれば、発熱量を最小にすることができることが判明した。
【0032】
このように、配置可能領域(H)の上端と下端とが導体によって規定されている場合において、複数の水平母線5を、その数によらず、第1距離(X)を第2距離(Y)で除した比(X/Y)が約2.64を基準とした所定の範囲内となるように配置すれば概ね発熱量を最小にすることができる。
【0033】
ただし、物理的な制約により、各水平母線5を厳密にX/Y=2.64となる位置に配置することができない場合も想定される。その場合、図5に許容目標配置として示すように、X/Y=約2.64となる2.6位置を目標とする一方、総エネルギーが閉鎖配電盤1の仕様として許容できる範囲に収まる程度のずれを許容上限と許容下限として設定し、その範囲内に水平母線5を配置することにより、水平母線5の設置位置に過度な精度を必要とすることなく発熱量を低減することができる。
【0034】
この場合、図5に許容配置として示すように、水平母線5の上端又は下端が2.6位置に掛かるように、つまりは、水平母線5の上下方向の幅(W)の範囲内に2.6位置が来るように配置することによっても、水平母線5の設置位置に過度な精度を必要とすることなく発熱量を低減することができる。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
閉鎖配電盤1に設置される複数の水平母線5は、閉鎖配電盤1内において、上端と下端とが他の部材によって制限されている配置可能領域(H)内に配置されているとともに、上端の部材と下端の部材との間において、それぞれの水平母線5を上下方向に互いに等間隔となるように配置されている。このとき、上端の部材および下端の部材のうち少なくとも一方は、導体で形成されている。
【0036】
このような母線の配置構造を採用することにより、母線の発熱による温度上昇を抑制することができる。また、このような母線の配置構造で配置された水平母線5と、導体で形成され、水平母線5を配置することができる配置可能領域の上端および下端の少なくとも一方に設けられている天板2cや底板2dのような部材と、を備える閉鎖配電盤1によっても、母線の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0037】
複数の水平母線5のうち、最上段に配置される水平母線5と上端の部材例えば天板2cとの間、および、最下段に配置される水平母線5と下端の部材例えば底板2dとの間は、予め定められている絶縁距離だけ離間している。これにより、安全性を確保することができる。
【0038】
配置可能領域(H)の上端と下端に配置される部材は、天板2cや底板2dのような導体であり、それぞれの水平母線5は、互いに第1距離(X)を存して等間隔に配置されているとともに、最上段に配置されている水平母線5は上端の部材である天板2cとの間に第2距離(Y)を存して配置されている。
【0039】
そして、最下段に配置されている水平母線5は下端の部材である底板2dとの間に前記第2距離(Y)を存して配置されており、第1距離(X)および第2距離(Y)は、距離の2乗に反比例する値であってそれぞれの水平母線5に電流を流した際の磁界の変化によって隣り合う水平母線5および他の部材に影響を与えるエネルギーが最も少なくなる距離に設定されている。これにより、水平母線5の物理的な配置によって母線の発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0040】
この場合、配置可能領域(H)の上端と下端に配置される部材は、水平母線5と共通する磁気的特性を有する導体であると仮定し、複数の水平母線5を、その数(n)によらず、第1距離(X)を第2距離(Y)で除した比が2.64を基準とした所定の範囲内となるように配置することにより、母線の発熱による温度上昇を抑制することができる配置構造とすることができる。この場合、比が約2.64であるときのエネルギー量を基準として例えば10%の範囲内を配置の目標位置としたり、水平母線5の一部が目標位置に掛かる状態で配置したりすることにより、過度に位置精度を必要とすることを抑制でき、生産性や作業性を損なうおそれを低減することができる。
【0041】
水平母線5と当該水平母線5に直交して配置される垂直母線6との間を接続する接続導体9を設けたことにより、水平母線5の発熱を垂直母線6により放熱することができ、発熱を抑制することができる。このとき、実施形態のように上方に延びるダクト10内に垂直母線6を配置することで、自然対流による冷却を促すことができ、閉鎖配電盤1内の温度上昇をより一層低減することができる。
【0042】
また、実施形態では隣り合う導体への影響を考慮した配置としたが、例えば図2において、水平母線5(R)からの影響を、水平母線5(T)や水平母線5(N)あるいは底板2dに対しても考慮して各水平母線5の配置構造を決定することもできる。その場合であっても、第1距離(X)を第2距離(Y)で除した比が2.64を基準とした所定の範囲内となるように配置することにより、母線の発熱による温度上昇を抑制することができる配置構造とすることができ、閉鎖配電盤1内の温度上昇を低減することができる。また、上記した母線の配置構造は、閉鎖配電盤1以外の配電盤に適用することもできる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
図面中、1は閉鎖配電盤(配電盤)、2cは天板(他の部材)、2dは底板(他の部材)、5は水平母線、6は垂直母線、10はダクトを示す。
図1
図2
図3
図4
図5