(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】両面粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230907BHJP
C09J 7/28 20180101ALI20230907BHJP
C09J 183/00 20060101ALI20230907BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230907BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20230907BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230907BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/28
C09J183/00
C09J11/04
C09J9/02
B32B27/00 M
B32B27/00 101
B32B15/08 Q
(21)【出願番号】P 2020028501
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(72)【発明者】
【氏名】梅原 整裕
(72)【発明者】
【氏名】付 文峰
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特許第7264645(JP,B2)
【文献】特開2017-19955(JP,A)
【文献】特開2004-091703(JP,A)
【文献】特開2001-146578(JP,A)
【文献】国際公開第2015/76174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 15/08,27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の導電性粘着剤層と、導電性基材と、第二の導電性粘着剤層と、が積層された両面粘着シートであって、
前記第一の導電性粘着剤層及び前記第二の導電性粘着剤層は、シリコーン系粘着剤及び導電性フィラーを含有し、
前記第一の導電性粘着剤層の粘着力は、前記第二の導電性粘着剤層の粘着力よりも大きく、
前記第一の導電性粘着剤層及び前記第二の導電性粘着剤層を貫く厚み方向に導電性を有し、
前記第一の導電性粘着剤層の260℃における熱重量減少率が2.5~6%であることを特徴とする両面粘着シート。
【請求項2】
前記導電性基材の厚みが5~100μmであることを特徴とする請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
前記導電性基材が、銅箔またはアルミニウム箔であることを特徴とする請求項1または2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
前記第一の導電性粘着剤層のステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)に対する粘着力(剥離角度90°、引張速度300mm/min)が、1.0N/25mm以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
前記第二の導電性粘着剤層のポリイミドフィルム(厚さ25μm)に対する粘着力(剥離角度90°、引張速度50mm/min)が、0.03~2.0N/25mm未満であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高精度化に対応して、ポリイミドフィルムと配線用導体を積層成形したフレキシブルプリント配線基板(以下、FPC基板(Flexible Printed Circuit Boards)と略す。)が使用されている。このようなFPC基板は、フィルム状基材へパターン形成し、積層やソルダーレジスト処理工程、更に実装工程を経ることにより、製造される。
【0003】
上記FPC基板を製造するにあたり、基材として薄肉で可撓性の高いフィルム状基材が用いられることから、いわゆるロール・トゥ・ロールでフィルム状基材を搬送しながら、回路形成用のフォトレジストをコーティングする工程、乾燥させる工程、露光する工程、現像する固定、硬化させる工程、めっき工程、はんだ処理工程(リフロー工程を含む)、各工程間における洗浄・乾燥工程等といった多くの加工工程を順次施す連続工程が採用されている。
【0004】
また、フィルム状基材、半導体部材等のワークを補強材(すなわち、搬送治具)に保持させることで補強し、搬送しながら、この状態で従来の枚葉状のプリント配線板の製造と同様の工程にて加工処理を施すことで、FPC基板を製造することも行われている。このような工法において、フィルム状基材、半導体部材等のワークを搬送治具に保持させるにあたって、搬送治具上に、シリコーン樹脂から形成された感圧接着性の有機物層を形成することが行われている(特許文献1,2,3)。
【0005】
更に、ポリイミドフィルムの両表面に、シリコーン樹脂から形成された感圧接着性の有機物層(すなわち、粘着剤層)が形成された両面粘着シートが、フィルム状基材、半導体部材等のワークを搬送治具に保持させる用途に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4571436号公報
【文献】特許第4695349号公報
【文献】特許第4695350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の両面粘着シートは、両表面の粘着剤層にシリコーン系粘着剤を用いて、粘着力を適切に調整することで、搬送治具に、フィルム状基材、半導体部材等のワークの貼着及び剥離を多数回繰り返して、半導体装置の製造の用途に使用することができる。しかしながら、ワークの剥離の際に、剥離帯電が生じて、フィルム状基材上の半導体部材や、半導体部材のワーク自体が静電破壊されるおそれがあった。また、リフロー工程を複数回経た両面粘着シートでは、粘着剤に気泡が発生し、ワークの保持力が低下して粘着剤からワークが剥離するという問題を有していた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、搬送治具に対して、フィルム状基材、半導体部材等のワークの貼着、加工及び剥離を多数回繰り返して使用することができ、かつ、剥離帯電を抑制することができ、リフロー工程を複数回経ても粘着剤に気泡が生じにくく、粘着剤からワークが剥離しにくい両面粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]第一の導電性粘着剤層と、導電性基材と、第二の導電性粘着剤層と、が積層された両面粘着シートであって、
前記第一の導電性粘着剤層及び前記第二の導電性粘着剤層は、シリコーン系粘着剤及び導電性フィラーを含有し、
前記第一の導電性粘着剤層の粘着力は、前記第二の導電性粘着剤層の粘着力よりも大きく、
前記第一の導電性粘着剤層及び前記第二の導電性粘着剤層を貫く厚み方向に導電性を有し、
前記第一の導電性粘着剤層の260℃における熱重量減少率が2.5~6%であることを特徴とする両面粘着シート。
【0010】
[2]前記導電性基材の厚みが5~100μmであることを特徴とする前記[1]に記載の両面粘着シート。
[3]前記導電性基材が、銅箔またはアルミニウム箔であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の両面粘着シート。
[4]前記第一の導電性粘着剤層のステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)に対する粘着力(剥離角度90°、引張速度300mm/min)が、1.0N/25mm以上であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
[5]前記第二の導電性粘着剤層のポリイミドフィルム(厚さ25μm)に対する粘着力(剥離角度90°、引張速度50mm/min)が、0.03~2.0N/25mm未満であることを特徴とする前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送治具に対して、フィルム状基材、半導体部材等のワークの貼着、加工及び剥離を多数回繰り返して使用することができ、剥離帯電を抑制することができ、リフロー工程を複数回経ても粘着剤に気泡が生じにくく、粘着剤からワークが剥離しにくい、両面粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る両面粘着シートの概略断面図である。
【
図2】本発明に係る両面粘着シートの使用方法の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態の両面粘着シートについて説明する。なお、以下の説明で用いる図面において、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0014】
[両面粘着シート]
図1は、本発明に係る両面粘着シートの概略断面図である。
両面粘着シート10は、第一の導電性粘着剤層20と、導電性基材50、第二の導電性粘着剤層30と、が積層された両面粘着シートであり、第一の導電性粘着剤層20の側に剥離シート40が積層され、第二の導電性粘着剤層30の側に剥離シート41が積層されている。
第一の導電性粘着剤層20及び第二の導電性粘着剤層30は、シリコーン系粘着剤及び導電性フィラーを含有し、第一の導電性粘着剤層20の粘着力は、第二の導電性粘着剤層30の粘着力よりも大きい。
第一の導電性粘着剤層20は、剥離シート40が剥がされて、フィルム状基材、半導体部材等のワークをリフロー工程用の搬送治具に固定することができ、第二の導電性粘着剤層30は、剥離シート41が剥がされて、両面粘着シートを、リフロー工程用の搬送治具に、フィルム状基材、半導体部材等のワークを仮固定するために使用することができる。
第二の導電性粘着剤層30の粘着力は、第一の導電性粘着剤層20の粘着力よりも小さいので、搬送治具に対して、ワークの貼着及び剥離を多数回繰り返すことができる。
【0015】
両面粘着シート10は、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30を貫く厚み方向に導電性を有するので、リフロー工程用の搬送治具に対して、ワークの貼着及び剥離を多数回繰り返して使用しても、剥離帯電を抑制することができる。また、両面粘着シート10は、導電性基材50を備えるので、加工性、取り扱い性に優れる。具体的には、コシが適切に有するので貼り直しし易く、剥離シートを剥がし易く、また、打ち抜き加工がし易くなる。
【0016】
両面粘着シート10は、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30を貫く厚み方向及び平面方向に導電性を有することが好ましい。
【0017】
第一の導電性粘着剤層20及び第二の導電性粘着剤層30において、シリコーン系粘着剤は、ポリオルガノシロキサンと、ポリオルガノシロキサンに架橋して粘着剤を硬化する硬化剤(架橋剤)とを主体として構成される。シリコーン系粘着剤に含有されるポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンが、耐熱性が高く好適である。
【0018】
第一の導電性粘着剤層20及び第二の導電性粘着剤層30において、シリコーン系粘着剤は、その硬化反応機構から、硬化剤として過酸化物を用いる有機過酸化物硬化型と、ポリオルガノシロキサンに付加反応により結合(架橋)して粘着剤を硬化する硬化剤を用いる付加反応型に分類されるが、有機過酸化物硬化型のシリコーン系粘着剤を用いた場合には、硬化反応過程でラジカルの残査である低分子の有機物が発生する。そのため、有機過酸化物硬化型のシリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を具備する粘着シートを用いる場合には、粘着シート貼着工程や、リフロー工程等において、有機過酸化物硬化型のシリコーン系粘着剤の硬化反応が進行してワークを汚染する恐れがある。従って、このような恐れのない付加反応型のシリコーン系粘着剤を用いることがより好ましい。
【0019】
具体的には、ポリオルガノシロキサンとしてポリジメチルシロキサンを用いる場合には、ポリジメチルシロキサンが不飽和結合を有さず付加反応が進行しないため、硬化剤として過酸化物を用いる有機過酸化物硬化型のシリコーン系粘着剤のみが得られる。これに対して、ポリオルガノシロキサンとしてポリアルキルアルケニルシロキサンを用いる場合には、ポリアルキルアルケニルシロキサンが不飽和結合のあるビニル基を有するため、ビニル基と反応する活性水素基を有するポリアルキル水素シロキサン等を硬化剤として添加し、白金系触媒を添加することにより、付加反応型のシリコーン系粘着剤を得ることができる。この付加反応型のシリコーン系粘着剤は100~250℃で数分間加熱することにより硬化する。
【0020】
第一の導電性粘着剤層20及び第二の導電性粘着剤層30において、導電性フィラーは、材質として、金、銀、銅、鉛、亜鉛、鉄及びニッケル等の金属又はその合金からなる導電性金属、ならびに前記導電性金属の複合体、カーボン等が挙げられる。前記複合体としては、例えば、銀コート銅、銀コートニッケル、金コート銅、金コートニッケル等が挙げられる。前記カーボンとしては、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ等が挙げられる。耐熱性の面で、金粉、銀粉、カーボン粉が好ましく、カーボン粉がさらに好ましい。形状としては、球状粉、フレーク状粉、円盤状粉、樹枝状粉、針状粉、不定形状粉等が挙げられる。導電性フィラーの体積平均粒子径は、0.01~100μmであることが好ましく、0.05~50μmであることがより好ましく、0.10~20μmであることが特に好ましい。前記下限値以上であることで、導電性フィラー同士の接点を確保し易く、第一の導電性粘着剤層20及び第二の導電性粘着剤層30の体積抵抗率を小さくすることができ、前記上限値以下であることで、両面粘着シートの表面をより滑らかにすることができる。
【0021】
導電性フィラーの体積平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置を使用することで測定できる。
【0022】
本発明における前記第一の導電性粘着剤層の260℃における熱重量減少率は2.5~6%であり、好ましくは3.1~5%である。第一の導電性粘着剤層の260℃における熱重量減少率が上記範囲内であれば、リフロー工程を複数回経ても第一の導電性粘着剤層に気泡が生じにくく、第一の導電性粘着剤層からワークが剥離しにくい。よって、本発明の両面粘着シートを用いてFPC基板を製造した場合、FPC基板を歩留まりよく製造することができる。
【0023】
また、前記第一の導電性粘着剤層におけるシリコーンレジン分率が20~50%であることが好ましく、更に28~42%が更に好ましい。第一の導電性粘着剤層におけるシリコーンレジン分率が上記範囲内であれば、リフロー工程を複数回経ても第一の導電性粘着剤層に気泡が生じにくく、第一の導電性粘着剤層からワークが剥離しにくい。よって、本発明の両面粘着シートを用いてFPC基板を製造した場合、FPC基板を歩留まりよく製造することができる。
【0024】
本発明に係る両面粘着シートは、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30を貫く厚み方向に導電性を有し、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30を貫く厚み方向の体積抵抗率は、103~1012Ω・cmであることが好ましく、104~1010Ω・cmであることがより好ましく、104~109Ω・cmであることが特に好ましい。
【0025】
本発明に係る両面粘着シートは、260℃、5minで加熱処理後の、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30を貫く厚み方向の体積抵抗率は、加熱処理前の1~10000%であることが好ましく、また、103~1012Ω・cmであることが好ましく、104~1010Ω・cmであることがより好ましく、104~109Ω・cmであることが特に好ましい。
【0026】
両面粘着シート10の体積抵抗率は、第一の導電性粘着剤層20とステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)とをラミネートロールを用いて貼合せ、次に、リング状プローブ(三菱化学社製、商品名:URSプローブ、内側電極の外径5.9mm、外側電極の内径11.0mm、外側電極の外径17.8mm)と測定ステージ(三菱化学社製、商品名:レジテーブルUFL)との間に両面粘着シート10を、リング状プローブと第二の導電性粘着剤層30とが、ステンレス板と測定ステージとが接触するように挟み、約3kg重の圧力で押さえ付けつつ、プローブの内側の電極と測定ステージとの間に10Vの電圧を印加して抵抗率測定装置(三菱化学社製、商品名:ハイレスタUX)で求めた。このようなリング電極法による体積抵抗率測定法の詳細はJIS-K6911を参照することができる。
【0027】
第一の導電性粘着剤層20において、導電性フィラーの含有量は、構成成分の全量に対して、5~50質量%であることが好ましく、7~45質量%であることがより好ましく、10~40質量%であることが特に好ましい。第二の導電性粘着剤層30における、導電性フィラーの含有量も同様である。
また、第一の導電性粘着剤層20における構成成分の全量と第二の導電性粘着剤層30における構成成分の全量とを合計した構成成分の全量に対して、第一の導電性粘着剤層20における導電性フィラーの含有量と第二の導電性粘着剤層30における導電性フィラーの含有量とを合計した導電性フィラーの含有量は、5~50質量%であることが好ましく、7~45質量%であることがより好ましく、10~40質量%であることが特に好ましい。
【0028】
第一の導電性粘着剤層20のステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)に対する粘着力(剥離角度90°、引張速度300mm/min)は、第二の導電性粘着剤層30のポリイミドフィルム(厚さ25μm)に対する粘着力(剥離角度90°、引張速度50mm/min)の方よりも大きく、第一の導電性粘着剤層20のステンレス板に対する粘着力は、1.0N/25mm以上であることが好ましく、2.0N/25mm以上であることがより好ましく、3.0N/25mm以上であることが特に好ましい。
【0029】
本発明に係る両面粘着シートは、260℃、5minで加熱処理後の、第一の導電性粘着剤層20のステンレス板に対する粘着力は、加熱処理前に対する変化率が30%以内であることが好ましく、また、1.0N/25mm以上であることが好ましく、2.0N/25mm以上であることがより好ましく、3.0N/25mm以上であることが特に好ましい。
【0030】
第一の導電性粘着剤層のステンレス板に対する粘着力は、第一の導電性粘着剤層20とステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)とをラミネートロールを用いて貼合せ、次に、両面粘着シート10をステンレス板から、剥離角度90°、引張速度300mm/min、測定幅25mmの条件で引き剥がすことで、測定される。前述の測定方法の詳細は、JIS-Z0237を参照することができる。
【0031】
第二の導電性粘着剤層30のポリイミドフィルム(厚さ25μm)に対する粘着力(剥離角度90°、引張速度50mm/min)は、0.03~2.0N/25mm未満であることが好ましく、0.03~1.5N/25mmであることがより好ましく、0.03~1.0N/25mmであることが特に好ましい。
【0032】
本発明に係る両面粘着シートは、260℃、8時間で加熱処理後の、第二の導電性粘着剤層30のポリイミドフィルムに対する粘着力は、加熱処理前の粘着力の50%以上200%未満であることが好ましく、また、0.03~2.0N/25mm未満であることが好ましく、0.03~1.5N/25mmであることがより好ましく、0.03~1.0N/25mmであることが特に好ましい。
【0033】
第二の導電性粘着剤層30のポリイミドフィルムに対する粘着力は、第一の導電性粘着剤層20とステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)とをラミネートロールを用いて貼合せ、次に、第二の導電性粘着剤層30上に、ポリイミドフィルムを、質量3kgのローラを2往復させることで貼合せ、更に、前記ポリイミドフィルムを、第二の導電性粘着剤層30から、剥離角度90°、引張速度50mm/min、測定幅25mmの条件で引き剥がすことで測定される。前述の測定方法の詳細は、JIS-Z0237を参照することができる。
【0034】
導電性基材50は、第一の導電性粘着剤層20及び第二の導電性粘着剤層30が接触され、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30を貫く厚み方向に導電性が付与されるものであればよく、金属箔、めっき、蒸着又はスパッタリングされた膜であってもよい。また、導電性基材50の形態は、孔がない板状基材であることが好ましいが、不織布、メッシュ又は、パンチングプレートなど導電性の多孔質基材であってもよい。特に、導電性基材50は銅箔またはアルミニウム箔であることが好ましい。
【0035】
導電性基材50の厚さは、板状基材では5~100μmであってもよく、5~50μmであることがより好ましく、5~35μmであることが特に好ましい。多孔質基材では、10~1000μmであってもよく、10~500μmであることが好ましく、10~200μmであることが特に好ましい。
【0036】
第一の導電性粘着剤層20の側の剥離シート40、及び、第二の導電性粘着剤層30の側の剥離シート41として、従来公知の剥離シートを使用することができる。剥離シートとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、剥離紙、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルフォン(PES)等や、それらに離型処理等を施したフィルム等を使用することができる。耐熱性の面で、ポリイミドフィルム、剥離紙、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルフォン(PES)が好ましい。
【0037】
第一の導電性粘着剤層20の厚さは、1~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましい。第二の導電性粘着剤層30の厚さは、1~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましい。剥離シート40の厚さは、10~200μmであることが好ましく、25~100μmであることがより好ましい。剥離シート41の厚さは、10~200μmであることが好ましく、25~100μmであることがより好ましい。
第一の導電性粘着剤層20と導電性基材50と第二の導電性粘着剤層30とを合計した厚さは、2~500μmであることが好ましく、20~300μmであることがより好ましい。
【0038】
[両面粘着シートの製造方法]
初めに、第一の導電性粘着剤層20及び第二の導電性粘着剤層30の原料となるシリコーン系粘着剤及び導電性フィラー、並びに、必要応じて溶剤をそれぞれ均一に攪拌混合することで、第一の導電性粘着剤組成物及び第二の導電性粘着剤組成物を調製する。溶剤量を調整することで、第一の導電性粘着剤層及び第二の導電性粘着剤層の形成を容易にすることができる。また、導電性基材50を準備する。
【0039】
前記溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキサノン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の有機溶剤が好ましい。
攪拌混合は、例えば、スキャンデックス、ペイントコンディショナー、サンドミル、らいかい機、三本ロール又はビーズミル等の撹拌機により、またこれらを組み合わせて行うことができる。更に攪拌混合後に第一の導電性粘着剤組成物及び第二の導電性粘着剤組成物から気泡を除去するために真空脱泡することが好ましい。
【0040】
両面粘着シートの製造方法としては、例えば、剥離シート40の上に、第一の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、剥離シート40の上に第一の導電性粘着剤層20を形成する。次に、第一の導電性粘着剤層20の上に、導電性基材50を積層して、第一の導電性粘着剤層20の上に、導電性基材50を形成する。更に、導電性基材50の上に、第二の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、導電性基材50の上に第二の導電性粘着剤層30を形成する。また更に、第二の導電性粘着剤層30の上に、剥離シート41を積層させる。これにより、剥離シート40、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50、第二の導電性粘着剤層30及び剥離シート41がこの順に積層された、
図1で示される両面粘着シート10を作製することができる。
【0041】
例えば、剥離シート41の上に、第二の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、剥離シート41の上に第二の導電性粘着剤層30を形成する。次に、第二の導電性粘着剤層30の上に、導電性基材50を積層して、第二の導電性粘着剤層30の上に、導電性基材50を形成する。更に、導電性基材50の上に、第一の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、導電性基材50の上に、第一の導電性粘着剤層20を形成する。更に、第一の導電性粘着剤層20の露出面と、剥離シート40の剥離処理面とを貼り合わせる。これによっても、剥離シート40、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50、第二の導電性粘着剤層30及び剥離シート41がこの順に積層された、
図1で示される両面粘着シート10を作製することができる。
【0042】
例えば、導電性基材50の上に、第二の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、導電性基材50の上に第二の導電性粘着剤層30を形成する。次に、第二の導電性粘着剤層30の露出面と、剥離シート41の剥離処理面とを貼り合わせる。上下を反転させてから、導電性基材50の上に、第一の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、導電性基材50の上に第一の導電性粘着剤層20を形成する。更に、第一の導電性粘着剤層20の露出面と、剥離シート40の剥離処理面とを貼り合わせる。これによっても、剥離シート40、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50、第二の導電性粘着剤層30及び剥離シート41がこの順に積層された、
図1で示される両面粘着シート10を作製することができる。
【0043】
例えば、導電性基材50の上に、第一の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、導電性基材50の上に第一の導電性粘着剤層20を形成する。次に、第一の導電性粘着剤層20の露出面と、剥離シート40の剥離処理面とを貼り合わせる。上下を反転させてから、導電性基材50の上に、第二の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、導電性基材50の上に第二の導電性粘着剤層30を形成する。更に、第二の導電性粘着剤層30の露出面と、剥離シート41の剥離処理面とを貼り合わせる。これによっても、剥離シート40、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50、第二の導電性粘着剤層30及び剥離シート41がこの順に積層された、
図1で示される両面粘着シート10を作製することができる。
【0044】
例えば、剥離シート40の上に、第一の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、剥離シート40の上に第一の導電性粘着剤層20を形成する。これと並行して、剥離シート41の上に、第二の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、剥離シート41の上に第二の導電性粘着剤層30を形成する。更に、第二の導電性粘着剤層30の露出面と、導電性基材50とを貼り合わせる。その後、第一の導電性粘着剤層20の露出面と、導電性基材50とを貼り合わせる。これによっても、剥離シート40、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50、第二の導電性粘着剤層30及び剥離シート41がこの順に積層された、
図1で示される両面粘着シート10を作製することができる。
【0045】
例えば、剥離シート41の上に、第二の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、剥離シート41の上に第二の導電性粘着剤層30を形成する。これと並行して、剥離シート40の上に、第一の導電性粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて、加熱・乾燥させて、剥離シート40の上に第一の導電性粘着剤層20を形成する。更に、第一の導電性粘着剤層20の露出面と、導電性基材50とを貼り合わせる。その後、第二の導電性粘着剤層30の露出面と、導電性基材50とを貼り合わせる。これによっても、剥離シート40、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50、第二の導電性粘着剤層30及び剥離シート41がこの順に積層された、
図1で示される両面粘着シート10を作製することができる。
【0046】
第一の導電性粘着剤組成物及び第二の導電性粘着剤組成物の塗工方法としては、公知の方法で行うことができ、例えば、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビアコート、フレキソコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等の塗工方法が好ましい。
【0047】
それぞれの塗工の後、必要応じて、室温もしくは50~300℃の温度条件下で加熱することにより硬化させて、第一の導電性粘着剤層及び第二の導電性粘着剤層をそれぞれ作製することができる。加熱温度は、リフロー時のアウトガス発生による発泡を防ぐ観点から、200~250℃が好ましい。
【0048】
[両面粘着シートの使用方法]
両面粘着シート10は、例えば、プリント基板等の製造において、リフロー工程用の搬送治具にワークを仮固定する用途に好適に使用することができる。以下、両面粘着シート10の使用方法の例を説明する。ただし、本発明に係る両面粘着シートの使用方法は、以下の記載に限定されるものではない。
【0049】
図2は、本発明に係る両面粘着シートの使用方法の一例を示す概略断面図である。なお、
図2において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0050】
図2(a)に示されるように、搬送治具72に、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30からなる両面粘着シートを固定することができる。
【0051】
次に、
図2(b)に示されるように、搬送治具72を接地し、搬送治具72、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30のうち、第二の導電性粘着剤層30の露出面にワーク74を貼り付けて仮固定する。
【0052】
ワーク74としては、FPC基板、リジット基板(アルミ、ステンレス、ガラスエポキシ、セラミック等)、半導体パッケージ、セラミック部品等が挙げられる。
【0053】
図2(c)に示されるように、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30からなる両面粘着シートによって、搬送治具72に仮固定されたワーク74を搬送し、例えば、レジスト現像、めっき、エッチング、洗浄等の湿式処理工程、フォトレジスト乾燥、ソルダーレジスト乾燥等の加熱処理工程に供することができる。更に、リフロー工程に供することができる。
【0054】
ワーク74の各処理工程の後、
図2(d)に示されるように、搬送治具72が接地された状態で、ワーク74を剥がす。ワーク74が第二の導電性粘着剤層30からきれいに剥がれることが重要である。ここで、本発明に係る両面粘着シートにおいては、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30を貫く厚み方向に導電性を有するので、剥離帯電を抑制することができる。また、第一の導電性粘着剤層20の粘着力は、第二の導電性粘着剤層30の粘着力の方よりも大きく設計されているので、第一の導電性粘着剤層20が、搬送治具72から容易に剥がれないものとすることができる。
【0055】
図2(e)に示されるように、接地された搬送治具72に、第一の導電性粘着剤層20、導電性基材50及び第二の導電性粘着剤層30からなる両面粘着シートが固定された状態に戻すことができる。再度、
図2(b)に示されるように、別のワーク74を第二の導電性粘着剤層30の露出面に貼り付けて仮固定し、ワーク74の各処理工程に繰り返し供することができる。ここで、ワークを仮固定する前に、第二の導電性粘着剤層30の露出面に対して、セロハンテープを押し付けて異物を除去する工程、アルコール系溶剤で洗浄する工程、アルコール系溶剤を拭き取る工程を経てもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
<第一の導電性粘着剤組成物A>
東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4560 PSA、固形分濃度60質量%のトルエン溶液)50質量部、東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4587L PSA、固形分濃度40質量%のトルエン溶液)75質量部、東レダウコーニング社製の白金触媒(SRX-212)0.9質量部、トルエン100質量部に対して、カーボンブラック(比表面積:65m2/g、吸油量190ml/100g)を構成成分の全量(乾燥重量)に対して7.5質量%となるように加え、均一に攪拌混合することで、第一の導電性粘着剤組成物Aを調製した。
【0058】
<第二の導電性粘着剤組成物B>
東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(LTC755 Coating、固形分濃度30質量%のトルエン溶液)100質量部、東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4560 PSA、固形分濃度60質量%のトルエン溶液)18質量部、東レダウコーニング社製の白金触媒(SRX-212)0.4質量部、トルエン100質量部に対して、グラファイト粉(体積平均粒子径:3.5μm、鱗片状、導電性フィラー)を構成成分の全量(乾燥重量)に対して20質量%となるように加え、均一に攪拌混合することで、第二の導電性粘着剤組成物Bを調製した。
【0059】
次に、導電性基材50となる銅箔(厚さ35μm)上に、上記で調製した第二の導電性粘着剤組成物Bを塗工し、230℃、1.5minで加熱・乾燥させて、銅箔の上に厚さ120μmの第二の導電性粘着剤層30を形成した。次に、第二の導電性粘着剤層30の上に、剥離シート41となる離型剤が塗布されたポリイミドフィルム(厚さ25μm)を貼り合わせて、第二の導電性粘着剤層30の上に、剥離シート41を形成した。更に、導電性基材50の、第二の導電性粘着剤層30が形成された面と反対側の面に、第一の導電性粘着剤組成物Aを塗工し、230℃、1.5minで加熱・乾燥させて、導電性基材50の上に厚さ40μmの第一の導電性粘着剤層20を形成した。また更に、第一の導電性粘着剤層20の露出面と、剥離シート40となる離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)の剥離処理面とを貼り合わせた。これにより、剥離シート41、第二の導電性粘着剤層30、導電性基材50、第一の導電性粘着剤層20及び剥離シート40がこの順に積層された、
図1で示される実施例1の両面粘着シート10を作製した。
【0060】
[実施例2]
実施例1において、第一の導電性粘着剤組成物Aの、東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4560 PSA、固形分濃度60質量%のトルエン溶液)50質量部を25質量部に変更し、東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4587L PSA、固形分濃度40質量%のトルエン溶液)75質量部を113質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、
図1で示される実施例2の両面粘着シート10を作製した。
【0061】
[実施例3]
実施例1において、第一の導電性粘着剤組成物Aの、東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4560 PSA、固形分濃度60質量%のトルエン溶液)を除き、東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4587L PSA、固形分濃度40質量%のトルエン溶液)75質量部を150質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、
図1で示される実施例3の両面粘着シート10を作製した。
【0062】
[実施例4]
実施例1において、第一の導電性粘着剤組成物Aの、東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4560 PSA、固形分濃度60質量%のトルエン溶液)50質量部を100質量部に変更し、東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4587L PSA、固形分濃度40質量%のトルエン溶液)を除いた以外は実施例1と同様にして、
図1で示される実施例4の両面粘着シート10を作製した。
【0063】
[実施例5]
<第一の導電性粘着剤組成物C>
東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(SD 4560 PSA、固形分濃度60質量%のトルエン溶液)100質量部、東レダウコーニング社製の白金触媒(SRX-212)0.9質量部、トルエン100質量部に対して、グラファイト粉(体積平均粒子径:3.5μm、鱗片状、導電性フィラー)を構成成分の全量(乾燥重量)に対して17質量%となるように加え、均一に攪拌混合することで、第一の導電性粘着剤組成物Cを調製した。
【0064】
次に、導電性基材50となる銅箔(厚さ35μm)上に、前記で調製した第二の導電性粘着剤組成物Bを塗工し、230℃、1.5minで加熱・乾燥させて、銅箔の上に厚さ80μmの第二の導電性粘着剤層30を形成した。次に、第二の導電性粘着剤層30の上に、剥離シート41となる離型剤が塗布されたポリイミドフィルム(厚さ25μm)を貼り合わせて、第二の導電性粘着剤層30の上に、剥離シート41を形成した。更に、導電性基材50の、第二の導電性粘着剤層30が形成された面と反対側の面に、第一の導電性粘着剤組成物Cを塗工し、230℃、1.5minで加熱・乾燥させて、導電性基材50の上に厚さ80μmの第一の導電性粘着剤層20を形成した。また更に、第一の導電性粘着剤層20の露出面と、剥離シート40となる離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)の剥離処理面とを貼り合わせた。これにより、剥離シート41、第二の導電性粘着剤層30、導電性基材50、第一の導電性粘着剤層20及び剥離シート40がこの順に積層された、
図1で示される実施例5の両面粘着シート10を作製した。
【0065】
[比較例1]
<第一の導電性粘着剤組成物D>
信越シリコーン製の導電性シリコーン粘着剤主剤(粘度106(Pa・s)、固形分濃度60質量%のトルエン溶液)100質量部、信越シリコーン社製の白金触媒(CAL-PL-50T)0.5質量部、トルエン50質量部を均一に攪拌混合することで、第一の導電性粘着剤組成物Dを調製した。
【0066】
次に、支持体となる銅箔(厚さ35μm)上に、前記で調製した第二の導電性粘着剤組成物Bを塗工し、230℃、1.5minで加熱・乾燥させて、銅箔の上に厚さ80μmの第二の導電性粘着剤層を形成した。次に、第二の導電性粘着剤層の上に、剥離シートとなる離型剤が塗布されたポリイミドフィルム(厚さ25μm)を貼り合わせて、第二の導電性粘着剤層の上に、剥離シートを形成した。更に、支持体の、第二の導電性粘着剤層が形成された面と反対側の面に、第一の導電性粘着剤組成物Dを塗工し、230℃、1.5minで加熱・乾燥させて、支持体の上に厚さ80μmの第一の導電性粘着剤層を形成した。また更に、第一の導電性粘着剤層の露出面と、剥離シートとなる離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)の剥離処理面とを貼り合わせ、比較例1の両面粘着シートを作製した。
【0067】
[比較例2]
<第一の導電性粘着剤組成物E>
東レダウコーニング社製のシリコーン粘着剤主剤(LTC755 Coating、固形分濃度30質量%のトルエン溶液)100質量部、東レダウコーニング社製の白金触媒(SRX-212)0.4質量部、トルエン100質量部に対して、カーボンブラック(比表面積:65m2/g、吸油量190ml/100g)を構成成分の全量(乾燥重量)に対して7.5質量%となるように加え、均一に攪拌混合することで、第一の導電性粘着剤組成物Eを調製した。
次に比較例1において、第一の導電性粘着剤組成物Dを上記第一の導電性粘着剤組成物Eに変更した以外は同様にして比較例2の両面粘着シートを作製した。
【0068】
[比較例3]
剥離シートとなる離型剤が塗布されたポリイミドフィルム(厚さ25μm)に、実施例1で得た第二の導電性粘着剤組成物Bを塗工し、230℃、1.5minで加熱・乾燥させて、ポリイミドフィルムの上に厚さ80μmの第二の導電性粘着剤層を形成した。
次に、上記第二の導電性粘着剤層の上に、比較例1で得た第一の導電性粘着剤組成物Dを塗工し、230℃、1.5minで加熱・乾燥させて、第二の導電性粘着剤層の上に厚さ80μmの第一の導電性粘着剤層を形成した。更に、第一の導電性粘着剤層の上に、剥離シートとなる離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせ比較例3の両面粘着シートを作製した。
【0069】
[比較例4]
比較例1において、支持体となる銅箔(厚さ35μm)をポリイミドフィルム(厚さ50μm)に変更した以外は同様にして比較例4の両面粘着シートを作製した。
【0070】
【0071】
【0072】
次に前記で得た実施例及び比較例の両面粘着シートを次のように評価した。
<第一の導電性粘着剤層の熱重量減少率の測定>
第一の導電性粘着剤層を約10mgはかり採って重量(W1)を測定した後、示差熱・熱重量同時測定(TG-DTA)を行った。測定は、窒素雰囲気下で、昇温速度10℃/minで25℃から260℃まで昇温し、更に260℃で100分間維持した。測定開始から120分間経過時点までに減少した重量(W2)を以下の式(1)に代入することにより熱重量減少率を算出した。結果を表3及び表4に示す。
熱重量減少率(%)=(W2/W1)×100 ・・・(式1)
【0073】
<第一の導電性粘着剤層のシリコーンレジン分率の測定>
第一の導電性粘着剤層を約25mgはかり採って重量(W3)を測定した後、約90mLのトルエンに室温(23℃±10)で15h浸漬した。その後、ろ紙(No.2)を用いて溶出成分を取出して120℃45分間乾燥させた後の重量(W4)を測定し、以下の式(2)に代入することによりシリコーンレジン分率を算出した。結果を表3及び表4に示す。
シリコーンレジン分率(%)=(W4/W3)×100 ・・・(式2)
【0074】
<第一の導電性粘着剤層の粘着力の測定>
(初期)
実施例及び比較例で作製した両面粘着シートの、剥離シートを剥離した第一の導電性粘着剤層とステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)とを質量3kgのローラを2往復させることで貼合せた。次に、両面粘着シートをステンレス板から、剥離角度90°、引張速度300mm/min、測定幅25mmの条件で引き剥がし、粘着力を測定した。前述の測定方法の詳細は、JIS-Z0237を参照することができる。
【0075】
結果を表3及び表4に示す。評価基準は次の通りである。結果が“△”、“○”、“◎”のいずれかであれば、実用上問題なく使用でき、“◎”が最も好ましい。“×”は実用上問題を有する。
(評価基準)
◎:3.0N/25mm以上
○:2.0N/25mm以上、3.0N/25mm未満
△:1.0N/25mm以上、2.0N/25mm未満
×:1.0N/25mm未満
【0076】
<第二の導電性粘着剤層の粘着力の測定>
(初期)
実施例及び比較例で作製した両面粘着シートの、剥離シートを剥離した第一の導電性粘着剤層とステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)とをラミネートロールを用いて貼合せた。次に、剥離シートを剥離した第二の導電性粘着剤層上に、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製 商品名:カプトン100H)を、質量3kgのローラを2往復させることで貼合せた。更に、前記ポリイミドフィルムを、第二の導電性粘着剤層から、剥離角度90°、引張速度50mm/min、測定幅25mmの条件で引き剥がし、初期の粘着力を測定した。前述の測定方法の詳細は、JIS-Z0237を参照することができる。
【0077】
(加熱後)
また、260℃、8時間で加熱処理後の、第二の導電性粘着剤層の粘着力を測定した。前記方法において、第二の導電性粘着剤層上にポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名:カプトン100H)を貼り合せる前に、260℃、8時間で加熱処理を行った。
【0078】
結果を表3及び表4に示す。評価基準は次の通りである。初期の粘着力の結果が“△”、“○”、“◎”のいずれかであれば、実用上問題なく使用でき、“◎”が最も好ましい。また、加熱後の粘着力の結果は、“○”が実用上問題なく使用できる。“×”は実用上問題を有する。
(評価基準;初期の粘着力)
◎:0.03N/25mm以上、1.0N/25mm未満
○:1.0N/25mm以上、1.5N/25mm未満
△:1.5N/25mm以上、2.0N/25mm未満
×:上記以外
(評価基準;加熱後の粘着力/初期の粘着力)
○:50%以上、200%未満
×:上記以外
【0079】
<体積抵抗率の測定>
実施例及び比較例で作製した両面粘着シートの、剥離シートを剥離した第一の導電性粘着剤層とステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)とをラミネートロールを用いて貼合せた。次に、リング状プローブ(三菱化学社製、商品名:URSプローブ、内側電極の外径5.9mm、外側電極の内径11.0mm、外側電極の外径17.8mm)と測定ステージ(三菱化学社製、商品名:レジテーブルUFL)との間に、実施例及び比較例で作製した両面粘着シートを、リング状プローブと剥離シートを剥離した第二の導電性粘着剤層とが、ステンレス板と測定ステージとが接触するように挟み、約3kg重の圧力で押さえ付けつつ、プローブの内側の電極と測定ステージとの間に10Vの電圧を印加して抵抗率測定装置(三菱化学社製、商品名:ハイレスタUX)で求めた。このようなリング電極法による体積抵抗率測定法の詳細はJIS-K6911を参照することができる。
【0080】
結果を表3及び表4に示す。評価基準は次の通りである。結果が“△”、“○”、“◎”のいずれかであれば、実用上問題なく使用でき、“◎”が最も好ましい。“×”は実用上問題を有する。
(評価基準)
◎:104~109Ω・cm
○:1010Ω・cm
△:103Ω・cm、または1011~1012Ω・cm
×:上記以外
【0081】
<引っ掻き試験>
実施例及び比較例で作製した両面粘着シートの、剥離シートを剥離した第一の導電性粘着剤層とステンレス板(SUS304、表面仕上げBA)とをラミネートロールを用いて貼合せた。この時、両面粘着シートの面積はステンレス板の面積より小さくなるようにし、両面粘着シートがステンレス板からはみ出ないように貼合せを行った。次に、ピンセットを用いて、両面粘着シートの縁部分を引っ掻き、観察を行った。
結果を表3及び表4に示す。評価基準は次の通りである。結果が“○”であれば、実用上問題なく使用できる。“×”は実用上問題を有する。
(評価基準)
○:剥がれ・浮きなし
×:剥がれ・浮きあり
【0082】
<耐繰返しリフロー性>
実施例及び比較例で作製した両面粘着シートの、剥離シートを剥離した第一の導電性粘着剤層とアルミニウム板(A5052)とをラミネートロールを用いて貼合せ、第二の導電性粘着剤層の剥離シートを剥離した。次に、プリヒート温度が150~200℃(120秒間)で、温度220℃以上の時間が55秒間で、ピークトップが260℃10秒間となるようなリフロー条件で加熱を繰返し、両面粘着シート表面の膨れ有無を目視で確認し、膨れが発生した時の加熱の回数を記録した。
結果を表3及び表4に示す。評価基準は次の通りである。結果が“△”、“○”、“◎”のいずれかであれば、実用上問題なく使用でき、“◎”が最も好ましい。“×”は実用上問題を有する。
◎:1000回以上
○:100回以上、1000回未満
△:10回以上、100回未満
×:10回未満
【0083】
【0084】
【0085】
表3の評価結果から明らかなように、実施例1~5の両面粘着シートは、いずれも、第一の導電性粘着剤層、導電性基材及び第二の導電性粘着剤層を貫く厚み方向に良好な導電性を有するので、搬送治具に対して、ワークの貼着、加工及び剥離を多数回繰り返して使用することができ、かつ、剥離帯電を抑制することができる。
また、実施例1~5の両面粘着シートにおける第二の導電性粘着剤層は、いずれも、260℃、8時間後の粘着力が初期の粘着力の50%以上200%未満であるため、はんだ処理工程(リフロー工程を含む)後にワークが第二の導電性粘着剤層から良好に剥がれてFPC基板製造上問題が無いことが確認された。
また、実施例1~5の両面粘着シートは、第一の導電性粘着剤層と第二の導電性粘着剤層との間に導電性基材を有するため、第一の導電性粘着剤層における粘着成分の、第二の導電性粘着剤層への移動による粘着力変化が抑制される。そのため、第一の導電性粘着剤層の粘着力と第二の導電性粘着剤層の粘着力とに差が生じ、搬送治具からの第一の導電性粘着剤層の剥離が生じにくく、ワークの貼着及び加工時に両面粘着シートの剥離が生じにくい。また、第一の導電性粘着剤層における粘着成分が、第二の導電性粘着剤層に移動しないため、リフロー時の加熱を繰り返しても第一の導電性粘着剤層の粘着力が上昇せずワークの剥離性を維持することができる。
また、実施例1~5の両面粘着シートは、リフロー工程を複数回経ても粘着剤に膨れ(気泡)が生じにくく、粘着剤からワークが剥離しにくい。
【0086】
これに対して、表4の評価結果から明らかなように、比較例1の両面粘着シートは、リフロー工程を複数回経ると粘着剤に膨れ(気泡)が生じ、粘着剤からワークが剥離する。
また、比較例2の両面粘着シートは、第一の導電性粘着剤層の粘着力が弱く、ステンレス板から剥がれるという問題を有していた。
また、比較例3の両面粘着シートは、第一の導電性粘着剤層と第二の導電性粘着剤層との間に導電性基材を有しないで直接粘着剤層どうしが接合しているため、第一の導電性粘着剤層における粘着成分が第二の導電性粘着剤層に移動しやすい。そのため、比較例3の両面粘着シートにおいては、第二の導電性粘着剤層が、260℃、8時間後の粘着力が初期の粘着力の200%より大きくなり、はんだ処理工程(リフロー工程を含む)後にワークが第二の導電性粘着剤層から剥がれにくくFPC基板製造上問題を有することが確認された。
また、比較例4の両面粘着シートは、第一の導電性粘着剤層及び第二の導電性粘着剤層を貫く厚み方向の体積抵抗率が大きいので、搬送治具に対して、ワークの剥離を繰り返したとき、剥離帯電が生じて、フィルム状基材上の半導体部材や、半導体部材のワーク自体が静電破壊されるおそれがある。
【符号の説明】
【0087】
10 両面粘着シート
20 第一の導電性粘着剤層
30 第二の導電性粘着剤層
40 剥離シート
41 剥離シート
50 導電性基材
72 搬送治具
74 ワーク