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特許7344815ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒、及びこれを用いた排ガス浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒、及びこれを用いた排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20230907BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230907BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230907BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230907BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01J35/04 301E
F01N3/08 A
F01N3/10 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020033355
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133334
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康吉
(72)【発明者】
【氏名】丹 功
(72)【発明者】
【氏名】福富 駿祐
(72)【発明者】
【氏名】藤村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】小俣 秀哉
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502855(JP,A)
【文献】特開2001-079402(JP,A)
【文献】特表2017-534440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0219906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(11)と、前記基材上に設けられた第1触媒層(L1)と、前記第1触媒層(L1)上に設けられた第2触媒層(R1)とを備え、
前記第1触媒層(L1)は、セリアアルミナ系母材粒子、前記セリアアルミナ系母材粒子上に担持されたPt及びPd、並びに前記セリアアルミナ系母材粒子上に担持されたBaOを含み、
前記第2触媒層(R1)は、セリアアルミナ系母材粒子、前記セリアアルミナ系母材粒子上に担持されたPt及びRhを含み、
下記条件(A)~(D);
(A)前記第1触媒層(L1)に含まれるPtの含有量が、前記第1触媒層(L1)の固形分総量に対して金属換算で0.45~0.85質量%
(B)前記第2触媒層(R1)と前記第1触媒層(L1)の境界面(B)を基準として、前記境界面(B)から前記第1触媒層(L1)の厚みT方向の2/3の深さ領域(L1a,L1b)に含まれるPtの含有割合が、前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量に対し、88質量%~90質量%
(C)前記境界面(B)を基準として前記第1触媒層(L1)の厚みT方向の2/3~3/3の深さ領域(L1c)に含まれるPtの含有割合が、前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量に対し、10~12質量%
(D)前記第1触媒層(L1)に含まれるBaの含有量が、前記第1触媒層(L1)の総量に対して酸化物換算で4~11質量%であり、前記第2触媒層(R1)はBaを実質的に含まない
を満たすことを特徴とする、
ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【請求項2】
下記条件(B1)及び(B2);
(B1)前記境界面(B)から前記第1触媒層(L1)の厚みT方向の1/3の深さ領域(L1a)に含まれるPtの含有割合が、前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量に対し、40~50質量%
(B2)前記境界面(B)を基準として前記第1触媒層(L1)の厚みT方向の1/3~2/3の深さ領域(L1b)に含まれるPtの含有割合が、前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量に対し、40~50質量%
をさらに満たす
請求項1に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【請求項3】
前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量と総BaO量の比率(Pt/BaO)が、質量換算で0.05~0.15である
請求項1又は2に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【請求項4】
前記基材(11)が、一体構造型ハニカム担体である
請求項1~3のいずれか一項に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【請求項5】
前記基材(11)が、フロースルー型ハニカム担体である
請求項4に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【請求項6】
前記基材(11)が、ウォールフロー型ハニカム担体である
請求項4に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【請求項7】
前記第1触媒層(L1)は、前記BaO以外のアルカリ土類金属塩をさらに有する
請求項1~6のいずれか一項に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【請求項8】
前記第2触媒層(R1)は、アルカリ土類金属塩を実質的に含まない
請求項1~7のいずれか一項に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【請求項9】
希薄燃焼エンジンの排ガス流路の下流側に配置された三元触媒と、前記三元触媒の下流側に配置された請求項1~8のいずれか一項に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒と、を含む、
排ガス浄化装置。
【請求項10】
希薄燃焼エンジンの排ガス流路の下流側に配置された三元触媒と、前記三元触媒の下流側に配置された請求項1~8のいずれか一項に記載の第1ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒と、前記第1ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒の下流側に配置された請求項1~8のいずれか一項に記載の第2ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒と、を含む、
排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx吸蔵率を向上させたガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒、及びこれを用いた排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等に用いられる燃焼機関、例えばエンジンからの窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、及び炭化水素(HC)等の排出は、大気汚染防止法等の放出規制基準を満たすために減少されなければならない。従来の三元触媒(TWC)を用いた排ガス浄化システムでは、化学量論の空燃比(空気/燃料の比率、A/F)条件又はその近傍でエンジンを動作させるとともに、所定の三元触媒をエンジン出口の排気管中に装着することで、これら三種類の汚染物質の同時低減が行われている。
【0003】
一方、近来の二酸化炭素(CO2)による地球温暖化の防止や限りある資源の有効活用等の観点から、少ない燃料を効率的に活用する燃焼機関、例えば希薄燃焼(リーンバーン)型ガソリンエンジン及びディーゼルエンジンが注目を集めている。希薄燃焼エンジンに供給される燃焼混合物中の燃料に対する空気の比は、化学量論比を大幅に超えて維持され、そのため、結果として生じる排ガスは希薄、すなわち酸素含有量が比較的に高くなる。
【0004】
希薄燃焼エンジンは、高度な燃費を提供するが、エンジンに吸入される空気の量が化学量論的な空燃比に比べ多いため、従来の排ガスの浄化とは異なるメリット、デメリットが生じている。すなわち、メリットとしては、空気が化学量論量よりも多いため、還元性成分であるHCやCOが余剰の酸素で酸化除去され易くなることが挙げられる。一方、デメリットとしては、空気が化学量論量よりも多いため、酸化性成分であるNOxがHCやCO等の還元性成分の不足により、還元除去され難くなることが挙げられる。また、希薄燃焼エンジンでは、空気の量が化学量論量よりも多いことが恒常的に続くため、そもそもNOx自体が生成し易い上に、HC、CO等の還元剤の不足により、NOxの還元浄化が非常に困難である。これらの理由等により、希薄燃焼エンジンから生じる排ガスを処理するための触媒としては、従来の三元触媒とは異なり、NOxの還元浄化を十分に確保した設計が求められている。
【0005】
希薄燃焼エンジンから排出されるNOxの還元浄化を高効率で行うための触媒としては、リーンNOxトラップ(Lean NOx Trap:LNT)触媒が検討されている。LNT触媒では、NOx吸蔵材等として、バリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属酸化物、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等のアルカリ金属酸化物、セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム等の希土類酸化物成分が用いられている。
【0006】
また、LNT触媒においては、上記のNOx吸蔵触媒等の他、白金・パラジウム・ロジウムのような貴金属系の活性種や、セリア、ジルコニア、セリア-ジルコニア系複合酸化物等の助触媒成分がよく使用される。これらセリアやジルコニア等の助触媒成分は燃料過濃動作期間(リッチ)中に水性ガスシフト反応やスチームリフォーミング反応を促進させ、排ガス中のCOやHCをH2に変換する働きをする。これら助触媒の機能により、変換されたH2はNOxの還元効率が高いため、少ない燃料量でNOx吸蔵材に吸蔵されたNOxを高効率に還元することができる。
【0007】
LNT触媒の従来技術としては、例えば、支持体上に皮膜を有する窒素酸化物貯蔵触媒であって、前記皮膜が、粒子上にアルカリ土類金属酸化物を坦持するセリア粒子を含む窒素酸化物貯蔵材料を含み、前記セリアの微結晶サイズが約10~20nmであり、前記アルカリ土類金属酸化物の微結晶サイズが約20~40nmであることを特徴とする窒素酸化物貯蔵触媒が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
また、本出願人は、一体構造型担体の上に少なくとも二層からなる貴金属元素を含む触媒層を有する排ガス中のNOx吸蔵脱硝触媒(LNT)において、上層に、ロジウムを担持したジルコニア系複合酸化物(A)と、白金、炭酸バリウム、及び炭酸マグネシウムを担持したセリア-アルミナ(C)を含有し、下層に、パラジウムを担持したセリア(B)、パラジウムを担持したゼオライト(D)と、白金、炭酸バリウム、及び炭酸マグネシウムを担持したセリア-アルミナ(C’)を含有することを特徴するNOx吸蔵脱硝触媒を提案している(特許文献2参照)。
【0009】
さらに、窒素酸化物吸蔵触媒であって、酸化物基準で約20重量%~約80重量%の範囲の複合体中に存在するセリア相を有するセリアアルミナ粒子を含む基材上の層であって、アルカリ土類金属成分が前記アルミナ粒子上に担持された、層を含み、前記CeO2が、N2中2%O2及び10%水蒸気下で、950℃で5時間エージングさせた後に、130Å未満の平均結晶子サイズを有し且つ水熱安定性である結晶子の形態で存在する、前記窒素酸化物吸蔵触媒が提案されている(特許文献3参照)。
【0010】
そして、特許文献4及び5には、LNT触媒を用いた排ガス浄化装置及びその制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特表2010-510884号公報
【文献】特開2013-146693号公報
【文献】特表2016-517343号公報
【文献】特開2013-053583号公報
【文献】特開2019-124152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、環境問題への配慮から、より高い浄化性能が求められている。しかしながら、本発明者らの知見によれば、特許文献1乃至3で用いられているNOx吸蔵材は、そのNOx吸蔵量が環境温度(排ガス温度)に依存し、期待されるNOx吸蔵量が得られていないことが判明した。
【0013】
さらに、本発明者らの知見によれば、特許文献1乃至3で用いられているNOx吸蔵材は、触媒性能の発現に不利な、空気量が比較的に多い高リーン環境下において、NOx吸蔵量が予想外に低減していることが判明した。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち本発明の目的は、NOx吸蔵率がより高められ、より高いNOx浄化率を発現可能な、ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒、及びこれを用いた排ガス浄化装置等を提供することにある。また、本発明の別の目的は、空気量が大きく変動するような過酷な使用環境下においても、高いNOx吸蔵量を安定して維持可能で、より高いNOx浄化率を発現可能な、高性能なガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒、及びこれを用いた排ガス浄化装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた。その結果、触媒層中の触媒活性成分の分布状態を制御するとともにNOx吸蔵材の使用量を調整することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の種々の態様を提供する。
(1)基材(11)と、前記基材上に設けられた第1触媒層(L1)と、前記第1触媒層(L1)上に設けられた第2触媒層(R1)とを備え、前記第1触媒層(L1)は、セリアアルミナ系母材粒子、前記セリアアルミナ系母材粒子上に担持されたPt及びPd、並びに前記セリアアルミナ系母材粒子上に担持されたBaOを含み、前記第2触媒層(R1)は、セリアアルミナ系母材粒子、前記セリアアルミナ系母材粒子上に担持されたPt及びRhを含み、下記条件(A)~(D)を満たすことを特徴とする、ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
(A)前記第1触媒層(L1)に含まれるPtの含有量が、前記第1触媒層(L1)の固形分総量に対して金属換算で0.45~0.85質量%
(B)前記第2触媒層(R1)と前記第1触媒層(L1)の境界面(B)を基準として、前記境界面(B)から前記第1触媒層(L1)の厚みT方向の2/3の深さ領域(L1a,L1b)に含まれるPtの含有割合が、前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量に対し、88質量%~90質量%
(C)前記境界面(B)を基準として前記第1触媒層(L1)の厚みT方向の2/3~3/3の深さ領域(L1c)に含まれるPtの含有割合が、前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量に対し、10~12質量%
(D)前記第1触媒層(L1)に含まれるBaの含有量が、前記第1触媒層(L1)の総触媒量に対して酸化物換算で4~11質量%であり、前記第2触媒層(R1)はBaを実質的に含まない
【0017】
(2)下記条件(C1)及び(C2)をさらに満たす(1)に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
下記条件(B1)及び(B2);
(B1)前記境界面(B)から前記第1触媒層(L1)の厚みT方向の1/3の深さ領域(L1a)に含まれるPtの含有割合が、前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量に対し、40~50質量%
(B2)前記境界面(B)を基準として前記第1触媒層(L1)の厚みT方向の1/3~2/3の深さ領域(L1b)に含まれるPtの含有割合が、前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量に対し、40~50質量%
(3)前記第1触媒層(L1)に含まれる総Pt量と総BaO量の比率(Pt/BaO)が、質量換算で0.05~0.15である(1)又は(2)に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【0018】
(4)前記基材(11)が、一体構造型ハニカム担体である(1)~(3)のいずれか一項に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
(5)前記基材(11)が、フロースルー型ハニカム担体である(4)に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
(6)前記基材(11)が、ウォールフロー型ハニカム担体である(4)に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【0019】
(7)前記第1触媒層(L1)は、前記BaO以外のアルカリ土類金属塩をさらに有する(1)~(6)のいずれか一項に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【0020】
(8)前記第2触媒層(R1)は、アルカリ土類金属塩を実質的に含まない(1)~(7)のいずれか一項に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒。
【0021】
(9)希薄燃焼エンジンの排ガス流路の下流側に配置された三元触媒と、前記三元触媒の下流側に配置された(1)~(8)のいずれか一項に記載のガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒と、を含む、排ガス浄化装置。
(10)希薄燃焼エンジンの排ガス流路の下流側に配置された三元触媒と、前記三元触媒の下流側に配置された(1)~(8)のいずれか一項に記載の第1ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒と、前記第1ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒の下流側に配置された(1)~(8)のいずれか一項に記載の第2ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒と、を含む、排ガス浄化装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、NOx吸蔵率がより高められ、より高いNOx浄化率を発現可能な、ガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒、及びこれを用いた排ガス浄化装置等を実現することができる。また、本発明によれば、空気量が大きく変動するような過酷な使用環境下においても、高いNOx吸蔵量を安定して維持可能で、より高いNOx浄化率を発現可能な、高性能なガソリンリーンバーンエンジン用LNT積層触媒、及びこれを用いた排ガス浄化装置等を実現することもできる。したがって、本発明によれば、少ない燃料を効率的に活用するガソリンリーンバーンエンジンの高性能化を図ることができ、その普及を推進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態のLNT積層触媒100の概略構成を示す断面図である。
図2】一実施形態のLNT積層触媒100を備える排ガス浄化装置の概略構成図である。
図3】実施例1のLNT積層触媒のLNT温度、空気量、NOx浄化率及びNOx吸蔵率の関係性を示すコンター図である。
図4】実施例2のLNT積層触媒のLNT温度、空気量、NOx浄化率及びNOx吸蔵率の関係性を示すコンター図である。
図5】参考例1のLNT積層触媒のLNT温度、空気量、NOx浄化率及びNOx吸蔵率の関係性を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その上限値「100」及び下限値「1」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。さらに、本明細書において、「D90粒子径」とは、体積基準の粒子径の累積分布において小粒径からの積算値が全体の90%に達したときの粒子径をいい、レーザー回折式粒子径分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-3100等)で測定した値を意味する。また、BET比表面積は、比表面積/細孔分布測定装置(商品名:BELSORP-mini II、マイクロトラック・ベル株式会社製)及び解析用ソフトウェア(商品名:BEL_Master、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、BET一点法により求めた値とする。
【0025】
<LNT積層触媒100>
図1は、本発明の一実施形態のLNT積層触媒100の概略構成を示す模式図である。本実施形態のLNT積層触媒100は、ガソリンリーンバーンエンジンから排出される排ガス、とりわけ窒素酸化物(NOx)を浄化するための、リーンNOxトラップ(Lean NOx Trap:LNT)触媒である。このLNT積層触媒100は、希薄(酸素過濃)動作の期間中にNOx吸蔵材(NOx吸着剤)にNOx成分を一時的に吸蔵(吸着)させ、過濃(燃料過濃)動作期間中にその吸蔵されたNOxを放出し、過濃(または化学量論的)動作期間中、NOx吸蔵材等が、排ガス中に存在するHC、CO、及び/または水素とのNOx(NOx吸蔵材等から放出されたNOxを含む)の反応等によって、NOxの窒素への還元を促進する。
【0026】
本実施形態のLNT積層触媒100は、基材11と、この基材11上に設けられた第1触媒層L1と、この第1触媒層L1上に設けられた第2触媒層R1とを備えている。第1触媒層L1は、厚みTを有し、第2触媒層R1と第1触媒層L1との境界面Bを基準として、図示上方から下方に向けて、厚みTの1/3にそれぞれ相当する深さ領域L1a,L1b,L1cからなる3領域を有する。
【0027】
なお、本実施形態においては、単一の第1触媒層L1を3つの深さ領域L1a,L1b,L1cに区分した説明としているが、各々の深さ領域L1a,L1b,L1cは、一体不可分の単一層を形成していてもよく、深さ領域L1a,L1b,L1cが積み重なった層を形成していてもよい。後者の場合、第1触媒層L1は、2層ないしは3層以上の多層構造を有していてもよい。例えば、単層構造の第1触媒層L1を構成するには、第1触媒層L1の形成時に、上述した割合にPtが偏在するように触媒スラリーを塗工すればよい。また、2層の第1触媒層L1を構成するには、深さ領域L1c用の触媒スラリーと深さ領域L1a,L1b用の触媒スラリーを用意し、これらを順に基材11上に塗工して各層を形成すればよい。さらに、3層構造の第1触媒層L1を構成するには、深さ領域L1c用の触媒スラリーと深さ領域L1b用の触媒スラリーと深さ領域L1a用の触媒スラリーを用意し、これらを順に基材11上に塗工して各層を形成すればよい。このとき、Pt濃度が異なる触媒スラリーを用いたり、触媒スラリーの塗工量を調整したり、触媒スラリーを多数回塗工したりすることができる。
【0028】
また、第1触媒層L1の深さ領域L1a,L1b,L1cの区分は、図1に示すように基材11の被塗工面が平坦面からなる箇所において、第2触媒層R1と第1触媒層L1の境界面Bを基準として、この境界面Bから厚みT方向に向けて厚みが三等分となるように計測して行う。ここで、一体構造型ハニカム担体等の基材11を用いる場合、基材11の被塗工面は平坦面のみとはならないことがある。具体的には、例えばセル断面が矩形である場合、触媒スラリーは、各セルの内周(すなわち、矩形の四隅(コーナー部)と、この四隅をつなぐ四辺(ストレート部))に塗工される。しかし、このような場合、各セルの四隅(コーナー部)に触媒スラリーが堆積し易いため、第1触媒層L1の厚みTそのものが、各セルの四隅(コーナー部)周辺と四隅をつなぐ四辺(ストレート部)とで、大きな差を持つ場合がある。そのため、第1触媒層L1の深さ領域L1a,L1b,L1cの区分の計測は、各セルの四隅(コーナー部)周辺と四隅(コーナー部)から等距離に位置する平坦面(ストレート部)のそれぞれの厚みを計測し、平均化するものとする。以下、各構成について詳述する。
【0029】
(基材11)
基材11は、第1触媒層L1及び第2触媒層R1を支持する触媒担体であり、例えば自動車排ガス用途において汎用されている一体構造型ハニカム担体が好ましく用いられる。一体構造型ハニカム担体は、一方の端面から他方の端面へ向かって伸びる多数の通孔を有しており、これらが集まってハニカム形状を形成している。このような一体構造型ハニカム担体としては、コージェライト、コージェライトアルミナ、窒シリコンカーバイド、炭化ケイ素、窒化珪素等のセラミックモノリス担体、ステンレス製等のメタルハニカム担体、ステンレス製等のワイヤメッシュ担体、スチールウール状のニットワイヤ担体等が挙げられる。また、その形状も、特に限定されず、例えば角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状等の任意の形状のものが選択可能である。これらは、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0030】
なお、一体構造型ハニカム担体としては、一方の開放端面から他方の開口端面に向けて開口する多数の通孔(気体流路)を有する構造を有するフロースルー型ハニカム担体と、一方の開放端面と他方の開口端面が互い違いに目封じされ且つ多孔質の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型ハニカム担体とが広く知られており、これらはいずれも適用可能である。フロースルー型ハニカム担体は、酸化触媒、還元触媒、三元触媒(TWC)等に広く用いられている。ウォールフロー型ハニカム担体は、排ガス中の煤やSOF等の固形成分や粒子状成分を濾し取るフィルターとしての働きを有し、Diesel Particulate Filter(DPF)やGasoline Particulate Filter(GPF)等として広く用いられている。これらの中でも、空気抵抗が少なく且つ排気ガスの圧力損失が少ないフロースルー型ハニカム担体が好ましい。
【0031】
一体構造型ハニカム担体等の基材11のサイズは、用途や要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、例えば数ミリから数センチの直径(長さ)のものが使用できる。一体構造型ハニカム担体等の基材11としては、さらに開口部の孔数についても、処理すべき排ガスの種類、ガス流量、圧力損失或いは除去効率等を考慮して適当な孔数が設定される。そのセル密度は、特に限定されないが、強度を維持しつつガス流に対する触媒の接触面積(表面積)を高く維持し圧力損失の増大を抑制する等の観点から、セル密度100~1500cell/inch2(155k~2325k/m2)であり、特に200~900cell/inch2(310k~1400k/m2)が好ましく、300~600cell/inch2(465k~933k/m2)がより好ましい。なお、セル密度とは、一体構造型ハニカム担体等の基材11を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことを意味する。
【0032】
(第1触媒層L1)
第1触媒層L1は、セリアアルミナ系母材粒子と、セリアアルミナ系母材粒子上に担持された貴金属活性種であるPt及びPdと、セリアアルミナ系母材粒子上に担持されたNOx吸蔵材ないしはその前駆体(以降において、単に「NOx吸蔵材」と称する場合がある。)であるBaOを含む。貴金属活性種の触媒活性は、その表面積の大きさに依存するところが大きく、触媒組成物中では微粒子状に安定して分散していることが望ましい。そのため、本実施形態では、高温時にも安定して高い分散状態を保つことができるように、母材粒子自体が高表面積を有する耐熱性無機酸化物であるセリアアルミナ系母材粒子上に、貴金属活性種であるPt及びPdとBaOとが高分散状態で担持されている。これにより、セリアアルミナ系母材粒子の表面上での粒子同士の凝集、これにともなう粒子成長が抑制され、高温時における触媒活性の低下が抑制される。なお、セリアアルミナ系母材粒子の表面上のBaは、後述する製造工程中の焼成や排ガスの浄化過程において高温に曝されて酸化されるためBaOという酸化物として表しているが、外部環境に応じて、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の各種塩の状態となっていてもよい。
【0033】
ここで用いるセリアアルミナ系母材粒子は、貴金属活性種であるPt及びPdさらにはBaOを表面に担持する担体粒子であり、水性ガスシフト反応促進やNOx吸蔵等の機能を有するセリアとアルミナとを含有する酸化物の複合体(CeO2/Al23)である。セリアアルミナ系母材粒子中のセリア含有割合は、特に限定されないが、酸化物換算で20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。なお、セリアアルミナ系母材粒子は、1種を単独で用いることができ、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
ここで用いるセリアアルミナ系母材粒子は、NOx吸蔵機能をより多く発揮させるために、アルミナ上にセリアが高分散に担持された複合粒子が好ましい。また、高温時に、アルミナ上でセリア同士が隣接するセリアと結合して粒成長してしまわないよう、少なくともセリアの一部がアルミナに固溶していることが好ましい。ここで、アルミナとは、γ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、α-アルミナ等の酸化アルミニウムの他、ベーマイト[α-AlO(OH)]やダイアスポア[β-AlO(OH)]等の水酸化酸化アルミニウム又はアルミナ水和物Al23・n(H2O))等を包含する概念であり、その種類は特に限定されない。アルミナは、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。これらの中でも、アルミナとしては、表面積の大きな、γ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、ベーマイトが好ましい。とりわけ、γ-アルミナはその他のアルミナに比べ1000℃以上での耐久性は劣るものの、通常1000℃以下で使用されるLNT触媒としては十分な耐熱性を有する上に、表面積がこれらすべてのアルミナの中で最も高いため特に好ましい。
【0035】
セリアアルミナ系母材粒子のBET比表面積は、特に限定されないが、母材粒子としての高い表面積を維持し、貴金属活性種やNOx吸蔵材を高分散状態で安定担持する観点から、50~250m2/gが好ましく、100~200m2/gがより好ましい。
【0036】
好ましいセリアアルミナ系母材粒子としては、酸化物基準で20~80質量%の範囲でセリア相を有し、N2中2%O2及び10%水蒸気下において950℃で5時間エージングさせた後に、130Å未満の平均結晶子サイズを有し且つ水熱安定性である結晶子の形態で存在するものが挙げられる。このようなセリアアルミナ系母材粒子は、希薄動作中に改善されたNOx捕集能力を示し、過濃再生中に改善されたNOx還元を示し、例えば特表2016-517343号公報に記載されており、その記載内容は、ここに参照として取り込まれる。
【0037】
なお、セリアアルミナ系母材粒子は、1種を単独で用いることができ、また2種以上を併用することもできる。2種以上のセリアアルミナ系母材粒子を用いる場合、セリア含有率或いはアルミナ含有量が異なるものを用いることができる。
【0038】
なお、セリアアルミナ系母材粒子の平均粒子径は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、D90粒子径が、1~30μmが好ましく、より好ましくは3~25μm、さらに好ましくは7~20μmである。
【0039】
第1触媒層L1(深さ領域L1a,L1b,L1c)のセリアアルミナ系母材粒子の塗工量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、助触媒やNOx吸蔵としての機能等の観点から、セリアアルミナ系母材粒子の固形分換算で、基材11の単位体積あたり、合計で100~400g/Lが好ましく、150~350g/Lがより好ましい。
【0040】
なお、第1触媒層L1に含まれる母材粒子としては、上述したとおり、Pt及びPdさらにはBaOを担持するセリアアルミナ系母材粒子を含んでいればよいが、セリアアルミナ系母材粒子以外の母材粒子(以降において、「他の母材粒子」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他の母材粒子としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えばγ-アルミナ、β-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ等の酸化アルミニウム(アルミナ:Al23)、シリカ-アルミナ、酸化セリウム(セリア:CeO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、セリアジルコニア系複合酸化物(CZ複合酸化物:CeO2/ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化チタン(チタニア:TiO2)等の酸化物やこれらの酸化物を主成分とした複合酸化物等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。これらは、ランタン、イットリウム等の希土類元素、遷移金属元素、アルカリ土類金属元素が添加された複合酸化物若しくは固溶体であってもよい。また、他の母材粒子として、β型やMFI型のゼオライトをはじめ、A、X、Y、MOR、CHA、SAPO等のゼオライト及び類縁体を用いることもできる。
【0041】
なお、これら他の母材粒子は、1種を単独であるいは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。そして、上述したPt、Pd、BaOは、その一部がこれらの他の母材粒子上に担持されていてもよい。また、例えば高温時におけるBET比表面積の低下を抑制する等のために、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属元素、鉄、コバルト、ニッケル、チタン等の遷移元素、ランタン、ネオジム、ジルコニウム、プラセオジム等の希土類元素、鉄等の他の成分或いはこれらの酸化物を添加剤として含有していてもよい。
【0042】
第1触媒層L1の貴金属活性種としては、Pt及びPdが必須とされる。Pt及びPdは、主として、排ガス中のHCやCO等を酸化浄化する、あるいは希薄動作期間中にNOxを酸化変換する、また過濃動作期間中にNOxを還元浄化する為の貴金属活性種として使用される。第1触媒層L1は、Pt及びPd以外の触媒活性種(以降において、「他の触媒活性種と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他の貴金属活性種としては、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等の白金族元素、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属元素、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)等の遷移金属元素、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等の希土類金属元素等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0043】
第1触媒層L1中のPtの総含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、酸化反応と還元反応のバランスの観点から、第1触媒層L1の固形分総量に対する金属(Pt)換算で、0.45~0.85質量%が好ましく、0.50~0.80質量%がより好ましく、0.55~0.75質量%がさらに好ましい。
【0044】
第1触媒層L1中のPdの総含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、酸化反応と還元反応のバランスの観点から、第1触媒層L1の固形分総量に対する金属(Pd)換算で、0.01~0.27質量%が好ましく、0.03~0.23質量%がより好ましく、0.06~0.20質量%がさらに好ましい。
【0045】
第1触媒層L1中のPtとPdの含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。高沸点HCの酸化、耐硫黄性等の観点から、PtとPdの含有割合(Pt/Pd)は、金属換算の質量比で、3:1~30:1が好ましく、5:1~20:1がより好ましい。なお、第1触媒層L1中のPtとPd、さらには他の触媒活性種は、金属(金属状態)で存在していることが好ましいが、後述する製造工程中の焼成や排ガスの浄化過程において酸化されて、その一部が酸化物となっていてもよい。
【0046】
ここで、本実施形態のLNT積層触媒100は、第1触媒層L1と第2触媒層R1の積層構造を有する多層化触媒とされている。このような多層化触媒では、上層側は下層側よりも排ガス中のHC、CO、NOxなどの有害ガスとの接触機会が多い。そのため、上層側では下層側より高い浄化活性が得られる傾向がある。その一方で、上層側は高温の排ガスに直接曝され、さらには酸化・還元反応時に発生する熱により局所的に高温になり易いため、上層側の母材、貴金属成分、助触媒成分等は焼結や粒子成長が下層側に比べ起こり易い傾向にある。しかも、硫黄分に代表される触媒の被毒物質が排ガス中に混じって触媒に流れ、上層側に真っ先に付着するため、上層側はそれら被毒物質による触媒性能の低下の影響を受け易い。逆言すると、被毒物質の多くは上層側に付着しトラップされてしまうため、被毒物質の下層側への拡散は比較的に低く、下層側へ到達する被毒物質の量は相対的に低い。そのため、耐硫黄性が比較的に弱いPdを下層側の第1触媒層L1に配置することにより、被毒物質による触媒性能の低下が低減されるので、Pt等では対処しにくい特定のHC種(高沸点HC)を十分に酸化浄化させることができる。また、Ptより耐熱性の高いPdを第1触媒層L1に配置することにより、Ptの耐熱性を向上させることができる。その結果、このような第1触媒層L1と第2触媒層R1の多層化触媒とすることにより、LNT積層触媒100の排ガスの浄化能力を高性能化することができる。
【0047】
しかも、本実施形態のLNT積層触媒100では、第1触媒層L1そのもの(第1触媒層L1内)においても、多層化触媒としての機能を持たせるために、特徴的な構成を採用している。すなわち、第2触媒層R1と第1触媒層L1の境界面Bを基準として、この境界面Bから厚みT方向に向けて1/3ずつの深さ領域L1a,L1b,L1cに区分したとき、第1触媒層L1に含まれるPtが、下側の深さ領域L1cよりも、上側の深さ領域L1a,L1bに多く配分されるように構成している。
【0048】
具体的には、第1触媒層L1に含まれる総Pt量に対し、深さ領域L1a,L1bに含まれるPtの含有割合は88質量%~90質量%とされており、深さ領域L1cに含まれるPtの含有割合は10~12質量%とされている。このように第1触媒層L1内のPtの存在割合を、深さ領域L1c側ではなく、排ガスとの接触機会が多い一方で高温に曝され易く被毒物質との接触機会が多い上側の深さ領域L1a,L1bに偏在させることにより、第1触媒層L1においても多層化触媒として機能させ、これにより、第1触媒層L1の高コスト化を抑制しつつ排ガスの浄化能力を高性能化させている。典型的な態様の一つとしては、深さ領域L1aに含まれるPtの含有割合は、第1触媒層L1に含まれる総Pt量に対し好ましくは40~50質量%、より好ましくは42~48質量%であり、深さ領域L1bに含まれるPtの含有割合は、第1触媒層L1に含まれる総Pt量に対し好ましくは40~50質量%、より好ましくは42~48質量%である。
【0049】
一方、第1触媒層L1に含まれるNOx吸蔵材であるBa成分は、酸素が多い(Lean)状態では、硝酸バリウムとしてNOxを吸蔵し、酸素が少ない(Rich)状態では、硝酸バリウムが炭酸バリウムに変化する際に、吸蔵したNOxを放出する。このように放出されたNOxは、還元剤のHC、CO、或いはスチームリフォーミング反応によって発生した水素等を利用して、Rh等の触媒活性種による触媒反応により浄化される。本実施形態において、BaOは、上述したセリアアルミナ系母材粒子上に担持されている。BaOをセリアアルミナ系母材粒子上に担持するのは、白金-セリアの相乗効果(白金のNO酸化活性をセリアが促進させる)により、NOから酸化されたNO2を炭酸バリウム、炭酸マグネシウムに素早く吸着させるためである。なお、BaOの一部が、セリアアルミナ系母材粒子以外の他の母材粒子上に担持されていてもよい。
【0050】
第1触媒層L1中のBaOの含有割合は、第1触媒層L1の総量に対して酸化物換算(BaO)で、好ましくは4~11質量%、より好ましくは4~10質量%である。従来のLNT触媒では、NOx吸蔵性を高めてNOx浄化性能を向上させる観点から、多量のBaOが配合されていたが、本実施形態の多層化触媒と組み合わせた態様では、BaOの使用量が従来の1/2~1/4程度でありながらも、従来に比して、より高いNOx吸蔵性及びNOx浄化性能が得られる。
【0051】
ここで、第1触媒層L1に含まれるNOx吸蔵材としては、上述したBaOを含んでいればよいが、BaO以外の公知のNOx吸蔵材ないしはその前駆体(以降において、「他のNOx吸蔵材」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他のNOx吸蔵材としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属の塩が挙げられる。第1触媒層L1中のBaO以外のアルカリ土類金属塩の含有割合は、第1触媒層L1の総量に対して酸化物換算(BeO、MgO,CaO、SrO)で、好ましくは1~30質量%、より好ましく2~20質量%、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0052】
第1触媒層L1中のPtに対するBaOの使用割合は、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、総コストの増大を抑制しつつ、高い浄化性能を得る観点から、第1触媒層L1に含まれる総Pt量と総BaO量の質量換算の比率(Pt/BaO)で、0.05~0.15であることが好ましく、0.06~0.15がより好ましい。
【0053】
なお、第1触媒層L1中のセリアアルミナ系母材粒子セリアアルミナ系母材粒子の表面に担持されたPt及びPdの粒子が、高温時、凝集して粒子成長することで表面積が下がり、活性を悪化させることを防止するために、Pt及びPdの粒子の周囲を微粒子で囲ってPt及びPdの粒子同士の接触機会を減らすことができる。このような微粒子としては、例えば、セリアアルミナ以外の他のアルミナ、ジルコニア、シリカ、シリカ-アルミナ、ゼオライト、チタニア、酸化タングステン、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジウム等が挙げられるが、これらに特に限定されない。ここで用いる微粒子はそれ自体が高温時にセリアアルミナ系母材粒子上を移動しないよう、耐熱性が高く予め焼結されたものが好ましく、かかる観点から、希土類(複合)酸化物(希土類酸化物、希土類複合酸化物)や遷移金属酸化物が好ましい。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を任意の組み合わせで用いることができる。このような凝集抑制のための微粒子の使用量は、Pt及びPdの使用量に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、Pt及びPdの総量に対して、20~300質量%が好ましく、20~150質量%がより好ましい。
【0054】
また、本実施形態で示す使用条件下では、第1触媒層L1は基材11或いは第2触媒層R1と十分な密着強度が得られているため、特にバインダーを必要としないが、必要に応じて、第1触媒層L1に当業界で公知のバインダー成分を含有させてもよい。バインダー成分としては、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾルが挙げられるが、これらに特に限定されない。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩もバインダーとして使用することができる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も、バインダーとして使用することができる。なお、バインダーの使用量は、特に限定されず、十分な密着強度が得られる程度の量であれば構わない。
【0055】
(第2触媒層R1)
第2触媒層R1は、セリアアルミナ系母材粒子と、セリアアルミナ系母材粒子上に担持された貴金属活性種であるPt及びRhとを含む。貴金属活性種の触媒活性は、その表面積の大きさに依存するところが大きく、触媒組成物中では微粒子状に安定して分散していることが望ましい。そのため、本実施形態では、高温時にも安定して高い分散状態を保つことができるように、母材粒子自体が高表面積を有する耐熱性無機酸化物であるセリアアルミナ系母材粒子上に、貴金属活性種であるPt及びRhが高分散状態で担持されている。これにより、セリアアルミナ系母材粒子上での粒子同士の凝集、これにともなう粒子成長が抑制され、高温時における触媒活性の低下が抑制される。
【0056】
ここで用いるセリアアルミナ系母材粒子は、貴金属活性種であるPt及びRhを表面に担持する担体粒子であり、水性ガスシフト反応促進やNOx吸蔵等の機能を有するセリアとアルミナとを含有する複合対(CeO2/Al23)である。セリアアルミナ系母材粒子中のセリア含有割合は、特に限定されないが、優れたOSC機能を発現させる観点から、酸化物換算で20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。なお、セリアアルミナ系母材粒子は、1種を単独で用いることができ、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで用いるセリアアルミナ系母材粒子としては、上述した第1触媒層L1において説明したものが同様に好ましく用いることができ、ここでの重複した説明は省略する。Pt及びRhをセリアアルミナ系母材粒子上に担持するのは、RhがPtによって安定化され、より効率的なNOx還元能を発揮するとともに、richスパイク時の脱NOxを促進することができるためである。
【0057】
第2触媒層R1のセリアアルミナ系母材粒子の塗工量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、助触媒や酸素吸蔵放出としての機能等の観点から、セリアアルミナ系母材粒子の固形分換算で、基材11の単位体積あたり、合計で10~90g/Lが好ましく、20~70g/Lがより好ましい。
【0058】
なお、第2触媒層R1に含まれる母材粒子としては、上述したとおり、Pt及びRhを担持するセリアアルミナ系母材粒子を含んでいればよいが、セリアアルミナ系母材粒子以外の母材粒子(以降において、「他の母材粒子」と称する場合がある。)を含んでいてもよい。他の母材粒子としては、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されず、例えば、上述した第1触媒層L1において説明したものが同様に好ましく用いることができ、ここでの重複した説明は省略する。
【0059】
第2触媒層R1の貴金属活性種としては、Pt及びRhが必須とされる。Pt及びRhは、主として、HCやCO等の還元成分によりNOxを還元浄化するための貴金属活性種として使用されるが、PtやPdはO2によるHCやCO等の酸化浄化の方が反応性に勝っているため、とりわけ高活性の活性種であるRhがNOx及び反応性のHC成分の還元浄化において重要である。なお、第2触媒層R1は、Pt及びRh以外の触媒活性種(以降において、「他の触媒活性種と称する場合がある。)を含んでいてもよい。但し、Pdは、耐硫黄性が比較的に弱いため、Pd以外が好ましく用いられる。すなわち、第2触媒層R1中の他の貴金属活性種としては、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等の白金族元素、金(Au)、銀(Ag)等の貴金属元素、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)等の遷移金属元素、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等の希土類金属元素等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0060】
第2触媒層R1中のPtの総含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、酸化反応と還元反応のバランスの観点から、第2触媒層R1の固形分総量に対する金属(Pt)換算で、0.23~2.70質量%が好ましく、0.45~2.25質量%がより好ましく、0.68~1.80質量%がさらに好ましい。
【0061】
第2触媒層R1中のRhの総含有量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、酸化反応と還元反応のバランスの観点から、第2触媒層R1の固形分総量に対する金属(Rh)換算で、0.02~6.75質量%が好ましく、0.11~2.25質量%がより好ましく、0.23~1.13質量%がさらに好ましい。
【0062】
第2触媒層R1中のPtとRhの含有割合は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。NOx吸蔵、NOx還元等の観点から、PtとRhの含有割合(Pt/Rh)は、金属換算の質量比で、2:1~10:1が好ましく、3:1~8:1がより好ましい。なお、第2触媒層R1中のPtとRh、さらには他の触媒活性種は、金属(金属状態)で存在していることが好ましいが、後述する製造工程中の焼成や排ガスの浄化過程において酸化されて、その一部が酸化物となっていてもよい。
【0063】
一方、第2触媒層R1は、第1触媒層L1とは異なり、Baを実質的に含有しないことが望まれる。これは、上述したとおり、各層で機能分離させて第1触媒層L1と第2触媒層R1の多層化触媒したにも関わらず、第2触媒層R1にBaが含まれると、Rhの酸化還元反応が阻害され、期待するNOx還元性能が効率的に得られないためである。ここで本明細書において、「実質的に含有しない」とは、第2触媒層R1中に含まれるBaの含有量が、第2触媒層R1の総量に対して酸化物換算(BaO)で1質量%未満であることを意味する。より好ましい態様では、第2触媒層R1にBa成分を意図的に添加していないため、2触媒層R1中にはBaがまったく存在しない(酸化物換算で0質量%)。但し、第2触媒層R1の形成時或いは形成後に、又はLNT積層触媒の高負荷使用時に、Baを含む第1触媒層L1から第2触媒層R1からBaが混入し得ることは、当業者によって容易に理解される。かかる観点から、第2触媒層R1中に含まれるBaの含有量は、第2触媒層R1の総量に対して酸化物換算(BaO)で、0.5質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
【0064】
また同様の理由から、第2触媒層R1は、上述したBaO以外の他のNOx吸蔵材を実質的に含まないことが望ましい。かかる観点から、第2触媒層R1中のBaO以外のアルカリ土類金属塩の含有割合は、第2触媒層R1の総量に対して酸化物換算(BeO、MgO,CaO、SrO)で、合計で5質量%未満が好ましく、合計で3質量%未満がより好ましく、合計で1質量%未満がさらに好ましく、合計で1質量%未満が特に好ましい。なお、これらのアルカリ土類金属塩は、後述する製造工程中の焼成や排ガスの浄化過程において酸化されるためBaOやMgO等の酸化物として算出しているが、アルカリ土類金属は、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩等の各種塩の状態となっていてもよい。
【0065】
なお、第2触媒層R1中のセリアアルミナ系母材粒子セリアアルミナ系母材粒子の表面に担持されたPt及びRhの粒子が、高温時、凝集して粒子成長することで表面積が下がり、活性を悪化させることを防止するために、Pt及びRhの粒子の周囲を微粒子で囲ってPt及びRhの粒子同士の接触機会を減らすことができる。このような微粒子としては、例えば、セリアアルミナ以外の他のアルミナ、ジルコニア、シリカ、シリカ-アルミナ、ゼオライト、チタニア、酸化タングステン、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジウム等が挙げられるが、これらに特に限定されない。ここで用いる微粒子はそれ自体が高温時にセリアアルミナ系母材粒子上を移動しないよう、耐熱性が高く予め焼結されたものが好ましく、かかる観点から、希土類(複合)酸化物(希土類酸化物、希土類複合酸化物)や遷移金属酸化物が好ましい。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を任意の組み合わせで用いることができる。このような凝集抑制のための微粒子の使用量は、Pt及びRhの使用量に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、Pt及びRhの総量に対して、20~300質量%が好ましく、20~150質量%がより好ましい。
【0066】
また、本実施形態で示す使用条件下では、第2触媒層R1は第1触媒層L1と十分な密着強度が得られているため、特にバインダーを必要としないが、必要に応じて、第2触媒層R1に当業界で公知のバインダー成分を含有させてもよい。バインダー成分としては、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等の種々のゾルが挙げられるが、これらに特に限定されない。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩もバインダーとして使用することができる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も、バインダーとして使用することができる。なお、バインダーの使用量は、特に限定されず、十分な密着強度が得られる程度の量であれば構わない。
【0067】
基材11上における、第1触媒層L1及び第2触媒層R1の総塗工量は、所望性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、圧力損失の増大を抑制しつつ十分に耐久性のある優れたNOx吸蔵率及びNOx浄化率を得る等の観点から、基材11の単位体積あたり、合計で100~550g/Lが好ましく、150~500g/Lがより好ましい。
【0068】
本実施形態のLNT積層触媒100は、第1触媒層L1及び第2触媒層R1を最小の触媒組成物構成単位とするもので、このような層構成とすることが、作業効率上だけでなくコスト上も望ましい。そして、上述したとおり、本発明の趣旨の範囲内で、触媒層L1a,触媒層L1b,触媒層L1c及び第2触媒層R1の4層構成、触媒層L1a,L1b,触媒層L1c及び第2触媒層R1の3層構成、第1触媒層L1(L1a,L1b,L1c)及び第2触媒層R1の2層構成とすることができ、また、これらの触媒層の間に、基材11と第1触媒層L1(触媒層L1c)との間に、第2触媒層R1のさらに上側に、バインダー層、触媒成分の移行を抑制するための抑制層、被覆層、異なる触媒組成層等をさらに適宜設けてもよい。また、第1触媒層L1(触媒層L1a,L1b,L1c)及び第2触媒層R1は、基材11上の一部のみにコート(ゾーンコート)されていてもよい。
【0069】
<LNT積層触媒100の調製>
本実施形態のLNT積層触媒100は、当業界で公知の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されない。例えば、第1触媒層L1の触媒スラリーを基材11上に当業界で公知のコーティング法で塗工し必要に応じて乾燥及び焼成する等して第1触媒層L1を形成した後、この第1触媒層L1上に第2触媒層R1の触媒スラリーを同様に塗工し必要に応じて乾燥及び焼成する等して第2触媒層R1を形成することで、本実施形態のLNT積層触媒100を得ることができる。工業的な生産性の観点から、水系媒体を用いて触媒スラリーをウォッシュコート法で塗工する製法が典型的に用いられる。第1触媒層L1の触媒スラリーとしては、Pt及びPd並びにBaOが表面に担持されたセリアアルミナ系母材粒子と、必要に応じて配合される、バインダー、他の触媒、助触媒粒子、OSC材、他の母材粒子及び添加剤等とを、所望の配合割合で水または水に水溶性有機溶媒を加えた溶媒(以降において、単に「水系媒体」と称する場合がある。)に混合したスラリー状混合物が好ましく用いられる。ここで、触媒層L1a,L1b,触媒層L1cを形成する場合には、同様にしてそれぞれの触媒スラリーを調製すればよい。また、第2触媒層R1の触媒スラリーとしては、Pt及びRhが表面に担持されたセリアアルミナ系母材粒子と、必要に応じて配合される、バインダー、他の触媒、助触媒粒子、OSC材、他の母材粒子及び添加剤等とを、所望の配合割合で水系媒体に混合したスラリー状混合物が好ましく用いられる。また、セリアアルミナ系母材粒子の表面への貴金属やBa等の担持方法も、常法にしたがって行うことができ、その調製方法は特に限定されない。
【0070】
使用するセリアアルミナ系母材粒子は、特に限定されるものではなく、市場から調達可能なセリアアルミナ系母材粒子を広く使用することができる。また、セリアアルミナは、当業界で公知の方法で、セリアとアルミナ原料とを混合し焼成することによって得ることができる。セリアの原料は、特に限定されないが、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物等の各種セリウム塩、また酸化セリウムを用いることができる。
【0071】
セリアアルミナ系母材粒子へのBaの担持においては、例えば、炭酸バリウムを微粉砕した後、セリアアルミナ系母材粒子と混合してセリアアルミナ系母材粒子の表面に担持することができる。バリウムを高分散させる観点から、Baを可溶性の塩の形でセリアアルミナ系母材粒子に含浸担持することが好ましい。Baを可溶性の塩としては、例えば、塩化バリウム、水酸化バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム等を用いることができる。また、その他のアルカリ土類金属塩、例えばMg等についても、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の可溶性の塩の形でセリアアルミナ系母材粒子に含浸担持することが好ましい。
【0072】
そして、セリアアルミナ系母材粒子に上記Ba成分とMg成分を含む均一溶液を含浸法等で担持させた後、必要に応じて50~200℃程度で乾燥し、さらに必要に応じて200~650℃程度で電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって焼成することにより、BaOやBaCO3等の形態でセリアアルミナ系母材粒子の表面上に固定することができる。そして、ここで、セリアアルミナ系母材粒子の表面上に炭酸塩としてBaを固定すると、スラリー中でセリアアルミナ系母材粒子からBaやMgの溶出を抑制することができる。しかし、酢酸塩を用いた場合や酢酸を別途加えた場合には、酢酸が分解して炭酸塩を形成可能であるが、その他の塩では炭酸塩は形成しない。そのため、BaやMg等のアルカリ土類金属を炭酸塩とするためには炭酸源が必要となる。この場合には、例えば、精製糖、果糖、ブドウ糖、脳糖などの単糖類、ショ糖、麦芽糖、乳糖等の二糖類が好ましく用いられる。これらは、材料として安全である上、可溶性にも優れ、発火温度も350℃と比較的低い温度で十分燃焼するだけでなく、分子を形成する炭素数も6~12と小さいため、燃焼しても完全燃焼し易く、煤等の残渣が残り難いという特色がある。なお、可燃性物質を用いる場合には、燃焼の際に発熱し、電気炉の温度を上げ過ぎるとBaやMg等が酸化バリウム、酸化マグネシウムにまで酸化されてしまう場合があるため、過度に温度上昇しないように燃焼時の温度を好ましくは200~450℃、より好ましくは250~400℃に制御することが望ましい。
【0073】
次に、セリアアルミナ系母材粒子へのPtの担持においては、例えば、白金の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩等(具体的には、水酸化白金(IV)酸のエタノールアミン溶液、テトラアンミン白金(II)酢酸塩、テトラアンミン白金(II)炭酸塩、テトラアンミン白金(II)硝酸塩、水酸化白金(IV)酸の硝酸溶液、硝酸白金、ジニトロジアミン白金硝酸、ヘキサヒドロキシ白金酸水溶液、塩化白金(IV)酸等)を用いて、セリアアルミナ系母材粒子に含浸担持させればよい。必要に応じて分散処理や攪拌処理を行うことができる。
【0074】
また、セリアアルミナ系母材粒子へのPdやRhの担持においては、例えば、これらの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩等(具体的には、テトラアンミンパラジウム(II)酢酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)炭酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、ジニトロジアンミンパラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、硫酸ロジウム、酢酸ロジウム、硝酸ロジウム、塩化ロジウム等)を用いて、セリアアルミナ系母材粒子に含浸担持させればよい。必要に応じて分散処理や攪拌処理を行うことができる。
【0075】
なお、必要に応じて、これらの触媒成分を焼成してもよく、この場合、焼成後の触媒成分と水系媒体とを混合してスラリー状混合物を調製する。このときの焼成温度は、200~650℃が好ましく、250~600℃がより好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行うことができる。
【0076】
スラリー状混合物の調製時に用いる水系媒体は、スラリー中で各成分が均一に分散できる量を用いればよい。このとき、必要に応じてpH調整のための酸や塩基を配合したり、粘性の調整や分散性向上のための分散材や界面活性剤や分散用樹脂等を配合したりすることができる。スラリーの混合方法としては、ボールミル等による粉砕混合等、公知の粉砕方法又は混合方法を適用することができる。基材11上にスラリー状混合物を付与する際には、常法にしたがって、各種公知のコーティング法、ウォッシュコート法、ゾーンコート法を適用することができる。
【0077】
ここで、スラリー状混合物の調製前或いは調製前時には、均一分散させる又は所望の粒度を得る等を目的として、ボールミルやビーズミル等による、乾式或いは湿式の粉砕処理、混合処理、又は分散処理を行うことができる。これらの処理条件は、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、必要成分を担持したセリアアルミナ系母材粒子のD90粒子径が好ましくは1~30μm、より好ましくは3~25μm、さらに好ましくは7~20μmとなるようにすることができる。
【0078】
これらのスラリー状混合物の粘度は、特に限定されないが、例えばウォッシュコート法において塗工に適した粘度として使用する等の観点からは、B型粘度計での測定値が5~2000mPa・sであることが好ましく、10~1000mPa・sであることがより好ましい。
【0079】
スラリー状混合物の塗工方法は、当業界で公知の方法で行えばよく、特に限定されない。例えば、スプレーコーティング、ディップコーティング等の公知の方法を採用することができる。典型的には、ウォッシュコート法が触媒塗工分野において広く用いられている。例えば、上述した水系溶媒中に触媒成分を含むスラリー状混合物(触媒組成物)と一体構造型ハニカム担体等の基材11とを準備し、基材11上にスラリー状混合物(触媒組成物)を層状に塗工すればよい。また、触媒層L1a,L1b,触媒層L1cのように触媒層を多層に設ける場合には、同様にしてそれぞれの触媒スラリーを複数回塗工すればよい。ウォッシュコート等による塗工は、2回以上繰り返すことができる。また、乾燥工程前の塗工を2回以上繰り返してもよく、乾燥工程までを2回以上繰り返してもよい。
【0080】
基材11上にスラリー状混合物を塗工した後においては、常法にしたがい乾燥や焼成を行うことにより、本実施形態のLNT積層触媒100を得ることができる。なお、乾燥温度は、例えば50~250℃が好ましく、80~230℃がより好ましい。また、焼成温度は、例えば300~700℃が好ましく、400~600℃が好ましい。加熱手段については、特に限定されないが、例えば電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行うことができる。
【0081】
<LNT積層触媒100を用いた排ガス浄化>
本実施形態のLNT積層触媒100は、希薄燃焼エンジンの排ガス流路内、好ましくはガソリンリーンバーンエンジンの排ガス流路内、に配置して使用することができる。本実施形態のLNT積層触媒100は、希薄燃焼エンジンの希薄燃焼により排出された排ガスを浄化する。すなわち、リーン(希薄雰囲気:噴霧燃料に対する理論酸素量と比べ過剰に酸素がある状態。)雰囲気において、Ba成分等のNOx吸蔵材にNOxを吸蔵させ、燃料過剰噴霧でリッチ(燃料過剰雰囲気)なパルスを打つことで一時的に酸素の低い雰囲気を実現させ、吸蔵したNOxを燃料で還元する。すなわち、Ba成分等のNOx吸蔵材は、脱硝における重要な活性種である。
【0082】
また、本実施形態のLNT積層触媒100は、排ガス排出物の処理のための1つ以上の追加の成分を含む統合された排ガス浄化装置及び排ガス浄化システムにおいて用いることができる。例えば、希薄燃焼エンジンの排ガス流路の下流側に配置された1以上の三元触媒(TWC)と、この三元触媒の下流側に配置された1以上のLNT積層触媒100(LNT)と備える排ガス浄化装置(TWC/LNT)が挙げられる。必要に応じて、複数のLNT積層触媒100を配置した排ガス浄化装置(TWC/LNT/LNT)の構成を有していてもよい。或いは、LNT積層触媒100(LNT)と他の公知のLNT触媒(LNT2)とを用いた排ガス浄化装置(TWC/LNT/LNT2)の構成を有していてもよい。いずれの場合であっても、各々の触媒は、隣接して配置されていてもよく、エンジン直下とシャーシの床下にそれぞれ配置されていてもよい。本実施形態のLNT積層触媒100は、エンジン直下又はシャーシの床下、及びその双方に使用することができる。
【実施例
【0083】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0084】
(実施例1)
第1触媒層L1
特表2016-517343号公報の実施例に記載の試料2Aのアルミナ含量50質量%のセリアアルミナ系母材粒子に酢酸バリウム水溶液を含浸し、表面にBaを担持させ、110℃で乾燥し、720℃で焼成することで、バリウム担持セリアアルミナ系母材粒子を得た。得られた複合粒子に硝酸パラジウム水溶液とヘキサヒドロキシ白金酸水溶液とを含浸し、白金及びパラジウムをセリアアルミナ系母材粒子の表面に担持した。得られたPt-Pd/Ba担持セリアアルミナ系母材粒子と、酢酸マグネシウム水溶液と酢酸ジルコニウム水溶液とをそれぞれ所定量計量した後に混合し、湿式ミリング法により混錬し、第1触媒層L1の触媒層L1c用のスラリー状混合物S1a(各成分の質量割合は、各層の固形分総量に対するそれぞれの金属換算で以下のとおりである。Pt:0.06質量%、Pd:0.01質量%、Rh:0.00質量%、CeO2/Al23:80質量部、BaO:9.8質量部)を得た。
また、Pt及びPdの担持量を変更する以外は、上記と同様に行って、第1触媒層L1の触媒層L1a,L1b用のスラリー状混合物S1b,S1c(各成分の質量割合は、質量比で以下のとおりである。Pt:0.25質量%、Pd:0.03質量%、Rh:0.00質量%、CeO2/Al23:80質量部、BaO:9.8質量部)を得た。
【0085】
得られた触媒層L1c用のスラリー状混合物S1cを、基材11であるハニカムフロースルー型コージェライト担体(セル密度:400cell/inch2、壁厚:3.5mil、四角セル、長さ:114.3mm、直径:105.7mm)にウォッシュコート法で塗工し(塗工量:基材11の単位体積あたり、セリアアルミナ系母材粒子の固形分換算で80g/L)、200℃で30分乾燥させた後、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成することで、基材11上に触媒層L1cを形成した。その後、同様の方法で、得られた触媒層L1b用のスラリー状混合物S1bを触媒層L1c上にウォッシュコート法で塗工し(塗工量:基材11の単位体積あたり、セリアアルミナ系母材粒子の固形分換算で80g/L)、乾燥及び焼成することで、触媒層L1c上に触媒層L1bを形成した。また、同様の方法で、得られた触媒層L1a用のスラリー状混合物S1aを触媒層L1b上にウォッシュコート法で塗工し(塗工量:基材11の単位体積あたり、セリアアルミナ系母材粒子の固形分換算で80g/L)、乾燥及び焼成することで、触媒層L1b上に触媒層L1aを形成した。これにより、基材11上に、触媒層L1c、触媒層L1b及び触媒層L1aがこの順に設けられた、積層構造の第1触媒層L1(積層触媒)を得た。
【0086】
第2触媒層R1
特表2016-517343号公報の実施例に記載の試料2Aのアルミナ含量50質量%のセリアアルミナ系母材粒子に硝酸ロジウム水溶液とヘキサヒドロキシ白金酸水溶液を含浸し、ロジウムおよび白金をセリアアルミナ系母材粒子の表面に担持した。得られたPt-Rh担持セリアアルミナ系母材粒子と、硝酸ネオジム水溶液とをそれぞれ所定量計量した後に混合し、湿式ミリング法により混錬し、第2触媒層R1用のスラリー状混合物(各成分の質量割合は、各層の固形分総量に対するそれぞれの金属換算で以下のとおりである。Pt:0.90質量%、Pd:0.00質量%、Rh:0.27質量%、CeO2/Al23:43質量部、BaO:0質量部)を得た。
【0087】
第2触媒層R1用のスラリー状混合物を、先に述べた第1触媒層L1の形成方法と同様に、触媒層L1a上にウォッシュコート法で塗工し(塗工量:基材11の単位体積あたり、セリアアルミナ系母材粒子の固形分換算で43g/L)、乾燥及び焼成することで、触媒層L1a上に第2触媒層R1を形成した。これにより、基材11上に、第1触媒層L1(触媒層L1a、触媒層L1b及び触媒層L1c)並びに第2触媒層R1がこの順に設けられた、実施例1のLNT積層触媒100を得た。
【0088】
(実施例2)
BaO担持量を4.9質量部に変更する以外は、実施例1と同様に行い、触媒層L1a,L1b,L1c用のスラリー状混合物S2a,S2b,S2cをそれぞれ調製した。
スラリー状混合物S1a,S1b,S1cに代えてスラリー状混合物S2a,S2b,S2cを用いる以外は、実施例1と同様に行い、実施例2のLNT積層触媒100を得た。
【0089】
(比較例1)
BaO担持量を14.7質量部に変更する以外は、実施例1と同様に行い、触媒層L1a,L1b,L1c用のスラリー状混合物SC1a,SC1b,SC1cをそれぞれ調製した。
スラリー状混合物S1a,S1b,S1cに代えてスラリー状混合物SC1a,SC1b,SC1cを用いる以外は、実施例1と同様に行い、比較例1のLNT積層触媒100を得た。
【0090】
(比較例2)
BaOの担持処理を省略する以外は、実施例1と同様に行い、触媒層L1a,L1b,L1c用のスラリー状混合物SC2a,SC2b,SC2cをそれぞれ調製した。
スラリー状混合物S1a,S1b,S1cに代えてスラリー状混合物SC2a,SC2b,SC2cを用いる以外は、実施例1と同様に行い、比較例2のLNT積層触媒100を得た。
【0091】
(参考例1)
特表2016-517343号公報の実施例に記載の試料2Aのアルミナ含量50質量%のセリアアルミナ系母材粒子に酢酸バリウム水溶液を含浸し、表面にBaを担持させ、110℃で乾燥し、600℃で焼成することで、バリウム担持セリアアルミナ系母材粒子を得た。得られた複合粒子に硝酸パラジウム水溶液とヘキサヒドロキシ白金酸水溶液とを含浸し、白金及びパラジウムをセリアアルミナ系母材粒子の表面に担持した。得られたPt-Pd/Ba担持セリアアルミナ系母材粒子と、酢酸マグネシウム水溶液と酢酸ジルコニウム水溶液とをそれぞれ所定量計量した後に混合し、湿式ミリング法により混錬し、第1触媒層L用のスラリー状混合物SR1(各成分の質量割合は、各層の固形分総量に対するそれぞれの金属換算で以下のとおりである。Pt:0.17質量%、Pd:0.02質量%、Rh:0.00質量%、CeO2/Al23:80質量部、BaO:19.6質量部)を得た。
【0092】
得られたスラリー状混合物SR1を、基材11であるハニカムフロースルー型コージェライト担体(セル密度:400cell/inch2、壁厚:3.5mil、四角セル、長さ:114.3mm、直径:105.7mm)にウォッシュコート法で塗工し(塗工量:基材11の単位体積あたり、セリアアルミナ系母材粒子の固形分換算で80g/L)、200℃で30分乾燥させた後、大気雰囲気下、500℃で1時間焼成することで、基材11上に触媒層L1cを形成した。これをさらに2回繰り返し、触媒層L1b(L1c)及び触媒層L1a(L1c)を形成し、第1触媒層L1(触媒層L1c、触媒層L1b(L1c)及び触媒層L1a(L1c)の積層触媒)を形成した。その後は、実施例1と同様に行い、第1触媒層L1上に第2触媒層R1を形成し、参考例1のLNT積層触媒を得た。
【0093】
各々のLNT積層触媒の触媒組成を、表1に示す。
【表1】
【0094】
〔NOx吸蔵率、及びNOx浄化率の測定〕
次に、得られた各々のLNT積層触媒の触媒性能を測定した。
ここでは、エンジン直下に三元触媒が配置された1.8L直噴ガソリンリーンバーンエンジンを用いて、エンジンダイナモメータを使って評価を実施した。触媒レイアウトとしては、図2に示すとおり、TWCの後に、2つのLNT-1(容量1.0L)及びLNT-2(容量2.5L)がこの順に配置された構成である。そして、TWCアウトのガスと、LNT-2アウトのガスをサンプリングしてガス分析をそれぞれ行い、その差からNOx浄化率やNOx吸蔵率をそれぞれ算出した。なお、分析計としてHORIBA社製のMEXA-ONEを用い、測温位置は、LNT-1のフロント側から1インチの触媒層内とした。
【0095】
各々のLNT積層触媒の系内への空気流入量20g/秒の場合の触媒性能を、表2に示す。
【表2】
【0096】
表3に、フロントに配置したLNT積層触媒の床内温度を300℃とし、系内への空気流入量を15g/秒、20g/秒、30g/秒にして測定した際の各LNT積層触媒の触媒性能を、表3に示す。
【表3】
【0097】
表4に、フロントに配置したLNT積層触媒の床内温度を350℃とし、系内への空気流入量を15g/秒、20g/秒、30g/秒にして測定した際の各LNT積層触媒の触媒性能を、表4に示す。
【表4】
【0098】
図3図5に、実施例1、実施例2及び参考例1における、LNT温度、空気量、NOx浄化率及びNOx吸蔵率の関係性を示すコンター図をそれぞれ示す。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のLNT積層触媒、及びこれを用いた排ガス浄化装置等は、NOx吸蔵率がより高められ、より高いNOx浄化率を発現可能であるため、少ない燃料を効率的に活用するガソリンリーンバーンエンジンの排ガス浄化の用途において広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
100 ・・・LNT積層触媒
11 ・・・基材
L1 ・・・第1触媒層
L1a・・・深さ領域
L1b・・・深さ領域
L1c・・・深さ領域
R1 ・・・第2触媒層
T ・・・厚み
B ・・・境界面
図1
図2
図3
図4
図5