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特許7344846レーザ加工システム及び加工パレットへの液体塗布方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】レーザ加工システム及び加工パレットへの液体塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/16 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B23K26/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020107678
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022002851
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】市川 智也
(72)【発明者】
【氏名】廣野 純
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-88672(JP,A)
【文献】特開平8-10980(JP,A)
【文献】特開2019-853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材にレーザ加工を行うレーザ加工装置と、
複数のスキッドからなるスキッド群を有する加工パレットをレーザ加工装置へ搬送するパレット搬送装置と、
前記パレット搬送装置から前記レーザ加工装置に搬送される前記加工パレットに対し、下方から液体をミストとして噴き付ける下ノズル群を含む液体塗布装置と、
を備えたレーザ加工システム。
【請求項2】
前記下ノズル群は、複数の下ノズルを有し、前記下ノズルは扇形ノズルであることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工システム。
【請求項3】
複数の下ノズルは、前記加工パレットの前記レーザ加工装置への搬送方向に傾いて前記ミストを噴出することを特徴とする請求項2記載のレーザ加工システム。
【請求項4】
前記複数の下ノズルは、一対の組の複数組として構成され、前記一対の組の一方の下ノズルが、前記搬送方向の進行方向前側に前記ミストを噴出し、前記一対の組の他方の下ノズルが、前記搬送方向の進行方向後側に前記ミストを噴出することを特徴とする請求項3記載のレーザ加工システム。
【請求項5】
前記スキッドは、短冊板状の基部と、前記基部の上縁部に、上方を頂点とする三角形状に突出した支持片が複数並設されて形成されて前記素材を支持する支持部とを有し、
前記素材が前記加工パレットの前記スキッド群に載っている場合に、
前記下ノズル群は、前記液体のミストを、前記素材の下面に当てると共に前記下面に当たって跳ね返った前記液体のミストによって前記支持片の端面に前記液体が塗布されるよう噴き付けることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザ加工システム。
【請求項6】
前記液体は、スパッタ付着防止剤であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のレーザ加工システム。
【請求項7】
前記加工パレット及び前記加工パレットに載置された前記素材に対し、上方から前記液体をミストとして噴き付ける上ノズル群を備えたことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザ加工システム。
【請求項8】
複数のスキッドからなるスキッド群を有する加工パレットを、前記スキッド群に載せた素材と共にレーザ加工装置に搬入する際に、
前記加工パレットに対し、液体を下方からミストとして噴き付けて前記素材の下面に当て、前記下面で跳ね返ったミストによって前記液体を前記スキッドの上方を向く端面に塗布する加工パレットへの液体塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工システム及び加工パレットへの液体塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ切断加工において、レーザビーム照射前の被切断部材の移動時に、その被切断部材の上面の全範囲にオイルを散布することが記載されている。
これにより、特許文献1に記載されたレーザ切断加工では、加工時に飛散するスパッタ又は溶融物が被切断部材に固着することを、加工のタクトタイムを増加させずに防止できる、とされる。
【0003】
特許文献2には、レーザ切断加工において被切断部材を支持するパレットのスキッドを、作業者が手作業で清掃するための清掃装置が記載されている。また、特許文献2には、清掃後のスキッドにスパッタ付着防止剤を塗布しておくことで、清掃を容易に行うことができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4562995号公報
【文献】特開2012-086248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、パレットのスキッドにスパッタ付着防止剤などの液体を塗布する作業は、被切断部材をレーザ切断加工する前に、作業者が噴霧器などを用いて手作業で行っているのが一般的である。
この塗布作業は、レーザ切断加工の工程の途中で独立して行われるので、タクトタイムが増加し生産性が低下する。
また、手作業による液体の塗布は、スキッドに塗布される液体の量にむらを生じさせ、量が少ない部分には、スパッタ又はドロスが容易かつ早期に固着する虞がある。スキッドにドロスなどが固着すると、固着の程度によっては、被切断加工部材に傷が付いたり、被切断加工部材が水平に保持されず製品として必要な寸法精度が得られない、といったレーザ切断加工の品質低下が生じる。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、レーザ切断加工の生産性及び品質が低下しにくいレーザ加工システム及び加工パレットへの液体塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) 素材にレーザ加工を行うレーザ加工装置と、
複数のスキッドからなるスキッド群を有する加工パレットをレーザ加工装置へ搬送するパレット搬送装置と、
前記パレット搬送装置から前記レーザ加工装置に搬送される前記加工パレットに対し、下方から液体をミストとして噴き付ける下ノズル群を含む液体塗布装置と、
を備えたレーザ加工システムである。
2) 前記下ノズル群は、複数の下ノズルを有し、前記下ノズルは扇形ノズルであることを特徴とする1)に記載のレーザ加工システムである。
3) 複数の下ノズルは、前記加工パレットの前記レーザ加工装置への搬送方向に傾いて前記ミストを噴出することを特徴とする2)に記載のレーザ加工システムである。
4) 前記複数の下ノズルは、一対の組の複数組として構成され、前記一対の組の一方の下ノズルが、前記搬送方向の進行方向前側に前記ミストを噴出し、前記一対の組の他方の下ノズルが、前記搬送方向の進行方向後側に前記ミストを噴出することを特徴とする3)に記載のレーザ加工システムである。
5) 前記スキッドは、短冊板状の基部と、前記基部の上縁部に、上方を頂点とする三角形状に突出した支持片が複数並設されて形成されて前記素材を支持する支持部とを有し、
前記素材が前記加工パレットの前記スキッド群に載っている場合に、
前記下ノズル群は、前記液体のミストを、前記素材の下面に当てると共に前記下面に当たって跳ね返った前記液体のミストによって前記支持片の端面に前記液体が塗布されるよう噴き付けることを特徴とする1)~4)のいずれか一つに記載のレーザ加工システムである。
6) 前記液体は、スパッタ付着防止剤であることを特徴とする1)~5)のいずれか一つに記載のレーザ加工システムである。
7) 前記加工パレット及び前記加工パレットに載置された前記素材に対し、上方から前記液体をミストとして噴き付ける上ノズル群を備えたことを特徴とする1)~6)のいずれか一つに記載のレーザ加工システムである。
8) 複数のスキッドからなるスキッド群を有する加工パレットを、前記スキッド群に載せた素材と共にレーザ加工装置に搬入する際に、
前記加工パレットに対し、液体を下方からミストとして噴き付けて前記素材の下面に当て、前記下面で跳ね返ったミストによって前記液体を前記スキッドの上方を向く端面に塗布する加工パレットへの液体塗布方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ切断加工の生産性及び品質が低下しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工システムの実施例であるレーザ加工システムSTの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、レーザ加工システムSTを構成するパレット搬送装置91が備える加工パレット2を示す平面図である。
図3図3は、加工パレット2の部分側面図である。
図4図4は、加工パレット2に対する上ノズル群7及び下ノズル群8の配置位置を示す模式的側面図である。
図5図5は、液体塗布装置6における液体塗布範囲を説明するための模式的前面図である。
図6図6は、上ノズル群7及び下ノズル群8を有する液体塗布装置6の配管系統図である。
図7図7は、下ノズル83aによるスキッド23へのミストMLの噴霧態様を示す側面図である。
図8図8は、レーザ加工システムSTにおける液体塗布装置6の、加工パレット2に対するミストMLの噴霧動作を示す模式的前面図である。
図9図9は、レーザ加工システムSTの変形例であるレーザ加工システムSTAの概略構成を示す斜視図である。
図10図10は、レーザ加工システムSTAが有する液体塗布装置6Aの配管系統図である。
図11図11は、液体塗布装置6Aに含まれる上ノズル部62Aの、加工パレット2に対するミストMLの噴霧動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例)
図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工システムの実施例であるレーザ加工システムSTの概略構成を示す斜視図である。説明の便宜のため、上下左右前後の各方向を図1の矢印で示された方向に規定する。また、左右をX軸、前後をY軸、上下をZ軸とする。
【0011】
図1に示されるように、レーザ加工システムSTは、パレット搬送装置91,レーザ加工装置92,及び制御装置93を備えている。
パレット搬送装置91は、レーザ加工装置92に隣接して配置されている。この例では、パレット搬送装置91はレーザ加工装置92の右側に配置されている。
レーザ加工装置92は、被加工部材である素材Waに対しレーザ加工を施す。パレット搬送装置91は、素材Waを載せた加工パレット2をレーザ加工装置92に対し搬出入する。
制御装置93は、パレット搬送装置91及びレーザ加工装置92の動作を制御する。制御装置93は、図1に示されるような別体であることに限定されず、パレット搬送装置91及びレーザ加工装置92のいずれかと同体であってもよい。
【0012】
パレット搬送装置91及びレーザ加工装置92の概略の構造及び動作を説明する。パレット搬送装置91及びレーザ加工装置92の動作は、それぞれが有する不図示の駆動部の動作を、制御装置93が制御することで実行される。
【0013】
パレット搬送装置91は、格納部911,搬送本体部912,及びリフタ部913を備えている。
また、パレット搬送装置91は、素材パレット1,加工パレット2,及び一枚取ユニット3を含んで構成されている。この例において、パレット搬送装置91には、加工パレット2が二個含まれている。以下、必要に応じて、二個の加工パレット2を加工パレット2A,2Bとして区別する。
【0014】
パレット搬送装置91の搬送本体部912は、レーザ加工装置92の右端部に連結して配置されている。
格納部911は、搬送本体部912の後端部に連結して配置されている。
リフタ部913は、搬送本体部912の前部に設置され、下部位置及び下部位置よりも上方の中央位置との間を、矢印D1に示されるように昇降するリフタトレイ5を有する。図1において下部位置にあるリフタトレイ5は実線で示され、中央位置にあるリフタトレイ5は一点鎖線で示されている。
リフタトレイ5は、加工パレット2を載せて昇降可能である。
【0015】
パレット搬送装置91は、液体塗布装置6を備えている。液体塗布装置6は、加工パレット2及び加工パレット2に載置された素材Waに対し、液体Mを噴霧して塗布する装置である。液体塗布装置6は、液体Mを収容したタンク61aを有する本体部61,上ノズル部62,及び下ノズル部63を有する。上ノズル部62は上ノズル群7を含み、下ノズル部63は下ノズル群8を含む。
液体塗布装置6の詳細は後述する。
【0016】
搬送本体部912は、格納部911から素材パレット1に載せられて供給された素材Waを、レーザ加工装置92に出入りする加工パレット2に乗せ換える。
搬送本体部912は、レーザ加工装置92と対向する部分に、加工パレット2が出入りする出入口914を有する。搬送本体部912は、加工パレット2を、出入口914を通してレーザ加工装置92との間で搬送する。
リフタ部913は、二つの加工パレット2A,2Bを搬送本体部912とレーザ加工装置92との間で同時に運用するために、搬送本体部912の外側に一時退避させると共に搬送本体部912における上下2段の位置替えを可能とする。
【0017】
レーザ加工装置92は、レーザ加工ヘッド921を有する。
レーザ加工ヘッド921は、X軸,Y軸,及びZ軸の各方向にそれぞれに独立移動し、加工パレット2に載置された素材Waに対しレーザビームLsを照射して切断又は孔開けなどの加工を施す。
レーザ加工ヘッド921は、レーザ加工の際にアシストガスを加工部位に向け噴出する。
【0018】
加工パレット2は、素材Waを載置した状態で、パレット搬送装置91の搬送本体部912から出入口914を通って左方に移動しレーザ加工装置92に搬入される。加工パレット2に載置されてレーザ加工装置92に供給された素材Waは、レーザ加工ヘッド921によってレーザ加工され加工済材Wbとなる。
レーザ加工後、加工パレット2は、加工済材Wbを載置した状態で右方に移動し、出入口914を通ってパレット搬送装置91の搬送本体部912に移動する。
【0019】
これらの概略構成により、レーザ加工システムSTは、一つの加工パレット2Aに載せた一つの素材Waをレーザ加工装置92で加工している間に、別の加工パレット2Bに対し、次に加工する素材Waを素材パレット1から別の加工パレット2Bに転載させておくことができる。
そのため、レーザ加工システムSTは、加工パレット2Aの素材Waの加工が終了し、加工パレット2Aを出入口914を通して搬送本体部912に戻したら、加工パレット2Aと加工パレット2Bとの位置替えを行って直ちに次の素材Waを載せた加工パレット2Bをレーザ加工装置92に投入可能である。これにより、レーザ加工システムSTは、高い生産性を有する。
【0020】
次に、各部材及び装置について具体的に説明する。
搬送本体部912は、六面体の枠状体を呈しレーザ加工装置92に連結して配置されている。格納部911は搬送本体部912の後部に連結して配置されている。
格納部911及び搬送本体部912は、搬送本体部912の上下方向の中央よりも上方の位置P1において、素材パレット1を搬送本体部912との間で矢印D2のように往復移動可能に支持する。素材パレット1は、レーザ加工装置92で加工する例えば板材なる素材Waを載置可能な大きさを有し、格納部911と搬送本体部912との間を往復移動する。
格納部911において、素材パレット1には、格納部911に連接された自動倉庫などから、ロボットなどにより複数枚の素材Waが積層される。積層された複数枚の素材Waを積層体Wtとする。
【0021】
搬送本体部912の内部の上部には、一枚取ユニット3が備えられている。
一枚取ユニット3は、水平姿勢の板材を上方から吸着して保持する複数の吸着部3aを有する。複数の吸着部3aは、矢印D3に示されるように、吸着位置P2に対して上方の上方位置P3と、搬送本体部912の下部に位置する下方位置P4との間を一体的に移動する。
【0022】
これにより、一枚取ユニット3は、格納部911から搬送本体部912に移動した素材パレット1に載置されている積層体Wtから、最上の一枚の素材Waを吸着部3aによって吸着保持し、吸着した素材Waを上方位置P3と下方位置P4との間で移動させることができる。
【0023】
搬送本体部912の内部の下部には、スイッチラック4が設置されている。
スイッチラック4は、概ね箱状を呈し上下2段の上保持部4c及び下保持部4dを有する。上保持部4c及び下保持部4dは、それぞれ加工パレット2を載せて保持できる。
スイッチラック4は、左方に開放してレーザ加工装置92に繋がる左開口部4aと、前方に開放されリフタトレイ5に繋がる前開口部4bとを有する。
【0024】
スイッチラック4は、図1において実線で示された下位置と、一点鎖線で示された上位置との間で矢印D6で示されるように上下動する。
下位置において、上保持部4c上下方向における位置P5にある。上位置において、上保持部4cは、位置P5よりも上方の位置P6にある。
【0025】
スイッチラック4が下位置にあるときに、上保持部4cとレーザ加工装置92とは連結され、上保持部4cに載せられた加工パレット2は、レーザ加工装置92との間で、矢印D4に示されるように移動可能である。
スイッチラック4が上位置にあるときに、下保持部4dとレーザ加工装置92とは連結され、下保持部4dに載せられた加工パレット2は、左開口部4aを通してレーザ加工装置92との間を矢印D4に示されるように移動可能である。
【0026】
スイッチラック4が下位置にあるときに、下保持部4dに載せられた加工パレット2は、前開口部4bを通して、下部位置にあるリフタトレイ5に対し矢印D5に示されるように出入り可能である。
加工パレット2がスイッチラック4から下部位置にあるリフタトレイ5に移動し、リフタトレイ5が加工パレット2を載せて中央位置に上昇すると、リフタトレイ5は、下位置にあるスイッチラック4の上保持部4cと連結して加工パレット2を上保持部4cとの間で移動可能となる。
このように、加工パレット2は、リフタトレイ5を介してスイッチラック4の上保持部4cと下保持部4dとの間で移動可能となっている。
【0027】
スイッチラック4が上位置にあるときに、上保持部4cにある加工パレット2には、一枚取ユニット3が下方位置P4に下降してアクセス可能となっている。
すなわち、一枚取ユニット3は、吸着している素材Waを加工パレット2に載置できる。また、加工パレット2に載置された加工済材Wbを吸着し、加工パレット2から離れた上方位置P3まで持ち上げることができる。
【0028】
格納部911と搬送本体部912との間には、不図示の製品パレットが素材パレット1と同様に往復移動可能となっている。
これにより、一枚取ユニット3は、加工パレット2から吸着した加工済材Wbを上方位置P3まで持ち上げた後、格納部911から搬送本体部912に移動してきた製品パレット上に、加工済材Wbを載置できる。
その後、加工済材Wbを載せた製品パレットは格納部911に移動し、加工済材Wbは、ロボットなどによって所定の場所に搬出される。
【0029】
図2に示されるように、加工パレット2は、枠状のベース部21及び複数の薄板のスキッド23を有する。複数のスキッド23をスキッド群23Gと称する。
ベース部21は、平面視で長方形の枠体である。
スキッド23は、ベース部21の短手方向であるY軸方向に延在する姿勢で、長手方向であるX軸方向に所定の間隔で複数枚が並設されている。スキッド23は、例えば厚さ12mmの一般構造用圧延鋼板で形成されている。
ベース部21は、短手方向の中央に支持フレーム22を有する。支持フレーム22は、長手方向に延在し、スキッド23を、その中央部位に係合して支持している。
【0030】
図2及び図3に示されるように、スキッド23は、短冊板状の基部233と、基部233の上縁部に形成された支持部234とを有する。
支持部234は、所定ピッチで繰り返し形成された複数の溝部232を有する。各溝部232は、支持部234の上端部から下方を頂点とする逆二等辺三角形状で切り込まれて形成されている。支持部234は、側面視において幅の狭い二等辺三角形状の支持片236が、複数並設して突出形成され略鋸刃状を呈する。
【0031】
支持部234における複数の支持片236それぞれの頂部231は、高さ位置が一定であり、スキッド群23Gは、載せられた板材を歪みなく支持する。
図3に示されるように、加工パレット2において、複数のスキッド23は、側面視において、隣接するスキッド23の頂部231のY方向の位置が半ピッチずれるように取り付けられている。
すなわち、スキッド23として、ベース部21に取り付けた状態で頂部231の位置がずれる2種類のスキッド23a及びスキッド23bが交互に設置され、全体として複数のスキッド23の群であるスキッド群23Gが構成されている。
【0032】
以上の構成により、レーザ加工装置92で加工される素材Waは、格納部911において素材パレット1に載置され、その後、素材パレット1と共に搬送本体部912に移動する。
搬送本体部912に移動した素材Waは、一枚取ユニット3によって持ち上げられ、上位置にあるスイッチラック4の上保持部4cで待機している加工パレット2Aに転載される。
その後、スイッチラック4は、上位置から下位置に下降し、上保持部4cの加工パレット2Aは、素材Waを載せてレーザ加工装置92に投入される。
【0033】
レーザ加工装置92が加工パレット2Aに載せられた素材Waを加工している間に、スイッチラック4の下保持部4dに保持されていた加工パレット2Bは、スイッチラック4の前開口部4bを通って下部位置にあるリフタトレイ5に移動する。
リフタトレイ5は、加工パレット2Bが移動してきたら、加工パレット2Bと共に中央位置に上昇する。リフタトレイ5が中央位置に達したら、加工パレット2Bは、スイッチラック4の空いている上保持部4cに移動し、一枚取ユニット3から次の素材Waが載置されるのを待つ。
【0034】
上述のように、レーザ加工システムSTでは、レーザ加工装置92による加工の開始直前に、素材Waが載った第1の加工パレット2が搬送本体部912からレーザ加工装置92に移動する。また、スイッチラック4とリフタトレイ5との間で、何も載置されていない空の第2の加工パレット2が出入りする。
【0035】
次に、液体塗布装置6について、図1及び図4図6を参照して詳述する。
図4は、加工パレット2に対する上ノズル群7及び下ノズル群8の配置位置を示す模式的側面図であり、図5は、液体塗布装置6における液体塗布範囲を説明するための模式的前面図である。図6は、液体塗布装置6の配管系統図である。
【0036】
図1に示されるように、液体塗布装置6の上ノズル群7及び下ノズル群8は、パレット搬送装置91の搬送本体部912の出入口914のそれぞれ上部及び下部に前後方向に配設されている。
図4及び図5に示されるように、液体塗布装置6は、素材Waを載せた加工パレット2が搬送本体部912からレーザ加工装置92に移動する際に、出入口914を通過する加工パレット2のスキッド群23G及び素材Waに対して液体MのミストMLを噴霧して塗布する。
【0037】
図1及び図6に示されるように、液体塗布装置6は、タンク61aを含む本体部61,上供給路64,上ノズル群7,下供給路65,及び下ノズル群8を有する。
タンク61aは、素材Wa及びスキッド群23Gなどに塗布する液体Mを収容し、高圧のエアー源ARと接続されている。液体Mは、例えば、スパッタ又はドロスのスキッド23への付着を防止するスパッタ付着防止剤である。
【0038】
図6に示されるように、上ノズル群7は、5個の上ノズル71~75を含む。
上供給路64は、第1端側がタンク61aに接続され、第1端の反対側となる第2端側は減圧器764を経て三系統の分路641~643に分岐している。
【0039】
分路641は、電磁開閉弁761を経て3経路に分岐し、それぞれ上ノズル71~73に接続されている。
分路642は、電磁開閉弁762を経て上ノズル74に接続されている。
分路643は、電磁開閉弁763を経て上ノズル75に接続されている。
【0040】
下ノズル群8は、ノズル組81~88を有する。ノズル組81~88は、それぞれ符号の末尾がa,bで区別される一対の下ノズルで構成されている。例えば、ノズル組81は、下ノズル81aと下ノズル81bとの組である。
図5に示されるように、下ノズル群8の各ノズル組において、一対の下ノズルは、前面視において、真上方向に対して加工パレット2の搬送方向に傾いた、左上方向又は右上方向にミストMLを噴射する。図5では、複数のノズル組を代表してノズル組81の下ノズル81aと下ノズル81bが真上方向に対してそれぞれ角度θだけ傾いた、左上方向又は右上方向にミストMLを噴射している状態を示している。角度θは15°以下とされ、例えば5°である。
より詳しくは、ノズル組81の一対の下ノズル81a,81bは、前面視において、一方の下ノズル81aが左上方向にミストMLを噴出し、他方の下ノズル81bが右上方向にミストMLを噴出する。他のノズル組82~88についても同様である。
ここで、左方向は、矢印D4で示されるように、加工パレット2がレーザ加工装置92に向け搬送される進行方向であり、右方向は、加工パレット2がレーザ加工装置92に向け搬送される進行方向の反対方向である。
【0041】
下供給路65は、供給路65a及び供給路65bの二系統の供給路を含む。
供給路65aは、第1端側がタンク61aに接続され、第1端の反対側となる第2端側は、電磁開閉弁891を経てノズル組81~84の合計8個の下ノズル81a~84a,81b~84bに、並列接続されている。
【0042】
供給路65bは、第1端側がタンク61aに接続され、第1端の反対側となる第2端側は、二系統の分路65b1,65b2に分岐している。
分路65b1における第1端とは反対側となる第2端側は、電磁開閉弁892を経てノズル組85,86の4個の下ノズル85a,85b,86a,86bに並列接続されている。
分路65b2における第1端とは反対側となる第2端側は、電磁開閉弁893を経てノズル組87,88の4個の下ノズル87a,87b,88a,88bに並列接続されている。
【0043】
上ノズル群7に対応した電磁開閉弁761~763及び下ノズル群8に対応した電磁開閉弁891~893の開閉動作は、制御装置93によって制御される。
これにより、制御装置93によって開状態とされた電磁開閉弁に接続したノズルから、液体MがミストMLとして噴出する。
例えば、制御装置93によって電磁開閉弁892が開状態とされたら、タンク61aに収容された液体Mが分路65b1を通り、下ノズル85a,85b,86a,86bからミストMLとして噴出する。
【0044】
上ノズル群7の上ノズル71~75、及び下ノズル群8の下ノズル81a~88a,81b~88bは、扇形ノズルである。
扇形ノズルは、ミストMLを、一方向を長手とする細長い形状の範囲に噴出するノズルである。細長い形状は、例えば、細長い長方形、細長い楕円形、などである。この細長い形状の幅は一定でなくてもよく、長手方向の中央が最大幅でなくてもよい。
上ノズル71~75及び下ノズル81a~88a,81b~88bは、噴出範囲の長手方向がY軸方向となる姿勢で配置されている。
【0045】
上ノズル群7及び下ノズル群8における各ノズルのY軸方向の配置位置は、加工パレット2のスキッド群23Gに載せられる素材Waが板材の場合の定尺板のサイズに対応している。
制御装置93は、加工パレット2のスキッド群23Gに対し、X軸及びY軸を基準軸とするXY座標系を設定している。XY座標系には、加工パレット2に載置される素材Waなどの基準位置として、座標(Px0,Py0)が設定されている。
すなわち、定尺板の素材Waをスキッド群23Gに載せる場合は、素材Waの一つの角部を座標(Px0,Py0)に位置決めし、一対の長辺及び短辺を、それぞれX軸及びY軸に対し平行にする。
【0046】
基準位置は、X軸方向については、図5に示されるように加工パレット2の左端に近い位置に設定されており、Y軸方向については、図4に示されるように加工パレット2の前端に近い位置に設定されている。
加工パレット2のスキッド群23Gに載せられる定尺板の主な種類は、次の3種である。
すなわち、通称サブロク板(サイズ:3尺×6尺、914mm×1829mm)と、通称シハチ板(サイズ:4尺×8尺、1219mm×2438mm)、及び通称ゴットウ板(サイズ:5尺×10尺、1524mm×3048mm)である。
【0047】
加工パレット2に対し、各定尺板の一つの角部を座標(Px0,Py0)の基準位置に位置させると共に、直交2辺をそれぞれX軸,Y軸に平行となる姿勢にして載置する。この場合、図4において、サブロク板,シハチ板,及びゴットウ板のY軸方向の幅は、スキッド群23GにおけるY座標がPy0の位置Pyからそれぞれ、位置Py1,位置Py2,及び位置Py3までの幅で示される。
同様に、図5において、サブロク板,シハチ板,及びゴットウ板のX軸方向の長さは、X座標がPx0の位置Pxからそれぞれ位置Px1,位置Px2,及び位置Px3までの長さで示される。
【0048】
図4に示されるように、サブロク板の幅に対応した範囲である位置Py~位置Py1の範囲の上方には、前方側から後方側にかけて上ノズル71~73が概ね等間隔で配置されている。上ノズル71~73それぞれから噴出したミストMLであるミストML71~ML73は、一部重複して少なくとも加工パレット2のスキッド群23Gの位置Py~位置Py1の範囲に満遍なく噴き付けられる。
【0049】
図4に示されるように、シハチ板の幅の、サブロク板よりも大きい部分に対応した範囲である位置Py1~位置Py2の範囲の上方には、上ノズル74が配置されている。上ノズル74から噴出したミストML74は、加工パレット2のスキッド群23Gの位置Py1~位置Py2の範囲に満遍なく噴き付けられる。
【0050】
図4に示されるように、ゴットウ板の幅の、シハチ板よりも大きい部分に対応した範囲である位置Py2~位置Py3の範囲の上方には、上ノズル75が配置されている。上ノズル75から噴出したミストML75は、加工パレット2のスキッド群23Gの位置Py2~位置Py3の範囲に満遍なく噴き付けられる。
【0051】
このように、パレット搬送装置91は、液体塗布装置6の電磁開閉弁761を開状態にすることで、加工パレット2におけるスキッド23の、サブロク板に対応した位置Py~位置Py1の範囲に液体Mを噴霧して塗布できる。また、スキッド群23Gの所定の位置にサブロク板を載せた場合にはそのサブロク板の上面の全幅範囲に、液体を噴霧して塗布できる。
【0052】
また、パレット搬送装置91は、液体塗布装置6の電磁開閉弁761及び電磁開閉弁762を開状態にすることで、シハチ板に対応した位置Py~位置Py2の範囲に液体Mを噴霧して塗布できる。また、スキッド群23Gの所定の位置にシハチ板を載せた場合にはそのシハチ板の上面の全幅範囲に、液体を噴霧して塗布できる。
【0053】
また、パレット搬送装置91は、液体塗布装置6の電磁開閉弁761~763を開状態にすることで、ゴットウ板に対応した位置Py~位置Py3の範囲に液体Mを噴霧して塗布できる。また、スキッド群23Gの所定の位置にゴットウ板を載せた場合にはそのゴットウ板の上面の全幅範囲に、液体Mを噴霧して塗布できる。
【0054】
図4に示されるように、スキッド群23Gにおける、サブロク板の幅に対応した範囲である位置Py~位置Py1の範囲の下方には、前方側から後方側にかけてノズル組81~84がこの順で配置されている。
ノズル組81~84それぞれから上方に向け噴出したミストML81~ML84は、加工パレット2のスキッド群23Gの少なくとも位置Py~位置Py1の範囲に噴き付けられる。
すなわち、ノズル組81~84から噴出したミストML81~ML86によって、スキッド群23Gの所定位置に載置されたサブロク板の下面の全幅範囲に満遍なく噴き付けられる。
【0055】
図4に示されるように、スキッド群23Gにおける、シハチ板の幅の、サブロク板よりも大きい部分に対応した範囲である位置Py1~位置Py2の範囲の下方には、ノズル組85,86が配置されている。
ノズル組85,86それぞれから上方に向け噴出したミストML85,ML86は、加工パレット2のスキッド群23Gの少なくとも位置Py1~位置Py2の範囲に噴き付けられる。
すなわち、ノズル組81~86から噴出したミストML81~ML86によって、スキッド群23Gの所定位置に載置されたシハチ板の下面の全幅範囲に液体Mが満遍なく塗布される。
【0056】
図4に示されるように、スキッド群23Gにおける、ゴットウ板の幅の、シハチ板よりも大きい部分に対応した範囲である位置Py2~位置Py3の範囲の下方には、ノズル組87,88が配置されている。
ノズル組87,88それぞれから上方に向け噴出したミストML87,ML88は、加工パレット2のスキッド群23Gの少なくとも位置Py2~位置Py3の範囲に噴き付けられる。
すなわち、ノズル組81~88から噴出したミストML81~ML88によって、スキッド群23Gの所定位置に載置されたゴットウ板の下面の全幅範囲に液体Mが満遍なく噴き付けられる。
【0057】
各スキッド23に対し、スパッタ又はドロスなどの付着物が固着するのを防止するために、液体Mとしてスパッタ付着防止剤を塗布する場合は、スキッド23における基部233の表面及び溝部232の端面235に、満遍なくスパッタ付着防止剤を塗布する必要がある。溝部232の端面235は、支持片236の端面235と同じ部位である。
溝部232の端面235は上方を向いているため、スキッド23の上方に位置する上ノズル部62からスパッタ付着防止剤をミストMLとして噴き付けることで、端面235にスパッタ付着防止剤を塗布することができる。
【0058】
これに対し、パレット搬送装置91は、上ノズル部62は加工パレット2に載置した素材Waの上面Wa1へのスパッタ付着防止剤の塗布を担い、溝部232の端面へのスパッタ付着防止剤の塗布は、下ノズル部63が担っている。
【0059】
図7は、下ノズル部63のうちの、下ノズル83aによる溝部232へのスパッタ付着防止剤の塗布態様を示した側面図である。
素材Waは、複数のスキッド23の頂部231によって支持されている。
図7に示されるように、下ノズル83aは、上述のように扇形ノズルである。下ノズル83aから上方に噴出したスパッタ付着防止剤のミストMLは、Y軸方向に長い、長手方向の長さPR1の長方形範囲で、素材Waの下面Wa2に噴き付けられる。
【0060】
加工パレット2は、スキッド群23Gを支える枠体のベース部21と、ベース部21の短手方向中央に配置された長手方向に延びる支持フレーム22以外、スキッド群23Gの下方は開放されている。従って、加工パレット2の下方から上方に向け噴出したミストMLは、ほぼ全量がスキッド群23Gに載せられた素材Waの下面Wa2に到達する。
【0061】
下面Wa2に噴き付けられたスパッタ付着防止剤は、下面Wa2当たってランダムに跳ね返り、跳ね返った一部がスキッド23の溝部232の端面235に達する。
そのため、端面235には、下面Wa2でランダムに跳ね返ったスパッタ付着防止剤が様々な角度から到達する。同様に、溝部232及び基部233の側面にも、スパッタ付着防止剤が様々な角度から到達する。
これにより、スパッタ付着防止剤は、スキッド23の基部233及び溝部232の側面と溝部232の端面235とに満遍なく、かつむらなく塗布される。
また、下ノズル群8の複数のノズル組81~88は、それぞれ一対の下ノズルを有する。そして、代表としてノズル組81を説明すると、既述のように、ノズル組81は、一対の下ノズル81a,81bを有し、下ノズル81aと下ノズル81bのミストMLの上方への噴出方向が、真上ではなく、レーザ加工装置92に搬入される加工パレット2の移動方向(X軸方向)の前方側と後方側とに傾いている。これは他のノズル組82~88についても同様である。
そのため、スキッド23の基部233及び溝部232の側面には、X軸方向の左側と右側との両側からミストMLが噴き付けられ、ミストMLが素材Waの下面Wa2で跳ねってより広い範囲に拡散する。
これにより、スパッタ付着防止剤は、スキッド23の基部233及び溝部232の側面と溝部232の端面235とに、より満遍なく、かつ、よりむらなく塗布される。
【0062】
制御装置93は、上ノズル群7及び下ノズル群8からのミストMLの噴射時期を制御する。
具体的には、加工パレット2に載置された素材Waの大きさに応じて噴射時期を制御する。より詳しくは、制御装置93は、加工パレット2の素材Waが上ノズル群7の直下を通過中に、上ノズル群7からミストMLを素材Waに向け噴出させ、加工パレット2の素材Waが下ノズル群8の直上を通過中に、下ノズル群8からミストMLを素材Waに向け噴出させる。
【0063】
図5に示されるように、上ノズル群7と下ノズル群8とは、X軸方向における同じ位置P78において対向するよう配置されている。
加工パレット2が、搬送本体部912からレーザ加工装置92に向け、図1にも示される矢印D4の左方向に移動しているときに上ノズル群7と下ノズル群8からミストMLが噴出する。制御装置93は、加工パレット2の移動を制御すると共に、加工パレット2のスキッド群23Gに載置されている素材Waが、サブロク板、シハチ板、ゴットウ板の場合、それぞれに応じてミストMLの噴出動作を制御する。
【0064】
制御装置93は、スキッド群23Gに素材Waが載置されているか否か、及び載置されている素材Waの大きさを、それらの情報を含んで予め外部から供給される加工情報を参照して把握する。
素材Waの載置有無及び大きさは、パレット搬送装置91に、加工パレット2のスキッド群23Gに金属部材が載置されているか否か及び載置されている場合の大きさを検出する複数のセンサを設け、制御装置93がこのセンサの検出情報に基づいて取得するよう構成してもよい。
【0065】
スキッド群23Gに載置されている素材Waがサブロク板の場合、制御装置93は、上ノズル群7及び下ノズル群8が設置されている位置P78を、少なくとも加工パレット2における位置Pxから位置Px1が通過している間にミストMLを噴出させる。
シハチ板の場合、制御装置93は、上ノズル群7及び下ノズル群8が設置されている位置P78を、少なくとも位置Pxから位置Px2が通過している間にミストMLを噴出させる。
ゴットウ板の場合、制御装置93は、上ノズル群7及び下ノズル群8が設置されている位置P78を、少なくとも位置Pxから位置Px3が通過している間にミストMLを噴出させる。
【0066】
上述の液体塗布方法により、パレット搬送装置91では、スキッド群23Gのうち、少なくとも加工に供される部分にスパッタ付着防止剤が塗布される、そのため、スパッタ付着防止剤の無駄な消費を抑制できる。
【0067】
上述の液体塗布装置6を備えていることにより、パレット搬送装置91は、加工パレット2の各スキッド23の溝部232の端面235を含む表面全体に、満遍なく自動的にスパッタ付着防止剤を塗布できる。
具体的には、図8に示されるように、パレット搬送装置91は、加工パレット2がレーザ加工装置92に対して出入りする出入口914の近傍に、上下方向に離隔配置された上ノズル群7及び下ノズル群8を含むノズル部66を有する。
【0068】
制御装置93は、上ノズル群7と下ノズル群8との間を、パレット搬送装置91からレーザ加工装置92に向けて素材Waを載せた加工パレット2を通過させ、その際に、上ノズル群7及び下ノズル群8から素材Waに向け液体MのミストMLを噴出させる。
これにより、加工パレット2のスキッド群23Gに載置された素材Waの上面Wa1には、上ノズル群7から噴き付けられたスパッタ付着防止剤の塗膜MT7が付着する。それと共に、素材Waの下面Wa2及び素材Waに対応した範囲の各スキッド23の溝部232の端面235を含む全表面には、下ノズル群8から噴き付けられたスパッタ付着防止剤の塗膜MT8が付着する。
【0069】
上述のように、下ノズル群8から上方に噴出したスパッタ付着防止剤のミストMLは、加工パレット2に載置された素材Waの下面Wa2及びスキッド23の素材Waに対応した範囲の、溝部232の端面235を含む全表面に液膜として付着する。
これにより、各スキッド23にスパッタ又はドロスが付着しにくく、スキッド23の清掃頻度を少なくできる。また、各スキッド23にスパッタ又はドロスが固着しにくいので、スキッド群23Gに載置された素材Waに傷が付きにくく、素材Waが安定して水平に保持され、レーザ切断加工の品質が高度に維持される。
【0070】
一方、上ノズル群7から下方に噴出したスパッタ付着防止剤のミストMLは、加工パレット2に載置された素材Waの上面Wa1に噴き付けられて塗布される。
これにより、素材Waがレーザ加工される際に生じる溶融物は、加工部位に対し噴き付けられるアシストガスによって容易に素材Waから分離して下方に排出され、ドロスが切断部位又はスキッド23などに付着しにくくなる。
【0071】
スパッタ付着防止剤の、スキッド群23G及び素材Waの上面Wa1への塗布は、加工パレット2の搬送本体部912からレーザ加工装置92への投入動作に伴い実行される。そのため、工程及びタクトタイムは増加せず、生産性は低下することなく高度に維持される。
【0072】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0073】
図9図11は、レーザ加工システムSTの変形例であるレーザ加工システムSTAを示す図である。レーザ加工システムSTAは、レーザ加工システムSTのパレット搬送装置91を、パレット搬送装置91Aに置き換えたものである。
パレット搬送装置91Aは、パレット搬送装置91に対し、液体塗布装置6に対し、上ノズル群7Aを含む上ノズル部62Aを追加した液体塗布装置6Aを有する。
図9は、レーザ加工システムSTAの概略構成を示す斜視図であり、図10は、液体塗布装置6Aの配管系統図であり、図11は、液体塗布装置6Aの加工パレット2に対するミストMLの噴霧動作を示す模式的側面図である。
【0074】
図9に示されるように、液体塗布装置6Aの上ノズル部62Aは、スイッチラック4の上保持部4cと中央位置のリフタトレイ5との間を移動する加工パレット2のスキッド群23Gに対し、上方からミストMLを噴き付け可能な位置に配置されている。
図10に示されるように、液体塗布装置6Aは、液体塗布装置6の構成に対し、上供給路64の途中に配置された二方向電磁切換弁67と、二方向電磁切換弁67から分岐し上ノズル群7Aに繋がる上供給分路64Aとを有している。
【0075】
上ノズル群7Aは、例えば同様の構成とされ、上ノズル71A~75Aと、上ノズル71A~75Aを三つの系統で開閉制御するそれぞれ電磁開閉弁761A~763Aとを有している。
二方向電磁切換弁67及び電磁開閉弁761A~763Aの動作は、制御装置93によって制御される。
【0076】
図11に示されるように、パレット搬送装置91Aは、何も載置されていない加工パレット2を、スイッチラック4の上保持部4cとリフタトレイ5との間で移動させる際に、上ノズル群7Aによってスキッド群23Gに対し上方からスパッタ付着防止剤のミストMLを噴き付けることができる。
パレット搬送装置の動作態様によっては、加工パレット2の搬送工程において、スイッチラック4とリフタトレイ5との間を往復させて不図示のブラシによりスキッド群23Gの清掃工程を含む場合がある。制御装置93は、ブラシによる清掃を実行後の加工パレット2の移動時に、二方向電磁切換弁67によって上供給分路64Aのみを開状態として液体塗布装置6Aを動作させ、スキッド群23Gに対しスパッタ付着防止剤を塗布するよう動作制御する。
これにより、スキッド群23Gへのスパッタ付着防止剤の塗布を自動化し、生産性の低下を防止できる。
【0077】
レーザ加工システムST,STAは、スキッド群23Gの各スキッド23への液体Mの塗布を、スキッド群23Gに素材Waを載せた状態で下方からミストMLを上方に向け噴き付けて行うことができる。これにより、スキッド23の端面を含む表面全体に十分に液膜が形成される。これは、下面Wa2でさまざまな方向に跳ね返ったミストML及び下面Wa2から垂れ落ちた液滴がスキッド23の表面に付着することによる。レーザ加工システムST,STAは、液体Mの塗布で形成される液膜は、スキッド群23Gに何も載せずに上方からミストMLを噴き付けた場合よりもむらがなく厚い。
また、レーザ加工システムST,STAは、下ノズル群8の一対の下ノズル81a~88a,81b~88bの一部(例えば半数)が、レーザ加工装置92へ搬入される加工パレット2の進行方向前側の前斜め上方にミストMLを噴出し、残りが進行方向後側の後斜め上方にミストMLを噴出する。これにより、スキッド23の端面を含む全表面に、よりむらなく均一な液膜を形成できる。
【0078】
パレット搬送装置91,91Aにおいて同時に搬送する加工パレット2の数及び素材パレット1からの転載手順などは、上述の内容に限定されない。
少なくとも、パレット搬送装置91,91Aは、パレット搬送装置91,91Aからレーザ加工装置92へ加工前の素材Waを載置した加工パレット2を移動させる際に液体塗布動作を実行可能であればよい。
また、パレット搬送装置91Aは、さらに、加工パレット2を搬送本体部912からリフタトレイ5に一時的に退避させる出入り動作において、液体塗布動作が実行可能であればよい。
【0079】
スキッド群23G及び素材Waに向け噴き付ける液体Mは、スパッタ付着防止剤に限定されない。
【符号の説明】
【0080】
1 素材パレット
2,2A,2B 加工パレット
21 ベース部
22 支持フレーム
23,23a,23b スキッド
231 頂部
232 溝部
233 基部
234 支持部
235 端面
236 支持片
23G スキッド群
3 一枚取ユニット
3a 吸着部
4 スイッチラック
4a 左開口部
4b 前開口部
4c 上保持部
4d 下保持部
5 リフタトレイ
6,6A 液体塗布装置
61 本体部
61a タンク
62,62A 上ノズル部
63 下ノズル部
64 上供給路
64A 上供給分路
641~643 分路
65 下供給路
65a,65b 供給路
65b1,65b2 分路
66 ノズル部
67 二方向電磁切換弁
7,7A 上ノズル群
71~75 上ノズル
761~763,891~893,761A~763A 電磁開閉弁
764減圧器
8 下ノズル群
81~88 ノズル組
81a~88a,81b~88b 下ノズル
91,91A パレット搬送装置
911 格納部
912 搬送本体部
913 リフタ部
914 出入口
92 レーザ加工装置
921 レーザ加工ヘッド
93 制御装置
AR エアー源
Ls レーザビーム
M 液体
ML,ML71~ML75,ML81~ML86 ミスト
MT7,MT8 塗膜
PR1 長さ
Px,Px1~Px3,Py,Py1~Py3 位置
P1,P5,P6,P78 位置
P2 吸着位置
P3 上方位置
P4 下方位置
ST,STA レーザ加工システム
Wa 素材
Wa1 上面
Wa2 下面
Wb 加工済材
Wt 積層体
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11