(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】発泡成形体、発泡成形体形成用組成物及び発泡成形体形成用キット
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230907BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20230907BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20230907BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230907BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/42 008
C08L75/04
C08K3/34
C08K3/32
(21)【出願番号】P 2020184824
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2021-11-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 和也
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 美能留
(72)【発明者】
【氏名】小倉 滉太郎
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-090721(JP,A)
【文献】特開2018-095674(JP,A)
【文献】三田宗雄,ケイ酸ソーダの最近の用途,Gypsum& Lime,日本,無機マテリアル学会,1991年,No. 231,p. 59-69,https://www.jstage.jst.go.jp/article/mukimate1953/1991/231/1991_231_131/_pdf/-char/ja
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 101/00
C08L 75/00- 75/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール及びポリイソシアネートから形成されるウレタン樹脂と、
難燃剤と、
ケイ酸塩と、
を含み、
前記難燃剤は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して2質量部以上の赤リンを含み、
前記ケイ酸塩は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して0.5質量部以上の結晶性層状ケイ酸ナトリウム
無水物を含み、
前記ポリイソシアネートの化学当量数/前記ポリオールの化学当量数比(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であり、
密度が0.024g/cm
3以上、0.040g/cm
3以下であり、
温度120℃における圧縮強度が7.5N/cm
2以上である、
ことを特徴とする発泡成形体。
【請求項2】
前記難燃剤は、塩素含有難燃剤及び窒素含有難燃剤からなる群より選択される1以上をさらに含む、
請求項1に記載の発泡成形体。
【請求項3】
前記ポリオールは、前記ポリオール100質量部に対して、80質量部以上、100質量部以下の芳香族ポリエステルポリオールを含む、
請求項1又は2に記載の発泡成形体。
【請求項4】
独立気泡率が80%以上である、
請求項1乃至3のいずれかに記載の発泡成形体。
【請求項5】
配管の断熱材として使用される、
請求項1乃至4のいずれかに記載の発泡成形体。
【請求項6】
原子力施設に配置される、
請求項1乃至5のいずれかに記載の発泡成形体。
【請求項7】
ポリオールと、
ポリイソシアネートと、
触媒と、
発泡剤と、
難燃剤と、
ケイ酸塩と、
を含み、
前記難燃剤は、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して2質量部以上の赤リンを含み、
前記ケイ酸塩は、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して0.5質量部以上の結晶性層状ケイ酸ナトリウム
無水物を含み、
前記ポリイソシアネートの化学当量数/前記ポリオールの化学当量数比(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であり、
前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、10質量部以上、24質量部以下の前記発泡剤を含む、
発泡成形体形成用組成物。
【請求項8】
前記発泡剤は、前記発泡剤100質量部に対して10質量部以下の水を含む、
請求項7に記載の発泡成形体形成用組成物。
【請求項9】
前記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含む、
請求項7又は8に記載の発泡成形体形成用組成物。
【請求項10】
ポリオールを含む第1剤と、
ポリイソシアネートを含む第2剤と、
触媒と、
発泡剤と、
難燃剤と、
ケイ酸塩と、
を含み、
前記難燃剤は、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して2質量部以上の赤リンを含み、
前記ケイ酸塩は、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して0.5質量部以上の結晶性層状ケイ酸ナトリウム
無水物を含み、
前記ポリイソシアネートの化学当量数/前記ポリオールの化学当量数比(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であり、
前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、10質量部以上、24質量部以下の前記発泡剤を含む、
発泡成形体形成用キット。
【請求項11】
前記発泡剤は、前記発泡剤100質量部に対して10質量部以下の水を含む、
請求項10に記載の発泡成形体形成用キット。
【請求項12】
前記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含む、
請求項10又は11に記載の発泡成形体形成用キット。
【請求項13】
請求項7乃至9のいずれかに記載の発泡成形体形成用組成物を成形し、又は請求項10乃至12のいずれかに記載の発泡成形体形成用キットを用いて形成された、
請求項1乃至6のいずれかに記載の発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体、発泡成形体形成用組成物及び発泡成形体形成用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、配管やタンク等に使用する断熱材として、ウレタンフォームが用いられている(特許文献1)。
【0003】
原子力発電所内における冷却水配管の断熱材としては、例えば、ロックウール、グラスウール、ケイ酸カルシウムなどが主に用いられている。これらの材料は、透湿性を有し、吸水しやすいため、冷却水配管の断熱材として用いられる際には、例えば、防湿処理が施される。この防湿処理は、厳重に施すことが求められている。例えば、断熱材内部で結露が生じ、その結果、断熱性能が著しく低下する、結露した水が滴下して併設される機器に影響を与える等の不具合が生じるおそれがあるからである。
【0004】
原子力発電プラントでは、原子炉冷却材喪失事故の発生に備えて、原子炉格納容器下部に設けられたサプレッションプールに溜められた水をポンプで送出し、炉心に注水して冷却するための非常用炉心冷却系統が設けられている。原子炉冷却材喪失事故により原子炉に付帯する冷却材配管が破損して、上記断熱材が冷却材配管から脱落し、サプレッションプール内に流入、沈降する場合がある。その際、上記断熱材は、通常、繊維を含んでいるので、この繊維が配管を閉塞して冷却水の輸送が困難となるおそれがある。その結果、非常用炉心冷却系統が機能せず、原子炉の安全性を維持できないおそれがある。
【0005】
そこで、原子力発電所においては、硬質ウレタンフォームが用いられている。具体的には、独立気泡構造を有する硬質ウレタンフォームは、吸水性が極めて低い、水中に沈降しない、繊維を含まない等の利点を有することから、配管や機器の断熱材として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、原子力発電所が地震やその随伴火災に被災した場合の安全性が最重要視され、新たな技術基準として断熱材に高度な難燃性が求められている。また、原子力発電所の運転時において周囲温度が高温になった場合や、断熱材が高温の配管や機器に取り付けられた場合においても、収縮等の変形を起こすことなく、断熱材が圧縮強度を維持できることが求められている。
【0008】
しかしながら、従来、難燃性及び断熱性に加えて、特に耐震性の観点から、軽量でありながら高温でも優れた圧縮強度を有する硬質ウレタンフォームを実現することは難しかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、軽量でありながら高温でも優れた圧縮強度を有する発泡成形体並びにこれを実現する発泡成形体形成用組成物及び発泡成形体形成用キットを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡成形体は、ポリオール及びポリイソシアネートから形成されるウレタン樹脂と、難燃剤と、ケイ酸塩と、を含み、前記ポリイソシアネートの化学当量数/前記ポリオールの化学当量数比(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であり、密度が0.024g/cm3以上、0.040g/cm3以下であり、温度120℃における圧縮強度が7.5N/cm2以上である。本発明によれば、軽量でありながら高温でも優れた圧縮強度を有する発泡成形体が提供される。
【0011】
また、前記難燃剤は、赤リンを含むこととしてもよい。この場合、前記難燃剤は、塩素含有難燃剤及び窒素含有難燃剤からなる群より選択される1以上をさらに含むこととしてもよい。
【0012】
また、前記ポリオールは、前記ポリオール100質量部に対して、80質量部以上、100質量部以下の芳香族ポリエステルポリオールを含むこととしてもよい。また、前記ケイ酸塩は、結晶性層状ケイ酸ナトリウムを含むこととしてもよい。
【0013】
また、前記発泡成形体は、独立気泡率が80%以上であることとしてもよい。また、前記発泡成形体は、配管の断熱材として使用されることとしてもよい。また、前記発泡成形体は、原子力施設に配置されることとしてもよい。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡成形体形成用組成物は、ポリオールと、ポリイソシアネートと、触媒と、発泡剤と、難燃剤と、ケイ酸塩と、を含み、前記ポリイソシアネートの化学当量数/前記ポリオールの化学当量数比(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であり、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、10質量部以上、24質量部以下の前記発泡剤を含む。本発明によれば、軽量でありながら高温でも優れた圧縮強度を有する発泡成形体を実現する発泡成形体形成用組成物が提供される。
【0015】
また、前記発泡成形体形成用組成物において、前記発泡剤は、前記発泡剤100質量部に対して10質量部以下の水を含むこととしてもよい。また、前記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含むこととしてもよい。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡成形体形成用キットは、ポリオールを含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤と、触媒と、発泡剤と、難燃剤と、ケイ酸塩と、を含み、前記ポリイソシアネートの化学当量数/前記ポリオールの化学当量数比(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であり、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、10質量部以上、24質量部以下の前記発泡剤を含む。本発明によれば、軽量でありながら高温でも優れた圧縮強度を有する発泡成形体を実現する発泡成形体形成用キットが提供される。
【0017】
また、前記発泡成形体形成用キットにおいて、前記発泡剤は、前記発泡剤100質量部に対して10質量部以下の水を含むこととしてもよい。また、前記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンを含むこととしてもよい。
【0018】
また、前記発泡成形体は、前記いずれかの発泡成形体形成用組成物を成形し、又は前記いずれかの発泡成形体形成用キットを用いて形成されたものであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、軽量でありながら高温でも優れた圧縮強度を有する発泡成形体並びにこれを実現する発泡成形体形成用組成物及び発泡成形体形成用キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態において製造した発泡成形体の特性を評価した結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0022】
本実施形態に係る発泡成形体(以下、「本成形体」という。)は、ポリオール及びポリイソシアネートから形成されるウレタン樹脂と、難燃剤と、ケイ酸塩と、を含み、当該ポリイソシアネートの化学当量数/当該ポリオールの化学当量数比(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であり、密度が0.024g/cm3以上、0.040g/cm3以下であり、温度120℃における圧縮強度が7.5N/cm2以上である。
【0023】
また、本実施形態に係る発泡成形体形成用組成物(以下、「本組成物」という。)は、ポリオールと、ポリイソシアネートと、触媒と、発泡剤と、難燃剤と、ケイ酸塩と、を含み、当該ポリイソシアネートの化学当量数/当該ポリオールの化学当量数(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であり、当該ポリオールと当該ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、10質量部以上、24質量部以下の当該発泡剤を含む。
【0024】
また、本実施形態に係る発泡成形体形成用キット(以下、「本キット」という。)は、ポリオールを含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤と、触媒と、発泡剤と、難燃剤と、ケイ酸塩と、を含み、当該ポリイソシアネートの化学当量数/当該ポリオールの化学当量数(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であり、当該ポリオールと当該ポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、10質量部以上、24質量部以下の当該発泡剤を含む。
【0025】
本組成物及び本キットは、本成形体の製造に好ましく用いられる。すなわち、本組成物を成形することにより、本成形体を形成することができる。また、本キットを用いることにより、本成形体を形成することができる。すなわち、ポリオールを含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤と、触媒、発泡剤、難燃剤、及びケイ酸塩を含む添加剤との混合液中で、当該ポリオールとポリイソシアネートとを反応させる発泡成形により、本成形体を製造することができる。
【0026】
本キットにおいて、触媒、発泡剤、難燃剤、及びケイ酸塩は、それぞれ第1剤に含まれてもよいし、第2剤に含まれてもよいし、他の添加剤として含まれてもよいが、例えば、第1剤に好ましく含まれる。
【0027】
本成形体は、ポリオール及びポリイソシアネートから形成されるウレタン樹脂を含む発泡成形体であり、硬質ウレタンフォームであることが好ましい。本成形体において、難燃剤及びケイ酸塩等の添加剤は、ウレタン樹脂の骨格の内部に分散されて含まれる。
【0028】
ポリオールは、ポリイソシアネートと化学的に反応してウレタン樹脂を形成するものであれば特に限られないが、例えば、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群より選択される1以上を含むことが好ましい。
【0029】
ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸とエチレングリコール等の多価アルコールとの縮合反応により得られる。ポリエーテルポリオールは、ショ糖、ソルビトール等の多価アルコールにプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加することにより得られる。
【0030】
また、ポリオールは、芳香族ポリオールを含むことが好ましい。具体的に、芳香族ポリオールは、例えば、芳香族ポリエステルポリオール及び芳香族ポリエーテルポリオールからなる群より選択される1以上であることがより好ましく、芳香族ポリエステルポリオールであることが特に好ましい。
【0031】
芳香族ポリエステルポリオールは、芳香族ポリカルボン酸と多価アルコールとのエステル化により得られる。芳香族ポリエーテルポリオールは、芳香族アミンや、多価フェノール等の活性水酸基含有芳香族化合物にアルキレンオキサイドを付加することにより得られる。
【0032】
ポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含むことにより、本成形体の難燃性を効果的に高めることができる。
【0033】
芳香族ポリエステルポリオールとしては、例えば、オルトフタル酸又はテレフタル酸と多価アルコールとのエステル化により得られ、水酸基価が150mgKOH/g以上、400mgKOH/g以下(好ましくは水酸基価が200mgKOH/g以上、350mgKOH/g以下)であり、且つ官能基数が2以上である芳香族ポリエステルポリオールが特に好ましい。このような芳香族ポリエステルポリオールは、入手が容易であり、安価であり、且つ、本成形体の難燃性及び圧縮強度を効果的に高めることができる。
【0034】
ポリオールは、当該ポリオール100質量部に対して、80質量部以上、100質量部以下の芳香族ポリエステルポリオールを含むことが好ましく、90質量部以上、100質量部以下の芳香族ポリエステルポリオールを含むことが特に好ましい。ポリオールが上記のような範囲内の芳香族ポリエステルポリオールを含むことにより、本成形体の難燃性を効果的に高めることができる。
【0035】
ポリイソシアネートは、ポリオールと化学的に反応してウレタン樹脂を形成するものであれば特に限られないが、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選択される1以上を含むことが好ましく、芳香族ポリイソシアネートを含むことが特に好ましい。
【0036】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)からなる群より選択される1以上であることが好ましく、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)であることが特に好ましい。
【0037】
ポリイソシアネートは、当該ポリイソシアネート100質量部に対して、80質量部以上、100質量部以下の芳香族ポリイソシアネートを含むことが好ましく、90質量部以上、100質量部以下の芳香族ポリイソシアネートを含むことが特に好ましい。
【0038】
本成形体、本組成物及び本キットにおいて特徴的なことの一つは、ポリイソシアネートの化学当量数/ポリオールの化学当量数比(NCOインデックス)が2.3以上、9.0以下であることである。NCOインデックスは、ポリイソシアネートの化学当量数を、ポリオールの化学当量で除することにより算出される。
【0039】
NCOインデックスは、例えば、8.0以下であることが好ましく、7.0以下であることが好ましく、6.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることが特に好ましい。
【0040】
また、NCOインデックスは、2.6以上であることが好ましく、2.8以上であることがより好ましく、3.0以上であることが特に好ましい。NCOインデックスは、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0041】
NCOインデックスが上述した範囲内であることにより、本成形体の高温における圧縮強度を効果的に高めることができる。すなわち、NCOインデックスが小さくなると、本成形体に含まれるイソシアヌレートの量が少なくなり、高温における圧縮強度が低下する。一方、NCOインデックスが大きくなると、本成形体の脆性が増加する。
【0042】
また、NCOインデックスが上述した範囲内であることにより、本成形体の独立気泡率を効果的に高めることができる。すなわち、NCOインデックスが大きくなることにより、本成形体の連続気泡率が増加し、独立気泡率が低下する。
【0043】
本組成物及び本キットにおけるポリオールの含有量は、本組成物及び本キットに含まれる当該ポリオールと、ポリイソシアネートと、触媒と、発泡剤と、難燃剤と、ケイ酸塩との合計100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、12質量部以上であることが特に好ましい。
【0044】
また、本組成物及び本キットにおけるポリオールの含有量は、本組成物及び本キットに含まれる当該ポリオールと、ポリイソシアネートと、触媒と、発泡剤と、難燃剤と、ケイ酸塩との合計100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることが特に好ましい。本組成物及び本キットにおけるポリオールの含有量は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0045】
本成形体に含まれるウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとの化学的な反応により形成される。ウレタン樹脂は、芳香族ポリオール系ウレタン樹脂(芳香族ポリオール(好ましくは、芳香族ポリエステルポリオール及び芳香族ポリエーテルポリオールからなる群より選択される1以上、特に好ましくは芳香族ポリエステルポリオール)とポリイソシアネートとから形成されるウレタン樹脂)を主成分として含むことが好ましい。
【0046】
具体的に、ウレタン樹脂は、当該ウレタン樹脂100質量部に対し、芳香族ポリオール系ウレタン樹脂を50質量部以上(50質量部以上、100質量部以下)含むことが好ましく、70質量部以上含むことがより好ましく、80質量部以上含むことがより一層好ましく、90質量部以上含むことが特に好ましい。
【0047】
本成形体におけるウレタン樹脂の含有量は、本成形体100質量部に対して、60質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、75質量部以上であることがより一層好ましく、80質量部以上であることが特に好ましい。
【0048】
また、本成形体におけるウレタン樹脂の含有量は、例えば、本成形体100質量部に対して、95質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることが特に好ましい。本成形体におけるウレタン樹脂の含有量は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0049】
本成形体におけるウレタン樹脂の含有量が上述した範囲内であることにより、本成形体における難燃性と圧縮強度とを効果的に両立させることができる。
【0050】
本成形体において特徴的なことの他の一つは、本成形体の密度が0.024g/cm3以上、0.040g/cm3以下であることである。すなわち、本成形体は、比較的低い密度を有する。
【0051】
本成形体の密度は、例えば、0.038g/cm3以下であることが好ましく、0.037g/cm3以下であることが好ましく、0.036g/cm3以下であることがより一層好ましく、0.035g/cm3以下であることが特に好ましい。
【0052】
また、本成形体の密度は、例えば、0.025g/cm3以上であることが好ましく、0.026g/cm3以上であることがより好ましく、0.027g/cm3以上であることがより一層好ましく、0.028g/cm3以上であることが特に好ましい。本成形体の密度は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0053】
本成形体の密度が上述した範囲内であることにより、本成形体において、耐震性の観点から好ましい軽量化と、高い圧縮強度とを効果的に両立させることができる。
【0054】
本成形体の低い密度に対応して、本組成物及び本キットにおいて特徴的なことの他の一つは、本組成物及び本キットが、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、10質量部以上、24質量部以下の発泡剤を含むことである。
【0055】
本組成物及び本キットにおける発泡剤の含有量は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、11質量部以上であることが好ましく、12質量部以上であることがより好ましく、13質量部以上であることが特に好ましい。
【0056】
また、本組成物及び本キットにおける発泡剤の含有量は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、22質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることが好ましく、19質量部以下であることがより好ましく、18質量部以下であることがより一層好ましく、17質量部以下であることが特に好ましい。本組成物及び本キットにおける発泡剤の含有量は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0057】
本組成物及び本キットにおける発泡剤の含有量が上記範囲内(特に、上記上限値以下)であることにより、本成形体の圧縮強度を効果的に高めることができる。
【0058】
発泡剤は、本成形体の発泡成形を実現するものであれば特に限られないが、例えば、低沸点化合物発泡剤であることが好ましい。低沸点化合物発泡剤は、例えば、ハロゲン化炭化水素化合物であることが好ましく、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)からなる群より選択される1以上であることがより好ましく、ハイドロフルオロオレフィンであることが特に好ましい。
【0059】
具体的に、ハイドロフルオロオレフィンは、例えば、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペン(HFO-1233zd)、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン(HFO-1336mzz)からなる群より選択される1以上であることが好ましい。また、ハイドロフルオロカーボンは、例えば、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0060】
本組成物及び本キットは、発泡剤として、水を含まないこととしてもよいが、水を含むことが好ましい。すなわち、本組成物及び本キットは、発泡剤として、例えば、ハイドロフルオロオレフィン及び水を含むことが好ましい。
【0061】
発泡剤における水の含有量は、例えば、当該発泡剤100質量部(発泡剤としての水の含有量と、水以外の発泡剤の含有量との合計100質量部)に対して、10質量部以下であることとしてもよく、8質量部以下であることが好ましく、6質量部以下であることがより好ましく、4質量部以下であることがより一層好ましく、2質量部以下であることが特に好ましい。
【0062】
発泡剤が水を含む場合、当該発泡剤における水の含有量は、例えば、当該発泡剤の含有量100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが特に好ましい。発泡剤における水の含有量は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0063】
本成形体において特徴的なことのさらに他の一つは、温度120℃における圧縮強度が7.5N/cm2以上であることである。すなわち、本成形体は、上述のとおり軽量であるにもかかわらず、高温において優れた圧縮強度を有する。
【0064】
本成形体の温度120℃における圧縮強度は、例えば、8.0N/cm2以上であることが好ましく、9.0N/cm2以上であることが特に好ましい。本成形体の温度120℃における圧縮強度の上限値は特に限られないが、当該圧縮強度は、例えば、20.0N/cm2以下であることとしてもよい。
【0065】
本成形体は、本成形体は、温度23℃における圧縮強度が、10.0N/cm2以上であることとしてもよい。すなわち、本成形体は、低温においても優れた圧縮強度を有する。
【0066】
本成形体の温度23℃における圧縮強度は、例えば、11.0N/cm2以上であることが好ましく、13.0N/cm2以上であることがより好ましく、15.0N/cm2以上であることが特に好ましい。本成形体の温度23℃における圧縮強度の上限値は特に限られないが、当該圧縮強度は、例えば、30.0N/cm2以下であることとしてもよい。
【0067】
本成形体の圧縮強度は、本成形体を50mm角の立方体に切り出したものを試験体として用い、JIS K 7220(硬質発泡プラスチック-圧縮特性の求め方)に準拠した方法において、当該試験体の圧縮強さを測定することにより求められる。
【0068】
本成形体は、独立気泡率が80%以上であることが好ましい。本成形体の独立気泡率は、例えば、83%以上であることがより好ましく、86%以上であることがより一層好ましく、88%以上であることが特に好ましい。本成形体の独立気泡率は、例えば、ASTM D 2856に準拠した方法による測定により求められる。
【0069】
本成形体が高い独立気泡率を有することにより、本成形体の非透水性及び非透湿性を効果的に高めるとともに、本成形体の熱伝導率を効果的に低減する(断熱性を効果的に高める)ことができる。
【0070】
本成形体の断熱性は、例えば、JIS A1412-2(熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法)により求められる、23℃における熱伝導率によって好ましく特定される。
【0071】
本成形体の23℃における熱伝導率は、例えば、0.038W/mK以下であることが好ましく、0.030W/mK以下であることがより好ましく、0.026W/mK以下であることが特に好ましい。本成形体の23℃における熱伝導率の下限値は特に限られないが、当該熱伝導率は、例えば、0.020W/mK以上であることとしてもよい。
【0072】
本成形体の難燃性は、例えば、ISO 5600-1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験における発熱量(以下、「コーンカロリーメーター発熱量」という。)によって好ましく特定される。
【0073】
すなわち、本成形体のコーンカロリーメーター発熱量は、例えば、10.0MJ/m2以下であることが好ましく、9.0MJ/m2以下であることがより好ましく、8.5MJ/m2以下であることが特に好ましい。本成形体のコーンカロリーメーター発熱量の下限値は特に限られないが、当該コーンカロリーメーター発熱量は、例えば、2.0MJ/m2以上であることとしてもよい。
【0074】
本成形体のコーンカロリーメーター発熱量は、本成形体を縦10cm、横10cm及び厚み5cmの直方体に切り出したものを試験体として用い、ISO 5600-1に準拠した方法により、当該試験体を輻射熱量50kW/m2にて20分間加熱したときの総発熱量(MJ/m2)をコーンカロリーメーターにて測定することにより求められる。
【0075】
難燃剤は、本成形体の難燃性を高めるものであれば特に限られないが、例えば、リン含有難燃剤、塩素含有難燃剤及び窒素含有難燃剤からなる群より選択される1以上を含むことが好ましく、リン含有難燃剤と、塩素含有難燃剤及び窒素含有難燃剤からなる群より選択される1以上とを含むことが特に好ましい。
【0076】
リン含有難燃剤は、本成形体の難燃性を高めるものであれば特に限られないが、赤リン、リン酸エステル及びリン酸アンモニウムからなる群より選択される1以上であることが好ましく、赤リン及びリン酸エステルであることが特に好ましい。
【0077】
リン酸エステルは、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、テトラビス(クロロエチル)ジクロロネオペンチルグリコール-ジフォスフェート、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、及びトリス(β―クロロプロピル)ホスフェートからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0078】
塩素含有難燃剤は、本成形体の難燃性を高めるものであれば特に限られないが、塩素化炭化水素、及び塩素化リン酸エステルからなる群より選択される1以上であることが好ましく、塩素化炭化水素及び塩素化リン酸エステルであることが特に好ましい。
【0079】
塩素化炭化水素は、例えば、塩素化パラフィンであることが好ましい。塩素化リン酸エステルは、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、テトラビス(クロロエチル)ジクロロネオペンチルグリコール-ジフォスフェート、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、及びトリス(β―クロロプロピル)ホスフェートからなる群より選択される1以上であることが好ましく、トリス(β―クロロプロピル)ホスフェートであることが特に好ましい。
【0080】
窒素含有難燃剤は、本成形体の難燃性を高めるものであれば特に限られないが、有機系窒素含有難燃剤であることが好ましい。有機系窒素含有難燃剤は、例えば、メラミンシアヌレート、トリアジン化合物及びグアニジン化合物からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0081】
本成形体における難燃剤の含有量は、本成形体に含まれるウレタン樹脂100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがより一層好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。難燃剤の含有量が上記の下限値以上であることにより、本成形体の難燃性を効果的に高めることができる。
【0082】
また、本成形体における難燃剤の含有量は、本成形体に含まれるウレタン樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、16質量部以下であることがより一層好ましく、14質量部以下であることが特に好ましい。難燃剤の含有量が上記の上限値以下であることにより、本成形体の圧縮強度を効果的に確保することができる。本成形体における難燃剤の含有量は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0083】
本組成物及び本キットにおける難燃剤の含有量は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがより一層好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。難燃剤の含有量が上記の下限値以上であることにより、本成形体の難燃性を効果的に高めることができる。
【0084】
また、本組成物及び本キットにおける難燃剤の含有量は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、16質量部以下であることがより一層好ましく、14質量部以下であることが特に好ましい。難燃剤の含有量が上記の上限値以下であることにより、本成形体の圧縮強度を効果的に確保することができる。本組成物及び本キットにおける難燃剤の含有量は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0085】
本成形体、本組成物及び本キットは、難燃剤として、赤リンを含むことが好ましい。難燃剤が赤リンを含むことにより、本成形体の難燃性を効果的に高めることができる。
【0086】
すなわち、赤リンは、空気中の酸素及び水と反応することにより縮合リン酸を生成する。そして、例えば、本成形体が燃焼した場合には、本成形体に含まれるウレタン樹脂の燃焼により生じた炭と、赤リンから生成された縮合リン酸とから、本成形体の表面に膜が形成される。この膜が酸素を遮断することにより、本成形体の燃焼の進行が効果的に抑制される。
【0087】
本成形体における赤リンの含有量は、本成形体に含まれるウレタン樹脂100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがより一層好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。赤リンの含有量が上記の下限値以上であることにより、本成形体の難燃性を効果的に高めることができる。
【0088】
また、本成形体における赤リンの含有量は、本成形体に含まれるウレタン樹脂100質量部に対して、14質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがより一層好ましく、8質量部以下であることが特に好ましい。赤リンの含有量が上記の上限値以下であることにより、本成形体の圧縮強度を効果的に確保することができる。本成形体における赤リンの含有量は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0089】
本組成物及び本キットにおける赤リンの含有量は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがより一層好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。赤リンの含有量が上記の下限値以上であることにより、本成形体の難燃性を効果的に高めることができる。
【0090】
また、本組成物及び本キットにおける赤リンの含有量は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、14質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがより一層好ましく、8質量部以下であることが特に好ましい。赤リンの含有量が上記の上限値以下であることにより、本成形体の圧縮強度を効果的に確保することができる。本組成物及び本キットにおける赤リンの含有量は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0091】
本成形体、本組成物及び本キットは、難燃剤として、赤リンに加えて、塩素含有難燃剤及び窒素含有難燃剤からなる群より選択される1以上をさらに含むことが好ましい。この場合、塩素含有難燃剤及び窒素含有難燃剤からなる群より選択される1以上の含有量(難燃剤が塩素含有難燃剤及び窒素含有難燃剤を含む場合には、これらの含有量の合計)に対する赤リンの含有量の質量比(以下、「赤リン/塩素・窒素難燃剤質量比」という。)は、例えば、0.4以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.8以上であることが特に好ましい。
【0092】
また、赤リン/塩素・窒素難燃剤質量比は、例えば、1.8以下であることが好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.4以下であることが特に好ましい赤リン/塩素・窒素難燃剤質量比は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。赤リン/塩素・窒素難燃剤質量比が上記の範囲内であることにより、本成形体の難燃性を効果的に高めることができる。
【0093】
また、本成形体、本組成物及び本キットは、難燃剤として、赤リンと、リン酸エステルとを含むことが特に好ましい。この場合、リン酸エステルの含有量に対する赤リンの含有量の質量比(以下、「赤リン/リン酸エステル質量比」という。)は、例えば、0.4以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.8以上であることが特に好ましい。
【0094】
また、赤リン/リン酸エステル質量比は、例えば、1.6以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.2以上であることが特に好ましい赤リン/リン酸エステル質量比は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。赤リン/リン酸エステル質量比が上記の範囲内であることにより、本成形体の難燃性を効果的に高めることができるとともに、本成形体のウレタン樹脂中における赤リンの分散性を効果的に高めることができる。
【0095】
ケイ酸塩は、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、及びケイ酸カルシウムからなる群より選択される1以上であることが好ましい。本成形体がケイ酸ナトリウムを含むことにより、例えば、本成形体を配管に施工した場合における当該配管の腐食を効果的に防止することができる。また、ケイ酸塩は、高耐熱フィラーとして機能し、本成形体の高温における圧縮強度及び難燃性を高めることができる。
【0096】
ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウムであることがより好ましく、結晶性層状ケイ酸ナトリウムであることが特に好ましい。この点、結晶性層状ケイ酸ナトリウムは、無水物であり、結晶水を含まない。したがって、結晶性層状ケイ酸ナトリウムは、結晶水を含むケイ酸ナトリウム(例えば、粉末ケイソウ)に比べて、高温においても構造の変化が起こりにくく、安定性が高い。
【0097】
また、ポリイソシアネートは水と反応しやすいため、水の存在は、難燃性に寄与するイソシアヌレートの形成を阻害するが、結晶性層状ケイ酸ナトリウムは、結晶水を含まないため、当該イソシアヌレートの形成を阻害しない。したがって、本成形体が結晶性層状ケイ酸ナトリウムを含むことにより、当該結晶性層状ケイ酸ナトリウムが安定した高耐熱フィラーとして機能し、本成形体の高温における圧縮強度及び難燃性を極めて効果的に高めることができる。
【0098】
本成形体におけるケイ酸塩の含有量(例えば、結晶性層状ケイ酸ナトリウムの含有量)は、本成形体に含まれるウレタン樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以上であることが特に好ましい。
【0099】
また、本成形体におけるケイ酸塩の含有量(例えば、結晶性層状ケイ酸ナトリウムの含有量)は、本成形体に含まれるウレタン樹脂100質量部に対して、4.5質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以下であることがより好ましく、3.5質量部以下であることがより一層好ましく、3.0質量部以下であることが特に好ましい。本成形体におけるケイ酸塩の含有量(例えば、結晶性層状ケイ酸ナトリウムの含有量)は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0100】
本成形体におけるケイ酸塩の含有量が上記の範囲内であることにより、上記腐食の問題を効果的に回避することができる。また、本成形体における結晶性層状ケイ酸ナトリウムの含有量が上記の範囲内であることにより、さらに、本成形体の高温における圧縮強度を効果的に高めることができる。
【0101】
本組成物及び本キットにおけるケイ酸塩の含有量(例えば、結晶性層状ケイ酸ナトリウムの含有量)は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以上であることが特に好ましい。
【0102】
また、本組成物及び本キットにおけるケイ酸塩の含有量(例えば、結晶性層状ケイ酸ナトリウムの含有量)は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、4.5質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以下であることがより好ましく、3.5質量部以下であることがより一層好ましく、3.0質量部以下であることが特に好ましい。本組成物及び本キットにおけるケイ酸塩の含有量(例えば、結晶性層状ケイ酸ナトリウムの含有量)は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0103】
本組成物及び本キットにおけるケイ酸塩の含有量が上記の範囲内であることにより、上記腐食の問題を効果的に回避することができる。また、本組成物及び本キットにおける結晶性層状ケイ酸ナトリウムの含有量が上記の範囲内であることにより、さらに、本成形体の高温における圧縮強度を効果的に高めることができる。
【0104】
本組成物及び本キットに含まれる触媒は、ウレタン樹脂の形成に寄与する触媒であれば特に限られないが、例えば、イソシアネート基の三量化反応を促進する三量化触媒であることが好ましい。本組成物及び本キットが三量化触媒を含むことにより、イソシアヌレート環の形成が促進される。
【0105】
三量化触媒は、イソシアネート基の三量化反応を促進する触媒であれば特に限られないが、例えば、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、カルボン酸のアルカリ金属塩(例えば、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、及びオクチル酸カリウムからなる群より選択される1以上)、及びカルボン酸の4級アンモニウム塩(例えば、N-ヒドロキシアルキル-N,N,N-トリアルキルアンモニウム)からなる群より選択される1以上であることが好ましく、カルボン酸のアルカリ金属塩とカルボン酸の4級アンモニウム塩とを含むことが特に好ましい。
【0106】
本組成物及び本キットにおける触媒の含有量(例えば、三量化触媒の含有量)は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることが特に好ましい。
【0107】
また、本組成物及び本キットにおける触媒の含有量(例えば、三量化触媒の含有量)は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計100質量部に対して、3.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが特に好ましい。本組成物及び本キットにおける触媒の含有量(例えば、三量化触媒の含有量)は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0108】
本組成物及び本キットにおける触媒の含有量が上述の範囲内であることにより、ウレタン樹脂を効果的に形成することができる。また、本組成物及び本キットにおける三量化触媒の含有量が上述の範囲内であることにより、さらに、イソシアヌレートの形成が促進され、本成形体の難燃性を効果的に高めることができる。
【0109】
本組成物及び本キットは、さらに他の成分を含んでもよい。すなわち、本組成物及び本キットは、例えば、整泡剤を含んでもよい。整泡剤は、例えば、ポリオキシアルキレン整泡剤(例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)及びシリコーン系整泡剤(例えば、オルガノポリシロキサン)からなる群より選択される1以上であることが好ましい。また、本組成物及び本キットは、例えば、鎖延長剤、架橋剤、充填剤、乳化剤、及び着色剤からなる群より選択される1以上を含んでもよい。
【0110】
本成形体、本組成物及び本キットは、繊維(無機繊維(例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、シリカアルミナ繊維、及びジルコニア繊維)、有機繊維(例えば、アクリル繊維、及びポリエステル繊維)、及び無機有機複合繊維)を実質的に含まないことが好ましい。
【0111】
すなわち、本成形体、本組成物及び本キットにおける繊維の含有量は、当該本成形体、本組成物及び本キット100質量部に対して、5質量部以下であることしてもよく、3質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがより一層好ましく、0.1質量部以下であることが特に好ましい。
【0112】
また、本成形体、本組成物及び本キットは、繊維を含まないこととしてもよい。すなわち、この場合、本成形体、本組成物及び本キットにおける繊維の含有量は、当該本成形体、本組成物及び本キット100質量部に対して、0質量部である。
【0113】
本成形体、本組成物及び本キットにおける繊維の含有量が上述の範囲内であることにより、例えば、本成形体に含まれる繊維が、その周囲に配置される配管や機器等に吸い込まれて閉塞等の問題を発生させることを効果的に防止することができる。
【0114】
本成形体は、任意の適切な用途に採用され得る。すなわち、本成形体の用途としては、例えば、船舶、冷蔵庫、冷凍庫、車両、建築物、プラント、土木作業における断熱材や、家具、インテリア、生活用品の芯材、梱包材、型材が挙げられる。
【0115】
中でも、本成形体は、難燃性及び圧縮強度に優れるため、例えば、配管や機器等の断熱材として好ましく使用され、配管の断熱材として特に好ましく使用される。
【0116】
また、本成形体は、軽量でありながら、高温において優れた圧縮強度を有するため、原子力施設に配置される断熱材として好ましく使用される。
【0117】
特に原子力発電所の運転時において周囲温度が高温になった場合や、断熱材が高温の配管や機器に取り付けられた場合においても、収縮等の変形を起こすことなく、断熱材が圧縮強度を維持できることが要求される。また、万が一、地震やその他の災害などにより火災が発生した場合でも原子炉の安全を確保する上で必要な機能を維持するため、原子力施設に配置される配管等の断熱材には、難燃性も要求される。さらに、原子力施設においては、耐震性の観点から、断熱材の軽量化が強く要求される。
【0118】
この点、本成形体は、優れた難燃性に加えて、軽量でありながら、高温における圧縮強度に優れるため、原子力施設に配置される設備(例えば、配管)の断熱材として好ましく使用され、原子力施設の原子炉格納容器外に配置される設備(例えば、配管)の断熱材として特に好ましく使用される。
【0119】
また、上述のとおり、従来、原子炉格納容器内に配置される配管の断熱材として、繊維を含む断熱材を使用した場合には、事故等により当該断熱材が当該配管から剥離し、冷却水中に落下して、当該断熱材に含まれる繊維が当該冷却水を輸送するための配管のストレーナに詰まり、冷却水の輸送が困難になるといった問題が生じる懸念があった。
【0120】
これに対し、繊維を実質的に含まない本成形体は、原子炉格納容器内に配置される配管の断熱材として使用された場合に、事故等により当該配管から剥離し、冷却水中に落下したとしても、上記従来の問題の発生が効果的に回避される。
【0121】
本成形体の形状は特に限られず、本成形体を配置する対象の形状に応じて任意に調節されればよいが、例えば、平板状、又は円筒状であることとしてもよい。本成形体が円筒状である場合、例えば、2以上に分割可能な円筒状であってもよいし、半円筒状等の円筒の一部を構成する形状であってもよい。
【0122】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0123】
ポリオール、触媒、発泡剤、難燃剤、整泡剤及びケイ酸塩を含む第1剤と、ポリイソシアネートを含む第2剤との混合液を型枠に注入し、当該型枠内で反応させることにより、硬質ウレタンフォームの発泡成形を行い、発泡成形体を得た。具体的には、原料の配合を変えることにより、例1~例10、及び例C1~例C5の合計15種類の発泡成形体を製造した。
【0124】
ポリオールとしては、マキシモールRFK-505(テレフタル酸ベースの芳香族ポリエステルポリオール、水酸基価250、平均官能基数2、川崎化成工業社製)、マキシモールRDK-133(オルトフタル酸ベースの芳香族ポリエステルポリオール、水酸基価315、平均官能基数2、川崎化成工業社製)、及びエクセノール1030(グリセリンベースのポリエーテルポリオール、水酸基価160、平均官能基数3、AGC社製)からなる群より選択される1以上を使用した。
【0125】
触媒としては、TOYOCAT-TR20(三量化触媒、4級アンモニウム塩、東ソー社製)、Dabco-K15(三量化触媒、オクチル酸カリウム、AirProducts&Chemicals社製)、及びミニコR-9000(1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、活材ケミカル社製)からなる群より選択される1以上を使用した。発泡剤としては、Solstice LBA(発泡剤、HFO-1233zd(ハイドロフルオロオレフィン、ハネウェル社製)と、水とを使用した。
【0126】
難燃剤としては、ノーバエクセル140(赤リン、燐化学工業社製)、TMCP(塩素含有難燃剤、トリス(βクロロプロピル)ホスフェート、粘度(25℃)110~180 mPa・sec、味の素ファインテクノ社製)、エンパラK-45(塩素含有難燃剤、塩素化パラフィン、粘度(25℃)65mPa・sec、味の素ファインテクノ社製)、及びMC-4500(窒素含有難燃剤、メラミンシアヌレート、日産化学社製)からなる群より選択される1以上を使用した。整泡剤としては、SH193(整泡剤、ダウ・東レ社製)を使用した。
【0127】
ケイ酸塩としては、プリフィード粉末品(結晶性層状ケイ酸ナトリウム(ケイ酸塩)粉末、トクヤマ社製)を使用した。ポリイソシアネートとしては、RX-200(ポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、イソシアネート基含量30.5~32.0%、三菱ケミカル社製)を使用した。
【0128】
そして、得られた発泡成形体の密度、23℃及び120℃における圧縮強度、23℃における熱伝導率、コーンカロリーメーター発熱量、及び独立気泡率を測定した。
【0129】
図1に、各例において発泡成形体の製造に使用された原料の組成と、各例で得られた発泡成形体について測定された特性とを示す。
図1に示すように、例C1~例C4で得られた発泡成形体は、いずれも120℃における圧縮強度が低かった。
【0130】
また、例C3及び例C4で得られた発泡成形体は、23℃における圧縮強度も低かった。また、例C1、例C2、及び例C5で得られた発泡成形体は、コーンカロリーメーター発熱量が大きく、難燃性が低かった。また、例C3で得られた発泡成形体は、独立気泡率が低かった。
【0131】
これに対し、例1~例10で得られた発泡成形体は、高い独立気泡率、及び高い難燃性に加えて、軽量でありながら、23℃において高い圧縮強度を有するのみならず、120℃においても高い圧縮強度を有していた。
【0132】
中でも、例1~例5、例7、例9及び例10で得られた発泡成形体は、120℃において極めて高い圧縮強度を有していた。さらに、例1~例5、例9及び例10で得られた発泡成形体は、23℃及び120℃のいずれの温度においても極めて高い圧縮強度を有していた。