(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】船体及び貨物倉の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B63B 59/10 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B63B59/10 Z
(21)【出願番号】P 2020196434
(22)【出願日】2020-11-27
(62)【分割の表示】P 2019511485の分割
【原出願日】2017-08-18
【審査請求日】2020-11-30
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519059052
【氏名又は名称】クリイン エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲンセン、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】イヴェルセン、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】クロステル、ニコライ ハンス ブラムセン
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ボー ムラー
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-042384(JP,A)
【文献】特開2014-080067(JP,A)
【文献】特開2011-240820(JP,A)
【文献】特開平03-042374(JP,A)
【文献】内藤紳司,磁気クローラ式吸着移動ロボット,日本ロボット学会誌,日本,一般社団法人日本ロボット学会,1992年09月,10巻,5号,pp.606-608,ISSN 1884-7145(online),0289-1824(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 59/10
B62D 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(50)の船体(60)の外側を洗浄するための、又は、貨物倉の壁部(70)を洗浄するための、装置(1)であって、
両側面に磁気連続トラック(3)が設けられたハウジング(2)と、
前記磁気連続トラックのそれぞれに前輪(6)及び後輪(5)と、
前記前輪と後輪との間において、前記磁気連続トラックの長手方向に沿ってまっすぐに延在するガイド面(41)を有するガイド(40)と、
を備え、
前記磁気連続トラックはそれぞれ、駆動ピン(10)で相互接続される複数のリンク(9)を備え、前記複数のリンクのそれぞれには永久磁石(4)が埋め込まれ、
前記複数のリンクはそれぞれ単一の部材で形成され、内向き面(18)と、外向き面(19)と、前記磁気連続トラックの幅に対応する幅とを有し、
前記リンクは、それぞれ別の前記駆動ピンを受容する第1部分及び第2部分を有し、前記第1部分は、一方の側に隣接する前記リンクの前記第2部分を挟んで、前記駆動ピンを受容しうるように構成され、前記第2部分は、他方の側に隣接する前記リンクの前記第1部分に挟まれた状態で、前記駆動ピンを受容しうるように構成され、
前記駆動ピンは前記内向き面と前記外向き面との間の高さに位置し、
前記駆動ピンは前記リンク内を通り、前記リンクの幅を超えて側方に突出する部分を有し、
前記ガイドは、前記前輪のアーチに沿った湾曲部と前記後輪のアーチに沿った湾曲部とを有し、
前記ガイド面は、前記駆動ピンの前記側方に突出する部分と係わり合うように構成され、それによって、少なくとも1つの前記磁気連続トラックの、前記前輪と前記後輪との間の領域の第1の部分の前記リンクが、前記外向き面が向いている方向に移動するのを防ぐ、
装置(1)。
【請求項2】
前記磁気連続トラックはそれぞれ、前記船体の前記外側又は前記貨物倉の前記壁部に対面しうるように、前記前輪の1つ及び前記後輪の1つの周りに掛け渡され、前記装置の側部において該前輪と該後輪との間にほぼまっすぐに延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガイド面は、前記第1の部分に沿ってほぼまっすぐに延在し、前記駆動ピンをガイドするように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ガイドは、前記前輪及び後輪の回転面に平行なサイドパネルと、前記サイドパネルと直角な前記ガイド面とを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記磁気連続トラックのそれぞれに対して、前記ガイドが対向するように2つ設けられ、該ガイドは、前記磁気連続トラックの各側部に1つずつ配される、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記ガイドは、前記前輪と前記後輪との間で一直線に沿って前記駆動ピンをガイドするように構成されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記ガイドは、前記リンクが前記前輪と前記後輪との間の前記磁気連続トラックの範囲において一直線構成から引き離されないように構成される、請求項1~6のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記永久磁石はポリマー筐体内に配される、請求項1から
7のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、常設型洗浄装置に関し、特に、磁気連続トラックによって船体又は貨物室の壁部に装着された船体洗浄装置、及び、船舶の船体の水中及び水上の表面並びに船舶の船体内の貨物倉の壁部から有機及び無機堆積物を除去する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海運業における競争の激化に伴い、コスト削減がますます重視されている。船舶会社にとっての唯一最大の原価作用因は燃料である。大型船は1日に100トン以上の燃料を使用する。一般貿易や遅い蒸気処理及び休止期間は、海生増殖(汚損)が進む条件である。海生増殖は、船舶の水中部分の表面粗度を増加させ、所定のプロペラ速度で達成し得る船の燃料効率及び速度の両方に大きな影響を与えることになる。商用、民間及び軍用の船舶にとって、船舶性能の低下は、経済面においても、到着予定日の厳守の観点からもさまざまな影響をもたらすことになる。
【0003】
船舶全体を定期的に洗浄するのには環境上の理由もある。殺生物性防汚製品が今後禁止される可能性と相まって、地球環境規制は近い将来ますます厳しさを増すことが予想されている。例えば、サンゴ礁の保護を目的とした水生特定外来生物の移動に対する規制もそう遠くない将来に実施される見込みである。そのような規制に応えるためには、船体を常に清潔に保つことが必要となり、船舶に装置を常設することによって、船の位置にかかわらず船体を清潔に保つことができるようにする。ダイバーにより船体の洗浄を行うことは、ダイバーが実際洗浄作業中に命を落とすこともあるため、安全衛生面での問題が生じる。このことも経営陣にとって安全統計報告上マイナスである。
【0004】
殺生物剤を含まない又はほとんど含まない新しい高性能塗料(シリコン塗料)の中には、機能せず絶えず洗浄が必要なものもある。質の高い洗浄を必要な時に、すなわち、洗浄が必要な時に船が位置している場所で行えることはほとんどない。入手可能な液剤の質を制御したり検証することは不可能である場合が多い。低品質の洗浄液は、コーティングを傷つけることもあり、船主に経済面でのさらなる問題をもたらすことになる。
【0005】
既存の解決策のほとんどは、水線以下の洗浄しか行えない。既存の解決策はいずれも「被害が出た」場合に契約が交わされる「オンデマンド要請」のサービスである。この時点では、燃料がさらに消費されることで、用船主や船主にはすでにかなりのコストがかかっている。オンデマンド要請のサービスには、大規模な乗組員が必要となる(HQ、代理店、港湾局、洗浄会社)。オンデマンド要請での洗浄には費用がかかる。洗浄作業は日中にしか行えず、また港に停泊中は船の片側しか洗浄できないため、最後まで行えないことが多い。管理の段階が非常に徹底しており、ダイビング会社、海運業者、実際のダイバーのダイビング用品、HSEなどの承認を含め、ありとあらゆるさまざまなステップが必要となる。
【0006】
立入禁止区域へと水生特定外来生物を移動するには、特定の区域に入る前に直ちに船体を洗浄する必要がある場合がある。これにより、外部の洗浄サービスにさらなる待ち時間が生じ、重いペナルティが課される。常設の解決法として、大型船舶の船体の予防的な洗浄が行えるものは現時点では存在しない。そのような装置を船体に取り付ける提案も含め、さまざまな装置や方法が提案されてはいるが、現市場で入手可能なもので機能しかつ信頼性のある恒久的な解決を見出せるものはない。
【0007】
特許文献1には、船体の洗浄/検査を行うクローリング遠隔操作無人探査機(ROV)が開示されている。このROVは、電気駆動型の内蔵油圧パワーユニット(HPU)を備えている。そして、ROVは、船体に対して付着力と摩擦力を与えるトラックをさらに備えている。このトラックは、トラックのリンクに取り付けられた摩擦パッドにより前進する。この摩擦パッドは、エラストマーパッド又はエラストマーコーティングを有する磁石ブロックを備えている。
【0008】
特許文献2には、船体や鉄表面に近づいたり遠ざかったりする磁石によってその表面に付着し、磁石空隙ひいては引力の調整を行うシャーシが開示されている。この1つ又は複数の磁石は、唯一の付着力として用いられる場合もあれば、吸引チャンバや流体ジェット駆動部などの他の駆動源と共に用いられる場合もある。クランク機構の内部磁石は、非鉄けん引面又はタイヤを有する車輪本体内の車輪回転軸の周りを旋回することができる。
【0009】
特許文献3には、船の壁面のサビを除去する壁面走行ロボット及びその動作方法が開示されている。この壁面走行ロボットには、フレーム、チェーントラック走行機構、永久磁気吸着ユニット、左上駆動モータ、左上減速器、右下駆動モータ、右下減速器が備えられている。チェーントラック走行機構は、左チェーントラックと右チェーントラックから構成され、永久磁気吸着ユニットは、このチェーントラック走行機構に搭載されている。超高圧水ジェット真空サビ取りクリーナが外部から真空源と永久磁気吸着ユニットに接続され、真空永久磁気混合吸着を形成している。この方法には、チェーンの張力を規制する工程と、高さを調整する工程と、移動を制御する工程とが含まれる。本発明では、真空永久磁気混合吸着モードを採用して壁面走行ロボットを設計し、永久磁気吸着力と共にサビ真空の負圧の利用及び再利用を行うことにより、壁面走行ロボットが吸着、安全な動作、コンパクトな吸着構造を達成し、高い高度でも大きな負荷の作業を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】英国特許出願公開第2528871号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014 -230711号明細書
【文献】中国特許出願公開第101704241号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、磁気連続トラックによって船舶の船体に確実に取り付け可能な、船体の洗浄装置を提供することにある。
【0012】
上記及びその他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実施形態は、従属請求項、説明及び図面から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様によれば、船舶の船体の外側を洗浄し、貨物倉の壁部を洗浄する装置であって、その対向する側面に磁気連続トラックを備えたハウジングと、
駆動ピンで相互接続され、内向き側と外向き側とを有する複数のリンクを有する磁気連続トラックのそれぞれに対して前輪及び後輪と、前輪と後輪との間の磁気連続トラックの少なくとも一方の範囲の第1の部分におけるリンクが、外向き側が向いている方向に移動するのを防ぐために駆動ピン(と係合するよう構成されたガイドと、
を備える装置が提供される。
【0014】
駆動ピンの外向き方向への移動を防ぐガイドを設けることにより、連続トラックの屈曲(連続トラックの部分に力が加えられていない場合の該連続トラックの部分によって仮定される前後輪間の直線に対する屈曲)によりリンクが「1つずつ」船体から分離(剥離)することがほとんど不可能となる。このガイドによって、船体と接触しているリンクが、まるで剛体に固定され、一直線上に配置されているかのように機能するようになる。よって、上記装置は、磁気連続トラックのリンクが「一度に1つずつ剥離する」のとは対照的に、すべての磁気リンクの接触が同時に外れることによってのみ船体から取り外すことができる。このようにリンクが1つのリンク剛体として機能することによって、磁気連続トラックを船体から取り外す力又は負荷が大幅に増加する。この力/負荷は、上記ガイドが設けられていない場合、単一のリンクを取り外すのに必要な力にほぼ相当する。一方、ガイドが設けられている場合、磁気連続トラックを船体から取り外す力/負荷は、単一のリンクを取り外すのに必要な力に、ガイドによって同時に支持されているリンクの数を乗じた力にほぼ相当する。このガイドによって、船体に対向している装置の側面で前後輪間に延在するすべてのリンクを支持することができるので、装置を取り外すのに必要な力/負荷を、船体と同時に接触しているリンクの数に対応する分だけ増加させることができる。
【0015】
上記第1の態様の第1の可能な実施形態では、上記装置の底部側は、船体の外側又は貨物倉の壁部と対向するよう構成され、この装置の底部側に上記第1の部分が配置されている。
【0016】
上記第1の態様の第2の可能な実施形態では、一方の前輪及び一方の後輪の周りに各磁気連続トラックが掛け渡され、各磁気連続トラックが、装置の船体の外側又は貨物倉の壁部に対向する側において該一方の前輪及び該一方の後輪の間にほぼ一直線に延在している。
【0017】
上記第1の態様の第3の可能な実施形態では、上記ガイドは、上記第1の部分に沿ってほぼ一直線に延在するガイド面を有する。
【0018】
上記第1の態様の第4の可能な実施形態では、上記ガイド面は、駆動ピンをガイドするよう構成されている。
【0019】
上記第1の態様の第5の可能な実施形態では、上記ガイドは、上記前後輪の回転面に平行な面と、上記サイドパネルと直角なガイド面とを有する。
【0020】
上記第1の態様の第6の可能な実施形態では、上記ガイド面は、サイドパネルと一体化した部分であり、サイドパネルと直角に延在するレッジにより形成されていることが好ましい。
【0021】
上記第1の態様の第7の可能な実施形態では、各磁気連続トラックの2つの対向するガイドは、該磁気連続トラックのそれぞれの側にガイドが1つずつ設けられている。
【0022】
上記第1の態様の第8の可能な実施形態では、上記ガイドは、前輪及び/又は後輪の周りに該磁気連続トラックの経路に沿った湾曲部を有している。
【0023】
上記第1の態様の第9の可能な実施形態では、上記ガイドは、前後輪の間に一直線に沿って駆動ピンをガイドするよう構成されている。
【0024】
上記第1の態様の第10の可能な実施形態では、上記ガイドは、リンクが磁気連続トラックの範囲において、一直線構成から引き離されないように構成されている。
【0025】
磁気連続トラックのリンクであって、複数のリンクが駆動ピンによって相互接続され、このリンクは内向き側と外向き側とを有し、永久磁石が埋め込まれ、外向き側には1つ又は複数の交換可能な摩擦パッドが設けられているリンクが提供される。
【0026】
上記第2の態様の第1の可能な実施形態では、上記摩擦パッドは、外向き側へと開口するマッチングスロット内に収容されている。
【0027】
上記第2の態様の第2の可能な実施形態では、上記永久磁石が外向き側の表面の近くに配置され、上記スロットがこの永久磁石に隣接して、好ましくは永久磁石の対向する両側に配置されている。
【0028】
第3の態様によれば、上記第2の態様に係るリンクのアセンブリとその実施方法、摩擦パッドが外向き面から突出する程度を調節する異なる高さを有する複数の摩擦パッドが提供される。
【0029】
第4の態様によれば、磁気連続トラックのリンクにおける永久磁石と、その磁気連続トラックが磁気的に取り付けられた壁部又は船体との距離を調整する方法であって、リンクの外向き面から突出する交換可能な摩擦パッドをリンクに設ける工程と、摩擦パッドが外向き面から突出する程度を調節する工程とを備える方法が提供される。
【0030】
所定の高さを有する摩擦パッドを選択することにより、該リンクに埋め込まれている永久磁石と、そのリンクが取り付けられている壁部又は船体との間の距離を規制することができ、それによって付着力を必要に応じて規制することができる。
【0031】
第5の態様によれば、船舶の船体の外側を洗浄し、貨物倉内の貨物スペースの壁部を洗浄する水中装置であって、その対向する側面に磁気連続トラックを備えた防水ハウジングと、少なくとも1つの磁気連続トラックに動作可能に接続され、前記磁気連続トラックを駆動する、前記ハウジング内の少なくとも1つの駆動モータと、を備え、防水ハウジングは、磁気連続トラック間に主面を有し、該主面は前記船体から離れる方向に向いていることが好ましく、主面は洗浄ツールを着脱可能に取り付けるよう構成されている装置が提供される。
【0032】
上記装置は、汚損を早い段階で除去することで早期洗浄を行うことにより、ひどい汚損を防止することができる。この予防的洗浄は、高圧水噴流又はブラシによる軽い洗浄によってサポートされている。この洗浄は、好ましくは船舶の航海中にも、装置が船舶に常設されているため、世界中のいつどこにいても行うことができる。
【0033】
上記装置は、磁気付着により、航海中でも洗浄を行うことができる。また、この装置は、磁気トラックにより、水線上方での洗浄を行うことが可能であり、これは貨物/バラスト中などでは水位が異なるため必要である。
【0034】
上記装置は船舶に常設可能ではあるが、現在の解決策はいずれも「オンデマンド要請」であり、永久的に船上での必要に応じた使用となる。
【0035】
上記第5の態様の第1の可能な実施形態では、上記2つの磁気連続トラックは、その連続トラックの長さに沿ってほぼ均等に分布した複数の永久磁石を備え、それにより連続トラックが船舶の船体やその貨物スペースの壁部に磁気的に付着することが可能となっている。
【0036】
上記第5の態様の第2の可能な実施形態では、上記ハウジングは、前部と後部を有している。上記装置は、上記2つの磁気連続トラックのそれぞれに、防水の前輪と後輪をさらに備えている。上記ハウジングには、2つの電気駆動モータが設けられている。一方の電気駆動モータは、磁気連続トラックのうちの1つの従動前輪に動作可能に接続され、他方の電気駆動モータは、磁気連続トラックの後輪に動作可能に接続されている。
【0037】
上記第5の態様の第3の可能な実施形態では、各電気駆動モータには、減速ギアとほぼ円筒形状を有する電気駆動モータとの結合に関与している電気駆動モータと1つの一体ユニットを形成する減速ギアが設けられ、各従動前輪又は後輪が、該減速ギアの、もしくは各減速ギアと動作可能に接続されたクラッチの出力軸に直接嵌合している。
【0038】
上記第5の態様の第4の可能な実施形態では、電気駆動モータは、その出力軸に対向する部分が上記ハウジングの側面から突出し、非従動前輪又は後輪は、電気駆動モータの突出部分が、その突出部分の上方に配置されている非従動前輪又は後輪の内側に収容可能となるオフセットを有している。
【0039】
上記第5の態様の第5の可能な実施形態では、電気駆動モータは、防水ハウジングの2つの対向する長手方向端部又はその付近に配置され、それぞれの出力軸及び/又は該電気駆動モータと結合した減速ギアのそれぞれの出力軸がそれぞれ反対の方向に向けられ、ハウジングの対向する長手方向端部又はその付近において、ハウジングの対向する側面から突出していることが好ましい。
【0040】
上記第5の態様の第6の可能な実施形態では、上記装置は、電気駆動モータと減速ギアユニットに一体的に接続されたクラッチユニットを備えている。駆動モータと、減速ギアと、クラッチユニットとを組み合わせたものは、円筒形状を有していることが好ましい。
【0041】
上記第5の態様の第7の可能な実施形態では、主面は、ツールを着脱可能に取り付けるための汎用取付板を備えている。
【0042】
上記第5の態様の第8の可能な実施形態では、上記ハウジングは、ライト、カメラ、センサを取り付けるよう設定可能なインタフェース領域が設けられた前側又は後側を有している。
【0043】
上記第5の態様の第9の可能な実施形態では、サスペンションワイヤ、電源ケーブル及び/通信ケーブルによって上記装置に接続されたドッキングステーションをさらに備える。
【0044】
上記第5の態様の第10の可能な実施形態では、上記ドッキングステーションは、高圧水を送水するための高圧ポンプを備え、装置に取り付けられた高圧洗浄ツールの入口は、高圧ホースを介して高圧ポンプの出口に接続されている。
【0045】
上記第5の態様の第11の可能な実施形態では、洗浄ツールは、少なくとも1つのブラシ駆動部で回転可能なノズル及び/又はブラシを備え、このブラシ駆動部は、高圧ポンプからの高圧水で作動することが好ましい。
【0046】
上記第5の態様の第12の可能な実施形態では、ユーザインタフェースユニットがドッキングステーションに接続されている、もしくはその一部である。このユーザインタフェースユニットは、人間オペレータからの入力に応じて、装置の動作を制御するユーザインタフェース要素を有している。
【0047】
上記第5の態様の第13の可能な実施形態では、上記ドッキングステーションには、船舶の給水システムと接続するためのホースリール上の給水ホース及び/又は船舶のグリッドと接続するための電源ケーブルと電源ケーブルリールが設けられている。
【0048】
上記第5の態様の第14の可能な実施形態では、上記ドッキングステーションには、サスペンションワイヤ用の電動ワイヤリール、電源ケーブル用のケーブルリール、高圧ホース用の高圧ホースリールが設けられている。
【0049】
上記第5の態様の第15の可能な実施形態では、上記ドッキングステーションには車輪が付けられ、装置とドッキングステーションは、装置がドッキングステーションによって搬送・移送が可能なようにドッキングステーションに載置できるよう構成されている。
【0050】
上記第5の態様の第16の可能な実施形態では、上記ドッキングステーションは、船舶のデッキに設けられたRFID応答機の読み取りを行うRFID送受信機を備えている。この応答機は船舶上に配置され、ドッキングステーションをRFID応答機の上方又はその付近に配置することにより、洗浄に適した正しいルートを自動的に決定する。
【0051】
上記第5の態様の第16の可能な実施形態では、上記装置及び/又はドッキングステーションは、半自動又は全自動洗浄を行うよう構成された電子制御ユニットを備えている。
【0052】
上記第5の態様の第17の可能な実施形態では、上記電子制御ユニットは、最適な洗浄を行うために事前にプログラムされたルートを取るよう構成されている。
【0053】
本発明のこれらの及びその他の態様は、以下に示す実施例から明らかとなろう。
【0054】
本開示の以下の詳細な説明では、本発明について、以下の図面に示す例示的な実施例を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】船体洗浄装置の例示的な実施例を示す正面及び背面立面図である。
【
図2】船体洗浄装置の例示的な実施例を示す正面及び背面立面図である。
【
図3】船舶の貨物倉で作動中の
図1及び
図2の装置を示す立面図である。
【
図5】
図1及び
図2に示す装置が船体や貨物スペースの壁部の洗浄に用いられる船舶を示す上面図である。
【
図6】
図1及び
図2に示す装置に関連するドッキングステーション用の駐車場所を示す
図5の船舶のデッキの一部を示す立面図である。
【
図7】
図6の駐車場所に駐車した、
図1及び
図2の装置に関連するドッキングステーションを示す立面図である。
【
図8】船体洗浄装置の他の例示的な実施例を示す正面及び背面立面図である。
【
図9】船体洗浄装置の他の例示的な実施例を示す正面及び背面立面図である。
【
図10】
図8及び
図9に示す装置のハウジング及びツールを示す詳細半分解図である。
【
図11】
図8及び
図9に示す装置のハウジング及びツールを示す詳細側面図である。
【
図13】ツールが取り付けられていない状態の
図8及び
図9の装置を示す側面図である。
【
図16】
図8及び
図9の装置の磁気連続トラックのリンクを示す分解立面図である。
【
図17】
図8及び
図9の装置の磁気連続トラックのリンクを示す立面図である。
【
図18】
図8及び
図9の装置の磁気連続トラックのリンクを示す側面図である。
【
図20】
図8及び
図9の装置の磁気連続トラックのためのガイドを示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1及び
図2は、船舶50(
図5)の船体60の外側を洗浄する水中装置1を示す図である。この装置1は、貨物倉60の貨物スペースの壁部の洗浄にも適している。装置1は、その対向する側面に磁気連続トラック3を備えた防水ハウジング2を有する。
【0057】
上記磁気無端トラックは、一実施例において、1つ又は複数の主車輪(図示せず)と、1つ又は複数の遊動輪26とを備えている。この磁気トラックは、ヒンジで連結されたモジュール式チェーンリンクから形成され、各リンク又は各第2のリンクには永久磁石が設けられている。
【0058】
上記防水ハウジング2内の少なくとも1つの駆動モータ14、17は、少なくとも1つの磁気連続トラック3に動作可能に接続され、その磁気連続トラック3の駆動を行なっている。防水ハウジング2は、磁気連続トラック3間に主面7を有している。この主面7は、洗浄作業中は、船体や貨物室の壁部から離れる方向に向いている。そして、主面7は、例えば、1つ又は複数の磁気又は高速カップリング(図示せず)によって洗浄ツール20を着脱可能に取り付けるための汎用取付板を備えている。洗浄ツール20は、さまざまなタイプあるうちのいずれかを用いればよい。洗浄ツール20の1つのタイプとしては、高圧洗浄ノズル22と、高圧水用ホース(図示せず)と接続するための入口とを有するものがある。上記洗浄装置20は、一実施例(図示せず)において、高圧ホースを介して供給される高圧水や電気駆動モータによって駆動される回転ブラシ及び駆動部を備えていてもよい。
【0059】
上記2つの磁気連続トラック3は、その連続トラック3の長さに沿ってほぼ均等に分布した複数の永久磁石4を備え、それにより連続トラックが船舶50の船体やその貨物スペースの壁部に磁気的に付着することが可能となっている。
【0060】
各永久磁石4は、ゴム材料に成形された後、その鋼表面に対向する部分をゴム材料が貫通するポリマー筐体に再成形される。これにより、洗浄する表面の種類によってトラックの硬度を変更することが可能となる。上記防水ハウジング2は、前部と後部を有している。上記装置1は、上記2つの磁気連続トラック3のそれぞれに、防水の前輪5と後輪6をさらに備えている。上記ハウジング2には、2つの電気駆動モータ14、17が設けられている。一方の電気駆動モータ14は、磁気連続トラック3のうちの1つの従動前輪6に
動作可能に接続され、他方の電気駆動モータ17は、磁気連続トラックの後輪6に動作可能に接続されている。
【0061】
各電気駆動モータ14、17には、減速ギア15、18とほぼ円筒形状を有する電気駆動モータ14との結合に関与している電気駆動モータ14、17と1つの一体ユニットを形成する減速ギア15、18が設けられ、各従動前輪又は後輪6が、該減速ギアの、もしくは各減速ギア15、18と動作可能に接続されたクラッチ16、19の出力軸27、28に直接嵌合している。
【0062】
電気駆動モータ14、17は、その出力軸27、28に対向する部分が上記ハウジングの側面から突出し、非従動前輪又は後輪5は、電気駆動モータ14、17の突出部分が、その突出部分の上方に配置されている非従動前輪又は後輪5の内側に収容可能となるオフセットを有している。
【0063】
電気駆動モータ14、17は、防水ハウジング2の2つの対向する長手方向端部又はその付近に配置され、それぞれの出力軸及び/又は該電気駆動モータ14、17と結合した減速ギア16、18のそれぞれの出力軸がそれぞれ反対の方向に向けられ、ハウジング2の対向する長手方向端部又はその付近において、防水ハウジング2の対向する側面から突出していることが好ましい。
【0064】
上記装置1は、電気駆動モータと減速ギアユニットに一体的に接続されたクラッチユニット16、19を備えている。駆動モータと、減速ギアと、クラッチユニットとを組み合わせたものは、円筒形状を有していることが好ましい。上記防水ハウジング2は、ライト、カメラ、センサ12を取り付けるよう設定可能なインタフェース領域が設けられた前側又は後側8を有している。
【0065】
図7は、上記装置に関連し、磁気無端トラック3がうっかり船体又は貨物倉の壁部から切り離されてしまった場合に装置1が紛失してしまわないようにするサスペンションワイヤ23で装置に接続されたドッキングステーション30を示す図である。電源ケーブル24がドッキングステーション30と装置1の間に延在し、装置1に電力を供給している。一実施例では電源ケーブル24と一体化が可能な通信ケーブル(図示せず)により、装置1とドッキングステーション30との間で信号の送信が可能となっている。
【0066】
上記ドッキングステーション30は、高圧水を送水するための高圧ポンプ(図示せず)を備えている。装置1に取り付けられた高圧洗浄ツール20の入口は、高圧ホース(図示せず)を介して高圧ポンプの出口に接続されている。
【0067】
上記装置1を貨物倉の洗浄に使用する際は、上記ドッキングステーションを省いて、その代わりに、シンプルなハーネスシステムをハッチ開口部に取り付け、ドロップブロックとして機能させることができる。洗浄ツール20は、高圧洗浄ノズル22及び/又は高圧ポンプからの高圧水で、もしくは電気駆動モータで作動することが好ましい少なくとも1つのブラシ駆動部(図示せず)を備えている。
【0068】
ユーザインタフェースユニット36は、ドッキングステーション30に接続されている、もしくはその一部である。このユーザインタフェースユニットは、人間オペレータからの入力に応じて、装置1の動作を制御するユーザインタフェース要素を有している。装置1は、人間オペレータからの正確な指示を実行するよう構成されていたり、人間オペレータの命令に応じて自律的にタスクを実行するよう構成されている。
【0069】
上記ドッキングステーション30には、船舶50の給水システムと接続するためのホー
スリール上の給水ホース32が設けられている。また、このドッキングステーション30には、船舶50のグリッドと接続するための電源ケーブル33と電源ケーブルリール34も設けられている。
【0070】
さらに、ドッキングステーション30には、サスペンションワイヤ23用の電動ワイヤリール(図示せず)、電源ケーブル24用のケーブルリール(図示せず)、高圧ホース用の高圧ホースリール(図示せず)も設けられている。
【0071】
一実施例では、上記ドッキングステーション30には車輪が付けられている。上記装置1とドッキングステーション30は、一実施例では、装置1がドッキングステーション30によって搬送・移送が可能なようにドッキングステーション30に載置できるよう構成されている。
【0072】
上記ドッキングステーション30は、船舶50のデッキ57に設けられたRFID応答機15の読み取りを行う無線自動識別(RFID)送受信機(図示せず)を備えている。このRFID応答機15は、船舶50上において、ドッキングステーション30にとって適した駐車位置に配置されている。ドッキングステーション30をRFID応答機15の上方又はその付近に配置することにより、ドッキングステーション30内(又は装置1内)の電子制御ユニットが、駐車位置の領域における船体部にわたって装置1にとって正しいルートを自動的に決定する。この電子制御ユニットは、半自動又は全自動洗浄を行うよう構成されている。RFID応答機15について、船舶50のデッキ上でのさまざまな適切な位置を
図5に示す。一実施例において、上記電子制御ユニットは、最適な洗浄を行うために事前にプログラムされたルートを取るよう構成されている。
【0073】
図5は、船首51から船尾52へと延びる船体60、船橋54、煙突55を有する船舶50と、ドッキングステーション30の選択された駐車位置に対するRFID応答機15とを示す図である。
【0074】
上記装置1は、運転中、うつ伏せの状態で船体60の上部からスタートして、船体60の下部中央へと下方に移動し、例えば、ドッキングステーション30の駐車位置に対応する船体60の領域をカバーする蛇行パターンなどの適切なパターンで戻るよう駆動する。上記電動ワイヤリールは、サスペンションワイヤ23を最低限の張力に保ち、ワイヤ23がたるまないようにしている。上記電源ケーブルリール及び高圧ホースリールは、装置1の移動中、電源ケーブルと高圧ホースを軽い張力に保つために、弾性を有するもの又は電動式である。
【0075】
図3は、貨物スペースの壁部70上で作動中の装置1を示し、水ジェット13によって、任意の船梁72を含む貨物倉の表面を洗浄している。この装置1は、船梁72などの障害物との距離を保つことができるようにする信号を出して装置の動作をアシストする各種センサをさらに備えている。
【0076】
そして、上記装置1は、運転中、あおむけの状態で貨物スペースの下部をスタートして、貨物スペースの上部へと下方に移動し、例えば、ドッキングステーション30の現駐車位置に対応する貨物スペースの領域をカバーする蛇行パターン又はその他の適切なパターンで戻るよう駆動する。サスペンションワイヤ23を設けることは、貨物スペースを洗浄する上で、装置1の使用にとって不可欠ではない。
【0077】
上記装置1は、早期洗浄を行うことにより、ひどい汚損を防止することができる。この予防的洗浄は、高圧水噴流又はブラシによる軽い洗浄によってサポートされている。この装置1は、磁気付着により、航海中でも洗浄を行うことができる。また、この装置は、磁
気トラックにより、水線上方での洗浄を行うことが可能であり、これは貨物/バラスト中などでは水位が異なるため必要である。
【0078】
上記装置1は船舶に常設可能ではあるが、現在の解決策はいずれも「オンデマンド要請」であり、永久的に船上での必要に応じた使用となる。
【0079】
図8~
図21は、船舶50の船体60の外側を洗浄し、貨物倉の壁部70を洗浄する装置1の他の実施例を示す図である。本実施例の装置は、上記実施例に係る装置1と類似しており、好ましくは防水のハウジング2と、そのハウジング2の対向する側面に磁気連続トラック3を備えている。この装置1の底部側16は、船体の外側又は貨物倉の壁部と対向するよう構成されている。上記磁気連続トラック3の少なくとも一方の範囲の第1の部分は、装置1の底部側16に配置されている。各磁気連続トラック3は、駆動ピン10で相互接続された複数のリンク9を有している。この磁気連続トラック3は、前輪6と後輪5に掛け渡され、その前後輪の少なくとも一方が、駆動輪、すなわち、駆動モータに接続され、磁気連続トラック3のリンク9の接続部における駆動ピンを係合可能なスプロケットである。このリンク9は、内向き側18と外向き側19とを有している。
【0080】
上記駆動ピン10は、リンク9から外側方へ突出している。これにより、スプロケットが駆動ピン10を係合しやすくなり、ガイド40が駆動ピン10と係合しやすくなる。このガイド40によって、前輪6と後輪5の間の磁気連続トラック3の範囲の第1の部分にあるリンク9が、外向き側19が向いている方向に移動するのを防ぐ。
【0081】
上記ガイド40は、駆動ピン10の外向き方向への移動を防ぐ。これにより、連続トラックの屈曲(連続トラック3の部分に力が加えられていない場合の該連続トラックの部分によって仮定される前後輪間の直線に対する屈曲)によりリンク9が「1つずつ」船体から分離(剥離)することがほとんど不可能となる。このガイド40によって、船体と接触しているリンク9が、まるで剛体に固定され、一直線上に配置されているかのように機能するようになる。よって、装置1は、磁気連続トラック3のリンク9が「一度に1つずつ剥離する」のとは対照的に、すべての磁気リンク9の接触が同時に外れることによってのみ船体から取り外すことができる。このようにリンク9が1つのリンク剛体として機能することによって、磁気連続トラックを船体から取り外す力又は負荷が大幅に増加する。この力/負荷は、上記ガイド40が設けられていない場合、単一のリンク9を取り外すのに必要な力にほぼ相当する。一方、ガイド40が設けられている場合、磁気連続トラック3を船体から取り外す力/負荷は、単一のリンク9を取り外すのに必要な力に、ガイド40によって同時に支持されているリンク9の数を乗じた力にほぼ相当する。このガイド40によって、船体に対向している装置の側面16で前後輪間に延在するすべてのリンクを支持することができるので、装置を取り外すのに必要な力/負荷を、船体と同時に接触しているリンク9の数に対応する分だけ増加させることができる。
【0082】
各磁気連続トラック3は、ツールが着脱可能に取り付けられている主面側と、装置1の船体外側又は貨物倉の壁部に対向する側16との両方において、前輪6と後輪5の間にほぼ一直線に延在している。ツール20には、高圧源に接続された噴射ノズル22を備えることができる。このツールは、ラグ27と協働する着脱が容易なボルト28によって装置のハウジング2に着脱可能に取り付けられている。
【0083】
ガイド40は、上記第1の部分に沿ってほぼ一直線に延在するガイド面41を有している。このガイド面は、図示のように、前後輪の間に磁気連続トラックの全長に沿って、もしくはその一部だけに沿って(図示せず)延在可能である。また、ガイド面41は、図示のように、前輪及び/又は後輪のアーチに沿った湾曲部を有していてもよい。このガイド面41は、駆動ピンを該リンクの外向き面19が向いている方向への移動を防ぎつつ摺動可能なレール状体を形成することによって駆動ピン10をガイドするよう構成されている。
【0084】
一実施例では、上記ガイド40は、ガイド面41がサイドパネルと直角な位置にある状態で、前輪6又は後輪5の回転面と平行な第1面を有している。ガイド面41は、サイドパネルの一体部分であることが好ましい。このガイド面41は、サイドパネルと直角に延在する(屈曲)レッジにより形成されていることが好ましい。各磁気連続トラック3の2つの対向するガイド40は、該磁気連続トラック3のそれぞれの側にガイド40が1つずつ設けられている。
【0085】
図16及び
図17は、リンク9をさらに詳しく示す図である。このリンクは、内向き側18と外向き側19とを有している。各リンク9には、永久磁石4が埋め込まれている。外向き側19には、グリップと摩擦を強化する1つ又は複数の交換可能な摩擦パッド37が設けられている。この摩擦パッド37は、摩耗した摩擦パッド37の交換、もしくは、別の高さを有する摩擦パッド37、すなわち、外向き側19から異なる高さで突出する摩擦パッドとの交換が容易に行えるよう、外向き側19へと開口するマッチングスロット38内に収容されている。
【0086】
永久磁石4は、外向き側19の表面の近くに配置されている。摩擦パッド37を収容するスロット38は、この永久磁石4に隣接して、好ましくは永久磁石4の対向する両側に配置されている。
【0087】
このように、一実施例によれば、磁気連続トラック3のリンク9における永久磁石4と、その磁気連続トラック3が磁気的に取り付けられた壁部又は船体との距離を調整する方法がある。この方法には、リンク9の外向き面19から突出する交換可能な摩擦パッド37をリンク9に設ける工程と、所定の高さを有する摩擦パッド37を別の高さを有する摩擦パッド37と置き換えることによって摩擦パッド37が外向き面から突出する程度を調節する工程とが含まれる。