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特許7344895車両に装備されたジャイロメータの較正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】車両に装備されたジャイロメータの較正方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/00 20130101AFI20230907BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01C19/00 Z
G01C21/28
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020549022
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 FR2019050588
(87)【国際公開番号】W WO2019175516
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】1852230
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518120924
【氏名又は名称】シスナヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシエール,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】イリオン,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】デュガール,ジャン‐フィリップ
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-276242(JP,A)
【文献】特開2001-336950(JP,A)
【文献】米国特許第8965691(US,B1)
【文献】特表2013-535669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0265054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C19/00-21/36
G01C23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備されるジャイロメータを較正するための方法であって、前記方法は、以下のステップ:
(a) 取得であって
- 前記ジャイロメータによる、前記車両の測定角速度、及び
測定手段による、前記車両の角速度を表す少なくとも1つの量の測定値、
の取得と;
計算であって:
- 前記測定角速度及びジャイロメータ較正パラメータの関数である前記車両の第1の推定角速度、及び
- 前記車両の前記角速度を表す前記少なくとも1つの量の前記測定値の関数である前記車両の第2の推定角速度、
の計算と、
(b) 前記車両の前記第1の推定角速度と前記車両の前記第2の推定角速度との間の差を最小化する前記ジャイロメータ較正パラメータの少なくとも1つについての少なくとも1つの更新された値のデータ処理手段による決定と
(c)前記ジャイロメータ較正パラメータの少なくとも1つの前記少なくとも1つの更新された値上のエラーを表すエラーパラメータの推定、及び、前記エラーパラメータが所定の閾値を下回る場合且つその場合のみの、前記ジャイロメータ較正パラメータの少なくとも1つについての前記少なくとも1つの更新された値による前記ジャイロメータの実際の較正であって、前記エラーパラメータは、前記ステップ(b)において前記少なくとも1つの更新された値により計算された前記第1の推定角速度及び前記第2の推定角速度の関数である、推定及び実際の較正と;
を含む、
方法。
【請求項2】
前記車両の前記第1の推定角速度
(外1)
は、モデル
【数2】
によって前記測定角速度
(外2)
にリンクされ、ここで、D及びbは前記ジャイロメータ較正パラメータである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は再帰フィルタ又は最適化の実装を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定手段は、少なくとも2つの走行距離計又はステアリングホイール角センサのいずれかで構成される、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記測定手段は、前記車両の少なくとも2つの車輪の測定速度を測定するための前記少なくとも2つの走行距離計で構成され、前記車両の前記角速度を表す前記少なくとも1つの量は、前記車輪の前記測定度及び走行距離計較正パラメータの関数である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)はまた、前記車両の前記第1の推定角速度と前記車両の前記第2の推定角速度との間の差を最小にする前記走行距離計較パラメータの少なくとも1つについての少なくとも1つの更新された値の決定を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記測定速度は、前記車両の左後輪の第1の測定速度v L 及び前記車両の右後輪の第2の測定速度v R を含み、前記車両の前記第2の推定角速度
(外3)
は、式
【数3】
によって前第1及び前記第2の測定速度v、vにリンクされ、ここでα、α及びdは前記走行距離計較正パラメータである、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記ジャイロメータ較正パラメータD及びdは予め決定され、前記ステップ(b)は、前記走行距離計較正パラメータb、α及びα更新された値の決定を含む、
請求項2及び6を引用する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(c)は、前記エラーパラメータが所定の閾値を下回る場合且つその場合のみの、前記走行距離計較正パラメータの少なくとも1つの前記少なくとも1つの更新された値による前記測定手段の実際の較正を含む、
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)は、
【数4】
の最小化を含み、
(外1)
は、前記車両の前記第1の推定角速度であり、
(外3)
は、前記車両の前記第2の推定角速度である、
請求項5乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
エラーパラメータは、所与の時間間隔にわたる
【数5】
の平均であり、
(外1)
は、前記車両の前記第1の推定角速度であり、
(外3)
は、前記車両の前記第2の推定角速度である、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記車両の前記測定角速度及び前記ジャイロメータ較正パラメータの関数としての前記車両の運動の前記データ処理手段による推定のステップ(d)を含
請求項乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記車両の向きが、前記車両の前記測定角速度及び前記ジャイロメータ較正パラメータの関数として前記ステップ(d)において一意的に推定される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記車両の全体の速度が前記車輪の前記測定速度の関数として前記ステップ(d)において推定される、
請求項5乃至10のいずれか1項を引用する請求項12に記載の方法。
【請求項15】
車輪付き車両であって、前記車両の測定角速度を取得するように構成されるジャイロメータと、前記車両の角速度を表す少なくとも1つの量の測定値を取得するように構成される、測定手段とを有し、前記車両は、さらに:
- 前記測定角速度及びジャイロメータ較正パラメータの関数である前記車両の第1の推定角速度、及び前記車両の前記角速度を表す前記少なくとも1つの量の前記測定値の関数である前記車両の第2の推定角速度を計算し、
前記車両の前記第1の推定角速度と前記車両の前記第2の推定角速度との間の差を最小化する前記ジャイロメータ較正パラメータの少なくとも1つについての少なくとも1つの更新された値を決定
- 前記ジャイロメータ較正パラメータの少なくとも1つについての前記少なくとも1つの更新された値上のエラーを表すエラーパラメータを推定し、前記エラーパラメータは、前記少なくとも1つの更新された値で計算された前記第1の推定角速度及び前記第2の推定角速度の関数であり、
- 前記エラーパラメータが所定の閾値を下回る場合且つその場合にのみ、前記ジャイロメータ較正パラメータの少なくとも1つについての前記少なくとも1つの更新された値による前記ジャイロメータの実際の較正を実行する、
ように構成されるデータ処理手段をさらに有する、
車輪付き車両。
【請求項16】
コンピュータ上で実行されるとき、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のジャイロメータを較正するための方法の実行のためのコード命令を備えるコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
コンピュータ機器によって読取可能な記憶手段であって、前記コンピュータ機器上のコンピュータプログラム製品が請求項1乃至14のいずれか1項に記載のジャイロメータを較正するための方法の実行のためのコード命令を備える、記憶手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GNSSを伴わないナビゲーションの分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、走行距離計を備えた車両に装備されたジャイロメータを較正するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
GNSS(グローバルナビゲーション衛星システム、例えばGPS)によって又は通信ネットワーク(トランスミッタターミナル、Wi-Fiネットワークなどを用いた三角測量)を用いることによって車両の位置を追跡することは、今日では一般的である。
【0004】
これらの方法は、屋内、トンネル内、又はエミッタからあまりにも離れた場所で動作しないため非常に限定されていることが証明されており、利用できなく成ることがある又は自発的にスクランブルをかけられさえすることがあるGNSSのための衛星などの外部技術に依存することが証明されている。
【0005】
代替的には、慣性又は磁気慣性ユニットを使用して車両の相対的変位を任意の環境において追跡するための「自律的」方法も知られている。相対変位は、点及び初期化時に与えられた位置(フィックス(fix))に対する空間における車両の軌跡を意味するものとされる。軌跡に加えて、これらの方法はまた、同じ初期位置に対する車両の方向を得ることを可能にする。
【0006】
慣性ユニットは、三軸に配置された少なくとも3つの加速度計及び3つのジャイロメータから構成される。典型的には、ジャイロメータは、加速度計の測定値の二重時間積分が、運動を推定することを可能にする位置(フィックス)を「維持」する。
【0007】
特に、戦闘機又は旅客機、潜水艦、船舶等のナビゲーションのようなヘビーデューティな用途において実装されるような従来の慣性航法を使用することを可能にするためには、非常に高精度のセンサを使用する必要があることが知られている。実際、加速度測定の単一の二重時間積分は、一定の加速度エラーが、時間の二乗に比例して増加する位置エラーを生成することを意味する。
【0008】
走行距離計(オドメータ)による測定(オドメトリ)は、車輪の変位の個々の測定値から移動する車輪のある車両の位置を推定することを可能にする代替技術である。
【0009】
従来、図1を参照すると、走行距離計は、2つの車輪(例えば、左後輪及び右後輪)の曲線の横座標及び回転数を測定するために使用され、対応するそれぞれの速度v及びvが(車輪の直径の関数として)それから導出され、「差動オドメトリ(差動走行距離測定)」によって、以下の式を介して、「全体の」速度v(すなわち、2つの車輪10a、10bを接続する車軸の中心の速度)及び車両の角速度ωが得られる:
【数1】
ここで、dは車輪の間の距離である。
【0010】
差動オドメトリは満足を提供し、特許文献1は、(GNSSでは適切に検出できない)低速での小さな変位の間に、例えば、駐車中の操作中に、例えば、GNSS又は慣性ユニットの代替としての車両の動きを追跡するために使用されるn個の車輪に対する一般化されたバージョンを提案している。
【0011】
しかし、差動オドメトリはエラーを引き起こしやすく、GNSSの全体的な代替として単独で使用することはできないことが判明した。
【0012】
実際、それが信頼できるものであるためには、最低限のスキッドがなく、考慮される二つの車輪が完全に平行であり、車輪間の距離又はそれらの直径などのパラメータが一定であり、精密に既知であることが必要である。さらに、低速度では、「トップ」(後述)をカウントする走行距離計の速度結果は精度を失い、これは、差動オドメトリから導かれる角速度結果をさらに劣化させる。
【0013】
さらに、差動オドメトリは、道路の代わりに車両に対する垂直軸の周りの角速度を与える。これはただ、道路が水平であることを条件に、方位を計算することを可能にするだけである。
【0014】
従って、走行距離計、ジャイロメータ、あるいは完全な慣性ユニットと組み合わせて使用することが提案されている。
【0015】
最初のアプローチは、ジャイロメータ/慣性ユニット(又は別のリファレンス)を使用して、走行距離計を較正することである。この点に関して、特許文献2は、顕著に知られており、これは、オドメトリの欠陥をエラーモデルと共に論じている。
【0016】
この方法は面倒で、問題を部分的にしか解決しない。
【0017】
代わりに、特許文献3は、方位を決定するためにジャイロメータを使用し、ジャイロメータのバイアスを取り除くために直線に沿った軌跡を識別するように差動オドメトリ(ならびにステアリングホイールの角度などの他の信号)を使用することを提案している。上記の式からすると、この方法は、v=vかどうか(又は、実際にはそれらの差が所与の閾値を下回っているかどうか)を調べることに相当する。角速度がゼロでない状況(又は直線に沿った軌道を同定するために与えられた閾値を超える状況)のv≠vの場合については、特許文献3の方法は、定量的な処理又はオドメトリック速度の使用を提供しない。
【0018】
このような方法は単純で効率的であるが、それは直線に依存するために限定的であることが証明されている。さらに、実際には、軌跡が直線的であることは不十分であり、それはあまり強く加速されないことも必要であり、加速なしの直線のみが、スケールファクタではなく、ジャイロメータのバイアスを識別することを可能にする。
【0019】
優れた結果の品質を可能にし、かつ限定的でない車両の動きの推定を目的として、車両のジャイロメータを較正するための新規な方法を利用できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】米国特許第8965691号
【文献】米国特許出願公開第2012/0022780号
【文献】米国特許出願公開第2009/0265054号
【発明の概要】
【0021】
したがって、本発明は、第1の態様によれば、車両に装備されるジャイロメータを較正するための方法に関し、その方法は、以下のステップを含むことを特徴とする:
(a) 取得であって
- ジャイロメータによる、車両の測定角速度、及び
- 車両の角速度を表す少なくとも1つの量を測定する手段による、車両の角速度を表す前記少なくとも1つの量の測定値、
の取得;及び
(b) 車両の第1の推定角速度と車両の第2の推定角速度との間の差を最小化するジャイロメータを較正するための少なくとも1つのパラメータの値のデータ処理手段による決定であって、
- 車両の第1の推定角速度は、測定角速度及びジャイロメータを較正するためのパラメータの関数であり、
- 車両の第2の推定角速度は、車両の角速度を表す前記少なくとも1つの量の測定値の関数である、
決定。
【0022】
他の有利かつ非限定的な特徴によれば:
・ 車両の第1の推定角速度
(外1)
は、モデル
【数2】
によって測定角速度
(外2)
にリンクされ、ここで、D及びbはジャイロメータを較正するためのパラメータである;
・ ステップ(b)は再帰フィルタ又は最適化の実装を含む;
・ 測定する手段は、少なくとも2つの走行距離計(20a、20b)又はステアリングホイール角センサのいずれかで構成される;
・ 測定する手段は、少なくとも2つの走行距離計で構成され、車両は、走行距離計を備える少なくとも2つの車輪を有し、車両の角速度を表す前記量は、前記車輪の速度であり、車両の前記第2の推定角速度は、車輪の測定速度及び走行距離計を較正するためのパラメータの関数である;
・ ステップ(b)はまた、走行距離計を較正するための少なくとも1つのパラメータの値の決定を含む;
・ 車両の2つの後輪は走行距離計を備え、車両の第2の推定角速度
(外3)
は、式
【数3】
によって左後輪及び右後輪についてそれぞれ測定速度v、vにリンクされ、ここで、α、α及びdは走行距離計を較正するためのパラメータである;
・ 較正パラメータD及びdは予め決定され、ステップ(b)は較正パラメータb、α及びαの決定を含む;
・ ステップ(b)は、
【数4】
の最小化を含む:
・ 本方法は、較正パラメータ上のエラーを表すパラメータを推定するステップ(c)を含む;
・ 較正パラメータ上のエラーを表す前記パラメータは、較正パラメータの決定された値について計算された前記第1及び第2の推定角速度の関数である;
・ 較正パラメータ上のエラーを表す前記パラメータは、所与の時間間隔にわたる
【数5】
の平均である;
・ ステップ(c)は、較正パラメータ上のエラーを表す前記パラメータが所定の閾値を下回る場合、ジャイロメータ、及び、適切な場合、較正パラメータの決定された値の関数として、車両の角速度を表す少なくとも1つの量を測定する手段の実際の較正を含む;
・ 本方法は、車両の測定角速度及び/又は前記車輪の測定速度、並びに較正パラメータの値の関数としての前記車両の運動のデータ処理手段による推定のステップ(d)を含み、車両の向きは、車両の測定角速度及び較正パラメータの値の関数として、ステップ(d)で一意的に推定され、前記車輪の測定速度は、車両の全体の速度を推定するために使用される。
【0023】
第2の態様によれば、車両の測定角速度を取得するように構成されるジャイロメータと、車両の角速度を表す少なくとも1つの量を測定する手段であって、車両の角速度を表す前記少なくとも1つの量の測定値を取得するように構成される、測定する手段とを有する、車輪付き車両が提案され、車両は、車両の第1の推定角速度と車両の第2の推定角速度との間の差を最小化するジャイロメータを較正するための少なくとも1つのパラメータの値を決定するように構成されるデータ処理手段をさらに有することを特徴とし、
- 車両の第1の推定角速度は、測定角速度及びジャイロメータを較正するためのパラメータの関数であり、
- 車両の第2の推定角速度は、車両の角速度を表す前記少なくとも1つの量の測定値の関数である。
【0024】
第3の態様及び第4の態様によれば、ジャイロメータを較正するための本発明の第1の態様による方法の実行のためのコード命令を備えるコンピュータプログラム製品と;コンピュータプログラム製品がジャイロメータの較正の第1の態様による方法の実行のためのコード命令を備えるコンピュータ機器によって読取可能な記憶手段とが提案される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の好適な実施形態の説明を読むことによって明らかになる。本説明は、添付の図面を参照して記載する:
【0026】
図1】差動オドメトリを示す図である;
図2】本発明による方法の実装のための例示的な車両アーキテクチャを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
アーキテクチャ
図2を参照すると、本方法は、車両1に装備されたジャイロメータ11(すなわち、車両1の角速度を測定することができる慣性測定手段)の較正を可能にする。車両にはさらに、車両1の角速度を表す少なくとも1つの他の量を測定する手段20を備える。
【0028】
手段20は、間接的に角速度を得ることを可能にするジャイロメータ以外の車両1に一体化された任意のセンサであり得ることが理解される。したがって、前記測定する手段20は、有利には、角度ステアリングホイールセンサ(車両1の角速度を表す前記少なくとも1つの量は、車両1が直線で走行する場合の基準位置に対する前記ステアリングホイールの角度である)及び/又は少なくとも2つの走行距離計20a、20b、すなわち、車両1は、各々が走行距離計20a、20bを備える少なくとも2つの車輪を有する(車両1の角速度を表す量は、走行距離計20a、20bを備える車輪10a、10bの各々の速度である)。より具体的には、特に本明細書の残りの部分で説明するこのいわゆる「オドメトリック」と呼ばれる好適な実施形態では、車両1は、ジャイロメータ11と、それぞれが車両1の1つの車輪10a、10bに対する少なくとも2つの走行距離計20a、20bとを有する。当然、車両1の車輪は、走行距離計20a、20bが備えていなくてもよい。
【0029】
車タイプの4輪を備える従来の車両1を表す図2の例では、車両1の2つの後輪10a、10bは走行距離計20a、20b(それぞれ左後輪10a、右後輪用)を備え、2つの前輪はそれらを備えていない。後輪は前輪のように垂直軸の周りに回転しない、すなわち、完全に平行で一定の距離を保つので、それは有利な構成である。さらに、前輪駆動車の最も一般的なケースでは、後輪は駆動されず、従ってスキッドは少ない。
【0030】
しかし、代替的には、2つの前輪を用いることもできる(この例についても説明するが、見られるように、前輪は、ステアリングホイールが回転したときには、もはや互いに正確に平行ではないが、その影響を計算することは可能である)、又は、前輪及び後輪、あるいは、3つ又は4つの車輪でさえも用いることができることが理解されるであろう。一般に、当業者は、この目的のためにアッカーマンステアリングジオメトリをどのように使用するかを知っているであろう。
【0031】
車両1は、必ずしも自動車ではなく、任意の数の車輪(ローリーの場合のように4つ超を含む)を有する任意の車両であり得ることに留意されたい。
【0032】
走行距離計とは、回転を計測すること(「回転計」)によって又は曲線の横座標(curvilinear abscissa)を計測することによって、車輪の速度を測定する装置を意味すると取られる。一般的には、走行距離計は、車輪に固定された部分(例えば、磁石)を持ち、時間単位あたりの回転の数を計測するためにこの固定された部分(「トップ」と呼ばれる)の各通過を検出し、これは回転の周波数である。他の技術、例えば、車輪上のマークの光学的検出、又は金属要素を含む物体の回転を検出する特許FR2939514の磁力計が知られている。
【0033】
ここで、車輪の「速度」はスカラー、すなわち地上の基準フレームにおける車輪の速度のノルム(スキッドがないという前提の場合)である。車輪10a、10bの半径rが既知である場合、回転の周波数fの測定により、速度のこのノルム:v=2πrfを推定することができる。
【0034】
本方法では、走行距離計20a、20bは、車輪10a、10bの速度を直接提供することができるか、又は「トップ」を示すだけであり、速度を推定するのは以下に説明する処理ユニット21であることが理解される。
【0035】
車両1は、さらにジャイロメータ11(典型的には、車体と一体であり、一般的に言えば、車両1の基準フレームに固定されている)、すなわち、車両基準フレームを画定する3つの直交軸システムに従って車両1の角速度を測定することができる慣性測定手段を備える。
【0036】
垂直軸周りの回転は、ステアリングホイールを回しながらドライバが動作する角度で表される。概して平坦な地面では、車両の方向の変化は、水平面内である、すなわち、前記垂直軸にも沿っている。
【0037】
実際には、ローリング(車両1の長手方向軸に沿った回転)及びピッチング(車両1の横軸に沿った回転)の非ゼロ値は、例えば、傾斜路の結果であり得る。これらの角度の処理は、運動の推定の瞬間に重要になり得る。逆に、車両の垂直軸周りの回転は、理想的には測定として差動オドメトリがまさに提供するものである。
【0038】
したがって、全ての場合において、車両1の垂直軸に沿ったジャイロメータ11のバイアスの推定は、(水平ではない道路に対してさえ)主として正確であることに留意されたい。
【0039】
ジャイロメータ11が固定されているシャーシの動きは、長手方向又は横方向の加速の場合に、道路の平面に垂直な軸に対してこの軸を乱すことがあることが観察される。この影響は、十分に小さい加速に対しては無視できるか、又はモデル化可能であり、これは、例えば、較正(下記参照)を特徴付けることによって事後的に検証することができる。
【0040】
便宜上、ωは角速度ベクトル
(外4)
の垂直成分を記述する。慣例により、角速度は、反時計回り方向の曲がりに対して正(「右に回る」)であり、時計回り方向の曲がりに対して負(「左に回る」)である。
【0041】
車両1は、他の軸に沿った他のジャイロメータ及び/又は加速度計を備えてもよく、又は少なくとも3つの加速度計及び3つのジャイロメータが三軸に配置された慣性ユニットを有してもよいことが留意されるべきである。加速度計は、センサに加えられた重力以外の外力に敏感であり、
(外5)
で記述される記載される特定の比加速度を測定することを可能にする。
【0042】
車両1は、さらに、説明されているように、本方法の処理動作の直接的なリアルタイムでの実装のための処理手段21(典型的にはプロセッサ)、例えば、車両1のオンボードコンピュータと、オプションでメモリ22と、車両1の運動に関する情報(瞬間速度値、方位、地図上の位置など)をドライバへフィードバックするための、及び/又は車両1へコマンドを送信するためのインターフェース23とを有する。この点において、車両1は、特に自動運転車両であり得、処理手段21は、車両1の自律的なナビゲーションを実装するように構成される。従って、前記コマンドは、運転者による運転をシミュレートするために、車両の制御部材(エンジン、ステアリングホイールアクチュエータ等)に送られる。
【0043】
ジャイロメータ11及び測定する手段20(好ましくは、走行距離計20a、20b)は、特に、例えばイーサネットを介して有線方式でデータ処理手段21に接続される。
【0044】
車両1は、オプションで、GNSS受信機などの補完的センサを有し得る。
【0045】
方法
本方法は、少なくともジャイロメータ11を較正する方法である。較正は、1つ又は複数の較正パラメータの決定を意味するものとされ、その一覧が以下に見られる。特に、特定の較正パラメータは、信頼性があると考えられ得、予め決定され得る。決定するものについては、それらが「現在の」値を有し、これらの値が適切な場合には修正されることを提供することが可能である。
【0046】
特に好ましい実施形態では、本方法はさらに、測定する手段20(走行距離計20a、20b)を較正するための方法であり得る、すなわちジャイロメータ11と走行距離計20a、20bとが同時に較正され得る。これは、極めて有利な実施形態である。なぜなら、もはや、ジャイロメトリを較正するための基準として使用するために、手段20の測定値(オドメトリ)が正しく較正されると仮定する必要もなくなり、両者は互いに自動的に較正するからである。代替的には、測定する手段20(走行距離計20a、20b)を正しく較正されたものとみなし、結果として、ジャイロメータ11を較正することは明らかに可能であり、これにより、例えば、ジャイロメータ11のより多くのパラメータを較正することができる。
【0047】
以下に示すように、有利な実施形態では、本方法は、車両1の動きを推定するための方法でさえある。すなわち、本方法は、較正に続いて、測定値を用いて、運動の1つ又は複数の成分を信頼性のある方法で推定することを含む。
【0048】
本方法は、強い加速を伴わない直線軌跡の場合(特許文献3に提案)に加えて、様々な曲がり及び加速を伴う軌跡の場合にも機能する。
【0049】
第1のステップ(a)では、この方法は、ジャイロメータ11による、
(外2)
で記述される、車両1の測定角速度と、測定する手段20による車両1の角速度を表す少なくとも1つの量のいわゆる測定値との取得を含む。オドメトリックの実施形態では、ステップ(a)は、より具体的には、前記車輪10a、10bの測定速度の、オドメータ20a、20bによる取得を含む。左車輪10a及び右車輪10bの好ましい例では、これらの速度はv及びvで記述される。
【0050】
これらの量は、車両1の運動の特徴的な時間、典型的には40ミリ秒と比較して、非常に小さいdtを用いてdtサンプリングで(すなわち、「dt」秒毎に)有利に測定される。
【0051】
ここで、「車両1の角速度」は、少なくともその垂直軸の周りである説明されると意味するものとみなされるが、他の軸に沿ったものも考慮され得る。
【0052】
ステップ(b)において、データ処理手段21は、車両1の第1の推定角速度と車両1の第2の推定角速度との間の差を最小化するジャイロメータ11を較正するための少なくとも1つのパラメータの値を決定する。
【0053】
このアイデアは、特に異なるデータを用いることによって、角速度を異なる方法で推定することである。理想的には、2つの推定値は一致し、そうでない場合、センサが再較正されなければならないことを意味する。
【0054】
一般に、ステップ(b)は、ジャイロメータ11を定期的に再較正するために繰り返し実施される。
【0055】
(外1)
で記述される車両1の第1の推定角速度は、ジャイロメトリから導かれる。これは、測定角速度及びジャイロメータ11を較正するためのパラメータの関数である。好ましくは、式
【数2】
によって測定角速度
(外2)
にリンクされ、ここでD及びbは、ジャイロメータ11を較正するためのパラメータである。より具体的には、Dはスケールファクタであり、bはバイアスである。当業者はさらに、必要に応じて、緯度に依存する、
(外2)
への地球の自転の影響を所望の精度で補正する方法を知っているであろう。
【0056】
三次元姿勢の場合、一般的な3×3行列=(正しい位置への通過の直交行列)×(スケールファクタと調整を含む上三角行列)である。ωが現時点における車両1の垂直軸周りの回転だけを記述する限りにおいては、この場合に方程式のみを明示的に定式化すれば十分である。好ましくは、Dは所定のものであり(実際には非常にわずかに変化する)、ジャイロメータ11について決定する唯一の較正パラメータは、実質的に経時的に変化する傾向を有する(ジャイロメータ11のドリフトとして知られる)bであると考えられる。
【0057】
より一般的には、一般的なエラーモデル:
【数6】
を考えることが可能であることが留意されるべきであり、ここでgは、必ずしも洗練されていない関数(アプリケーション)である。
【0058】
(外3)
で記述される車両1の第2の推定角速度は、他のタイプの測定、特にオドメトリから導かれる。オドメトリックの実施形態では、それは車輪10a、10bの測定速度と、走行距離計20a、20bを較正するパラメータと、場合により、較正パラメータの一部を形成しない車両の幾何学的パラメータの関数である。走行距離計を較正するためのパラメータは、車両1の物理的パラメータである。説明したように、車両1の後輪を考慮した好ましい実施形態では、車両1の第2の推定角速度
(外3)
は、
【数7】
のタイプの式によって左後輪10a及び右後輪10bそれぞれについての測定速度v,vにリンクされ、ここでdは車輪10a、10b間の距離である。例えば、2つの前輪をあげると、
【数8】
タイプの(第3)及びv(車両1の速度のノルム)とリンクする式のシステムを使用することができ、ここでaはアッカーマンステアリングジオメトリによる、車両のフロントアクスルとリアアクスルとの間の距離である。好ましくは、本説明の残りの部分では、最も単純な後輪の走行距離計20a、20bの場合が引き続き考慮される。
【0059】
この段階では測定値が考慮されない追加の走行距離計があり得ることに留意すべきである。例えば、3つの車輪が走行距離計を備えてもよく、2つのみの測定値がステップ(b)で使用され、第3の車輪の走行距離計の測定値は別個に使用することができる。以下参照。
【0060】
このモデルの欠陥を考慮に入れるために、車輪10a、10bの「実際の」半径(温度、年齢、圧力などの関数として変化する)を特徴付ける較正パラメータを、それを1のオーダーの係数で重み付けすることによって追加することが可能である。すなわち式においてvはαによって置き換えられ、vはαによって置き換えられる。2つより多い車輪を使用する場合は、多くの係数αが追加される。
【0061】
次いで、第2の推定角速度(後輪の場合)の式は
【数9】
になり、ここでα、α及びdは、ジャイロメータ11を較正するためのパラメータである。再度、距離dは予め決定されており(実際には非常にわずかに変化する)、走行距離計のために決定される唯一の較正パラメータはα及びαであると仮定することができる。
【0062】
従って、同時二重較正の特に好ましい実施形態では、決定するための3つの較正パラメータα、α及びbのみがある。この制限された数のパラメータは、車両1が「変化する」軌跡(時間の関数として変化する方向/速度)を有する瞬間からのこのような二重較正を可能にする。これは、特に、高速度及び/又は加速度の関数としてタイヤの変形及び欠陥の場合に有用である。米国特許第4788645号参照。
【0063】
有利には、ステップ(b)で最小化されるオブジェクトは、差
【数4】
であり、これは、
【数10】
によって好ましいモデルに反映される。この式の最小化は、一般的な軌跡に対してあいまいさなしにパラメータを与える。しかし、当業者であれば、
(外3)

(外1)
との間の差(ノルムL、Lなど)に感受性のある任意の他の関数を使用することが可能であることを理解するであろう。
【0064】
この最小化を実現するために、データ処理手段21は、所与の長さのインターバルにわたって経時的に動作し得る。この点に関して、既知の方法で、再帰フィルタ(RLS、再帰最小二乗法など)又は最適化(最小二乗法など)が使用され得る。
【0065】
エラーの特徴付け
好ましくは、この方法は、(ジャイロメータ11の)較正パラメータ上のエラーを表すパラメータを推定するステップ(c)をさらに含む。ステップ(c)は、ステップ(b)の各発生後に好ましくは実施される。
【0066】
このアイデアは、測定する手段20によって提供される情報の質を推定して、較正にとってあまり好ましくない場合、すなわち、スキッドの場合、強すぎる加速(例えば、強すぎるブレーキ又は曲がり)によるシャーシのあまりにも強い動き、又は重要なジオメトリの欠陥(例えば、タイヤの収縮)など、手段20に由来するデータが信頼できない場合を区別することである。この点に関し、前記パラメータの閾値との比較が実施され得る。
【0067】
したがって、エラーを表す前記パラメータが前記所定の閾値を超える場合、ステップ(b)は好ましい条件下では発生せず、較正の結果は受け入れられない。前者のキャリブレーションのパラメータは、キャリブレーションとして保持される。さらに、手段20の測定値(すなわち、オドメトリック測定値)を一時的に拒否することも可能である。換言すれば、エラーを表す前記パラメータが前記所定の閾値未満である場合、ステップ(c)は、ジャイロメータ11及び/又は車両1の角速度を表す前記少なくとも1つの量を測定する手段20の較正パラメータのステップ(b)で決定された値による実際の較正を含む。
【0068】
ステップ(b)の発生中の較正パラメータの決定された値は、実際の較正には使用されないが、データ記憶手段12に記憶され、ステップ(c)の将来の発生中に、使用され得ることに留意されたい。例えば、エラーを表すパラメータが閾値を超える限り、決定された較正パラメータが記憶され、エラーが閾値を下回る場合、実際の較正は、記憶された値も考慮に入れることを提供することができる。
【0069】
エラーの特徴付けは、車両1の走行状態を特定することをある方法で可能にすることと理解される。走行状態とは、車両1の運動の特徴付けを意味すると取られる。例えば、経験から、非常に強いダイナミクスを伴う時間間隔は、非常にタイトな曲がり又はハンプバックに典型であり、一般的に、車両1のスキッド又はシャーシに対する車両1のボディの動きの状況においては、オドメトリック測定値が適切でない可能性があることが知られている。反対に、あまり強くないが変化するダイナミクス(一方ではシャーシの動きの影響が無視できるか、十分な精度でモデル化可能であるように十分に軽微であるが、他方ではジャイロメータ11のバイアスだけでなく、スケールファクタの較正を容易にするように十分に顕著である直線加速度及び曲がり)は、「リッチな」データを提供する状況の典型である。
【0070】
車両は、実際には3つの異なる走行状態にさらされ得る:
- 強い加速度を伴わない直線:特許文献3で利用された走行状態。これは、「最もリッチ」ではなくても、本方法による較正には好ましいままである;
- タイトな曲がり(又は直線加速度):コースにはタイトな曲がりが含まれており、車両へのその影響は、良好な較正を得ることを可能にせず、そのような走行状態は概して却下される較正につながる;
- わずかな曲がり:コースには、ジャイロメータのスケールファクタを較正すること(望ましい場合)を可能にする曲がりが含まれているが、上記の現象が依然として無視できる、又は少なくともモデル化可能である(以下参照)ように、まだタイト過ぎない。本方法が利用を可能にするのは、実際には最も一般的で「最もリッチ」なこの走行状態であり、そのステップ(c)が特に選択する。
【0071】
一般に、較正パラメータ上のエラーを表す前記パラメータは、少なくとも、較正パラメータの決定された値に対して計算される前記第2の推定角速度と、第1の実施形態による第1の角速度(ジャイロ角速度)の値である、比較要素を示す「基準」角速度との関数である。
【0072】
ステップ(c)のこの第1の実施形態は、ステップ(b)で利用可能な量のみを使用するため、内因性と呼ばれる。好ましくは、ステップ(b)の推定残留物が使用される、すなわち、オドメトリックの場合、エラーを表す前記パラメータは、特に、所与の時間間隔にわたる
【数11】
のノルム(例えば、L又はL)である。このような場合、ステップ(c)は、ステップ(b)と同時に実施され得る。再帰フィルタの場合、所与の期間にわたるフィルタのイノベーションのノルム(L又はL)を使用することが可能である。
【0073】
外因性と呼ばれるステップ(c)の第2の実施形態では、特に別のタイプの量が使用される:
- 走行距離計が使用されている場合は、ステアリングホイール角、
- ステアリングホイール角が使用されている場合は、オドメトリ、
- GNSSデータ、例えばGPS(利用可能な場合/利用可能であるとき)、
- その他。
【0074】
当業者は、第2の推定角速度と比較するために、これらの量の一方又は他方に基づいて基準角速度をどのように計算するかを知っているであろう。
【0075】
前記理論的角速度は、ステップ(b)では使用されないオプションの車輪のオドメトリック情報を使用して得られることに留意されたい。すなわち、ステップ(a)は、第2と同様の方法で第3の推定角速度
(外3)
を得るために(車輪が単に変更され、第1の角速度のために使用される車輪は、第3の角速度のために再利用され得ることに留意されたい)、走行距離計を備える少なくとも1つの追加の車輪に対して、この走行距離計による追加の車輪の測定速度の取得を含み、較正パラメータ上のエラーを表す前記パラメータは、特に、与えられた時間間隔にわたる
【数12】
の平均である。
【0076】
代替的に、又は補足として、このエラーパラメータの推定を改善するために及び/又はよりロバストな方法で且つ可用性を増加させて、好ましい走行状態を特定するためのアプローチを開発するために、学習に頼ることが可能である。
【0077】
特に、ニューラルネットワーク、サポートベクトルマシン、最近傍法、デシジョンツリーフォレストなどの学習メカニズムを実装することが可能である。したがって、ステップ(b)及び(c)の各発生時に、学習ベースを充実させることが可能であり、各測定データセット(車両1の走行状態を記述する)は、許容可能な較正を許容されない較正から区別することを(ステップ(b)及び(c)の連続的な発生として)漸進的に且つ自動的に学習するために、エラーを表すパラメータの対応する値で「タグ付け」される。従って、較正は、恒久的にそれ自体を改善する。
【0078】
前述したように、エラーを表す前記パラメータが閾値よりも大きい(すなわち、較正の結果が受け入れられない)場合など、別のタイプのさらなる量が利用可能である場合、手段20によって測定された値を単純に棄却する代わりに、エラーを表すパラメータの異常に高い値の原因における混乱をモデル化し、補正することが可能であることに留意されたい。例えば:
- スキッドが、これらの補足データ(特に他の走行距離計に由来するもの)を用いて識別され得る;
- ボディの動きが推定され、したがって補償され得る(「従来の」ローリングピッチング推定器、PJ Bristeauの論文、“Techniques d’estimation du deplacement d’un vehicule sans GPS et autres exemples de conception de systemes de navigation MEMS (2012)“を参照)。
- タイヤの変形が、計算に組み込まれるようにモデル化され得る(特許文献2又は米国特許第4788645号を参照)。
【0079】
運動の推定
説明したように、本方法は有利には、データ処理手段21による、車両1の測定角速度及び/又は車両1の角速度を表す前記少なくとも1つの量の測定値(前記車輪10a、10bの測定速度)、並びにステップ(c)の結果に従って更新されるか又は更新されない、すなわち、適切な場合、実際の再較正の後の、較正パラメータの値の関数として前記車両1の運動を推定するステップ(d)を含む。ステップ(d)は、連続的に実施され得る。
【0080】
運動の推定は、特に、車両1の向きの推定(水平面における、すなわち、方位、車両の水平面は、地上水平面と実質的に一致すると仮定され得ること、又は少なくとも、当業者は、これらの2つの平面間の位置の差をどのように検出し、補正するかを知っていることに留意されたい)を意味し、有利には、速度ノルムの推定を意味するように取られる。向きは、典型的には、角速度の積分によって得られる。
【0081】
好ましくは、前記車両1の方位のデータ処理手段21による推定は、車両1の測定角速度及び較正パラメータの値の関数として、一意的に行われる。要約すると、ジャイロメータ11を較正するために別のタイプの(オドメトリック)情報が使用され、次いで、方位のみの推定のためにジャイロメトリック情報が使用される(これは、それが低速及び平坦でない地面上を含んで常に利用可能であるからである)。適切であれば、前記車輪10a、10bの測定速度(すなわち、オドメトリックデータ)は、特に、それらの平均を決定することによって、車両1の全体的な速度を決定するために、ステップ(d)でのみ使用される。
【0082】
ステップ(d)は、向き(方位)のジャイロメトリックエラーを較正するためのパラメータ上のエラーを表す前記パラメータの関数としての計算をさらに含み得る。例えば、較正後の期間にわたって蓄積される方位エラーは、バイアスの推定における不確かさにこの期間の持続時間を乗じて推定され得る。
【0083】
自動運転車両の場合、ステップ(d)は、車両1を例えば所望の目的地に運ぶか、又は障害物のない軌跡に滞在しながら車両1を停止させるように、推定された運動の関数としての前記車両1のコマンドの生成を含み得ることに留意されたい。
【0084】
機器及び車両
第2の態様によれば、本発明は、特に、本方法の実施形態のいずれかを実装するための機器11、20a、20b、21のアイテムのアセンブリに関する。
【0085】
このアセンブリは、それを変形させるように「従来の」車両1にキットとして取り付けられ得る。代替的には、車両1は、車両1のナビゲーションのためのデータ処理手段21、ならびにジャイロメータ11などのセンサ及び/又は走行距離計20a、20bなどの測定する手段20を既に備えている自動運転車両であり得る。
【0086】
特に、車輪付き車両1が提案されており、以下を含む:
- 車両1の測定角速度を取得するように構成されるジャイロメータ11;
- 車両1の角速度を表す少なくとも1つの量を測定する手段20であって、
前記少なくとも1つの量の測定値は車両1の角速度を表す、測定する手段20、すなわち、角度ステアリングホイールセンサ又は車輪のうちの少なくとも2つに装備された、前記2つの車輪10a、10bの測定速度を取得するように構成された走行距離計20a、20b;
- 車両1の第1の推定角速度と車両1の第2の推定角速度との間の差を最小化するジャイロメータ11を較正するための少なくとも1つのパラメータの値を決定するように構成されるデータ処理手段21、
〇 車両1の第1の推定角速度は、測定角速度及びジャイロメータ11を較正するためのパラメータの関数であり、
〇 車両1の第2の推定角速度は、車両1の角速度を表す前記少なくとも1つの量の測定値の関数である(好ましくは、車輪10a、10bの測定速度及び走行距離計20a、20bを較正するためのパラメータの関数である)。
【0087】
先に説明したように、車両1は、メモリ22及びインターフェース23、ならびに角度ステアリングホイールセンサ又はGNSS受信機などの他のセンサをさらに有し得る。
【0088】
さらに、データ処理手段21は、較正パラメータ上のエラーを表すパラメータを推定するように、及び/又は、車両1の測定角速度及び/又は車輪10a、10bの測定速度(もし適切であれば、エラーを表す前記パラメータの閾値との比較の結果にしたがって)、並びに、較正パラメータの値の関数として、前記車両1の運動を推定するように、さらに構成され得る。
【0089】
コンピュータプログラム製品
第3の態様及び第4の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様によるジャイロメータ11を較正する方法の実行(処理手段21上)のためのコード命令を含むコンピュータプログラム製品、並びにこのコンピュータプログラム製品が見つかるコンピュータ機器(例えば、データ記憶手段22)によって読取可能な記憶手段に関する。
図1
図2