(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】養子注入されたT細胞の持続性を増強する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20230907BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230907BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230907BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230907BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230907BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230907BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230907BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20230907BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2020549771
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 US2019023104
(87)【国際公開番号】W WO2019183181
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】102018108612.1
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520184664
【氏名又は名称】イマティクス ユーエス,アイエヌシー.
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】アルパート,アミール
【審査官】茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/168595(WO,A1)
【文献】特表2017-513891(JP,A)
【文献】Nicoletta Cieri et al.,IL-7 and IL-15 instruct the generation of human memory stem T cells from naive precursors.,Blood ,2013年01月24日,Vol.121, No.4,p.573-584,doi: 10.1182/blood-2012-05-431718
【文献】Saba Ghassemi et al.,Shortened T Cell Culture with IL-7 and IL-15 Provides the Most Potent Chimeric Antigen Receptor (CAR)-Modified T Cells for Adoptive Immunotherapy.,Mol. Ther.,2016年05月,Vol.24, Sup.1,S79,doi: 10.1016/S1525-0016(16)33012-X
【文献】Esther Cha et al.,IL-7 + IL-15 are superior to IL-2 for the ex vivo expansion of 4T1 mammary carcinoma-specific T cells with greater efficacy against tumors in vivo.,Breast Cancer Res. Treat.,2010年07月,Vol.122, No.2,p.359-369,doi: 10.1007/s10549-009-0573-0
【文献】Carolina Berger et al.,Adoptive transfer of effector CD8+ T cells derived from central memory cells establishes persistent T cell memory in primates.,J. Clin. Invest.,2008年01月,Vol.118, No.1,p.294-305,doi: 10.1172/JCI32103
【文献】Luis A. Matis et al.,Adoptive Immunotherapy of a syngeneic murine leukemia with a tumor-specific cytotoxic T cell clone and recombinant human interleukin 2: correlation with clonal IL 2 receptor expression.,J. Immunol.,1986年05月01日,Vol.136, No.9,p.3496-3501
【文献】Takamasa Yamazaki and Teruaki Sekine,Characterization of Immobilized Anti-CD3 Antibody-activated T Lymphocytes for Use in Adoptive Immunotherapy of Patients with Brain Tumors.,Neurol. Med. Chir. (Tokyo),1992年05月,Vol.32, No.5,p.255-261,doi: 10.2176/nmc.32.255
【文献】M. Montes et al.,Optimum in vitro expansion of human antigen-specific CD8+ T cells for adoptive transfer therapy.,Clin. Exp. Immunol.,2005年11月,Vol.142, No.2,p.292-302,doi: 10.1111/j.1365-2249.2005.02914.x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
A61K 35/17
A61P 35/00
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1人の個人から得られたT細胞を活性化するステップと、
(b)前記活性化T細胞の第1の部分を複数の増殖期間増殖させるステップと、
(c)21日間にわたり前記増殖されたT細胞を少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養するステップ
であって、前記少なくとも1つのサイトカインが、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン15(IL-15)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるステップと、
(d)継続的なサイトカイン刺激の非存在下で前記培養されたT細胞におけるサイトカイン応答を測定するステップと、
(e)最大サイトカイン応答をもたらす(b)の増殖期間を同定するステップと、
(f)前記活性化T細胞の第2の部分を最大サイトカイン応答をもたらす(e)で同定された増殖期間にわたり増殖させるステップと、および
(g)前記活性化T細胞の前記増殖された第2の部分を採取するステップ、
を含んでなる、T細胞を生産する方法。
【請求項2】
前記活性化T細胞の前記増殖された第1の部分を培養前に凍結するステップをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化T細胞の前記凍結された増殖された第1の部分を培養前に解凍するステップをさらに含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化T細胞の前記解凍された増殖された第1の部分を培養前に休止させるステップをさらに含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記T細胞が、抗CD3抗体および抗CD28抗体を含んでなる刺激因子によって活性化される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記最大サイトカイン応答が、ナイーブT細胞
、幹記憶T細胞
および/
または中央記憶
T細胞の
、増殖の増加、アポトーシスの減少、個体数の増加、
CD27+CD28+細胞数の増加、テロメア長の増加、テロメラーゼ活性の増加およびそれらの組み合わせの1つまたは複数から選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記得られたT細胞が、CD3
+CD8
+T細胞である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記休止がサイトカインの非存在下で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
(e)で同定された増殖期間が3日間~5日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記IL-2の濃度が、10U/ml~300U/mlである、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記IL-7の濃度が、0.1ng/ml~10ng/mlである、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記IL-15の濃度が、0.1ng/ml~10ng/mlである、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記活性化T細胞がT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されている、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記TCRが配列番号1~配列番号157から選択される1つのペプチドに結合する、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれの内容全体が参照により本明細書に援用される、2018年3月21日に提出された米国仮特許出願第62/646,180号明細書および2018年4月11日に提出された独国特許出願第102018108612.1号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、T細胞の有効性を改善する方法を提供する。一態様では、本開示は、養子細胞移入または治療(ACT)のためのT細胞の持続性を増強する方法をさらに提供する。本開示の方法を介して、養子注入されたT細胞の持続性を予測できるサイトカイン感受性アッセイ(CSA)および関連する方法が、さらに提供される。本開示は、それを必要とする対象においてがんを治療する方法、ならびに本明細書に記載される方法によって生産されるT細胞集団もまた提供する。
【背景技術】
【0003】
養子細胞移入または治療(ACT)は、患者への養子免疫伝達のための抗原特異的T細胞の生体外単離および増殖を伴う、免疫療法の一形態である。血液学的悪性疾患および黒色腫の治療では臨床的有用性が得られているものの、ACTの有効性は、生体内では移入されたT細胞が機能できず持続できないので、ほとんどの固形腫瘍の治療では一般に限定的である。腫瘍関連抗原(TAA)に対する耐性、および抑制的な腫瘍環境に起因する腫瘍特異的T細胞の阻害などの因子が、この失敗に寄与していてもよい。さらに、患者への注入に十分な数を得るために、腫瘍特異的T細胞を大規模に培養する必要性は、T細胞の質に大きな影響を及ぼし得る。
【0004】
T細胞の持続性はACTの有効性の推進力であると考えられ、T細胞の持続性/若い表現型を前臨床および臨床転帰に相関させる。培養T細胞を増強し、サイトカイン媒介シグナル伝達を介して表現型を調節するために、共通γ鎖(γc)-サイトカインIL-2がT細胞を増殖させる。高用量のIL-2はまた、ACT T細胞培養を増殖させるために使用されている。T細胞によるIL-2の強制発現は、生体外生存期間の長期化をもたらし、腫瘍の特異性および機能を維持する。しかしIL-2は、ACT使用法にとって好ましくない表現型をもたらすこともあるT細胞の分化を促進し得る。ACTのための生体外T細胞培養を最適化するために、IL-7、IL-15、およびIL-21などのその他のγc-サイトカインは、記憶T細胞の形成、増殖、および生存に役割を果たすが、T細胞のより低い分化度をもたらしながら、抗腫瘍応答をなおも増強できることが記載されている。
【0005】
米国特許第7,993,638号明細書は、活性化された細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を対象に投与するステップと;CTLの持続性に影響を及ぼす、インターフェロン-α-2bおよびインターロイキン-2(IL-2)をはじめとする、少なくとも2つのサイトカインを対象に投与するステップとを含む、がんの治療を必要とする対象を治療するための方法を列挙する。
【0006】
米国特許出願公開第2015/0017120号明細書は、ACTを与えられているがん患者に、移入された細胞の持続性を延長するのに有効な量で、増殖された薬物動態IL-2を投与するステップを含む、養子細胞療法(ACT)を受けているがん患者において、移入された細胞の持続性を延長し、移入された細胞の増殖を刺激し、または標的細胞集団に対するΤ細胞媒介免疫応答を刺激する方法を列挙する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
がん患者におけるACTの予後を改善する必要性が、なおもある。この技術的問題の解決策は、特許請求の範囲で特徴付けられる実施形態によって提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載されるように、本開示は、T細胞の有効性および生存率を改善する方法を提供する。
【0009】
本開示は、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人からT細胞を得るステップと、
T細胞を活性化するステップと、
活性化T細胞を活性化後に約3日間~約5日間増殖させるステップと、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人へ注入するために、増殖されたT細胞を採取するステップと
を含んでなる、養子免疫療法のための改善された有効性を有するT細胞を生産する方法をさらに提供し、約3~約5日間増殖されたT細胞の養子免疫療法のための有効性は、活性化後に約7日間以上増殖された活性化T細胞と比較して改善される。
【0010】
一態様では、本開示は、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人からT細胞を得るステップと、
T細胞を活性化するステップと、
活性化T細胞を活性化後に約3日間~約5日間増殖させるステップと、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人へ注入するために、増殖されたT細胞を採取するステップと
を含んでなる、T細胞の成長を増加させる方法を提供し、約3~約5日間増殖されたT細胞の成長は、活性化後に約7日間以上増殖された活性化T細胞の成長を超える。
【0011】
別の態様では、本開示は、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人からT細胞を得るステップと、
T細胞を活性化するステップと、
活性化T細胞を活性化後に約3日間~約5日間増殖させるステップと、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人へ注入するために、増殖されたT細胞を採取するステップと
を含んでなる、養子免疫療法で使用するためのT細胞の細胞死を減少させる方法を提供し、約3~約5日間増殖されたT細胞の細胞死は、活性化後に約7日間以上増殖された活性化T細胞の細胞死と比較して減少する。
【0012】
本開示は、T細胞が活性化後に約4日間増殖され、T細胞の養子免疫療法のための有効性が、活性化後に約7日間以上増殖された活性化T細胞の養子縁組免疫療法のための有効性を超える方法をさらに提供する。
【0013】
本開示は、T細胞が活性化後に約3日間増殖され、T細胞の養子免疫療法のための有効性が、活性化後に約6日間以上増殖された活性化T細胞の養子縁組免疫療法のための有効性を超える方法をさらに提供する。
【0014】
本開示は、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人からT細胞を得るステップと、
T細胞を活性化するステップと、
活性化T細胞をウイルスベクターで形質導入するステップと、
形質導入されたT細胞を活性化後に約3日間~約5日間増殖させるステップと、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人へ注入するために、形質導入されたT細胞を採取するステップと
を含んでなる、養子免疫療法のための改善された有効性を有するT細胞を生産する方法をさらに提供し、約3~約5日間増殖されたT細胞の養子免疫療法のための有効性は、活性化後に約7日間以上増殖された、活性化され形質導入されたT細胞と比較して改善される。
【0015】
一態様では、本開示は、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人からT細胞を得るステップと、
T細胞を活性化するステップと、
活性化T細胞を活性化後の第1の期間にわたり増殖させるステップと、
少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人へ注入するために、増殖されたT細胞を採取するステップと
を含んでなる、養子免疫療法のための改善された有効性を有するT細胞を生産する方法を提供し、活性化後の第1の期間にわたり増殖されたT細胞の養子免疫療法のための有効性は、活性化後の第2の期間にわたり増殖された活性化T細胞と比較して改善され、前記第1の期間は前記第2の期間より短い。
【0016】
一態様では、第1の期間は約2~約5日間で、前記第2の期間は約6日間~約10日間であり;第1の期間は約3~約5日間で、前記第2の期間は約7日間~約10日間であり;第1の期間は約2~約5日間で、前記第2の期間は約6日間~約14日間であり;第1の期間は約6日間未満で、前記第2の期間は約7日間を超える。
【0017】
一態様では、増殖されたT細胞は、CD4+および/またはCD8+T細胞である。
【0018】
別の態様では、増殖されたT細胞は、ナイーブT細胞(TN)および/または幹記憶T細胞(Tscm)/T中央記憶(Tcm)表現型を提示する。
【0019】
追加的な態様によれば、T細胞は刺激因子によって活性化される。
【0020】
別の態様では、刺激因子は、抗CD3抗体および抗CD28抗体を含んでなる。
【0021】
一態様では、本明細書に記載のT細胞は、がん治療を必要とする患者における養子免疫療法で使用され、がんは、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん(RCC)、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん、慢性リンパ球性白血病(CLL)、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、および子宮がん(UEC)からなる群から選択される。
【0022】
一態様では、本開示は、
少なくとも1人のドナー、患者、または個人からT細胞を得るステップと、
T細胞を活性化するステップと、
活性化T細胞の第1の部分を一定期間増殖させるステップと、
増殖されたT細胞を少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養するステップと、
培養されたT細胞におけるサイトカイン応答を測定するステップと、
最大サイトカイン応答をもたらす期間を同定するステップと、
活性化T細胞の第2の部分を最大サイトカイン応答をもたらす期間にわたり増殖させるステップと
を含んでなる、T細胞生存率を評価するアッセイを提供する。
【0023】
本開示は、
少なくとも1人のドナー、患者、または個人からT細胞を得るステップと、
T細胞を活性化するステップと、
活性化T細胞の第1の部分を時間をかけて増殖させるステップと、
増殖されたT細胞を少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養するステップと、
培養されたT細胞におけるサイトカイン応答を測定するステップと、
最大サイトカイン応答をもたらす期間を同定するステップと、
活性化T細胞の第2の部分を最大サイトカイン応答をもたらす期間にわたり増殖させるステップと
を含んでなる、T細胞を生産する方法をさらに提供する。
【0024】
一態様では、T細胞は、少なくとも1人の健常ドナー、患者、または個人から得られる。別の態様では、T細胞は、少なくとも1人のがんのないドナー、患者、または個人から得られる。
【0025】
一態様では、T細胞は、治療される患者にとって同種異系である。別の態様では、T細胞は、治療される患者にとって自己由来である。
【0026】
一態様では、本開示は、活性化T細胞の増殖された第1の部分を培養前に凍結することを提供する。
【0027】
別の態様では、本開示は、活性化T細胞の冷凍された増殖された第1の部分を培養前に解凍することを提供する。
【0028】
なおも別の態様では、本開示は、活性化T細胞の解凍された増殖された第1の部分を培養前に休止させることを提供する。
【0029】
別の態様では、本開示は、活性化T細胞をウイルスベクターまたは非ウイルスベクターで増殖前に形質導入することを提供する。
【0030】
本明細書に記載の一態様では、ベクターは、T細胞受容体(TCR)を発現するレトロウイルスベクター、またはT細胞受容体(TCR)を発現するレンチウイルスベクターなどのウイルスベクター、またはTCRを発現するリポソームなどの非ウイルスベクターであってもよい。
【0031】
一態様では、T細胞増殖は、活性化後約1日間~約15日間、約2日間~約14日間、約3日間~約13日間、約3日間~約12日間、約3日間~約11日間、約3日間~約10日間、約3日間~約9日間、約3日間~約8日間、約3日間~約7日間、約3日間~約6日間、約3日間~約5日間、約3日間~約4日間、約4日間~約6日間、または約4日間~約5日間測定される。
【0032】
一態様では,少なくとも1つのサイトカインは、(インターロイキン)IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0033】
別の態様では、IL-2の濃度は、約10U/ml~約500U/ml、約10U/ml~約450U/ml、約10U/ml~約400U/ml、約10U/ml~約350U/ml、約10U/ml~約300U/ml、約10U/ml~約250U/ml、約10U/ml~約200U/ml、約10U/ml~約150U/ml、約10U/ml~約100U/ml、約10U/ml~約50U/ml、約20U/ml~約40U/ml、約25U/ml~約35U/ml、または約30U/ml~約35U/mlである。
【0034】
別の態様では、本明細書で提供されるIL-7の濃度は、0.1ng/ml~50ng/ml、0.1ng/ml~45ng/ml、0.1ng/ml~40ng/ml、0.1ng/ml~35ng/ml、0.1ng/ml~30ng/ml、0.1ng/ml~25ng/ml、0.1ng/ml~20ng/ml、0.1ng/ml~15ng/ml、0.1ng/ml~10ng/ml、0.1ng/ml~5ng/ml、0.1ng/ml~4ng/ml、0.1ng/ml~3ng/ml、0.1ng/ml~2ng/ml、0.1ng/ml~1ng/ml、または0.1ng/ml~0.5ng/mlである。
【0035】
別の態様では、IL-15の濃度は、0.1ng/ml~50ng/ml、0.1ng/ml~45ng/ml、0.1ng/ml~40ng/ml、0.1ng/ml~35ng/ml、0.1ng/ml~30ng/ml、0.1ng/ml~25ng/ml、0.1ng/ml~20ng/ml、0.1ng/ml~15ng/ml、0.1ng/ml~10ng/ml、0.1ng/ml~5ng/ml、0.1ng/ml~4ng/ml、0.1ng/ml~3ng/ml、0.1ng/ml~2ng/ml、0.1ng/ml~1ng/ml、または0.1ng/ml~0.5ng/mlである。
【0036】
本開示は、サイトカイン応答が、ナイーブT細胞(TN)および/または幹記憶T細胞(Tscm)/T中央記憶(Tcm)の増殖の増加、アポトーシスの減少、個体数の増加、およびそれらの組み合わせの1つまたは複数から選択される方法をさらに提供する。
【0037】
一態様では、休止ステップは、約0.5時間~約48時間、約0.5時間~約36時間、約0.5時間~約24時間、約0.5時間~約18時間、約0.5時間~約12時間、約0.5時間~約6時間、約1時間~約6時間、約2時間~約5時間、約3時間~約5時間、または約1時間~約24時間、約2~約24時間、約12~約48時間、約0.5時間~約120時間、約0.5時間~約108時間、約0.5時間~約96時間、約0.5時間~約84時間、約0.5時間~約72時間、または約0.5時間~約60時間内に実行される。
【0038】
本開示によると、一態様では、抗CD3抗体および抗CD28抗体は、それぞれ、約0.1μg/ml~約10.0μg/ml、約0.1μg/ml~約8.0μg/ml、約0.1μg/ml~約6.0μg/ml、約0.1μg/ml~約4.0μg/ml、約0.1μg/ml~約2.0μg/ml、約0.1μg/ml~約1.0μg/ml、約0.1μg/ml~約0.8μg/ml、約0.1μg/ml~約0.6μg/ml、約0.1μg/ml~約0.5μg/ml、約0.1μg/ml~約0.25μg/ml、約0.2μg/ml~約0.5μg/ml、約0.2μg/ml~約0.3μg/ml、約0.3μg/ml~約0.5μg/ml、約0.3μg/ml~約0.4μg/ml、または約0.4μg/ml~約0.5μg/mlの濃度を有する。
【0039】
別の態様では、活性化は、約1時間~約120時間、約1時間~約108時間、約1時間~約96時間、約1時間~約84時間、約1時間~約72時間、約1時間~約60時間、約1時間~約48時間、約1時間~約36時間、約1時間~約24時間、約2時間~約24時間、約4時間~約24時間、約6時間~約24時間、約8時間~約24時間、約10時間~約24時間、約12時間~約24時間、約12時間~約72時間、約24時間~約72時間、約6時間~約48時間、約24時間~約48時間、約6時間~約72時間、または約1時間~約12時間内に実行される。
【0040】
一態様では、本明細書に記載される方法によって得られるT細胞は、CD3+CD8+T細胞である。
【0041】
一態様では、本開示は、本明細書に記載される方法と、方法ステップとを用いて、T細胞の生存率を評価する方法を提供する。一態様では、本明細書に記載される方法は、インビトロ法ステップのみを含む。その他の態様では、本明細書に記載される方法は、インビボ法ステップを含まない。なおも別の態様では、本明細書に記載される方法は、生体外および生体内で実施される方法ステップの組み合わせを含む。
【0042】
一態様では、本明細書に記載される方法は、例えば、遺伝子組換えマウスなどの遺伝子組換え動物の使用による、分析または評価を含まない。なおも別の態様では、本明細書に記載される方法は、例えば、遺伝子組換えマウスなどの遺伝子組換え動物の使用が関与する方法よりも迅速に、T細胞産生および/またはT細胞生存のための条件を判定できる。
【0043】
別の態様では、本明細書に記載される方法は、それを必要とする患者または対象への注入のために利用できる、生存可能なT細胞を提供する。その他の態様では、本明細書に記載される方法は、生体外で実施され、生体内結果を叙述する。その他の態様では、本開示は、輸液のためのT細胞の生体内生存率を予測する、高スループット生体外アッセイを提供する。
【0044】
一態様では、本明細書は、養子注入されたT細胞の持続性を予測できるサイトカイン応答(CR)アッセイ、および関連する方法を提供する。一態様では、本明細書は、サイトカインに応答する能力、および継続的なサイトカイン刺激の非存在下で生存する能力に対する、生体外増殖の長さの影響を測定できる、サイトカイン感受性アッセイを提供する。
【0045】
別の態様では、高スループットインビトロ法を利用することによって、本明細書に記載される方法を用いて、どのタイプのT細胞が生体内で持続するかが判定されてもよい。
【0046】
本明細書で記載され生産されたT細胞を含んでなる医薬組成物が、さらに提供される。別の態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、またはその塩を含む。
【0047】
本明細書に記載される方法によって生産されたT細胞集団は、本開示を介してさらに提供される。一態様では、T細胞は操作されたT細胞である。
【0048】
一態様では、本明細書は、
複数の増殖期間で増殖された凍結保存T細胞を解凍するステップと、
解凍されたT細胞をサイトカインの非存在下で休止させるステップと、
休止したT細胞を播種するステップと、
播種されたT細胞を少なくとも1サイクル期間培養するステップと
を含んでなる、固形腫瘍におけるT細胞の生体内持続性を予測する方法を提供し、
少なくとも1サイクル期間の開始時に、1つまたは複数のサイトカインが培養に添加され、
少なくとも1サイクル期間の終了時に、添加された1つまたは複数のサイトカインが枯渇し、
少なくとも1サイクル期間中に、培養されたT細胞が複数の時点で試料採取され、
試料採取されたT細胞のサイトカイン応答が測定され、
複数の増殖期間から、試料採取されたT細胞が最大サイトカイン応答を提示する増殖期間が同定され、
同定された増殖期間にわたって増殖されたT細胞が、固形腫瘍を治療するための組成物に製剤化される。
【0049】
別の態様では、複数の増殖期間は、活性化後約1日間~約15日間、約2日間~約14日間、約3日間~約13日間、約3日間~約12日間、約3日間~約11日間、約3日間~約10日間、約3日間~約9日間、約3日間~約8日間、約3日間~約7日間、約3日間~約6日間、約3日間~約5日間、約3日間~約4日間、約4日間~約6日間、または約4日間~約5日間である。
【0050】
別の態様では、1サイクル期間は、サイクル当たり1~10日間、サイクル当たり2~10日間、サイクル当たり3~10日間、サイクル当たり4~10日間、サイクル当たり5~10日間、サイクル当たり6~10日間、サイクル当たり7~10日間、サイクル当たり8~10日間、またはサイクル当たり9~10日間である。
【0051】
別の態様では、少なくとも1サイクル期間は、1サイクル期間、2サイクル期間、3サイクル期間、4サイクル期間、5サイクル期間、6サイクル期間、7サイクル期間、8サイクル期間、9サイクル期間、または10サイクル期間である。
【0052】
別の態様では、固形腫瘍は、肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん(CRC)、神経膠芽腫(GB)、胃がん(GC)、食道がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん(PC)、腎細胞がん(RCC)、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺がん(PCA)、卵巣がん(OC)、黒色腫、乳がん、メルケル細胞がん(MCC)、小細胞肺がん(SCLC)、胆嚢がんおよび胆管がん(GBC、CCC)、膀胱がん(UBC)、および子宮がん(UEC)からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】T細胞アポトーシス(例えば、再刺激誘発性細胞死(RICD)およびサイトカイン離脱誘発性細胞死(CWID)、および記憶形成を示す。(その内容全体が本明細書に参照により援用される、Voss et al.,Cancer Letters 408(2017)190-196)。
【
図2】それぞれ内因的または外因的アポトーシス経路を阻害することによる、液体腫瘍および固形腫瘍を標的とするACTにおける生体内T細胞生存のモデルを示す。
【
図3】それぞれ連続殺滅アッセイまたはサイトカイン感受性アッセイによる、液体腫瘍および固形腫瘍を標的とするACTにおける生体内T細胞生存試験のモデルを示す。
【
図4】本開示の一実施形態による、サイトカイン感受性アッセイを示す。
【
図5】CD45RO(低)およびCCR7+によって特徴付けられる、生体外増殖中のT
scm様形成を示す。
【
図6】初期の増殖されたT
scmが、アッセイにおいて21日間にわたりIL-15サイトカイン感受性を維持することを示す。
【
図7】初期の増殖された細胞(約4日間の増殖)が、7日目および10日日目での増殖と比較して、細胞成長の増加を実証することを示す。グラフの下のラベルは、使用されたサイトカインの量を表す。線形二次ライン適合が、細胞の挙動をモデル化するために用いられる。4、7、または10日間増殖されたT細胞は、21日間かけて2~3日毎に試料採取され、10ng/mlのIL-7(A)、10ng/mlのIL-15(B)、または300U/mlのIL-2(C)の存在下で評価された。増殖倍数は、指定された時点でのT細胞数に対する開始T細胞数の比率として計算される。各プロットは、データの可視化を容易にするために、Y軸上に異なるスケールを有することに留意されたい。最良適合ラインは、細胞生存率の線形二次方程式によって導出される。
【
図8-1】
図8A~C:T細胞の生体外増殖の短縮(約4日間の増殖)が、7日目および10日目での増殖と比較して、より高いサイトカイン濃度での生存率の増加と相関することを示す。4、7、または10日間増殖されたT細胞は、21日間かけて2~3日毎に試料採取され、300U/mlのIL-2(A)、10ng/mlのIL-7(B)、10ng/mlのIL-15(C)の存在下で評価された。統合生存率は、
図7A~7Cに示されるように、増殖倍数プロットの曲線下面積である。それぞれの点は各ドナーの3つの技術的複製物を表し、合計3人のドナーが示される。
図8D~F:形質導入されたT細胞の生体外増殖の短縮が、より高いサイトカイン濃度での生存率の増加と相関することを示す。
【
図9-1】T細胞の生体外増殖の短縮が、より低いサイトカイン濃度での生存率の増加と相関することを示す。
【
図10】T細胞の生体外増殖の短縮が、アポトーシスの減少と相関することを示す。
【
図11-1】T細胞の生体外増殖の短縮が、より高いサイトカイン濃度でのアポトーシスの減少と相関することを示す。4、7、または10日間増殖されたT細胞は、21日間かけて2~3日毎に試料採取され、300U/mlのIL-2(A)、10ng/mlのIL-7(B)、または10ng/mlのIL-15(C)の存在下で評価された。統合アポトーシスは、アッセイの10日目までにヨウ化プロピジウムおよびアネキシンVについて陽性に染色された、リンパ球の百分率に基づいて計算される。それぞれの点は各ドナーの3つの技術的複製物を表し、合計3人のドナーが示される。
【
図12】T細胞の生体外増殖の短縮が、アポトーシスの減少と相関することを示す。
【
図13】T細胞の生体外増殖の短縮が、(A)IL-7、(B)IL-15、および(C)IL-2の存在下での細胞分裂の増加と相関することを示す。
【
図14-1】形質導入されたT細胞の生体外増殖の短縮が、より高いサイトカイン濃度での細胞分裂の増加と相関することを示す。4、7、または10日間増殖されたT細胞は、21日間かけて2~3日毎に試料採取され、300U/mlのIL-2(A)、10ng/mlのIL-7(B)、10ng/mlのIL-15(C)の存在下で評価された。統合分裂は、アッセイの10日目までにPkH67の検出可能な希釈が検出されたリンパ球の百分率に基づいて、計算される。それぞれの点は各ドナーの3つの技術的複製物を表し、合計3人のドナーが示される。
【
図15】T細胞の生体外増殖の短縮が、(A)IL-7、(B)IL-15、および(C)IL-2に対する感受性の増加と相関することを示す。
【
図16】
図16A~C:形質導入されたT細胞の生体外増殖の短縮が、より高いサイトカイン濃度での細胞分裂の増加と相関することを示す。
図16D:形質導入されたT細胞の生体外増殖の短縮が、CD25発現の増加と相関することを示す。
【
図17】IL-2の存在下でのIL-2受容体(CD25)の発現と、生存率/分裂との間の相関関係を示す。
【
図18】IL-15の存在下でのIL-15受容体(CD122)の発現と、生存率/分裂との間の相関関係を示す。
【
図19】IL-7の存在下でのIL-7受容体(CD127)の発現と、生存率/分裂との間の相関関係を示す。
【
図20】T細胞の生体外増殖の短縮が、T細胞ポテンシャルを維持することを示す。(その内容全体が本明細書に参照により援用される、Voss et al.,Cancer Letters 408(2017)190-196)。
【
図21】
図21A:細胞記憶コンパートメントが、21日間の培養期間中、0日目と7日目毎のフローサイトメトリーによって測定されたことを示す。T
naive/scm=CCR7+CD45RO-、T
cm=CCR7+CD45RO+、T
em=CCR7-CD45RO+、およびT
eff=CCR7-CD45RO-。
図21B:供試細胞が培養開始時にPkH増殖色素で標識され、異なる記憶コンパートメントでの増殖が、培養期間7日目までにPkHの希釈率に基づいて測定されたことを示す。
【
図22】CD3/CD28 T細胞増殖中のテロメア長の継続的な損失を示す。相対的テロメア長は、4人の健常ドナー(D1~D4)における腫瘍細胞株対照と比較して、蛍光原位置ハイブリダイゼーションによって評価された。それぞれのサンプル点は、技術的複製の反復試験を表す。ドナーの年齢:D1:50歳、D2:31歳、D3:49歳、およびD4:45歳。
【
図23】CD3/CD28 T細胞増殖の長期化に伴う、テロメラーゼ活性の低下を示す。テロメラーゼ活性は、T細胞増殖の4、7、または10日目から採取された細胞の細胞溶解産物から、ELISAに基づく比色アッセイを介して測定された。それぞれの点は、合計5つの生物学的複製物からの技術的三連サンプルを表す。
【
図24】3人の生物学的ドナーD4、D5、およびD6からのCD3/CD28製造中のT細胞分化を示す。代表的なPBMCが培養され、次に、示された増殖日に、フローサイトメトリーによって表現型同定された。記憶表現型は、CD45ROおよびCCR7発現に基づいて定義される;T
naive/scm=CD45RO-CCR7+、T
cm=CD45RO+CCR7+、T
em=CD45RO+CCR7-、およびT
emra=CD45RO-CCR7-。
【
図25】3人の生物学的ドナーD1、D7、およびD8からのCD3/CD28製造中の共刺激の損失を示す。CD27およびCD28発現は、T細胞増殖期間中の4、7、および10日目に、フローサイトメトリーを介して評価された。
【
図26】より後期の増殖された細胞と比較して、より初期の増殖された細胞のクラスターを独特のクラスターとして同定する、差次的遺伝子発現分析を示す。3人の生物学的ドナー(D4、D5、およびD6)は、4、7、または10日間増殖され、次に全RNAが単離され、RNA配列決定分析およびバイオインフォマティクスのためにNovogeneに送付された。
【
図27-1】T細胞製造中のRNAseq分析を示す。T細胞製造中のRNAseqデータを(A)4日目対7日目、(B)4日目対10日目、および(C)7日目対10日目で比較した、火山型プロット表示。DEGカットオフは、0.05未満のpadj値で1倍上または下に設定された。DEGの数は、各プロットのキーに示される。
【
図28-1】T細胞製造中のKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)経路解析を示す。左側パネルは、サンプル間で上方制御される経路を示す。右側パネルは、サンプル間で下方制御される経路を示す。各上方制御または下方制御について、より後の時点が参照される(すなわち、day_7とday_4_downは、7日目のサンプルと4日目のサンプルにおいて下方制御された経路を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本明細書に記載されるように、本開示は、T細胞の有効性および生存率を改善する方法を提供する。
【0055】
本明細書に記載の一態様では、最小限に増殖された操作されたT細胞は、ナイーブ性および生体内での増殖および持続能力の増大のために、生体外で延長された期間増殖されたT細胞と比較して、より大きな臨床的有効性を実証する。一態様では、最小限に増殖された操作されたT細胞は、約7~約10日間の延長された発現と比較して、約3~約5日間増殖される。
【0056】
本明細書に記載の一態様では、約3~約5日間のより短い増殖期間を有するT細胞は、1)増殖、2)アポトーシスの減少、および3)同一方法であるが延長された約7~約10日間の増殖期間で生産されたT細胞に優る持続性によって、サイトカイン応答の増加を提示する。
【0057】
一態様では、養子細胞移入または治療法(ACT)は、細胞がドナーから取り出され、生体外で培養および/または操作され、疾患の治療のために患者に投与される、治療方法を含んでなる。いくつかの実施形態では、移入された細胞は自己由来細胞であってもよく、これは、患者が自らのドナーの役割を果たすことを意味する。いくつかの実施形態では、移入された細胞は、例えば、T細胞などのリンパ球であってもよい。いくつかの実施形態では、移入された細胞は、患者への投与前に遺伝子改変されてもよい。例えば、移入された細胞は操作されて、関心のある抗原に対する特異性を有するT細胞受容体(TCR)を発現し得る。一実施形態では、移入された細胞は操作されて、キメラ抗原受容体(CAR)を発現してもよい。特定の実施形態では、移入された細胞は操作されて(例えば、形質移入またはコンジュゲーションによって)、サイトカイン(IL-2、IL-12)、抗アポトーシス分子(BCL-2、BCL-X)、またはケモカイン(CXCR2、CCR4、CCR2B)などの細胞の抗腫瘍活性を促進する分子を発現してもよい。特定の実施形態では、移入された細胞は操作されて、CARと、抗腫瘍活性または細胞の持続性を促進する分子との双方を発現してもよい。
【0058】
一態様では、本開示は、最小限に増殖されたT細胞をがん対象に投与することによって、養子細胞移入または治療法(ACT)の予後が改善され得る方法に関する。
【0059】
治療方法
一態様では、本明細書に記載の増殖された操作されたT細胞は、異常なアポトーシスまたは分化プロセス(例えば、がんなどの細胞の増殖障害または細胞の分化障害)に関連した障害を治療するのに有用である。本発明の方法を用いた治療に適していてもよいがんの非限定的例が、以下に記載される。
【0060】
細胞の増殖および/または分化障害の例としては、がん(例えば、がん腫、肉腫、転移性障害、または例えば白血病などの造血性新生物障害)が挙げられてもよい。転移性腫瘍は、前立腺、結腸、肺、乳房、および肝臓の腫瘍をはじめとするが、これに限定されるものではない、多数の原発腫瘍型から発生し得る。したがって、本開示の組成物(例えば、最小限に生体外で増殖された操作されたT細胞)は、がんを有する患者に投与され得る。
【0061】
本明細書の用法では、「がん」(または「がん性」)、「過剰増殖性」、および「新生物性」という用語は、自律的増殖能力(すなわち、急速に増殖する細胞成長によって特徴付けられる異常な状態または病状)を有する細胞を指すために使用されてもよい。過剰増殖性および新生物性疾患状態は、病理的(すなわち、病態を特徴付けまたは構成する)として分類されてもよく、またはそれらは、非病的として(すなわち、正常からの逸脱であるが、病態とは関連していないとして)分類されてもよい。この用語は、組織病理学的タイプまたは侵襲段階にかかわりなく、全てのタイプのがん性増殖または発がんプロセス、転移組織または悪性に形質転換した細胞、組織、または器官が含むことが意図される。「病的過剰増殖性」細胞は、悪性腫瘍増殖によって特徴付けられる疾患状態で発生してもよい。非病的過剰増殖性細胞の例としては、創傷修復に関連した細胞の増殖が挙げられてもよい。
【0062】
「がん」または「新生物」という用語は、肺、乳房、甲状腺、リンパ腺およびリンパ組織、胃腸器官、および尿生殖路に影響を及ぼすものをはじめとする、様々な器官系の悪性腫瘍を指すために、ならびにほとんどの結腸がん、腎細胞がん、前立腺がんおよび/または精巣腫瘍、肺の非小細胞がん、小腸がん、および食道がんなどの悪性腫瘍を含むと一般に考えられる腺がんを指すために、使用されてもよい。発明の方法に関して、がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門または肛門管または肛門直腸のがん、眼がん、肝内胆管がん、関節がん、頸部または胆嚢または胸膜のがん、鼻または鼻腔または中耳のがん、外陰部がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、子宮頸がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、腹膜および網および腸間膜のがん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、軟部組織がん、精巣がん、甲状腺がん、尿管がん、膀胱がん、および例えば、食道がん、胃がん、膵臓がん、胃がん、小腸がん、消化管カルチノイド腫瘍などの消化管がん、口腔がん、結腸がん、および肝胆道がんのいずれかをはじめとする、任意のがんであり得る。
【0063】
「がん腫」という用語は、呼吸器系がん腫、消化器系がん腫、泌尿生殖器系がん腫、精巣がん腫、乳がん腫、前立腺癌、内分泌系がん腫、および黒色腫をはじめとする、上皮または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。例示的ながん腫としては、子宮頸部、肺、前立腺、乳房、頭頸部、結腸、および卵巣組織から形成するものが挙げられる。この用語には、がん性肉腫および肉腫性組織からなる悪性腫瘍をはじめとする、がん肉腫もまた含まれてもよい。「腺がん」は、腺組織に由来するがん腫、またはその中で腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成するがん腫を指す。
【0064】
増殖障害の追加的な例としては、造血性新生物障害が挙げられてもよい。本明細書の用法では、「造血性新生物障害」という用語は、例えば、骨髄系、リンパ系または赤血球系、またはそれらの前駆細胞から生じる、造血器起源の過形成細胞/新生物細胞を伴う疾患を含んでもよい。好ましくは、疾患は、不十分に分化した急性白血病(例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病)から生じてもよい。追加的な例示的骨髄性障害としては、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus,L.(1991)Crit.Rev.in Oncol./Hemotol.11:267-97で概説される);B系統ALLおよびT系統ALL、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛細胞白血病(HLL)およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を含めた、急性リンパ芽球性白血病(ALL)をはじめとするが、これらに限定されないリンパ系悪性腫瘍が挙げられてもよいが、これらに限定されない。悪性リンパ腫の追加的な形態としては、非ホジキンリンパ腫およびその変異型、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病、およびリード・シュテルンベルク病が挙げられてもよいが、これらに限定されない。
【0065】
最小限に増殖された操作されたT細胞の量は、腫瘍の増殖およびサイズを減少させるのに十分であること、または治療的有効量は、特定の選択された組成物だけでなく、投与経路、治療される病状の性質、および患者の年齢および病状によっても変動してよく、最終的には、患者の医師または薬剤師の裁量となることが、当業者によって理解されるであろう。本方法において、使用される最小限に増殖された操作されたT細胞が与えられる時間の長さは、個々のベースで変化する。治療法に関する本明細書における参照は、表記されるがんおよび症状の予防法ならびに治療法に及ぶことが、当業者によって理解されるであろう。
【0066】
「T細胞」または「Tリンパ球」という用語は、胸腺細胞、ナイーブTリンパ球、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含んでもよい。特定の実施形態で使用するのに適した例示的なT細胞集団としては、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、または任意のその他のT細胞のサブセットが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態で使用するのに適したその他の例示的なT細胞集団としては、マーカー:CD3、CD4、CD8、CD27、CD28、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD127、CD197、およびHLA-DRの1つまたは複数を発現するT細胞が挙げられるが、これらに限定されず、所望ならば、正または負の選択技術によってさらに単離され得る。
【0067】
末梢血単核細胞(PBMC)は、丸い核を有する任意の血液細胞(すなわち、リンパ球、単球、またはマクロファージ)を指す。これらの血球は、感染症と戦い、侵入者に適応するための免疫系の重要な構成要素である。リンパ球集団は、CD4+およびCD8+T細胞、B細胞およびナチュラルキラー細胞、CD14+単球、および好塩基球/好中球/好酸球/樹状細胞からなる。これらの細胞は、血液の層を分離して血漿の層の下に単球およびリンパ球がバフィーコーを形成する親水性多糖類であるFICOLL(商標)を使用して、全血またはleukopacksから分離されることが多い。一実施形態では、「PBMC」は、少なくともT細胞、および任意選択的にNK細胞、および抗原提示細胞を含んでなる、細胞集団を指す。
【0068】
「活性化」という用語は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されている、T細胞の状態を指す。特定の実施形態では、活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能に付随し得る。「活性化T細胞」という用語は、とりわけ、増殖中のT細胞を指す。T細胞の完全な活性化には、TCRを介して生成されたシグナルだけでは不十分であり、1つまたは複数の二次的シグナルまたは共刺激シグナルもまた必要である。したがって、T細胞活性化は、TCR/CD3複合体を介した一次刺激シグナルと、1つまたは複数の二次的共刺激シグナルとを含んでなる。共刺激は、CD3/TCR複合体を介したまたはCD2を介した刺激などの一次活性化シグナルを受信したT細胞による、増殖および/またはサイトカイン産生によって証明され得る。
【0069】
本明細書の用法では、休止T細胞は、分裂していないか、またはサイトカインを産生していないT細胞を意味する。休止T細胞は、活性化T細胞(およそ12~15ミクロン)と比較して、サイズが小さい(およそ6~8ミクロン)。
【0070】
本明細書の用法では、プライミングされたT細胞は、少なくとも一度は以前に活性化されており、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、少なくとも約108時間、または少なくとも約120時間にわたり活性化刺激から除去されている、休止T細胞である。代案としては、休止は、約0.5時間~約120時間、約0.5時間~約108時間、約0.5時間~約96時間、約0.5時間~約84時間、約0.5時間~約72時間、約0.5時間~約60時間、約0.5時間~約48時間、約0.5時間~約36時間、約0.5時間~約24時間、約0.5時間~約18時間、約0.5時間~約12時間、約0.5時間~約6時間、約1時間~約6時間、約2時間~約5時間、約3時間~約5時間、または約4時間~約5時間内に実行されてもよい。プライミングされたT細胞は、通常は記憶表現型を有する。
【0071】
本開示の実施形態は、例えば、IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、またはIL-7+IL-15などのそれらの組み合わせなどのサイトカイン非存在下でのまたはサイトカイン存在下での、例えば約4~約6時間など、約0.5時間~約48時間、約0.5時間~約36時間、約0.5時間~約24時間、約0.5時間~約18時間、約0.5時間~約12時間、約0.5時間~約6時間、約1時間~約6時間、約2時間~約5時間、約3時間~約5時間、約4時間to6時間、約1時間~約24時間、約2~約24時間、約12~約48時間、約0.5時間~約120時間、約0.5時間~約108時間、約0.5時間~約96時間、約0.5時間~約84時間、約0.5時間~約72時間、または約0.5時間~約60時間にわたる休止を含んでもよい。
【0072】
適応免疫応答中および応答後の双方における、リンパ球の制御された増殖および縮小は、健康な免疫系を維持するために不可欠であってもよい。リンパ球アポトーシスの外因的経路と内因的経路の双方をプログラムして、適切な時間で細胞が排除され、免疫恒常性が確保されてもよい。このリンパ球アポトーシス障壁なしでは、活性化リンパ球の長期持続性および/または抑制されない蓄積が、免疫病理学、自己免疫、およびリンパ系がんをもたらし得る。
【0073】
図1は、ほとんどの体細胞と同様に、ナイーブおよび記憶T細胞が一般に静止状態の代謝状態で動作し、ATP生成のためにミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)を利用することを示す。しかし、T細胞受容体(TCR)刺激に続いて、応答中のT細胞は、酸素の存在下でも解糖を使用するように急速に切り替わる(ワールブルク効果)。活性化T細胞は増殖されて、解糖代謝と関連してもよい、強力なエフェクター機能を獲得してもよい(例えば、IFN-γ産生)。T細胞応答の過程における細胞代謝のこれらの変化は、記憶の生成をはじめとする、細胞の生存および分化に大きな影響を及ぼしてもよい。しかし、増殖および好気的解糖のこのウィンドウの間に、エフェクターT細胞は、再刺激誘発性細胞死(RICD)に対して感受性になってもよい。
【0074】
再刺激誘発性細胞死(RICD)は、感染中にエフェクターT細胞の増殖の上限を最終的に設定してもよい、アポトーシスプログラムである。RICD感受性は、先行する活性化;IL-2などのサイトカインを介した細胞周期誘導;およびエフェクターのサブセットにおけるアポトーシスを誘導する、TCRを介して伝搬する引き続く強力な再刺激シグナルに依存してもよい。エフェクターT細胞とは異なり、ナイーブおよび休止記憶T細胞は、RICDに対して比較的耐性であってもよい。抗原誘発性増殖期中のエフェクターT細胞数を制限することによって、この自己調節死経路は、宿主への過度の非特異的な免疫病理学的損傷を排除することにより、免疫恒常性を維持するのを助けてもよい。実際、RICDの欠損は、X連鎖リンパ球増殖性障害を有する患者で指摘されているように、過剰なT細胞蓄積および宿主組織への致死的損傷の一因となる。
【0075】
サイトカイン離脱誘発性細胞死(CWID)は、感染が解消された後に、例えば、IL-2などのサイトカインのレベルが低下することによって引き起こされる、エフェクターT細胞の大部分を淘汰する役割を担うアポトーシスプログラムであり、記憶T細胞として生き残る選択された少数の細胞が残されてもよい。過剰な同化代謝(例えば、解糖)が、エフェクターT細胞のRICDに対する感受性を高いままにしてもよい一方で、異化代謝(例えば、オートファジーおよび脂肪酸酸化(FAO))は、異なる記憶コンパートメントに由来するT細胞をサイトカイン離脱誘発性死から保護し得る。したがって、CWID感受性は、どのT細胞がまたどのくらいのT細胞が縮小を生き延びて記憶プールに入るのかを判定する上で主要な役割を果たし、異なる記憶サブセットに由来する二次応答に影響を与えてもよい。
【0076】
CWIDおよびRICDは、細胞、抗原、およびサイトカインの動的な局在化によって影響を受け、免疫応答の異なる段階でハードワイヤードフィードバック応答プログラムとして動作してもよい。どちらのプロセスも、抗原およびIL-2、ならびにその他の成長/生存サイトカインの利用可能性によって絶妙に制御される。機構的に、これら2つのプロセスは、内因的および外因的経路として知られるアポトーシスの異なる生化学的機序を介して、T細胞を排除してもよい。内因的経路は、ミトコンドリア外膜電位(MOMP)を調節するBcl-2ファミリータンパク質の相対的な発現によって制御される。ミトコンドリアが脱分極すると、チトクロームCの放出が、プロカスパーゼ9の切断および活性化を触媒する。外因的アポトーシスは、主にFasなどの腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーの細胞死受容体(DR)を介して、シグナル伝達される。
【0077】
CWIDは、内因的アポトーシスを誘発する。IL-2またはその他のγ鎖サイトカインの離脱は、抗アポトーシスBcl-2ファミリータンパク質(例えば、Bcl-2、Bcl-xL、およびMcl-1)の機能と拮抗する重要なプロアポトーシスタンパク質であるBimを特異的に上方制御して活性化し、Baxを活性化して、それはミトコンドリアの透過化を引き起こす。RICDは、再刺激されたT細胞の表面に露出した膜固定型FasLによってシスまたはトランスで刺激されてもよいFasを介した、外因的アポトーシスシグナルに起因することもある。
【0078】
異化作用代謝(すなわちオートファジー)は、異なる記憶コンパートメントに由来するT細胞をサイトカイン離脱によって誘発される死、すなわちCWIDから保護し得るので、生体外T細胞増殖の1つの目的は、ナイーブT細胞(TN)および/または幹記憶T細胞(Tscm)/T中央記憶(Tcm)などの記憶形成細胞の量の増加であってもよい。
【0079】
図2は、固形腫瘍および液体腫瘍を治療するための従来のACT T細胞の違いを示す。固形腫瘍を治療するために、T細胞は、抗CD3抗体および抗CD28抗体によって活性化されてもよく、一定期間の増殖がそれに続く。液体腫瘍と比較して同族抗原へのアクセスが減少した固形腫瘍環境、非同族抗原、および限定的アポトーシス阻害剤で活性化/増殖された操作されたT細胞は、例えば、損傷誘発性細胞死(DICD)またはCWIDなどの生体外増殖中に誘導される内因的アポトーシス経路を被ってもよい。液体腫瘍の治療では、腫瘍および抗原提示細胞との同族抗原に富む液体腫瘍環境内で活性化/増殖された操作されたT細胞は、CWIDによるアポトーシスを被る可能性が低くあってもよいが、抗原刺激の増加による活性化誘発性細胞死(AICD)を被る可能性が高くあってもよく、固形腫瘍の治療では、AICDよりもCWIDに耐えるT細胞が必要であってもよいことが示唆される。
【0080】
図3は、生体外で増殖されたT細胞が、サイトカイン刺激の離脱を生き延びる能力を試験するために、例えば、固形腫瘍において、サイトカイン感受性アッセイが用いられてもよいことを示す。他方、生体外で増殖されたT細胞が、例えば、液体腫瘍などにおいて、反復的なTCR刺激中で生き延びて機能する能力を試験するために、連続殺滅アッセイが用いられてもよい。
【0081】
表1は、液体腫瘍と固形腫瘍の生体内でのT細胞生存率の差を要約する。
【0082】
【0083】
抗原枯渇環境で固形腫瘍を標的とするACT中の生体外で増殖されたT細胞は、液体腫瘍を標的とするものよりも、生存のためにサイトカインにより多く依存してもよいので、生体外記憶形成およびCWID減少は、液体腫瘍を標的とするものよりも、固形腫瘍を標的とする、生体外で増殖されたT細胞にとってより重要であってもよい。したがって、ACTについて、高スループットの患者特異的様式で、生体内で持続し得るT細胞型を選択することは、固形腫瘍を標的とする臨床的有効性を高めてもよい。本開示のサイトカイン感受性アッセイを用いて、抗原枯渇環境において生体内で持続し得る、増殖されたT細胞タイプが予測され選択されてもよい。
【0084】
T細胞源
T細胞の増殖および遺伝子修飾前に、T細胞源が対象から得られてもよい。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍をはじめとするいくつかの起源から得られ得る。特定の実施形態では、当該技術分野で利用できる任意の数のT細胞株が使用されてもよい。特定の実施形態では、T細胞は、Ficoll(商標)分離などの当業者に知られている任意の数の技術を用いて、対象から採取された血液の単位から得られ得る。好ましい一実施形態では、個人の循環血液からの細胞は、血液成分分離によって得られてもよい。血液成分分離製品は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞をはじめとするリンパ球、その他の有核白色血液細胞、赤血球、および血小板を含有する。血液成分分離によって採取された細胞は、洗浄されて血漿画分が除去され、後続の処理ステップのために適切な緩衝液または培地に入れられてもよい。細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄されてもよく、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠いてもよく、または全部でないとしても多くの二価の陽イオンを欠いてもよい、洗浄液で洗浄されてもよい。カルシウムの非存在下での初期活性化ステップは、拡大された活性化をもたらし得る。当業者は容易に理解するであるように、洗浄ステップは、製造業者の使用説明に従って、半自動化「通過型」遠心分離機(例えば、Cobe 2991 ceil processor、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)などを使用することによって、当業者に知られている方法によって達成されてもよい。洗浄後、細胞は、例えば、Ca3+非含有、Mg2+非含有PBS、PlasmaLyte Aなどの様々な生体適合性緩衝液に、または緩衝液ありまたはなしのその他の生理食塩水に再懸濁されてもよい。代案としては、血液成分分離サンプルの望ましくない成分が除去され、細胞が培養液に直接再懸濁されてもよい。
【0085】
別の実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解して、例えば、パーコール(商標)勾配を通じた心分離によって、または向流遠心分離水簸によって、単球を枯渇させることで、末梢血リンパ球から単離されてもよい。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、およびCD45RO+T細胞などのT細胞の特定の亜集団は、正または負の選択技術によってさらに単離され得る。例えば、一実施形態では、T細胞は、所望のT細胞の正の選択に十分な期間にわたる、ダイナビーズ(登録商標)M-450CD3/CD28Tなどの抗CD3/抗CD28(すなわち、3×28)共役ビーズとのインキュベーションによって単離されてもよい。
【0086】
負の選択によるT細胞集団の濃縮は、負に選択された細胞に固有の表面マーカーに向けられた抗体の組み合わせを用いて達成され得る。1つの方法は、負に選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルを使用する、負磁気免疫付着またはフローサイトメトリーを介した、細胞選別および/または選択であってもよい。例えば、負の選択によってCD4+を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8CD8に対する抗体を含んでもよい。特定の実施形態では、典型的には、CD4+、CD25+、CD62L1、GITR+、およびFoxP3+を発現してもよい調節T細胞を濃縮すること、または正に選択することが望ましくあってもよい。代案としては、特定の実施形態では、T調節細胞は、抗CD25共役ビーズまたはその他の類似した選択方法によって枯渇されてもよい。
【0087】
正または負の選択による所望の細胞集団の単離では、細胞濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変化させ得る。特定の実施形態では、細胞とビーズの最大接触を確実にするために、その中でビーズと細胞が共に混合されてもよい体積を著しく減少させる(すなわち、細胞濃度を増加させる)ことが望ましくあってもよい。例えば、一実施形態では、20億個の細胞/mlの濃度が使用されてもよい。一実施形態では、10億個の細胞/mlの濃度が使用されてもよい。さらなる実施形態では、1億個の細胞/mlを超える濃度が使用されてもよい。さらなる実施形態では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万個の細胞/mlの細胞濃度が使用されてもよい。なおも別の実施形態では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個の細胞/mlの細胞濃度が使用されてもよい。さらなる実施形態では、1億2500万または1億5000万個の細胞/mlの濃度が使用され得る。高い濃度を使用することで、細胞収量、細胞活性化、および細胞増殖の増加をもたらし得る。さらには、高い細胞濃度の使用は、CD28陰性T細胞などの関心のある標的抗原を弱く発現してもよい細胞の、または数多くの腫瘍細胞が存在するサンプル(すなわち、白血病性血液、腫瘍組織など)からの細胞の、より効率的な捕捉を可能にしてもよい。このような細胞の集団は、治療的価値を有してもよく、取得することが望ましいであろう。例えば、高濃度の細胞を使用して、通常はより弱いCD28発現を有するCD8+T細胞のより効率的な選択を可能にしてもよい。関連する実施形態では、より低い濃度の細胞を使用することが望ましくあってもよい。T細胞と表面(例えば、ビーズなどの粒子)との混合物を著しく希釈することによって、粒子と細胞の間の相互作用が最小化されてもよい。これは、粒子に結合する所望の抗原を多量に発現する細胞を選択してもよい。
【0088】
T細胞の遺伝子修飾の前かまたは後かにかかわらず、例えば、米国特許第6,352,694号明細書;米国特許第6,534,055号明細書;米国特許第6,905,680号明細書;米国特許第6,692,964号明細書;米国特許第5,858,358号明細書;米国特許第6,887,466号明細書;米国特許第6,905,681号明細書;米国特許第7,144,575号明細書;米国特許第7,067,318号明細書;米国特許第7,172,869号明細書;米国特許第7,232,566号明細書;米国特許第7,175,843号明細書;米国特許第5,883,223号明細書;米国特許第6,905,874号明細書;米国特許第6,797,514号明細書;米国特許第6,867,041号明細書;および米国特許出願公開第2006/0121005号明細書で記載されるような方法を使用して、一般に細胞が活性化され増殖され得る。これらの特許および出願のそれぞれの内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。T細胞の集団を増殖させるための追加的なストラテジーは、例えば、Dudley et al.Journal of Immunotherapy 2003;26:332-42;Rasmussen et al.,Journal of Immunological Methods 2010;355:52-60;およびSomerville et al.,Journal of Translational Medicine 2012;10:69に記載される。前述の参照事項の全内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0089】
自己由来細胞の投与
自己由来細胞は、当技術分野で公知の任意の適切な経路によって投与され得る。好ましくは、細胞は、約30~約60分間持続する、動脈内または静脈内注入として投与されてもよい。その他の例示的な投与経路としては、腹腔内、クモ膜下腔内、およびリンパ管内が挙げられてもよい.
【0090】
同様に、自己由来細胞の任意の適切な用量が投与され得る。例えば、一実施形態では、約1.0×108個の細胞~約1.0×1012個の細胞が投与されてもよい。一実施形態では、平均で約5.0×1010個のT細胞で、約1.0×1010個の細胞~約13.7×1010個のT細胞が投与されてもよい。代案としては、別の実施形態では、約1.2×1010~約4.3×1010個のT細胞が投与されてもよい。
【0091】
一実施形態では、ACTのために使用される自己由来細胞は、例えば、T細胞などのリンパ球であってもよい。一実施形態では、T細胞は、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第8,383,099号明細書に記載されるように、例えば、19~35日齢の間の「若い」T細胞であってもよい。若いT細胞は、古いT細胞より長いテロメアを有すると考えられており、場合によっては、より長いテロメア長は、ACTに続く臨床転帰の改善に関連してもよい。
【0092】
一態様では、本明細書に記載のT細胞およびT細胞生産方法は、ACTの代表的なストラテジー:腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、抗原増殖されたCD8+および/またはCD4+T細胞、腫瘍抗原を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞、およびキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞の1つまたは複数と併用されてもよい。これらの各アプローチの簡単な非限定的記述は、後述される。
【0093】
腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)
1つのACTストラテジーは、腫瘍転移の腫瘍断片または単一細胞酵素消化物から生体外で増殖された、自己由来TILの移植を伴う。腫瘍のT細胞浸潤物は本質的にポリクローナルであり、複数の腫瘍抗原を集合的に認識する。例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Rosenberg et al.,N.Engl.J.Med.(1988)319:1676-1680を参照されたい。
【0094】
例示的なTIL ACTプロトコルでは、腫瘍は、患者から切除され、滅菌条件下で、小さな(例えば、3~5mm2)断片に刻まれてもよい。断片は、成長培地と共に培養プレートまたはフラスコに入れられ、高用量IL-2で処理されてもよい。この初期TIL増殖相(「プレREP」相としても知られる)は、典型的には、約3~約5週間持続し、その間、約5×107個以上のTILが生産されてもよい。次に、得られたTILはさらに増殖され(例えば、急速増殖プロトコル(REP)に従って)、対象への注入に適したTILが生産されてもよい。プレREPTILは、より後の増殖のために冷凍保存され得て、またはそれらは即座に増殖されてもよい。またプレREP TILをスクリーニングして、増殖前の抗腫瘍反応性の高い培養物が識別され得る。典型的なREPは、例えば、照射PBMC支持細胞の存在下で、抗CD3 mAbなどのT細胞刺激抗体を使用して、TILを活性化することを伴ってもよい。支持細胞は、患者対象から、または健常ドナー対象から得られ得る。IL-2が約6,000U/mLの濃度でREP培養物に添加され、迅速なTIL細胞分裂を促進してもよい。この様式でのTILの増殖は約2週間以上かかり得て、約100億~1500億個のTILのプールがもたらされる。増殖された細胞は、洗浄およびプールされてもよく、患者への注入に適にしていてもよい。患者は、典型的には、109~1011個の細胞の1回または2回(1~2週間隔離で)の注入を受けてもよい。患者には、注入後のTIL細胞の支持を助けるために、高用量のIL-2療法(例えば、約2日から約3日間にわたる8時間毎の7.2×105IU/kg)が投与される。例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Rosenberg et al.,Nat.Rev.Cancer(2008)8:299-308を参照されたい。注入前に、患者は、任意選択的に、シクロホスファミド(Cy)およびフルダラビン(Flu)を使用してリンパ球除去され得る。例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Dudley et al.,Science(2003)298:850-854を参照されたい。さらに、内因的調節T細胞(Treg)の再出現を防ぐために、全身照射(TBI)がリンパ球枯渇と共に使用されており、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Dudley et al.,J.Clin.Oncol.(2008)26(32):5233-5239を参照されたい。
【0095】
ACTレジメンを受けている対象に、最小限に増殖されたTILを注入することは、移入された細胞の持続性を促進し、移入された細胞の持続性、増殖、生存を刺激して、腫瘍退縮を改善する。
【0096】
抗原増殖されたCD8+および/またはCD4+T細胞
自己由来末梢血単核細胞(PBMC)は、抗原によって生体外で刺激され、ACTに使用され得る腫瘍抗原特異的またはポリクローナルCD8+および/またはCD4+T細胞クローンを産生し得る。例えば、それぞれの内容が参照により本明細書に援用される、Mackensen et al.,J.Clin.Oncol.(2006)24(31):5060-5069;Mitchell et al.,J.Clin.Oncol.(2002)20(4):1075-1086;Yee et al.,Proc.Natl.Aad.Sci.USA(2002)99(25):16168-16173;Hunder et al.,N.Engl.J.Med.(2008)358(25):2698-2703;Verdegaal et al.,Cancer Immunol.Immunother.(2001)60(7):953-963を参照されたい。ナイーブPBMC集団から腫瘍特異的T細胞を増殖させるという、時間がかかる労力集約的な工程を回避するために、ACTの抗原特異的T細胞は、HLA-A0201を発現する人工抗原提示細胞(aAPC)、共刺激分子、および膜結合サイトカインを使用する、自己由来PBMCの複数の刺激を使用して生成されてもよい。例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Suhoski et al.,Mol.Ther.(2007)15(5):981-988;Butler et al.,Sci.Transl.Med.(2011)3(80):80ra34を参照されたい。
【0097】
一実施形態では、T細胞は、任意選択的に、300IU/mlのIL-2またはIL-15などの(IL-2が好ましい)T細胞成長因子の存在下でベクターから発現され得る、がんの1つまたは複数の抗原(エピトープ、または細胞などのその抗原性部分を含めた)を用いた生体外での末梢血単核細胞(PBMC)の刺激によって、迅速に増殖され得る。生体外で誘導されたT細胞は、HLA-A2を発現する抗原提示細胞上にパルスされた、同一のがん抗原の再刺激によって、迅速に増殖されてもよい。代案としては、T細胞は、例えば、照射された自己由来リンパ球、または照射されたHLA-A2+同種異系リンパ球、およびIL-2を用いて、再刺激され得る。
【0098】
一実施形態では、細胞集団は、CD8+T細胞について濃縮されてもよい。T細胞培養物は、例えば、CD8マイクロビーズ分離を使用して、CD4+細胞が枯渇されCD8+細胞について濃縮されていてもよい(例えば、Clini-MACSPplus CD8マイクロビーズシステム(Miltenyi Biotec(商標)を使用して)。CD8+T細胞の濃縮は、CD4+T調節細胞を除去することによってACTの予後を改善してもよい、
【0099】
ACTレジメンを受けている対象に、例えば、PBMCの刺激から得られたCD8+および/またはCD4+T細胞などの最小限に増殖されたT細胞を注入することは、移入された細胞の持続性を促進し、移入された細胞の持続性、増殖、および生存を刺激して、腫瘍退縮を改善してもよい。
【0100】
腫瘍抗原を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞
【0101】
場合によっては、ACTに必要な量の腫瘍抗原に対する高い結合力を有するTILを得ることが、可能でないこともある。したがって、リンパ球を遺伝的に改変して、対象への注入前に、関心のある抗原を特異的に認識してもよい細胞集団を得ることが望ましくあってもよい。TCRをコード化する遺伝子は、高い結合力を有するがん抗原を特異的に認識するT細胞から単離され得る。末梢血から単離されたTリンパ球は、所望の特異性を保有するTCRをコード化する遺伝子を含有するレトロウイルスまたはレンチウイルスで形質導入され得る。この方法は、ACTのための多数の腫瘍抗原特異的T細胞を迅速に生産することを可能にしてもよい。
【0102】
T細胞は、Heemskerk et al.Hum Gene Ther.19:496-510(2008)およびJohnson et al.Blood 114:535-46(2009)に記載の形質導入技術を用いて、がん抗原に対する抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)を発現するように形質導入されてもよい。これらの参考文献の内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。関心のある抗原を認識するTCRを発現するように遺伝子改変されたT細胞を用いたACTは、Morgan et al.,Science(2006)314(5796):126-129によって公開された、臨床試験プロトコルに従って実施され得る。この参考文献の内容は、その全体が本明細書に参照により援用される。
【0103】
例えば、ACTレジメンを受けている対象に、腫瘍抗原を認識するTCR(または修飾TCR)を発現するように遺伝的に操作されているT細胞などの最小限に増殖されたT細胞を注入することは、移入された細胞の持続性を促進し、移入された細胞の持続性、増殖および生存を刺激して、腫瘍退縮を改善してもよい。
【0104】
一態様では、本明細書に記載される方法および実施形態で使用できる、TAAペプチドとしては、例えば、米国特許出願公開第20160187351号明細書、米国特許出願公開第20170165335号明細書、米国特許出願公開第20170035807号明細書、米国特許出願公開第20160280759号明細書、米国特許出願公開第20160287687号明細書、米国特許出願公開第20160346371号明細書、米国特許出願公開第20160368965号明細書、米国特許出願公開第20170022251号明細書、米国特許出願公開第20170002055号明細書、米国特許出願公開第20170029486号明細書、米国特許出願公開第20170037089号明細書、米国特許出願公開第20170136108号明細書、米国特許出願公開第20170101473号明細書、米国特許出願公開第20170096461号明細書、米国特許出願公開第20170165337号明細書、米国特許出願公開第20170189505号明細書、米国特許出願公開第20170173132号明細書、米国特許出願公開第20170296640号明細書、米国特許出願公開第20170253633号明細書、米国特許出願公開第20170260249号明細書、20180051080、および米国特許出願公開第20180164315号明細書に記載されるTAAペプチドが挙げられ、これらの各出版物の内容およびその中に記載されている配列リストは、それらの全体が参照により本明細書に援用される。一態様では、本明細書に記載されるT細胞は、上記の特許および刊行物の1つまたは複数に記載されるTAAペプチドを提示する細胞を選択的に認識する。
【0105】
一態様では、本明細書に記載される方法と共に使用できるT細胞受容体としては、例えば、米国特許出願公開第20170267738号明細書、米国特許出願公開第20170312350号明細書、米国特許出願公開第20180051080号明細書、米国特許出願公開第20180164315号明細書、米国特許出願公開第20180161396号明細書、米国特許出願公開第20180162922号明細書、米国特許出願公開第20180273602号明細書、米国特許出願公開第20190002556号明細書、米国特許出願公開第20180135039号明細書に記載されるものが挙げられ、これらの各出版物の内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0106】
別の態様では、本明細書に記載される方法および実施形態で使用できるTAAは、配列番号1~配列番号157から選択される少なくとも1つを含む。一態様では、T細胞は、配列番号1~157に記載される、または本明細書に記載の特許または出願のいずれかに記載される、TAAペプチドを提示する細胞を選択的に認識する。
【0107】
【0108】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞
上述のような所望の特異性を有するTCRを発現させるためのT細胞の遺伝子操作は、ACTのための非常に有望なアプローチであってもよい。それにもかかわらず、操作されたTCRα鎖およびβ鎖と、内因的TCR鎖とのミスペアリングの可能性がある。さらに、操作されたTCRを発現する細胞を使用したACTの成功は、標的とされるがん細胞における、TCRによって認識される特定のMHC分子の発現に依存する。これらの潜在的な複雑さを回避するために、T細胞は、代案としてキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作されてもよい。
【0109】
それらの最も単純な形態において、CARは、CD3ζ鎖の細胞質尾部からの膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメインと共役された、抗原結合ドメインを含有してもよい。CD3ζ鎖が、導入されたT細胞を完全に活性化するには、不十分であってもよい証拠がいくつかある。したがって、CARは、好ましくは、抗原結合ドメイン、共刺激ドメイン、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含有してもよい。CD3ζシグナル伝達ドメインと組み合わせて共刺激ドメインを使用すると、T細胞活性化の2シグナルモデルが模倣される。CAR抗原結合ドメインは、FabまたはscFvなどの抗体または抗体断片であり得る。
【0110】
抗原結合ドメインは、膜貫通ドメインによって、CD3ζシグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインから分離される。膜貫通ドメインは、任意の膜貫通タンパク質に由来してもよい。一実施形態では、CAR中のドメインの1つと天然に結合している膜貫通ドメインが使用されてもよい。別の実施形態では、外因的または合成膜貫通ドメインが使用される。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、その他の膜タンパク質との相互作用を最小化するために選択され、またはアミノ酸置換によって修飾され得る。
【0111】
CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間、またはCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインの間には、スペーサーが任意選択的に組み込まれていてもよい。スペーサーは、膜貫通ドメインを細胞外ドメインまたは細胞質ドメインのどちらかに連結させるように機能する、任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドであってもよい。スペーサーは、最大300個のアミノ酸、好ましくは10~100個のアミノ酸、より好ましくは25~50個のアミノ酸を含有してもよい。
【0112】
CARの細胞内ドメインは、その中でCARが発現される免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与してもよい。エフェクター機能としては、例えば、サイトカインの分泌などの細胞溶解活性またはヘルパー活性が挙げられてもよい。したがって、分子の細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達して特化した機能を果たすよう細胞に指示する、タンパク質の部分を指してもよい。細胞内シグナル伝達ドメイン全体が使用され得る一方で、多くの場合、選択された部分がエフェクター機能シグナルを伝達する限り、細胞内ドメインの一部が使用されてもよい。CARの細胞質ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを単独で、または共刺激ドメインとの組み合わせで含み得る。共刺激ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含有する。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答を促進する、細胞表面分子であってもよい。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、4-1BB、CD27、CD28、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83リガンド、またはそれらの組み合わせなどの共刺激分子の細胞内ドメインを含有してもよい。例示的な実施形態では、共刺激分子は、4-1BBまたはCD28の細胞内ドメインであってもよい。
【0113】
例えば、ACTレジメンを受けている対象に、腫瘍抗原を認識するCARを発現するように遺伝的に操作されているT細胞などの最小限に増殖されたT細胞を注入することは、移入された細胞の持続性を促進し、移入された細胞の持続性、増殖および生存を刺激して、腫瘍退縮を改善してもよい。
【0114】
上述したように、固形腫瘍の治療は、AICDよりもCWIDに耐えるT細胞を必要としてもよい。同族抗原限定的固形腫瘍環境における、製造されたT細胞の持続性を判定する従来法は、動物モデルに依存することが多い。対照的に、本開示の実施形態は、生体内でT細胞の持続性を増強してもよいT細胞製造条件を判定するためのサロゲートとして、生体外アッセイを用いる。この目的を達成するために、製造されたT細胞は、非同族抗原または低同族抗原環境で試験されてもよい。例えば、製造されたT細胞は、例えば、同族の抗原提示腫瘍細胞、樹状細胞、またはマクロファージなどの同族の抗原提示細胞の非存在下で、例えば、約1,000~約1×106個の細胞/cm2、約1,000~約500,000個の細胞/cm2、約1,000~約250,000個の細胞/cm2、約1,000~約200,000個の細胞/cm2、約1,000~約150,000個の細胞/cm2、約1,000~約100,000個の細胞/cm2、約1,000~約50,000個の細胞/cm2、約1,000~約10,000個の細胞/cm2、または約1,000~約5,000個の細胞/cm2などの低密度で培養中に播種されてもよい。製造されたT細胞を低サイトカイン刺激環境で試験するために、製造されたT細胞は、例えば、約1~約30日間、約2~約25日間、約3~約21日間、約3~約14日間、約3~約10日間、または約3~約7日間などの長期間にわたり、例えば、約1~約1,000ng/ml、約1~約500ng/ml、約1~約250ng/ml、約1~約100ng/ml、約1~約50ng/ml、約5~約50ng/ml、約5~約40ng/ml、約5~約30ng/ml約5~約20ng/ml、またはfrom約5~約10ng/mlなどの低濃度のサイトカインの存在下、非同族抗原環境または低同族抗原環境で培養されてもよい。
【実施例】
【0115】
実施例1
サイトカイン感受性アッセイ(CSA)
T細胞の適応度に対する生体外T細胞増殖の長さの役割を調査するために、T細胞を4、7、または10日間かけて製造した。この製造後、CSAを介してT細胞を解析し、以下のメトリックスを解析した:(1)T細胞の増殖倍数によって測定される細胞生存、(2)ヨウ化プロピジウムおよびアネキシンV染色を介して測定されるアポトーシス、(3)増殖染料PkH67の希釈率によって測定される分裂、(4)フローサイトメトリーによって測定されるサイトカイン受容体発現、および(5)フローサイトメトリーによって測定されるT細胞記憶表現型。
【0116】
CSAは、以下の観察によって評価されるように、CSA内で評価された場合、長期の増殖がT細胞の適応度の有意な低下をもたらしてもよいことを示す。(1)T細胞生存率の低下、(2)アポトーシスの増加、(3)分裂速度の低下、(4)サイトカイン受容体発現相関、および(5)Tnaive/scmコンパートメントの生存率の低下。
【0117】
CSAを21日間実施し、各サンプルは、時間挙動の単一のメトリックを定義してもよい、7つの時点で分析した。この目的のために、時間データの曲線下面積(積分)を計算し、以下の結果の21日間にわたるサンプルの挙動を表すための単一の定義メトリックとして用いた。
【0118】
血液成分分離されたT細胞は、健康な同種異系ドナーまたは患者から得てもよい。これらのT細胞は、例えば、IL-2存在下でOKT3などの活性化抗CD3抗体を用いて、またはIL-2存在下で抗CD3被覆および抗CD28抗体被覆常磁性ビーズを用いて、またはOKT3およびIL-2を有する4-1BBLおよびFc受容体を発現する人工抗原提示細胞(aAPC)を用いて、活性化または刺激してもよい。次に、活性化T細胞は、レトロウイルスまたはレンチウイルスプラットフォームを用いて、組換えTCRで形質導入してもよい。形質導入されたT細胞は、例えば、4日間(4日目)、7日間(7日目)、または10日間(10日目)などの異なる期間増殖してもよく、活性化は0日目に始まる。組換えTCRはT細胞ゲノムに組み込まれてもよいので、増殖中に生産される全ての娘細胞もまた、組換えTCRを発現してもよい。増殖/形質導入されたT細胞は、即座に使用してもよく、または将来の使用のために凍結保存してもよい。
【0119】
図4は、本明細書に記載されるサイトカイン感受性アッセイの実施形態を示す。
図4では、(例えば、4日間、7日間、または10日間)凍結保存または冷凍した増殖TCR形質導入T細胞は、例えば、2×10
5個の細胞/ウェルなどの限定数で細胞培養ウェルに入れる前に、解凍し、サイトカインなしで4時間休止させてもよい。例えば、様々な濃度のPkH26染色などの増殖色素、およびそれぞれのサイトカイン(例えば、IL-2、IL-15、IL-7、またはそれらの組み合わせ)を添加して、例えば、21日間などの期間にわたりインキュベートしてもよい。21日間のアッセイ中、7日毎に、すなわち、0日、7日、および14日目に、新鮮なサイトカインを培養T細胞に供給してもよい。7日毎のアッセイの終了時には、培地は、アッセイ開始時と比較してサイトカインのレベルが低下しているであろう。アッセイの異なる時点で、増殖された操作されたT細胞を採取し、例えば、アネキシンV染色を介して、細胞数、増殖、アポトーシスについて、例えば、CD45ROおよびCCR7マーカーを介して、記憶表現型について、例えば、IL-2受容体(CD25)、IL-7受容体(CD127)、およびIL-15受容体(CD122)を介して、サイトカイン受容体発現について、分析してもよい。
【0120】
実施例2
T細胞の生体外増殖の短縮は、21日間のアッセイにわたり、持続的なT
scm様の表現型を示す(生体内有効性のために望まれる)
図5A~5Dは、健常ドナーから得られ、(A)0日、(B)4日、(C)7日、および(D)10日間培養された、TCR導入T細胞の表現型を示す。増殖されたT細胞をCD45RO染色によってリンパ球から分離し、引き続いてCCR7染色によってT
naive/T
scm(CD45RO-CCR7+)を識別したところ、例えば、23.2%(4日目の増殖されたT細胞)、16.4%(7日目の増殖されたT細胞)、22.9%(10日目日目の増殖されたT細胞)であった。0日め(49.4%、増殖なし)と比較して、4日、7日、および10日目の増殖されたT細胞は、T
scm様の表現型を有する細胞数の減少を示す。
【0121】
TCR導入T細胞に対するサイトカイン枯渇の影響を調べるために、4日間、7日間、または10日間培養したT細胞を、IL-15の存在下で21日間培養した。21日間のアッセイ中、7日毎に、すなわち、0日、7日、および14日目に、新鮮なIL-15(10ng/ml)を培養T細胞に供給した。各7日日間のIL-15供給の終了時、すなわち、培養中のIL-15レベルが最も低い、7日、14日、および21日目に、CD45ROおよびCCR7染色を用いたフローサイトメトリーによって、Tscm様の表現型を調べた。
【0122】
図6A~6Iは、4日目の増殖されたT細胞が、21日間のアッセイを通じてT
scm様、すなわち、T
naive/T
scm細胞集団を保持することによって、より良好なIL-15感受性を提示することを示す。T
scm様の表現型は、生体内T細胞持続性と相関するので、これらの結果は、より初期の増殖された(例えば、約4日間)操作されたT細胞が、例えば、約7日間以上などのより長期間増殖されたものよりも優れていてもよいことを示唆する。
【0123】
どのT細胞の記憶コンパートメントが持続しているかを調べるために、培養期間中7日毎に、フローサイトメトリーに基づくT細胞の表現型決定を実施した。
【0124】
図20Aは、増殖21日目では、3日目(初期)の増殖サンプルでは、ナイーブ(scm)および中央記憶(T
cm)T細胞の割合が有意に高い一方で、7日目(中期)および10日目(後期)の増殖サンプルでは、これらのあまり分化していないT細胞コンパートメントの双方が、劇的に減少していることを示す。
【0125】
図20Bは、一貫して、IL-15を用いた培養期間において、7日目までのPkH希釈に基づくCCR7発現細胞の増殖の増加があったことを示しており、増殖の減少は、サイトカイン受容体の発現の増加による増殖能の保持をもたらしてもよいことを示唆する。集合的にこのデータは、初期に増殖されたT細胞が、IL-2、IL-7、およびIL-15に応答して増殖できる初期分化型CD8+T細胞の集団を保持していることを示す。
【0126】
実施例3
T細胞の生体外増殖の短縮は生存率の向上と相関する
解凍された増殖されたT細胞を追加的な抗原またはCD3刺激の非存在下、IL-7、IL-15、またはIL-2の存在下で生存する能力について評価した。4日目の増殖されたT細胞は、IL-7、IL-15、およびIL-2中で、約10倍、30倍、および15倍のピーク増殖倍数を示し、3つ全てのサイトカイン条件において、より後期の増殖されたT細胞よりも実質的により成長できた。逆に、7日目および10日目の増殖されたT細胞は、いずれのサイトカイン条件でも実質的な成長を維持できなかった。さらに、全てのサイトカインの非存在下では、各T細胞集団は、増殖プロトコルの長さに関係なく、同程度の速度で死亡した。
【0127】
増殖されたT細胞の増殖または生存に対するサイトカイン枯渇の影響を判定するために、IL-2、IL-7、またはIL-15の存在下における、増殖されたTCR形質導入T細胞の細胞成長を21日間にわたって測定した。
図7A~7Cは、4日目の増殖されたT細胞が、例えば、7日および10日間などのより長期間増殖されたものと比較して、21日間にわたって、(A)IL-7、(B)IL-15、および(C)IL-2の存在下で、より高い細胞増殖またはより多くの生存細胞を提示することを示す。点線は1に設定され、開始細胞数に対する増殖倍数成長に差がないことを示す。
【0128】
経時的な細胞挙動は、例えば、IL-2(300U/ml)(
図8A)、IL-7(10.0ng/ml)(
図8B)、またはIL-15(10.0ng/ml)(
図8C)などのより高濃度のサイトカインの存在下で、より長期にわたって増殖されたものよりも、より初期の増殖されたTCR形質導入T細胞の方が良好である。それぞれの増殖倍数曲線の統合生存率は、曲線下面積を計算することによって判定した。3人の生物学的ドナーの分析から、より初期の増殖されたT細胞は、より後期の増殖された細胞を上回る傾向があった。IL-2では、4日目と7日目の増殖された細胞の間に約5倍の生存率の低下があり、7日目と10日目の増殖された細胞の間に約2倍の生存率の低下があった。IL-7では、4日目と7日目の増殖された細胞の間に約6倍の統合生存率の低下があり、7日目と10日目の増殖された細胞の間に約4倍の低下があった。IL-15では、4日目と7日目の増殖された細胞の間に約8倍の統合生存率の低下があり、7日目と10日目の増殖された細胞の間に約6倍の低下があった。ドナー間の変動が大きかったために統計的有意性はなかった一方で、より初期の増殖された細胞は、より後期の増殖された細胞よりも長く生存する一貫した傾向があった。
【0129】
アッセイの21日目では、例えば、IL-2(300U/ml)(
図8D)、IL-7(10.0ng/ml)(
図8E)、またはIL-15(10.0ng/ml)(
図8F)などのより高濃度のサイトカインの存在下で、より長期間にわたって増殖されたものよりも、より初期の増殖されたTCR(例えば、CD8Vb8+)形質導入T細胞の方が、統合生存率もまたより良好である。
【0130】
同様の結果は、例えば、IL-2(30U/ml)(
図9A)、IL-7(1.0ng/ml)(
図9B)、またはIL-15(1.0ng/ml)(
図9C)などのより低い濃度のサイトカインの存在下でもまた観察された。例えば、アッセイの21日目には、例えば7日間および10日間の増殖などのより長期間増殖されたT細胞と比較して、4日間増殖されたT細胞がより良好な生存率であった。これらの結果は、生体外でのT細胞の増殖の短縮が、サイトカイン枯渇状態での生存率の増加と相関することを示す。
【0131】
実施例4
T細胞の生体外増殖の短縮はアポトーシスの減少と相関する
より初期の増殖された細胞の増殖倍数の増加、および分裂の増加があったことから、ヨウ化プロピジウム(PI)およびアネキシンVによる染色を介して評価されるように、アポトーシスに対応する減少があり得た。
【0132】
増殖されたT細胞のアポトーシスに対するサイトカイン枯渇の影響を判定するために、IL-2、IL-7、またはIL-15の存在下で増殖されたT細胞のアポトーシスを21日間にわたって測定した。
図10A~10Cは、4日間増殖されたT細胞が、7日間および10日間増殖されたものと比較して、(A)IL-7(10ng/ml)、(B)IL-15(10ng/ml)、および(C)IL-2(300IU/ml)の存在下で、より少ないアポトーシス細胞を含有することを示す。リンパ球のアポトーシスの%は、壊死組織片および低FSC集団を除外することによってゲートした。
図11A~11Cは、アッセイの10日目に、約4日目の増殖されたTCR形質導入T細胞の曲線下面積によって判定されるように、より低い統合されたアポトーシスを示す。IL-2条件では、4日目と7日目の細胞の間にアポトーシスの統計的に有意でない増加(約1.8倍)があった一方で、4日目と10日目の細胞の間には統計的に有意な増加(約3倍)があった(p=0.0092)。IL-7条件では、4日目と7日目の細胞の間にアポトーシスの統計的に有意でない増加(約2倍)があった一方で、4日目と10日目の細胞の間には統計的に有意な増加(約7倍)があった(p<0.0001)。IL-15条件では、4日目と7日目の細胞の間にアポトーシスの統計的に有意でない増加(約1.6倍)があった一方で、4日目と10日目の細胞の間には統計的に有意な増加(約5.5倍)があった(p=0.0010)。
【0133】
図12は、アッセイの10日目に、IL-15(10ng/ml)の存在下で、4日目の増殖されたT細胞が、例えば、(B)7日目(10.6%、アネキシンV+/PI-)および(C)10日目(18.2%、アネキシンV+/PI-)などのより長期間増殖されたものよりも、より少ない(4.97%、アネキシンV+/PI-)アポトーシス細胞を含むことを示す。これらの結果は、サイトカイン枯渇状態においては、T細胞の生体外増殖の短縮が、アポトーシスの減少と相関することを実証する。
【0134】
実施例5
T細胞の生体外増殖の短縮は細胞分裂の増加と相関する
増殖されたT細胞の細胞分裂に対するサイトカインの影響を判定するために、IL-2、IL-7、またはIL-15の存在下での増殖されたT細胞の細胞分裂を測定した。
図13A~13Cは、(A)IL-7(10ng/ml)、(B)IL-15(10ng/ml)、および(C)IL-2(300IU/ml)の存在下で、例えば7日目および10日目などのより長期間増殖されたものと比較して、例えば、4日目などのより初期の増殖されたTCR導入T細胞が、より多くの分裂細胞を含むことを示す。アッセイの10日後の10日目の細胞が欠如しているため、10日目までのデータを示す。アッセイの10日目に、例えば、IL-2(300U/ml)(
図14A)、IL-7(10.0ng/ml)(
図14B)、またはIL-15(10.0ng/ml)(
図14C)などのより高濃度のサイトカインの存在下で、例えば、7日目および10日日目などのより長期間増殖されたものの増殖よりも、例えば、4日目などのより初期の増殖されたTCR形質導入T細胞のより多くの分裂細胞が増殖した。例えば、4日目などのより初期の増殖された細胞は、CSA中の10日間にわたる各時点で、増殖色素を希釈した細胞の百分率によって計算されるように分裂を起こした。より後期の増殖された細胞は、10日を過ぎた後の正確な分析にとって十分な細胞がなかったため、分析は10日目まで行った。IL-2では、4日目と7日目の増殖された細胞拡大細の間に約30%の統合分裂の低下があり、4日目と10日目の増殖された細胞の間に約50%の低下があり、p=0.0307であった。IL-7でも同様の傾向が見られ、4日目と7日目の増殖された細胞の間に約40%、4日目と10日目の増殖された細胞の間に約80%の低下があり、p=0.0006であった。IL-15でも同様の傾向が観察され、4日目と7日目の増殖された細胞の間に約20%、4日目と10日目の増殖された細胞の間に約40%の低下があり、p=0.0025であった。
【0135】
サイトカイン感受性は、サイトカインによって誘導される細胞分裂のレベルによって判定されてもよい。増殖されたT細胞のサイトカイン感受性を判定するために、例えば、アッセイ中の3日間、サイトカイン非限定的条件で、IL-2、IL-7、またはIL-15によって誘導された増殖されたT細胞の統合細胞分裂を測定した。統合細胞分裂は、アッセイ中の3日間にわたる細胞分裂の曲線下面積を計算することによって、積分して計算してもよい。
図15A~15Cは、(A)IL-7(10.0ng/ml)、(B)IL-15(10.0ng/ml)、および(C)IL-2(300IU/ml)の存在下で、例えば7日目および10日目などのより長期間増殖されたものと比較して、例えば、4日目などのより初期の増殖されたT細胞が、より多くの分裂細胞を含むことを示す。これらの結果は、T細胞の生体外増殖の短縮が、より長期間増殖されたT細胞よりもさらに良好にサイトカインに応答することを示す。同様に、アッセイの3日目に、例えば、IL-2(300U/ml)(
図16A)、IL-7(10.0ng/ml)(
図16B)、またはIL-15(10.0ng/ml)(
図16C)などのより高濃度のサイトカインの存在下で、より長期間増殖されたものよりも、より初期の増殖されたT細胞のより多くの分裂細胞が増殖した。
【0136】
実施例6
生体外増殖の短縮はサイトカイン感受性の増加と相関する
CSAにおいて、リンパ球の百分率に基づくCD25発現(R2=0.82)またはCD25発現の平均蛍光強度(MFI)(R2=0.89)と、IL2誘導生存率との間には強い相関関係があった。CSAにおいて、リンパ球の百分率に基づくCD127の発現(R2=0.04)と、IL7誘導生存率との間には相関関係はなかった。注目すべきことに、CD127発現のMFI(R2=0.76)とIL7誘導生存率との間には、中等度の相関があった。CSAにおいて、リンパ球の百分率に基づくCD122発現(R2=0.42)とIL15誘導生存率に対する応答との間には、弱い相関関係があり、またはCD122発現のMFI(R2=0.67)とIL15誘導生存率に対する応答との間には、中等度の相関関係があった。
【0137】
サイトカイン感受性はまた、サイトカインの存在下で細胞のシグナル伝達経路を媒介する、サイトカイン受容体の発現レベルによって判定してもよい。CSAは、サイトカインが誘導する、生存、増殖、およびアポトーシスに対する応答を測定する。これらの変化は、アッセイ開始時の各T細胞集団内のそれぞれのサイトカイン受容体の発現と相関してもよい。したがって、IL-2、IL-7、およびIL-15サイトカイン受容体の定義するサブユニット、すなわち、それぞれCD25、CD127、およびCD122の発現を測定した。注目すべきことに、CD122は、IL-2受容体とIL-15受容体の間の共有サブユニットであるが、一般にはIL-15受容体の反応性サブユニットに割り当てられる。例えば、
図16Dは、アッセイの3日後の4日目の増殖されたT細胞が、例えば、7日目および10日目などのより長期にわたって増殖されたものと比較して、より多くのIL-2受容体(CD25)を発現することを示す。
図17Aは、このIL-2受容体(CD25)発現の増加を示し、これは、4日目の増殖されたTCR導入T細胞がアッセイの対象となる前に測定され、例えば、R
2=0.89および0.82などのIL-2媒介細胞生存率の増加と良好に相関する。AUCは、曲線下面積の略である。
図17Bは、このIL-2受容体(CD25)発現の増加が、例えば、R
2=0.81および0.69などのIL-2媒介細胞分裂の増加ともまた良好に相関することを示す。
【0138】
図18Aおよび18Bはそれぞれ、4日目の増殖されたTCR形質導入T細胞がアッセイの対象となる前に測定されたIL-15受容体(CD122)発現が、例えば、R
2=0.67および0.42などのIL-15媒介細胞生存率の増加、そして例えば、R
2=0.55および0.67などのIL-15媒介細胞分裂の増加と、適度に相関することを示す。
【0139】
図19Aおよび19Bはそれぞれ、4日目の増殖されたTCR形質導入T細胞がアッセイの対象となる前に測定されたIL-7受容体(CD127)発現が、例えば、R
2=0.76および0.004などのIL-7媒介細胞生存率の増加、そして例えば、R
2=0.61および0.08などのIL-7媒介細胞分裂の増加と、貧弱に相関することを示す。
【0140】
これらのアッセイからの結果は、例えば、約3~約5日間など、より初期の製造された(または最小限に増殖された)操作されたT細胞、が、例えば、約7~約10日など、より長く増殖された細胞と比較して、より良好に作動することを示す。例えば、
図20に示されるように、例えば、約3~約5日間など、最小限に増殖された操作されたT細胞は、例えば、ナイーブT細胞(T
N)および/または幹記憶T細胞(T
scm)/T中央記憶(T
cm)の個体数の増加などのナイーブ性の増大、増殖能力の増加、および例えば、CWIDによって誘発されるアポトーシスの減少を介した持続性の増加のために、例えば、約7~約10日間など、延長された期間にわたり生体外で増殖された操作されたT細胞よりも、高い臨床的有効性を示してもよい。
【0141】
実施例7
CD3/CD28製造中の細胞の作用機序(MOA)表現型決定
CSAの結果から、T細胞は増殖性サイトカインに応答する機能が低下しているようであったが、これはサイトカイン受容体発現が喪失していることが一因であってもよい。これらのデータは、10日目の増殖されたT細胞のわずかな一部が、サイトカインに応答する能力を維持してもよいことを示唆する。この観察は、T細胞集団の不均一性が、観察された挙動に関与していてもよいことを示唆する。この多様性と可能性の喪失を調べるために、(1)最終的相対テロメア長、(2)テロメラーゼ活性、(3)共刺激分子発現、(4)全RNA配列解析に対する、T細胞増殖の影響を分析した。
【0142】
延長されたCD3/CD28製造によるテロメア長の短縮
細胞は高度に分化して最終的には老化するので、テロメア長の損失は、機能不全細胞の証明である。この効果が、本発明者らの差次的に増殖されたT細胞で起こっているかどうかを調べるために、蛍光原位置ハイブリダイゼーションアッセイを用いて、内部細胞株対照と対照してT細胞の相対的テロメア長(RTL)を評価した。
【0143】
図22は、分析された4人のドナー(D1~D4)全てについて、増殖プロトコル全体を通じてRTLの損失があり、4日目の増殖細胞が最も高いRTLを有することを示す。全てのドナーをグループ化した場合、4日目と7日目の間にRTLのおよそ20%の損失があり、7日目と10日目の間にRTLのさらなる10%の損失があった。データにはまた、年齢の偏りの徴候があり、10日目の増殖時点で比較すると、より若いドナーは、平均してより高齢のドナーと比較してより長いRTLを有した。ドナーの年齢:D1:50歳、D2:31歳、D3:49歳、およびD4:45歳。
【0144】
延長されたCD3/CD28製造中のテロメラーゼ活性の低下
CD3+CD28刺激に続いて、テロメア長の減少およびテロメラーゼ誘導の不均一性の減少に基づいて、活性テロメラーゼのレベルを酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を介して判定した。
【0145】
図23は、4日目と7日目の増殖された培養物の間に、統計的に有意でない減少(およそ10%)があったことを示す。対照的に、4日目と7日目の増殖された細胞の間には統計的に有意な(p=0.0004)40%の活性の減少があり、7日目と10日目の間にはこれもまた統計的に有意な(p=0.0165)およそ25%の減少があった。総合すると、RTLと活性テロメラーゼの最終レベルとの双方に増殖相関性の損失があり、増殖の長期化は、追加的な増殖にはあまり適さないこともある細胞を生じる。
【0146】
CD3/CD28製造中のT細胞初期記憶表現型の喪失
CSAの結果は、差次的に増殖された細胞間で、開始記憶コンパートメントに明白な差があってもよいことを示す。開始記憶コンパートメントに対してより高解像度の分析を実施して、差次的に増殖されたサンプル間の差を検出した。
【0147】
図24は、4、7、および10日目の間では、T
naive/scmコンパートメントに、統計的に有意でない差があったことを示す(CD8細胞の平均値は20.03%、11.1%、17.47%)。しかし、4、7、および10日目の増殖された細胞間では、Tcmコンパートメント内に統計的有意差(p<0.05)があった(CD8細胞の平均値は58.27、37.73、16.8%)。4、7、および10日目の増殖された細胞間では、T
emコンパートメント内に統計的有意差(p<0.05)があった(CD8細胞の平均値は18.9、48.13、および58.9%)。4日目、7日目、および10日目の増殖された細胞間では、T
emraコンパートメント内に、統計的に有意でない差があった(CD8細胞の平均値は2.70、3.06、および6.80%)。これらの結果は、主要な記憶コンパートメントの差が、T
cmからT
emへの遷移にあってもよいことを示し、より後期の増殖された細胞は、より少ないT
cmT細胞とより多くのT
emT細胞を含む。
【0148】
CD3/CD28製造中のCD28およびCD27発現の喪失
従来の記憶コンパートメントに加えて、どちらも生体内でのT細胞の持続性の増加に伴うことが知られている、共刺激マーカーCD28およびCD27の発現について、細胞を表現型同定した。
【0149】
図25は、CD3+CD28増殖中、CD28とCD27の双方に段階的損失があったことを示し、製造期間中の10日目までに最も劇的な損失があった。4、7、および10日目の培養物の間の比較がいずれも統計的に有意でなかった一方で(p<0.05)、4および10日目の培養物の間のCD27+CD28+コンパートメント内では、有意性傾向があった(CD8細胞の平均値は58.47および21.43%)。さらに、4日目および10日目の増殖された細胞の間に、二重陰性CD27-CD28-コンパートメントの濃縮(p=0.1581)があった(CD8細胞の平均値は10.24%および29.77%)。
【0150】
差次的遺伝子発現分析は、より後期の増殖された細胞と比較して、より初期の増殖された細胞を独自のクラスターとして同定する。
【0151】
データが、差次的に増殖されたT細胞の間の表現型の差を示唆する一方で、調査は、検討された指定された標的(例えば、CD28またはT細胞記憶コンパートメント)の数に制限されることもある。表現型決定研究の範囲を広げるために、4、7、または10日間増殖された3人の生物学的ドナーからの全RNA配列決定を実施した。
【0152】
図26は、クラスター分析に基づいて、中間クラスターに出現した7日目と比較した4日目の増殖された細胞の明確なグループ化を示す一方で、10日目の細胞は独自のクラスターで出現した。これらの結果は、7日目および10日目の増殖された細胞と比較して、4日目の増殖された細胞のクラスター化パターンが明白に異なることを示す。このデータは、T細胞増殖の線形分化モデルを支持し、その中では増殖プロトコル全体を通じてRNAレベルでの漸進的変化が起こる。
【0153】
より初期の増殖された細胞は、より後期の増殖されたサンプルと比較して、差次的発現遺伝子の数が増加していることを示す。
【0154】
3人の生物学的ドナー全体にわたり、4、7、および10日目の増殖された細胞の間の差次的発現遺伝子(DEG)について、全RNA配列決定を解析した。
【0155】
図27は、4日目と7日目の比較では5,078個のDEG、4日目と10日目の比較では5,643個のDEGによって明らかなように、製造工程の最も早い時期に変化した遺伝子発現プロファイルを示す。双方のセットに関して、上方制御および下方制御された遺伝子のほぼ等しい分布があった。対照的に、7日目と10日目の製造された細胞を比較すると、比較的少ないDEGが存在して90個の遺伝子が同定され、上方制御および下方制御された遺伝子の間で等しく分かれていた。
【0156】
Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)の解析では、製造過程における細胞周期関連遺伝子の喪失、およびアポトーシス関連遺伝子の上方制御が強調されている。
【0157】
製造中に起こる劇的な遺伝子発現変化をより良く理解するために、KEGG経路解析を実施して、異なる遺伝子セットで過剰に表現された遺伝子経路を同定した。KEGG経路は、例えば、生存、分裂、アポトーシスなどのCSAから得られた機能性結果に基づいて、T細胞の増殖および持続性に関連していてもよい。
【0158】
図28は、製造中のより後の時点と4日目とを比較すると、DNA複製および細胞周期遺伝子経路に有意な下方制御があることを示す。この効果に加えて、製造中の同一時期に、アポトーシス、p53シグナル伝達遺伝子経路における有意な上方制御があった。
図27の遺伝子発現結果と一致して、製造の7日目から10日目の間で、有意に濃縮された経路は非常に少なかった。
【0159】
実施例8
方法
T細胞製造
健常ドナー全血をHemacareから購入し、Ficoll勾配によってPBMCを単離した。4℃のPBS(Lonza17-516F)中の1μg/mlの抗CD3(eBioscience 16-0037-85)および1μg/mlの抗CD28(eBioscience 16-0289-85)抗体で一晩被覆された組織培養フラスコ上に、1×106個の生PBMC/mlを蒔種することによって、5%ヒトAB血清(Gemini100-318)を補充したTexMACS(Miltenyi130-097-196)培地中で、PBMCを16~24時間活性化した。翌日、全細胞を単離して、1×106個の生細胞/mlに再懸濁し、5mlをGrex24ウェルプレート(Wilson Wolf 80192M)のウェル内に播種した。細胞は、10ng/mlのIL-7(peprotech 200-07)、100ng/mlのIL-15(peprotech 200-15)、および10μg/mlの硫酸プロタミンの存在下で、模擬形質転換するか、またはTCRレンティウイルスコンストラクト(Lentigenによって製造される)で形質転換した。翌日、細胞に、上記濃度でIL-7およびIL-15を補充した35mlの完全TexMACSを供給した。細胞は、所望の製造時間(合計4、7、または10日間)に応じて、2、5、または8日間さらに培養した。製造後、細胞をカウントし、Cyrostore10内で5×106/mlで凍結し、-80℃に16~24時間置き、必要になるまでLN2気相で長期保存した。
【0160】
PkH67染色
細胞分裂は、増殖色素PkH67を希釈することによって測定してもよい。PkH67(Sigma PKH67GL)染色は、7日目または10日目の製造された細胞に比べてより大きな細胞サイズを考慮して、4日目の製造された細胞を2倍の濃度で染色したことを除いて、製造業者のプロトコルに従って実施した。PkH染色は、フローサイトメトリー生存色素染色前に実施した。
【0161】
サイトカイン感受性アッセイ(CSA)
T細胞生成物は、5%ヒトAB血清および100U/mLベンゾナーゼ(Sigma E10114)を補充したTexMACS中で、1~2x106/mlでおよそ4時間解凍し、休止させた。休止期間に続いて細胞をPkHで標識し、IL-7、IL-15、またはIL-2(R&D Systems 202-IL)を滴定したGrex24ウェルフラスコ内で、2×105個のリンパ球を合計21日間培養した。この間、3~4日毎に、容積測定フローサイトメトリーによって細胞をカウントし、7日毎に記憶T細胞パネルで表現型同定した。サイトカインは7日毎に、出発濃度まで補充した。
【0162】
フローサイトメトリー染色および取得
生細胞を定量化し、PBS中で1~2×106個の生細胞/mlに再懸濁し、次に製造業者のプロトコルに従って、生死染色で染色した。次に、細胞を流動緩衝液で洗浄し、下の表に示されるように所望の抗体濃度で再懸濁して4℃の暗所で15~30分間染色したが、例外としてCCR7染色は、37℃の血清非含有RPMI(Gibco11835-030)中で行った。次に、細胞を流動緩衝液で洗浄し、固定緩衝液中に再懸濁して、BD FortessaまたはMiltenyi MACSQuant分析装置上で取得するまで4℃で保存した。以下の表は、全てのフローサイトメトリー染色で使用される試薬を含む。
【0163】
【0164】
テロメア長判定
相対テロメア長は、製造業者の指示(Dako/Agilent K5327)に従って判定した。簡潔に述べると、T細胞と対照腫瘍細胞1301(4Nゲノム)とを1:1の比率で混合した。次に、細胞を透過処理し、テロメアPNA FITCプローブを一晩ハイブリダイズした。翌日、対比ヨウ化プロピジウム染色を実施して無傷の細胞を識別し、フローサイトメトリーによって細胞を取得した。試験細胞のテロメア長は、対照腫瘍細胞株1301のテロメア長との比として計算した。
【0165】
CDR3配列決定(Adaptive Biotech)およびT細胞受容体可変β鎖配列決定解析
ヒトTCRβ鎖のCDR3領域の免疫配列決定は、immunoSEQ(登録商標)アッセイ(ワシントン州シアトルのAdaptive Biotechnologies)を用いて実施した。抽出されたゲノムDNAは、バイアス制御されたマルチプレックスPCR中で増幅させ、高スループット配列決定がそれに続いた。さらなる解析のために、各固有のTCRβ CDR3領域の絶対量を同定して定量化するために、配列を畳み込んでフィルタリングした。
【0166】
TCRβ配列決定結果の統計解析
クローン性は1-Peilouの均一性と定義され、
【数1】
によって、生産的再配列に基づいて計算され、式中、πは再配列iの比例豊富度であり、Nは再配列の総数である。クローン性値は0~1までの範囲であり、頻度分布の形状を表す:0に近いクローン性値が非常に均一な頻度の分布を示す一方で、1に近い値は、その中に少数のクローンが高頻度で存在する、非対称分布が増している分布を示す。統計分析は、Rバージョン3.2で実施した。
【0167】
RNAseq(Novogene)データ解析
下流解析は、STAR、HTseq、Cufflink、および本発明者らによるラップスクリプトを含む、プログラムの組み合わせを用いて実施した。アライメントはTophatプログラムを用いて解析し、DESeq2/edgeRを通じて差次的発現差動発現を判定した。GOおよびKEGG濃縮は、ClusterProfilerによって実行した。Star-fusionおよびrMATSソフトウェアによって、遺伝子の融合、そして代替スプライシング事象の差を検出した。
【0168】
参照ゲノムへのRNAseq(Novogene)リードマッピング
参照ゲノムおよび遺伝子モデルのアノテーションファイルは、ゲノムウェブサイトブラウザ(NCBI/UCSC/Ensembl)から直接ダウンロードした。STARを用いて参照ゲノムのインデックスを構築し、STAR(v2.5)を用いて、対合末端クリーンリードを参照ゲノムに整列させた。STARは、Maximal Mappable Prefix(MMP)法を用いて、ジャンクションリードに対する正確なマッピング結果を生成し得る。
【0169】
遺伝子発現レベルのRNAseq(Novogene)定量化
HTSeq v0.6.1を用いて、各遺伝子のマッピングされたリード数をカウントした。次に、遺伝子の長さと、この遺伝子にマッピングされたリードカウントとに基づいて、各遺伝子のFPKMを計算した。FPKM、マップされた百万リード当たりのエクソンモデルのキロベース当たりリードは、配列決定深度および遺伝子長の影響を同時に考慮し、遺伝子の発現レベルを推定するために一般に用いられる。
【0170】
RNAseq(Novogene)差次的発現解析
生物学的複製物を有するDESeq2では、DESeq2 Rパッケージ(2_1.6.3)を用いて、2つの条件/グループ間の差次的発現解析(条件当たり2つの生物学的複製物)を実施した。DESeq2は、負の二項分布に基づくモデルを用いて、デジタル遺伝子発現データにおける差次的発現を判定するための統計的ルーチンを提供する。結果として得られたp値は、偽検出率(FDR)を制御するためのBenjaminiおよびHochbergのアプローチを用いて補正した。DESeq2によって検出された補正p値<0.05を有する遺伝子は、差次的に発現されるものとして割り当てた。
【0171】
生物学的反復実験なしのedgeRでは、差次的遺伝子発現解の前に、各配列決定ライブラリについて、1つのスケーリング正規化係数を通じて、edgeRプログラムパッケージによって読み取り数を補正したedgeR Rパッケージ(3.16.5)を用いて、2つの条件の差次的発現解析を実施した。p値は、BenjaminiおよびHochberg法を用いて補正した。0.05の補正p値、および1の絶対倍数変化を有意な差次的発現の閾値として設定した。
【0172】
RNAseq(Novogene)相関
対数調整を可能にするために、0FPKMを有する遺伝子に、0.001の値を割り当てる相関関係は、Rのcor.test関数を用いて、オプションセットalternative="greater"およびmethod="Spearman"で判定した。
【0173】
RNAseq(Novogene)クラスタリング
差分間の相関を同定するために、異なるサンプルを表現レベルFPKMを用いてクラスター化し、ヒートマップ、SOM(Self-organizationmapping)、シルエット係数を用いたkmeansの関数を備えた階層的クラスタリング距離法を用いて相関を確認し、Rのデフォルトパラメータで最適な分類を適応させた。
【0174】
差次的発現遺伝子のRNAseq(Novogene)GOおよびKEGG濃縮分析
遺伝子長の偏りが補正されたcluster Profiler Rパッケージによって、差次的発現遺伝子の遺伝子オントロジー(GO)濃縮分析を実施した。補正されたp値が0.05未満のGO項は、差次的発現遺伝子によって、有意に濃縮されていると見なされた。KEGGは、分子レベルの情報から、特にゲノム配列決定およびその他の高スループット実験技術によって作成された大規模分子データセットから、細胞、生物、および生態系などの生体系の高レベル機能および有用性を理解するためのデータベース資源である。クラスタープロファイラーRパッケージを用いて、KEGG経路における差次的発現遺伝子の統計的濃縮を試験した。
本開示の利点としては、高スループットの患者特異的様式で、移入された細胞の増殖および生存を増加させてアポトーシスを減少させることによって生体内で持続し、ひいては腫瘍の退縮を改善してACTの有効性を高めてもよい、生体外で製造されたT細胞のタイプを判定するために用いられてもよいサイトカイン感受性アッセイが挙げられてもよい。
【配列表】