(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】メラミン化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/42 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B32B27/42 102
(21)【出願番号】P 2021122458
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391034488
【氏名又は名称】イビケン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松原 広典
(72)【発明者】
【氏名】熊田 和真
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04880689(US,A)
【文献】特開平07-329265(JP,A)
【文献】特開平10-100357(JP,A)
【文献】特開2020-073779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン樹脂にシリカ粒子、及びアルミナ粒子から選ばれる少なくとも一つの無機粒子と、カチオン性界面活性剤とを含有した抗ウイルス層を有
し、
前記無機粒子の粒子径が100nm以下であり、
前記無機粒子の前記メラミン樹脂中の含有割合が、前記メラミン樹脂に対して固形分比で0.1質量%以上2質量%以下であり、
前記カチオン性界面活性剤の前記メラミン樹脂中の含有割合が、前記メラミン樹脂に対して固形分比で1質量%以上6質量%以下であることを特徴とするメラミン化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル、カウンター等の家具、扉等の建具などに使用される抗ウイルス性能を有するメラミン化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
メラミン化粧板は、強度、硬さ、耐熱性等の物性に優れていることから、テーブル、カウンター等の材料として好適に用いられている。近年、コロナウイルスなどウイルス感染による死者が報告され、世界中にウイルス感染が広がるパンデミックの危機にさらされている。そのため、公共施設のみならず様々な用途に抗ウイルス性能を有するメラミン化粧板が望まれている。また、ウイルス除去のためにアルコールや次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の液体で清掃する機会が増え、耐摩耗性、耐水性、及び耐アルコール性の耐久性も同時に求められている。
【0003】
メラミン化粧板に抗ウイルス性能を付与させるために、様々な方法が用いられている。抗ウイルス効果を発現させるためには、抗ウイルス剤を表面に露出させることが望ましい。
【0004】
図4に示すように、例えば、特許文献1には、基板(図示省略)と、基板に積層される表層樹脂層61とを有するメラミン化粧板60について記載されている。メラミン化粧板60は、表層樹脂層61上に露出して配置されるカチオン担体粒子62と、カチオン担体粒子62上に担持される抗ウイルス剤としての機能性物質63とを有する。カチオン担体粒子62に担持された機能性物質63により、抗ウイルス性が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、抗ウイルス剤を表面に露出させる方法では、抗ウイルス剤が摩耗により脱離しやすいという欠点がある。特許文献1のメラミン化粧板60では、例えばカチオン担体粒子62が表層樹脂層61から脱離すると、機能性物質63も一緒に脱離するため抗ウイルス性が低下しやすい。そのため、抗ウイルス性に関する表層樹脂層61の耐久性が低いという課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのメラミン化粧板は、メラミン樹脂にシリカ粒子、及びアルミナ粒子から選ばれる少なくとも一つの無機粒子と、カチオン性界面活性剤とを含有した抗ウイルス層を有することを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、抗ウイルス層がカチオン性界面活性剤を含有することにより、カチオン性界面活性剤に起因する抗ウイルス性を発現させることができる。また、カチオン性界面活性剤は、メラミン樹脂を含む抗ウイルス層に含有されているため、カチオン性界面活性剤の摩耗による脱離は抑制される。そのため、抗ウイルス性の低下を好適に抑制することができる。カチオン性界面活性剤は水及びアルコールに溶けやすい成分のため、脱離は抑制されても、水及びアルコールに溶出する虞がある。この課題を解決するために、抗ウイルス層に、シリカ粒子、及びアルミナ粒子から選ばれる少なくとも一つの無機粒子を有することにより、水及びアルコールへの溶出を抑制して抗ウイルス層の耐久性を向上させることができる。
【0009】
上記メラミン化粧板について、前記無機粒子の粒子径が100nm以下であることが好ましい。この構成によれば、抗ウイルス層内に無機粒子をより微細な状態で分散させることができる。無機粒子の層によって化粧板表面に被膜を形成し、これにより、抗ウイルス層内への水、及びアルコールの浸透をより好適に抑制することができる。
【0010】
上記メラミン化粧板について、前記カチオン性界面活性剤の前記メラミン樹脂中の含有割合が、前記メラミン樹脂に対して固形分比で1質量%以上6質量%以下であることが好ましい。これにより、抗ウイルス層の抗ウイルス性が好適なものとなる。
【0011】
上記メラミン化粧板について、前記シリカ粒子、及び前記アルミナ粒子から選ばれる少なくとも一つの無機粒子のメラミン樹脂中の含有割合が、メラミン樹脂に対して固形分比で0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。これにより、メラミン樹脂含浸紙の表面に分散した無機粒子が被膜としての機能を有しやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のメラミン化粧板によれば、抗ウイルス層の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】フェノール樹脂含浸紙層と、メラミン樹脂含浸紙層とで構成されたメラミン化粧板の断面図である。
【
図2】フェノール樹脂含浸紙層と、メラミン樹脂含浸印刷紙層と、メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層とで構成されたメラミン化粧板の断面図である。
【
図3】フェノール樹脂含浸紙層と、メラミン樹脂含浸印刷紙層と、メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層と、転写シート層とで構成されたメラミン化粧板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
メラミン化粧板の一実施形態を説明する。
図1に示すように、メラミン化粧板10は、フェノール樹脂含浸紙層20と、フェノール樹脂含浸紙層20の厚さ方向の片側に配置されたメラミン樹脂含浸紙層30とを有する。フェノール樹脂含浸紙層20は、4枚のフェノール樹脂含浸紙21が積層されて構成されている。メラミン樹脂含浸紙層30は、1枚のメラミン樹脂含浸紙によって構成されている。
【0015】
メラミン樹脂含浸紙層30は、内部に、シリカ粒子、及びアルミナ粒子から選ばれる少なくとも一つの無機粒子と、カチオン性界面活性剤とを含有している(いずれも図示省略)。後述のように、メラミン樹脂含浸紙層30は、抗ウイルス層として機能する。
【0016】
以下、メラミン化粧板10の各構成要素について説明する。
<フェノール樹脂含浸紙21>
フェノール樹脂含浸紙21は、コア紙と、コア紙に含浸されたフェノール樹脂とを有している。コア紙としては特に制限されず、公知のクラフト紙を用いることができる。クラフト紙の坪量は、100g/m2以上300g/m2以下であることが好ましい。
【0017】
フェノール樹脂としては特に制限されず、メラミン化粧板10に用いられる公知のフェノール樹脂を用いることができる。
フェノール樹脂含浸紙21におけるフェノール樹脂の含浸率は、40%以上60%以下であることが好ましい。なお、上記含浸率は、次式で求められる。
【0018】
含浸率(%)={(含浸後の含浸紙の質量)-(含浸前の含浸紙の質量)}÷(コア原紙の質量)×100
フェノール樹脂含浸紙層20を構成するフェノール樹脂含浸紙21の積層枚数は、4枚に限定されず、適宜積層枚数を選択することができる。
【0019】
<メラミン樹脂含浸紙>
メラミン樹脂含浸紙は、パターン紙と、パターン紙に含浸されたメラミン樹脂、無機粒子、及びカチオン性界面活性剤とを有している。パターン紙としては特に制限されず、公知のチタン紙を用いることができる。チタン紙の坪量は、60g/m2以上160g/m2以下であることが好ましい。
【0020】
メラミン樹脂としては特に制限されず、公知のメラミンモノマーとホルムアルデヒドを反応させた樹脂を主成分とする樹脂を用いることができる。
メラミン樹脂含浸紙におけるメラミン樹脂の含浸率は、70%以上140%以下であることが好ましい。
【0021】
<無機粒子>
無機粒子は、シリカ粒子、及びアルミナ粒子から選ばれる少なくとも一つである。
メラミン樹脂含浸紙が無機粒子を含有することにより、メラミン樹脂含浸紙の表面に分散した無機粒子に被膜としての機能を付与することができる。無機粒子が被膜として機能することにより、メラミン化粧板のメラミン樹脂含浸紙層内への水及びアルコールの浸透を抑制することができる。
【0022】
無機粒子の粒子径は、特に制限されないが、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。無機粒子の粒子径が100nm以下であることにより、無機粒子をより微細な状態で分散させることができる。そのため、上記被膜としての機能において、より緻密な被膜としての機能を付与することができる。
【0023】
粒子径が100nm以下の無機粒子としては、例えば公知のシリカゾルに含まれるシリカ粒子や、公知のアルミナゾルに含まれるアルミナ粒子を挙げることができる。
公知のシリカゾルやアルミナゾルとしては、ナノサイズのシリカ粒子やアルミナ粒子を、水又はアルコールに分散させたコロイド溶液を挙げることができる。
【0024】
無機粒子の粒子径の測定方法は特に制限されず、公知の粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
メラミン樹脂含浸紙中の無機粒子の含有割合は、メラミン樹脂に対して固形分比で0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
無機粒子の含有割合が0.1質量%以上であることにより、メラミン樹脂含浸紙の表面に分散する無機粒子の量が相対的に多くなる。そのため、メラミン樹脂含浸紙の表面に分散した無機粒子が被膜としての機能を有しやすくなる。
【0026】
無機粒子の含有割合が2質量%以下であることにより、メラミン樹脂含浸紙の外観を良好にすることができる。
<カチオン性界面活性剤>
カチオン性界面活性剤は、特に制限されず、公知のカチオン性界面活性剤を用いることができる。
【0027】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩等のアルキルアミン塩型、ハロゲン化(塩化、臭化、又はヨウ化)アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化(塩化、臭化、又はヨウ化)ジアルキルジメチルアンモニウム、アルキルベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩型が挙げられる。
【0028】
カチオン性界面活性剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
カチオン性界面活性剤は、抗ウイルス性を有することが知られている。そのため、カチオン性界面活性剤を含有することにより、メラミン樹脂含浸紙は、抗ウイルス作用を発現するようになる。
【0029】
メラミン樹脂含浸紙中のカチオン性界面活性剤の含有割合は、メラミン樹脂に対して固形分比で1質量%以上6質量%以下であることが好ましく、2質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
メラミン樹脂含浸紙中のカチオン性界面活性剤の含有割合が、1質量%以上6質量%以下であることにより、メラミン樹脂含浸紙の抗ウイルス性が好適なものとなる。また、メラミン樹脂含浸紙の外観を良好にすることができる。
【0031】
メラミン樹脂含浸紙の製造手順について説明する。
まず、メラミン樹脂を用意する。また、上記カチオン性界面活性剤の溶液と、上記無機粒子のコロイド溶液とを用意する。さらに、ローラに巻き取られた長尺状のパターン紙を用意する。
【0032】
メラミン樹脂液中に、上記カチオン性界面活性剤の溶液と、上記無機粒子のコロイド溶液とを添加する。添加した溶液を撹拌して、混合液を作製する。
この混合液に、ローラから引き出されたパターン紙を連続的に浸漬して、パターン紙にメラミン樹脂とカチオン性界面活性剤と無機粒子を含浸する。含浸を行ったパターン紙は、連続して加熱し、乾燥させる。乾燥後に、所定の寸法となるように裁断することにより、メラミン樹脂含浸紙が得られる。
【0033】
なお、上記フェノール樹脂含浸紙21においても同様に、ローラに巻き取られた長尺状のコア紙を引き出しながら、連続的にフェノール樹脂の溶液に含浸し、乾燥し、裁断を行うことにより作製することができる。
【0034】
メラミン化粧板10の製造手順について説明する。
上記フェノール樹脂含浸紙21を4枚積層する。その上に、メラミン樹脂含浸紙を1枚積層して積層体を作製する。この積層体を、約140℃に加熱しながら約8МPaの圧力でプレス成型することにより、フェノール樹脂含浸紙層20と、メラミン樹脂含浸紙層30とを有するメラミン化粧板10が作製される。この方法で作製されたメラミン化粧板10を、高圧メラミン化粧板ともいう。
【0035】
メラミン化粧板10の用途としては、特に制限されず、例えばテーブルの天板や、カウンター等の家具、扉等の建具などに使用される。
本実施形態の作用について記載する。
【0036】
メラミン樹脂含浸紙層30は、カチオン性界面活性剤を含有しているため、抗ウイルス性を発現する。カチオン性界面活性剤は、メラミン樹脂含浸紙層30に直接含有されており、従来技術のようにカチオン担体粒子上に担持された状態で含有されていない。そのため、カチオン性界面活性剤の脱離は抑制される。
【0037】
また、メラミン樹脂含浸紙層30が、無機粒子を有することにより、メラミン樹脂含浸紙層30において、フェノール樹脂含浸紙層20側とは反対側の表面に位置する無機粒子を被膜として機能させることができる。無機粒子が被膜として機能することにより、メラミン化粧板のメラミン樹脂含浸紙層30内への水及びアルコールの浸透が抑制される。そのために、カチオン性界面活性剤の水及びアルコールへの溶出が抑制される。
【0038】
本実施形態の効果について記載する。
(1)メラミン樹脂含浸紙層30がカチオン性界面活性剤を含有することにより、カチオン性界面活性剤に起因する抗ウイルス性を発現させることができる。また、カチオン性界面活性剤は、メラミン樹脂含浸紙層30に含有されているため、カチオン性界面活性剤の脱離は抑制される。したがって、抗ウイルス性の低下を好適に抑制することができる。また、メラミン樹脂含浸紙層30が無機粒子を有することにより、メラミン樹脂含浸紙層30において、フェノール樹脂含浸紙層20側とは反対側の表面に位置する無機粒子を被膜として機能させることができる。無機粒子が被膜として機能することにより、メラミン樹脂含浸紙層30内への水及びアルコールの浸透を抑制することができる。カチオン性界面活性剤が、メラミン樹脂含浸紙層30内に浸透した水及びアルコールに溶解して流出することを抑制することができるため、抗ウイルス性の低下を好適に抑制することができる。したがって、メラミン樹脂含浸紙層30の抗ウイルス性に関する耐久性を向上させることができる。
【0039】
(2)無機粒子の粒子径が100nm以下である。抗ウイルス層内に無機粒子をより微細な状態で分散させることができるため、より緻密な被膜としての機能を付与することができる。そのため、抗ウイルス層内への水及びアルコールの浸透をより好適に抑制することができる。したがって、カチオン性界面活性剤が、メラミン樹脂含浸紙層30内に浸透した水及びアルコールに溶解して流出することをより好適に抑制することができる。
【0040】
(3)本実施形態のメラミン化粧板10は、メラミン樹脂含浸紙層30を、抗ウイルス層として活用することができる。
(4)カチオン性界面活性剤のメラミン樹脂中の含有割合が、メラミン樹脂に対して固形分比で1質量%以上6質量%以下である。したがって、メラミン樹脂含浸紙の抗ウイルス性が好適なものとなる。また、メラミン樹脂含浸紙の外観を良好にすることができる。
【0041】
(5)無機粒子のメラミン樹脂中の含有割合が、メラミン樹脂に対して固形分比で0.1質量%以上2質量%以下である。したがって、メラミン樹脂含浸紙の表面に分散した無機粒子が被膜としての機能を有しやすくなる。また、メラミン樹脂含浸紙の外観を良好にすることができる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・本実施形態のメラミン化粧板10は、フェノール樹脂含浸紙層20と、フェノール樹脂含浸紙層20の厚さ方向の片側に配置されたメラミン樹脂含浸紙層30とで構成されていたが、この態様に限定されない。フェノール樹脂含浸紙層20の厚さ方向の両側にメラミン樹脂含浸紙層30が配置されていてもよい。
【0043】
・
図2に示すように、例えばフェノール樹脂含浸紙層20と、メラミン樹脂含浸印刷紙層31と、メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層40とがこの順で配置された構成であってもよい。この態様では、メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層40が、上記無機粒子とカチオン性界面活性剤とを含有しており、抗ウイルス層として機能する。
【0044】
・
図3に示すように、例えばフェノール樹脂含浸紙層20と、メラミン樹脂含浸印刷紙層31と、メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層40とがこの順で配置され、さらに、その上に転写シート層50として、コート樹脂層51とOPP層52(Oriented PolyPropylene)とが配置されていてもよい。コート樹脂層51を形成する樹脂としては、特に制限されないが、例えばフッ素樹脂、又はアクリル樹脂と、シロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマーを挙げることができる。この態様では、OPP層52が、上記無機粒子とカチオン性界面活性剤を含有している。コート樹脂層51とOPP層52は、公知の転写シートを用いる方法によって、メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層40上に配置することができる。OPP層52はプレス成型後に剥離し、メラミン化粧板10を作製する。この時、OPP層52の無機粒子とカチオン性界面活性剤、及びコート樹脂層51が、プレス成型時にメラミン化粧板10に転移する。これにより、メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層40の表面は、メラミン樹脂と、コート樹脂層51と、無機粒子と、カチオン性界面活性剤とが混在した状態となり、この混在した箇所が抗ウイルス層となる。
【実施例】
【0045】
以下、上記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
上記の製造手順に従って、
図1に示すメラミン化粧板10を作製した。
【0046】
カチオン性界面活性剤の原料には、市販の塩化ベンザルコニウム液を使用した。無機粒子の原料には、市販のシリカゾルを用いた。このシリカゾルはメタノールに分散しており、粒子径は約10nmであった。
【0047】
メラミン樹脂含浸紙層におけるカチオン性界面活性剤とシリカの含有割合は、それぞれ、メラミン樹脂に対して固形分比で3質量%、0.5質量%であった。
(実施例2)
実施例1において、カチオン性界面活性剤として塩化ジアルキルジメチルアンモニウムを使用した以外は同様に実施し、上記の製造手順に従って、
図1に示すメラミン化粧板10を作製した。
【0048】
(実施例3)
実施例1において、カチオン性界面活性剤として塩化ジデシルジメチルアンモニウムを使用した以外は同様に実施し、上記の製造手順に従って、
図1に示すメラミン化粧板10を作製した。
【0049】
(実施例4)
実施例1において、カチオン性界面活性剤の含有割合を0.5質量%にした以外は同様に実施し、上記の製造手順に従って、
図1に示すメラミン化粧板10を作製した。
【0050】
(実施例5)
実施例1において、カチオン性界面活性剤の含有割合を8質量%にした以外は同様に実施し、上記の製造手順に従って、
図1に示すメラミン化粧板10を作製した。
【0051】
(実施例6)
実施例1において、シリカの含有割合を0.05質量%にした以外は同様に実施し、上記の製造手順に従って、
図1に示すメラミン化粧板10を作製した。
【0052】
(実施例7)
実施例1において、シリカの含有割合を3質量%にした以外は同様に実施し、上記の製造手順に従って、
図1に示すメラミン化粧板10を作製した。
【0053】
(実施例8)
上記の製造手順に従って、
図2に示すメラミン化粧板10を作製した。
カチオン性界面活性剤と無機粒子の原料は、実施例1と同じものを使用した。
【0054】
メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層40におけるカチオン性界面活性剤とシリカの含有割合は、それぞれ、メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層40のメラミン樹脂に対して固形分比で3質量%、0.5質量%であった。
【0055】
(実施例9)
実施例8において、カチオン性界面活性剤として実施例2と同じものを使用した以外は同様に実施し、上記の製造手順に従って、
図2に示すメラミン化粧板10を作製した。
【0056】
(実施例10)
上記の製造手順に従って、
図3に示すメラミン化粧板10を作製した。OPP層52の厚さは25μmであった。カチオン性界面活性剤と無機粒子の原料は、実施例1と同じものを使用した。OPP層52におけるカチオン性界面活性剤とシリカの含有割合は、それぞれ、メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層40のメラミン樹脂に対して固形分比で3質量%、0.5質量%となるように塗布した。
【0057】
(実施例11)
実施例10において、カチオン性界面活性剤として実施例2と同じものを使用した以外は同様に実施し、上記の製造手順に従って、
図3に示すメラミン化粧板10を作製した。
【0058】
(比較例1)
カチオン性界面活性剤と無機粒子を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、メラミン化粧板を作製した。
【0059】
(比較例2)
無機粒子を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、メラミン化粧板を作製した。
【0060】
(比較例3)
無機粒子を含有させなかったこと以外は、実施例2と同様の方法により、メラミン化粧板を作製した。
【0061】
(比較例4)
無機粒子を含有させなかったこと以外は、実施例8と同様の方法により、メラミン化粧板を作製した。
【0062】
(評価試験)
実施例1~11、比較例1~4のメラミン化粧板について、化粧板の外観と、抗ウイルス性の即効性と耐久性を評価した。
【0063】
<化粧板外観の評価>
メラミン化粧板10を目視により観察し、化粧板の外観を下記の評価基準で評価した。
・化粧板外観の評価基準
○(良好):仕上りにむらが無く、外観が良好である場合
△(可):若干仕上りにむらがある場合
<抗ウイルス性の即効性の評価>
抗ウイルス性の即効性の評価は、JISR1756(ファインセラミックス-可視光応答形光触媒材料の抗ウイルス試験方法)に準拠して行った。具体的には、まず、各例のメラミン化粧板10から、縦50mm×横50mmの試験片を採取した。試験片の上にバクテリオファージQβの試験液(107個/mL濃度)を滴下した後、フィルムで覆い、蛍光灯の光を照射して30分間放置した。放置後の試験液に、SCDLP培地を加えた。さらに、生理食塩水に入れた。その後、10倍希釈および100倍希釈した液に大腸菌と軟質寒天培地を加えて撹拌した。これをシャーレに入った寒天培地上に流し込み、37℃で18時間培養した。培養後、シャーレ内のプラーク数をカウントして、感染価を算出した。
【0064】
抗ウイルス性の即効性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
・抗ウイルス性の即効性の評価基準
◎(優れる):比較例1の感染価と比較して、減少率が99%以上である場合
○(良好):比較例1の感染価と比較して、減少率が90%以上99%未満である場合
×(不可):比較例1の感染価と比較して、減少率が90%未満である場合
なお、比較例1の感染価を評価基準に使用しているため、比較例1の即効性の評価は×(不可)とした。
【0065】
<抗ウイルス性の耐久性の評価>
抗ウイルス性の耐久性の評価は、上記の抗ウイルス性の即効性の評価と同様に、各例のメラミン化粧板から、縦50mm×横50mmの試験片を採取した。この試験片に、機械を用いて85gの荷重をかけて36500回水拭きを行った。水拭きを行った試験片について、放置時間を8時間とした以外は、上記の抗ウイルス性の即効性の評価と同様の手順を行って、感染価を算出した。
【0066】
抗ウイルス性の耐久性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
・抗ウイルス性の耐久性の評価基準
◎(優れる):比較例1の感染価と比較して、減少率が99%以上である場合
○(良好):比較例1の感染価と比較して、減少率が90%以上99%未満である場合
×(不可):比較例1の感染価と比較して、減少率が90%未満である場合
なお、耐久性の評価においても、比較例1の感染価を評価基準に使用しているため、比較例1の耐久性の評価は×(不可)とした。
【0067】
【表1】
表1に示すように、実施例1~11のメラミン化粧板10は、30分間という短時間の放置であっても抗ウイルス性を有することが確認され、即効性に優れることが確認された。また、耐久性の評価試験においても優れた抗ウイルス性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0068】
10…メラミン化粧板、20…フェノール樹脂含浸紙層、21…フェノール樹脂含浸紙、30…メラミン樹脂含浸紙層、31…メラミン樹脂含浸印刷紙層、40…メラミン樹脂含浸オーバレイ紙層、50…転写シート層、51…コート樹脂層、52…OPP層。