(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/32 20100101AFI20230907BHJP
H01L 33/40 20100101ALI20230907BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230907BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01L33/32
H01L33/40
H01L21/28 301R
H01L21/28 301B
H01L21/285 P
(21)【出願番号】P 2021126106
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 紀隆
(72)【発明者】
【氏名】稲津 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】相田 晴久
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6867536(JP,B1)
【文献】特開2018-142687(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068965(WO,A1)
【文献】特開2021-072376(JP,A)
【文献】特開2019-079982(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125810(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0212109(US,A1)
【文献】特開2019-207925(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077748(WO,A1)
【文献】特開2020-205401(JP,A)
【文献】特開2011-034989(JP,A)
【文献】特開2021-034473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00-5/50
H01L 21/28
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、
前記n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、
前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含むp側電流拡散層と、を備え、
前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層の膜密度は、12g/cm
3以上であり、
前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層の膜密度は、12g/cm
3以上であ
り、
前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層の膜密度は、前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層の膜密度よりも大きく、
前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層のAr濃度は、前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層のAr濃度よりも小さい半導体発光素子。
【請求項2】
n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、
前記n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、
前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含むp側電流拡散層と、を備え、
前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層の膜密度は、12g/cm
3
以上であり、
前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層の膜密度は、12g/cm
3
以上であり、
前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層のAr濃度は、1×10
18
/cm
3
未満であり、
前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層のAr濃度は、1×10
18
/cm
3
以上である半導体発光素子。
【請求項3】
前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層の膜密度は、前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層の膜密度よりも大きい、請求項
2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層の膜密度は、12.2g/cm
3
以上であり、
前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層の膜密度は、12.2g/cm
3
以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層上に、AlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、
前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、
前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極を蒸着法により形成する工程と、
前記p側コンタクト電極を500℃以上650℃以下の温度にてアニールする工程と、
前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含むp側電流拡散層をスパッタリング法により形成する工程と、
前記p側電流拡散層を200℃以上400℃以下の温度にて加熱する工程と、を備える、半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、基板上に積層されるn型半導体層、活性層およびp型半導体層を有する。p型半導体層上にはp側コンタクト電極が設けられ、p側コンタクト電極上には誘電体層が設けられる。深紫外光を出力する発光素子において、発光波長に対して高反射率を有するロジウム(Rh)がp側コンタクト電極に用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Rhは、誘電体材料との接着性が低いため、誘電体層の剥離によって素子信頼性が低下する可能性がある。また、p側コンタクト電極上の誘電体層を除去して接続開口を形成する際に、接続開口にて露出するp側コンタクト電極に当該誘電体層の除去に伴うダメージが生じ、p側コンタクト電極の反射特性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、半導体発光素子の信頼性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の半導体発光素子は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、活性層上に設けられるp型半導体層と、p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含むp側電流拡散層と、を備える。p側コンタクト電極に含まれるRh層の膜密度は、12g/cm3以上であり、p側電流拡散層に含まれるRh層の膜密度は、12g/cm3以上である。
【0007】
本発明の別の態様は、半導体発光素子の製造方法である。この方法は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層上に、AlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、活性層上にp型半導体層を形成する工程と、p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極を蒸着法により形成する工程と、p側コンタクト電極を500℃以上650℃以下の温度にてアニールする工程と、p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含むp側電流拡散層をスパッタリング法により形成する工程と、p側電流拡散層を200℃以上400℃以下の温度にて加熱する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体発光素子の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】p側コンタクト電極およびp側電流拡散層の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】n側コンタクト電極およびn側電流拡散層の構成を概略的に示す断面図である。
【
図4】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図5】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図6】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図7】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図8】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図9】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0011】
本実施の形態に係る半導体発光素子は、中心波長λが約360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成され、いわゆるDUV-LED(Deep UltraViolet-Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料が用いられる。本実施の形態では、特に、中心波長λが約240nm~320nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0012】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、少なくとも窒化アルミニウム(AlN)および窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In1-x-yAlxGayN(0<x+y≦1、0<x<1、0<y<1)の組成で表すことができ、AlGaNまたはInAlGaNを含む。本明細書の「AlGaN系半導体材料」は、例えば、AlNおよびGaNのそれぞれのモル分率が1%以上であり、好ましくは5%以上、10%以上または20%以上である。
【0013】
また、AlNを含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、GaNやInGaNが含まれる。同様に、GaNを含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、AlNやInAlNが含まれる。
【0014】
図1は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、基板20と、ベース層22と、n型半導体層24と、活性層26と、p型半導体層28と、p側コンタクト電極30と、n側コンタクト電極32と、p側電流拡散層34と、n側電流拡散層36と、保護層38と、p側パッド電極40と、n側パッド電極42とを備える。
【0015】
図1において、矢印Aで示される方向を「上下方向」または「厚み方向」ということがある。また、基板20から見て、基板20から離れる方向を上側、基板20に向かう方向を下側ということがある。
【0016】
基板20は、第1主面20aと、第1主面20aとは反対側の第2主面20bとを有する。第1主面20aは、ベース層22からp型半導体層28までの各層を成長させるための結晶成長面である。基板20は、半導体発光素子10が発する深紫外光に対して透光性を有する材料から構成され、例えば、サファイア(Al2O3)から構成される。第1主面20aには、深さおよびピッチがサブミクロン(1μm以下)である微細な凹凸パターンが形成される。このような基板20は、パターン化サファイア基板(PSS;Patterned Sapphire Substrate)とも呼ばれる。第2主面20bは、活性層26が発する深紫外光を外部に取り出すための光取り出し面である。基板20は、AlNから構成されてもよいし、AlGaNから構成されてもよい。基板20は、第1主面20aがパターン化されていない平坦面によって構成される通常の基板であってもよい。
【0017】
ベース層22は、基板20の第1主面20aの上に設けられる。ベース層22は、n型半導体層24を形成するための下地層(テンプレート層)である。ベース層22は、例えば、アンドープのAlN層であり、具体的には高温成長させたAlN(HT-AlN;High Temperature-AlN)層である。ベース層22は、AlN層上に形成されるアンドープのAlGaN層を含んでもよい。基板20がAlN基板またはAlGaN基板である場合、ベース層22は、アンドープのAlGaN層のみから構成されてもよい。つまり、ベース層22は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含む。
【0018】
n型半導体層24は、ベース層22の上面22aに設けられる。n型半導体層24は、n型のAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、n型の不純物としてSiがドープされる。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択され、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように構成される。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光の波長よりも大きいバンドギャップを有し、例えば、バンドギャップが4.3eV以上となるように構成される。n型半導体層24は、AlNのモル分率が80%以下、つまり、バンドギャップが5.5eV以下となるように構成されることが好ましく、AlNのモル分率が70%以下(つまり、バンドギャップが5.2eV以下)となるように構成されることがより望ましい。n型半導体層24は、1μm以上3μm以下の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。
【0019】
n型半導体層24は、不純物であるSiの濃度が1×1018/cm3以上5×1019/cm3以下となるように構成される。n型半導体層24は、Si濃度が5×1018/cm3以上3×1019/cm3以下となるように構成されることが好ましく、7×1018/cm3以上2×1019/cm3以下となるように構成されることがより好ましい。ある実施例において、n型半導体層24のSi濃度は、1×1019/cm3前後であり、具体的には8×1018/cm3以上1.5×1019/cm3以下の範囲である。
【0020】
n型半導体層24は、第1上面24aと、第2上面24bとを有する。第1上面24aは、活性層26が形成される部分であり、第2上面24bは、活性層26が形成されない部分である。
【0021】
活性層26は、n型半導体層24の第1上面24aに設けられる。活性層26は、AlGaN系半導体材料から構成され、n型半導体層24とp型半導体層28の間に挟まれてダブルへテロ構造を形成する。活性層26は、波長355nm以下の深紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成され、例えば、波長320nm以下の深紫外光を出力できるようにAlN組成比が選択される。
【0022】
活性層26は、例えば、単層または多層の量子井戸構造を有し、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される障壁層と、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される井戸層とを含む。活性層26は、例えば、n型半導体層24と直接接触する第1障壁層と、第1障壁層上に設けられる第1井戸層とを含む。第1井戸層とp型半導体層28の間に、障壁層および井戸層の一以上のペアが追加的に設けられてもよい。障壁層および井戸層のそれぞれは、1nm以上20nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上10nm以下の厚さを有する。
【0023】
活性層26とp型半導体層28の間には、電子ブロック層がさらに設けられてもよい。電子ブロック層は、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上となるように構成される。電子ブロック層は、AlNのモル分率が80%以上となるように構成されてもよく、GaNを含有しないAlN系半導体材料から構成されてもよい。電子ブロック層は、1nm以上10nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上5nm以下の厚さを有する。
【0024】
p型半導体層28は、活性層26の上に形成される。p型半導体層28は、p型のAlGaN系半導体材料層またはp型のGaN系半導体材料層であり、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされるAlGaN層またはGaN層である。p型半導体層28は、例えば、20nm以上400nm以下の厚さを有する。
【0025】
p型半導体層28は、複数層によって構成されてもよい。p型半導体層28は、例えば、p型クラッド層とp型コンタクト層を有してもよい。p型クラッド層は、p型コンタクト層と比較してAlN比率の高いp型AlGaN層であり、活性層26と直接接触するように設けられる。p型コンタクト層は、p型クラッド層と比較してAlN比率の低いp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p型クラッド層の上に設けられ、p側コンタクト電極30と直接接触するように設けられる。p型クラッド層は、p型第1クラッド層と、p側第2クラッド層とを有してもよい。
【0026】
p型第1クラッド層は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択される。p型第1クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように構成される。p型第1クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率と同程度、または、n型半導体層24のAlN比率よりも大きい。p型クラッド層のAlN比率は、70%以上または80%以上であってもよい。p型第1クラッド層は、10nm以上100nm以下の厚さを有し、例えば、15nm以上70nm以下の厚さを有する。
【0027】
p型第2クラッド層は、p型第1クラッド層上に設けられる。p型第2クラッド層は、AlN比率が中程度のp型AlGaN層であり、p型第1クラッド層よりもAlN比率が低く、p型コンタクト層よりもAlN比率が高い。p型第2クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように形成される。p型第2クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率の±10%程度となるように形成される。p型第2クラッド層は、5nm以上250nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上150nm以下の厚さを有する。なお、p型第2クラッド層が設けられなくてもよく、p型クラッド層がp型第1クラッド層のみで構成されてもよい。
【0028】
p型コンタクト層は、相対的に低AlN比率のp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p側コンタクト電極30と良好なオーミック接触を得るためにAlN比率が20%以下となるよう構成され、好ましくは、AlN比率が10%以下、5%以下または0%となるように形成される。つまり、p型コンタクト層は、実質的にAlNを含まないp型GaN系半導体材料で形成されうる。その結果、p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光を吸収しうる。p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光の吸収量を小さくするために薄く形成されることが好ましい。p型コンタクト層は、5nm以上30nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上20nm以下の厚さを有する。
【0029】
p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aに設けられる。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28(例えば、p型コンタクト層)とオーミック接触可能であり、活性層26が発する深紫外光に対する反射率が高い材料で構成される。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aと直接接触するRh層を含む。p側コンタクト電極30は、例えばRh層のみからなる。p側コンタクト電極30に含まれるRh層の厚さは、50nm以上200nm以下であり、例えば70nm以上150nm以下である。
【0030】
p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度は、12.0g/cm3以上であり、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3以下である。p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度を大きくすることにより、反射電極としての機能を高めることができる。Rh層の膜密度を12g/cm3以上とすることにより、波長280nmの紫外光に対して65%以上の反射率が得られる。一例として、p側コンタクト電極30に含まれるRh層は、12.42g/cm3の膜密度を有し、波長280nmの紫外光に対して66.8%の反射率を有する。また、p側コンタクト電極30に含まれるRh層のAr濃度は、1×1016/cm3以上1×1018/cm3未満である。p側コンタクト電極30に含まれるRh層のAr濃度を低くすることにより、Rh層の膜質を向上させ、反射電極としての機能を高めることができる。
【0031】
n側コンタクト電極32は、n型半導体層24の第2上面24bに設けられる。n側コンタクト電極32は、順に積層される第1Ti層、Al層、第2Ti層およびTiN層を含む。n側コンタクト電極32の構成の詳細は、
図3を参照しながら別途後述する。
【0032】
p側電流拡散層34は、p側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bと直接接触し、p側コンタクト電極30の全体を被覆するように設けられる。p側電流拡散層34は、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含む。p側電流拡散層34の構成の詳細は、
図2を参照しながら別途後述する。
【0033】
n側電流拡散層36は、n側コンタクト電極32の上面32aおよび側面32bを被覆するように設けられる。n側電流拡散層36は、p側電流拡散層34と同様の構成を有し、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含む。n側電流拡散層36の構成の詳細は、
図3を参照しながら別途後述する。
【0034】
保護層38は、p側電流拡散層34の上に設けられるp側パッド開口38pと、n側電流拡散層36の上に設けられるn側パッド開口38nとを有し、p側パッド開口38pと異なる箇所においてp側電流拡散層34を被覆し、n側パッド開口38nとは異なる箇所においてn側電流拡散層36を被覆する。保護層38は、素子上部の全体を被覆するように設けられ、ベース層22の上面22aと、n型半導体層24の第2上面24bおよび側面24cと、活性層26の側面26bと、p型半導体層28の上面28aおよび側面28bと、p側電流拡散層34と、n側電流拡散層36とを被覆するように設けられる。
【0035】
保護層38は、第1誘電体層44と、第2誘電体層46と、第3誘電体層48とを含む。第1誘電体層44、第2誘電体層46および第3誘電体層48のそれぞれは、活性層26が発する深紫外光を実質的に吸収しない材料から構成され、活性層26が発する深紫外光の波長に対する透過率が80%以上となる材料から構成される。このような材料として、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)などの酸化物材料が挙げられる。
【0036】
第1誘電体層44は、ベース層22、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36に直接接触する。第1誘電体層44は、第1酸化物材料から構成され、SiO2、Al2O3またはHfO2から構成される。第1誘電体層44は、好ましくはSiO2から構成される。第1誘電体層44の厚さは、300nm以上1500nm以下であり、例えば600nm以上1000nm以下である。
【0037】
第2誘電体層46は、第1誘電体層44の上に設けられ、第1誘電体層44の全体を被覆するように設けられる。第2誘電体層46は、第1誘電体層44とは異なる第2酸化物材料から構成され、SiO2、Al2O3またはHfO2から構成される。第2誘電体層46は、好ましくはAl2O3から構成される。第2誘電体層46の材料を第1誘電体層44の材料と異ならせることで、第1誘電体層44に発生しうるピンホールを塞ぐことができ、封止性を高めることができる。第2誘電体層46の厚さは、10nm以上100nm以下であり、例えば20nm以上50nm以下である。
【0038】
第3誘電体層48は、第2誘電体層46の上に設けられ、第2誘電体層46の全体を被覆するように設けられる。第3誘電体層48は、第2酸化物材料とは異なる第3酸化物材料から構成され、好ましくはSiO2から構成される。第3誘電体層48の材料を第2誘電体層46の材料と異ならせることで、第2誘電体層46に発生しうるピンホールを塞ぐことができ、封止性を高めることができる。第3誘電体層48の厚さは、10nm以上100nm以下であり、例えば20nm以上50nm以下である。
【0039】
p側パッド電極40は、p側電流拡散層34の上に設けられ、p側パッド開口38pにおいてp側電流拡散層34と接続する。p側パッド電極40は、p側パッド開口38pを塞ぐように設けられ、p側パッド開口38pの外側において保護層38の上に重なる。p側パッド電極40は、p側電流拡散層34を介してp側コンタクト電極30と電気的に接続される。
【0040】
n側パッド電極42は、n側電流拡散層36の上に設けられ、n側パッド開口38nにおいてn側電流拡散層36と接続する。n側パッド電極42は、n側パッド開口38nを塞ぐように設けられ、n側パッド開口38nの外側において保護層38の上に重なる。n側パッド電極42は、n側電流拡散層36を介してn側コンタクト電極32と電気的に接続される。
【0041】
p側パッド電極40およびn側パッド電極42は、半導体発光素子10をパッケージ基板などに実装する際に接合される部分である。p側パッド電極40およびn側パッド電極42は、例えば、Ni/Au、Ti/AuまたはTi/Pt/Auの積層構造を含む。p側パッド電極40およびn側パッド電極42のそれぞれの厚さは、100nm以上であり、例えば200nm以上1000nm以下である。
【0042】
図2は、p側コンタクト電極30およびp側電流拡散層34の構成を概略的に示す。p側コンタクト電極30は、Rh層からなる。p側電流拡散層34は、第1TiN層50と、多層金属膜52と、第2TiN層54とを含む。p側電流拡散層34は、Ti層56と、Au層58とをさらに含んでもよい。
【0043】
p側電流拡散層34の第1TiN層50は、p側コンタクト電極30のRh層と直接接触する。p側電流拡散層34の多層金属膜52は、第1TiN層50上に設けられる。p側電流拡散層34の第2TiN54層は、多層金属膜52上に設けられる。第1TiN層50および第2TiN層54は、導電性を有するTiNから構成される。第1TiN層50および第2TiN層54のそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、50nm以上150nm以下である。
【0044】
p側電流拡散層34の多層金属膜52は、Ti層52aおよびRh層52bを含む。多層金属膜52は、交互に積層される複数のTi層52aおよび複数のRh層52bを有してもよい。Ti層52aおよびRh層52bのそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、20nm以上150nm以下である。p側電流拡散層34に含まれるRh層52bの膜密度は、12.0g/cm3以上であり、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3未満である。p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度は、Rh層52bの膜密度より大きくてもよい。一例として、p側電流拡散層34に含まれるRh層52bは、12.37g/cm3の膜密度を有し、波長280nmの紫外光に対して66.0%の反射率を有する。p側電流拡散層34に含まれるRh層52bのAr濃度は、p側コンタクト電極30に含まれるRh層のAr濃度よりも大きい。Rh層52bのAr濃度は、例えば1×1018/cm3以上5×1020/cm3以下である。
【0045】
p側電流拡散層34のTi層56は、第2TiN層54の上に設けられる。Ti層56の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。p側電流拡散層34のAu層58は、Ti層56の上に設けられる。Au層58の厚さは、100nm以上500nm以下であり、例えば、150nm以上300nm以下である。
【0046】
図3は、n側コンタクト電極32およびn側電流拡散層36の構成を概略的に示す。n側コンタクト電極32は、第1Ti層60と、Al層62と、第2Ti層64と、TiN層66とを含む。n側電流拡散層36は、第1TiN層68と、多層金属膜70と、第2TiN層72とを含む。n側電流拡散層36は、Ti層74と、Au層76とをさらに含んでもよい。
【0047】
n側コンタクト電極32の第1Ti層60は、n型半導体層24の第2上面24bと直接接触する。第1Ti層60の厚さは、1nm以上10nm以下であり、好ましくは5nm以下または2nm以下である。n側コンタクト電極32のAl層62は、第1Ti層60上に設けられ、第1Ti層60と直接接触する。Al層62の厚さは、200nm以上であり、例えば300nm以上1000nm以下である。n側コンタクト電極32の第2Ti層64は、Al層62上に設けられ、Al層62と直接接触する。第2Ti層64の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側コンタクト電極32のTiN層66は、第2Ti層64上に設けられ、第2Ti層64と直接接触する。TiN層66は、導電性を有するTiNから構成される。TiN層66の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。
【0048】
n側電流拡散層36の第1TiN層68は、n側コンタクト電極32の上面32aおよび側面32bと直接接触する。n側電流拡散層36の多層金属膜70は、第1TiN層68上に設けられる。n側電流拡散層36の第2TiN層72は、多層金属膜70上に設けられる。第1TiN層68および第2TiN層72は、導電性を有するTiNから構成される。第1TiN層68および第2TiN層72のそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、50nm以上150nm以下である。
【0049】
n側電流拡散層36の多層金属膜70は、p側電流拡散層34の多層金属膜52と同様、Ti層70aとRh層70bから構成される。多層金属膜70は、交互に積層される複数のTi層70aおよび複数のRh層70bを有してもよい。多層金属膜70に含まれるTi層70aおよびRh層70bのそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、20nm以上150nm以下である。n側電流拡散層36に含まれるRh層70bの膜密度およびAr濃度は、p側電流拡散層34に含まれるRh層52bの膜密度およびAr濃度とそれぞれ同等である。Rh層70bの膜密度は、12.0g/cm3以上であり、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3未満である。Rh層70bのAr濃度は、1×1018/cm3以上1×1021/cm3未満である。
【0050】
n側電流拡散層36のTi層74は、第2TiN72層上に設けられる。Ti層74の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側電流拡散層36のAu層76は、Ti層74の上に設けられる。Au層76の厚さは、100nm以上500nm以下であり、例えば、150nm以上300nm以下である。
【0051】
つづいて、半導体発光素子10の製造方法について説明する。
図4~
図9は、半導体発光素子10の製造工程を概略的に示す図である。まず、
図4において、基板20の第1主面20aの上にベース層22、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28を順に形成する。
【0052】
基板20は、例えばパターン化サファイア基板である。ベース層22は、例えばHT-AlN層と、アンドープのAlGaN層とを含む。n型半導体層24、活性層26およびp型半導体層28は、AlGaN系半導体材料、AlN系半導体材料またはGaN系半導体材料から構成される半導体層であり、有機金属化学気相成長(MOVPE;Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法や、分子線エピタキシ(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。
【0053】
つづいて、
図4に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体層28の上面28aにマスク80を形成する。マスク80を形成した状態において、マスク80と重ならない領域にあるp型半導体層28および活性層26をドライエッチングなどにより除去し、n型半導体層24の第2上面24bを露出させる。このエッチング工程により、p型半導体層28の側面28b、活性層26の側面26bおよびn型半導体層24の第2上面24bが形成される。その後、マスク80が除去される。
【0054】
次に、
図5に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体層28の上面28aにp側コンタクト電極30を形成する。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aと直接接触するRh層を含む。p側コンタクト電極30のRh層は、蒸着法により100℃以下の温度で形成される。蒸着法によりRh層を形成することにより、スパッタリング法を用いる場合に比べて、p型半導体層28の上面28aに対するダメージを抑制でき、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗を向上できる。
【0055】
p側コンタクト電極30の形成後、p側コンタクト電極30をアニールする。p側コンタクト電極30は、例えば、RTA(Rapid Thermal Annealing)法を用いて、500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。p側コンタクト電極30のアニール処理により、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗が低下するとともに、p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度が12.0g/cm3以上に増加する。蒸着法により100℃以下の温度で形成されるRh層の膜密度は、12.0g/cm3未満であり、例えば11.6g/cm3以上11.9g/cm3以下である。また、蒸着法により100℃以下の温度で形成されるRh層の波長280nmに対する反射率は65%未満であり、例えば、60%~61%程度である。一方、アニール処理後におけるp側コンタクト電極30のRh層の膜密度は、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3以下となる。アニール処理後におけるp側コンタクト電極30のRh層の波長280nmに対する反射率は、65%以上であり、例えば66.8%である。
【0056】
次に、
図6に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、n型半導体層24の第2上面24bにn側コンタクト電極32を形成する。n側コンタクト電極32は、n型半導体層24の第2上面24bと接触し、順に積層される第1Ti層60、Al層62、第2Ti層64およびTiN層66(
図3参照)を含む。n側コンタクト電極32を構成する第1Ti層60、Al層62、第2Ti層64およびTiN層66は、スパッタリング法により形成される。
【0057】
n側コンタクト電極32の形成後、n側コンタクト電極32をアニールする。n側コンタクト電極32は、例えば、RTA法を用いて、500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。n側コンタクト電極32のアニール処理により、n側コンタクト電極32のコンタクト抵抗が低下する。
【0058】
次に、
図7に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bを被覆するようにp側電流拡散層34を形成し、n側コンタクト電極32の上面32aおよび側面32bを被覆するようにn側電流拡散層36を形成する。p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36は、Arガスを用いるスパッタリング法を用いて100℃以下の温度で同時に形成できる。なお、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36を別々に形成してもよい。
図2および
図3に示されるように、まず、第1TiN層50,68を形成し、第1TiN層50,68上にTi層52a,70aとRh層52b、70bを含む多層金属膜52,70を形成し、多層金属膜52,70上に第2TiN層54,72を形成する。第2TiN層54,72上にさらにTi層56,74およびAu層58,76を形成してもよい。スパッタリング法により100℃以下の温度で形成されるRh層の膜密度は、12.0g/cm
3未満であり、例えば11.6g/cm
3以上11.9g/cm
3以下である。スパッタリング法により100℃以下の温度で形成されるRh層の波長280nmに対する反射率は65%未満であり、例えば、60%~61%程度である。
【0059】
次に、
図8に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36の上にマスク82を形成する。マスク82を形成した状態において、マスク82と重ならない領域にあるn型半導体層24をドライエッチングなどにより除去し、ベース層22の上面22aを露出させる。このエッチング工程により、n型半導体層24の側面24cが形成される。その後、マスク82が除去される。
【0060】
次に、
図9に示すように、素子構造の上面全体を被覆するように保護層38を形成する。まず、第1酸化物材料から構成される第1誘電体層44が形成される。第1誘電体層44は、SiO
2から構成されることができ、プラズマ励起化学気相成長(PECVD;Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)を用いて形成できる。第1誘電体層44は、ベース層22の上面22bと、n型半導体層24の第2上面24bおよび側面24cと、活性層26の側面26cと、p型半導体層28の上面28aおよび側面28cと、p側電流拡散層34と、n側電流拡散層36とを被覆するように設けられる。
【0061】
つづいて、第1誘電体層44の上に第2酸化物材料から構成される第2誘電体層46を形成する。第2誘電体層46は、第1誘電体層44の上面全体を被覆するように形成される。第2誘電体層46は、Al2O3から構成されることができ、原子層堆積(ALD;Atomic Layer Deposition)法を用いて形成できる。ALD法を用いることで、緻密で膜密度の高い誘電体膜を形成できる。その後、第2誘電体層46の上にSiO2から構成される第3誘電体層48を形成する。第3誘電体層48は、第2誘電体層46の上面全体を被覆するように形成される。第3誘電体層48は、ALD法を用いて形成できる。
【0062】
保護層38を形成する工程では、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36が200℃以上400℃以下の温度にて加熱される。p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36に含まれるRh層52b,70bの膜密度は、200℃以上400℃以下の温度にて加熱されることにより、12.0g/cm3以上に増加する。スパッタリング法により100℃以下の温度で形成されるRh層の膜密度は、12.0g/cm3未満であり、例えば11.6g/cm3以上11.9g/cm3以下である。また、スパッタリング法により100℃以下の温度で形成されるRh層52b,70bの波長280nmの紫外光に対する反射率は、65%未満であり、例えば、60%~61%程度である。一方、200℃以上400℃以下の温度にて加熱した後のRh層52b,70bは、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3未満の膜密度を有し、波長280nmの紫外光に対して65%以上(例えば66%)の反射率を有する。
【0063】
なお、スパッタリング法により100℃以下の温度で形成したRh層を500℃以上650℃以下の温度でアニールすると、アニール処理後のRh層の膜密度は12.0g/cm3未満となる。したがって、p側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32のアニール処理は、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36の形成前に行うことが好ましい。
【0064】
次に、
図1に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、保護層38をドライエッチングなどにより部分的に除去し、p側パッド開口38pおよびn側パッド開口38nを形成する。p側パッド開口38pおよびn側パッド開口38nは、保護層38を構成する第1誘電体層44、第2誘電体層46および第3誘電体層48を貫通するように形成され、p側パッド開口38pにおいてp側電流拡散層34が露出し、n側パッド開口38nにおいてn側電流拡散層36が露出する。つづいて、p側パッド開口38pを塞ぐように、p側パッド開口38pにおいてp側電流拡散層34と接続するp側パッド電極40を形成し、n側パッド開口38nを塞ぐように、n側パッド開口38nにおいてn側電流拡散層36と接続するn側パッド電極42を形成する。p側パッド電極40およびn側パッド電極42は、同時に形成できるが、別々に形成されてもよい。
【0065】
以上の工程により、
図1に示す半導体発光素子10ができあがる。
【0066】
本実施の形態によれば、Rh層を含むp側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bをp側電流拡散層34によって被覆し、p側電流拡散層34と接触する保護層38を形成することにより、p側コンタクト電極30に対する保護層38の接着性を向上できる。
【0067】
本実施の形態によれば、保護層38にp側パッド開口38pを形成する際、p側電流拡散層34に含まれるRh層をエッチングストップ層として用いることができる。これにより、p側コンタクト電極30に含まれるRh層へのダメージを防ぎ、p側コンタクト電極30の反射特性の低下を防止できる。
【0068】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度は、12g/cm3以上であるため、p側コンタクト電極30に含まれるRh層を緻密にして紫外光に対する反射率を高めることができる。また、p側電流拡散層34に含まれるRh層52bの膜密度も12g/cm3以上であるため、p側電流拡散層に含まれるRh層を緻密にしてp側電流拡散層による封止性を高めることができる。
【0069】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度を、p側電流拡散層34に含まれるRh層52bの膜密度よりも大きくし、例えば、12.4g/cm3以上とすることにより、p側コンタクト電極30に含まれるRh層をより緻密にして紫外光に対する反射率をより高めることができる。
【0070】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30に含まれるRh層のAr濃度は、p側電流拡散層34に含まれるRh層52bのAr濃度よりも小さく、1×1018/cm3未満であるため、p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜質を向上できる。これにより、p側コンタクト電極30を高効率の反射電極として機能させることができる。
【0071】
本実施の形態によれば、p側電流拡散層34がRh層52bを含むことにより、p側コンタクト電極30の封止性を高めることができる。同様に、n側電流拡散層36がRh層70bを含むことにより、n側コンタクト電極32の封止性を高めることができる。また、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36に含まれるRh層52b,70bの膜密度は、12.0g/cm3以上であるため、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36に含まれるRh層52b,70bを緻密にして封止性をより高めることができる。
【0072】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30に含まれるRh層を蒸着法により形成することにより、スパッタリング法に比べて、Rh層の形成時におけるp型半導体層28の上面28aのダメージを抑制し、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗をより低くできる。一方、p側電流拡散層34に含まれるRh層52bをスパッタリング法により形成することにより、蒸着法に比べて、p側コンタクト電極30に対する接着性を高めることができ、p側電流拡散層34の剥離を抑制できる。
【0073】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30に含まれるRh層を蒸着法により形成することにより、スパッタリング法にて用いられるArガスの混入を防ぐことができ、スパッタリング法に比べて、Rh層の膜質を向上できる。
【0074】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30を500℃以上650℃以下の温度にてアニールすることにより、アニール処理前に比べて、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗を低下させるとともに、p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度を向上できる。
【0075】
本実施の形態によれば、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36を200℃以上400℃以下の温度にて加熱することにより、加熱処理前に比べて、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36に含まれるRh層52b、70bの膜密度を高めることができる。これにより、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36の封止性を向上できる。
【0076】
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。本発明は上述の実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0077】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0078】
本発明の第1の態様は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、前記n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、前記活性層上に設けられるp型半導体層と、前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含むp側電流拡散層と、を備え、前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層の膜密度は、12g/cm3以上であり、前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層の膜密度は、12g/cm3以上である半導体発光素子である。第1の態様によれば、Rh層を含むp側コンタクト電極の上面および側面を、Rh層を含むp側電流拡散層によって被覆することにより、p側コンタクト電極の封止性を高めることができる。また、p側コンタクト電極に含まれるRh層を緻密にして紫外光に対する反射率を高めるとともに、p側電流拡散層に含まれるRh層を緻密にしてp側電流拡散層による封止性を高めることができる。
【0079】
本発明の第2の態様は、前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層の膜密度は、前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層の膜密度よりも大きい、第1の態様に記載の半導体発光素子である。第2の態様によれば、p側コンタクト電極に含まれるRh層をより緻密にして紫外光に対する反射率をより高めることができる。
【0080】
本発明の第3の態様は、前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層のAr濃度は、前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層のAr濃度よりも小さい、第1または第2の態様に記載の半導体発光素子である。第3の態様によれば、Ar濃度を小さくすることにより、p側コンタクト電極の膜質を向上させることができ、p側コンタクト電極を高効率の反射電極として機能させることができる。
【0081】
本発明の第4の態様は、前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層のAr濃度は、1×1018/cm3未満であり、前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層のAr濃度は、1×1018/cm3以上である、第3の態様に記載の半導体発光素子である。第4の態様によれば、p側コンタクト電極の膜質を向上させることができ、p側コンタクト電極を高効率の反射電極として機能させることができる。
【0082】
本発明の第5の態様は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層上に、AlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極を蒸着法により形成する工程と、前記p側コンタクト電極を500℃以上650℃以下の温度にてアニールする工程と、前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含むp側電流拡散層をスパッタリング法により形成する工程と、前記p側電流拡散層を200℃以上400℃以下の温度にて加熱する工程と、を備える、半導体発光素子の製造方法である。第5の態様によれば、p側コンタクト電極に含まれるRh層を蒸着法により形成することにより、スパッタリング法に比べて、Rh層の形成時におけるp型半導体層の上面のダメージを抑制し、p側コンタクト電極のコンタクト抵抗をより低くできる。一方、p側電流拡散層に含まれるRh層をスパッタリング法により形成することにより、蒸着法に比べて、p側コンタクト電極に対する接着性を高めることができ、p側電流拡散層の剥離を抑制できる。また、p側コンタクト電極を500℃以上650℃以下の温度にてアニールすることにより、アニール処理前に比べて、p側コンタクト電極のコンタクト抵抗を低下させるとともに、p側コンタクト電極の膜密度を向上できる。さらに、p側電流拡散層を200℃以上400℃以下の温度にて加熱することにより、加熱処理前に比べて、p側電流拡散層に含まれるRh層の膜密度を高めることができる。これにより、p側電流拡散層の封止性を向上できる。
【符号の説明】
【0083】
10…半導体発光素子、24…n型半導体層、26…活性層、28…p型半導体層、28a…上面、28b…側面、30…p側コンタクト電極、30a…上面、30b…側面、32…n側コンタクト電極、34…p側電流拡散層、36…n側電流拡散層、38…保護層、40…p側パッド電極、42…n側パッド電極。