(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】プロピレンラミネートシート
(51)【国際特許分類】
B32B 7/12 20060101AFI20230907BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20230907BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B5/02 Z
B32B27/32 E
(21)【出願番号】P 2021510861
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2018103479
(87)【国際公開番号】W WO2020042139
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ウルチェ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フー、ユイシャン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ダン、ジョゼフ ジェイ. アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ミン
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-533452(JP,A)
【文献】特表2014-525850(JP,A)
【文献】特開2004-330573(JP,A)
【文献】国際公開第2015/123829(WO,A1)
【文献】特表2017-512672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008263(US,A1)
【文献】特表2016-501746(JP,A)
【文献】特表2011-514178(JP,A)
【文献】特表2017-530217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D06M 13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布ラミネートであって、
プロピレン系ポリマー繊維で構成される布シートと、
1つ以上のエチレン系ポリマーから構成されるコーティング層と、
前記布シートと前記コーティング層の間に置かれるタイ層と、を含み、前記タイ層は、
少なくとも50重量%の結晶性ブロック複合材料(CBC)および任意選択のブレンド成分で構成され、前記CBCは、
(i)アイソタクチック結晶性プロピレンホモポリマー(iPP)と、
(ii)
結晶性エチレン/プロピレンコポリマー
(CEP)と、
(iii)
アイソタクチック結晶性プロピレンホモポリマー(iPP)ブロックおよび結晶性エチレン/プロピレンコポリマー(CEP)ブロックを含有するブロックコポリマーと、を含み、
前記CBCは、0.1~1.0のブロック複合インデックス(CBCI)を有し、
前記布ラミネートは、20N/15mm~40N/15mmの
前記布シートと前記コーティング層間の剥離力を有する、布ラミネート。
【請求項2】
前記タイ層が前記布シートと直接接触し、前記タイ層が前記コーティング層と直接接触している
、請求項1に記載の布ラミネート。
【請求項3】
前記コーティング層が、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーとエチレン/α-オレフィンコポリマーのブレンドで構成され、
前記タイ層が、前記CBCで構成され
ている、
請求項2に記載の布ラミネート。
【請求項4】
前記コーティング層が、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーとエチレン/α-オレフィンコポリマーとのブレンドから構成され、
前記タイ層が、70重量%~90重量%の前記CBCと、30重量%~10重量%のエチレン/α-オレフィンコポリマーであるブレンド成分を含み、
前記布ラミネートが、20N/15mm超~40N/15mmの
前記剥離力を有する、請求項2に記載の布ラミネート。
【請求項5】
前記コーティング層が、エチレン/α-オレフィンブロックコポリマーで構成され、
前記タイ層が、CBCで構成され
ている、
請求項2に記載の布ラミネート。
【請求項6】
前記コーティング層が、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成され、
前記タイ層が、70重量%~90重量%の前記CBCと、30重量%~10重量%のエチレン/α-オレフィンコポリマーであるブレンド成分を含み、
前記布ラミネートが、20N/15mm超~40N/15mmの
前記剥離力を有する、請求項2に記載の布ラミネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
無数の商業的および産業的用途で使用するための、例えばスクリムおよびターポリンなどの布シートが知られている。ポリオレフィン製の布シート、特にポリプロピレン製の布シートは、ポリプロピレンの高い弾性率、高い機械的強度、および過酷な気象条件にさらされたときの弾力性により、屋外の産業環境で広く使用されている。
【0002】
さらに、ポリプロピレン布シートへのポリエチレンの層のラミネートが知られている。しかしながら、ポリプロピレンとポリエチレンは相互に互換性がない。時間の経過とともに、ポリエチレン層がポリプロピレン布から剥がれ、劣化した効果のない布シートが残る。
【0003】
その結果、当該技術分野は、多層布シートのポリプロピレン層とポリエチレン層との間に、より大きな接着性を与えることができる構造および組成物の必要性を認識している。ポリプロピレン布シートとポリエチレン層との間の接着性が改善された布シートが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、物品を提供する。物品は、布ラミネートである。一実施形態では、布ラミネートは、布シート、コーティング層、およびタイ層を含む。布シートは、プロピレン系ポリマー繊維で構成される。コーティング層は、1つ以上のエチレン系ポリマーで構成される。タイ層は、布シートとコーティング層の間に置かれる。タイ層は、少なくとも50重量%の結晶ブロック複合材料(CBC)と任意選択のブレンド成分で構成される。CBCは、(i)アイソタクチック結晶性プロピレンホモポリマー(iPP)と、(ii)エチレン/プロピレンコポリマーと、(iii)式(CEP)-(iPP)のジブロックと、を含む。CBCは、0.1~1.0のブロック複合インデックス(CBCI)を有する。布ラミネートは、20N/15mm~40N/15mm(ピーク荷重)の剥離力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の一実施形態に従った布ラミネートの製造の概略図である。
【0006】
定義
元素周期表へのいかなる参照も、CRC Press,Inc.によって1990-1991に発行されたときのものである。この表における元素の族への参照は、族の番号付けの新しい表記法による。
【0007】
米国特許慣行の目的のため、いかなる参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるいかなる定義とも矛盾しない程度まで)および当該技術分野の一般知識に関して、それらの全体が参照により組み込まれる(またはその同等の米国版が、参照によりそのように組み込まれる)。
【0008】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値からの全ての値を含み、また上限値および下限値を含む。明示的な値(例えば、1または2、または3~5、または6、または7)を含有する範囲の場合、任意の2つの明示的な値の間のあらゆる部分範囲(例えば、上記の1~7の範囲は、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などの部分範囲が含む)が含まれる。
【0009】
反対の記載がない限り、文脈から示唆されない限り、または当該技術分野において慣習的にそうでないと述べられていない限り、全ての部およびパーセントは重量を基準としており、全てのテスト方法は本開示の出願日現在のものである。
【0010】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を指す。
【0011】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」という用語、およびそれらの派生語は、同じことが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を除くことを意図しない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、反対の記載がない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、または手順を除く。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていないあらゆる成分、ステップ、または手順も除く。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用は、複数形の使用を含み、逆もまた同様である。
【0012】
「ブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」という用語は、線状に結合された2つ以上の化学的に固別の領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフトの様式ではなく、重合官能基に対して端と端で結合(共有結合)している化学的に区別された単位を含むポリマーを指す。一実施形態では、ブロックは、その中に組み込まれたコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度の量、結晶化度のタイプ(例えば、ポリエチレン対ポリプロピレン)、そのような組成のポリマーに起因する結晶子サイズ、立体規則性のタイプまたは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、長鎖分岐または超分岐を含む分岐の量、均一性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性で異なる。ブロックコポリマーは、それらの調製に用いられる触媒(複数可)と組み合わせたシャトリング剤(複数可)の効果により、ポリマー多分散性(PDIまたはMw/Mn)およびブロック長分布の両方の特有の分布を特徴とする。
【0013】
「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント(重量%)超の重合エチレンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択的に少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、およびエチレンコポリマー(エチレンおよび1つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。「エチレン系ポリマー」および「ポリエチレン」という用語は、互換的に使用され得る。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の非限定的な例は、低密度ポリエチレン(LDPE)および線状ポリエチレンを含む。線状ポリエチレンの非限定的な例は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても知られる)、実質的に線状または線状のプラストマー/エラストマー、および高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。一般に、ポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒などの不均一触媒系、4族遷移金属およびメタロセン、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロ原子アリールオキシエーテル、ホスフィンイミンなどの配位子構造を含む均一触媒系を使用して、気相流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器で生成され得る。不均一触媒および/または均一触媒の組み合わせもまた、単一反応器または二重反応器の構成のいずれかに使用され得る。
【0014】
「エチレンプラストマー/エラストマー」は、エチレンに由来する単位および少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む均一な短鎖分岐分布を含有する、実質的に線状または線状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。エチレンプラストマー/エラストマーは、0.870g/cc~0.917g/ccの密度を有する。エチレンプラストマー/エラストマーの非限定的な例は、AFFINITY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)、EXACT(商標)プラストマー(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、Tafmer(商標)(Mitsuiから入手可能)、Nexlene(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)、およびLucene(商標)(LG Chem Ltd.で入手可能)を含む。
【0015】
「高密度ポリエチレン」(または「HDPE」)は、エチレンホモポリマー、または少なくとも1つのC4-C10α-オレフィンコモノマーもしくはC4-C8α-オレフィンコモノマーを有するエチレン/α-オレフィンコポリマーであり、0.940g/cc、もしくは0.945g/cc、もしくは0.950g/cc、0.953g/cc~0.955g/cc、もしくは0.960g/cc、もしくは0.965g/cc、もしくは0.970g/cc、もしくは0.975g/cc、もしくは0.980g/ccの密度を有する。HDPEは、単峰性コポリマーまたは多峰性コポリマーであり得る。「単峰性エチレンコポリマー」は、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で1つの明瞭なピークを有するエチレン/C4-C10α-オレフィンコポリマーである。「多峰性エチレンコポリマー」は、分子量分布を示すGPCで少なくとも2つの明瞭なピークを有するエチレン/C4-C10α-オレフィンコポリマーである。多峰性には、2つのピークを有するコポリマー(二峰性)、ならびに3つ以上のピークを有するコポリマーが含まれる。HDPEの非限定的な例は、DOW(商標)高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE(商標)強化ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、CONTINUUM(商標)二峰性ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、LUPOLEN(商標)(LyondellBasellから入手可能)、ならびにBorealis、Ineos、およびExxonMobilからのHDPE製品を含む。
【0016】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されたポリマーである。この総称は、2つの異なるモノマーから調製されたポリマー、および3つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを指すために通常用いられるコポリマーを含む。
【0017】
「低密度ポリエチレン」(または「LDPE」)は、エチレンホモポリマー、または少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーからなり、0.915g/cc~0.940g/cc未満の密度を有し、広いMWDを有する長鎖分岐を含有する。LDPEは、典型的には、高圧フリーラジカル重合(フリーラジカル開始剤を用いる管状反応器またはオートクレーブ)の方式で生成される。LDPEの非限定的な例は、MarFlex(商標)(Chevron Phillips)、LUPOLEN(商標)(LyondellBasell)、ならびにBorealis、Ineos、ExxonMobilなどからのLDPE製品を含む。
【0018】
「線状低密度ポリエチレン」(または「LLDPE」)は、エチレンに由来する単位および少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む不均一な短鎖分岐分布を含有する線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐があるとしてもわずかであることを特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc~0.940g/cc未満の密度を有する。LLDPEの非限定的な例は、TUFLIN(商標)線状低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、およびMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)を含む。
【0019】
「多成分エチレン系コポリマー」(または「EPE」)は、特許参照文献USP6,111,023、USP5,677,383、およびUSP6,984,695に記載のものなど、エチレンに由来する単位と少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位とを含む。EPE樹脂は、0.905g/cc~0.962g/ccの密度を有する。EPE樹脂の非限定的な例は、ELITE(商標)強化ポリエチレン(The Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE AT(商標)先端技術樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、SURPASS(商標)ポリエチレン(PE)樹脂(Nova Chemicalsから入手可能)、およびSMART(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)を含む。
【0020】
「布」は、個々の繊維または糸から形成される織構造物または不織構造物である。
【0021】
「繊維」および類似の用語は、概して円形の断面および10を超える長さ対直径の比を有する単一の連続した細長い材料のストランドを指す。
【0022】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーである。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、および4つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0023】
「オレフィン系ポリマー」または「ポリオレフィン」は、(ポリマーの重量に基づいて)、例えば、エチレンまたはプロピレンなどの、過半量または50重量%超の重合オレフィンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。オレフィン系ポリマーの非限定的な例は、エチレン系ポリマーである。
【0024】
「ポリマー」は、同じ種類であるか異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」(微量の不純物がポリマー構造中に組み込まれ得るという理解の下に、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)という用語、および「インターポリマー」という用語を包含する。例えば残留触媒などの微量の不純物が、ポリマー中に組み込まれる、および/またはポリマー内に存在してもよい。また、例えば、ランダム、ブロックなどの全ての形態のコポリマーも包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ重合エチレンまたはプロピレン、および1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーから調製される、上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマーまたはモノマータイプに「基づいて」、特定のモノマー含有量を「含有する」などと称されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残留物を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意する。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものを指す。
【0025】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合プロピレンモノマーを含有するポリマーであり、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。「プロピレン系ポリマー」および「ポリプロピレン」という用語は、交換可能に使用され得る。
【0026】
「シート」は、明示的に指定された厚さを持たない限り、「フィルム」より大きく、厚さが0.254ミリメートルを超え、厚さ約7.5ミリメートル(295ミル)までの一般に一貫した均一な厚さを有する薄くて平らな熱可塑性構造を含む。本明細書で使用されるシートは、フィルムとは異なり、フィルムを除く。「フィルム」という用語は、より厚い物品の「フィルム層」を指す場合を含め、明示的に指定された厚さを有さない限り、最大約0.254ミリメートル(10ミル)の一般的に一貫した均一な厚さを有する、任意の薄い、平坦押出またはキャスト熱可塑性物品を含む。
【0027】
「超低密度ポリエチレン(または「ULDPE」)」、および「極低密度ポリエチレン(または「VLDPE」)」は各々、エチレンに由来する単位および少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む不均一な短鎖分岐分布を含有する、線状エチレン/α-オレフィンコポリマーである。ULDPEおよびVLDPEはそれぞれ、0.885g/cc~0.915g/ccの密度を有する。ULDPEおよびVLDPEの非限定的な例は、ATTANE(商標)超低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)およびFLEXOMER(商標)極低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)を含む。
【0028】
「糸」は、織布の製造に使用できる、撚られた、またはそうでなければ絡み合った繊維またはフィラメントの連続した長さである。
【0029】
試験方法
「デニール」という用語は、繊維の線形質量密度である。デニールは、繊維の長さ9000メートル当たりのその繊維のグラムとして定義される。
【0030】
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、1立方センチメートル当たりのグラム(g)(g/ccまたはg/cm3)で記録される。
【0031】
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D-1238(230℃;2.16kg)に従って測定される。結果は、グラム/10分で報告される。メルトインデックス(MI)は、ASTM D-1238(190℃;2.16kg)に従って測定される。結果は、グラム/10分で報告される。
【0032】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、広範囲の温度にわたるポリマーの融解、結晶化、およびガラス転移挙動を測定することができる。例えば、RCS(冷蔵冷却システム)およびオートサンプラーを装備するTA Instruments Q1000 DSCを使用して、この分析を行った。試験中、50ml/分の窒素パージガス流量が使用された。各サンプルは薄いフィルムへと190℃で融解プレスされ、次いで融解したサンプルは室温(25℃)まで空冷された。3~10mg、直径6mmの試験片を冷却したポリマーから取り出し、重さを量り、軽量のアルミニウム皿(50mg)に置き、圧着して閉じた。次いで、その熱特性を決定するために分析を行った。
【0033】
サンプルの熱挙動は、サンプルの温度を上下させて、熱流量対温度プロファイルを作成することによって決定した。熱履歴を除去するために、まず、サンプルを180℃まで急速に加熱し、3分間等温保持した。次に、サンプルを10℃/分の冷却速度で-80℃に冷却し、-80℃で3分間等温保持した。次いで、サンプルを、10℃/分の加熱速度で180℃(これは「第2の加熱」勾配である)に加熱した。冷却曲線および第2の加熱曲線が記録された。決定した値は、外挿される融解開始Tmおよび外挿される結晶化開始Tcである。(1グラム当たりのジュール単位の)融解熱(Hf)、および次の等式を使用して計算されたポリエチレンサンプルの結晶化度%:結晶化度%=((Hf)/292J/g)x100。
【0034】
融解熱(Hf)(融解エンタルピーとしても知られている)およびピーク融解温度は、第2の加熱曲線から報告された。
【0035】
融解転移の開始と終了との間のベースラインを最初に引くことによって、融点TmをDSC加熱曲線から決定した。次いで、融解ピークの低温側のデータに接線を描いた。この線が、ベースラインと交差する場所が、外挿された融解開始(Tm)である。これは、Bernhard Wunderlich,The Basis of Thermal Analysis,in Thermal Characterization of Polymeric Materials 92,277-278(Edith A.Turi ed.,2d ed.1997)に記載されるとおりである。融点はピーク温度である。
【0036】
ガラス転移温度Tgは、Bernhard Wunderlich,The Basis of Thermal Analysis,in Thermal Characterization of Polymeric Materials 92,278-279(Edith A.Turi ed.,2d ed.1997)に記載されるように、サンプルの半分が液体熱容量を獲得したDSC加熱曲線から決定された。ベースラインをガラス転移領域の下および上から引き、Tg領域を通って外挿した。サンプルの熱容量がこれらのベースラインの中間にある温度が、Tgである。
【0037】
布の重量は、布の単位面積当たりの質量であり、ASTM D3776に従って測定され、結果は平方メートル当たりのグラム数gsmで報告される。
【0038】
分子量のためのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
Agilent Technologyのユニット、およびPolymerChar(スペイン、バレンシア)などの高温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システムを使用した。濃度検出器は、Polymer Char Inc.の赤外線検出器(IR-5)であった。データ収集は、GPCOne(PolymerChar)を使用して実施された。キャリア溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)であった。システムは、Agilent製のオンライン溶媒脱気デバイスを装備していた。カラム区画は、150℃で運転された。カラムは、4つのMixed A LS 30cm、20ミクロンのカラムであった。溶媒は、約200ppmの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含有する窒素パージしたTCBであった。流量は、1.0mL/分であり、注入量は200μlであった。「2mg/mL」のサンプル濃度は、N2パージして予熱したTCB(200ppmのBHTを含有する)中にサンプルを160℃で2.5時間にわたって穏やかに撹拌しながら溶解させることによって調製された。
【0039】
20個の狭分子量分布ポリスチレン標準物質を用いることによって、GPCカラム設定を較正した。標準物質の分子量(MW)は、580g/モル~8,400,000g/モルの範囲であり、標準物質は、6つの「カクテル」混合物中に含有された。各標準物質の混合物は、個々の分子量間で少なくとも一桁の間隔を有した。各PS標準物質の同等のポリプロピレン分子量は、ポリプロピレン(Th.G.Scholte,N.L.J.Meijerink,H.M.Schoffeleers,&A.M.G.Brands,J.Appl.Polym.Sci.,29,3763-3782(1984))およびポリスチレン(E.P.Otocka,R.J.Roe,N.Y.Hellman,&P.M.Muglia,Macromolecules,4,507(1971))について報告されたMark-Houwink係数とともに、次の等式を使用して計算された。
【0040】
ヒートシール強度
ラミネートシート上のヒートシール測定は、ASTM F-88(技法A)に従って市販の引張試験機で実施される。切断する前に、シートは、ASTM D-618(手順A)に従って23℃(±2℃)および50%(±5%)R.H.で最低40時間調整される。次に、シートを、機械方向に約11インチの長さおよび約8.5インチの幅に切断する。シートは、以下の条件下で、Koppヒートシーラーで150℃で機械方向にヒートシール(フィルム側からフィルム側にシール)される:
・シール圧力:0.275N/mm2
・シール滞留時間:4秒
【0041】
シールされたシートは、1インチ幅のストリップに切断する前に、23℃(±2℃)および50%のR.H(±5%)で最低3時間調整される。次に、これらのストリップは、試験前に23℃(±2℃)および50%R.H(±5%)で最低24時間さらに調整される。試験のために、ストリップは、2インチの初期分離で引張試験機のグリップに装填され、23℃(±2℃)および50%R.H(±5%)で10インチ/分のグリップ分離速度で引っ張られる。ストリップは、支持されていない状態で試験する。6回の反復試験が実行され、ピーク負荷の平均が15ミリメートル(N/15mm)当たりのニュートンで報告される。
【0042】
高温液体クロマトグラフィー(HTLC)
高温液体クロマトグラフィー(HTLC)実験方法の計測手段は、軽微な修正を加えた、D.Lee et al.,J.Chromatogr.A 2011,1218,7173の公開された方法に従って実施された。2つのShimadzu(Columbia,MD,USA)LC-20ADポンプを使用して、それぞれデカンおよびトリクロロベンゼン(TCB)を送達した。各ポンプを、10:1の固定分流器(部品番号:620-PO20-HS、Analytical Scientific Instruments Inc.,CA,USA)に接続した。分流器は、製造業者によれば、H2O中0.1mL/分で1500psi(10.34MPa)の圧力降下を有した。両方のポンプの流量を、0.115mL/分に設定した。分流後、小流を、収集された溶媒を30分超の間計量することによって決定すると、デカンおよびTCBの両方については0.01mL/分であった。収集された溶出液の体積は、室温での溶媒の質量および密度によって決定された。小流をHTLCカラムに送達して、分離した。主流を溶媒貯蔵器に送り返した。50μLの混合機(Shimadzu)を分流器の後に接続して、Shimadzuポンプからの溶媒を混合させた。次いで、混合溶媒を、Waters(Milford,MA,USA)GPCV2000のオーブン内の注入器に送達した。Hypercarb(商標)カラム(2.1×100mm、粒径5μm)を、注入器と10ポートVICIバルブ(Houston,TX,USA)との間に接続した。バルブは、2つの60μLのサンプルループを備えた。このバルブを使用して、第1次元(D1)HTLCカラムから第2次元(D2)SECカラムへの連続的なサンプル溶出を行った。Waters GPCV2000のポンプおよびPLgel Rapid(商標)-Mカラム(10mm×100mm、粒径5μm)は、D2サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のVICIバルブに接続された。文献(Y.Brun &P.Foster,J.Sep.Sci.2010,33,3501)に記載されているように、接続には対称構成が使用された。二重角光散乱検出器(PD2040,Agilent,Santa Clara,CA,USA)およびIR5赤外線吸収検出器をSECカラムの後に接続し、濃度、組成および分子量を測定した。
【0043】
HTLCの分離:バイアルを160℃で2時間穏やかに振盪することによって、約30mgを8mLのデカン中で溶解させた。デカンは、ラジカル捕捉剤として400ppmのBHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)を含有した。次いで、サンプルバイアルを注入用GPCV2000のオートサンプラーに移した。オートサンプラー、注入器、HypercarbカラムおよびPLgelカラムの両方、10ポートVICIバルブ、ならびにLS検出器およびIR5検出器の両方の温度は、分離を通して140℃に維持された。
【0044】
注入前の初期条件は次のとおりであった:HTLCカラムの流量は0.01mL/分であった;D1 Hypercarbカラムの溶媒組成は100%デカンであった;SECカラムの流量は室温で2.51mL/分であった;D2 PLgelカラムの溶媒組成は100%TCBであった;D2 SECカラムの溶媒組成は、分離全体を通して変化しなかった。
【0045】
サンプル溶液の311μLアリコートを、HTLCカラムに注入した。注入により、以下に説明する勾配が引き起こされた。
0~10分、100%デカン/0%TCB;
10分~651分、TCBは、0%TCBから80%TCBまで直線的に増加した。
【0046】
注入はまた、EZChrom(商標)クロマトグラフィーデータシステム(Agilent)を使用して、15°角度(LS15)での光散乱シグナルの収集、ならびにIR5検出器からの「測定」および「メチル」シグナル(IR測定およびIRメチル)を引き起こした。検出器からのアナログシグナルを、SS420Xアナログ/デジタル変換器を介してデジタルシグナルに変換した。収集周波数は、10Hzであった。注入により、10ポートVICIバルブの切り替えも引き起こした。バルブのスイッチは、SS420X変換器からのリレーシグナルによって制御された。バルブは、3分毎に切り替えた。クロマトグラムは、0分~651分に収集された。それぞれのクロマトグラムは、651/3=217 SECクロマトグラムからなった。
【0047】
勾配分離の後、0.2mLのTCBおよび0.3mLのデカンを使用して、次の分離のためにHTLCカラムを洗浄および再平衡化した。この工程の流量は、0.2mL/分であり、混合機に接続されたShimadzu LC-20 ABポンプによって送達された。
【0048】
13C核磁気共鳴(NMR)
サンプル調製:クロムアセチルアセトネート(緩和剤)中0.025Mであったテトラクロロエタン-d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物、およそ2.6gを、10mmのNMRチューブ内のサンプル0.21gに添加することによって、サンプルを調製した。チューブおよびその内容物を135℃~140℃に加熱することにより、サンプルを溶解し、均質化した。
【0049】
データ取得パラメータ:Bruker Dual DULの高温CryoProbeを装備するBruker 400MHz分光計を使用してデータを収集した。データは、データファイル当たり320回の過渡応答、7.3秒のパルス繰り返し遅延(6秒の遅延+1.3秒の取得時間)、90度のフリップ角、および120℃のサンプル温度での逆ゲート付きデカップリングを使用して取得された。全ての測定を、固定様式の非回転サンプルに対して実施した。加熱した(125℃)NMRサンプル交換器に挿入する直前にサンプルを均質化し、データ取得前に7分間プローブ中で熱平衡化させた。取得は、25,000Hzの分光幅および65Kデータポイントのファイルサイズを使用して行われた。NMRは、例えば、以下で検討するように、結晶性ブロック複合材料指数またはブロック複合材料指数に関して、ポリマー全体のエチレンの総重量パーセント、キシレン可溶性画分中のエチレンの重量パーセントを決定するために使用された。メルトインデックス(MI)(I2)は、ASTM D1238、条件190℃/2.16キログラム(kg)重量に従って測定され、10分当たりに溶出されるグラム(g/10分)で報告される。
【0050】
剥離力
フィルムと布との間の剥離力(接着力測定)は、ASTM F904に従って行われる。試験の前に、フィルムは23℃(±2℃)および50%(±10%)R.H.で最低40時間調整される。次に、ラミネートされたシートは、機械の方向に沿って1インチ幅のストリップにカットされる。層は手動で分離され、引張試験機でつかむことができる長さ約1インチの「耳」を与える。1インチの耳を形成するのが難しい強く接着したサンプルの場合、小さな「耳」をマスキングテープでテープ固定し、各耳を引張試験機のジョーでつかみ、十分な材料が剥離して再クランプするまで、1インチ/分でゆっくりと引っ張る。次に、新しく再付着したサンプルを10インチ/分で試験する。5つの試験片が試験され、ピーク負荷の平均が報告される。
【0051】
フィルムと布との間のいくつかの接着測定は、15mm幅のストリップを使用してISO11339に従って行われる。シールされた領域から幅15mm、長さ100mmのストリップが切り取られる。接着力は、機械の方向に沿って測定される。層間剥離は、シールを注意深く開くことによって開始される。試験片は、100mm分-1で剥離する。5つの試験片が試験され、ピーク荷重の平均が15ミリメートル(N/15mm)当たりのニュートンで報告される。
【0052】
温度勾配相互作用クロマトグラフィー(TGIC)
市販の結晶化溶出分別装置(CEF)(Polymer Char、Spain)を使用して、高温熱勾配相互作用クロマトグラフィー(TGIC)測定を行った(Cong,et al.,Macromolecules,2011,44(8),3062~3072)。分離のために、単一のHypercarbカラム(100X4.6mm、5ミクロン粒子、Thermo Scientific)が使用された。実験パラメータは以下のとおりであった:トップオーブン/移送ライン/針温度160℃、溶解温度160℃、溶解撹拌設定2、ポンプ安定化時間15秒、カラム洗浄のためのポンプ流量0.500mL/m、カラム充填のポンプ流量0.300ml/分、安定化温度160℃、安定化時間(カラムへの充填前)1.0分、安定化時間(カラム充填後)1.0分、SF(可溶性画分)時間8.0分、160℃から90℃への冷却速度5.0℃/分、冷却プロセスの間の流量0.01ml/分、90℃で10分間等温保持、90℃から160℃への溶出中の加熱速度5.0℃/分、等温時間150℃で10分間、溶出流量0.500mL/分、および注入ループサイズ140マイクロリットル。サンプルは、PolymerCharオートサンプラーにより160℃で120分間、ODCB(1,2-ジクロロベンゼン、無水グレードまたはHPLCグレード)中4.0mg/mlの濃度で調製された。TGICカラム温度のキャリブレーションは、リファレンス(Cerk and Cong、US9,688,795)に従って行われる。
【0053】
クロマトグラムは、2つのピークで構成されている。最初のピークは遊離iPPピークとして定義され、90℃でODCBに残っている物質として定義され、遊離iPPピークのパーセンテージは、最初のピークの面積/クロマトグラムの総面積に100%を乗算して計算される。クロマトグラムは「GPCOne」ソフトウェア(PolymerChar、スペイン)と統合されている。直線のベースラインは、2番目のピークが高い溶出温度で平坦なベースラインに低下したときの目に見える差と、最初のピークの低温側の検出器信号の最小または平坦な領域から引き出される。温度積分の上限は、2番目のピークが平坦なベースライン領域(約170℃)に下がったときに、目に見える差に基づいて設定される。最初のピークの温度積分の上限は、ベースラインと最初のピークを含むクロマトグラムとの交点に基づいて設定される。最初のピークの温度積分の下限は、ベースラインと最初のピークの前のクロマトグラムとの交点に基づく。
【0054】
キシレン可溶性(XS)分別分析(ASTM D5492-17)
秤量した量の樹脂(2.0000±0.1000、g)は、還流条件下で200mlのo-キシレンに溶解された。次いで、その溶液を、温度制御された水浴中で60分間25℃に冷却して、キシレン不溶性(XI)画分を結晶化させた。溶液が冷却され、不溶性画分が溶液から析出すると、キシレン不溶性画分(XI)からのキシレン可溶性(XS)画分の分離を、濾紙による濾過によって行った。キシレン溶液中の残りのo-キシレンを、濾液から蒸発させ、ASTM D5492-17に従って乾燥させた。乾燥キシレン可溶性画分中のエチレン含有量(キシレン可溶性中の重量%C2)を、本明細書で指定された13C NMR法を使用して測定した。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本開示は、布ラミネートを提供する。布ラミネートは、布シート、コーティング層、および布シートとコーティング層との間に置かれたタイ層とを含む。布シートは、プロピレン系ポリマー繊維で構成される。コーティング層は、1つ以上のエチレン系ポリマーから構成される。タイ層は、少なくとも50重量%の結晶ブロック複合材料(CBC)および任意選択のブレンド成分で構成される。CBCの結晶ブロック複合指数(CBCI)は、0.1~1.0である。布ラミネートの剥離力は、20N/15mm~40N/15mm(ピーク荷重)である。
【0056】
本開示は、布ラミネートを対象とする。本明細書で使用される「布ラミネート」は、1つ以上の層が布構造と接触している多成分構造である。
【0057】
A.布シート
本布ラミネートは、布シートなどの布構造を含む。本明細書で使用される「布シート」は、オレフィン系ポリマーから構成される個々の繊維(または糸)から形成された織布構造または不織布構造であり、繊維は500デニール~1600デニールの密度を有し、布シートは0.5mmから2.0mmの厚さの有する。
【0058】
布シートは、織布または不織布であり得る。「織布」は、交絡された繊維(または糸)の集合体である。織布は、縦糸繊維(または「縦糸」)と緯糸繊維(「緯糸」)の2つの異なる繊維のセットを織ることによって製造される。縦糸は、緯糸が導入される前に織機に配置された繊維のセットである。緯糸は、製織プロセス中に導入される繊維のセットである。縦方向または長手方向の縦糸繊維は、フレームまたは織機上で張力をかけた状態で静止して保持され、横方向の緯糸繊維は、縦糸の上下を通して引き込まれ、挿入される。縦糸と緯糸が直角に交絡して布地を形成する。インターレース織布構造物の非限定的な例は、本縫いの編み地を含む。
【0059】
「不織布」は、機械的インターロック、熱、化学薬品、圧力によって、または繊維の少なくとも一部を融合して粘着性のある布のような材料を形成することによって、ランダムなウェブに一緒に保持された繊維(または糸)の集合体である。不織布を製造するための非限定的な技術は、スパンボンドプロセス、カードウェブプロセス、エアレイドプロセス、熱カレンダプロセス、接着剤ボンディングプロセス、熱風ボンディングプロセス、ニードルパンチプロセス、ハイドロエンタングルプロセス、エレクトロスピニングプロセス、およびそれらの組み合わせが含む。
【0060】
一実施形態では、布シートは、プロピレン系ポリマーから構成される繊維を有する織布である。プロピレン系ポリマーは、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、およびそれらの組み合わせであり得る。プロピレン/α-オレフィンコポリマーの非限定的な例は、プロピレンとC2α-オレフィンコモノマーとのコポリマー(すなわち、プロピレン/エチレンコポリマー)または少なくとも1つのC4-C10α-オレフィンコモノマーを有するプロピレンを含む。
【0061】
一実施形態では、布シートは、プロピレンホモポリマーから構成される繊維を有する織布である。布シートは、次の特性のうちの1つ、いくつか、または全てを有する。
(i)500デニール、または750デニール~1000デニール、または1200デニールまでの繊維密度;および/または
(ii)250gsm、または300gsm、または320gsm、または340gsm、または350gsm~360gsm、または380gsm、または400gsm、または420gsmの布重量;および/または
(iii)0.3mm、または.5mm、または1.0mm、または1.25mm~1.5mm、または1.75mm、または2.0mmのシートの厚さ。
【0062】
B.コーティング層
本布ラミネートは、コーティング層を含む。コーティング層は、1つ以上のエチレン系ポリマーから構成される。エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーまたはエチレン/α-オレフィンコポリマーであり得る。好適なエチレン/α-オレフィンコポリマーの非限定的な例は、エチレン/C3-C12α-オレフィンコポリマーを含む。好適なエチレン系ポリマーの非限定的な例は、LDPE、LLDPE、ULDPE、VLDPE、EPE、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー、実質的に線状のまたは線状のプラストマー/エラストマー、HDPE、およびそれらの組み合わせを含む。
【0063】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン/C3-C12α-オレフィンコポリマーである。エチレン/C3-C12α-オレフィンコポリマーは、HDPE、LLDPE、LDPE、ULDPE、VLDPE、エチレン/α-オレフィンブロックコポリマー、およびそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0064】
一実施形態では、エチレン系ポリマーであるエチレン/C3-C8α-オレフィンコポリマーは、均一に分岐したエチレン/C3-C8α-オレフィンコポリマーである。均一に分岐したエチレン/C3-C8α-オレフィンコポリマーは、メタロセン触媒または拘束幾何触媒などのシングルサイト触媒で作成でき、典型的には、融点は75℃、80℃、または85℃~90℃、または100℃、または105℃である。
【0065】
例示の均一に分岐したエチレン/C3-C8α-オレフィンコポリマーは、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1-ヘキセン、エチレン/1-オクテンを含む。
【0066】
商業的に入手可能な均一に分岐したエチレン/C3-C8α-オレフィンコポリマーの非限定的な例は、均一に分岐した線状エチレン-α-オレフィンコポリマー(例えば、Mitsui Petrochemicals Company LimitedによるTAFMER(登録商標)およびExxon Chemical CompanyによるEXACT(登録商標))、および均一に分枝した実質的線状エチレン-α-オレフィンポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITYおよびENGAGEポリエチレン)を含む。例示的なインターポリマーは、The Dow Chemical Companyから市販されているENAGE 8480である。
【0067】
一実施形態では、コーティング層は、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーを含み、用語「エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー」は、重合形態の、エチレンと1つの共重合性C4-C8α-オレフィンコモノマー(および任意選択の添加剤)とからなるエチレン/C4-C8α-オレフィンマルチブロックコポリマーを指し、ポリマーが、化学的または物理的特性が異なる2つの重合モノマー単位の多数のブロックまたはセグメントを特徴とし、ブロックが、線状の様式で接合(または共有結合)している、すなわち、ポリマーが、重合エチレン性官能基に対して端部と端部が接合されている化学的に異なる単位を含む。エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、2つのブロック(ジブロック)および3つ以上のブロック(マルチブロック)を有するブロックコポリマーを含む。C4-C8α-オレフィンは、ブテン、ヘキセン、およびオクテンから選択される。エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、スチレン(すなわち、スチレンを含まない)、および/またはビニル芳香族モノマー、および/または共役ジエンを含まないか、そうでなければ除外する。コポリマー中の「エチレン」または「コモノマー」の量を指す場合、これはその重合単位を指すと理解される。いくつかの実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、以下の式によって表すことができる:(AB)n、式中、nは少なくとも1、好ましくは2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上などの1より大きい整数であり、「A」はハードブロックまたはセグメントを表し、「B」はソフトブロックまたはセグメントを表す。AおよびBは、実質的に分岐または実質的に星形の様式とは対照的に、実質的に線状様式で、または線状方式で、連結または共有結合される。他の実施形態では、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。言い換えれば、ブロックコポリマーは、通常、次のような構造を有さない:AAA-AA-BBB-BB。一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、異なるコモノマー(複数可)を含む第3のタイプのブロックを有さない。別の実施形態では、ブロックAおよびブロックBの各々は、ブロック内に実質的にランダムに分布したモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、残りのブロックとは実質的に異なる組成を有する先端セグメント等の別個の組成の2つ以上のサブセグメント(またはサブブロック)を含まない。
【0068】
好ましくは、エチレンは、全エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの大部分の重量分率を含む、すなわち、エチレンは、全エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの少なくとも50重量%を含む。より好ましくは、エチレンは、C4-C8α-オレフィンコモノマーを含むエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー全体の実質的に残りの部分で、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%を含む。一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、50重量%、60重量%、または65重量%~80重量%、または85重量%、または90重量%のエチレンを含有する。多くのエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの場合、組成物は、全エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの80重量%超のエチレン含有量および全マルチブロックコポリマーの10重量%~15重量%、または15重量%~20重量%のオクテン含有量を含む。
【0069】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、様々な量の「ハード」セグメントおよび「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて、90重量%超、または95重量%、または95重量%超、または98重量%超、最大100重量%の量で存在する重合単位のブロックである。言い換えれば、ハードセグメント中のコモノマー含有量(エチレン以外のモノマーの含有量)は、ポリマーの重量に基づいて、10重量%未満、または5重量%、または5重量%未満、または2重量%未満であり、最低でゼロであり得る。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、エチレンに由来する全てまたは実質的に全ての単位を含む。「ソフト」セグメントは、コモノマー含有量(エチレン以外のモノマーの含有量)が、ポリマーの重量に基づいて、5重量%超、または8重量%超、または10重量%超、または15重量%超である重合単位のブロックである。一実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含有量は、20重量%超、または25重量%超、または30重量%超、または35重量%超、または40重量%超、または45重量%超、または50重量%超、または60重量%超であり、最大100重量%であり得る。
【0070】
ソフトセグメントは、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー中に、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの総重量の、1重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%~55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または99重量%存在し得る。逆に、ハードセグメントは、同様の範囲で存在することができる。ソフトセグメントの重量百分率およびハードセグメントの重量百分率は、DSCまたはNMRから得られたデータに基づいて計算することができる。そのような方法および計算は、例えば、USP7,608,668に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に、ハードセグメントおよびソフトセグメントの重量百分率およびコモノマー含有量は、USP7,608,668の57欄~63欄に記載されているように決定され得る。
【0071】
エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、線状方式で結合(または共有結合)した2つ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含み、つまり、それはペンダントまたはグラフト化された様式ではなく、重合エチレン性官能基に関して端から端まで結合されている化学的に区別された単位を含有する。一実施形態では、ブロックは、組み込まれたコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度の量、そのような組成のポリマーに起因する結晶子サイズ、立体規則性のタイプまたは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、部位規則性もしくは部位不規則性、分岐(長鎖分岐もしくは超分岐を含む)の量、均一性、または他の任意の化学的もしくは物理的特性で異なる。連続モノマー付加、流動触媒、またはアニオン重合技術によって製造されるインターポリマーを含む、先行技術のブロックインターポリマーと比較して、本発明のエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、一実施形態では、シャトリング剤(複数可)とそれらの調製において使用される複数の触媒との組み合わせの効果により、ポリマー多分散性(PDIまたはMw/MnまたはMWD)、多分散ブロック長分布、および/または多分散ブロック数分布の両方の特有の分布を特徴とする。
【0072】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、連続プロセスで製造され、1.7~3.5、または1.8~3、または1.8~2.5、または1.8~2.2の多分散指数(Mw/Mn)を有する。バッチまたは半バッチプロセスで製造される場合、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、1.0~3.5、または1.3~3、または1.4~2.5、または1.4~2のMw/Mnを有する。
【0073】
加えて、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、ポアソン分布ではなく、シュルツ・フロリー分布に適合するPDI(またはMw/Mn)を有する。本発明のエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、多分散ブロック分布と並んでブロックサイズの多分散分布の両方を有する。これにより、改善された区別可能な物理的特性を有するポリマー生成物が形成される。多分散ブロック分布の理論的利点は、Potemkin,Physical Review E(1998)57(6),pp.6902-6912、およびDobrynin,J.Chem.Phvs.(1997)107(21),pp9234-9238において以前にモデル化され、考察されている。
【0074】
一実施形態では、本エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、ブロック長の最確分布を持つ。
【0075】
好適なエチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーの非限定的な例は、米国特許第7,608,668号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
一実施形態では、エチレン/αオレフィンマルチブロックコポリマーは、ハードセグメントおよびソフトセグメントを有するスチレン-フリーであり、(i)エチレンと、(ii)C4-C8α-オレフィン(および任意選択の添加剤)とのみからなり、1.7~3.5のMw/Mn、摂氏温度での少なくとも1つの融点Tm、およびグラム/立方センチメートルでの密度dを有すると定義され、Tmおよびdの数値は、以下の関係に対応する:
Tm>-2002.9+4538.5(d)-2422.2(d)2
式中、密度(d)は、0.850g/cc、または0.860g/cc、または0.870g/cc~0.875g/cc、または0.877g/cc、または0.880g/cc、または0.890g/ccであり、融点(Tm)は、110℃、または115℃、または120℃~122℃、または125℃、または130℃、または135℃である。
【0077】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレン/1-オクテンマルチブロックコポリマー(エチレンおよびオクテンコモノマーのみからなる)であり、次の特性の1つ、いくつか、または全てを有する:
(i)1.7、もしくは1.8~2.2、もしくは2.5、もしくは3.5のMw/Mn、ならびに/または
(ii)0.850g/cc、もしくは0.860g/cc、もしくは0.865g/cc、もしくは0.870g/cc~0.877g/cc、もしくは0.880g/cc、もしくは0.900g/ccの密度、ならびに/または
(iii)115℃、もしくは118℃、もしくは119℃~120℃、もしくは122℃、もしくは125℃の融点、Tm、ならびに/または
(iv)0.1g/10分、もしくは0.5g/10分~1.0g/10分、もしくは2.0g/10分、もしくは5g/10分、もしくは10g/10分、もしくは50g/10分のメルトインデックス(MI)、ならびに/または
(v)50~85重量%のソフトセグメントおよび40~15重量%のハードセグメント、ならびに/または
(vi)ソフトセグメント中の10mol%、もしくは13mol%、もしくは14mol%、もしくは15mol%~16mol%、もしくは17mol%、もしくは18mol%、もしくは19mol%、もしくは20mol%のC4-C12α-オレフィン、ならびに/または
(vii)ハードセグメント中の0.5mol%、もしくは1.0mol%、もしくは2.0mol%、もしくは3.0mol%~4.0mol%、もしくは5.0mol%、もしくは6.0mol%、もしくは7.0mol%、もしくは9.0mol%のオクテン、ならびに/または
(viii)ASTM D1708に従って測定される21℃で300%分-1の変形速度で、50%、もしくは60%~70%、もしくは80%、もしくは90%の弾性回復(Re)、ならびに/または
(ix)ブロックの多分散分布およびブロックサイズの多分散分布。
【0078】
一実施形態では、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーである。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、米国ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手可能な商品名INFUSE(商標)で販売されている。
【0079】
C.タイ層
本布ラミネートは、タイ層を含む。タイ層は、布シートとコーティング層との間に配列されるか、そうでなければその間に置かれる。言い換えれば、布シートはタイ層の第1の表面に配列され、コーティング層はタイ層の反対側の第2の表面に配列される。
【0080】
タイ層は、少なくとも50重量%のCBCおよび任意選択のブレンド成分を含有する。「結晶性ブロック複合材料」(「CBC」)という用語は、3つのポ成分:
(i)結晶性エチレン系ポリマー(CEP)(本明細書ではソフトポリマーとも称される)と、
(ii)結晶性アルファ-オレフィン系ポリマー(CAOP)(本明細書ではハードポリマーとも称される)と、
(iii)結晶性エチレンブロック(CEB)および結晶性アルファ-オレフィンブロック(CAOB)を含むブロックコポリマーと、を含有するポリマーを指し、
ここで、ブロックコポリマーのCEBは、ブロック複合体の成分(i)のCEPと同じ組成であり、ブロックコポリマーのCAOBは、ブロック複合体の成分(ii)のCAOPと同じ組成である。加えて、CEPの量とCAOPの量との間の組成分割は、ブロックコポリマー中の対応するブロック間の組成分割と本質的に同じである。連続プロセスで製造される場合、CBCの多分散度指数(PDI)は、1.7、または1.8~3.5、または5、または10、または15を有する。かかるCBCは、例えば、いずれも2011年12月22日に公開された米国特許出願公開第2011/0313106号、同第2011/0313108号および同第2011/0313108号、ならびに2014年3月20日に公開されたPCT公開番号WO2014/043522A1に記載されており、これらはそれぞれ、CBCの説明、CBCを作製するためのプロセス、およびCBCを分析する方法に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
結晶性エチレン系ポリマー(CEP)は、任意のコモノマー含有量が10モル%以下、または0モル%~5モル%、または7モル%、または10モル%である、少なくとも90モル%の重合エチレン単位を含有する。結晶性エチレン系ポリマーは、75℃以上、または90℃以上、または100℃以上の対応する融点を有する。
【0082】
結晶性アルファ-オレフィン系ポリマー(CAOP)は、結晶性α-オレフィン系ポリマー(プロピレン)の総重量に基づいて、モノマー(例えば、プロピレン)が90モル%超、93モル%超、または95モル%超、または98モル%超の量で存在する、重合α-オレフィン単位を含む高結晶性ポリマーである。一実施形態では、重合α-オレフィン単位は、ポリプロピレンである。CAOP中のコモノマー(例えば、エチレン)含有量は、10モル%未満、または7モル%未満、または5モル%未満、または2モル%未満である。プロピレン結晶性を有するCAOPは、対応する融点が80℃以上、100℃以上、115℃以上、または120℃以上である。一実施形態では、CAOPは、全ての、または実質的に全てのプロピレン単位を含む。
【0083】
CAOPで使用できる他の適切なα-オレフィン単位(プロピレンに加えて)の非限定的な例は、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、および1-オクテン等の4個~10個の炭素原子を含有するものである。好適なジオレフィンの非限定的な例は、イソプレン、ブタジエン、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、ジシクロペンタジエン、メチレン-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなど、および前述のα-オレフィン単位のうちの少なくとも1つを含有する組み合わせを含む。
【0084】
CBCのブロックコポリマーは、エチレンブロック(例えば、結晶性エチレンブロック(CEB))および結晶性アルファオレフィンブロック(CAOB)を含む。結晶性エチレンブロック(CEB)において、エチレンモノマーは、CEBの総モル数に基づいて、90モル%超、または93モル%超、または95モル%超、または90モル%超の量で存在する。一実施形態では、結晶性エチレンブロック(CEB)ポリマーは、ポリエチレンである。ポリエチレンは、CEBの総モル数に基づいて、90モル%超、93モル%超、または95モル%超の量で存在する。CEB中に何らかのコモノマーが存在する場合、それは、CEBの総モル数に基づいて、10モル%未満、または5モル%未満の量で存在する。
【0085】
CAOBは、4個~10個の炭素原子を含む他のα-オレフィン単位と共重合しているポリプロピレンブロックを含む。適切なα-オレフィンの非限定的な例が上に提供されている。ポリプロピレンは、CAOBの総モル数に基づいて、90モル%以上、または93モル%超、または95モル%超の量でCAOB中に存在する。CAOB中のコモノマー含有量は、CAOB中の総モル数に基づいて、10モル%未満、または7モル%未満、または5モルパーセント未満である。プロピレン結晶性を有するCAOBは、対応する融点80℃以上、100℃以上、115℃以上、120℃以上を有する。一実施形態では、CAOBは、全ての、または実質的に全てのプロピレン単位を含む。
【0086】
一実施形態では、CBCは、プロピレン、1-ブテン、または4-メチル-1-ペンテン、および1つ以上のコモノマーを含有する。さらなる実施形態では、CBCは、重合形態で、プロピレンおよびエチレンおよび/または1つ以上のC4-20α-オレフィンコモノマー、および/または1つ以上の追加の共重合性コモノマーを含有するか、またはCBCは、4-メチル-1-ペンテンおよびエチレンおよび/または1つ以上のC4-20α-オレフィンコモノマーを含有するか、またはCBCは、1-ブテンおよびエチレン、プロピレンおよび/または1つ以上のC5-C20α-オレフィンコモノマーおよび/または1つ以上の追加の共重合性コモノマーを含有する。追加の好適なコモノマーは、ジオレフィン、環状オレフィン、および環状ジオレフィン、ハロゲン化ビニル化合物、ならびにビニリデン芳香族化合物から選択される。一実施形態では、モノマーはプロピレンであり、コモノマーはエチレンである。
【0087】
CBC中のコモノマー含有量は、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技術等の任意の好適な技術を使用して測定され得る。
【0088】
一実施形態では、CBCは、100℃を超える、または120℃を超える、または125℃を超える融点Tmを有する。一実施形態では、Tmは、100℃、または120℃、または125℃~220℃、または250℃の範囲にある。一実施形態では、CBCは、0.1g/10分~30g/10分、または50g/10分、または1000g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。
【0089】
一実施形態では、CBCは、10,000g/mol、または35,000g/mol、または50,000g/mol~200,000g/mol、または300,000g/mol、または1,000,000g/mol、または2,500,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0090】
一実施形態では、CBCは、ゼロより大きい、または0.1、または0.2、または0.3から0.4、または0.5、または0.6、または0.7、または0.8、または0.9、または1.0の結晶性ブロック複合材料指数(CBCI)を有する。別の実施形態では、CBCは、0.4、または0.5~0.6、または0.7、または0.8のCBCIを有する。
【0091】
一実施形態では、CBCは、結晶性ブロック複合材料の総重量に基づいて、(i)0.5重量%~79重量%、または95重量%のCEPと、(ii)0.5重量%~79重量%、または95重量%CAOPと、(iii)5重量%、または50重量%~99重量%のブロックコポリマーと、を含有する。
【0092】
CEP、CAOPおよびブロックコポリマーの重量パーセントの合計は、100%に等しい
【0093】
一実施形態では、CBCのブロックコポリマーは、5重量%、または10重量%、または25重量%、または30重量%~70重量%、または75重量%、または90重量%、または95重量%の結晶性エチレンブロック(CEB)、および95重量%、または90重量%、または75重量%、または70重量%~30重量%、または25重量%、または10重量%、または5重量%のCAOBを含有する。
【0094】
一実施形態では、CBCは、(i)結晶性エチレン/プロピレンコポリマー(CEP)であるCEP、(ii)アイソタクチック結晶性プロピレンホモポリマー(iPP)であるCAOP、(iii)iPPブロック(CAOB)およびCEPブロック(CEB)を含有するブロックコポリマーを含有し、ブロックコポリマーは、式(2)のジブロックを含む:(CEP)-(iPP)式(2)。
【0095】
一実施形態では、CBCは:CBCの総重量に基づいて、
(i)0.5重量%、または10重量%、または20重量%、または30重量%~40重量%、または50重量%、または60重量%、または70重量%、または79重量%、または95重量%のCEPと、
(ii)0.5重量%、または10重量%、または20重量%、または30重量%~40重量%、または50重量%、または60重量%、または70重量%、またはまたは79重量%、または95重量%のiPPと、
(iii)5重量%、または10重量%、または25重量%、30重量%、または50重量%~70重量%、または80重量%、または90重量%、または95重量%、または99重量%のブロックコポリマーと、を含有し、
結晶ブロック複合材料は、次の特性の1つ、いくつか、または全てを有する:
(a)CEPは、CEPの総重量に基づいて、85重量%、もしくは89重量%~92重量%、もしくは95重量%、もしくは99重量%のエチレン、および逆量のプロピレン、もしくは1重量%、もしくは5重量%、もしくは8重量%~11重量%、もしくは15重量%のプロピレンを含有する、ならびに/または
(b)iPPは、iPPの総重量に基づいて、100重量%、もしくは99.5重量%、もしくは99重量%~95重量%、もしくは90重量%、もしくは85重量%、もしくは80重量%、もしくは75重量%、もしくは70重量%、もしくは65重量%、もしくは60重量%、もしくは55重量%のプロピレン、および逆量のエチレン、もしくは0重量%、もしくは0.5重量%~1重量%、もしくは5重量%、もしくは10重量%、もしくは15重量%、もしくは20重量%、もしくは25重量%、もしくは30重量%、もしくは35重量%、もしくは40重量%、もしくは45重量%のエチレンを含有する、ならびに/または
(c)ブロックコポリマーは、ブロックコポリマーの総重量に基づいて、5重量%、もしくは10重量%、もしくは25重量%、もしくは30重量%~50重量%、もしくは70重量%、もしくは75重量%、もしくは90重量%、もしくは95重量%のEB、および逆量の、もしくは95重量%、もしくは90重量%、もしくは75重量%、もしくは70重量%、もしくは50重量%~30重量%、もしくは25重量%、もしくは10重量%、もしくは5重量%のiPPブロックを含有する、ならびに/または
(d)0.4、もしくは0.5~0.6、もしくは0.7、もしくは0.8のCBCI、ならびに/または
(e)0.1g/10分、もしくは5g/10分、もしくは10g/10分、もしくは15g/10分、もしくは20g/10分、もしくは23g/10分~40g/10分、もしくは50g/10分、もしくは1000g/10分のメルトフローレート(MFR)、ならびに/または
(f)50,000g/mol、もしくは70,000g/mol、もしくは80,000g/mol、もしくは100,000g/mol~130,000g/mol、もしくは150,000g/mol、もしくは200,000g/mol、もしくは300,000g/mol、もしくは500,000g/mol、もしくは1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)、ならびに/または
(g)1.0、もしくは1.5、もしくは2.0、もしくは2.5、もしくは3.0、もしくは3.5、もしくは3.7、もしくは3.8、もしくは4.0~4.3、もしくは4.5、もしくは5.0のMw/Mn、ならびに/または
(h)20J/g、もしくは25J/g、もしくは30J/g、もしくは35J/g、もしくは50J/g、もしくは60J/g、もしくは70J/g、もしくは75J/g、もしくは80J/g、もしくは85J/g、もしくは90J/g、もしくは92J/g~100J/g、もしくは110J/g、もしくは115J/g、もしくは125J/gの融解熱(もしくは融解エンタルピー)、ならびに/または
(i)70℃、もしくは75℃、もしくは80℃、もしくは85℃、もしくは90℃~95℃、もしくは100℃の結晶化温度、Tc、ならびに/または
(j)100℃、もしくは110℃、120℃、130℃~136℃、140℃、145℃、150℃の第1のピークTm、ならびに/または
(k)90℃、95℃、100℃、103℃~105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、140℃、もしくは150℃の第2のピークTm、ならびに/または
(l)CBCの総重量に基づいて、20重量%、もしくは25重量%、もしくは28重量%~47重量%、もしくは50重量%、もしくは55重量%、もしくは60重量%、もしくは70重量%のエチレン総含有量。
【0096】
前述の複合成分を含む、本明細書に開示される複合成分およびブレンドのそれぞれの成分の合計は、100重量%になることが理解される。
【0097】
前述のポリマーを含む、本明細書に開示されるポリマーのそれぞれの成分の合計は、100モル%になることが理解される。
【0098】
D.任意選択の添加剤(複数可)
布シートおよび/またはコーティング層および/またはタイ層は、1つ以上の任意選択の添加剤を含み得る。好適な添加剤の非限定的な例は、可塑剤、油、安定剤、酸化防止剤、顔料、染料、ブロッキング防止添加剤、ポリマー添加剤、消泡剤、保存剤、増粘剤、レオロジー修飾剤、湿潤剤、難燃剤、充填剤、溶媒、核化剤、界面活性剤、キレート剤、ゲル化剤、加工助剤、中和剤、難燃剤、蛍光剤、相溶化剤、抗菌剤、水、およびそれらの組み合わせを含む。
【0099】
E.布ラミネート
本布ラミネートは、プロピレン系ポリマー布から構成される布シート、1つ以上のエチレン系ポリマー(複数可)から構成されるコーティング層、および布シートとコーティング層との間に配置されたタイ層を含む。布ラミネートは、20N/15mm~40N/15mmの剥離力(ピーク荷重)を有する。布ラミネートは、1.25mm、または1.7mm、または1.9mm~2.0mm、または2.3mm、または2.5mmの総厚を有する。
【0100】
一実施形態では、布ラミネートは、プロピレンホモポリマー布から構成される布シートを含む。コーティング層は、(i)エチレン/C4-C8α-オレフィンマルチブロックコポリマー(ブロックコポリマーではない)エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーから構成されるブレンドである。タイ層は、(i)少なくとも50重量%のCBC(タイ層の総重量に基づく)および(ii)エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマー(ブロックコポリマーではない)から構成されるブレンドである。CBCは、0.4、または0.5~0.6、または0.7、または0.8のCBCIを有する。布ラミネートは、20N/15mm、または25N/15mm、または30N/15mm~35N/15mm、または40N/15mmの剥離力(ピーク荷重)を有する。
【0101】
一実施形態では、布ラミネートは、プロピレンホモポリマー布から構成される布シートを含む。コーティング層は、(i)エチレン/C4-C8α-オレフィンマルチブロックコポリマー(ブロックコポリマーではない)エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーから構成されるブレンドである。タイ層は、CBCのみで構成されるブレンドである。CBCは、0.4、または0.5~0.6、または0.7、または0.8のCBCIを有する。布ラミネートは、20N/15mm、または25N/15mm、または30N/15mm~35N/15mm、または40N/15mmの剥離力(ピーク荷重)を有する。
【0102】
一実施形態では、布ラミネートは、プロピレンホモポリマー布から構成される布シートを含む。コーティング層は、エチレン/C4-C8α-オレフィンマルチブロックコポリマーのみから構成されるブレンドである。タイ層は、(i)少なくとも50重量%のCBC(タイ層の総重量に基づく)および(ii)エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマー(ブロックコポリマーではない)から構成されるブレンドである。CBCは、0.4、または0.5~0.6、または0.7、または0.8のCBCIを有する。布ラミネートは、20N/15mm、または25N/15mm、または30N/15mm~35N/15mm、または40N/15mmの剥離力(ピーク荷重)を有する。
【0103】
一実施形態では、布ラミネートは、プロピレンホモポリマー布から構成される布シートを含む。コーティング層は、エチレン/C4-C8α-オレフィンマルチブロックコポリマーのみから構成されるブレンドである。タイ層は、CBCのみで構成されている。CBCは、0.4、または0.5~0.6、または0.7、または0.8のCBCIを有する。布ラミネートは、20N/15mm、または25N/15mm、または30N/15mm~35N/15mm、または40N/15mmの剥離力(ピーク荷重)を有する。
【0104】
一実施形態では、布ラミネートは、プロピレンホモポリマー布から構成される布シートを含む。コーティング層は、(ブロックコポリマーではない)エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーのみで構成されている。タイ層は、(i)少なくとも50重量%のCBC(タイ層の総重量に基づく)および(ii)エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマー(ブロックコポリマーではない)から構成されるブレンドである。CBCは、0.4、または0.5~0.6、または0.7、または0.8のCBCIを有する。布ラミネートは、20N/15mm、または25N/15mm、または30N/15mm~35N/15mm、または40N/15mmの剥離力(ピーク荷重)を有する。
【0105】
一実施形態では、布ラミネートは、プロピレンホモポリマー布から構成される布シートを含む。コーティング層は、(ブロックコポリマーではない)エチレン/C4-C8α-オレフィンコモノマーのみで構成されている。タイ層は、CBCのみで構成されている。CBCは、0.4、または0.5~0.6、または0.7、または0.8のCBCIを有する。布ラミネートは、20N/15mm、または25N/15mm、または30N/15mm~35N/15mm、または40N/15mmの剥離力(ピーク荷重)を有する。
【0106】
本布ラミネートの適切な用途の非限定的な例は、防水シート、バルクグレインカバー、ビルダータープ、ルーフシート、カーテン、チャネルライナー、池およびダムライナー、スクリム、タンクライナー、ウォーターバリア、ジオメンブレン、グラウンドカバーシート、バナー(印刷)および非印刷)およびそれらの任意の組み合わせを含む。
【0107】
ここで、本開示のいくつかの実施形態を、次の実施例において詳述する。
【実施例】
【0108】
物品の生成に使用される材料は、以下の表1に提供される。
【表1】
【0109】
CBC1およびCBC2も、同様の方法で製造される。CBC2は、以下の表2の反応条件下で調製された。触媒は、([[rel-2’,2’’’-[(1R,2R)-1,2-シクロヘキサンジイルビス(メチレンオキシ-O)]ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)-5-メチル[1,1’-ビフェニル]-2-オラト-O]](2-)]ジメチルハフニウム)であった。共触媒-1は、長鎖トリアルキルアミン(Akzo Nobel,Inc.から入手可能なArmeen(商標)M2HT)の反応によって調製されたテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C14-18アルキル)アンモニウム塩と、HClと、米国特許第5,919,983号の実施例2に実質的に開示されているLi[B(C6F5)4](Boulder Scientificから購入し、さらに精製することなく使用した)と、の混合物であった。共触媒-2は、Akzo Nobelから購入し、さらに精製することなく使用した、修飾メチルアルモキサン(MMAO)であった。「DEZ」は、鎖シャトリング剤であるジエチル亜鉛を指している。
【表2】
【0110】
CBC1およびCBC2の性質は、以下の表3~4に示されている。
【表3】
【表4】
【0111】
1.結晶性ブロック複合材料指数(CBCI)の計算
CBCIは、ジブロック内のCEB対CAOBの比が、CBC全体におけるエチレン対α-オレフィンの比と同じであるという推定の下、CBC内のブロックコポリマーの量の推定値を提供する。この仮定は、本明細書に記載されるように、個別の触媒速度論および連鎖シャトリング触媒作用を介したジブロックの形成のための重合機構の理解に基づいて、これらの統計的CBCコポリマーに対して有効である。このCBCI分析は、ポリマーがプロピレンホモポリマー(これらの実施例ではCAOP)とポリエチレン(これらの実施例ではCEP)との単純なブレンドである場合よりも、単離PPの量が少ないことを示す。結果として、ポリエチレン画分は、ポリマーが単にポリプロピレンとポリエチレンとのブレンドである場合では存在しないであろうかなりの量のプロピレンを含有する。この「余分なプロピレン」を説明するために、質量平衡計算を行って、ポリプロピレンおよびポリエチレン画分の量、ならびにHTLCによって分離される画分の各々に存在するプロピレンの重量%からCBCIを推定することができる。CBC1およびCBC2に対応するCBCI計算を表5に提供される。
【表5】
【0112】
上記の表3~5を参照して、CBCIは、最初に、以下の等式1に従って、ポリマー中の各成分からのプロピレンの重量パーセントの合計を決定することによって測定され、これは、(ポリマー全体の)全体の重量%のプロピレン/C
3をもたらす。この質量平衡の等式を使用して、ブロックコポリマー中に存在するPPおよびPEの量を定量することができる。この質量平衡の等式を使用して、2成分ブレンド中、または3成分、またはn成分ブレンドにまで拡大してPPおよびPEの量を定量することもできる。CBC1およびCBC2の場合、PPまたはPEの全量は、ブロックコポリマーおよび非結合PPおよびPEポリマー中に存在するブロック中に含有される。
【数1】
式中、w
PPはポリマー中のPPの重量分率である;w
PEは、ポリマー中のPEの重量分率である;重量%C
3 PPは、PP成分またはブロック内のプロピレンの重量パーセントである;重量%C
3 PEは、PE成分またはブロック内のプロピレンの重量パーセントである。
【0113】
プロピレン(C3)の全重量パーセントが、ポリマー全体に存在するC3の総量を表すC13 NMRまたはいくつかの他の組成の測定から測定されることに留意されたい。PPブロック中のプロピレンの重量パーセント(重量%C3 PP)を100(該当する場合)に設定するか、そうでなければ、そのDSC融点、NMR測定、または他の組成推定値から既知である場合、その値をその場所に当てはめることができる。同様に、PEブロック中のプロピレンの重量パーセント(重量%C3 PE)を100(該当する場合)に設定するか、そうでなければ、そのDSC融点、NMR測定、または他の組成推定値から既知である場合、その値をその場所に当てはめることができる。C3の重量パーセントは、表5に示される。
【0114】
等式1に基づいて、ポリマーに存在するPPの全体の重量分率を、ポリマーで測定された総C
3の質量平衡から等式2を使用して計算することができる。或いは、重合中のモノマーおよびコモノマー消費量の質量平衡からも推定され得る。全体的に、これは、非結合成分中に存在するかまたはブロックコポリマー中に存在するかにかかわらず、ポリマー中に存在するPPおよびPEの量を表す。従来のブレンドの場合、PPの重量分率およびPEの重量分率は、存在するPPおよびPEポリマーの個別の量に対応する。CBCの場合、PP対PEの重量分率の比率も、この統計的ブロックコポリマーに存在するPPおよびPEの間の平均ブロック比率に対応すると想定される。
【数2】
式中、w
PPはポリマー中のPPの重量分率である;重量%C
3 PPは、PP成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセントである;重量%C
3 PEは、PE成分またはブロック中のプロピレンの重量パーセントである。
【0115】
CBC中のブロックコポリマー(ジブロック)の量を推定するために、等式3~5を適用し、HTLC分析によって測定される単離PPの量を使用して、ジブロックコポリマー中に存在するポリプロピレンの量を決定する。HTLC分析において最初に単離または分離された量は、「非結合PP」を表し、その組成は、ジブロックコポリマー中に存在するPPブロックを表す。等式3の左辺にポリマー全体の全重量パーセントC
3、ならびに(HTLCから単離された)PPの重量分率および(HTLCによって分離された)PEの重量分率を、等式3の右辺に置換することによって、等式4および等式5を使用して、PE画分中のC
3の重量パーセントを計算することができる。PE画分は、非結合PPから分離された画分として記載され、ジブロックおよび非結合PEを含有する。単離PPの組成は、前述のようなPPブロック中のプロピレンの重量パーセントと同じであると仮定される。
【数3】
【数4】
【数5】
式中、w
単離PPは、HTLCから単離されたPPの重量分率である;w
PE-画分は、HTLCから分離されたPEの重量分率であり、ジブロックおよび非結合PEを含有する;重量%C
3 PPは、PP中のプロピレンの重量%であり、これは、PPブロックおよび非結合PPに存在する同量のプロピレンでもある;重量%C
3 PE-画分は、HTLCによって分離されたPE-画分中のプロピレンの重量%である;および重量%C
3全体は、ポリマー全体の全重量%プロピレンである。
【0116】
HTLCからのポリエチレン画分中の重量%C3の量は、「非結合ポリエチレン」に存在する量を超える、ブロックコポリマー画分に存在するプロピレンの量を表す。ポリエチレン画分に存在する「追加の」プロピレンを説明するために、この画分にPPを存在させる唯一の方法は、PPポリマー鎖をPEポリマー鎖に接続する必要があることである(そうでなければ、HTLCで分離されたPP画分により単離される)。そのため、PPブロックは、PE画分が分離されるまでPEブロックに吸着されたままである。
【0117】
ジブロック中に存在するPPの量は、等式6を使用して計算される。
【数6】
式中、wt%C
3 PE-画分は、HTLCによって分離されたPE-画分中のプロピレンの重量%である(等式4);wt%C
3 PPは、PP成分またはブロック(先に定義される)中のプロピレンの重量%である;重量%C
3 PEは、PE成分またはブロック(先に定義される)中のプロピレンの重量%である;w
PP-ジブロックは、HTLCによってPE-画分で分離されたジブロック内のPPの重量分率である。
【0118】
このPE画分中に存在するジブロックの量は、PPブロック対PEブロックの比が、全ポリマー中に存在するPP対PEの全体比と同じであると仮定することによって推定することができる。例えば、PP対PEの全体比が全ポリマーにおいて1:1である場合、ジブロック中のPP対PEの比もまた1:1であると仮定される。したがって、PE画分中に存在するジブロックの重量分率は、ジブロック中のPPの重量分率(wPP-ジブロック)に2を乗算したものとなる。これを計算するための別の方法は、ジブロック中のPPの重量分率(wPP-ジブロック)を、全ポリマー中のPPの重量分率で除算することによる(等式2)。
【0119】
全ポリマー中に存在するジブロックの量をさらに推定するため、PE画分中のジブロックの推定量に、HTLCから測定したPE画分の重量分率を乗算する。結晶性ブロック複合材料指数を推定するため、ジブロックコポリマーの量を、以下のとおり決定する。CBCIを推定するため、等式6を使用して計算されたPE画分中のジブロックの重量分率を(等式2で計算されるように)PPの全重量分率で除算し、次いで、PE画分の重量分率で乗算する。
【0120】
3.布ラミネートの製造
タイ層のキャストフィルム製造:
厚さ2ミル(50μm)の単層キャストフィルム(タイ層)は、3つの単軸スクリュー押出機を備えたDr.Collin共押出キャストフィルムラインで製造される。加工温度は、220℃前後に設定されている。スループットは、約6kg/時である。フィルムの巻き取り速度は、10m/分である。CBC1/ENGAGE 8100(80/20)ブレンドから製造されたフィルムの場合、材料はフィルム押出の前にドライブレンドされる。
【0121】
予定表の試行は、ZE25二軸スクリュー直接押出ラインで実行される。材料供給の概念は、
図1に示される。
【0122】
図1に示すように、タイ層の単層フィルムは、布シート(表1から)と一緒に、3ロールの450mmラボカレンダーの最初のカレンダーギャップに供給された。タイ層の自由表面上で、上部コーティング材料は、直接押出された融解物として、300mm幅のフィルムダイから最初のカレンダーギャップに同時に供給される。フィルムダイは、1mmのダイの開口部に設定され、ギャップを描き、カレンダーを作成すると、構造全体の最終的なシートの厚さは0.75mmになった。表6(下)に、直接押出実験の押出機とカレンダーの設定を示す。
【0123】
【0124】
結果のあるトライアルプログラムは、以下の表7-9に示される。表7は、コーティング層としてINFUSE 9010/ENGAGE 8480の50/50ブレンドを使用したコーティングフィルムとPP布間の剥離力を示している。タイ層のない比較例1は、比較的低い剥離力を有する。本発明の実施例1は、タイ層としてCBC1/ENGAGE 8100(80/20)を使用して、著しく増加した剥離強度を示す。タイ層は、コーティング層とPP布の両方に対して良好な接着性を有し、これにより、フィルムとPP布との間の接着が改善される。結合層としてCBC2を使用する発明の実施例2は、さらに高い剥離強度を示す。これは、CBC1と比較してCBC2の融解温度が低いことに起因する。
【表7】
【0125】
表8(下)は、コーティング層として100%INFUSE 9010を使用したコーティングフィルムとPP布間の剥離力を示す。表6と一致して、CBC1/ENGAGE 8100ブレンドをタイ層として使用(本発明3)、CBC2をタイ層として使用(本発明4)、およびCBC1をタイ層として使用(本発明3)は全て、タイ層のない比較サンプル2と比較してより高い剥離力を示す。本発明の実施例3~5はまた、比較サンプル2と比較してより高いシール強度を示す。本発明の実施例3~5の結合層は、コーティング層とPP布の両方に対して良好な接着性を有し、これにより、フィルムとPP布との間の接着が改善される。その結果、ヒートシール強度も向上する。
【表8】
【0126】
表9(下)は、コーティング層として100%ENGAGE 8480を使用したコーティングフィルムとPP布間の剥離力を示す。表9の比較サンプル3と表8の比較サンプル2を比較すると、ENGAGE 8480とPP布(11.1N/15mm)の間の剥離力は、INFUSE 9010とPP布(21.0N/15mm)の間の剥離力よりも本質的に低いことがわかる。しかしながら、CBC1/ENGAGE 8100ブレンドをタイ層として使用(本発明6)、CBC2をタイ層として使用(本発明7)、CBC1をタイ層として使用(本発明8)すると、全て比較サンプルと比較して高い剥離力が得られる。それらの中で、タイ層としてのCBC2が最も高い剥離力を提供し、これもまた、CBC2のより低い融解温度に起因する。発明実施例6~8のタイ層はまた、ヒートシール強度を改善する。
【表9】
【0127】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の一部、 および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、 以下の特許請求の範囲の範疇に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 布ラミネートであって、
プロピレン系ポリマー繊維で構成される布シートと、
1つ以上のエチレン系ポリマーから構成されるコーティング層と、
前記布シートと前記コーティング層の間に置かれるタイ層と、を含み、前記タイ層は、
少なくとも50重量%の結晶性ブロック複合材料(CBC)および任意選択のブレンド成分で構成され、前記CBCは、
(i)アイソタクチック結晶性プロピレンホモポリマー(iPP)と、
(ii)エチレン/プロピレンコポリマーと、
(iii)式(EP)-(iPP)のジブロックと、を含み、
前記CBCは、0.1~1.0のブロック複合インデックス(CBCI)を有し、
前記布ラミネートは、20N/15mm~40N/15mmの剥離力を有する、布ラミネート。
[2] 前記タイ層が前記布シートと直接接触し、前記タイ層が前記コーティング層と直接接触している多層シート。
[3] 前記コーティング層が、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーとエチレン/α-オレフィンコポリマーのブレンドで構成され、
前記タイ層が、前記CBCで構成され、
前記布ラミネートが、20N/15mm~40N/15mmの剥離力を有する、[2]に記載の布ラミネート。
[4] 前記コーティング層が、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーとエチレン/α-オレフィンコポリマーとのブレンドから構成され、
前記タイ層が、70重量%~90重量%の前記CBCと、30重量%~10重量%のエチレン/α-オレフィンコポリマーであるブレンド成分を含み、
前記布ラミネートが、20N/15mm超~40N/15mmの剥離力を有する、[2]に記載の布ラミネート。
[5] 前記コーティング層が、エチレン/α-オレフィンブロックコポリマーで構成され、
前記タイ層が、CBCで構成され、
前記布ラミネートが、20N/15mm~40N/15mmの剥離力を有する、[2]に記載の布ラミネート。
[6] 前記コーティング層が、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマーで構成され、
前記タイ層が、70重量%~90重量%の前記CBCと、30重量%~10重量%のエチレン/α-オレフィンコポリマーであるブレンド成分を含み、
前記布ラミネートが、20N/15mm超~40N/15mmの剥離力を有する、[2]に記載の布ラミネート。