(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】エッジライト型導光板及びエッジライト型面光源ユニット
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20230907BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20230907BHJP
F21V 8/00 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
F21S2/00 433
G02B6/00 331
F21V8/00 100
(21)【出願番号】P 2021515783
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050667
(87)【国際公開番号】W WO2020217590
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019086666
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-175057(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094642(WO,A1)
【文献】特開2017-141459(JP,A)
【文献】特開2014-086158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
G02B 6/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂組成物を含むエッジライト型導光板であって、
前記導光板の表面に複数のレンチキュラー形状及び/又はプリズム形状の凸部を有し、
前記導光板の厚みTが1.0~3.0mmであり、
前記スチレン系樹脂組成物が、スチレン系樹脂と、リン系酸化防止剤(A)及び/又はフェノール系酸化防止剤(B)と、を含有し、
下記の(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす、
(1)前記凸部の高さHが10~500μmである
(2)前記凸部のピッチPが30~800μmである
エッジライト型導光板。
【請求項2】
前記凸部の高さHが10~500μmであり、前記凸部のピッチPが30~800μmである、請求項1に記載のエッジライト型導光板。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂組成物100質量部に対して、前記リン系酸化防止剤(A)0.001~0.5質量部と、前記フェノール系酸化防止剤(B)0.001~0.5質量部と、を含有する請求項1又は請求項2に記載のエッジライト型導光板。
【請求項4】
前記リン系酸化防止剤(A)が、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ―tert-ブチル―4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ―3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ―tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕―4,4ジイルビホスホナイト、ビス(2,4-ジ―tert-ブチル―6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のエッジライト型導光板。
【請求項5】
前記フェノール系酸化防止剤(B)が、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル―4-ヒドロキシ―5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のエッジライト型導光板。
【請求項6】
前記スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が20万~40万で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0~3.0である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のエッジライト型導光板。
【請求項7】
前記スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0~3.0である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のエッジライト型導光板。
【請求項8】
前記スチレン系樹脂組成物の初期の光路長115mmでの波長380~780nmの平均透過率が80%以上である、請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載のエッジライト型導光板。
【請求項9】
請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載のエッジライト型導光板と、前記エッジライト導光板の端面に光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジライト型導光板及びエッジライト型面光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイのバックライトには光源を表示装置の正面に配置する直下型バックライトと側面に配置するエッジライト型バックライトがある。導光板はエッジライト型バックライトに組み込まれ、側面からの光を液晶パネルに導く役割を果たし、テレビ、デスクトップ型パーソナルコンピューターのモニター、ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話機、カーナビゲーションなど幅広い用途で使用される。また、導光板を用いたバックライトは、照明用としても使用される。導光板にはPMMA(ポリメチルメタクリレート)に代表されるアクリル樹脂よりも吸水性が低く、成形品に反りの発生や寸法の変化が発生しにくいスチレン系樹脂を用いることが提案されている(特許文献1)。さらにポリスチレンを導光板に用いることも提案されている。
【0003】
導光板は、板状の成形品の端面(側面)から光を入射し、成形品の後面(非発光面)に形成された反射パターンにより、成形品の前面(発光面)に光を導き、面発光させる機能を持った部材である。近年導光板は大型薄肉化傾向で、また、出射光の均一性を高めるために、板状成形品の前面(発光面)にプリズムパターン等を設けることが工業的な主流となっている。板状成形品の前面あるいは後面のパターンは、板状成形品の成形時に形成させることができ、例えば射出成形では金型形状、押出成形ではロール転写などによって、パターンを形成させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-075648号公報
【文献】国際公報2013/094642号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アクリル樹脂より光学特性に劣るポリスチレンを用いる導光板においては、パターンの成形性が大きな課題である。導光板の前面(発光面)に凹凸形状のパターンを設ける際、押出成形ではロール転写によってパターンを形成させることができるが、目ヤニの発生や転写性・離型性不良など成形に問題を生じ、均一な輝度を与える導光板を容易に製造することが困難であった。一方、パターン成形が不十分であると、光学特性に劣るばかりか、薄肉化と相まって強度が低く、実用化に耐えない導光板になるという課題があった。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、輝度の均一性に優れ、且つ押出成形及びロール転写による導光板製造において成形性に優れるために容易に製造可能であるエッジライト型導光板、及び当該導光板を用いたエッジライト型面光源ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、スチレン系樹脂組成物を含むエッジライト型導光板であって、前記導光板の表面に複数のレンチキュラー形状及び/又はプリズム形状の凸部を有し、前記導光板の厚みTが1.0~3.0mmであり、前記スチレン系樹脂組成物が、スチレン系樹脂と、リン系酸化防止剤(A)及び/又はフェノール系酸化防止剤(B)と、を含有し、下記の(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす、
(1)前記凸部の高さHが10~500μmである
(2)前記凸部のピッチPが30~800μmである
エッジライト型導光板が提供される。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、スチレン系樹脂組成物を含むエッジライト型導光板において、表面に複数のレンチキュラー及び/又はプリズム形状の所定のパターンの凸部を有し、導光板の厚みが所定の範囲であり、スチレン系樹脂組成物が特定の酸化防止剤を含む場合には、輝度の均一性に優れ、且つ成形性に優れるために容易に製造可能なエッジライト型導光板となることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記凸部の高さHが10~500μmであり、前記凸部のピッチPが30~800μmである。
好ましくは、前記スチレン系樹脂組成物100質量部に対して、前記リン系酸化防止剤(A)0.001~0.5質量部と、前記フェノール系酸化防止剤(B)0.001~0.5質量部と、を含有する。
好ましくは、前記リン系酸化防止剤(A)が、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ―tert-ブチル―4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ―3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ―tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕―4,4ジイルビホスホナイト、ビス(2,4-ジ―tert-ブチル―6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種である。
好ましくは、前記フェノール系酸化防止剤(B)が、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル―4-ヒドロキシ―5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンから選ばれる少なくとも1種である。
好ましくは、前記スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が20万~40万で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0~3.0である。
好ましくは、前記スチレン系樹脂組成物の初期の光路長115mmでの波長380~780nmの平均透過率が80%以上である。
本発明の別の観点によれば、前記エッジライト型導光板と、前記エッジライト導光板の端面に光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の導光板の概略を表す斜視図である。
図1Aは凸部がレンチキュラー形状の場合の斜視図であり、
図1Bは凸部がプリズム形状の場合の斜視図である。
【
図2】本発明の導光板の断面図である。
図2Aは凸部がレンチキュラー形状の場合の断面図であり、
図2Bは凸部がプリズム形状の場合の断面図である。
【
図3】本発明の導光板の製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.エッジライト型導光板
[導光板の形状]
(凸部)
本発明のエッジライト型導光板は、導光板の表面に凹凸形状を有する。より詳細には、
図1に示すように、導光板1の表面に複数のレンチキュラー形状(
図1A)及び/又はプリズム形状(
図1B)の凸部3を有する。凸部は、導光板の少なくとも一つの面に設けられていることが好ましく、特に導光板の前面(発光面)である一つの面に設けられている必要がある。他の面についても必要であれば設けてもよいが、導光板の前面(発光面)にのみ設けられていることがより好ましい。
【0013】
ここで、レンチキュラー形状の凸部とは、
図1Aに示すような円弧状の凸部3Aであり、断面の縁形状が円弧状の突条体となされている(
図2A)。また、プリズム形状とは、
図1Bに示すような円弧状の凸部3Bであり、断面の縁形状が三角山形の突条体となされている(
図2B)。また、凸部は複数条、互いに平行関係となるように形成されている(
図1)。また、凸部は導光板に一体的に形成されていることが好ましい。
【0014】
導光板の表面上の複数の凸部は、複数形成されていれば制限されないが、好ましくは、周期的なパターンである。
【0015】
凸部のピッチPは、好ましくは30~800μmであり、より好ましくは100~600μmであり、さらに好ましくは200~400μmである。このような範囲内であると、酸化防止剤を添加したスチレン系樹脂組成物の成形において、優れた押出安定性、ロール転写性、及びロール離型性で、十分な強度の導光板を製造することが容易である。凸部のピッチPは、具体的には例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ここで、凸部のピッチPとは、
図2に示すように、隣接する凸部の頂点間の距離の平均値である。具体的一例においては、任意の範囲における、連続した100個の凸部についての隣接する凸部の頂点間の距離の平均値である。
【0016】
凸部の高さHは、好ましくは10~500μmであり、より好ましくは50~300μmであり、さらに好ましくは90~200μmである。このような範囲内であると、酸化防止剤を添加したスチレン系樹脂組成物の成形において、優れた押出安定性、ロール転写性、及びロール離型性で、十分な強度の導光板を製造することが容易である。凸部の高さHは、具体的には例えば、10、20、21、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ここで、凸部の高さHとは、
図2に示すように、凸部の最も低い箇所と高い箇所の差の平均値である。具体的一例においては、任意の範囲における、連続した100個の凸部についての凸部の最も低い箇所と高い箇所の差の平均値である。
【0017】
凸部の幅Wは、好ましくは30~800μmであり、より好ましくは100~600μmであり、さらに好ましくは200~400μmである。このような範囲内であると、酸化防止剤を添加したスチレン系樹脂組成物の成形において、優れた押出安定性、ロール転写性、及びロール離型性で、十分な強度の導光板を製造することが容易である。凸部の幅Wは、具体的には例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ここで、凸部の幅Wとは、
図2に示すように、凸部の最も低い箇所間の距離の平均値である。具体的一例においては、任意の範囲における、連続した100個の凸部についての凸部の最も低い箇所間の距離の平均値である。
【0018】
凸部の高さHとピッチPの比(H/P)は、好ましくは0.1~1.0であり、より好ましくは0.26~0.7であり、さらに好ましくは0.3~0.5である。このような範囲内であると、酸化防止剤を添加したスチレン系樹脂組成物の成形において、優れた押出安定性、ロール転写性、及びロール離型性で、十分な強度の導光板を製造することが容易である。比(H/P)は、具体的には例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.26、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.66、0.67、0.68、0.70であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
(厚み)
導光板の厚みTは、1.0~3.0mmであり、好ましくは1.5~2.5mmであり、より好ましくは1.6~2.4mmである。このような範囲内であると、酸化防止剤を添加したスチレン系樹脂組成物の成形において、優れた押出安定性、ロール転写性、及びロール離型性で、十分な強度の導光板を製造することが容易である。導光板の厚みTは、具体的には例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
[スチレン系樹脂組成物]
本発明のエッジライト型導光板は、スチレン系樹脂組成物を含むエッジライト型導光板である。すなわち、スチレン系樹脂組成物からなる成形品である。
【0021】
スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂と、リン系酸化防止剤(A)及び/又はフェノール系酸化防止剤(B)と、を含有する。
【0022】
(スチレン系樹脂)
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を重合して得ることができる。スチレン系単量体とは、芳香族ビニル系モノマーである、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン等の単独または2種以上の混合物であり、好ましくはスチレンである。また、本発明の特徴を損ねない範囲でスチレン系単量体以外の単量体と共重合してもよく、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、や無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン不飽和カルボン酸類、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド系モノマー類が挙げられる。スチレン系樹脂は、好ましくは実質的にスチレン系単量体のみからなり、より好ましくはスチレン系単量体のホモポリマーである。
【0023】
スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂と、各種添加剤とで構成されていることが好ましく、スチレン系樹脂組成物100質量部に対して、スチレン系樹脂を、例えば90~99.998質量部、95~99.98質量部含有することが好ましい。スチレン系樹脂の割合は、具体的には例えば、スチレン系樹脂組成物100質量部に対して、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.85、99.88、99.9、99.98、99.998質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
スチレン系樹脂の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0025】
スチレン系樹脂の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
【0026】
スチレン系樹脂の重合に用いられるスチレン系単量体の重合禁止剤としては、4-t-ブチルカテコール(TBC)が使用されることが多く、スチレン系樹脂組成物中には、4-t-ブチルカテコールが僅かに残留する場合がある。4-t-ブチルカテコール自体が着色成分となり、色相や透過率を低下させるため、スチレン系樹脂組成物中には、4-t-ブチルカテコールを極力含まないことが好ましいが、完全に除去することは難しい。4-t-ブチルカテコールの好ましい範囲としては、0.001~10μg/gであり、より好ましくは、0.01~8μg/gであり、特に好ましくは、0.1~6μg/gである。
【0027】
連続重合の場合、まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0028】
スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万~40万であり、より好ましくは22万~38万であり、さらに好ましくは25万~30万である。このような範囲にすることにより成形性と導光板の強度を両立することができる。20万未満では成形品の強度が不十分となり、40万を超えると成形性が著しく低下する。スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、具体的には例えば、20万、21万、22万、23万、24万、25万、26万、27万、28万、29万、30万、31万、32万、33万、34万、35万、36万、37万、38万、39万、40万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。スチレン系樹脂の重量平均分子量は、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
【0029】
スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.2~2.8であり、さらに好ましくは1.5~2.5である。このような範囲内であると、酸化防止剤を添加したスチレン系樹脂組成物の成形において、優れた押出安定性、ロール転写性、及びロール離型性で、十分な強度の導光板を製造することが容易である。スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、具体的には例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
【0030】
(リン系酸化防止剤(A)/フェノール系酸化防止剤(B))
スチレン系樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(A)及びフェノール系酸化防止剤(B)の何れか一方を含有していればよいが、双方を併用することでより高い成形性及び強度が得られる。
【0031】
リン系酸化防止剤(A)は、スチレン系樹脂組成物100質量部に対して、0.001~0.5質量部含有することが好ましく、0.01~0.4質量部含有することが好ましく、0.05~0.3質量部含有することがより好ましい。また、フェノール系酸化防止剤(B)は、スチレン系樹脂組成物100質量部に対して、0.001~0.5質量部含有することが好ましく、0.01~0.3質量部含有することが好ましく、0.05~0.2質量部含有することがより好ましい。このような範囲内であると、成形性及び強度が優れる。スチレン系樹脂組成物100質量部に対する、リン系酸化防止剤(A)及びフェノール系酸化防止剤(B)の含有量は、それぞれ、具体的には例えば、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
リン系酸化防止剤(A)は、例えば、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ―tert-ブチル―4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ―3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ―tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕―4,4ジイルビホスホナイト、ビス(2,4-ジ―tert-ブチル―6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種である。
【0033】
フェノール系酸化防止剤(B)は、例えば、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル―4-ヒドロキシ―5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンから選ばれる少なくとも1種である。
前述の6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(例えば、住友化学株式会社製、スミライザーGP)のように、同一分子内にフォスファイト構造とフェノール構造を併せ持つ化合物については、スチレン系樹脂組成物に対して、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤のそれぞれを含有すると考える。例えば、リン系―フェノール系化合物を0.1質量部含有する場合には、スチレン系樹脂組成物100質量部に対して、リン系酸化防止剤を0.1質量部、フェノール系酸化防止剤を0.1質量部含有すると考える。
【0034】
リン系酸化防止剤(A)、フェノール系酸化防止剤(B)、及びその他の添加剤の添加方法としては、スチレン系樹脂の重合工程、脱揮工程、造粒工程で添加混合する方法や成形加工時の押出機や射出成形機などで添加混合する方法、リン系酸化防止剤(A)、フェノール系酸化防止剤(B)を高濃度に調整した樹脂組成物を無添加のスチレン系樹脂によって目的の含有量に希釈混合する方法などが挙げられ、特に限定されることではない。
【0035】
(その他の添加剤)
スチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系安定剤、帯電防止剤、親水性添加剤、流動パラフィン(ミネラルオイル)、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ブルーイング剤等の種々の添加剤を含有することができる。
【0036】
スチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤としてラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等の離型剤を含んでもよいが、透過率を悪化させる場合があるので、必要以上に含有しないことが好ましい。離型剤の含有量としては、スチレン系樹脂組成物中、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下である。高い透過率を得る観点からは、スチレン系樹脂組成物は実質的に離型剤を含まないことが好ましい。
【0037】
スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は95~104℃であることが好ましく、97~104℃であることがより好ましい。ビカット軟化温度が95℃未満では耐熱性が不足し、使用環境によっては導光板が変形する可能性がある。
【0038】
スチレン系樹脂組成物の曇り度は、4mm厚みの成形品で、5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。
【0039】
スチレン系樹脂組成物の初期の光路長115mmでの波長380~780nmの平均透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは84%以上である。
【0040】
スチレン系樹脂組成物の長期耐久試験後の光路長115mmでの波長380~780nmの平均透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上である。
【0041】
スチレン系樹脂組成物の初期のYI値は、好ましくは7.0以下であり、より好ましくは6.0以下である。
【0042】
初期のYI値と、長期耐久試験後のYI値とのYI値の差(ΔYI)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。
【0043】
全光線透過率及びYI値は、次の手順にて測定を行った。スチレン系樹脂組成物のペレットを用い、シリンダー温度230℃、金型温度50℃にて射出成形を行い、127×127×3mm厚みの板状成形品を成形した。ここで長期の耐久性を評価するサンプル(長期耐久試験後のサンプル)は、80℃のオーブン内に1000時間保管した。次に、板状成形品から115×85×3mm厚みの試験片を切り出し、端面をバフ研磨によって研磨し、端面に鏡面を有する板状成形品を作成した。研磨後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光において、光路長115mmでの波長350nm~800nmの分光透過率を測定し、C光源における、視野2°でのYI値をJIS K7105に倣い算出した。また、波長380nm~780nmの平均透過率とは、全光線透過率である。
【0044】
[導光板の製造方法]
本発明のエッジライト型導光板は、上記のスチレン系樹脂組成物を成形して得られ、成形方法としては、シート押出成形や、射出成形、圧縮成形等の公知の方法を用いることができるが、生産性、成形品の大型化が容易という点で、表面形状転写型を備えた連続シート押出成形であることが好ましい。該シート押出成形の例としては、樹脂を加熱溶融状態でフィードブロックに供給し、ダイから連続的に押し出しシートを作成する押出工程と、前記樹脂シートを、圧着ロールと冷却ロールで挟み込む押圧工程、前記押圧工程後、前記樹脂シートを前記冷却ロールに密着させながら搬送する搬送工程を有し、前記冷却ロールの表面に転写型を備える連続シート押出成形法が上げられ、該転写型の形状を変更することで、シート表面に任意の凹凸形状を転写することができる。
また、本発明のエッジライト型導光板は、前面(発光面)に凹凸形状を有するが、背面には光を乱反射させる反射加工が施される。反射加工としては、例えば、シルク印刷やインクジェット印刷のほか、レーザー照射によりドット形状の凹凸を付与する方法が上げられ、ドットパターンの印刷には、光を拡散させる微粒子を有するインクを使用することができる。
【0045】
2.エッジライト型面光源ユニット
本発明のエッジライト型面光源ユニットは、エッジライト型導光板と、該導光板の端面に光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニットである。
本発明のエッジライト型面光源ユニットは液晶表示装置用の面光源装置として好適に用いられる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0047】
(スチレン系樹脂PS-1~PS-3の製造)
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器及び静的混合器付プラグフロー型反応器である第3反応器を直列に接続して重合工程を構成し、表1に示す条件によりスチレン系樹脂の製造を実施した。各反応器の容量は、第1反応器を39リットル、第2反応器を39リットル、第3反応器を16リットルとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。重合開始剤は、第1反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料スチレンに対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加し、均一混合した。表1に記載の重合開始剤は次の通り
重合開始剤-1 :2,2-ジ(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製パーテトラAを使用した。)
重合開始剤-2 :1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製パーヘキサCを使用した。)
なお、第3反応器では、流れの方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分、出口部分で表1の温度となるよう調整した。
続いて、第3反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コールドカット方式にて、ストランドを冷却および切断しペレット化した。
メルトマスフローレート(MFR)は、JIS K 7210に従って、温度200℃、49N荷重の条件で、ビカット軟化温度は、JIS K 7206に従って、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで測定した。
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0048】
【0049】
[実施例1~19、比較例1~7]
<樹脂組成物の調製>
表2及び表3に示す含有量にて、スチレン系樹脂PS-1、PS-2、PS-3とリン系酸化防止剤(A)及び/又はフェノール系酸化防止剤(B)をスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬してペレットを得た。
【0050】
なお、表2及び表3中のリン系酸化防止剤(A)及びフェノール系酸化防止剤(B)についてはそれぞれ下記の通りである。
【0051】
(リン系酸化防止剤(A))
HP-10:2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス(株式会社ADEKA製 アデカスタブHP-10)
168:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト(BASFジャパン株式会社製 Irgafos 168)
PEP-36:3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン(株式会社ADEKA製 アデカスタブ PEP-36)
P-EPQ:テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1ビフェニル]-4,4ジイルビホスホナイト(クラリアントCo.Ltd.製 Hostanox P-EPQ)
38:ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチル亜りん酸エステル、(BASFジャパン株式会社製 Irgafos 38)
【0052】
(フェノール系酸化防止剤(B))
GP:6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン(住友化学株式会社製 スミライザーGP)
1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製 Irganox 1076)
245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕(BASFジャパン株式会社製 Irganox 245)
1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製 Irganox 1010)
AO80:3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(株式会社ADEKA製 アデカスタブAO-80)
【0053】
<樹脂組成物の光学特性評価>
得られたペレットを用いて、シリンダー温度230℃、金型温度50℃にて射出成形を行い、127×127×3mm厚みの板状成形品を成形した。長期耐久性性を評価するため、得られた成形品を80℃のオーブン内で1000時間保管した。保管前の初期の成形品(初期のサンプル)と保管後の成形品(長期耐久試験後のサンプル)について光学特性を評価するため、板状成形品から115×85×3mm厚みの試験片を切り出し、端面をバフ研磨によって研磨し、端面に鏡面を有する板状成形品を作成した。研磨後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光において、光路長115mmでの波長350nm~800nmの分光透過率を測定し、C光源における、視野2°でのYI値をJIS K7105に倣い算出した。表2及び表3に示す全光線透過率とは、波長380nm~780nmの平均透過率を表す。
【0054】
<導光板の製造>
図3に示すように、得られたペレットを、スクリュー径120mm、L/D=32の単軸押出機5に供給し、シリンダー温度を150~230℃に設定し、溶融混錬した後、ギアポンプ7を経由し、樹脂温度260℃にて、幅1500mmのTダイ9より吐出し、シートを押し出した。続いて、押し出されたシートを、圧着ロール11(鏡面冷却ロール)と第1冷却ロール13(鏡面冷却ロール)で挟み込み、第1冷却ロール13に巻き付けた状態で搬送した後、更に、第1冷却ロール13と第2冷却ロール15(転写型装着ロール)とで挟み込み、樹脂シートの片面に凹凸形状を転写した後、第2冷却ロール15から剥離した樹脂シートを、引取ロール17により引取速度5.2m/分で引き取った。なお、圧着ロール11、第1冷却ロール13及び第2冷却ロール15にはクロムメッキが施されており、各ロールの温度は、圧着ロール11/第1冷却ロール13/第2冷却ロール15=80℃/85℃/90℃に設定した。また、第2冷却ロール15に装着する転写型の形状を変更することで、表2、表3に示す表面凸部形状を有する樹脂シートを得た。
【0055】
なお、表2及び表3中における「形状」、「高さP」、「ピッチP」、「H/P」は、それぞれ、前述で定義した値であり、「レンチ」とは「レンチキュラー」を示す。
【0056】
<導光板の成形性及び強度評価>
表2及び表3における導光板製造における押出安定性(目ヤニ)、ロール転写性、ロール離型性、及び導光板の強度について下記のように評価した。
【0057】
(押出安定性(目ヤニ))
ダイの樹脂温度を300℃に調整し、ダイ付近の目ヤニ発生状況を、以下の基準に基づき評価した。
○:シート押出開始後、30分を経過しても、目ヤニが確認されない。
△:シート押出開始後、10~30分で目ヤニが確認される。
×:シート押出開始後、10分以内に目ヤニが確認される。
なお、「目ヤニ」とは、ダイの出口ノズル周辺に発生する、茶色、若しくは黒色の樹脂劣化物であり、通常、押出量とともに増加し、所定の量を超えるとノズルより脱離し、シート表面に付着する。
【0058】
(ロール転写性)
下記式によりロール転写率Tを求め、ロール転写率Tが95%以上を○、85~95%を△、85%以下を×として、ロール転写性を評価した。
ロール転写率T(%)=樹脂シートの凸部の高さH/転写型の溝部の深さH´×100
【0059】
(ロール離型性)
ダイの樹脂温度を270℃、290℃に調整し、各温度で30分間連続押出を行った後、シート表面の外観を観察した。290℃で外観に変化が無いものを○、290℃でシート表面に肌荒れや白化が生じ、270℃で外観に変化が無いものを△、270℃でシート表面に肌荒れや白化が生じるものを×として、ロール離型性を評価した。
【0060】
(強度)
前記で得られた樹脂シートから、200mm×200mmの試験片を切り出し、重量16.6gの球を使用し、JIS K-7211に従って、50%破壊高さを測定した。50%破壊高さが50cm以上のものを○、30~50cmのものを△、30cm以下のものを×として、導光板の強度を測定した。
【0061】
【0062】
【符号の説明】
【0063】
1:導光板、3A:凸部(レンチキュラー形状)、3B:凸部(プリズム形状)、5:単軸押出機、7:ギアポンプ、9:Tダイ、11:圧着ロール、13:第1冷却ロール、15:第2冷却ロール、17:引取ロール