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特許7344980往復運動機械のための完全作動弁及びそれを含む往復運動機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】往復運動機械のための完全作動弁及びそれを含む往復運動機械
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/10 20060101AFI20230907BHJP
   F16K 1/32 20060101ALN20230907BHJP
   F16K 41/02 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
F04B39/10 A
F16K1/32 Z
F16K41/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021557144
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2020025156
(87)【国際公開番号】W WO2020200524
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】102019000004978
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】カッパーニ、アレシオ
(72)【発明者】
【氏名】マクルーア、ダグラス エム
(72)【発明者】
【氏名】プッチネッリ、フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】マレシ、リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】ウェイマイヤー、ステファン ジェイ
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133824(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115866(WO,A1)
【文献】特表2017-515973(JP,A)
【文献】特表2015-503695(JP,A)
【文献】鈴木春義,1.1.1 溶接の利点,「改訂版 最新溶接ハンドブック」,改訂第2刷,株式会社山海堂,1978年06月30日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動機械のための弁であって、
中に流れ開口を備えるシートと、
前記開口を選択的に開閉するために前記シートと協働するように適合された弁閉鎖部材と、
前記シートに一体的に結合されたケージと、
前記ケージと結合されたカバーと、を備え、
前記弁閉鎖部材が、前記ケージに一体的に接続され、かつ前記カバーを通って延在しているガイド内に摺動的に配設された作動ステムを備え、封止装置が、前記ガイド内に収容され、前記封止装置が、前記作動ステムと協働して、前記作動ステムに沿ったガス漏れを防止又は制限し、
前記カバー及び前記ケージが、単一部分としてモノリシックに形成され
前記封止装置からのガス漏れを回収するように適合され、前記カバー又は前記ケージに一体化された、ガス回収ダクトを更に備える、弁。
【請求項2】
前記シート、前記弁閉鎖部材、前記ケージ、前記カバー及び前記ガイドからなる群から選択される1つ以上の前記弁の構成要素が、金属材料を用いて単一の付加製造工程によって製造されて1つ以上の溶融痕を有する、請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記ガイドが、管形状を有する、請求項1又は2に記載の弁。
【請求項4】
前記ケージが、前記カバーと前記シートとの間に延在している複数のポストを備え、前記ポストが、流路を画定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の弁。
【請求項5】
前記封止装置が、係止部材によって前記カバー及び/又は前記ガイドに係止され、前記作動ステムが、前記係止部材を通って延在している、請求項1~4のいずれか一項に記載の弁。
【請求項6】
前記作動ステムが、前記シートを通って延在している、請求項1~のいずれか一項に記載の弁。
【請求項7】
前記ガイドが、前記ケージとの単一部分としてモノリシックに形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の弁。
【請求項8】
前記シートが、前記ケージとの単一部分としてモノリシックに形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の弁。
【請求項9】
ガードを更に備え、前記弁閉鎖部材が、前記シートと前記ガードとの間に配設されて、それらの間を移動するように適合されている、請求項1~のいずれか一項に記載の弁。
【請求項10】
前記シートが、交換可能なシートプレートを有し、前記弁閉鎖部材は、前記弁閉鎖部材が弁閉鎖位置にあるときに、前記交換可能なシートプレートに接触するように配設されている、請求項1~のいずれか一項に記載の弁。
【請求項11】
吸引弁として、又は吐出弁として構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の弁。
【請求項12】
往復運動圧縮機であって、
シリンダと、
前記シリンダ内を往復移動可能に配設されたピストンであって、前記シリンダ及び前記ピストンが、少なくとも1つの圧縮チャンバを形成している、ピストンと、
前記圧縮チャンバに流体結合された少なくとも1つの吸引弁と、
前記圧縮チャンバに流体結合された少なくとも1つの吐出弁と、を備え、
前記吸引弁及び吐出弁のうちの少なくとも1つが、請求項1~11のいずれか一項に従って構成されている、往復運動圧縮機。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の弁の製造方法であって、
単一部品としてモノリシックに形成すべき前記弁の構成要素を、金属材料を用いて付加製造による単一の製造工程で製造するステップと、
前記弁の構成要素を組み立てるステップと、を含む、
弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される実施形態は、概して、往復運動機械のための、特に往復運動圧縮機のための作動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、圧縮性流体の圧力を増加させるために使用される機械であり、圧縮機の使用は、いくつかの技術分野で、その中でも特に石油及びガス産業の間で普及している。
【0003】
圧縮機は、2つの主カテゴリ、すなわち動的圧縮機及び容積式圧縮機に分類され得る。動的圧縮機では、ガスは、インペラ又はブレード付きホイールなどの回転要素から、圧縮されているガスへと運動エネルギーを伝達することによって圧縮される。次いで、ガスを減速することによって、ガスの運動エネルギーを圧力に変換する。典型的な動的圧縮機は、遠心圧縮機及び軸流圧縮機である。容積式圧縮機では、ガス圧力は、ガスを容積内に閉じ込めて、容積を低減させることによって増加する。例示的な容積式圧縮機は、ねじ圧縮機、ベーン圧縮機、及び往復運動圧縮機である。
【0004】
往復運動圧縮機は、シリンダと、シリンダ内を往復移動するようにシリンダ内に摺動的に配設されたピストンと、を備える。ピストン及びシリンダは、シングル又はダブル圧縮チャンバを形成する。シングル圧縮チャンバが形成されている場合、往復運動圧縮機は、単動往復運動圧縮機と称される。2つの圧縮チャンバがシリンダ及びピストンによって画定されている場合、圧縮機は、複動往復運動圧縮機と称される。各圧縮チャンバは、吸引ダクト又は吸引プリナムに流体結合されて、そこから圧縮性流体を吸入し、中の加圧流体を吐出ダクト又は吐出プレナムへ吐出する。
【0005】
各圧縮チャンバは、吸引ダクト又は吸引プリナムと流体連通する圧縮チャンバを選択的に配置するように適合された少なくとも1つの吸引弁を備える。各圧縮チャンバは、放出ダクト又は放出プレナムと流体連通する圧縮チャンバを選択的に配置するように適合された少なくとも1つの放出弁を更に備える。
【0006】
通常、往復運動圧縮機は、自動吸引弁及び自動放出弁を使用する。自動弁では、弁閉鎖部材は、1つ以上のコイルスプリングなどの弾性部材によって閉鎖位置に付勢される。弁は、閉鎖部材の両側に作用する流体圧力の差が、弾性部材によって印加される弾発力に打ち勝ったときに開く。
【0007】
いくつかの実施形態では、圧縮サイクルの吸引段階、圧縮段階、及び放出段階のより良好な制御のために、往復運動圧縮機のための弁は、閉鎖部材をアクチュエータに接続することによって作動される。このようにして、弁の開放及び閉鎖は、少なくとも圧縮サイクルの一部の間、弁にわたる圧力差に関係なく制御することができる。往復運動圧縮機の作動弁の例示的な実施形態は、米国特許出願公開第2013/0160641号及び同第2007/0272890号に開示されている。作動弁は、例えば吸引弁として使用される。吸引弁のアクチュエータは、圧縮段階中に少なくとも瞬間的に弁が開放状態に維持されるように、吸引弁に作用することができる。この制御は、往復運動圧縮機の流量を調節するために使用される。ピストンの圧縮行程の一部分の間、吸引弁が開放位置に付勢され、それにより、圧縮チャンバ内に収集された流体の一部が、吸引ダクト又は吸引プリナムを通って逆に流れ、各圧縮サイクルにおいて圧縮されたガスの量が低減される。したがって、圧縮機の流量を調節することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の作動弁は、煩雑で、正しく動作しない傾向があり得る。
【0009】
したがって、弁の全体的な効率を向上させるための、又はより一般的には、従来技術の弁の欠点のうちの1つ以上を排除する、若しくは軽減するための、往復運動機械のための作動弁の改善が歓迎されるであろう。
【0010】
一態様によれば、本開示は、中に流れ開口を備えたシートを備える、往復運動機械のための弁に関する。弁は、当該開口を選択的に開閉するためにシートと協働するように適合された弁閉鎖部材を更に含む。ケージは、当該シートに一体的に結合される。いくつかの実施形態では、ケージ及びシートは、例えば付加製造によって、同一の製造工程で単一体としてモノリシックに形成される。他の実施形態では、ケージ及びシートは、別個に製造し、その後に互いに堅固に接続して、一体的な本体、すなわち剛性構成要素を形成することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、弁閉鎖部材は、ケージに一体的に接続されたガイド内に摺動的に配設された作動ステムを備える。ガイドは、管の形態とすることができ、すなわち管状ガイドとすることができる。
【0012】
特に有利な実施形態では、ガイド及びケージは、例えば付加製造による単一の製造工程で、単一のモノリシック体として製造することができる。あまり有利でない実施形態では、ガイド及びケージは、別個に製造して、その後に、単一の一体的な本体に結合することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、ガイド及びシートは、単一の製造工程で、例えば付加製造によって、一体的かつモノリシックに製造することができる。他の実施形態では、ガイド及びシートは、別個に製造し、次いで、後続の結合によって単一の一体部品にすることができる。
【0014】
弁は、ケージと結合されたカバーを更に備えることができる。弁閉鎖部材の作動ステムは、カバーを通って延在させることができ、それにより、ステムの遠位端、すなわちその閉鎖プレートの反対側の端部は、往復運動機械の外側及びカバーの外側に配設された弁アクチュエータに接続するようにアクセス可能である。
【0015】
特に有利な実施形態では、弁は、ガイド内に収容され、作動ステムと協働して、弁閉鎖部材の作動ステムに沿ったガス漏れを防止又は制限するための、封止装置を備えることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、特に弁が吸引弁である場合、作動ステムは、シートを通って延在している。
【0017】
弁が吸引弁として設計されている場合は、ガードを更に備え得る。次いで、弁閉鎖部材は、シートとガードとの間に配設して、弁閉鎖位置から弁開放位置へとそれらの間を移動するように適合させることができる。
【0018】
弁のシートは、例えば、金属で作製された、又はいくつかの特に有利な実施形態ではポリマー材料で作製された、交換可能なシートプレートを有することができる。交換可能なシートプレートは、弁閉鎖部材に面したシート側に位置し、それにより、この後者は、弁閉鎖部材が弁閉鎖位置にあるときに、交換可能なシートプレートに接触するように配設されている。
【0019】
別の態様によれば、本明細書では、シリンダと、シリンダ内に配設され、シリンダ内を往復移動するピストンと、を備える、往復運動機械、具体的には往復運動圧縮機が開示される。シリンダ及びピストンは、複動往復運動圧縮機の少なくとも1つの圧縮チャンバ、又は好ましくは2つの圧縮チャンバを形成する。往復運動機械は、少なくとも1つの吸引弁と、少なくとも1つの吐出弁と、を更に含み、どちらも圧縮チャンバに流体結合されている。当該弁のうちの少なくとも1つは、上で説明したように設計されている。
【0020】
本開示による弁及び往復運動機械の更なる特徴及び実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されており、添付図面を参照しながら、ここでより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の開示された実施形態、及びその付随する利点の多くのより完全な理解は、添付図面と関連して考慮されるときに、以下の詳細な説明を参照することによって、より良く理解されるように、容易に取得されるであろう。
図1図1は、本開示による、作動弁を含む例示的な複動往復運動圧縮機の断面図を示す。
図2図2は、開放吸引弁の側面図を示す。
図2A図2Aは、図2の線IIA-IIAによる、平面図である。
図3図3は、図2の線III-IIIによる、断面図を示す。
図4図4は、図1及び図2の弁の弁閉鎖部材を示す。
図5図5は、図2及び図3の吸引弁及び関連するアクチュエータが装着された圧縮機シリンダの詳細を示す。
図6図6は、本開示の更なる実施形態による吸引弁の断面図を示す。
図7図7は、本開示による放出弁の断面図を示す。
図8図8は、吸引弁の更なる実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
往復運動機械のための新規かつ有用な作動弁が開発されており、本明細書に開示される。新規な弁は、特に吸引弁として有用であり、かつ往復運動圧縮機の放出弁として有用であり得る。弁は、ケージと、弁閉鎖部材、すなわちシャッタと、を含む。弁閉鎖部材は、制御アクチュエータに駆動結合されるように適合されている。弁閉鎖部材は、弁のケージと一体的に形成されたガイド内を案内される作動ステムを有する。したがって、弁閉鎖部材の効率的な案内が得られる。以下、例示的な実施形態のいくつかの追加的な特徴、及びその関連する利点を、添付図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【0023】
以下の説明では、往復運動圧縮機弁の実施形態を説明する。しかしながら、当業者は、本明細書に開示される作動弁はまた、他の往復運動機械においても有利に使用することができることを理解するであろう。
【0024】
図1は、複動往復運動圧縮機1を概略的に示す。往復運動圧縮機1は、シリンダ3と、シリンダ3内に配設され、圧縮機の使用中にシリンダ内を往復移動するように適合されたピストン5と、を備える。ピストン5及びシリンダ3は、圧縮されるガス状流体が周期的に吸入及び圧縮される、2つの圧縮機チャンバ7A、7Bを形成する。ドライバ(図示せず)に駆動結合されたクランクシャフト9は、ピストン5に運動を伝達する。クランクシャフト9の回転運動は、接続ロッド11、及びピストンロッド15によってピストン5に接続されたクロスヘッド13によって、往復並進運動に変換される。
【0025】
各圧縮チャンバ7A、7Bには、それぞれ、少なくとも1つの吸引弁21と、1つの吐出弁又は放出弁23が提供されている。吸引弁21は、吸引プリナム25に流体結合することができ、当該吸引プリナムから、第1の圧縮チャンバ7A及び第2の圧縮チャンバ7B内に第1の低圧力P1のガス状流体が交互に吸入される。放出弁23は、放出プレナム27に流体結合することができ、第2の高圧力P2のガス状流体が当該放出プレナムの中へ放出される。それぞれのアクチュエータ、例えば電磁アクチュエータ29は、各吸引弁21を制御する。それぞれのアクチュエータ、例えば電磁アクチュエータ31は、各放出弁23を制御する。好適な電磁アクチュエータは、米国特許出願公開第2007/0272890号に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
動作中は、ピストン5がシリンダ3内部を両方向矢印f5に従って往復移動し、それにより、ガスが、吸引圧力P1で吸引弁21を通して吸引圧力P1で周期的に吸入され、放出圧力P2で放出弁23を通して放出される。吸引弁21及び放出弁23の開放及び閉鎖は、アクチュエータ29及び31によって制御される。圧縮サイクル及び圧縮機の流量のより正確な制御を達成することができる。
【0027】
図1では、吸引弁21及び放出弁23がどちらも、アクチュエータ29及び31によって完全に作動されるが、他の実施形態では、すべての吸引弁21のうちの1つ、いくつか、又は放出弁23の1つ、いくつか、若しくはすべてを自動弁とすることができる。例えば、吸引弁21は、完全作動弁とすることができ、一方で、放出弁23は、自動弁とすることができる。吸引弁21の1つ、いくつか、又はすべてのアクチュエータは、圧縮機流量をより良好に制御するために使用され得る。
【0028】
図1の参照を続けながら、図2図3図4、及び図5は、吸引弁21の例示的な実施形態、及びそれを圧縮機シリンダ3に装着することができる方法を示す。
【0029】
図2図3、及び図4の実施形態では、吸引弁21は、カバー37とシート39との間に延在している一組のポスト35を有するケーシング又はケージ33を含む。ポストは、流路を画定し、それにより、弁21が吸引ダクト又はプレナム25と流体連通して配設されたときに、ガスが弁に進入して、当該弁を通って流れることができる。シート39は、複数の吸引開口又はポート41を含むことができる。開口41は、弁軸A-Aと同軸の周方向同心円の線に従って配設された細長く湾曲したポートの形態とすることができる。シート39は、ポート又は開口46が提供されてポート41と同じ形状及び位置を有する、交換可能なシートプレート43を含むことができる。ピン44は、交換可能なシートプレート43を正しい角度位置に装着するために使用することができ、それにより、開口46及び41が相互に整列される。フェルール42は、交換可能なシートプレート43をシート39に装着するために提供することができる。
【0030】
カバー37には、弁21が装着されたときに吸引弁21と圧縮機シリンダ3との間にシールを提供するOリング又は任意の他のガスケット若しくはシール部材を受容するように適合された環状溝37Aを提供することができ、図5を参照されたい。
【0031】
吸引弁21は、シャッタとも称される弁閉鎖部材45を更に備える。吸引弁21から分離させた弁閉鎖部材45を図4に詳細に示す。弁閉鎖部材45は、プレート47と、ステム49と、を備える。プレート47は、吸引開口41に対してシフトされた複数の開口又はポート51を含み、それにより、弁閉鎖部材45が交換可能なシートプレート43と当接して閉位置にあるときに、プレート47の中実(非穿孔)部分が、吸引開口41を閉じる。弁閉鎖部材45をシート39に対して正しい角度位置に装着するために、横ピン53を、ステム49に沿って提供することができ、当該ピンは、シート49に機械加工されたスロット57に摺動的に係合する。
【0032】
弁閉鎖部材45は、例えば付加製造によって、単一の構成要素として製造することができる。これは、製造コストを低減させ得る。しかしながら、他の実施形態では、プレート47及びステム49は、別個に製造し、次いで、例えば溶接、接着、はんだ付けによって、あるいはねじ又はボルトによって、一緒に結合することができる。
【0033】
弁閉鎖部材45は、金属材料で製造することができる。他の実施形態では、ポリマー材料の使用が除外されない。
【0034】
ステム49は、質量、ひいてはその慣性を低減させるために、中空とすることができる(孔49Aを参照されたい)。軸方向孔49Aは、圧縮チャンバの内部に面した端部において閉じて、圧縮機の隙間容積を低減させることができる。いくつかの実施形態では、軸方向孔49Aの内部にハニカム又は他の補剛構造を提供することができる。そのような構造は、例えば付加製造によって容易に製造することができる。
【0035】
図3の実施形態では、プレート47は、凸状の下面を有する。これは、その厚みが外周から中央に向かって半径方向に移動しながら増加するので、プレート47を補剛するのに有用であり得る。しかしながら、他の実施形態が可能である。例えば、プレート47は、平坦であり得る(図4)。
【0036】
ステム49は、プレート47の反対側のステム49の端部49Bが、アクチュエータ29に結合するために吸引弁21の外側からアクセス可能であるように、カバー37を通って延在している。
【0037】
使用に際して、弁閉鎖部材45は、両方向矢印f45に従うアクチュエータ29による往復運動で制御される。
【0038】
動作中の弁閉鎖部材45のより良好な案内のために、ステム49は、ガイド59内を摺動的に移動可能であり得る。図3の実施形態では、ガイド59は、シート39からカバー37まで延在し得る管状ガイドの形態である。ステム49は、管状ガイド59の内面と摺動接触するそれぞれのスライド面を形成する、1つ以上の環状凸部49C、49Dを含み得る。好ましくは、環状凸部49C、49Dは、より良好な案内が達成されるように、ステム49の軸方向延長部に沿って互いに離れている。したがって、ステム49上の滑らかで効果的な案内アクションが得られ、移動中のステムの座屈が防止される。
【0039】
いくつかの実施形態では、管状ガイド49に沿って及び/又はカバー37内に、封止装置61が提供される。封止装置61は、ロックナット又は任意の他の好適なロック部材63によって、カバー37及び/又は管状ガイド59に形成された軸方向シートに装着することができる。ロック部材63は、軸方向孔を有し、そこを通ってステム49が延在しており、それにより、その遠位端49Bが、アクチュエータ29への接続のために、吸引弁21の外側に突出する(図5を参照されたい)。
【0040】
封止装置61を管状ガイド59及び/又はカバー37内に提供することによって、軸方向長さを低減させたコンパクトな弁が得られる。バルブ部材の軸方向延長部の低減はまた、弁の総重量及びその往復移動部分、すなわち弁閉鎖部材45の重量も低減させる。
【0041】
ガス回収ダクト65は、弁ケージ又はケーシングに一体化することができる。ガス回収ダクト65は、管状ガイド59に沿った任意のガス漏れを回収するように適合されている。ガス回収ダクト65を弁ケージの構造内部に配設することによって、コンパクトな構造が得られる。ガス回収ダクト65は、圧縮機シリンダの外側に配設された接続部65Aによって終端することができ、当該接続部は、ガス回収回路(図示せず)に流体結合することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、吸引弁21のケージ33及びカバー37は、単一のモノリシックブロックとして製造することができる。他の実施形態では、交換可能なシートプレート43を除いたケージ33及びシート39は、提供される場合には、単一のモノリシック体として製造することができる。更に他の実施形態では、ケージ33及び管状ガイド59は、単一のモノリシック体として製造することができる。本明細書で示される例示的な実施形態では、ポスト35、シート39、管状ガイド59、及びカバー37を含むケージ33は、好ましくは同一の材料、例えば金属で、単一のモノリシック体として形成される。
【0043】
交換可能なシートプレート43は、ポリマー材料又は金属材料で製造することができる。ポリマー材料は、より軟質であり、弁閉鎖部材45によって生成された衝撃力が吸収され、より高い信頼性が達成される。摩耗は、弁閉鎖部材45よりも安価である、交換可能なシートプレートに集中する。交換可能なシートプレート43を製造するために金属材料が使用される場合、弁閉鎖部材45は、有利には、衝撃吸収及び摩耗集中の目的で、ポリマー材料で作製することができる。弁閉鎖部材45を製造するための、金属材料ではなくポリマー材料もまた、そのような往復運動可能な部材の質量の低減に関して有益である。
【0044】
特に有利な実施形態では、上述した吸引弁21の構成要素は、付加製造によって製造することができる。この種類の構成要素に使用され、構成要素の所望の最終特性を達成するように適合された金属材料に対して好適な、任意の付加製造プロセスを使用することができる。いくつかの実施形態では、直接金属レーザ溶解(direct metal laser melting、DMLM)、電子ビーム溶解(electron beam melting、EBM)、直接金属レーザ焼結(directed metal laser sintering、DMLS)、選択的レーザ溶解(selective laser melting、SLM)、選択的レーザ焼結(selective laser sintering、SLS)、又は選択的加熱焼結(selective heat sintering、SHS)などの、付加層堆積又は粉末床融合(powder bed fusion、PBF)を使用することができる。他の付加製造プロセスは、除外されない。
【0045】
他の、現在あまり好適でない実施形態では、弁の固定構成要素の2つ以上のセクション又は部品は、別個に製造し、次いで、最終構成要素を得るために、例えばはんだ付け又は溶接によって、互いに組み立てることができる。
【0046】
吸引弁21のいくつかの構成要素を単一体に一体化することによって、圧縮機1における弁の取り扱い及びその組み立てがより単純にかつより早くなり、必要とする技術的専門知識を少なくなる。弁閉鎖部材45及び交換可能なシートプレートを含むバルブアセンブリ全体は、シリンダの外側で予め組み立てて、続いて装着し、そして、単にボルトをカバー37の孔37Aを通してねじ込むことによって圧縮機にシリンダに固定することができる(図5を参照されたい)。
【0047】
上で説明した例示的な吸引弁は、弁閉鎖部材45が圧縮チャンバの内部に直接面するので、「開放型」と称されることがある。他の実施形態では、吸引弁21は、いわゆる「閉鎖型」であり得る。閉鎖型の吸引弁には、シート39の反対側の弁閉鎖部材45の前に配設されたガードが提供される。したがって、弁閉鎖部材45のプレート47は、シートとガードとの間で往復運動可能である。
【0048】
図1図2図3図4、及び図5の参照を続けながら、閉鎖型の吸引弁を図6に示す。同じ参照番号は、既に図2図3図4、及び図5に関連して上で説明したものと同じ部品を示し、これらの部品は、再度説明しない。
【0049】
図1図2図3図4、及び図5に示される開放型弁と図6の閉鎖型弁との主な違いは、後者が、弁閉鎖部材45のプレート47のポート又は開口51と整列されたポート又は開口72が提供されたガード71を含むことである。弁閉鎖部材45のプレート47は、プレート47に面しているガード71の表面とシート39の交換可能なシートプレート43との間で、すなわち、開位置(プレート47がガード71上にある)と閉位置(プレート47が交換可能なシートプレート43上にある)との間で、軸方向に移動するように適合されている。ガード71は、交換可能なシートプレート43をバルブシート39上に保持するフェルール42と一体にすることができる。
【0050】
図1の参照を続けながら、放出弁23の例示的な実施形態を図7に示す。放出弁23は、カバー85とシート87との間に延在しているポスト83を有するケージ81を備える。シート87には、複数の放出開口又はポート89が提供される。ポスト83は、シート87に接続することができる。
【0051】
シート87のポート89は、シャッタとも称される弁閉鎖部材91によって選択的に開閉することができ、当該弁閉鎖部材は、両方向矢印f91に従って開位置と閉位置との間で往復移動するように適合されている。弁閉鎖部材91は、プレート93と、ステム95と、を備える。プレート93には、開口又はポート89に対してオフセットされたポート又は開口97が提供され、それにより、プレート93がシート87に対して付勢されると、プレート93によって開口89が閉じられ、プレート93がシートから離れると、シート87の圧縮ガスが、開口89及び97を通って、圧縮機1の放出プレナム27に向かって流れることができる。
【0052】
図2図3図4、及び図5に関連して説明されたものと同様に、放出弁23にピン(図示せず)を提供して、シート87及び弁閉鎖部材91を正しい相互角度位置に装着することができ、それにより、細長く湾曲した開口又はポート97及び89が正しい相互位置になる。
【0053】
ステム95は、管状ガイド99内に摺動的に収容され、カバー85を超えて突出することができ、それにより、ステム95の端部95Aは、アクチュエータ31に結合することができる(図1図7に示さず)。ステム49と同様に、ステム95にも、管状ガイド99の内面と摺動及び案内接触する表面を形成する、環状部分95Aが提供され得る。封止装置66と同様の封止装置100は、管状ガイド99内に配設することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ケージ21、管状ガイド99、及び場合によりカバー85は、例えば付加製造によって、あるいは別個の部品(カバー及びケージ)を一緒にはんだ付け又は溶接することによって、単一のモノリシック体として形成することができる。
【0055】
図1の参照を続けながら、吸引弁の更なる実施形態を図8に示す。図8の吸引弁は、ここでも全体として21の符号を付している。図8の実施形態でも、吸引弁21は、カバー137とシート139との間に延在している一組のポスト135を有するケーシング又はケージ133を含む。ポスト133は、シート139に対して垂直である部分と、傾斜してカバー137の近くで互いに向かって収束することができる。
【0056】
シート139は、複数の吸引開口又はポート141を含むことができる。開口141は、弁軸A-Aと同軸の周方向同心円の線に従って配設された細長い及び湾曲したポートの形態とすることができる。シート139は、ポート又は開口146が提供されてポート141と同じ形状及び位置を有する、交換可能なシートプレート143を含むことができる。フェルール142は、交換可能なシートプレート143をシート139に装着するために提供することができる。
【0057】
カバー137には、弁が装着されたときに吸引弁21と圧縮機シリンダ3との間にシールを提供する、Oリング又は任意の他のガスケット若しくはシール部材(図示せず)を受容するように適合された環状溝137Aを提供することができる。
【0058】
図8の吸引弁21は、弁閉鎖部材、すなわちシャッタ145を更に備える。弁閉鎖部材145は、プレート147と、ステム149と、を備える。プレート147は、吸引開口141に対してシフトされた複数の開口又はポート151を含み、それにより、弁閉鎖部材145が交換可能なシートプレート143と当接して閉位置にあるときに、プレート147の中実(非穿孔)部分が、吸引開口141を閉じる。
【0059】
弁閉鎖部材145は、例えば付加製造によって、単一の構成要素として製造することができる。これは、製造コストを低減させ得る。しかしながら、他の実施形態では、プレート147及びステム149は、別個に製造し、次いで、例えば溶接、接着、はんだ付けによって、あるいはねじ又はボルトによって、一緒に接着することができる。
【0060】
ステム149は、質量、ひいてはその慣性を低減させるために、中空とすることができる(孔149Aを参照されたい)。ステム49に関連して上で説明したように、ステム149もまた、軸方向孔149Aにハニカム構造又は他の補剛構造を含むことができる。そのような構造は、例えば付加製造によって、容易に製造することができる。
【0061】
ステム149は、プレート147の反対側のステム149の端部149Bが、アクチュエータ129に結合するために吸引弁21の外側からアクセス可能であるように、カバー137を通って延在している。
【0062】
ステム149は、シート139からカバー137まで延在し得る管状ガイド159内を摺動的に移動可能である。ステム149は、管状ガイド159の内面と摺動接触するそれぞれのスライド面を形成している、1つ以上の環状凸部を含むことができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、上で開示した他の実施形態と同様に、管状ガイド149に沿って及び/又はカバー137内に、封止装置161が提供される。
【0064】
本発明は、様々な特定の実施形態に関して説明されてきたが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲を逸脱することなく多くの修正、変更、及び省略が可能であることが、当業者には明らかであろう。加えて、本明細書で別段の指定がない限り、いずれのプロセス又は方法工程の順序又は配列も、代替的な実施形態に従って変更又は再配列され得る。

図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7
図8