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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】バンドクランプ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20230907BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20230907BHJP
   H01R 13/58 20060101ALI20230907BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H02G3/30
H01R4/62 Z
H01R13/58
C23C28/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021570256
(86)(22)【出願日】2020-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2020065103
(87)【国際公開番号】W WO2020240035
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/064194
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514052379
【氏名又は名称】オエティカ シュヴァイツ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】ハインツェ・フィリップ
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168831(WO,A1)
【文献】特開2007-009308(JP,A)
【文献】特開2017-071215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
H01R 4/62
H01R 13/58
C23C 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と前記導体周りの絶縁体とアウターシールドと有するケーブルのシールドをチューブに固定するためのバンドクランプであって、
前記バンドクランプは、鋼で形成され、その表面に、前記バンドクランプと前記チューブまたはシールドとの間の腐食を防止するコーティングが設けられ、
前記コーティングは、前記バンドクランプの表面に熱拡散により設けられた亜鉛層を有し、
前記亜鉛層は酸化亜鉛層により不動態化され、
前記コーティングは、前記亜鉛層上に適用されたトップコートを有し、
前記トップコートはポリマー層または合成樹脂層を有する、
ことを特徴とするバンドクランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のバンドクランプであって、
前記トップコートはアルミニウムを含む、
ことを特徴とするバンドクランプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバンドクランプであって、
前記トップコートはセラミックを含む、
ことを特徴とするバンドクランプ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバンドクランプであって、
前記トップコートはケイ酸塩を含む、
ことを特徴とするバンドクランプ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバンドクランプであって、
前記亜鉛層と前記トップコートとの間にケイ酸塩層を有する、
ことを特徴とするバンドクランプ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバンドクランプであって、
前記コーティングの最大厚さは20μmオーダーである、
ことを特徴とするバンドクランプ。
【請求項7】
ケーブルと、
前記ケーブルのシールドをチューブに固定するための、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のバンドクランプと、を備える
ことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムであって、
前記バンドクランプは、前記シールドと同じ材料と混ぜ合わされたトップコートを有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8記載のシステムであって、
前記トップコートにはアルミニウムが添加されており、前記シールドはアルミニウムで形成されている
ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の、コーティングされたバンドクランプの製造方法であって、
前記バンドクランプの前記コーティングは、まず熱拡散により亜鉛層を適用し、次に亜鉛酸化物層によって亜鉛層を不動態化し、その後、好ましくはアルミニウム粉末で安定化された前記トップコートを適用することにより形成される
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コネクタを用いて通電ケーブルまたはケーブルハーネスを、電気自動車などのバッテリ、モータ、発電機、ボディパーツに取り付ける場合に、ケーブルのシールドをチューブに固定するためのバンドクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、そのようなケーブルは、個別にまたは一緒にシールドされたいくつかのリードを有しており、ケーブルのシールドは、例えば、バンドクランプを用いて、コネクタのチューブ(スリーブ)に固定されている。
ケーブルは、多くの場合アルミニウム製の導体と絶縁体とを有するリードを有しており、絶縁体上には、同様にアルミニウムで作られた編組で形成されたシールドを有している。
【0003】
バンドクランプを用いてそのようなケーブルをプラグに取り付けることが国際公開2018/168831号公報に開示されている。プラグは、アルミニウム製のチューブ付きハウジングを有している。リードは、チューブを介してプラグハウジングに挿入され、シールドとして機能する編組はチューブ上に外挿される。バンドクランプは、シールドをリング状に囲み、それをチューブの外周面に押し当てる。
【0004】
CrNi鋼製の通常のバンドクランプがこの目的のために用いられると、クランプとアルミニウムシールド、場合によっては、アルミニウムのチューブまたはケーブル導体との間に接触腐食のリスクがある。接触腐食を回避するため、国際公開第2018/168831号公報に係るバンドクランプは絶縁体でコーティングされている。絶縁体に埋め込まれた亜鉛フレークが犠牲電極として機能するとも述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/168831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
国際公開第2018/168831号公報にも開示されているものなど、典型的なバンドクランプは、実質的なリング形状であり、テンションニングデバイスとして機能する、イヤーとしても知られるΩ形状の突起部を有している。クランプを、固定すべき材料(この場合、チューブ上のシールド)上で締め付けるために、イヤーの幅を工具で狭くして、これにより、クランプにより形成されたリングの径を減少させ、クランプをシールド上で締め付ける。このプロセスでは、クランプの塑性変形の度合いが非常に大きくなる。作動中の高温だけでなく、イヤーへの工具の適用、イヤーの変形、および固定すべき材料上でのクランプの摩擦は、国際公開第2018/168831号公報から知られるクランプのコーティングの、腐食防止効果が失われるようなダメージまたは剥離の原因となる可能性がある。
【0007】
したがって、本発明は、通電ケーブルのシールドとバンドクランプとの間における前述の腐食を抑制するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決は、特許請求の範囲に記載された本発明によって達成される。
【0009】
本発明は、上述のように構成されるバンドクランプに関するが、特に頑丈で耐久性を有し、組立て中および作動中であっても腐食防止効果を失わないバンドクランプのコーティングを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態のバンドクランプは、強度のため、以下に説明するようにコーティングされた、例えばCrNi鋼といった鋼のバンドから形成されている。使用時、スチールバンドは、リングを形成するように閉じられて、固定すべきアイテム、この場合にはチューブ上のシールドの周りを囲む。シールドは、銅、アルミニウムなどの、電気伝導性の良い材料で編組として作成されている。チューブは、コネクタまたはプラグのハウジングの一部であるスリーブ、またはシールドされたケーブルのリードが入る他のスリーブである。チューブの断面は楕円でもよいしまたは環状に丸くてもよい。バンドクランプは、上述したイヤー等のテンショニングデバイスを有している。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、バンドクランプにはポリマーの絶縁コーティングが設けられている。パリレン、特にパリレンHTは、ポリマー材料として特に適切であることが証明されており、真空チャンバ内の気相から、脱脂されたバンドクランプ上に蒸着されることが好ましい。
【0012】
ポリマーコーティングは、高い作動温度に耐え、バンドクランプから剥がれずに、イヤー形状のテンショニングデバイス上でも激しい塑性変形を可能にする。
【0013】
クランプのCrNi鋼の接触を防止するため、バンドクランプの内側の面だけでなく、側縁、好ましくは表面全体をコーティングすることが望ましい。
【0014】
ポリマーコーティングは、クランプ製造工程の最終ステップにおいて、仕上げられたバンドクランプに適用される。その厚さは、20μm以下のオーダー、例えば約10μmである。この厚さであれば、クランプ機能、特にその弾力性を損なうリスクは低い。ポリマーコーティングは、クランプの変形にも、崩れることなく追従する。
【0015】
本発明の他の実施形態によれば、バンドクランプとケーブルシールドとの間の腐食を防止するため、バンドクランプの表面に、亜鉛層(好ましくは、不動態化された酸化亜鉛層をその表面上に有する)が適用され、その上にポリマー層のトップコート、特に合成樹脂層が適用される。同様にその厚さは約5~20μmのオーダー、例えば約10μmである。 ここでも、バンドクランプの表面全体がこのようにコーティングされることが好ましい。
【0016】
不動態化された亜鉛層は腐食防止に寄与し、その表面に、トップコートが特によく接合する一定の粗さを有している。
【0017】
合成樹脂層は、アルミニウム粉末で安定化されたTD Excel 300からなることが好ましい。
【0018】
トップコート内のアルミニウム粉末は、同様にアルミニウムで形成されたシールドに対する接触腐食を防止するのに有利な効果を有する。また、バンドクランプにテンションをかけるときにコーティングがダメージを受けにくくなる。
【0019】
詳細には、バンドクランプは、コーティングを適用するためにまず脱脂されてその表面全体に亜鉛層が熱拡散(亜鉛熱拡散または拡散浸透)により設けられ、その後、洗浄されてから、酸化亜鉛層により不動態化され、最終的にポリマーまたは合成樹脂の仕上げ層でシールされる。
【0020】
あるいは、亜鉛層は、熱拡散の代わりに亜鉛フレークコーティングにより適用されてもよく、その後、亜鉛フレークコーティングを形成する。亜鉛層は、閉じた層として、バンドクランプの表面全体上に適用される。
【0021】
トップコートとして上述のポリマーまたは合成樹脂層は好適であるが、無機系も好適である。また、使用されたポリマーは前述のパリレンであってもよい。トップコート上に追加層を設けて、例えば、コーティングに所望の外観を与えてもよい。
【0022】
粉末はトップコートに混合されていてもよい。また、粉末の粒子はフレークの形態にすることもできる。
【0023】
有利には、トップコート内の粉末は、その主成分(ポリマーまたは合成樹脂)よりも高硬度を有している。したがって、トップコートに、必要に応じて、言及された他の粉末に加えて、セラミック粉末またはフレークを混合することもできる。これにより、その耐摩耗性が向上して、締め付け工具に対するコーティングの耐性、および、クランプ中および振動および温度変化を伴う作動中に生じる可能性があるシールド上の変位が生じた場合の摩擦に対するコーティングの耐性が向上する。
【0024】
ケイ酸塩を使用することは特に有利である。また、例えば最大3μmのケイ酸塩の薄層を、亜鉛層とトップコート(粉末、特にアルミニウム粉末と任意に混合)との間に適用することができる。
【0025】
一般に、シールドと実質的に同材料の粉末またはフレークをトップコート内に用いることができ、例えばアルミニウムシールドの場合はアルミニウム粉末、または銅シールドの場合は銅粉末を用いることができる。その結果、トップコートとシールドとの間には接触腐食が生じず、表面は、腐食せず、高い光学的品質を維持する。他の要素間の接触腐食はトップコート下の亜鉛層により抑制される。
【0026】
説明したすべてのコーティングは、高温に耐え、バンドクランプとともに変形可能であるとともにバンドクランプにしっかり接合するので、それらは、組立て中、クランプのテンショニング中、および作動中に影響を受けない。
【0027】
有利には、実施形態の特徴はまた互いに組み合わされてもよい。