IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-粒子状組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】粒子状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/381 20060101AFI20230907BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230907BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61K31/381
A61K9/14
A61K47/38
A61K47/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022077282
(22)【出願日】2022-05-10
(62)【分割の表示】P 2018075158の分割
【原出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2022093754
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2017080204
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011877
【氏名又は名称】富士化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】小山 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】大貫 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上野 樹
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 陽
(72)【発明者】
【氏名】吉海 直志
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸和
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-081814(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101055(US,A1)
【文献】特表2009-538315(JP,A)
【文献】特開平08-040895(JP,A)
【文献】特開2017-214341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/381
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分であるデュロキセチンを含む薬物含有層に、分離層として少なくとも結合剤を含む中間層及び着色剤を含む遮光層を被覆し、更に腸溶性高分子を含む腸溶層を積層してなり、
前記遮光層における着色剤が、酸化チタンであり、
前記腸溶層における腸溶性高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸エステルコハク酸エステルであることを特徴とする粒子状組成物。
【請求項2】
前記中間層における結合剤が、ヒプロメロースである請求項1に記載の粒子状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてデュロキセチンを含む錠剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デュロキセチンは、セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害剤(SNRI)作用を有し、うつ病の治療剤として、販売されている(例えば、特許文献1参照)。
デュロキセチンは、胃酸などの強酸性下で不安定であることから、カプセル剤などの腸溶製剤の形態で市販されている。また、デュロキセチンは、酸性物質の存在下で、分解物質を生じるため、使用できる医薬添加物も限られている。
【0003】
上記したように、デュロキセチンのカプセル剤は市販されているものの、飲みやすさなどの観点から、錠剤の形態の製剤が求められている。
デュロキセチンを含有する錠剤とする場合、上記デュロキセチンの性質から、腸放出性の錠剤とする必要がある。腸放出性の錠剤とするには、一般的に、薬物を含む薬物核の表面を、腸溶性高分子を含む腸溶層で被覆することが考えられる。
【0004】
そのため、従来の製造方法を用いることで、胃酸などに耐酸性を有する腸放出性の錠剤を製造することができるとも考えられる。
【0005】
しかしながら、直径2mmよりも大きな通常の錠剤の場合、服用後、胃から排出される時間が大きくばらつくことが知られており、その結果、薬効にばらつきが生じることが一般的である。
腸放出性の錠剤の耐酸性は、一般的に、日本薬局方の溶出試験法で1液を用い、2時間で溶出率を10%以下にする必要がある。
【0006】
そのため、錠剤の量産時においても、得られる錠剤の耐酸性を最大10%程度に抑えることができる、耐酸性に優れた錠剤を製造することができる錠剤及びその錠剤の製造方法の速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-185946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、必要とされる耐酸性を有する錠剤及びその錠剤を量産することができる錠剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、有効成分であるデュロキセチンを含む薬物核を被覆する外層中に少なくとも腸溶性高分子を含む腸溶層を有する粒子状組成物を含む混合物を打錠する打錠工程において、打錠機の温度を25℃以上にする温度制御処理、及び前記粒子状組成物を含む混合物の温度を25℃以上にする温度制御処理の少なくともいずれかの温度制御処理を行うことで、耐酸性に優れる錠剤を量産することができることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 粒子状組成物を含む混合物を打錠する打錠工程を含む錠剤の製造方法であって、
前記粒子状組成物が、有効成分であるデュロキセチンを含む薬物核を被覆する外層中に少なくとも腸溶性高分子を含む腸溶層を有するものであり、
前記打錠工程において、打錠機の温度を25℃以上にする温度制御処理、及び前記粒子状組成物を含む混合物の温度を25℃以上にする温度制御処理の少なくともいずれかの温度制御処理を行うことを特徴とする錠剤の製造方法である。
「薬物核を被覆する外層中に腸溶層を有する」とは、(i)薬物核の表面に直接的に腸溶層が形成される場合、(ii)薬物核の表面に直接的に腸溶層が形成される場合であって、さらに腸溶層の表面にその他の層が形成される場合、(iii)薬物核の表面に間接的に腸溶層が形成される場合であって、薬物核の表面と腸溶層との間にその他の層が介在する場合、のいずれの態様をも含む意味であり、(ii)および(iii)の「その他の層」は単層でもよいし複数層でもよい。
<2> 打錠圧が、5kN/杵~18kN/杵である前記<1>に記載の錠剤の製造方法である。
<3> 前記粒子状組成物が、核粒子の外層中に、有効成分であるデュロキセチンを含む薬物含有層と、腸溶性高分子を含む腸溶層と、前記薬物含有層と前記腸溶層とを分離する分離層と、を有するものであり、前記薬物含有層と前記分離層と前記腸溶層とをこの順に積層してなる前記<1>から<2>のいずれかに記載の錠剤の製造方法である。
<4> 前記分離層が、結合剤を含む中間層と着色剤を含む遮光層とのうち、少なくとも一方の層を有するものである前記<3>に記載の錠剤の製造方法である。
<5> 前記腸溶層における腸溶性高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸エステルコハク酸エステルである前記<1>から<4>のいずれかに記載の錠剤の製造方法である。
<6> 有効成分であるデュロキセチンを含む薬物含有層に、少なくとも分離層及び腸溶性高分子を含む腸溶層の順に積層してなる粒子状組成物を含有することを特徴とするデュロキセチン含有錠剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、必要とされる耐酸性を有する錠剤及びその錠剤を量産することができる錠剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ロータリー式打錠機の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(錠剤の製造方法)
本発明の錠剤の製造方法は、打錠工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0014】
<打錠工程>
前記打錠工程は、粒子状組成物を含む混合物を打錠する工程である。
【0015】
<<粒子状組成物を含む混合物>>
前記粒子状組成物を含む混合物(以下、「打錠用粉末」、「混合末」と称することがある)は、粒子状組成物を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0016】
-粒子状組成物-
前記粒子状組成物は、薬物核を被覆する外層中に少なくとも腸溶層を有し、必要に応じて、更に分離層(中間層、遮光層)などのその他の層を有する。
前記粒子状組成物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0017】
--薬物核--
前記薬物核は、有効成分であるデュロキセチンを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0018】
前記薬物核の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、核粒子の外層中に有効成分であるデュロキセチンを含む薬物含有層を有する造粒物、デュロキセチンと使用可能な医薬添加剤とから形成された造粒物が挙げられる。これらの中でも、核粒子の外層中に有効成分であるデュロキセチンを含む薬物含有層を有する造粒物が好ましい。
【0019】
前記デュロキセチンは、塩の態様であってもよい。
前記塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩酸塩などが挙げられる。
前記デュロキセチンの錠剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
前記核粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ノンパレル(フロイント産業社製)、セルフィア(旭化成製)などの不活性担体が挙げられる。
前記核粒子の錠剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
前記核粒子の外層中に有効成分であるデュロキセチンを含む薬物含有層を有する造粒物を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記核粒子の表面に、デュロキセチン、通常製剤化に用いられる賦形剤を適宜配合してコーティングする方法などが挙げられる。
前記コーティングの方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、遠心転動造粒機や転動造粒装置などにより湿式造粒する方法、デュロキセチンと結合剤などを含む溶液を前記核粒子の表面に噴霧する方法などが挙げられる。
前記噴霧によりコーティングする方法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動層造粒機、遠心転動造粒機、転動造粒機などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記コーティングは、1段階で実施してもよいし、2段階以上で実施してもよい。
【0022】
前記デュロキセチンと、使用可能な医薬添加剤とから形成された造粒物を製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤と、デュロキセチンとを、結合剤を加えて造粒する方法などが挙げられる。
前記賦形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、コーンスターチ、結晶セルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、マクロゴール、プルロニックF68、アラビアゴム、ゼラチン、澱粉などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記造粒に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撹拌造粒機、湿式押し出し造粒機、流動層造粒機、遠心転動造粒機、転動造粒機、噴霧乾燥機などが挙げられる。
前記造粒物は、篩い分け操作により所望の大きさの粒子を得ることができる。また、ローラーコンパクターなどによる乾式造粒により造粒物を調製してもよい。
【0023】
前記薬物核の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100μm~1,000μmなどが挙げられる。
なお、本発明において、平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製LA-920)を用いて測定される値である。
【0024】
--分離層(中間層)--
前記薬物核の態様が、核粒子の外層中に有効成分であるデュロキセチンを含む薬物含有層を有する造粒物である場合、前記分離層は、前記薬物含有層と前記腸溶層とを分離するための層として形成される。
前記分離層は、結合剤を含む中間層と着色剤を含む遮光層とのうち、少なくとも一方の層を有する層であり、少なくとも中間層を有するのが好ましく、中間層と遮光層との両方の層を有するのが好ましい。
前記中間層は、結合剤、可塑剤、滑沢剤、流動化剤、着色剤、使用可能な医薬添加物などのその他の成分を含む層である。
一般に、中間層の機能は、デュロキセチンの酸性条件に対する抵抗力を長引かせ、デュロキセチンと腸溶層の腸溶性ポリマーとの間の相互作用を妨げることによってデュロキセチンの安定性を改善することであり、また、腸溶層の塗布のために滑らかなベースを与えること、デュロキセチンを光にさらされることから保護することによって安定性を改善することである。
【0025】
前記中間層で用いる結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、アルファー化デンプン、アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、デキストリン、ポビドンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドンが好ましく、ヒプロメロースがより好ましい。
【0026】
前記中間層を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、通常製剤工程で行われる水系のコーティング方法などが挙げられる。具体的には、前記中間層の成分などを含む溶液を、前記薬物核上に噴霧などによりコーティングすることにより、中間層を形成することができる。
前記形成に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動層造粒機、転動流動層造粒機、遠心転動流動層機などが挙げられる。
【0027】
--分離層(遮光層)--
前記遮光層は、少なくとも着色剤を含み、必要に応じて、結合剤、使用可能な医薬添加物などのその他の成分を含む層である。
前記遮光層を設けることにより、光に対して不安定な薬物の安定性を向上することができる。
【0028】
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酸化チタンが好ましい。
【0029】
前記着色剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記粒子状組成物の全量に対して、0.1質量%~10質量%などが挙げられる。
【0030】
前記遮光層で用いる結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した中間層で用いる結合剤と同様のものなどが挙げられる。
【0031】
前記遮光層を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、上記した中間層を形成する方法と同様の方法などが挙げられる。
【0032】
--腸溶層--
前記腸溶層は、少なくとも腸溶性高分子を含み、必要に応じて、可塑剤、滑沢剤、流動化剤、着色剤、使用可能な医薬添加物などのその他の成分を含む層である。
前記腸溶層により、薬物が変化することなく個体の胃を通過し、胃を過ぎて小腸に入ったときに薬物を速やかに、溶解及び放出させることができる。
【0033】
前記腸溶性高分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒を用いずに層形成が可能なものが好ましく、酸性が高い腸溶性高分子がより好ましい。
前記有機溶媒を用いずに層形成が可能な腸溶性高分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸エステルコハク酸エステル(「ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート」と称することもある)、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーSなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、メタクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートがより好ましい。
なお、前記腸溶層で使用される腸溶性高分子と、前記中間層で使用される水難溶性高分子とは、同時に同じものが使用されることはない。
【0034】
前記腸溶性高分子の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記薬物核100質量部に対して、5質量部~100質量部などが挙げられる。
【0035】
前記腸溶層を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、上記した中間層を形成する方法と同様の方法などが挙げられる。
【0036】
--その他の層--
前記その他の層としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィニッシング層などが挙げられる。
前記フィニシング層としては、本質的には医薬品において腸溶性製剤を滑らかにし、密封及び着色することができ、通常製剤で使用されているフィニシング層と同じ成分を使用でき、通常の方法で塗布し、製剤化することができる。
【0037】
上記した各層において、必要に応じて配合することができる滑沢剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タルク、モノステアリン酸グリセリン、マクロゴールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、タルク、モノステアリン酸グリセリンが好ましく、タルクがより好ましい。
前記各層における滑沢剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
上記した薬物核や各層には、水になじみにくい医薬添加物のために界面活性剤を配合してもよい。
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記薬物核や各層における界面活性剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
前記粒子状組成物の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100μm~2,000μmなどが挙げられる。
【0040】
-その他の成分-
前記粒子状組成物を含む混合物におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般の医薬品添加物などが挙げられる。
前記医薬品添加物の具体例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、酸味料、甘味料、矯味剤、香料、着色剤、安定化剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の前記粒子状組成物を含む混合物における配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記混合物全体に対して、0.01質量%~80質量%などが挙げられる。
【0041】
前記賦形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白糖、乳糖、ブドウ糖等の糖類;マンニトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール;結晶セルロース;無水リン酸水素カルシウム;メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン;部分アルファー化デンプン;カルボキシメチルスターチナトリウム;カルメロース;カルメロースカルシウム;クロスカルメロースナトリウム;クロスポビドン;低置換度ヒドロキシプロピロピルセルロース;結晶セルロース;ヒドロキシプロピルスターチなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記滑沢剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記粒子状組成物を含む混合物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記粒子状組成物からなる態様、前記粒子状組成物と、前記その他の成分の中から選択された成分とからなる造粒物の態様、前記粒子状組成物及び前記その他の成分の中から選択された成分からなる造粒物と、前記滑沢剤との混合物の態様などが挙げられる。
【0046】
前記粒子状組成物を含む混合物を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を適宜選択することができ、例えば、混合、練合、造粒等の一般に用いられる混合方法などが挙げられる。
前記混合の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速撹拌混合機、万能練合機、流動層造粒機、V型混合機、タンブラー混合機、二重円錐混合機、リボン型混合機、旋回スクリュー型混合機、袋で手動混合などが挙げられる。
【0047】
<<打錠>>
前記打錠工程に用いる装置としては、特に制限はなく、医薬品の製造で通常用いられる装置を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロータリー式打錠機などが挙げられる。
【0048】
図1に、前記打錠機の一例であるロータリー式打錠機の一例の模式図を示す。
前記ロータリー式打錠機は、モーター(不図示)に駆動連結された垂直回転軸1が配置されている。垂直回転軸1は、円盤状のターンテーブル2を支持しており、モーターの駆動に基づいて垂直回転軸1とターンテーブル2とが一定速度で所定の方向に回転する。
ターンテーブル2には、垂直回転軸1を中心とする所定半径の円周上に一定の間隔を空けて、ターンテーブル2を貫通し且つ垂直回転軸1と平行に伸びる複数の打錠セル(臼)3が形成されている。
各打錠セル3の下方には、前記打錠セル3の内径とほぼ同一の外径の上端部分を有する下部打錠ロッド(杵)4が配置されている。各下部打錠ロッド(杵)4は、垂直回転軸1の回転と共に回転し、下部プレッシャーローラー5に沿って上方に移動する。
各打錠セル3の上方には、前記打錠セル3の内径とほぼ同一の外径の下端部分を有する上部打錠ロッド(杵)6が配置されている。各上部打錠ロッド(杵)6は、垂直回転軸1の回転と共に回転し、上部プレッシャーローラー7に沿って下方に移動する。
これにより、前記打錠セル3の中で、下部打錠ロッド(杵)4の上端部分と、上部打錠ロッド(杵)6の下端部分とが協働して粒子状組成物を含む混合物(以下、「打錠用粉末」、「混合末」と称することがある)を上下から加圧して錠剤を成形することができる。
【0049】
前記ロータリー式打錠機は、各打錠セル3に打錠用粉末を供給し充填するために、粉末供給装置を備えている。この粉末供給装置は、例えば、ターンテーブル2上に打錠用粉末を落下供給するホッパー8と、このホッパー8からターンテーブル2に供給された打錠用粉末9を各打錠セル3に案内するフィーダー(不図示)とを備えている。
【0050】
以上の構成を備えたロータリー式打錠機によれば、打錠用粉末は、ホッパー8からターンテーブル2上に落下供給される。ターンテーブル2上の打錠用粉末は、このターンテーブル2の回転に基づき、フィーダ(不図示)によって各打錠セル3に導かれる。打錠セル3に打錠用粉末が充填される間、各打錠ロッドは打錠セルから離れた位置にあり、これにより、所定量の打錠用粉末が各打錠セル3に充填される。次に、所定量の打錠用粉末が充填された打錠セル3に対し、各プレッシャーローラー5、7に沿って、上下の打錠ロッド4、6が互いに接近し、その結果、打錠セル3内の打錠用粉末は、上下の打錠ロッド4、6の間で圧縮されて錠剤に成形される。
【0051】
-温度制御処理-
前記打錠工程では、打錠機の温度を25℃以上にする温度制御処理、及び前記粒子状組成物を含む混合物の温度を25℃以上にする温度制御処理の少なくともいずれかの温度制御処理を行う。これらの温度制御処理は、いずれか一方を行ってもよいし、両者を行ってもよいが、より優れた耐酸性を有する錠剤を製造することができる点で、両者を行うことが好ましい。
【0052】
--打錠機の温度制御処理--
前記打錠機の温度制御処理における打錠機の温度とは、前記打錠機における、前記粒子状組成物を含む混合物と接する位置の温度をいい、詳しくは前記粒子状組成物を含む混合物と接する位置に設置された温度検出器で測定される温度をいう。
前記温度制御処理における打錠機の温度としては、25℃以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃~45℃が好ましく、35℃~45℃がより好ましい。
【0053】
--粒子状組成物を含む混合物の温度制御処理--
前記温度制御処理における粒子状組成物を含む混合物の温度としては、室温を超える温度、すなわち25℃以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃~50℃が好ましく、40℃~50℃がより好ましい。前記室温とは、通常の打錠工程において打錠を行う室内の温度を意味し、通常は20℃~24℃を意味する。
【0054】
--時期--
前記温度制御処理を行う時期としては、本発明の効果が得られる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粒子状組成物を含む混合物を打錠機へ供給するとき、粒子状組成物を含む混合物の打錠機への供給時から打錠されるまでの間、粒子状組成物を含む混合物の打錠機への供給後であって、ターンテーブル上に供給される前から打錠されるまでの間、粒子状組成物を含む混合物が打錠機のターンテーブル上に供給された後から打錠されるまでの間などが挙げられる。
【0055】
--加温手段--
前記温度制御処理における加温手段としては、特に制限はなく、公知の加温手段を目的に応じて適宜選択することができ、赤外線ヒーター、温風加熱器、放射加熱器等の非接触式の加温手段、抵抗ヒーター、放射加熱器等の接触式の加温手段などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、打錠機を空運転したり、連続運転したりすることにより、打錠機の温度が上がる場合には、それらによって、加温してもよい。
【0056】
--加温場所--
前記温度制御処理における加温場所としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、打錠機全体、前記粒子状組成物を含む混合物が接触する打錠機の部分(例えば、ターンテーブル、打錠用臼杵)、前記ターンテーブル上に前記粒子状組成物を含む混合物を供給する部分(例えば、ホッパー)、前記粒子状組成物を含む混合物を打錠セルに導くフィーダー部分や、打錠機を設置する空間自体などが挙げられる。また、粒子状組成物を含む混合物自体を加温してもよい。
前記打錠機における前記粒子状組成物を含む混合物が直接接触する部分の加温は、非接触式であってもよいし、接触式であってもよいが、非接触式で加温する方法が好ましい。
前記打錠機における前記粒子状組成物を含む混合物が直接接触しない部分の加温は、非接触式であってもよいし、接触式であってもよい。前記直接接触しない部分とは、ターンテーブルの裏面、上杵ホルダー、下杵ホルダーなどが挙げられる。
【0057】
前記加温手段を設置する場所としては、特に制限はなく、上記した加温場所に応じて適宜選択することができる。
【0058】
--制御--
前記加温手段による加温を制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記打錠機に温度検出器を配置し、検出された温度に基づいて、加温手段による加温の実行の要否を判断し、目的とする温度とする方法などが挙げられる。
前記温度検出器を配置する場所としては、特に制限はなく、加温場所や加温手段を設置する場所などに応じて適宜選択することができる。
前記温度検出器により温度を検出する時期としては、特に制限はなく、温度制御処理を行う時期に応じて適宜選択することができる。
【0059】
-成型-
前記打錠においては、前記粒子状組成物を含む混合物を、前記粒子状組成物及び前記その他の成分の中から選択された成分からなる造粒物と、前記滑沢剤との混合物の態様とした後に圧縮成型してもよいし、滑沢剤を他の成分と混合することなく、圧縮成型機の杵の表面及び臼の壁面にあらかじめ塗布し、前記粒子状組成物を含む混合物を圧縮成型(外部滑沢法)してもよい。
前記外部滑沢法によれば、所望の硬度や崩壊性を付与することができる。前記滑沢剤を杵臼に塗布する方法としては、特に制限はなく、従来の公知の方法や機械を適宜選択して行うことができる。
【0060】
前記打錠における打錠圧は、前記粒子状組成物を構成する化合物の種類によって下限値が変動しうるが、当該打錠圧としては、少なくとも3kN/杵は必要であり、好ましくは5kN/杵は必要であり、より好ましくは5kN/杵~18kN/杵である。
【0061】
得られる錠剤の硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20N~200Nが好ましく、30N~140Nがより好ましい。
錠剤の大きさによって打錠圧は変わるが、例えば、直径10mmの杵を用い、450mgの錠剤を打錠するとき、打錠圧が3kN/杵~19kN/杵のときに20N~150Nの硬度を有し、打錠圧が5kN/杵~17kN/杵のときに30N~100Nの硬度を有することが好ましい。
【0062】
前記錠剤の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0063】
前記錠剤の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通錠、口腔内速崩壊錠、チュアブル錠などが挙げられる。
前記口腔内速崩壊錠は、口腔内で迅速に崩壊し得る錠剤である。前記口腔内における崩壊時間としては、錠剤の大きさや形状によって異なるが、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、60秒間以内が好ましく、45秒間以内がより好ましく、30秒間以内が特に好ましい。
【0064】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した粒子状組成物を調製する粒子状組成物調製工程、前記粒子状組成物と、必要に応じてその他の成分とを混合し、打錠用粉末を調製する打錠用粉末調製工程などが挙げられる。
【0065】
本発明の錠剤の製造方法によれば、必要とされる耐酸性を有する錠剤を量産することができる。
前記耐酸性は、日本薬局方の溶出試験の方法に従って、1液でデュロキセチンの溶出試験を行うことにより、求めることができる。
前記耐酸性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、9%未満が好ましく、6%以下がより好ましく、5%以下が特に好ましい。
【0066】
前記錠剤の好ましい態様としては、例えば、有効成分であるデュロキセチンを含む前記薬物含有層に、少なくとも前記分離層及び前記腸溶性高分子を含む腸溶層の順に積層してなる粒子状組成物を含有する錠剤が挙げられる。
【実施例
【0067】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0068】
(試験例1)
<粒子状組成物の調製>
-薬物核の形成-
ノンパレル101(フロイント産業社製、白糖・デンプン球状顆粒、粒子径355~500μm)の500gを転動流動型コーティング機(パウレック社製 MP-01型)に入れ、定常状態の排気温度が約45℃になるように送風温度をコントロールした。精製水3400gにヒプロメロース(信越化学社製、置換度タイプ2910、表示粘度 3mPa・s)200gを溶解させた溶液にデュロキセチン塩酸塩400gを分散させた。得られた分散液を液速6g/分となるように噴霧して核粒子に対し薬物含有層を形成し、薬物核を得た。
【0069】
-分離層(中間層)の形成-
得られた薬物核に対して、ヒプロメロース148gを精製水2812gに溶解させた溶液を、薬物含有層を形成したときと同様の条件で噴霧し、中間層を形成した。
【0070】
-分離層(遮光層)の形成-
得られた中間層形成後の顆粒に対して、精製水1818gにヒプロメロース101gを溶解させた溶液に酸化チタン(フロイント産業社製 酸化チタンA-HR)101gを分散させた溶液を、薬物含有層を形成したときと同様の条件で噴霧し、遮光層を形成した。
【0071】
-腸溶層の形成-
オイドラギットL30D55(エボニック社製、メタクリル酸コポリマーLD)990gにクエン酸トリエチル(森村商事社製)59gを加えた後、精製水1336gにタルク(日本タルク社製)148gおよびポリソルベート80(日光ケミカルズ社製)の2.4gを分散機を用いて分散させ、この分散液をオイドラギットL30D55液に撹拌しながら加えて腸溶性コーティング液を調製した。
遮光層形成後の粒子を転動流動型コーティング機(パウレック社製 MP-01型)に入れ、定常状態の排気温度が約30℃になるように送風温度をコントロールした。調製済みの腸溶性コーティング液を液速5g/分となるように噴霧し、腸溶層を形成した。
【0072】
<粒子状組成物を含む混合物の調製>
-造粒物の調製-
乳糖水和物(DMV社製 Pharmatose 200M)321.0g、トウモロコシデンプン(日本食品化工社製、日食局方 コーンスターチ)164.0g、および結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製 セオラスPH-101)60.0gを流動層コーティング機(パウレック社製 MP-01型)に入れ、定常状態の排気温度が約40℃になるように送風温度をコントロールした。精製水311.6gにヒプロメロース(日本曹達社製、NISSO HPC-L)16.4gを溶解させた。得られた溶解液を液速10g/分となるように噴霧し、噴霧終了後に排気温度が48℃になるまで乾燥を行った。この操作を計4回行い、造粒物(造粒末)を得た。
【0073】
-打錠用粉末の調製-
腸溶層形成後の顆粒1318.4gと造粒物2245.6gをV型混合機(徳寿工作所社製 V-10型)に入れ、回転数36rpmで5分間混合し、ステアリン酸マグネシウム(日油社製 ステアリン酸マグネシウムS)36gを加え、さらに回転数36rpmで1分間混合し、打錠用粉末(混合末)を得た。
【0074】
<打錠工程>
前記粒子状組成物を含む混合物(前記打錠用粉末であって、以下「混合末」と称することがある)3600gを、ロータリー式打錠機(菊水製作所製、Correct 19K型)を用い、以下のいずれかの温度制御処理を行い、回転数を10rpmとし、錠剤径10mm・平スミ角(平面隅角)の杵で打錠圧が15.0kN/杵になるように打錠し、1錠450mgの錠剤を得た。なお、1錠あたりの処方を表1-1に示す。
【0075】
-温度制御処理-
[試験例1-1]
ロータリー式打錠機 ・・・ 温度制御処理なし(室温(24℃程度))
混合末 ・・・ 温度制御処理なし(室温(24℃程度))
[試験例1-2]
ロータリー式打錠機 ・・・ 温度制御処理あり(38℃~40℃)
混合末 ・・・ 温度制御処理なし(室温(24℃程度))
[試験例1-3]
ロータリー式打錠機 ・・・ 温度制御処理あり(35℃~37℃)
混合末 ・・・ 温度制御処理あり(45℃~46℃)
[試験例1-4]
ロータリー式打錠機 ・・・ 温度制御処理なし(室温(24℃程度))
混合末 ・・・ 温度制御処理あり(40℃~43℃)
【0076】
図1に、本試験例で用いたロータリー式打錠機の模式図を示す。
前記ロータリー式打錠機の温度制御処理は、打錠前にターンテーブル2を温風で加温することにより行った。上記温度制御処理の項目におけるカッコ内の温度は、打錠開始時におけるターンテーブル2の温度を示す。
前記混合末の温度制御処理は、ホッパー8に投入する前の混合末を恒温機で加温することにより行った。上記温度制御処理の項目におけるカッコ内の温度は、ホッパー8に投入するときの混合末の温度を示す。
【0077】
【表1-1】
【0078】
<評価>
-耐酸性-
各試験例で得られた錠剤について、日本薬局方の溶出試験の方法に従って、1液でデュロキセチンの溶出試験を行った。溶出試験における溶出時間は2時間とした。デュロキセチンの溶出率(耐酸性)は、分光光度計(島津製作所製、UV-2600)を用い波長289nmで測定したデュロキセチンの濃度から算出した。結果を表1-2に示す。
【0079】
-硬度-
ロードセル式錠剤硬度計(岡田精工社製ポータブルチェッカー PC-30)を用いて測定した。試験は10回行いその値を算出した。結果を表1-2に示す。
【0080】
【表1-2】
【0081】
表1-2の結果から、打錠機及び混合末の少なくともいずれかを加温した試験例1-2~1-4では、試験例1-1と比べて、非常に耐酸性能が向上していた。したがって、本発明の製造方法によれば、医薬品の目安となる耐酸性が10%以下の錠剤を効率良く製造(量産)することができることが確認された。
また、打錠機と、混合末の両方を加温した試験例1-3では、耐酸性が更に優れる錠剤を製造することができることが確認された。
【0082】
(試験例2)
試験例1-3の打錠工程における打錠圧を以下のいずれかの打錠圧とした以外は、試験例1-3と同様にして、錠剤を製造した。
-打錠圧-
[試験例2-1]
13.0kN/杵
[試験例2-2]
15.0kN/杵
[試験例2-3]
18.0kN/杵
【0083】
<評価>
各試験例で得られた錠剤について、試験例1と同様にして、耐酸性及び硬度を評価した。結果を表2に示す。
【表2】
【0084】
表2の結果から、打錠圧を変えて錠剤を製造した場合であっても、本発明の温度制御処理を行うことにより、耐酸性が担保された錠剤を量産できることが確認された。
【0085】
(試験例3)
試験例1の錠剤処方(表1-1)における腸溶性コーティング剤「オイドラギットL30D55」をAQOAT AS-LF(信越化学製、ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸エステルコハク酸エステル)に、ポルソルベート80をラウリル硫酸ナトリウムに代え、下記表3-1に記載の処方(1錠あたり処方)で試験例1と同様にして錠剤(試験例3-1~3-4の錠剤、1錠300mg)を製造した。なお、ロータリー式打錠機及び混合末の温度制御処理は下記表3-2の条件とし、打錠圧は10kN/杵とした。
【0086】
【表3-1】
【0087】
<評価>
試験例3で得られた錠剤について、試験例1における試験と同様に、硬度および耐酸性に対する加温の影響を試験した。結果を表3-2に示す。
【0088】
【表3-2】
【0089】
表3-2の結果から、試験例3も同様に、打錠機及び混合末の少なくともいずれかを加温した製剤では耐酸性が向上していることが確認された。
【0090】
(試験例4)
試験例3の処方に基づいて、下記表4に記載のロータリー式打錠機及び混合末の温度制御処理並びに打錠圧にて、試験例4-1~4-3の錠剤を製造し、試験例1と同様に試験した。結果を表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
表4の結果から、試験例2と同様に、打錠圧を変えて錠剤を製造した場合であっても、本発明の温度制御処理を行うことにより、耐酸性が担保された錠剤を量産できることが確認された。
【符号の説明】
【0093】
1 ・・・ 垂直回転軸
2 ・・・ ターンテーブル
3 ・・・ 打錠セル(臼)
4 ・・・ 下部打錠ロッド(杵)
5 ・・・ 下部プレッシャーローラー
6 ・・・ 上部打錠ロッド(杵)
7 ・・・ 上部プレッシャーローラー
8 ・・・ ホッパー
9 ・・・ 打錠用粉末
図1