(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ハウジング及びエンクロージャのためのニッケル-ホウ素コーティング
(51)【国際特許分類】
C23C 18/34 20060101AFI20230907BHJP
G11B 33/02 20060101ALI20230907BHJP
G11B 33/12 20060101ALI20230907BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C23C18/34
G11B33/02 301A
G11B33/12 313C
H05K5/02 J
(21)【出願番号】P 2022081965
(22)【出願日】2022-05-19
【審査請求日】2022-05-19
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100207837
【氏名又は名称】小松原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】ムラリダラン・スンダララジャン
(72)【発明者】
【氏名】ムタラス・デヴァラジャン
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-206499(JP,A)
【文献】特開昭58-042766(JP,A)
【文献】特表2004-522857(JP,A)
【文献】特表平03-502024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0302897(US,A1)
【文献】特開2016-197483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-20/08,
G11B 33/00-33/08,33/12-33/14,
H01L 23/02,23/28,
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスの少なくとも一部分を収容するための物品であって、
前記物品は、前記電子デバイスと前記物品との間に配置された熱界面材料と共に使用され、
前記物品は、
金属含有基材と、
ニッケル及びホウ素を含
み、前記金属含有基材の少なくとも一部上に配置されている
層であって、ナノノジュール型構造又は形態を有すると共に前記熱界面材料に装着される、層と、を含み、
前記層中のニッケル及びホウ素の総量に基づいて、前記層中のニッケルの量が、95重量%~97重量%であり、前記層中のニッケル及びホウ素の総量が、100重量%を超えず、
前記層中のホウ素の量が、前記層中のニッケル及びホウ素の総量に基づいて、3重量%~5重量%であり、
前記物品が、
25W/mK以上の熱伝導率(ISO22007-2)、
0.5GPa以上のスクラッチ硬度(ISO4586-2)、
0.4以下の摩擦係数(ASTM G133)、又は
これらの組み合わせを有する、物品。
【請求項2】
前記物品が、
180μm以下のスクラッチ幅(ISO4586-2)、
100°以上の接触角(ASTM D7334-08)、
0.1μm以上の表面粗さ(ISO4287:1997)、又は
これらの組み合わせを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記金属含有基材の少なくとも一部と、ニッケル及びホウ素を含む前記層との間に配置された亜鉛含有層を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記物品が、
30W/mK~50W/mKの熱伝導率(ISO22007-2)、
1GPa~3GPaのスクラッチ硬度(ISO4586-2)、
0.3以下の摩擦係数、又は
これらの組み合わせを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記物品が、
100μm以下のスクラッチ幅(ISO4586-2)、
110°以上の接触角(ASTM D7334-08)、
0.2μm以上の表面粗さ(ISO4287:1997)、又は
これらの組み合わせを有する、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記電子デバイスが、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ、ラップトップハウジング、キーボード、マウス、USBパッケージング、SSDパッケージング、HDDパッケージング、センサカバー、カメラカバー、wi-fiルータ、自動車音楽システム、CPUカバー、ヒートパイプ、マイクロチャネル、ピンフィン、又はこれらの構成要素を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記金属含有基材が、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、真鍮、コバルト、これらの銅合金、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
物品であって、
電子デバイスと、
前記電子デバイスの少なくとも一部分上に配置されたコーティングされた基材と、
前記電子デバイスと前記コーティングされた基材との間に配置された熱界面材料と、を含み、
前記コーティングされた基材が、
金属含有基材と、
前記金属含有基材の少なくとも一部の上に配置されたコーティング層と、を含み、
前記コーティング層は、ナノノジュール型構造又は形態を有すると共に前記熱界面材料に装着され、
前記コーティング層が、15μm以下の厚さを有し、前記コーティング層が、
前記コーティング層のニッケル及びホウ素の総量に基づいて、95重量%~97重量%のニッケルの量と、
前記コーティング層中のニッケル及びホウ素の総量に基づいて3重量%~5重量%のホウ素の量と、を含み、前記コーティング層中のニッケル及びホウ素の前記総量が、100重量%を超えず、
前記コーティングされた基材が、
25W/mK以上の熱伝導率(ISO22007-2)、
0.5GPa以上のスクラッチ硬度(ISO4586-2)、
0.4以下の摩擦係数(ASTM G133)、又は
これらの組み合わせを有する、物品。
【請求項9】
前記コーティングされた基材の前記熱伝導率が、30W/mK~50W/mKであり、
前記コーティングされた基材の前記スクラッチ硬度が、1GPa~3GPaであり、
前記コーティングされた基材の前記摩擦係数が、0.3以下であり、又は
これらの組み合わせである、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記コーティングされた基材が、
100μm以下のスクラッチ幅(ISO4586-2)、
110°以上の接触角(ASTM D7334-08)、
0.2μm以上の表面粗さ(ISO4287:1997)、又は
これらの組み合わせを有する、請求項8に記載の物品。
【請求項11】
前記コーティングされた基材が、以下の特性:
30W/mK~40W/mKの熱伝導率(ISO22007-2)、
65μm若しくは75μmまでのスクラッチ幅(ISO4586-2)、
1.5GPa~2.5GPaのスクラッチ硬度(ISO4586-2)、
0.1以下の摩擦係数、
110°~135°の接触角(ASTM D7334-08)、又は
0.2μm~0.4μm表面粗さ(ISO4287:1997)、のうちの少なくとも3つを有する、請求項8に記載の物品。
【請求項12】
前記電子デバイスが、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ、ラップトップハウジング、キーボード、マウス、USBパッケージング、SSDパッケージング、HDDパッケージング、センサカバー、カメラカバー、wi-fiルータ、自動車音楽システム、CPUカバー、ヒートパイプ、マイクロチャネル、ピンフィン、又はこれらの構成要素を含む、請求項8に記載の物品。
【請求項13】
請求項1~12のうちいずれか一項に記載の物品としての電子デバイス用のハウジング又はエンクロージャを作製するプロセスであって、
堆積浴中での無電解堆積によって、基材上にニッケル及びホウ素を含む層を形成することを含み、
前記堆積浴が、ニッケル源、
還元剤としても作用するホウ素源、及び錯化剤から形成され、
前記層中のニッケルの量が、前記層中のニッケル及びホウ素の総量に基づいて、95重量%~97重量%であり、
前記層中のホウ素の量が、前記層中のニッケル及びホウ素の総量に基づいて、3重量%~5重量%以下であ
り、
前記堆積浴のpHが、4~6である、プロセス。
【請求項14】
前記ニッケル源が、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、又はこれらの組み合わせを含み、
前記ホウ素源が、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記無電解堆積が、100℃以下の温度で実行され
る、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
ニッケル及びホウ素を含む前記層を形成する前に、前記基材をジンケート処理すること、を更に含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
前記基材をアルカリ浴で洗浄することと、
洗浄された基材を、1つ以上の無機酸を含む研磨浴で研磨することと、を更に含み、洗浄及び研磨が、ニッケル及びホウ素を含む前記層を形成する前に行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項18】
前記堆積浴を形成するために使用される前記ニッケル源と前記ホウ素源との重量比が、1:11.7~1:13.3であり、
前記堆積浴を形成するために使用される前記ニッケル源と前記錯化剤との重量比が、9:12.5~13.3:20である、請求項13に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、電子デバイス及びメモリデバイスのためのハウジング及びエンクロージャに関し、より具体的には、ニッケル-ホウ素コーティングを有するそのようなハウジング及びエンクロージャ並びにそのようなニッケル-ホウ素コーティングを形成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ、塗料、及びアクリルなどのポリマー及び樹脂は、ソリッドステートドライブ(solid state drive、SSD)製品、ハードディスクドライブ(hard disk drive、HDD)製品、ヒートシンク製品、及びUSBコネクタなどの小売包装(retail packaging、RPG)製品の金属ハウジング及びエンクロージャをコーティングするために一般的に使用されている。しかしながら、そのようなポリマーベースの材料の柔らかい性質、粘弾性の挙動、及び低い熱伝導率は、その実用値に影響を及ぼす。例えば、ドライブが従来のポリマーコーティングされたエンクロージャを有する場合、熱界面材料とエンクロージャコーティングとの間の典型的な接触は、ドライブの熱を効果的に消散させることができない。従来のコーティングの柔らかい性質はまた、コーティング及びエンクロージャがスクラッチング及び摩耗を受けやすくする。加えて、エンクロージャ表面上におけるオイルブリードの存在によるSSD、HDD、及びRPGパッケージング及びエンクロージャの廃棄は、エンクロージャの低い耐スクラッチ性及び耐摩耗性とともに、場合によっては10%を上回る可能性がある。
【0003】
現在、SSD、HDD、RPG、他のメモリデバイス、及び電子デバイスは言うまでもなく、電子産業に関連しない製品のこのような問題を解決するためのアプローチは非常に限定されている。例えば、スクラッチングを軽減する又は耐食性を改善するために、ニッケル-ホウ素(nickel-boron、NiB)コーティングは、鋸、ピストンリング、及びベアリング、又は切断作用及び摩擦力に曝される他の構造に利用されているが、製品が廃棄されるかどうかを判定する際に表面特性が重要である可能性があるエンクロージャ及びパッケージング用途のための耐スクラッチコーティングとしては使用されていない。更に、そのようなNiBコーティングは、典型的には、安定剤若しくはタリウム又は金のような金属などの追加の材料を含有し、そのようなコーティングを使用不可、原子非効率、及び/又は非晶質にする。更に、従来のNiBコーティング技術は、典型的には、水素化ホウ素還元剤を用いたアルカリ性堆積浴の使用を伴い、耐食性及び硬度を達成するために熱処理プロセスを必要とする。そのようなアルカリ性浴及び水素化ホウ素試薬は、電子デバイス及びメモリデバイスの典型的なハウジング及びエンクロージャ基材と適合しない一方、熱処理プロセスは、スループットを減少させ、製造コストを上昇させる余分な動作である。
【0004】
例えば、当該技術分野における1つ以上の欠陥を克服する電子デバイス及びメモリデバイスのハウジング及びエンクロージャのための新しく改善されたニッケルホウ素コーティングが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、概して、電子デバイス及びメモリデバイスのためのハウジング及びエンクロージャに関し、より具体的には、ニッケル-ホウ素コーティングを有するそのようなハウジング及びエンクロージャ並びにそのようなニッケル-ホウ素コーティングを形成するためのプロセスに関する。
【0006】
一実施形態では、電子デバイスの少なくとも一部分を収容するための物品が提供される。物品は、金属含有基材と、ニッケル及びホウ素を含む層と、を含み、層は、金属含有基材の少なくとも一部上に配置され、層中のニッケル及びホウ素の総量に基づいて、層中のニッケルの量が約95重量%以上であり、層中のニッケル及びホウ素の総量が100重量%を超えず、層中のホウ素の量は、層中のニッケル及びホウ素の総量に基づいて、約5重量%以下である。物品は、約25W/mK以上の熱伝導率(ISO22007-2)、約0.5GPa以上のスクラッチ硬度(ISO4586-2)、約0.4以下の摩擦係数(ASTM G133)、又はこれらの組み合わせを有する。
【0007】
別の実施形態では、物品が提供される。物品は、電子デバイスと、電子デバイスの少なくとも一部分上に配置された、金属含有基材を含むコーティングされた基材と、金属含有基材の少なくとも一部分上に配置された、約15μm以下の厚さを有するコーティング層と、を含み、コーティング層は、コーティング層のニッケル及びホウ素の総量に基づいて約95重量%以上のニッケルの量と、コーティング層におけるニッケル及びホウ素の総量に基づいて約5重量%以下のホウ素の量とを含み、コーティング層におけるニッケル及びホウ素の総量は、100重量%を超えない。コーティングされた基材は、約25W/mK以上の熱伝導率(ISO22007-2)、約0.5GPa以上のスクラッチ硬度(ISO4586-2)、約0.4以下の摩擦係数(ASTM G133)、又はこれらの組み合わせを有する。
【0008】
別の実施形態では、電子デバイス用のハウジング又はエンクロージャを作製するプロセスが提供される。このプロセスは、堆積浴中で無電解堆積によって、基材上にニッケル及びホウ素を含む層を形成することを含み、堆積浴は、ニッケル源、ホウ素源、及び錯化剤から形成されており、層中のニッケルの量は、層中のニッケル及びホウ素の総量に基づいて約95重量%以上であり、層中のホウ素の量は、層中のニッケル及びホウ素の総量に基づいて約5重量%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、簡潔に上で要約した本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによってなされ得、それらのいくつかが添付の図面に例解されている。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを例解し、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではなく、本開示が他の同等に有効な実施形態を認め得ることに留意すべきである。
【0010】
【
図1A】本開示の少なくとも1つの実施形態による例示的な物品の断面図である。
【0011】
【
図1B】本開示の少なくとも1つの実施形態による例示的な物品の断面図である。
【0012】
【
図2】本開示の少なくとも1つの実施形態による例示的な物品の分解図である。
【0013】
【
図3】本開示の少なくとも1つの実施形態による、本明細書に記載の物品を組み込んだ例示的なハードディスクドライブカバー及びディスクドライブアセンブリの上面斜視分解図である。
【0014】
【
図4】本開示の少なくとも1つの実施形態による、本明細書に記載の物品を組み込んだ例示的なUSBフラッシュドライブの上面図の斜視図である。
【0015】
【
図5】本開示の少なくとも1つの実施形態による物品を形成するための例示的なプロセスの選択された動作を例解する。
【0016】
【
図6】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例示的な無電解NiB(electroless NiB、ENB)コーティングされたエンクロージャの例示的な走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)画像である(スケール:1μm)。
【0017】
【
図7A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例示的なENBコーティングされたエンクロージャ及び比較用エンクロージャの25℃での例示的な温度プロファイルである。
【0018】
【
図7B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例示的なENBコーティングされたエンクロージャ及び比較用エンクロージャの40℃での例示的な温度プロファイルである。
【0019】
【
図8】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例示的なENBコーティングされたエンクロージャ及び比較用エンクロージャの耐摩耗性の例示的なデータを示す。
【0020】
【
図9A】比較用のコーティングされたエンクロージャのオイル汚染を示す例示的な画像である。
【0021】
【
図9B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、例示的なENBコーティングされたエンクロージャのオイル汚染を示さない例示的な画像である。
【0022】
理解を容易にするために、図面に共通する同一の要素を示すために、可能な限り、同一の参照番号を使用している。一実施形態で開示される要素は、特に断ることなく、他の実施形態に有益に利用され得ることが企図される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の実施形態は、概して、電子デバイス及びメモリデバイスのためのハウジング及びエンクロージャに関し、より具体的には、ニッケル-ホウ素コーティングを有するそのようなハウジング及びエンクロージャ並びにそのようなニッケル-ホウ素コーティングを形成するためのプロセスに関する。本発明者らは、従来のエンクロージャと比較して、例えば、改善された熱特性、改善された熱散逸のための増大した接触面積、耐スクラッチ性、及び耐摩耗性、並びにグリース及びオイルの存在における改善された耐久性を有するニッケル-ホウ素(NiB)コーティングされたエンクロージャ/ハウジングを発見した。いくつかの例では、基材エンクロージャ又はハウジングの表面の少なくとも一部分上にNiBコーティングを含む、ソリッドステートドライブ(SSD)、ハードディスクドライブ(HDD)、ヒートシンク製品、及び小売パッケージング(RPG)製品などのためのエンクロージャ及びハウジングなどの物品が提供される。NiBコーティングは、約95%以上のNi及び5%以下のBを有するNiB合金又は材料であることができる。いくつかの実施形態では、NiB合金又は材料は、好適な還元剤の存在下での酸性浴の使用を含む無電解堆積技術を介して基材表面上に堆積させることができる。
【0024】
使用中、本明細書に記載のNiBコーティングは、例えば、半導体接合部から熱を放散させ、それによってデバイス寿命及び効率を向上させることができる。本明細書に記載の新しい改善されたコーティングされたエンクロージャ、ハウジング、及びパッケージングの他の特性、例えば、耐スクラッチ性、摩擦、及び撥水性は、メモリデバイス及び電子デバイスの従来のコーティングされたエンクロージャ、ハウジング、及びパッケージングに対して改善される。更に、本明細書に記載の無電解堆積は、従来のコーティングと比較して、NiBコーティングされた物品及びNiBコーティングされた基材の熱的特性、表面特性、及び摩擦機械的特性を改善する。
【0025】
ニッケル-ホウ素材料を堆積させるための従来技術は、電子デバイス及びメモリデバイスのエンクロージャ又はハウジングには好適ではない。例えば、従来の技術は、典型的には、水素化ホウ素還元剤を用いたアルカリ浴の使用を伴う。そのようなアルカリ条件下(10~14のpH)では、アルミニウム含有基材などの金属基材は不安定であり、溶解し始める。更に、従来のNiB含有コーティングは、タリウム又は金などの、コーティングを安定化させるための他の材料を有し、形成されたNiBコーティングは、非晶質である。対照的に、本明細書に記載のプロセスによって形成されたNiBコーティングは、結晶性ニッケルピークを示すことができる。
【0026】
更に、従来のNiB堆積技術はまた、所望の硬度特性、耐食性、及び他の特性を達成するために熱処理プロセスに焦点を当てている。対照的に、本明細書に記載の実施形態は、そのような熱処理プロセスを含まない。
【0027】
本開示の実施形態は、概して、電子デバイス及びメモリデバイスのためのハウジング及びエンクロージャに関する。本明細書に記載のそのような物品は、最新のエンクロージャ及びハウジングに対して改善された熱的、機械的、及び表面特性を示す。
【0028】
図1Aは、少なくとも1つの実施形態による例示的な物品100の断面図である。物品100は、例えば、メモリデバイス、電子デバイス、メモリデバイスとともに利用される構成要素、電子デバイスとともに利用される構成要素、及び/又は様々な他のデバイス/製品の少なくとも一部分を、例えば、包囲する、カバーする、囲繞する、及び/又は収容するために利用される構造であることができる。物品100は、例えば、デバイス若しくは製品の少なくとも一部分を包囲する、カバーする、囲繞する、及び/又は収容するためのエンクロージャ、ケース、ハウジング、パネル、ベース、カバー、又は任意の他の好適な構造であることができる。一般に、物品100は、少なくとも2つの構成要素を含む。
【0029】
物品100は、アルミニウム(Al)、ステンレス鋼、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、真鍮、コバルト、銅、これらの合金、又はこれらの組み合わせなどの金属又は金属合金で作製され得るか、又はこれらを含み得る、第1の構成要素101(又は基材)を含む。第1の構成要素101は、第1の表面105及び第2の表面110を有する。第2の表面110は、メモリデバイス、電子デバイス、ヒートシンクデバイス、若しくはメモリデバイス、電子デバイス、ヒートシンクデバイス、又は他のデバイス/製品とともに利用される構成要素上の表面であることができる。第1の構成要素101は、例えば、メモリデバイス、電子デバイス、ヒートシンクデバイス、メモリデバイスとともに利用される構成要素、電子デバイスとともに利用される構成要素、ヒートシンクデバイスとともに利用される構成要素、及び/又は様々な他のデバイス/製品の少なくとも一部分を包囲する、カバーする、囲繞する、及び/又は収容するために、任意の好適な形状又はサイズであることができる。第1の構成要素101の厚さは、約100マイクロメートル(μm)~約25,000μm、例えば約250μm~約5000μm、例えば約1000μm~約2500μm、例えば約2500μm~約10,000μm、例えば約5000μm~約20,000μmなど、であることができる。第1の構成要素101のより大きい又はより小さい厚さが考えられる。
【0030】
物品100はまた、第1の構成要素101の第1の表面105の少なくとも一部分上に配置された第2の構成要素115(又はコーティング層)を含む。
図1Aに示すように、単一の第2の構成要素115のみが基材の表面上に配置されている。また、複数の第2の構成要素が、第1の構成要素の表面上に配置されることも考えられる。ここで、例えば、
図1Bの物品150に示されるように、第2の構成要素115aは、第1の構成要素101の第1の表面105の少なくとも一部分上に配置され、第2の構成要素115bは、第1の構成要素101の第2の表面110の少なくとも一部に配置されている。本明細書における第2の構成要素115への言及は、文脈が他に示さない限り、個々に第2の構成要素115a、115bへの言及を含むものとする。
【0031】
第2の構成要素115は、例えば、従来の材料コーティングと比較して熱散逸を改善し、耐スクラッチ性及び耐摩耗性を改善するための構成要素との接触領域の増加に利用されるコーティングである。第2の構成要素115は、ニッケル(Ni)及びホウ素(B)を含む組成物、例えば、NiB合金、Ni及びBを含有する材料、Ni及びBを含む反応生成物、又はこれらの組み合わせであることができる。いくつかの実施形態では、以下に記載されるように、第2の構成要素115(例えば、NiB合金又はNi及びBを含有する材料)は、好適な還元剤の存在下での酸性浴の使用を含む無電解堆積技術を介して、第1の構成要素101の1つ以上の表面上に堆積させることができる。第1の構成要素101及び第2の構成要素115の各々は、個々に、1つの層又は複数の層の形態であることができる。いくつかの実施形態では、物品100及び150は、基材(例えば、第1の構成要素101)と、ニッケル及びホウ素を含む1つ以上の層(例えば、第2の構成要素115)とを含む、コーティングされた基材である。例えば、いくつかの実施形態では、コーティングされた基材は、(第1の構成要素101に対応する)電子デバイスを収容するための金属エンクロージャを含み、金属エンクロージャの少なくとも一部の上に配置されているコーティング層(第2の構成要素115に対応する)も含む。
【0032】
第2の構成要素115中のNiの重量パーセントは、第2の構成要素115におけるNi及びBの総量(100重量%を超えない)に基づいて、約90重量%以上、例えば約91重量%~約99重量%、例えば約92重量%~約98重量%、例えば約93重量%~約97重量%、例えば約94重量%~約96重量%であることができる。少なくとも1つの実施形態では、第2の構成要素115中のNiの重量パーセントは、第2の構成要素115におけるNi及びBの総量に基づいて、約95重量%~約99重量%、例えば95重量%~約97重量%又は約96重量%~約98重量%である。第2の構成要素115中のNiの重量パーセントは、エネルギー分散型X線分光法(energy dispersive x-ray spectrometry、EDX)を使用して、特定の材料の表面においてASTM E1508-12aに従って判定される。
【0033】
第2の構成要素115中のBの重量パーセントは、第2の構成要素115におけるNi及びBの総量に基づいて、約10%以下、例えば約1重量%~約9重量%、例えば約2重量%~約8重量%、例えば約3重量%~約7重量%、例えば約4重量%~約6重量%であることができる。少なくとも1つの実施形態では、第2の構成要素115中のBの重量パーセントは、第2の構成要素115におけるNi及びBの総量に基づいて、約1重量%~約5重量%、例えば約3重量%~約5重量%又は約2重量%~約4重量%である。第2の構成要素115中のBの重量パーセントは、EDX分光法を使用してASTM E1508-12aに従って判定される。
【0034】
第2の構成要素115(又はコーティング層)の厚さは、約20μm以下、例えば約15μm以下、例えば約1μm~約10μm、例えば約2μm~約9μm、例えば約3μm~約8μm、例えば約4μm~約7μm、例えば約5μm~約6μmであることができる。第2の構成要素115のより大きい又はより小さい厚さが考えられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、金属含有層などの第3の構成要素(図示せず)は、第1の構成要素101の少なくとも一部分と第2の構成要素115の一部との間に配置することができる。第3の構成要素は、亜鉛又は亜鉛含有材料を含む層の形態であることができる。この第3の構成要素の厚さは、存在する場合、約3μm以下、例えば約2μm以下、例えば約0.05μm~約2μm、例えば約0.5μm~約1μm、例えば約1μm~約3μmであることができる。この第3の構成要素のより大きい又はより小さい厚さが考えられる。
【0036】
第1の構成要素101及びその上に配置された第2の構成要素115(例えば、NiBコーティング層)を含む物品100又は物品150などの本明細書に記載の物品及びコーティングされた基材は、以下で考察されるように、従来のエンクロージャ、ケース、及びカバーに対して改善された特性を有する。本明細書に記載の物品又はコーティングされた基材(例えば、物品100及び物品150)は、以下の特性のうちの1つ以上を有することができる:
【0037】
物品又はコーティングされた基材は、約0.1μm以上、例えば約0.2μm以上及び/又は約3μm以上、例えば約0.1μm~約3μm、例えば約0.2μm~約2μm、例えば約0.3μm~約1μmの平均表面粗さを有することができる。少なくとも1つの実施形態では、物品又はコーティングされた基材の平均表面粗さは、約0.2μm以上、例えば、約0.2μm~約0.4μmであることができる。物品又はコーティングされた基材のより高い又はより低い平均表面粗さが考えられる。平均表面粗さは、異なる位置における特定の材料の表面上の表面プロファイル又は細かく離間した微細不規則性の尺度であり、粗さのレベルを示すために一般的に使用される。平均表面粗さは、Mitutoyo表面プロフィロメトリを使用してISO4287:1997に従って判定される。
【0038】
物品又はコーティングされた基材は、約100以上、例えば約125μm以上、例えば約150μm以上、例えば約175μm以上、例えば約185μm以上のスクラッチ幅を有することができる。少なくとも1つの実施形態では、物品又はコーティングされた基材は、約20μm~約100μm、例えば約25μm~約95μm、例えば約30μm~約90μm、例えば約35μm~約85μm、例えば約40μm~約80μm、例えば約45μm~約75μm、約50μm~約70μm、例えば約55μm~約65μmのスクラッチ幅を有する。いくつかの実施形態では、物品又はコーティングされた基材は、約65μm~約75μmのスクラッチ幅を有する。物品又はコーティングされた基材のより高い又はより低いスクラッチ幅が考えられる。スクラッチ幅は、一定の適用荷重下での溝幅寸法の尺度であり、耐スクラッチ性を示すために使用され、値が低いほど、特定の材料の耐スクラッチ性が高いことを示す。スクラッチ幅は、ISO4586-2に従ってTaberスクラッチ試験機を使用して判定される。
【0039】
物品又はコーティングされた基材は、約0.5ギガパスカル(gigapascal、GPa)以下及び/又は約0.4GPa以下、例えば約0.3GPa以下及び/又は約0.2GPa以下、例えば約0.05GPa~約0.5GPa、例えば約0.1GPa~約0.4GPa、例えば0.15GPa~約0.35GPa、例えば約0.2GPa~約0.35GPa、例えば0.3GPa~約0.35GPa、例えば約0.2GPa~約0.3GPa、例えば約0.25GPa~約0.3GPaのスクラッチ硬度を有することができる。少なくとも1つの実施形態では、物品又はコーティングされた基材のスクラッチ硬度は、約0.5GPa以上、例えば約0.55GPa以上、例えば約1GPa~約4GPa、例えば約1.5GPa~約3.5GPa、例えば約1.75GPa~約3GPa、例えば約1.75GPa~約2.75GPa又は約2GPa~約2.5GPaである。物品又はコーティングされた基材のより高い又はより低いスクラッチ硬度が考えられる。スクラッチ硬度は、耐スクラッチ性の尺度であり、値が高いほど、特定の材料の耐スクラッチ性が高いことを示す。スクラッチ硬度は、ISO4586-2に従ってTaberスクラッチ試験機を使用して判定される。
【0040】
物品又はコーティングされた基材は、約0.5以下、例えば約0.4以下、例えば約0.35以下、例えば約0.3以下、例えば約0.25以下、例えば約0.2以下、例えば約0.15以下、例えば約0.1以下である、摩擦係数(単位なし)を有することができる。少なくとも1つの実施形態では、物品又はコーティングされた基材の摩擦係数は、約0.01~約0.3、例えば、約0.05~約0.25、又は約0.05~約0.1、又は約0.1~約0.2である。物品又はコーティングされた基材のより高い又はより低い摩擦係数が考えられる。物品の摩擦係数は、耐摩耗性の尺度であり、値が低いほど、特定の材料の耐摩耗性が高いことを示す。摩擦係数は、ASTM G133に従ってピンオンディスク摩耗試験機を使用して判定される。
【0041】
物品又はコーティングされた基材は、約10ワット/メートル-ケルビン(W/(mK))以上、例えば、約25W/mK以上及び/又は約75W/mK以上、例えば約30W/mK~約60W/mK、例えば約35W/mK~約50W/mK、例えば35W/mK~約40W/mK、又は約40W/mK~約45W/mKなどの熱伝導率を有することができる。少なくとも1つの実施形態では、物品又はコーティングされた基材の熱伝導率は、約30W/mK~約40W/mK、又は約30W/mK~約50W/mKである。物品又はコーティングされた基材のより高い又はより低い熱伝導率が考えられる。熱伝導率は、特定の材料が熱を伝導する程度を測定する。熱伝導率は、ISO22007-2に従ってHotdisk TPS 2500S熱定数分析装置を使用して判定される。
【0042】
物品又はコーティングされた基材は、約100°以上、例えば約100°~約150°、例えば約105°~約145°、例えば約110°~約140°、例えば約115°~約135°、例えば約120°~約130°の接触角を有することができる。少なくとも1つの実施形態では、物品又はコーティングされた基材の接触角は、約100°~約135°、例えば約105°~約130°、例えば約110°~約125°、例えば約115°~120°である。いくつかの実施形態では、物品又はコーティングされた基材の接触角は、約110°以上、例えば約110°~約135°である。接触角は、材料による湿潤又はその疎水性の定量的尺度である。接触角は、ASTM D7334-08に従って、Rame-hartゴニオメーターを使用して判定される。
【0043】
少なくとも1つの実施形態では、物品又はコーティングされた基材は、約30W/mK~約40W/mKの熱伝導率、約65μm~約75μmのスクラッチ幅、約1.5GPa~約2.5GPaのスクラッチ硬度、約0.05~約0.1の摩擦係数、約100°~約130°の接触角、及び/又は約0.2μm~約0.4μmの表面粗さを有する。
【0044】
上述のように、本明細書に記載の物品又はコーティングされた基材、例えば、物品100及び物品150は、メモリデバイス、電子デバイス、メモリデバイスとともに利用される構成要素、電子デバイスとともに利用される構成要素、及び/又は様々な他のデバイス/製品の少なくとも一部分を例えば、包囲する、カバーする、囲繞する、及び/又は収容するために利用される構造であることができる。そのような物品又はコーティングされた基材は、例えば、デバイス若しくは製品の少なくとも一部分を包囲する、カバーする、囲繞する、及び/又は収容するための、エンクロージャ、ケース、ハウジング、パネル、ベース、カバー、又は任意の他の好適な構造であることができる。
【0045】
本明細書に記載の物品又はコーティングされた基材とともに利用することができる電子デバイス、メモリデバイス、及び他のデバイスの例解的であるが、非限定的な例としては、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、ユニバーサルシリアルバス(universal serial bus、USB)フラッシュドライブ、ラップトップハウジング、キーボード、マウス、SSDパッケージング、HDDパッケージング、センサカバー、カメラカバー、wi-fiルータ、自動車音楽システム、CPUカバー、電気電子製品用のプラスチックケーシング、及びこれらの構成要素が挙げられる。USBコネクタなどの小売パッケージング(RPG)製品及びその構成要素、並びに熱交換器、ヒートパイプ、マイクロチャネル、ピンフィン、及びこれらの構成要素などのヒートシンク製品も含まれる。
【0046】
図2は、少なくとも1つの実施形態による、ソリッドステートドライブカバー及びアセンブリ200の形態の例示的な電子パッケージの分解図である。カバー及びアセンブリは、その上に任意選択的な構成要素が装着されたプリント回路基板(printed circuit board、PCB)層201を含む。PCB層201は、上面201a及び底面201bを有する。第1のカバー205(又はエンクロージャ)は、PCB層201の上面201aの少なくとも一部に配置されている。第2のカバー210(又はエンクロージャ)は、PCB層201の底面201bの少なくとも一部に配置されている。
【0047】
Ni及びBを含有する第1のコーティング層215aは、PCB層201の上面201aと第1のカバー205の底面205bとの間に配置することができる。第1のコーティング層215aは、PCB層201の上面201aの少なくとも一部の上に配置することができ、かつ/又は第1のカバー205の底面205bの少なくとも一部の上に配置することができる。Ni及びBを含有する第2のコーティング層215bは、PCB層201の底面201bと第2のカバー210の上面210aとの間に配置することができる。第2のコーティング層215bは、PCB層201の底面201bの少なくとも一部の上に配置することができ、かつ/又は第2のカバー210の上面210aの少なくとも一部の上に配置することができる。いくつかの例では、液体熱界面材料(丸形ディスク220として示されている)を本明細書に記載の物品とともに利用することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、Ni及びBを含有するコーティング層(図示せず)は、第1のカバー205の上面205aの少なくとも一部、第2のカバー210の底面210bの少なくとも一部、又はその両方に配置することができる。
図2に示す様々なコーティング層エンクロージャ/カバーは、物品100又は物品150に対応することができる。例えば、第1のカバー205の底面205bの少なくとも一部の上に配置された第1のコーティング層215aは、物品100又は物品150に対応する。
【0049】
図3は、少なくとも1つの実施形態による、例示的なハードディスクドライブカバー及びディスクドライブアセンブリ300の上面斜視分解図である。ハードディスクドライブカバー及びアセンブリは、外面315を有するカバー310及びベースアセンブリを含む。ベースアセンブリ305、カバー310、及び/又は外面315の少なくとも一部分は、上述の物品100又は150を含むことができる。ハードディスクドライブカバーの及びディスクドライブアセンブリ300内面などの他の部分が、上述の物品100又は物品150を含むことができる。
【0050】
図4は、少なくとも1つの実施形態による本明細書に記載の物品を組み込んだ例示的なUSBフラッシュドライブ400の上面の斜視図である。USBフラッシュドライブ400は、USBデバイス405の少なくとも一部分を囲む、カバーする、囲繞する、及び/又は収容するカバー410を含む。カバー410の少なくとも一部分は、上述の物品100又は物品150を含むことができる。USBフラッシュドライブ400の内面などの他の部分が、上述の物品100又は物品150を含むことができる。
【0051】
図2~
図4に示される電子及びメモリデバイスは、本明細書に記載の物品及びコーティングされた基材の使用の非限定的な例解図であり、本開示の実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
【0052】
本開示の実施形態はまた、物品又はコーティングされた基材、例えば、物品100又は物品150を作製するためのプロセスに関する。一般に、いくつかの実施形態では、基材(又は第1の構成要素101)の少なくとも一部分は、様々な混合物又は組成物と連続的に接触させて、基材上にニッケル及びホウ素を含む層(又は第2の構成要素115)を形成することができる。本明細書に記載のプロセスは、例えば、様々な形状又は形態を有する、基材上のNiB含有層の均一又は実質的に均一なコーティング厚さを可能にし、物品のバルク製造を可能にする。
【0053】
図5は、少なくとも1つの実施形態による物品を形成するための例示的なプロセス500の選択された動作を示す。プロセスは、動作510において、例えば、基材上に存在するオイル、グリース、ワックス、金属微粉、汚れ粒子、及び/又は他の汚染物質の存在を除去するために基材(又は第1の構成要素101)の洗浄から始まる。基材は、Al、ステンレス鋼、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、真鍮、コバルト、これらの銅合金、又はこれらの組み合わせなどの、エンクロージャ及びハウジングのために利用される好適な金属及び/又は金属合金で作製するか、又はこれらを含むことができる。動作510の洗浄プロセスは、洗浄条件下で基材をアルカリ浴に導入することを含む。動作510の洗浄条件は、約10℃~約50℃、約20℃~約40℃、約25℃~約35℃の範囲の温度、約400トル~約1200トル、例えば、約600トル~約1000トル、約700~800トルの範囲の圧力、及び/又は約30分~約10時間、例えば約1時間~約5時間、例えば約2時間~約3時間の継続時間を含むことができる。ここで、基材は、アルカリ浴に浸漬させるか、又は別様に沈漬させることができる。追加的又は代替的に、アルカリ浴は、基材上に噴霧させることができる。アルカリ浴は、典型的には、約8~約12、例えば約9~約11のpHを有し、洗剤、石鹸オイルクリーナ、又はこれらの組み合わせを含む水溶液であることができる。アルカリ浴は、ソープオイル、洗剤、及びこれらの組み合わせなどの好適な材料を含むことができる。ソープオイルと洗剤との比は、約5:1~約1:5、例えば約3:1~約1:3、例えば約2:1~約1:2、例えば約1:1であることができる。
【0054】
基材が所望の仕様に洗浄されると、基材は、任意選択的に、残留アルカリ浴を除去するために水で洗浄するか、水を噴霧するか、又は水に沈漬することができる。水洗浄は、約30分以下、例えば、約5分~約10分の期間にわたって行うことができる。追加的又は代替的に、動作510の洗浄プロセス(任意選択的な水洗浄を伴う)の後、基材は、1つ以上の有機溶媒を利用して脱脂させることができる。基材を脱脂するのに好適な有機溶媒としては、アセトン及び/又はメチルエチルケトンなどのケトン溶媒、エタノール及び/又はイソプロパノールなどのアルコール溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。有機溶媒の組み合わせを使用することができる。例えば、基材を脱脂するために、アセトンとエタノールとの約1:1の混合物を利用することができる。そのような脱脂動作は、必要に応じて、約1時間以下、例えば約30分以下、例えば約20分以下の継続時間にわたって実行することができる。
【0055】
プロセス500は、動作520で基材を研磨することを更に含む。動作520の研磨プロセスは、研磨された基材を形成するために、研磨条件下で基材に研磨溶液/混合物を導入することを含むことができる。研磨溶液/混合物は、基材の金属及び/又は金属合金を研磨するための好適な材料を含むことができる。研磨溶液は、HNO3、H2SO4、H2CrO4、HCl、H3PO4、又は好適な割合におけるこれらの組み合わせなどの1つ以上の酸無機酸を含有する水溶液であることができる。研磨溶液又は混合物の非限定的な例としては、可変の割合におけるHNO3、H2SO4、及び水、例えば、約40体積%~約60体積%のHNO3、20体積%~約30体積%のH2SO4、及び水である残りの溶液を含む。研磨溶液又は混合物は、約2~約6、例えば約3~約5のpHを有することができる。動作520の研磨条件は、約10℃~約50℃、例えば約20℃~約40℃、例えば約25℃~約35℃の範囲の温度、約400トル~約1200トル、約600トル~約1000トル、約700~800トルの範囲の圧力、及び/又は約1分~約20、例えば約3分~約15分、例えば約3分~約5分、又は約5分~約10分などの継続時間を含むことができる。ここで、基材は、研磨溶液/混合物中に浸漬させるか、又は別様に沈漬させることができる。追加的又は代替的に、研磨溶液/混合物を基材上に噴霧することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、研磨溶液又は混合物は、追加的又は代替的に、様々な水溶性鉱酸塩、例えばアルカリ金属及び硫酸アンモニウム及び硫酸塩を含むことができる。例解的であるが、非限定的な例としては、硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、重硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、及び重硫酸アンモニウムが挙げられる。そのような塩の混合物を利用することができる。研磨溶液は、追加的又は代替的に、有機酸の塩を含むことができる。そのような有機酸塩は、研磨溶液中の様々な種の酸化及び分解を制御するのに役立つことができる。有機酸塩の例解的であるが、非限定的な例としては、酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、プロピオン酸、又はこれらの混合物のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。非限定的な例としては、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、乳酸カリウムなどが挙げられる。
【0057】
プロセス500は、動作530において基材上に亜鉛含有層を堆積させることを更に含む。そのようなプロセスは、「ジンケート処理」と称され、一般に、基材を酸亜鉛浴又はアルカリ亜鉛浴に沈漬して、薄い亜鉛含有層を堆積させることを含む。得られた亜鉛含有層(又はジンケート層)は、基材表面の酸化を最小限に抑えることができる。亜鉛含有層を堆積させるための典型的なプロセスシーケンスは、一般に、ジンケート処理、ジンケート層の化学的ストリッピング、及び再度表面をジンケート処理することを含む。この2動作ジンケート処理プロセスは、例えば、基材上のNiBのめっきを促進するために、以下で考察される無電解NiB堆積の前に実行することができる。
【0058】
動作530の第1のジンケート処理プロセスは、約10℃~約50℃、例えば約20℃~約40℃、例えば約25℃~約35℃の範囲の温度、約400トル~約1200トル、約600トル~約1000トル、約700トル~約800トルの圧力、及び/又は約10秒~約100秒、例えば約20秒~約80秒、例えば約30秒~約60秒、例えば約40秒~約50秒の継続時間で、研磨された基材をジンケート処理浴に導入することを含む。ここで、基材は、ジンケート処理浴に浸漬させるか、又は別様に沈漬させることができる。ジンケート処理浴は、亜鉛源(水酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛など)及び水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を含む。ジンケート処理浴はまた、塩化第二鉄及び酒石酸塩/酒石酸イオン源(酒石酸の塩、例えば、ロッシェル塩としても知られる酒石酸カリウムナトリウムなど)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ジンケート処理浴は、以下の配合範囲などの様々な量のこれらの材料を有することができる:約250~325g/LのNaOH、約5~12g/Lの酸化亜鉛、約0.75~1.5g/Lの塩化第二鉄、及び約0.1~1g/Lの酒石酸カリウムナトリウム。本開示の実施形態とともに使用することができる別のジンケート処理溶液は、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第10/265,864号を含む。
【0059】
動作530の第1のジンケート処理プロセスから形成されたジンケート処理層は、基材を、HNO3及び水を含む酸亜鉛浴に沈漬することによって、基材から除去又は別様に除去することができる。いくつかの実施形態では、酸浴は、以下の配合範囲:20~80g/LのHNO3(硝酸)及び残りの水などの、これらの材料の量を有することができる。例えば、酸浴は、50%硝酸及び50%水を含むことができる。亜鉛層は、約10℃~約50℃、例えば約20℃~約40℃、例えば約25℃~約35℃の範囲の温度、約400トル~約1200トル、約600トル~約1000トル、約700トル~約800トルの圧力、及び/又は約10秒~約100秒、例えば約20秒~約80秒、例えば約30秒~約60秒、例えば約40秒~約50秒の継続時間で、酸浴で基材から除去することができる。動作530の第2のジンケート処理プロセスは、上で考察される第1のジンケート処理プロセスと同じ又は類似の形式で行うことができる。
【0060】
動作530から形成された亜鉛含有層は、約0.05μm~約3μm、例えば約0.1μm~約2μmの厚さを有することができるが、亜鉛含有層のより大きい又はより小さい厚さが考えられる。
【0061】
プロセス500は、動作540で、亜鉛含有材料上にニッケル及びホウ素を含む組成物を堆積させることを更に含む。Ni及びBを含むこの組成物は、NiB合金、Ni及びBを含有する材料、Ni及びBを含む反応生成物、など、又はこれらの組み合わせであることができる。Ni及びBを含む組成物は、NiBコーティング層、例えば、第2の構成要素115などの層の形態であることができる。動作540は、一般に、基材が、ニッケルイオン及び他の成分を含有する堆積浴(又はめっき浴)において電位を発生させることができる自己触媒プロセスを指す、無電解NiB堆積プロセスである。
【0062】
動作540は、堆積条件下で堆積浴に、その上に形成されたZn含有層を有する基材を導入することを含む。動作540の堆積条件は、約50℃超及び/又は約100℃以下、例えば約55℃~約80℃、例えば約60℃~約75℃、例えば約65℃~約70℃の温度と、約400トル~約1200トル、例えば約600トル~約1000トル、例えば約700トル~約800トルの範囲の圧力、及び/又は約30分以上、例えば約1時間~約3時間、例えば約1.5時間~約2.5時間の継続時間を含むことができる。一般に、基材は、堆積浴に浸漬されるか、又は別様に沈漬される。
【0063】
動作540の堆積浴は、好適な割合のNi源、ホウ素源、錯化剤、及び安定剤を含むことができる。動作540の堆積浴は、約4~約6、例えば約4.5~約5.5、例えば約4.5~約5、又は約5~約5.5などの酸性pHを有する水溶液/懸濁液であることができる。少なくとも1つの実施形態では、動作540のための堆積浴は、約4~約5.5、例えば約4~約4.5、4.5~約5、又は約5~約5.5などのpHを有する。
【0064】
動作540の堆積浴に使用される、複数のニッケル源であり得るニッケル源は、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケル、又はこれらの組み合わせなどの任意の好適なNi源を含むことができる。堆積浴に使用されるニッケル源の量は、例えば、ニッケル源、ホウ素源、錯化剤、及び安定剤の総重量に基づいて、約25重量%~約50重量%、例えば、約26重量%~約38.5重量%、例えば約30重量%~約36.5重量%、例えば約32重量%~約34.5重量%であることができる。いくつかの実施形態では、ある量のニッケル源は、約25~40g/L、例えば、約30~35g/Lであることができる。
【0065】
動作540の堆積浴に使用される、還元剤としても作用することができるホウ素源は、アルキルアミン、例えばジメチルアミンボラン(CH3)2NH・BH3)、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、トリエチルアミンボラン、又はこれらの組み合わせなどのアミンを含むことができる。2つ以上のホウ素源を利用することができる。堆積浴に使用されるホウ素源の量は、堆積浴のニッケル源、ホウ素源、錯化剤、及び安定剤の総重量に基づいて、約1.9重量%~約3.1重量%、例えば約2重量%~約3重量%、例えば約2.1重量%~約2.9重量%であることができる。いくつかの実施形態では、ある量のホウ素源は、約2~3g/L、例えば約2~2.5g/L又は約2.5~3g/Lであることができる。
【0066】
1つ以上の錯化剤を、動作540の堆積浴に含めることができる。動作540の堆積浴に利用される錯化剤は、有機酸の塩を含むことができる。有機酸塩の例解的であるが、非限定的な例としては、酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、プロピオン酸、又はこれらの組み合わせのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。非限定的な例は、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、グルコン酸カリウム、乳酸カリウム、及びこれらの組み合わせを含む。堆積浴中の錯化剤の量(例えば、1つ以上の錯化剤が堆積浴に使用される場合)は、例えば、堆積浴のニッケル源、ホウ素源、錯化剤、及び安定剤の総重量に基づいて、約27重量%~約39重量%、例えば約29重量%~約37%、例えば約31重量%~約36重量%、例えば約33重量%~約34.5重量%であることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、2つの錯化剤が動作540の堆積浴中で利用される場合、堆積浴で使用される第1の錯化剤の量は、約10~30g/L、例えば約15~25g/Lであることができ、及び/又は堆積に使用される第2の錯化剤の量は、約8~30g/L、例えば約10~30g/L、例えば約15~25g/Lであることができる。
【0068】
アルコール(メタノール、エタノール、及び/又はプロパノールなど)、鉛、アンモニア、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上の安定剤を、動作540の堆積浴に含めることができる。堆積浴において使用される安定剤の量は、堆積浴のニッケル源、ホウ素源、錯化剤、及び安定剤の総重量に基づいて、約28重量%~約33重量%、例えば約28.5重量%~約32重量%、例えば約29重量%~約31重量%であることができる。いくつかの実施形態では、堆積浴において使用される安定剤の量は、約20~50mL/L、例えば約25~45mL/L、例えば約30~40mL/Lであることができる。
【0069】
動作540の堆積浴中のニッケル源とホウ素源との重量比は、約1:10~約1:15、例えば約1:11~約1:14、例えば約1:12~約1:13であることができる。少なくとも1つの実施形態では、動作540の堆積浴中のニッケル源とホウ素源との重量比は、約1:11.7~約1:13.3、例えば約1:12.5~約1:13、例えば約1:11~約1:12.5である。
【0070】
動作540の堆積浴中のニッケル源と錯化剤との重量比は、約9:10~約19:20、例えば約9:11.7~約13.5:20、例えば約9:12.5~約11.7:13.5、例えば、約11.7:11.75~約13.5:20であることができる。
【0071】
動作540の堆積浴中のニッケル源と安定剤との重量比は、約9:12~約18:13、例えば約9.5:11~約13:17、例えば約10:13~約11:13であることができる。少なくとも1つの実施形態では、動作540の堆積浴中のニッケル源と安定剤との重量比は、約9.8:11.7~約16.6:13.3、例えば約9.8:10.5~約12.5:16.6、例えば約10:12.5~約10.5:13.3である。
【0072】
動作540の堆積浴中のホウ素源と錯化剤との重量比は、約1:12~約1:14、例えば約1:11.7~約1:13.3など、例えば約1:12.5~1:13、例えば約1:11~1:12.5であることができる。
【0073】
動作540の堆積浴中のホウ素源と安定剤との重量比は、約1:10~約1:17、例えば約1:9.8~約1:16.6、例えば約1:10~約1:15、例えば約1:9.8~約1:12であることができる。
【0074】
動作540の堆積浴中の安定剤と錯化剤との重量比は、約9:10~約20:13.3、例えば約9.8:11.7~約13.3~15、例えば約10:12~約10:13.3であることができる。
【0075】
動作540の堆積浴中のニッケル源、ホウ素源、錯化剤、及び安定剤の重量パーセントは、堆積浴を作製するために使用される出発材料重量パーセントに基づいて判定される。動作540の堆積浴中の成分の重量比は、堆積浴を作製するために使用される出発材料重量比に基づいて判定される。
【0076】
動作540の堆積浴は、ニッケル源、ホウ素源、錯化剤、及び/又は他の成分がイオン、例えば、Niイオン、有機酸イオンなどの形態であることができるように、水溶液又は懸濁液中に形成される。溶液/懸濁液では、ジメチルアミンボラン(dimethylamine borane、DMAB)錯体は、ホウ酸、ホウ酸塩、水素、及びジメチルアミンに分解することができる。そのような成分はまた、堆積浴中にあることができる。堆積浴の成分の反応生成物もまた、堆積浴中にあり得る。
【0077】
動作540の無電解NiB堆積は、上記のような層厚を有する基材上にNiBを含む層の均一又は実質的に均一なコーティングを可能にする。このNiBコーティングは、ナノノジュール型構造又は形態を有することができる。プロセス500の動作によって形成された、NiBコーティングされた構造(例えば、物品100及び物品150)の例解的な特性は、上述されている。
【0078】
以下の実施例は、本開示の態様をどのように作製及び使用するかの完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、本開示の実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。使用される数(例えば、量、寸法など)に関する精度を確保する努力がなされているが、いくつかの実験誤差及び偏差を考慮するべきである。
実施例
【0079】
Ni及びBの各々の重量パーセントは、10mm×10mmの試料上のエネルギー分散型X線分光法(Quanta650FEG、SEM)を使用して、特定の材料の表面上でASTM E1508-12aに従って判定される。平均表面粗さは、以下に記載されるようにMitutoyo表面プロフィロメトリを使用してISO4287:1997に従って判定される。スクラッチ幅は、以下に記載されるようにISO4586-2に従ってTaber スクラッチ試験機を使用して判定される。スクラッチ硬度は、以下に記載されるようにISO4586-2に従ってTaber スクラッチ試験機を使用して判定される。摩擦係数は、以下に記載されるようにASTM G133に従って、ピンオンディスク摩耗試験機を使用して判定される。熱伝導率は、以下に記載されるようにISO22007-2に従ってHotdisk TPS 2500S熱定数分析装置を使用して判定される。接触角は、ASTM D7334-08に従って、Rame-hartゴニオメーターを使用して判定される。
1.例示的なNiBコーティングされたエンクロージャ。
【0080】
以下の一般的な手順に従って、NiBコーティングされたエンクロージャを形成した。アルミニウム合金基材(ダイキャストADC-12アルミニウム合金)を、1:1の比率の洗剤及びソープオイル洗浄剤を使用して、2時間アルカリ性洗浄し、次いで蒸留水で5~10分間穏やかに洗浄した。次いで、アセトンとエタノールとの1:1混合物を20分間使用して、基材を脱脂した。次いで、洗浄された基材を研磨浴(40~60%硝酸、20~30%硫酸、残りが蒸留水である)に沈漬することによって研磨した。
【0081】
次いで、研磨された基材を、ジンケート処理ステップを通して処理した。ジンケート処理浴は、NaOH(約250~325g/L)、酸化亜鉛(約5~12g/L)、塩化第二鉄(約0.7~1.5g/L)を含んでおり、及び蒸留水中の酒石酸カリウムナトリウム(約0.1~1g/L)は、約700~980mlの範囲であった。ジンケート処理浴を約25℃の温度、約760Torrの圧力で、約40秒間行った。基材を、50%HNO3及び50%蒸留水の組み合わせに、約25℃の温度、約760トルの圧力で、約30秒の継続時間だけ沈漬することによって、Zn層を除去した。次いで、基材を、同様の条件下で同じジンケート処理浴に再沈漬し、基材上にZn層を形成した。
【0082】
次いで、その上に堆積した亜鉛層を有する基材を、無電解NiB堆積に供した。無電解堆積浴のための様々な例示的な配合物及び堆積の条件を表1に示す。堆積中、pH及び浴温度などの制御因子を連続的に監視及び維持した。
【表1】
【0083】
堆積物は、ナノノジュール構造形態の実質的に均一な分布、約95~97重量%のNi及び約3~5重量%のB元素をAlエンクロージャ基材上で約6~7μmの厚さとともに有するNi-Bコーティングをもたらした。
図6は、例示的な無電解NiB(ENB)コーティングされたエンクロージャのQuanta650FEG走査型電子顕微鏡法を使用してキャプチャされた例示的なSEM画像である。画像は、ENBコーティングのナノノジュール特徴を示す。熱界面材料(thermal interface material、TIM)に装着されると、このナノノジュールコーティングは、例えば、TIMとエンクロージャとの間の接触点を増加させることができ、放熱を改善することにつながる。
【0084】
例示的な無電解NiB(ENB)コーティングされたエンクロージャの様々な特性を、比較のためのコーティングされたエンクロージャに対して評価した。以下で更に考察されるこれらの特性は、熱散逸、耐スクラッチ性、耐摩耗性、オイル汚染、熱伝導率、接触角、及び表面粗さパラメータを含む。評価に利用される比較のためのコーティングされたエンクロージャは、エポキシコーティングされたアルミニウム合金基材である。
2.放熱の例
【0085】
放熱特性を調査するために、VDBenchソフトウェアを使用した機能的熱マッピングを、例示的なENBコーティングされたエンクロージャ及び比較のコーティングされたエンクロージャ(エポキシコーティングされたアルミニウム合金基材)において行った。熱マッピングは、制御された力の空気流下で、コーティングされたエンクロージャの熱的挙動を測定する。実験設定は、コーティングされたエンクロージャ上の最も高温のスポットの位置(T1、T2、T3、及びT4高温スポットと称される)に熱電対を取り付けることと、熱スキャンを実行することと、温度読み取り値を記録することと、を含む。放熱評価のための試験条件の例を表2に示す。
【表2】
【0086】
図7A及び
図7Bは、例示的なENBコーティングされたエンクロージャ(実施例1)と、比較のコーティングされたエンクロージャ(比較実施例1)との例示的な温度プロファイルをそれぞれ約25℃及び約40℃で、熱電対コントローラの位置T1で測定されて示している。
図7A及び
図7Bに例解されるデータは、例示的なENBコーティングされたエンクロージャが、熱を効果的に放散させることを示している。更に、データは、比較のコーティングされたエンクロージャに対する例示的なENBコーティングされたエンクロージャの放熱性の有意な改善を示し、エンクロージャ上のT1高温スポットにおいて約4.6℃及び約5.7℃の改善を示している。
【0087】
表3は、エンクロージャ上の異なる高温スポットでの各熱電対による比較のコーティングされたエンクロージャに対する例示的なENBコーティングされたエンクロージャの温度低減(ΔT)の例示的なデータを示す。T1、T2、T3、及びT4は、最も高温のスポットでの熱電対の位置を指す。NANDスポットは、T2及びT4スポットにおける熱電対の位置を指す。コントローラスポットは、T1スポットにおける熱電対の位置を指し、コントローラの二次又は背面は、T3スポットの位置を指す。
【0088】
例えば、
図2を使用して、PCB層201の上面201aは、NAND(T2)及びコントローラ(T1)構成要素を有する。それぞれの高温スポットは、第1のカバー205の上面205a上の熱電対によって固定される。PCB層201の底面201bは、NAND構成要素のみを有する。対応する熱電対T4は、第2のカバー210の底面210b上に位置する。PCB層201の底面201b上にコントローラが配置されていないが、PCB層201の上面201aに位置するコントローラ高温スポットは、第2のカバー210の底面210bに影響を与え、したがってT3は、第2のカバー210の底面210bに位置する。
【表3】
【0089】
全体として、表3のデータは、例示的なENBコーティングが、構成要素の接合部及びエンクロージャ温度の低下に有意な影響を及ぼすことを示す。例えば、ΔTは、約2.4℃~約5.7℃の範囲であり、比較のコーティングされたエンクロージャよりも、例示的なENBコーティングされたエンクロージャの放熱の有意な改善を示す。比較のコーティングされたエンクロージャよりも、ENBコーティングされたエンクロージャの約10~12%改善された熱放散は、ENBコーティングされたエンクロージャが、エンクロージャ内及び/又はエンクロージャの周囲の様々な構成要素の寿命を改善することができることを示す。
3.例示的なトライボロジー特性及び他の特性
【0090】
従来のエンクロージャは、とりわけ、不十分な耐スクラッチ性、不十分な耐摩耗性、及びオイル汚染を含む様々な理由で高い割合で拒絶される。そのような歩留まり損失の問題は、高い製造コスト及び廃棄物をもたらす。本明細書に記載の実施形態は、これらの問題及び他の問題を解決する。
【0091】
スクラッチ幅及びスクラッチ硬度などの耐スクラッチ特性を、例示的なENBコーティングされたエンクロージャ及び比較のコーティングされたエンクロージャで調査した。調査した比較のコーティングされたエンクロージャは、エポキシコーティングされたアルミニウム基材であった。コーティングされたエンクロージャの耐スクラッチ特性は、スクラッチ試験機Taber 550/551を使用してISO4586-2に従って判定した。ここで、実質的に平坦な70mm×70mmのNiBコーティングされた試料をスクラッチ試験台に装着して、適用荷重下でスクラッチを作製する。
【0092】
コーティングされたエンクロージャは、ダイヤモンドツール(0.5kgの適用荷重、一定速度)で刻み付けられ、次いで顕微鏡下で観察された。比較のコーティングされたエンクロージャは、エポキシポリマーの粘弾性の性質に起因する可能性が高い、0.5kgの適用荷重下での不十分な耐スクラッチ性を示した。同じ試験条件下で、例示的なENBコーティングされたエンクロージャは、耐スクラッチ性-スクラッチ幅及びスクラッチ硬度-の有意な改善を示した。例えば、比較のコーティングされたエンクロージャは、180~190μmのスクラッチ幅及び0.2~0.5GPaのスクラッチ硬度を示し、一方、例示的なENBコーティングされたエンクロージャは、約65μm~約75μmのスクラッチ幅及び約1.5GPa~約2.5GPaのスクラッチ硬度を示した。試験は、比較のコーティングされたエンクロージャと比較して、例示的なENBコーティングされたエンクロージャを使用すると、スクラッチ幅が約60~70%だけ実質的に改善されたことを示した。更に、スクラッチ硬度は著しく改善された。ここで、例示的なENBコーティングされたエンクロージャのスクラッチ硬度は、比較のコーティングされたエンクロージャよりも最大約12倍大きい、又はそれ以上であった。全体として、結果は、例示的なENBコーティングされたエンクロージャが、従来のエンクロージャと比較して非常に高い耐スクラッチ性を有することを示す。このデータはまた、ENBコーティングが、耐スクラッチ性能によるドライブの拒絶(歩留まり損失)を排除するか、又は少なくとも低減することができることを示す。
【0093】
例えば、比較のコーティングされたエンクロージャと比較して、例示的なENBコーティングされたエンクロージャの長持ちする性能及び表面耐久性を調査するために耐摩耗性も評価した。耐摩耗性は、定格荷重に対するコーティングの摩擦力(摩擦係数、coefficient of friction、CoF)を判定することによって測定される。典型的には、コーティングのCoFが可能な限り低くなることが望ましい。例示的なENBコーティングされたエンクロージャ及び比較のコーティングされたエンクロージャの摩擦係数は、ASTM G133に従って判定され、DUCOM POD4.0を使用して測定された。ここで、NiBでコーティングされた基材の平坦な試料(70mm×20mm)を台に装着する。CoF実験は、調査される試料を、EN52100ボール(直径10mm)の繰り返し往復運動下に配置することを含む。ボールを、1Hz周波数で10mmのスライド距離でコーティングの表面に対して0.5kgの適用荷重で擦る。
図8は、例示的なENBコーティングされたエンクロージャ(実施例1)と、比較のコーティングされたエンクロージャ(比較実施例1)とのCoFの例示的なデータを示す。
【0094】
図8に示すように、比較のコーティングされたエンクロージャは、最大約0.5のより大きな摩擦係数を有していた。視覚的に、比較のコーティングされたエンクロージャのコーティング層は容易に変形し、その表面における非常に高い摩擦につながった。同じ試験条件下で、例示的なENBコーティングされたエンクロージャは、約0.05の著しく低い摩擦係数、及び900秒のスライド時間後に無視できる摩耗率又は視覚的変形を示した。すなわち、ENBコーティングは、いかなる欠陥又は変形もなく、従来のコーティングされたエンクロージャよりも5倍良好なCoFをもたらした。理論に拘束されることを望むものではないが、比較のコーティングされたエンクロージャに対する例示的なENBコーティングされたエンクロージャの改善された摩擦係数は、例えば、例示的なENBコーティングされたエンクロージャのホウ素の潤滑性挙動及び均一なコーティング層に起因すると考えられる。
【0095】
そのような優れた耐摩耗性及びCoF性能は、本明細書に記載のENBコーティングされた物品及びENBプロセスを通して可能になる。全体として、結果は、本明細書に記載の例示的なENBコーティングされたエンクロージャが、従来のエンクロージャと比較して非常に高い耐摩耗性を有することを示す。ENBコーティングは、摩耗歩留まり損失によるドライブの拒絶を排除するか、又は少なくとも低減することができる。
【0096】
オイル汚染は、製造中に生じる別の問題であり、メモリドライブ及び他のデバイスの拒絶につながる。オイル汚染は、従来のエンクロージャがその表面上にシリコン油浸出を露出させる傾向を有する硬化条件によるものであることができる。
【0097】
例えば、液体熱界面材料(liquid thermal interface material、LTIM)-
図2の円形のディスクとして示されている-は、エンクロージャ表面に排出することができる。LTIMは、シリコーン媒体を含有するエラストマータイプの材料から作製することができる。LTIMは、エンクロージャと接触することによって高温スポット構成要素から周囲に熱を搬送するように機能する。LTIMがエンクロージャ上に排出されると、組み立てられたドライブ全体を有するPCBは、100℃で約30分間オーブン内で硬化させることができる。硬化後、エポキシコーティングされたエンクロージャは、可視的なオイル汚染を示す。対照的に、本開示のENBコーティングされたエンクロージャは、可視的なオイル汚染又はマークを示さない。
【0098】
図9Aは、可視的なオイル汚染/浸出(矢印で示される)を示す比較のエンクロージャの画像である。典型的には、そのようなオイルブリードは、オイル汚染マークを除去するためにイソプロパノールでエンクロージャ又はハウジングを洗浄することを必要とする。対照的に、
図9Bの画像によって示されるように、例示的なENBコーティングされたエンクロージャは、可視的なオイル汚染又は浸出を示さなかった。したがって、ENBコーティングは、例えば、イソプロパノール洗浄ステップを排除すること、及びより低い歩留まり損失によって、より高いスループットを促進することができる。
【0099】
表4は、比較のコーティングされたエンクロージャ(エポキシコーティングされたエンクロージャ)に対する本明細書に記載の例示的なENBコーティングエンクロージャの特性の要約を示す。熱伝導率を、ISO22007-2に従って判定し、Hot disk TPS 2500s熱伝導率分析装置を使用して測定した。熱伝導率を測定するために、kapton絶縁TPSセンサを2つの同一のNiBコーティングされた(70mm×70mm)試料の間に配置する。接触角は、ASTM D7334-08に従って判定し、Rame-hartゴニオメーターを使用して測定した。平坦な70×70mmのNi-Bコーティングされた基材をベンチテーブルに装着し、ノズルを使用して、Ni-B表面上に制御された量の5μlの水を排出する。構築ソフトウェアにおける落下画像を使用して、固体表面-液体媒体間の接触角が測定され、考察される。表面粗さは、ISO4287:1997に従って判定し、0.75mNの測定力下で60°/2μmのスタイラスインデンタを使用してMitutoyoSJ410表面粗さプロフィロメーターを使用して測定した。70mm×70mmのNiBコーティングされた基材を造粒台上に配置し、続いて、インデンタを表面上に4.0mmのストローク長でトレースして、平均粗さ値を得る。
【表4】
【0100】
表4のデータは、本明細書に記載のENBコーティングされたエンクロージャの熱的、機械的、及び表面性能を示す。例えば、比較のコーティングされたエンクロージャに対する例示的なENBコーティングされたエンクロージャの熱伝導率は、約20~30%を超えて改善される。ENBコーティング表面の表面粗さは、エポキシコーティング表面とほぼ同様のままであることができるが、表4に示すようにわずかに改善することができる。
【0101】
コーティングの疎水性又は撥水性は、様々な液体媒体に対するコーティング表面の自己浄化挙動を可能にすることができる。ここで、疎水性は、接触角によって測定されるように、約135°に改善された。したがって、コーティング汚染の問題は、従来のコーティングと比較して低減することができ、例示的なコーティングの表面外観は、より無傷のままであることができる。
【0102】
本明細書に記載の実施形態は、概して、例えば、メモリデバイス又は電子デバイス用のハウジング、エンクロージャ、及びパッケージング、並びにそのようなハウジング、エンクロージャ、及びパッケージングを形成するためのプロセスに関する。全体として、本明細書に記載の無電解NiBコーティングは、エンクロージャに使用される従来のコーティングと比較して、より良好な熱性能、耐スクラッチ性及び耐摩耗性、表面仕上げ、及び疎水性を有する。更に、例示的な無電解NiBコーティングされたエンクロージャの表面は、オイルブリードを示さなかった。データは、本明細書に記載のコーティングが、様々な電子デバイス、メモリデバイス、ヒートシンク製品、及び他のデバイス及びSSD、HDD、及びRPG金属エンクロージャなどの製品のエンクロージャ又はハウジングに有用であり得ることを更に示している。
【0103】
本明細書で使用される場合、「組成物」は、組成物の成分及び/又は組成物の2つ以上の成分の反応生成物を含むことができる。
【0104】
以下では、本開示の実施形態を参照する。しかしながら、本開示は、特定の説明された実施形態に限定されないことを理解されたい。その代わりに、以下の特徴及び要素の任意の組み合わせが、異なる実施形態に関連するか否かに関わらず、本開示を実施及び実践すると企図される。更に、本開示の実施形態は、他の可能な解決策に勝る、及び/又は先行技術に勝る利点を達成し得るが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されるか否かは、本開示を限定するものではない。したがって、前述の実施形態、態様、特徴、及び利点は、例解的であるに過ぎず、請求項に明示的に記載されている場合を除いて、添付の特許請求の範囲の要素又は限定と見なされない。同様に、「本開示」への言及は、本明細書に開示される任意の発明の主題の一般化として解釈されるものではなく、請求項に明示的に記載されている場合を除いて、添付の特許請求の範囲の要素又は限定であると見なされるべきではない。
【0105】
本開示の目的で、特に明記しない限り、本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲内のすべての数値は、示された値の「約」又は「およそ」によって修正され、当業者によって予想される実験誤差及び変動を考慮する。簡潔にするために、特定の範囲のみが本明細書に明示的に開示されている。しかしながら、任意の下限からの範囲は任意の上限と組み合わされて、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得るのと同様に、任意の下限からの範囲は任意の他の下限と組み合わされて、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得、同じように、任意の上限からの範囲が任意の他の上限と組み合わされて、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得る。更に、範囲内では、明示的に列挙されていない限り、その終点間のすべての点又は個々の値が含まれる。したがって、すべての点又は個々の値は、任意の他の点又は個々の値又は任意の他の下限又は上限と組み合わされた独自の下限又は上限として機能し、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得る。
【0106】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」又は「an」は、別途示されない限り、又は文脈が別途明確に示していない限り、「少なくとも1つの」を意味するものとする。
【0107】
上記は本開示の実施形態を目的とするが、本開示の他の及び更なる実施形態が、その基本的範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。