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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】植物商品への給水方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 27/06 20060101AFI20230907BHJP
   A47G 7/04 20060101ALI20230907BHJP
   A47F 7/00 20060101ALI20230907BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20230907BHJP
【FI】
A01G27/06
A47G7/04 C
A47F7/00 W
A01G9/00 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022094207
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2023-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598064912
【氏名又は名称】桜井 博
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】桜井 博
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-136038(JP,U)
【文献】国際公開第2016/098414(WO,A1)
【文献】特開2003-052257(JP,A)
【文献】特開平10-084785(JP,A)
【文献】特開平04-030731(JP,A)
【文献】実開平04-127143(JP,U)
【文献】実開平03-043949(JP,U)
【文献】実開昭58-050649(JP,U)
【文献】実公昭39-005830(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A01G 27/00 - 27/06
A47F 7/00
A47G 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口した開口部が線状に延びる貯水部及び、前記貯水部の開口部のうちの長手方向に沿った側から前記開口部とは反対側に向けて延びると共に根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品を載せることが可能な上面を有する載置用板部を備えた台本体と、
繊維素材で形成され、前記載置用板部の上面の上方に面状に配置されると共に、前記貯水部の前記開口部のうちの当該開口部の長手方向に沿った側から前記貯水部内に垂下した長尺の垂下部位を有するマット状部材と、
太陽光を反射する機能と水不透過性とを有し、前記マット状部材の上方に面状に配置されると共に、複数のピンホール状の貫通孔が前記植物商品を載せる位置に設けられたシート状部材とを少なくとも備えた展示販売台が用いられた植物商品への給水方法であって、
前記シート状部材の複数の貫通孔の上に、当該複数の貫通孔のうちの所定の数の貫通孔を覆うように、水の浸透を促進する介在部材を配置し、更に前記介在部材の上方に前記植物商品を載せて、
前記マット状部材を形成する繊維による一次毛管現象で、前記貯水部内の水を、前記貯水部内に垂下した長尺の垂下部位から吸い上げて前記マット状部材の内部に浸透させ、前記マット状部材の内部に浸透した水を、前記シート状部材の貫通孔による二次毛管現象で、前記シート状部材の貫通孔を通して前記植物商品の下方まで更に吸い上げることを特徴とする植物商品への給水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苺や野菜の苗等の根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品を展示販売しつつ給水することが可能な展示販売台を用いて植物商品に給水する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
苺や野菜の苗等の根から水の吸収が可能な生きている植物は、ポットに培養土と一緒に根が入れられる等して、例えば特許文献1に示されるような植物展示台に載せられて、当該植物を主とした植物商品として展示販売されることがある。このような植物商品の植物について枯らしたり萎びたりさせずにその商品としての価値を維持するためには、前記植物商品に対し販売期間中にわたって散水等により給水する必要がある。特に夏季の期間中においては、前記植物商品の植物が枯れたり萎びたりしないように植物商品への給水の頻度を上げる等の対応が必要であり、給水のための作業がより負荷の大きなものになる。
【0003】
この点、特許文献2に示される植物栽培用プランターでは、プランター本体の下方に貯められた貯水から毛管現象を利用して柱状の給水部で上方に吸い上げられた水が、貯水部の上面との間に空気層を介在しつつ配置されたトレーの底部に到達し、トレーの底部を浸透する等してトレー内に充填されたピートモスに供給されることで、トレー内のピートモスに植えられた植物への給水が行われるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-119318号公報
【文献】実用新案登録第3133512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、特許文献2に示される植物栽培用プランターでは、貯水部から毛管現象で吸い上げる給水部が柱状となっていると共に、トレーの底部は水が浸透しても横方向の広がりが制約された多孔性構造となっている。このため、給水部の上方に位置してこの給水部と接続したトレーが水浸性を有していても、水が、トレーの底部に対し横方向では、部分的にしか浸透せず、トレー内のピートモスに植えられた複数の植物のうちの一部には十分に給水されないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、貯水部から毛管現象を利用して広い範囲で且つ個別の対象に向けるかたちでも水を吸い上げることを可能とすることで、根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品が個別に展示されていても、いずれの植物商品にも給水することが可能な展示販売台を用いた植物商品への給水方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の植物商品への給水方法は、上方に開口した開口部が線状に延びる貯水部及び、前記貯水部の開口部のうちの長手方向に沿った側から前記開口部とは反対側に向けて延びると共に根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品を載せることが可能な上面を有する載置用板部を備えた台本体と、繊維素材で形成され、前記載置用板部の上面の上方に面状に配置されると共に、前記貯水部の前記開口部のうちの当該開口部の長手方向に沿った側から前記貯水部内に垂下した長尺の垂下部位を有するマット状部材と、太陽光を反射する機能と水不透過性とを有し、前記マット状部材の上方に面状に配置されると共に、複数のピンホール状の貫通孔が前記植物商品を載せる位置に設けられたシート状部材とを少なくとも備えた展示販売台が用いられた植物商品への給水方法であって、前記シート状部材の複数の貫通孔の上に、当該複数の貫通孔のうちの所定の数の貫通孔を覆うように、水の浸透を促進する介在部材を配置し、更に前記介在部材の上方に前記植物商品を載せて、前記マット状部材を形成する繊維による一次毛管現象で、前記貯水部内の水を、前記貯水部内に垂下した長尺の垂下部位から吸い上げて前記マット状部材の内部に浸透させ、前記マット状部材の内部に浸透した水を、前記シート状部材の貫通孔による二次毛管現象で、前記シート状部材の貫通孔を通して前記植物商品の下方まで更に吸い上げることを特徴としている。
【0008】
ここで、載置用板部の貯水部の開口部のうち長手方向に沿った側とは、貯水部の開口部の長手方向に沿った縁までとなる側のみならず、貯水部の開口部の長手方向に沿った縁から開口部の上方までせり出して位置する側も含まれる。台本体は、下方に展示販売台を移動や向きを変えさせるための車輪が取り付けられていてもよい。台本体の貯水部内には、グラスウールやロックウールやスポンジ等の保水性を有する部材が配置され、この保水性を有する部材が保水することで貯水部内の水の流動性を抑制するようにしても良い。台本体の載置用板部の上面は、貯水部の開口部側から貯水部の開口部とは反対側に向けて上方に傾斜していても良い。台本体とマット状部材との間には、水不透過性を有する第2のシート状部材を防水用に介在させてもよい。
【0009】
このような構成の展示販売台を用いることによって、台本体の貯水部から台本体の載置台の上方に配置されたマット状部材の長尺の垂下部位に吸い上げられた水は、マット状部材内を貯水部の開口部側から開口部側とは反対側に向けて全体的に浸透して行き、このようにマット状部材内において載置台の上方で面状に行き渡った水は、マット状部材の上方に面状に配置されたシート状部材の貫通孔を通って、根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品に対し、それぞれの植物商品の下方にまで送られて、植物の根から吸収されるかたちで植物商品への給水が行われる。
【0010】
前記シート状部材の貫通孔と前記植物との間に水の浸透を促進する介在部材が配置されていることにより、マット状部材からシート状部材の貫通孔を通るときに、貫通孔の上方に位置する介在部材が水の貫通孔の通過を促進する。
【0011】
なお、介在部材は、例えばパルプ等の繊維素材で形成されている。更に、介在部材は、上方に向けて突出した突出部を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上に述べたように、請求項1に係る発明によれば、マット状部材を構成する繊維による毛管現象で、貯水部内に垂下した長尺の垂下部位から貯水部内の水を吸い上げてマット状部材の内部全体わたって浸透させた後、貫通孔による二次毛管現象により、マット状部材の上方に配置されたシート状部材の貫通孔を通って、根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品の下方にまで送ることで、植物の根から吸収されるかたちで植物商品への給水が行われる。このように、台本体の載置台の上方に面状に配置されたマット状部材の内部において、水がその全体にわたって浸透した状態となる。このため、マット状部材の上方に、複数の貫通孔を有するシート状部材を面状に配置し、シート状部材のうちのいずれの貫通孔の上に、個別に植物商品を載置したとしても、貫通孔による毛管現象も生ずることで、植物の根から水が供給されるかたちで植物商品に水が供給される。よって、展示販売する植物商品に対して頻繁に散水等による給水を行う必要性がなくなり、給水労力の低減を図ることが可能になる。
【0013】
そして、請求項1に係る発明によれば、マット状部材からシート状部材の貫通孔を水が通るにあたり、貫通孔の上方に位置する介在部材が水の貫通孔の通過を促進するので、より効率よく植物商品に対する給水を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の展示販売台に用いることが可能な台本体の一例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の展示販売台に用いることが可能なマット状部材の一例を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の展示販売台に用いることが可能なシート状部材の一例を示す斜視図である。
図4図4は、台本体とマット状部材との間に介在されることのある防水用シート状部材の一例を示す斜視図である。
図5図5は、シート状部材に設けられた通孔の配置の一例を示した部分図である。
図6図6は、シート状部材と根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品との間に配置される、水の浸透を促進する介在部材の一例を示した説明図であり、(a)が前記介在部材の側面図、(b)が前記介在部材の平面図である。
図7図7は、本発明の展示販売台に根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品を載置した状態の一例を示す斜視図である。
図8図8は、本発明の展示販売台に根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品を載置した状態の部分的な断面図である。
図9図9は、貯水部からマット状部材に浸透した後、シート状部材の通孔を通った水が、介在部材を経て、根から水の吸収が可能な生きている植物商品の下方に至り、更には植物の根から吸収される経路を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1から図9で、本発明の展示販売台1について、実施形態の一例が示されている。展示販売台1は、例えば野外乃至屋外の販売所等にて、図7図8に示されるような、例えばイチゴの苗等の根から水の吸収が可能な生きている植物(以下、単に植物と略する。)9を主とした植物商品Pを展示し販売するためのものである。なお、植物商品Pは、ポット7に植物9の根9aを収容し、この植物9の根9aを覆うかたちで培養土8を入れたものの全体を示しているが、この植物商品Pについては後の方で説明する。
【0017】
展示販売台1は、この実施形態の一例では、台本体2と、マット状部材3と、シート状部材4と、第2のシート状部材5と、介在部材6とを少なくとも有して構成されている。
【0018】
台本体2は、図1図8及び図9に示されるように、上方に開口した開口部211が線状に延びる貯水部21を有する。貯水部21は、この実施形態では、横長の長方形状の側板21a、21aと、側板21a、21aの下方を連接する底板21bとで略U字状の枠体を構成すると共に、当該枠体の側板21a、21aの長手方向の両側が立板21cで閉塞された構成となっている。
【0019】
貯水部21の貯水量は、上記植物商品Pが複数(図7では、42個が例示されている。)載置された場合に、これらの植物商品Pが、春季では4日分、夏季では2日分の、水を吸い上げる量を想定している。貯水部21には、例えば一端が水道の蛇口に接続されたホースや、水タンクからポンプで汲み取られた水が流れるホースなどの給水手段(図示せず)により、給水が行なわれる。
【0020】
貯水部21内には、図8図9に示されるように、グラスウールやロックウールやスポンジ等の保水性を有する部材(以下、保水部材)22が収容されるようにしても良い。保水部材22は、本発明に必須のものではないが、貯水部21内に保水された状態で収容されることにより、展示販売台1を動かしても、水が貯水部21の開口部211から溢れ出ることが抑制される。なお、図8図9では、マット状部材3の下記する垂下部位32で下方が囲まれてなるU字状域には、保水部材22が収容されていない図となっている。このように、マット状部材3の下記する垂下部位32で下方が囲まれてなるU字状域には、保水部材22がないことにより、貯水部21内の貯水量ないし水位を確認することが容易となる。もっとも、貯水部21の前記U字状域にも保水部材22が収容されるようにすることは可能である。
【0021】
台本体2は、図1図8及び図9に示されるように、この実施形態の一例では、植物商品Pを載せることが可能な上面23aを有する載置用板部23、23を2つ有している。2つの載置用板部23、23のうちの一方は、貯水部21の開口部211のうちの長手方向に沿った側の一方から開口部211とは反対側に向けて延びた構成となっており、2つの載置用板部23、23のうちの他方は、貯水部21の開口部211のうちの長手方向に沿った側の他方から前記開口部211とは反対側に向けて延びた構成となっている。すなわち、一方の載置用板部23と他方の載置用板部23とは、貯水部21を基準として対称となる方向に延びた構成となっている。
【0022】
各載置用板部23、23は、この実施形態の一例では、貯水部21の開口部211側から開口部211とは反対側に向けて、上方に傾斜している。傾斜角度は、載置用板部23に植物商品Pを載置した際に、植物商品Pがこの傾斜により下方に滑って移動する等の不具合を防止することが可能な角度(例えば1度から2度)とする必要がある。このように載置用板部23に上方への傾斜を付けることにより、マット状部材3内を開口部211側から開口部211とは反対側に向けて水が浸透しても、マット状部材3の開口部211とは反対側端から水が漏れ出すのを抑制することが可能である。もっとも、このようなマット状部材3の開口部211側とは反対側端から水が漏れ出すことを他の方法等により回避可能であれば、載置用板部23、23は、図示しないが、貯水部21の開口部211側から開口部211とは反対側に向けて水平若しくは略水平に延びた(傾斜の略ない)構成としても良い。
【0023】
載置用板部23、23は、この実施形態では、貯水部21の開口部211側では、端が貯水部21の開口部211の長手方向に沿った縁よりも当該開口部211の内側にせり出した状態となっている。このように 載置用板部23、23をせり出させたことで、下記するマット状部材3の垂下部位32を、貯水部21の水を有する範囲内で、且つ貯水部21の側板21aの内面に触れないように、確実に垂れ下がらせることができる。もっとも、載置用板部23、23は、図示しないが、端が貯水部21の開口部211の長手方向に沿った縁までとすることを排除しない。すなわち、載置用板部23、23の貯水部21の開口部211のうち長手方向に沿った側とは、貯水部21の開口部211の長手方向に沿った縁よりも開口部211の幅方向の内側(開口部211の上方)までせり出して位置する側と、貯水部の開口部211の長手方向に沿った縁までとなる側との双方を示す。一方で、載置用板部23、23の貯水部21の開口部211上へのせり出しを多くすると、貯水部21内の水位を確認することが難しくなるので、載置用板部23、23のせり出しは、貯水部21内の水位を確認することができる寸法にする必要がある。
【0024】
台本体2は、載置用板部23、23の下方に、載置用板部23、23を地面や床面から一定の高さに位置させるための支持構造体24を有する。支持構造体24は、この実施形態の一例では、載置用板部23、23の下面から地面・床面側に延びる立柱部241(図1図7において4つの立柱部241の1つが隠れて図示されていない。)と、一方の載置用板部23の立柱部241と他方の載置用板部23の立柱部241との間において、前記両立設部241、241の下端が当接するかたちで架設された第1の支柱部242、242と、一方の第1の支柱部242と、他方の第1の支柱部242との間に架設された第2の支柱部243、243とを有して構成されている。そして、この実施形態の一例では、第1の支柱部242のうちの立柱部241の軸方向の下側となる部位に、車輪244を有する。車輪244は、この実施形態では、図示しない軸部により当該軸部を軸心として回転自在に第1の支柱部242に取り付けられている。これにより、展示販売台1を任意に移動させることができ、また展示販売台1の向きを自由に変更させることができる。
【0025】
貯水部21や載置用板部23の素材は、特に限定されず、例えば木や鉄等であっても良いが、そのような水が浸透しやすい素材或いは水により腐食するおそれのある素材の場合に、下記するように図5の防水用シート状部材5が必須となる。
【0026】
マット状部材3は、毛布、その他の布等の、合成繊維又は天然繊維でなる繊維素材で形成されて可撓性を有するものであって、下記するシート状部材4よりも肉厚の面状をなし、繊維の毛管現象を利用することが可能なものが用いられる。更には、マット状部材3は、保水性を有しつつ、保水した水により腐らないものであることが望まれる。
【0027】
マット状部材3は、設置時においては、台本体2の双方の載置用板部23、23の上面23aの上方に面状に接しつつ配置される主要な部位31と、貯水部21内に当該貯水部21の開口部211の長手方向に沿った側から垂下した垂下部位32とを有して構成されている。もっとも、マット状部材3は、全体が平な面に置かれた場合には、垂下部位32も含めて同一平面状となることができる。マット状部材3の少なくとも垂下部位32は、貯水部21内に収まるよう、貯水部21の一方の立板21cの内面から他方の立板21cの内面までの寸法を有する長尺のものとなっている。また、マット状部材3は、一枚のものとして図示されているが、図示された形態に限定されない。すなわち、図示しないが、2枚のマット状部材3、3とし、それぞれ主要な部位31及び垂下部位32を1つずつ有するJ字状をなし、各主要な部位31が別の載置用板部23の上面23aの上方に面状に接しつつ、垂下部位32が別の方向から貯水部21内に垂下するようにしても良い。
【0028】
シート状部材4は、太陽光を反射する機能と水不透過性とを有するもので、可撓性を有する薄肉の面状をなし、例えば塩化ビニル樹脂等の合成樹脂材の上側の表面をアルミ箔で覆ったり、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂材の上側の表面に遮熱塗料を施したりしたものが用いられる。拡げた状態のシート状部材4を上から見た場合の面積は、垂下部位32が貯水部21内に垂下した状態で載置用板部23に配置されたマット状部材3を上から見た場合の面積よりも大きくなっており、シート状部材4は上記の状態のマット状部材3の全体を覆うことができる。これにより、シート状部材4は、マット状部材3の上方に面状に配置されることで、マット状部材3を乾燥から保護することを可能にしている。
【0029】
シート状部材4は、図5図9に示されるように、マット状部材3側からシート状部材4の上面(特に、植物商品Pを載置する部位)に向けて水を通すための貫通孔41が複数、設けられている。各貫通孔41の内径寸法は、水を通すことを可能としつつ植物商品Pの植物9の根9aが侵入して当該貫通孔41を塞ぐのを防止することができるように、この実施形態では、0.5mmから1mmの、ピンホール等と呼ばれるような大きさとなっている。
【0030】
貫通孔41は、不規則に配置されても良いが、この実施形態では、図5の破線でなる仮の枠として示されるように、例えば、一方向に4cmずつ等間隔に配置し、且つ前記方向と直交する方向に4cmずつ等間隔に配置して、4つの貫通孔41の位置をそれぞれ角の頂点の位置とした正方形状となるようにし、且つ前記4つの貫通孔41の中心にも貫通孔41を配置する通孔群を構成し、この通孔群をシート状部材4の長手方向と短手方向とに複数連続させるようにしている。これにより、1の植物商品Pにマット状部材3から貫通孔41を介して水を供給するにあたり、3つ以上の貫通孔41が必要となると思料するところ、図5の植物商品Pの載置範囲の二点鎖線の枠で示すように、ある程度、植物商品Pをランダムに複数配置しても、1の植物商品Pの下方に3つ以上の貫通孔41を位置させることが可能となる。
【0031】
そして、この実施形態では、台本体2の貯水部21及び載置用板部23のいずれもが、木製等の、水が浸透する素材、或いは水で腐食しうる素材であることから、台本体2とマット状部材3との間には、図4に示されるように、第2のシート状部材として、防水用シート状部材5が配置されている。
【0032】
防水用シート状部材5は、台本体2の構造、形状に対応した形状となっている。この実施形態では、防水用シート状部材5は、貯水部21の長手方向に延びる2つの内面を保護するための面状部位51a、貯水部21の短手方向に延びる2つの内面を保護するための面状部位51b及び貯水部21の底面を保護するための面状部位51cからなる貯水部保護部51と、載置用板部23の上面を保護するための載置用板部保護部52とを有して構成されている。なお、台本体2の貯水部21及び載置用板部23が水の浸透性を有さず、且つ、水で腐食しない素材で形成され、又は被覆部位を有する場合には、防水用シート状部材5はなくてもかまわない。
【0033】
介在部材6は、毛管現象による水の吸い上げを促進させるためのもので、例えばパルプ等の繊維状のものを素材としている。介在部材6は、図6に示されるように、例えば円盤状の基板61と、基板61の中心から例えば円錐状に突出した突起部62とで成る形状(コーン状形状)をしている。基板61の直径は、例えば5cmであり、マット状部材3の貫通孔41の正方形の四角を構成する貫通孔41間の間隔よりも大きくなるように設定されている。基板61の厚みは、例えば2mmから3mmの相対的に薄肉のものとなっている。突起部62の基板61の上面からの突出寸法は、例えば20mmとなっている。
【0034】
そして、介在部材6は、基板61の下面から突起部62の上方に向けて切り欠き63が形成されている。このように、介在部材6に切り欠き63を形成したことにより、植物商品Pの下に介在部材6を配置したときに、空気が通孔71からポット7内に入り、ポット7の培養土8内に延びた植物9の根9aに空気が供給されるので、植物9の根腐れを防止することが可能になっている。
【0035】
なお、シート状部材4の通孔41の上に置かれた状態の介在部材6を、上方から手や器具や植物商品P自身で押してから、介在部材6の上に植物商品Pを載せるようにすることが好適である。このように、介在部材6が上方から押されたときに、介在部材6が通孔41から水を吸い上げるので、より介在部材6の水の浸透を促進する機能を高めることが可能である。
【0036】
植物商品Pは、例えば野外乃至屋外の販売所等で展示販売されるものであり、個別に販売することが可能なようにされたものである。すなわち、植物商品Pは、図8図9に示されるように、例えばプラスチック、陶器等の上方に開口し、かつ底部に小さな通孔71が設けられたポット7に、植物9の当該ポット7内に収められた根9aの周囲を覆うことができるように、培養土8を適宜に入れた構成となっている。培養土8は、植物9に対し上方からジョウロで散水する場合等のように、上方から供水するのに適した培養土(水捌けや通気性の良い培養土)よりも密度の高いものが用いられる。これにより、ポット7の通孔71からポット7内に入った水が、培養土8を上方に浸透して、植物9の根9aから吸収されるような作用を生じさせることができる。一方で、通気性については、前記したように、介在部材6の切り欠き63により対応している。
【0037】
展示販売台1を上記してきた構造とすることで、展示販売台1は、以下に示すような機能を有し、これに伴い、植物商品Pへの給水(潅水)のための装置を兼ね備えつつ当該植物商品Pの展示使用が可能となっている。すなわち、マット状部材3を構成する繊維による一次毛管現象で、マット状部材3の垂下部位32から貯水部21内の水を吸い上げて、マット状部材3の主要な部位31内を貯水部21の開口部211側から開口部211側とは反対側に向けて全体的に浸透させて行き、このようにマット状部材3の主要な部位31内に行き渡った水を、シート状部材4の貫通孔41による二次毛管現象で、シート状部材4の貫通孔41を通して、植物商品Pの下方にまで送る。そして、植物商品Pのポット7の通孔71とシート状部材4の所定の数の貫通孔41との間に水の浸透を促す介在部材6が配置され、且つ、ポット7内の培養土8も上方からの給水に対応した培養土よりも密度の高いものとなっているので、水は、介在部材6を経て、植物商品Pのポット7の通孔71から培養土8内を浸透して、植物9のポット7内の根9aから吸収される。
【符号の説明】
【0038】
1 展示販売台
2 台本体
21 貯水部
211 開口部
23 載置用板部
23a 上面
3 マット状部材
4 シート状部材
41 通孔
6 介在部材
9 根から水の吸収が可能な生きている植物
P 植物商品
【要約】
【課題】本発明は、貯水部から毛管現象を利用して広い範囲で且つ個別の対象に向けて水を吸い上げ可能として、根から水の吸収が可能な生きている植物を主とした植物商品が個別に展示されていても、各植物商品に給水可能な展示販売台を提供することを目的とする。
【解決手段】展示販売台1を、貯水部21及び載置用板部23を備えた台本体2と、繊維素材で形成され載置用板部23の上面23aの上方に配置されると共に、貯水部21内に垂下した垂下部位32を有するマット状部材3と、太陽光を反射する機能と水不透過性とを有しマット状部材3の上方に配置されると共に貫通孔41が設けられたシート状部材4とを備え、台本体2の貯水部21からマット状部材3を構成する繊維による一次毛管現象で吸い上げられてマット状部材3内に浸透した水が、シート状部材4の貫通孔による二次毛管現象で貫通孔を通って植物商品Pの下方まで更に吸い上げられる構成とする。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9