(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】接合性能を改善する金属表面コーティング及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
C07F 9/38 20060101AFI20230907BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20230907BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230907BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230907BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20230907BHJP
C09K 3/18 20060101ALN20230907BHJP
【FI】
C07F9/38 C CSP
C09D5/08
B32B7/12
B32B15/08 G
C23C26/00 A
C09K3/18 104
(21)【出願番号】P 2022516696
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 US2020041042
(87)【国際公開番号】W WO2021055076
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-14
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】522101782
【氏名又は名称】エンパ、スイス・フェデラル・ラボラトリーズ・フォー・マテリアルズ・サイセンス・アンド・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】EMPA, Swiss Federal Laboratories for Materials Science and Technology
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】バッシ,コッラード
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー,ミシェル エーディト
(72)【発明者】
【氏名】ガーン,サビャサチ
(72)【発明者】
【氏名】シュムツ,パトリック
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-088260(JP,A)
【文献】特開平06-071805(JP,A)
【文献】特開2001-014648(JP,A)
【文献】特表2007-514007(JP,A)
【文献】国際公開第2013/182328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
であって、式中:
n及びyがそれぞれ独立して1~10の整数であり、
Lは-S-、-SO
2-、-O-、-NR-または-N-(CH
2)
p-OP(OH)
2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10であり、
R
1及びR
3は、それぞれ独立して、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択され、さらに
R
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキル、及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択され、式中、R
4は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択される、前記化合物。
【請求項2】
n及びyがそれぞれ1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Lが-NHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R
1及びR
3は、それぞれHであり、かつR
2がOHである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、
【化2】
である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
金属基材表面をコーティングする方法であって、式Iの化合物:
【化4】
を含むコーティング組成物を金属基材表面に塗布することを含み、式中:
n及びyがそれぞれ独立して1~10の整数であり、
Lは-S-、-SO
2-、-O-、-NR-または-N-(CH
2)
p-OP(OH)
2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10であり、
R
1及びR
3は、それぞれ独立して、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択され、さらに
R
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキル、及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択され、式中、R
4は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択される、前記方法。
【請求項7】
n及びyがそれぞれ1である、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
Lが-NHである、請求項
6または
7に記載の方法。
【請求項9】
R
1及びR
3は、それぞれHであり、さらにR
2はOHである、請求項
6~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、
【化5】
である、請求項
6~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記塗布が、ローラーコーティング、スプレーコーティングまたはディップコーティングにより実施される、請求項
6~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング組成物を硬化させて、コーティングされた金属基材を提供することをさらに含む、請求項
6~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
コーティングされた金属基材であって、
少なくとも第1の表面を含む金属基材と、
前記第1の表面に接着されたコーティング層とを含み、前記コーティング層は、式Iの化合物:
【化8】
を含み、式中:
n及びyがそれぞれ独立して1~10の整数であり、
Lは-S-、-SO
2-、-O-、-NR-または-N-(CH
2)
p-OP(OH)
2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10であり、
R
1及びR
3は、それぞれ独立して、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択され、さらに
R
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキル、及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択され、式中、R
4は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択される、前記コーティングされた金属基材。
【請求項14】
前記金属基材がアルミニウム合金基材を含む、請求項
13に記載のコーティングされた金属基材。
【請求項15】
前記アルミニウム合金基材が、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、請求項
14に記載のコーティングされた金属基材。
【請求項16】
請求項
13~
15のいずれか1項に記載のコーティングされた金属基材と、前記コーティングされた金属基材に接着された第2の金属基材とを含む、接合金属構造体。
【請求項17】
前記第2の金属基材が、前記コーティングされた金属基材の第1の表面に接着されている、請求項
16に記載の接合金属構造体。
【請求項18】
前記接合金属構造体が、輸送用構造部品、輸送用美的部品、電子デバイスハウジング、建築用構造部品、建築用美的部品、消費者用製品容器または消費者用製品である、請求項
16または
17に記載の接合金属構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月18日に出願された米国仮特許出願第62/901,966号に対する優先権を主張するものであり、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、表面コーティングの分野、より具体的には金属表面コーティングに関する。本開示は、組成物を表面コーティングする際に使用するための化合物及び表面コーティング組成物を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム合金などの金属は、金属を腐食させる可能性のある環境でよく使用される。金属は、自動車、電子機器、工業及び輸送用の製造工程において、類似の金属及び非類似の金属を含む他の金属と接合される(例えば、一緒に接合される)ことがしばしばある。金属を類似の金属及び/または非類似の金属に接合させる場合、腐食(ガルバニック腐食など)を引き起こし、接合が破損する場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の包含される実施形態は、この概要ではなく、以下の特許請求の範囲によって定義される。この概要は、本開示の様々な態様の高レベルの概説であり、以下の詳細な説明の項でさらに説明される概念の一部を導入する。この概要は、特許請求された主題の主要なまたは必須の特徴を特定することは意図されておらず、特許請求された主題の範囲を決定するために孤立して使用されることも意図されていない。主題は、本開示の明細書全体、あらゆる図面、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
本明細書では、組成物をコーティングする際に使用する化合物及びその使用方法を記載する。本明細書に記載される化合物には、式Iの化合物:
【化1】
が含まれ、
式中、n及びyはそれぞれ独立して1~10の整数であり、Lは-S-、-SO
2-、-O-、-NR-または-N-(CH
2)
p-OP(OH)
2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキル及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択されて、式中、R
4は、H、置換アルキルまたは無置換アルキルである。任意で、n及びyはそれぞれ1であり、及び/またはLはNHである。任意で、R
1及びR
3は、それぞれHであり、さらにR
2は、OHである。いくつかの実施例において、この化合物は、
【化2】
である。
【0006】
場合によって、本明細書に記載される化合物には、式IIの化合物:
【化3】
が含まれ、
nは0~10の整数であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4と置換アルキルまたは無置換アルキルと置換フェニルまたは無置換フェニルとから選択され、式中、R
4は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択される。任意で、式IIにおいて、nが1である場合、R
1、R
2及びR
3は、同時にエチルではない。
【0007】
また、本明細書では、金属基材表面をコーティングする方法についても記載する。本明細書に記載の金属基材表面をコーティングする方法には、式Iの化合物:
【化4】
を含む組成物を金属基材表面に塗布することが含まれ、
式中、n及びyはそれぞれ独立して1~10の整数であり、Lは-S-、-SO
2-、-O-、-NR-または-N-(CH
2)
p-OP(OH)
2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキル及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択されて、式中、R
4は、H、置換アルキルまたは無置換アルキルである。任意で、n及びyはそれぞれ1であり、及び/またはLはNHである。任意で、R
1及びR
3は、それぞれHであり、さらにR
2は、OHである。いくつかの実施例において、この化合物は、
【化5】
である。
【0008】
場合によって、本明細書に記載の金属基材表面をコーティングする方法には、式IIの化合物:
【化6】
を含む組成物を金属基材表面に塗布することが含まれ、
式中、nは0~10の整数であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4と置換アルキルまたは無置換アルキルと置換フェニルまたは無置換フェニルとから選択され、式中、R
4は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択される。任意で、nは1であり、及び/またはR
1、R
2及びR
3が、それぞれ置換アルキルまたは無置換アルキル(エチルなど)である。いくつかの実施例において、化合物は、
【化7】
である。
【0009】
塗布は、任意の好適な方法によって実施され得て、この方法にはローラーコーティング、スプレーコーティングまたはディップコーティングによるものが含まれる。この方法は、コーティング組成物を硬化させて、コーティングされた金属基材を提供することをさらに含む。
【0010】
本明細書では、さらにコーティングされた金属基材についても記載する。本明細書に記載のコーティングされた金属基材は、少なくとも第1の表面を含む金属基材と、その第1の表面に接着されたコーティング層とを含む。場合によって、このコーティング層は、式Iの化合物:
【化8】
を含み、
式中、n及びyはそれぞれ独立して1~10の整数であり、Lは-S-、-SO
2-、-O-、-NR-または-N-(CH
2)
p-OP(OH)
2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキル及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択されて、式中、R
4は、H、置換アルキルまたは無置換アルキルである。場合によって、このコーティング層は、式IIの化合物:
【化9】
を含み、
式中、nは0~10の整数であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキルと、置換フェニルまたは無置換フェニルとから選択され、式中、R
4は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択される。
【0011】
金属基材は、アルミニウム合金基材を含むことができる。例えば、金属基材は、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含むことができる。
【0012】
また、本明細書では、接合金属構造体も記載する。接合金属構造体は、上述の通りコーティングされた金属基材と、このコーティングされた金属基材に接着された第2の金属基材とを含むことができる。第2の金属基材は、コーティングされた金属基材の第1の表面(例えば、コーティング層が接着されているコーティングされた金属基材の表面)に取り付けることができる。接合金属構造体は、輸送用構造部品、輸送用美的部品、電子デバイスハウジング、建築用構造部品、建築用美的部品、消費者用製品容器(缶もしくはびんなど)、消費者用製品またはその他の部品であり得る。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、本発明の非限定的実施例の以下の詳細の説明と図面とから、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本明細書に記載のコーティング組成物で任意にコーティングされた接合構造体の接合耐久性の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、金属基材をコーティングするためのコーティング組成物を記載する。このコーティング組成物には、少なくとも1つのリン含有部分及び少なくとも1つのシリコン含有部分を有する化合物が含まれる。本明細書に記載のコーティング組成物は、類似の金属または非類似の金属を含む他の金属と一緒に接合された金属の接合耐久性を改善する。
【0016】
いくつかの非限定的な実施例において、コーティング組成物は、金属の表面を改変し得る。金属の表面にコーティング組成物を塗布することにより、耐食性の改善及び/または表面の接着能力の向上のように、金属表面を改変し得る。基材として使用される金属及びコーティング組成物に使用される化合物に基づいて、表面をより疎水性またはより親水性になるようにも改変し得る。いくつかの非限定的な実施例において、リン含有部分(例えば、官能化ホスホン酸)を、例えば、アルミニウム合金上にコーティングした際に、腐食防止及び接着強化を同時に行うために使用し得る。場合によって、ホスホン酸がアルミニウム合金と反応し、アルミニウム合金の表面に結合することで、耐食性が改善し得る。いくつかの態様において、リン含有部分を有する化合物を含むコーティング組成物は、水性媒体中の金属の溶解度を低下させることができ、そして加水分解のための活性化エネルギーを増大させることができる。
【0017】
さらに、コーティング組成物の化合物にシリコン含有部分を組み込むことにより、金属表面上に酸化ケイ素ネットワークを提供し得る。金属(例えば、アルミニウム合金)表面上に形成されたこのような酸化ケイ素ネットワークは、疎水性表面をさらに提供することができ、そこにおいて金属を水から隔離することが可能であるため、湿気への曝露による腐食に対する金属の感受性をさらに制限する。さらに、酸化ケイ素ネットワーク上に配置したヒドロキシ基は、接着剤と反応して、有機層(例えば、エポキシ、接着剤、美的コーティング、ラミネートフィルム、任意の好適な有機表面処理、またはそれらの任意の組み合わせ)への接着性能を改善し得る。本明細書に記載のリン含有分子及びシリコン含有分子をコーティング組成物として使用することにより、他の金属に接合した金属の耐食性及び接合耐久性を改善し得る。
【0018】
定義及び説明:
本明細書で使用される「発明(invention)」、「本発明(the invention)」、「本発明(this invention)」及び「本発明(the present invention)」という用語は、本特許出願の主題の全て及び以下の特許請求の範囲を広く指すことを意図している。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載の主題を限定する、または以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定しないことが理解されるべきである。
【0019】
本明細書において、「5xxx」及び「シリーズ」などの、AA番号及び他の関連する記号によって識別される合金に対する言及がなされる。アルミニウム及びその合金の命名及び特定において最も一般的に使用されている番号指定システムの理解のため、“International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys”または“Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot”(いずれもアルミニウム協会によって発行されている)を参照されたい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」及び「the」の意味には、文脈が別段明らかに示さない限り、単数及び複数の言及が含まれる。
【0021】
本明細書で使用される場合、プレートは一般に、約15mmを超える厚みを有する。例えば、プレートは、約15mmを超える、約20mmを超える、約25mmを超える、約30mmを超える、約35mmを超える、約40mmを超える、約45mmを超える、約50mmを超える、または約100mmを超える厚みを有するアルミニウム合金製造物を指し得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、シェット(シートプレートとも称される)は概して、約4mm~約15mmの厚さを有する。例えば、シェットは、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmの厚みを有し得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、シートは概して、約4mm未満の厚みを有するアルミニウム合金製品を指す。例えば、シートは、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、約0.3mm未満、または約0.1mm未満の厚みを有し得る。
【0024】
本出願では、合金の焼戻しまたは調質への言及がなされてもよい。最も一般に使用される合金焼戻しの説明の理解については、「American National Standards (ANSI) H35 on Alloy and Temper Designation Systems.」を参照のこと。F調質または質別は、製作されたままのアルミニウム合金を指す。O調質または質別は、アニール後のアルミニウム合金を指す。本明細書ではH焼戻しとも呼ばれるHxx調質または焼戻しは、熱処理(例えば、焼なまし)の有無にかかわらず、冷間圧延後のアルミニウム合金を指す。好適なH焼戻しは、Hxxx焼戻しバリエーション(例えば、H111)と共にHX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、またはHX9焼戻しを含み、これは、焼戻しの程度がHxx焼戻しに近い場合に、特定の合金焼戻しに使用される。T1調質または質別は、熱間加工から冷却され、自然時効された(例えば室温で)アルミニウム合金を指す。T2調質または質別は、熱間加工から冷却され、冷間加工され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T3調質または質別は、溶体化熱処理され、冷間加工され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T4調質または質別は、溶体化熱処理され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T5調質または焼戻しは、熱間加工から冷却され、(高温で)人工時効処理されたアルミニウム合金を指す。T6調質または焼戻しは、溶体化熱処理され、焼入れされ、人工時効処理されたアルミニウム合金を指す。T61調質または焼戻しは、溶体化熱処理され、焼入れされ、一定期間自然時効処理され、次に、人工時効処理されたアルミニウム合金を指す。T7調質または焼戻しは、溶体化熱処理され、人工過時効処理されたアルミニウム合金を指す。T8x調質または焼戻し(例えば、T8)は、溶体化熱処理され、冷間加工され、人工時効処理されたアルミニウム合金を指す。T9x調質または焼戻しは、溶体化熱処理され、人工時効処理され、冷間加工されたアルミニウム合金を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「鋳造金属製造物」、「鋳造製造物」、「鋳造アルミニウム合金製造物」などの用語は、互換可能であり、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機、ブロック鋳造機、または他の任意の連続鋳造機の使用によるものを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または他の任意の鋳造法によって製造された製造物を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃の温度、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃を含み得る。
【0027】
本明細書に開示される全ての範囲は、そこに含まれるあらゆる副次的範囲を包含するものと理解されたい。例えば、記述した範囲「1~10」は、最小値1と最大値10の間の(かつ包含的な)ありとあらゆる部分範囲を含むと考えられるべきであり、すなわち、全ての部分範囲は、1以上の最小値、例えば、1~6.1から始まり、10以下の最大値、例えば、5.5~10で終わる。
【0028】
コーティング組成物
本明細書では、アルミニウム合金などの金属基材をコーティングする際に使用するコーティング組成物を記載する。本明細書に記載のコーティング組成物は、金属基材に塗布することで、コーティングされた金属基材を形成し得る。コーティング組成物は、水系担体または溶媒系担体などの担体を含む。コーティング組成物は、少なくとも1つのリン含有部分及び少なくとも1つのシリコン含有部分を含み得るコーティング化合物も含む。リン含有部分(例えば、ホスホネートまたはホスホン酸の部分)は、金属と反応して、耐食性を改善し得る。例えば、このリン含有部分はアルミニウムと反応し得る。シリコン含有部分は、疎水性である傾向がある金属表面(例えば、アルミニウム表面)上に酸化ケイ素ネットワークを形成し得る。したがって、コーティング化合物は、金属表面をより疎水性にし得る。さらに、シリコン含有部分及び/またはリン含有部分は、接着剤と反応して接着性能を改善し得るヒドロキシル基を含むことができる。任意に、本明細書に記載のコーティング化合物は、少なくとも1つのアミン含有部分も含み得る。アミン含有部分は、エポキシ系接着剤などの接着剤への接合性能を向上させることができる。
【0029】
本明細書に記載されているコーティング化合物の分類は、式I:
【化10】
によって表される。
【0030】
式Iにおいて、n及びyはそれぞれ独立して1~10の整数である。例えば、n及び/またはyは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり得る。いくつかの実施例において、n及びyはそれぞれ1である。
【0031】
さらに、式Iにおいて、Lは-S-、-SO2-、-O-、-NR-または-N-(CH2)p-OP(OH)2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10である。いくつかの実施例において、Lは-NHである。
【0032】
さらに、式Iにおいて、R1及びR3は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択される。例えば、R1及び/またはR3は、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、またはネオペンチルであり得る。いくつかの実施例において、R1及びR3は、それぞれHである。
【0033】
さらに式Iにおいて、R2は、OR4、置換アルキルまたは無置換アルキル、及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択され、式中、R4は、H、置換アルキルまたは無置換アルキルである。例えば、R2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、フェニル、ベンジルまたはベンゾイルであり得る。
【0034】
式Iの実施例には、次の化合物:
【化11】
が含まれる。
【0035】
化合物1
本明細書に記載されているコーティング化合物の分類は、式II:
【化12】
によって表される。
【0036】
式IIにおいて、nは、0~10の整数である。例えば、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり得る。いくつかの実施例において、nは1である。
【0037】
さらに、式IIにおいて、R1及びR3は、それぞれ独立して、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択される。例えば、R1及び/またはR3は、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、またはネオペンチルであり得る。任意に、R1及びR3は、それぞれエチルである。
【0038】
さらに式IIにおいて、R2は、OR4、置換アルキルまたは無置換アルキル、及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択され、式中、R4は、H、置換アルキルまたは無置換アルキルから選択される。例えば、R2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、フェニル、ベンジルまたはベンゾイルであり得る。
【0039】
式IIの実施例には、次の化合物:
【化13】
が含まれる。
【0040】
化合物2
任意で、式IIにおいて、nが1である場合、R1、R2及びR3は、同時にエチルではない。言い換えれば、いくつかの実施例において、式IIは、化合物2ではない。
【0041】
本明細書で使用されるアルキルという用語は、直鎖及び分岐鎖の一価置換基を含む。実施例には、メチル、エチル、イソブチルなどが含まれる。本明細書に記載の化合物及び方法に有用なこれらの基の範囲には、C1~C20アルキル、C1~C12アルキル、C1~C8アルキル、C1~C6アルキル及びC1~C4アルキルが含まれる。
【0042】
本明細書で使用されるアルキル分子は、置換または無置換(または非置換)であり得る。本明細書で使用される、置換されるという用語には、基(例えば、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルの基)の、アルキルの主鎖に結合した位置への付加、例えば、これらの置換基の1つによる水素置換が含まれる。置換基の例には、ヒドロキシ、ハロゲン(例えば、F、Br、Cl、またはI)及びカルボキシル基が含まれるが、これらに限定されない。逆に、本明細書で使用される、無置換という用語は、アルキルが水素に完全に補完されている、すなわちその飽和レベルに相当し、置換がなく、例えば、直鎖デカン(-(CH2)9-CH3)であることを示す。
【0043】
本明細書に記載のコーティング化合物は、様々な方法で調製され得る。化合物は、様々な合成方法を使用して合成され得る。これらの方法の少なくともいくつかは、合成有機化学の分野で周知である。本明細書に記載の化合物は、容易に入手可能な材料から調製され得る。最適な反応条件は、使用する特定の反応物または溶媒によって変化し得るが、そのような条件は、慣例の最適化の方法により、当業者により決定され得る。
【0044】
式I及び式IIのバリエーションには、各化合物について記述した通り、様々な構成要素の付加、削減または移動が含まれる。同様に、1つまたはそれ以上のキラル中心が分子内に存在する場合、全ての可能な立体異性体(エナンチオマー及びジアステレオマー)が含まれる。さらに、化合物の合成は、様々な化学基の保護及び脱保護を含み得る。保護及び脱保護の使用、ならびに適切な保護基の選択は、当業者によって決定され得る。保護基の化学作用は、例えば、Wuts、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis、5th.Ed.,Wiley & Sons,2014で確認でき、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
本明細書に記載の化合物を生成するための反応は、当業者によって選択され得る溶媒中で実施され得る。溶媒は、反応を行う条件下、すなわち温度及び圧力下で、出発物質(反応物)、中間体、または生成物と実質的に非反応性であり得る。反応は、1種の溶媒または複数種の溶媒の混合物中で実施され得る。製造物または中間体の形成は、当技術分野で知られている任意の好適な方法に従ってモニタし得る。例えば、生成物の形成は、核磁気共鳴分光法(NMR)(例えば、1H-NMRもしくは13C-NMR)、赤外分光法(IR)、分光光度法(例えば、紫外可視)、または質量分析(MS)、あるいは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もしくは薄層クロマトグラフィー(TLC)などの分光器によるものによってモニタされ得る。
【0046】
本明細書に記載のコーティング化合物を合成する例示的な方法は、以下の実施例1で提供する。
【0047】
コーティング組成物中のコーティング化合物の濃度は、約0.025重量%~約6.6重量%(例えば、約0.05%~約6.5%、約0.075%~約6.4%、約0.1%~約6.3%、約0.2%~約6.2%、約0.3%~約6.1%、約0.4%~約6%、約0.5%~約5.9%、約0.6%~約5.8%、約0.7%~約5.7%、約0.8%~約5.6%、約0.9%~約5.5%、約1%~約5.4%、約1.1%~約5.3%、約1.2%~約5.2%、約1.3%~約5.1%、約1.4%~約5%、約1.5%~約4.9%、約1.6%~約4.8%、約1.7%~約4.7%、約1.8%~約4.6%、約1.9%~約4.5%、約2%~約4.4%、約2.1%~約4.3%、約2.2%~約4.2%、約2.3%~約4.1%、約2.4%~約4%、約2.5%~約3.9%、約2.6%~約3.8%、約2.7%~約3.7%、約2.8%~約3.6%、約2.9%~約3.5%、約3%~約3.4%または約3.1%~約3.3%)であり得る。例えば、コーティング組成物中のコーティング化合物の濃度は、約0.025%、約0.05%、約0.075%、約0.1%、約0.125%、約0.15%、約0.175%、約0.2%、約0.225%、約0.25%、約0.275%、約0.3%、約0.325%、約0.35%、約0.375%、約0.4%、約0.425%、約0.45%、約0.475%、約0.5%、約0.525%、約0.55%、約0.575%、約0.6%、約0.625%、約0.65%、約0.675%、約0.7%、約0.725%、約0.75%、約0.775%、約0.8%、約0.825%、約0.85%、約0.875%、約0.9%、約0.925%、約0.95%、約0.975%、約1%、約1.025%、約1.05%、約1.075%、約1.1%、約1.125%、約1.15%、約1.175%、約1.2%、約1.225%、約1.25%、約1.275%、約1.3%、約1.325%、約1.35%、約1.375%、約1.4%、約1.425%、約1.45%、約1.475%、約1.5%、約1.525%、約1.55%、約1.575%、約1.6%、約1.625%、約1.65%、約1.675%、約1.7%、約1.725%、約1.75%、約1.775%、約1.8%、約1.825%、約1.85%、約1.875%、約1.9%、約1.925%、約1.95%、約1.975%、約2%、約2.025%、約2.05%、約2.075%、約2.1%、約2.125%、約2.15%、約2.175%、約2.2%、約2.225%、約2.25%、約2.275%、約2.3%、約2.325%、約2.35%、約2.375%、約2.4%、約2.425%、約2.45%、約2.475%、約2.5%、約2.525%、約2.55%、約2.575%、約2.6%、約2.625%、約2.65%、約2.675%、約2.7%、約2.725%、約2.75%、約2.775%、約2.8%、約2.825%、約2.85%、約2.875%、約2.9%、約2.925%、約2.95%、約2.975%、約3%、約3.025%、約3.05%、約3.075%、約3.1%、約3.125%、約3.15%、約3.175%、約3.2%、約3.225%、約3.25%、約3.275%、約3.3%、約3.325%、約3.35%、約3.375%、約3.4%、約3.425%、約3.45%、約3.475%、約3.5%、約3.525%、約3.55%、約3.575%、約3.6%、約3.625%、約3.65%、約3.675%、約3.7%、約3.725%、約3.75%、約3.775%、約3.8%、約3.825%、約3.85%、約3.875%、約3.9%、約3.925%、約3.95%、約3.975%、約4%、約4.025%、約4.05%、約4.075%、約4.1%、約4.125%、約4.15%、約4.175%、約4.2%、約4.225%、約4.25%、約4.275%、約4.3%、約4.325%、約4.35%、約4.375%、約4.4%、約4.425%、約4.45%、約4.475%、約4.5%、約4.525%、約4.55%、約4.575%、約4.6%、約4.625%、約4.65%、約4.675%、約4.7%、約4.725%、約4.75%、約4.775%、約4.8%、約4.825%、約4.85%、約4.875%、約4.9%、約4.925%、約4.95%、約4.975%、約5%、約5.025%、約5.05%、約5.075%、約5.1%、約5.125%、約5.15%、約5.175%、約5.2%、約5.225%、約5.25%、約5.275%、約5.3%、約5.325%、約5.35%、約5.375%、約5.4%、約5.425%、約5.45%、約5.475%、約5.5%、約5.525%、約5.55%、約5.575%、約5.6%、約5.625%、約5.65%、約5.675%、約5.7%、約5.725%、約5.75%、約5.775%、約5.8%、約5.825%、約5.85%、約5.875%、約5.9%、約5.925%、約5.95%、約5.975%、約6%、約6.025%、約6.05%、約6.075%、約6.1%、約6.125%、約6.15%、約6.175%、約6.2%、約6.225%、約6.25%、約6.275%、約6.3%、約6.325%、約6.35%、約6.375%、約6.4%、約6.425%、約6.45%、約6.475%、約6.5%、約6.525%、約6.55%、約6.575%または約6.6%であり得る。
【0048】
特定の場合において、コーティング組成物は湿潤剤を含み得る。本明細書で使用される場合、湿潤剤は、コーティング組成物がコーティングをする基材の表面を濡らす(例えば、全体に広がる)ように、コーティング組成物の表面エネルギーを変化させる組成物(例えば、本明細書に記載のコーティング組成物)に添加される化合物である。いくつかの非限定的な実施例において、1種または複数種の湿潤剤をコーティング組成物に組み込むことが可能である。好適な湿潤剤には、例えば、Pluronic P123(Merck,Darmstadt,Germanyから供給)及び/またはBYK(BYK Chemie GMBh,Wesel,Germanyから供給)が含まれ、個別にまたは共に使用され得る。いくつかの実施例において、コーティング組成物中の湿潤剤の総濃度は、約0.001重量%~約2.6重量%(例えば、約0.001%~約2.5%、約0.01%~約2.4%、約0.1%~約2.3%、約0.2%~約2.2%、約0.3%~約2.1%、約0.4%~約2%、約0.5%~約1.9%、約0.6%~約1.8%、約0.7%~約1.7%、約0.8%~約1.6%、約0.9%~約1.5%、約1%~約1.4%、または約1.1%~約1.3%)であり得る。
【0049】
コーティングされた金属基材を調製する方法
本明細書に記載のコーティング組成物は、金属基材をコーティングするために使用され得る。開示されている方法で使用するために好適な金属基材は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン系材料、銅、銅系材料、鋼、鋼系材料、青銅、青銅系材料、真鍮、真鍮系材料、複合材料、複合材料に使用されるシート、もしくはその他の好適な金属または材料の組み合わせが含まれる。金属基材は、モノリシック材料、ならびにロール圧接材料、クラッド材料、複合材料(炭素繊維含有材料などだがこれに限定されない)または様々な材料などの非モノリシック材料を含み得る。いくつかの実施例において、金属基材は、金属コイル、金属ストリップ、金属プレート、金属シート、金属ビレット、金属インゴット、金属押出品などである。
【0050】
いくつかの非限定的な実施例において、金属基材はアルミニウム合金を含む。アルミニウム合金は、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含み得る。
【0051】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金番号:AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198またはAA1199の1つによる、1xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る。
【0052】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金番号:AA2001、A2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099またはAA2199の1つによる2xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る。
【0053】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金番号:AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130またはAA3065の1つによる、3xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る。
【0054】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金番号:AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047AまたはAA4147の1つによる、4xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る。
【0055】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金番号:AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187またはAA5088の1つによる5xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る。
【0056】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金番号:AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091またはAA6092の1つによる6xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る。
【0057】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金番号:AA7011、AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095またはAA7099の1つによる7xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る。
【0058】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金番号:AA8005、AA8006、AA8007、AA8008、AA8010、AA8011、AA8011A、AA8111、AA8211、AA8112、AA8014、AA8015、AA8016、AA8017、AA8018、AA8019、AA8021、AA8021A、AA8021B、AA8022、AA8023、AA8024、AA8025、AA8026、AA8030、AA8130、AA8040、AA8050、AA8150、AA8076、AA8076A、AA8176、AA8077、AA8177、AA8079、AA8090、AA8091またはAA8093の1つによる、8xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る。
【0059】
本明細書に記載のコーティング組成物は、金属基材の1つまたはそれ以上の表面に塗布され得る。コーティング組成物は、ローラーコーティング、スプレーコーティングまたは浸漬コーティングを含む、任意の好適なコーティング用途技術を使用してコーティングされ得る。コーティング組成物は、乾燥及び/または硬化して、表面(複数可)に接着したコーティング層を提供し得る。任意で、コーティング層は、約1nm~約50nmの範囲の厚さ(例えば、約2nm~約40nmまたは約3nm~約30nm)を有する。いくつかの実施例において、コーティング層は、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm、約25nm、約26nm、約27nm、約28nm、約29nm、約30nm、約31nm、約32nm、約33nm、約34nm、約35nm、約36nm、約37nm、約38nm、約39nm、約40nm、約41nm、約42nm、約43nm、約44nm、約45nm、約46nm、約47nm、約48nm、約49nm、または約50nmの厚みを有し得る。
【0060】
使用方法
記載した方法は、中でも自動車製造、トラック製造、船舶及びボートの製造、列車の製造、飛行機及び宇宙船の製造を含むが、これらに限定されない輸送及び自動車産業において有利に用いられ得る。自動車部品のいくつかの非限定的な実施例には、フロアパネル、後壁部、ロッカー、モータフード、フェンダー、ルーフ、ドアパネル、Bピラー、ロンジロン、ボディ側面、ロッカー部材またはクラッシュ部材が含まれる。本明細書で使用される「自動車」という用語及び関連用語は、自動車に限定されず、自動車、車、バス、バイク、海上船舶、オフハイウェイ自動車、軽トラック、トラック、または貨物自動車などの様々な車両分類を含む。
【0061】
特定の態様では、製品及び方法は、航空宇宙機の機体部品製品を作るために使用され得る。例えば、開示した製造物及び方法は、航空機のボディ部品、たとえばスキン合金を作るために使用され得る。製品及び方法は、他の任意の所望の用途に使用され得る。
【0062】
さらに、記載した製品及び方法は、武器、工具、電子装置の本体及び他の部品ならびに装置を含む、機械的装置及び他の装置または機構の様々な部品の製造に有利に採用され得る。任意で、本明細書に記載の製品及び方法は、電子機器用途(例えば、電子デバイスハウジングとして)、建築用途(例えば、建築用構造部品または建築美的部品として)、または消費者用製品用途(例えば、缶またはびんなどの消費者用製品容器として)として、使用され得る。
【0063】
いくつかの実施例において、金属基材は、本明細書に記載の任意の金属製品から形成され、かつ本明細書に記載のコーティング層を含む成形金属製品である。任意で、成形金属製品は、類似の金属または異なる金属(例えば、第2の金属基材)から調製された別の製品に接合され得る。第2の金属基材は、コーティング層が接着されているコーティングされた金属基材の表面に取り付けられ得る。いくつかの非限定的な実施例において、成形金属製品(成形アルミニウム合金製品など)及び第2の金属基材は、ラップ、エッジ、バット、Tバット、ヘム、Tエッジ、などを含む任意の好適な構成の接合部を形成するために接合される。いくつかの非限定的な実施例において、接合は、接着剤を使用して2つの金属製品を一緒に接合するために実施することができる。本明細書で使用される接合耐久性は、過酷な条件(例えば、中性塩水噴霧試験、または耐食塩水性試験)に曝露させた後の引張試験(例えば、過酷な条件へ曝露した後の接合強度を評価するため)の後の接合強度を指す。
【0064】
例示
例示1は、式Iの化合物:
【化14】
であって、そこにおいて
式中、n及びyはそれぞれ独立して1~10の整数であり、Lは-S-、-SO
2-、-O-、-NR-または-N-(CH
2)
p-OP(OH)
2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキル及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択されて、式中、R
4は、H、置換アルキルまたは無置換アルキルである、前記化合物である。
【0065】
例示2は、n及びyがそれぞれ1である、任意の先行例示または後の例示に記載の化合物である。
【0066】
例示3は、Lが-NH-である、任意の先行例示または後の例示に記載の化合物である。
【0067】
例示4は、R1及びR3が、それぞれHであり、さらにR2がOHである任意の先行例示または後の例示に記載の化合物である。
【0068】
例示5は、前記化合物が、
【化15】
である、任意の先行例示または後の例示に記載の化合物である。
【0069】
例示6は、式IIの化合物:
【化16】
であって、式中:
nは0~10の整数であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4と置換アルキルまたは無置換アルキルと置換フェニルまたは無置換フェニルとから選択され、式中、R
4は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択され、式中、nが1である場合、R
1、R
2及びR
3が同時にエチルではない、前記化合物である。
【0070】
例示7は、金属基材表面をコーティングする方法であって、式Iの化合物:
【化17】
を金属基材表面に塗布することを含み、そこにおいて、
式中、n及びyはそれぞれ独立して1~10の整数であり、Lは-S-、-SO
2-、-O-、-NR-または-N-(CH
2)
p-OP(OH)
2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキル及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択されて、式中、R
4は、H、置換アルキルまたは無置換アルキルである、前記方法である。
【0071】
例示8は、n及びyがそれぞれ1である、任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0072】
例示9は、Lが-NHである、任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0073】
例示10は、R1及びR3が、それぞれHであり、さらにR2がOHである任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0074】
例示11は、前記化合物が、
【化18】
である、任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0075】
例示12は、金属基材表面をコーティングする方法であって、式IIの化合物:
【化19】
を含む組成物を金属基材表面に塗布することを含む、金属基材表面をコーティングする方法であり、式中:
nは0~10の整数であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4と置換アルキルまたは無置換アルキルと置換フェニルまたは無置換フェニルとから選択され、式中、R
4は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択される、前記方法である。
【0076】
例示13は、nが1である、任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0077】
例示14は、R1、R2及びR3がそれぞれ置換アルキルまたは無置換アルキルである、任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0078】
例示15は、R1、R2及びR3がそれぞれエチルである、任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0079】
例示16は、前記化合物が、
【化20】
である、任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0080】
例示17は、前記塗布が、ローラーコーティング、スプレーコーティングまたはディップコーティングで実施される、任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0081】
例示18は、前記コーティング組成物を硬化させて、コーティングされた金属基材を提供することをさらに含む、任意の先行例示または後の例示に記載の方法である。
【0082】
例示19は、コーティングされた金属基材であって、少なくとも第1の表面を含む金属基材と、前記第1の表面に接着されたコーティング層とを含み、そこにおいて前記コーティング層は、式Iの化合物:
【化21】
を含み、そこにおいて、
式中、n及びyはそれぞれ独立して1~10の整数であり、Lは-S-、-SO
2-、-O-、-NR-または-N-(CH
2)
p-OP(OH)
2-であり、式中、Rは、H、置換アルキルまたは無置換アルキルであり、pは、1~10であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4、置換アルキルまたは無置換アルキル及び置換フェニルまたは無置換フェニルから選択されて、式中、R
4は、H、置換アルキルまたは無置換アルキルである、前記コーティングされた金属基材である。
【0083】
例示20は、コーティングされた金属基材であって、少なくとも第1の表面を含む金属基材と、前記第1の表面に接着されたコーティング層とを含み、そこにおいて前記コーティング層は、式IIの化合物:
【化22】
を含み、式中:
nは0~10の整数であり、R
1及びR
3は、Hと置換アルキルまたは無置換アルキルとからそれぞれ独立して選択され、さらにR
2は、OR
4と置換アルキルまたは無置換アルキルと置換フェニルまたは無置換フェニルとから選択され、式中、R
4は、Hと、置換アルキルまたは無置換アルキルとから選択される、前記コーティングされた金属基材である。
【0084】
例示21は、前記金属基材が、アルミニウム合金基材を含む、任意の先行例示または後の例示に記載のコーティングされた金属基材である。
【0085】
例示22は、前記アルミニウム合金基材が、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、任意の先行例示または後の例示に記載のコーティングされた金属基材である。
【0086】
例示23は、任意の先行例示または後の例示に記載のコーティングされた金属基材と、前記コーティングされた金属基材に接着された第2の金属基材とを含む、接合金属構造体である。
【0087】
例示24は、前記第2の金属基材が、前記コーティングされた金属基材の第1の表面に接着されている、任意の先行例示または後の例示に記載の接合金属構造体である。
【0088】
例示25は、前記接合金属構造体が、輸送用構造部品、輸送用美的部品、電子デバイスハウジング、建築用構造部品、建築用美的部品、消費者用製品容器または消費者用製品である、任意の先行例示に記載の接合金属構造体である。
【0089】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、しかしながら同時に、そのいかなる限定も構成しない。それどころか、その様々な実施形態、改変、及び均等物に頼ることができ、これらは、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者にそれら自体を示唆し得ることを明確に理解されたい。
【実施例】
【0090】
実施例1:化合物1及び2の合成
以下のスキーム1及び2に示される方法に従い化合物1を調製した。
【0091】
スキーム1:
【化23】
3口丸底フラスコ中のエタノール(EtOH)に、ビニルホスホン酸ジエチル(1.20当量、DEVP)を加えた。この混合物に、アミノプロピルトリエトキシシラン(1当量、TESPA)をゆっくりと加えた。次に、反応物を最大85℃まで24時間加熱した。次に、混合物を室温まで冷却し、溶液中のジエチル(2-((3-(トリエトキシシリル)プロピル)アミノ)エチル)ホスホネート(TEPAEP)の濃度が30~50重量/体積%に達するまで、EtOHを蒸発させた。エタノール中のTEPAEPの反応混合物及びその純度を、
1H NMR、
13C NMR及び
31P NMRで分析した。
【0092】
スキーム2:
【化24】
以前に合成したTEPAEPを保存したまま使用した(EtOH中30~50%重量/体積%)。3口丸底フラスコに、不活性雰囲気下で、ジエチル(2-((3-(トリエトキシシリル)プロピル)アミノ)エチル)ホスホネート(1当量)(EtOH中30~50重量/体積%)及び無水ジクロロメタン(DCM)(24当量)を加えた。トリメチルブロモシラン(3.19当量)を室温で滴下した。添加が完了した後、反応溶液を24時間還流した。次に、乾燥EtOH(10当量)を不活性雰囲気下で加えて、反応溶液を室温で終夜撹拌した。次に、溶液を真空下で濃縮して、取り除いた溶媒を乾燥EtOHと置き換え、生成物の最終濃度を30~50重量/体積%に維持した。TEAPAEP(化合物1)の純度は、
1H NMR、
13C NMR及び
31P NMRを使用して確認した。
【0093】
以下のスキーム3に示す方法に従い化合物2を調製した。
【0094】
スキーム3:
【化25】
化合物2((2-(トリエトキシシリル)エチル)ホスホン酸、TEOEPA)は、ジエチル(2-(トリエトキシシリル)エチル)ホスホネート(1当量、DETEOEP)及びトリメチルブロモシラン(3.19当量)を反応させることにより得た。トリメチルブロモシランを、3口丸底フラスコ中のCH
2Cl
2中のDETEOEPに滴下した。次に、この混合物を加熱して、3時間還流した。室温まで冷却した後、溶媒を蒸発させ、EtOH中の濃度が30~50重量/体積%になるまでEtOHに置き換えた。最終生成物(化合物2)とその純度を、
1H NMR、
13C NMR、及び
31P NMRで分析した。
【0095】
実施例2:接合耐久性
図1は、本明細書に記載の方法に従って調製された5xxxシリーズのアルミニウム合金(例えば、AA5754)及び6xxxシリーズのアルミニウム合金(例えば、6111)の接合耐久性の結果を示すグラフである。アルミニウム合金を試験片に切断し、酸エッチング手順により洗浄し、任意で、本明細書に記載のコーティング組成物でコーティングした。各合金は、対照サンプル(「エッチングのみ」という)、化合物1のコーティング組成物層を加えたサンプル及び化合物2のコーティング組成物層を加えたサンプルを使用した。次に、同様に前処理した試験片を市販の接着剤配合物BM4601(Dow Automotive Systems,Wilmington,DEから供給)と一緒に接合させ、潤滑剤配合物DC-290(Quaker Chemical B.V.;Uithoorn,The Netherlandsから供給)でコーティングした。次に、接合した試験片に2400Nの張力を加える接合耐久性試験を実施したが、そこでは、接合した試験片を塩水溶液へ浸漬した後に、高湿度(例えば、少なくとも約75%相対湿度(RH))及び高温(例えば、少なくとも約30°C)の雰囲気への曝露を続けるサイクルを行った。接合耐久性試験で少なくとも20サイクルを完了したサンプルを合格と見なした。
【0096】
図1から明らかなように、化合物1及び化合物2で処理したサンプルは、5xxxシリーズのアルミニウム合金と6xxxシリーズのアルミニウム合金の両方の接合耐久性試験に合格した。化合物2は、5xxxシリーズのアルミニウム合金の接合耐久性を大幅に向上させた。本明細書に記載のコーティング組成物は、対照サンプル(すなわち、酸エッチング手順によって洗浄した前処理をしていないアルミニウム合金サンプル)と比較した場合、5xxxシリーズのアルミニウム合金と6xxxシリーズのアルミニウム合金との両方で接合耐久性が改善することが示された。
【0097】
上記で引用した全ての特許、刊行物、及び抄録は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的の達成において記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理を例示するに過ぎないことが認識されるべきである。それらの多数の改変及び改造は、以下の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者に容易に明らかになる。