(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】電解水散布装置及び送風装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20230908BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230908BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20230908BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20230908BHJP
F24F 8/24 20210101ALI20230908BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20230908BHJP
【FI】
A61L9/12
A61L9/01 F
A61L9/14
C02F1/461 A
F24F8/24
F24F8/80 145
F24F8/80 150
(21)【出願番号】P 2020561246
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046284
(87)【国際公開番号】W WO2020129557
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018235504
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019084861
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】小原 弘士
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169613(JP,A)
【文献】特開平04-288163(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157383(WO,A1)
【文献】特開平05-157714(JP,A)
【文献】特開平03-047261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
C02F 1/46-1/48
F24F 7/00-8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極によって電解水を生成する電解水生成部と、
前記電解水生成部が生成した前記電解水を、吸気口から筐体内に吸い込んだ空気に接触させて吹出口から送風する送風部と、
前記電解水生成部の前記一対の電極に通電させる電力量及び前記送風部の風量を制御する制御部と、
前記電解水生成部で生成された前記電解水を含んだ気体を検知する気体検知部と、を備え、
前記気体検知部は、前記気体検知部によって検知された検知気体に応じた出力値を出力し、
前記制御部は、前記気体検知部から出力された前記出力値に基づいて、前記検知気体の状態を判別
する気体判別部を備え、
前記気体判別部は、前記気体検知部から出力された前記出力値を一定の周期で繰り返し取得し、各周期における前記出力値の変化量を算出し、前記変化量に基づいて前記検知気体の状態を判別する演算部を備え、
前記気体判別部は、前記演算部で算出した各周期における前記変化量それぞれについて、前記変化量と1以上の所定の閾値範囲とを比較し、前記所定の閾値範囲に含まれる前記変化量の個数を取得する比較部を備え、
前記演算部は、前記比較部により取得された前記所定の閾値範囲に含まれる前記変化量の個数に基づいて前記検知気体の状態を判別する
ことを特徴とする電解水散布装置。
【請求項2】
前記比較部は、前記演算部で算出した各周期における前記変化量それぞれについて、前記変化量と相互に異なる複数の前記所定の閾値範囲とを比較し、複数の前記所定の閾値範囲それぞれに含まれる前記変化量の個数を取得し、
前記演算部は、複数の前記所定の閾値範囲それぞれに対応して記憶された加算値にも基づいて前記検知気体の状態を判別する
ことを特徴とする請求項
1に記載の電解水散布装置。
【請求項3】
複数の前記所定の閾値範囲は、変更可能である
ことを特徴とする請求項
2に記載の電解水散布装置。
【請求項4】
一対の電極によって電解水を生成する電解水生成部と、
前記電解水生成部が生成した前記電解水を、吸気口から筐体内に吸い込んだ空気に接触させて吹出口から送風する送風部と、
前記電解水生成部の前記一対の電極に通電させる電力量及び前記送風部の風量を制御する制御部と、
前記電解水生成部で生成された前記電解水を含んだ気体を検知する気体検知部と、を備え、
前記気体検知部は、前記気体検知部によって検知された検知気体に応じた出力値を出力し、
前記制御部は、前記気体検知部から出力された前記出力値に基づいて、前記検知気体の状態を判別
し、
前記制御部は、前記気体検知部から出力された前記出力値を一定の周期で所定の期間繰り返し取得し、各周期における前記出力値の変化量を算出し、各周期における前記変化量それぞれについて、前記変化量と複数の所定の範囲とを比較し、前記所定の範囲毎の前記変化量の出現数である積算値を算出し、算出した前記所定の範囲毎の前記積算値の情報に基づいて、前記検知気体の状態を判別する
ことを特徴とする電解水散布装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定の範囲毎の前記変化量の前記積算値の比率に基づいて、前記検知気体内における特定の気体の生成を判別する
ことを特徴とする請求項
4に記載の電解水散布装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記所定の範囲毎の前記変化量の前記積算値に基づいて、前記検知気体内における特定の気体の濃度を判別する
ことを特徴とする請求項
4又は請求項
5に記載の電解水散布装置。
【請求項7】
前記積算値の比率は、変更可能であることを特徴とする請求項
5又は請求項
6に記載の電解水散布装置。
【請求項8】
前記複数の所定の範囲は、変更可能であることを特徴とする請求項
4~7のいずれかに記載の電解水散布装置。
【請求項9】
前記出力値は、電圧値である
ことを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の電解水散布装置。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の電解水散布装置を備える
ことを特徴とする送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解水を生成して散布する電解水散布装置及び電解水散布装置を備えた送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の細菌、真菌、ウイルス、臭い等の除去を行うために、電気分解により次亜塩素酸を含む電解水を生成して散布する電解水散布装置が知られている。
【0003】
従来、電解水散布装置における次亜塩素酸の生成量の検出方法として、電気化学的方法を用いて溶液濃度を検出する方法などが知られている(特許文献1)。また、複数のガスセンサの出力傾向を利用して気体の種類や濃度を検知する技術も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-26214号公報
【文献】特開2017-49057号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された検出方法では、溶液濃度の検出用の電極などを使用する必要があるため、コストアップするおそれがある。また、電気化学的方法を用いて検出する場合、電極の定期的な洗浄などが必要となり、検知精度の維持が難しいといった課題もある。さらに、特許文献2に記載された検出方法では、複数個のガスセンサを使用する必要があるため、コストアップするおそれがある。即ち、従来の方法により、生成した次亜塩素酸等の気体の状態(例えば濃度)を判別する場合、比較的煩雑でコストがかかるという問題がある。
【0006】
本開示は、生成した次亜塩素酸等の気体の状態を、比較的簡易かつ安価に判別できる電解水散布装置を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る電解水散布装置は、一対の電極によって電解水を生成する電解水生成部と、電解水生成部が生成した電解水を、吸気口から筐体内に吸い込んだ空気に接触させて吹出口から送風する送風部と、電解水生成部の一対の電極に通電させる電力量及び送風部の風量を制御する制御部と、電解水生成部で生成され
た電解水を含んだ気体を検知する気体検知部と、を備え、気体検知部は、気体検知部によって検知された検知気体に応じた出力値を出力し、制御部は、気体検知部から出力された出力値に基づいて、検知気体の状態を判別する気体判別部を備え、気体判別部は、気体検知部から出力された出力値を一定の周期で繰り返し取得し、各周期における出力値の変化量を算出し、変化量に基づいて検知気体の状態を判別する演算部を備え、気体判別部は、演算部で算出した各周期における変化量それぞれについて、変化量と1以上の所定の閾値範囲とを比較し、所定の閾値範囲に含まれる変化量の個数を取得する比較部を備え、演算部は、比較部により取得された所定の閾値範囲に含まれる変化量の個数に基づいて検知気体の状態を判別する。また、上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る電解水散布装置は、一対の電極によって電解水を生成する電解水生成部と、電解水生成部が生成した電解水を、吸気口から筐体内に吸い込んだ空気に接触させて吹出口から送風する送風部と、電解水生成部の一対の電極に通電させる電力量及び送風部の風量を制御する制御部と、電解水生成部で生成された電解水を含んだ気体を検知する気体検知部と、を備え、気体検知部は、気体検知部によって検知された検知気体に応じた出力値を出力し、制御部は、気体検知部から出力された出力値に基づいて、検知気体の状態を判別し、制御部は、気体検知部から出力された出力値を一定の周期で所定の期間繰り返し取得し、各周期における出力値の変化量を算出し、各周期における変化量それぞれについて、変化量と複数の所定の範囲とを比較し、所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値を算出し、算出した所定の範囲毎の積算値の情報に基づいて、検知気体の状態を判別する。
【0008】
本開示の電解水散布装置によれば、電解水生成部で生成された電解水を含んだ気体を検知する気体検知部の出力値に基づいて、検知気体の状態判別を行う。このように、次亜塩素酸等の生成量といった検知気体の状態の判別を一つの気体検知部により行うことができるので、比較的簡易かつ安価に電解水散布装置を実現できるという効果を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る電解水散布装置の斜視図である。
【
図5】
図5は、同電解水散布装置の機能ブロック図である。
【
図6B】
図6Bは、気体判別部で実行される検知気体の状態判別処理を示すフローチャートである。
【
図7A】
図7Aは、一対の電極の通電状態と経過時間との関係を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示す一対の電極の通電状態における気体検知部の出力値の一例を示す図である。
【
図7C】
図7Cは、
図7Bに示す気体検知部の出力値を一定周期で取得したときの一周期前の出力値との変化量の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、特定の条件で電気分解しているときの変化量の出現頻度の一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、複数の閾値範囲と複数の閾値範囲に対応した加算値の一例を示す図である。
【
図10D】
図10Dは、
図10Cに示す気体検知部の出力値を一定周期で取得したときの一周期前の出力値との変化量の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の第2実施形態に係る電解水散布装置の斜視図である。
【
図15】
図15は、同電解水散布装置の機能ブロック図である。
【
図16】
図16は、制御部で実行される検知気体の状態判別処理を示すフローチャートである。
【
図17C】
図17Cは、
図17Bに示す気体検知部の出力値を一定周期で取得したときの一周期前の出力値との変化量の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、特定の条件で電気分解しているときの変化量の出現頻度の一例を示す概略図である。
【
図19】
図19は、気体検知部の出力値による周期毎の変化量を複数の所定の範囲に分類した図である。
【
図20D】
図20Dは、
図20Cに示す気体検知部の出力値を一定周期で取得したときの一周期前の出力値との変化量の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係る電解水散布装置は、電解水生成部と、送風部と、制御部と、気体検知部と、を備える。電解水生成部は、一対の電極によって電解水を生成する。送風部は、電解水生成部が生成した電解水を、吸気口から筐体内に吸い込んだ空気に接触させて吹出口から送風する。制御部は、電解水生成部の一対の電極に通電させる電力量及び送風部の風量を制御する。気体検知部は、電解水生成部で生成された電解水を含んだ気体を検知する。気体検知部は、気体検知部によって検知された検知気体に応じた出力値を出力する。制御部は、気体検知部から出力された出力値に基づいて、検知気体の状態を判別する。
【0011】
これにより、本電解水散布装置は、電解水生成部で生成された電解水に含まれる活性酸素種の検知気体の状態を判別できるため、電解水散布装置の使用環境により異なる活性酸素種の生成量といった検知気体の状態の判別に利用することができる。
【0012】
また、制御部は、検知気体の状態を判別する気体判別部を備え、気体判別部は、気体検知部から出力された出力値を一定の周期で繰り返し取得し、各周期における出力値の変化量を算出し、変化量に基づいて検知気体の状態を判別する演算部を備えるという構成にしてもよい。
【0013】
これにより、本電解水散布装置は、活性酸素種などによって異なる出力傾向を示す気体検知部の変化量に基づく状態判別ができるため、電解水散布装置の使用環境により異なる活性酸素種の生成量といった検知気体の状態を比較的精度良く判別することができる。
【0014】
また、気体判別部は、演算部で算出した各周期における変化量それぞれについて、変化量と1以上の所定の閾値範囲とを比較し、所定の閾値範囲に含まれる変化量の個数を取得する比較部を備え、演算部は、比較部により取得された所定の閾値範囲に含まれる変化量の個数に基づいて検知気体の状態を判別するという構成にしてもよい。
【0015】
これにより、本電解水散布装置は、活性酸素種などによって異なる出力傾向を示す気体検知部の変化量に対して、検知対象となる活性酸素種が生成されたときの出現頻度の傾向に基づく状態判別ができる。よって、電解水散布装置の使用環境により異なる活性酸素種の生成量といった検知気体の状態を比較的精度良く判別することができる。
【0016】
また、比較部は、演算部で算出した各周期における変化量それぞれについて、変化量と相互に異なる複数の所定の閾値範囲とを比較し、複数の所定の閾値範囲それぞれに含まれる変化量の個数を取得し、演算部は、複数の所定の閾値範囲それぞれに対応して記憶された加算値にも基づいて検知気体の状態を判別するという構成にしてもよい。
【0017】
これにより、本電解水散布装置は、活性酸素種などによって異なる出力傾向を示す気体検知部の変化量に対して、検知対象となる活性酸素種が生成されたときの出現頻度の傾向に基づいて加算値により重み付けした結果から状態判別できる。よって、電解水散布装置の使用環境により異なる活性酸素種の生成量などを精度良く判別することができる。
【0018】
また、複数の所定の閾値範囲は、変更可能であるという構成にしてもよい。
【0019】
これにより、本電解水散布装置は、気体検知部の特性ばらつきや経年劣化などの特性変動がある場合でも、電解水散布装置の使用環境により異なる活性酸素種の生成量などを比較的精度良く判別することができる。
【0020】
また、出力値は、電圧値であるという構成にしてもよい。
【0021】
また、本開示の電解水散布装置を送風装置に適用してもよい。
【0022】
これにより、送風装置においても本開示記載の効果を実現できる。
【0023】
以下、本開示を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態)
まず、
図1~
図6Bを参照して、本開示の第1実施形態である電解水散布装置100について説明する。
図1は、電解水散布装置100の斜視図であり、電解水散布装置100を前面側から見た図である。
図2は、電解水散布装置100の斜視図であり、
図1のパネル103を開いた状態で電解水散布装置100を前面側から見た図である。
【0025】
図1、
図2に示す通り、電解水散布装置100は、略箱形状の本体ケース101を備え、本体ケース101の両側面には略四角形状の吸気口102を有している。本体ケース101の天面には、開閉式の吹出口106が設けられている。
図1、2では、吹出口106は閉じた状態である。
【0026】
本体ケース101の前面側から見て、右側の側面(本体ケース101の一方側の側面)である第1の本体側面101Aには、開閉可能なパネル103が設けられている。パネル103には、吸気口102が設けられている。パネル103を開くと、
図2に示すように、縦長四角形状の開口104が現れる。開口104から、後述する貯水部114、給水部115、錠剤投入ケース118a等が取り出し可能に構成されている。
【0027】
図3は、電解水散布装置100の正面視中央部分を縦方向に切った断面図であり、電解水散布装置100を右側から見た図である。
図3は、電解水散布装置100が作る風路構成などを示している。
図4は、電解水散布装置100の正面視右側を縦方向に切った断面図であり、電解水散布装置100における右側から見た図である。
図4は、タンク部材などの電解水生成に関する周辺構成などを示している。
図5は、電解水散布装置100の機能をブロックで示した機能ブロック図である。
【0028】
図2~
図5に示すように、本体ケース101内には、電解水生成部105と、給水部115と、散布部119と、風路108とが備えられている。電解水生成部105は、一対の電極117と、貯水部114を備えている。
【0029】
図2、
図3に示すように、貯水部114は、天面を開口した箱形状をしており、水を貯水できる構造となっている。貯水部114は、本体ケース101の下部に配置され、本体ケース101から水平方向にスライドして着脱可能となっており、開口104から取り出すことができる。貯水部114は、給水部115から供給される水を貯水する。
【0030】
図4に示す一対の電極117は、電極部材(図示せず)を備えており、この電極部材が貯水部114内の水に浸かるように設置される。一対の電極117は、この電極部材に通電することにより、貯水部114内の塩化物イオンを含む水を電気化学的に電気分解し、活性酸素種を含む電解水を生成させる。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素分子と、その関連物質のことである。活性酸素種は、例えば、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシラジカル、或いは過酸化水素といった所謂狭義の活性酸素と、オゾン、次亜塩素酸(次亜ハロゲン酸)等といった所謂広義の活性酸素とを含む。
【0031】
一対の電極117は、電極部材への電気分解するための通電を行う通電時間と、その通電停止後の時間、つまり通電を行っていない時間である非通電時間を一周期として、その一周期を複数回繰り返すことで、電解水を生成する。電極部材に対し、非通電時間を設けることで、電極部材の寿命を延ばすことができる。なお、非通電時間に対して通電時間を長くすれば、一周期当たりにおいてより多くの量の活性酸素種を含む電解水が生成される。また通電時間に対して非通電時間を長くすれば、一周期当たりの活性酸素種の生成が抑えられる。さらに、通電時間における電力量を大きくすれば、より多くの量の活性酸素種を含む電解水が生成される。
【0032】
電解促進錠剤投入部118は、
図2に示すように、錠剤投入ケース118aと、錠剤投入ケース118a内に設けた錠剤投入部材(図示せず)と、錠剤投入ケース118aの上部に着脱自在に設けられた錠剤投入カバー118bとを備えている。錠剤投入ケース118aは、開口104から取り出し可能に構成される。ユーザは、取り出した錠剤投入ケース118aから錠剤投入カバー118bを外すことで、ユーザが錠剤投入ケース118a内に電解促進錠剤を装填できる。錠剤投入ケース118a内に装填された電解促進錠剤は、貯水部114へ投入されることになる。
【0033】
具体的には、電解促進錠剤投入部118は、電解促進錠剤を貯水部114へ投入する場合に、錠剤投入部材を回動させる。錠剤投入部材が回動すると、電解促進錠剤が錠剤投入ケース118aの底面の落下開口(図示せず)より貯水部114に落下する。電解促進錠剤投入部118は、錠剤投入ケース118aから貯水部114に落下した電解促進錠剤の個数をカウントし、錠剤投入ケース118aから貯水部114に電解促進錠剤が一錠落下したと判定すると、錠剤投入部材の回動を停止する。この電解促進錠剤が貯水部114内の水に溶け込むことにより、貯水部114内に塩化物イオンを含む水が生成される。なお、電解促進錠剤の一例は、塩化ナトリウムである。
【0034】
なお、電解水散布装置100は、電解促進錠剤投入部118を有していなくてもよい。この場合は、電解水散布装置100が、ユーザに対して電解促進錠剤の投入を指示する報知を表示や発音によって行い、ユーザに電解促進錠剤を直接、貯水部114へ投入させるようにしてもよい。
【0035】
また、電解水散布装置100は、
図5に示すように、気体検知部120及び制御部130を備えている。
【0036】
気体検知部120は、一対の電極117で生成された電解水を含む気体を検知し、検知した気体に応じた出力値を出力する。なお、本実施形態では、気体検知部120が出力する出力値が電圧値である場合を例に説明する。気体検知部120の詳細については、
図6A、
図6Bを参照して後述する。
【0037】
制御部130は、例えば、本体ケース101(
図1参照)の天面に設けられた操作パネルの裏側に設けられ、電解水散布装置100の制御を行う。制御部130は、一対の電極117による水の電気分解を制御し、また電解促進錠剤投入部118による電解促進錠剤の投入を制御するものである。特に、制御部130は、気体判別部131を備え、気体検知部120により出力された検知気体の出力値に基づいて、気体判別部131を用いて検知気体の状態判別を行うものである。気体判別部131の詳細については、
図6A、
図6Bを参照して後述する。なお、制御部130の機能は、プロセッサ(図示せず)がメモリ(図示せず)に記憶されているプログラムを実行することで実現される。
【0038】
給水部115は、
図2に示すように、本体ケース101内部の正面視右側の側面に設置され、貯水部114から着脱可能な構造となっており、開口104から取り出すことができる。給水部115は、貯水部114の底面に設けられたタンク保持部114aに装着されている。給水部115は、水を貯水するタンク115aと、タンク115aの開口(図示せず)に設けられた蓋115bとを備えている。蓋115bの中央には、開閉部(図示せず)が設けられており、この開閉部が開くと、タンク115a内の水が、貯水部114へ供給される。
【0039】
具体的には、タンク115aの開口を下向きにして、タンク115aを貯水部114のタンク保持部114aに取り付けると、タンク保持部114aによって開閉部が開く。つまり、タンク115aに水を入れてタンク保持部114aに取り付けると、開閉部が開いて貯水部114に給水され、貯水部114内に水が溜まる。貯水部114内の水位が上昇して蓋115bのところまで到達すると、タンク115aの開口が水封されるので給水が停止し、タンク115aの内部には水が残り、貯水部114内の水位が下がった場合に都度、タンク115a内部の水が貯水部114に給水される。即ち、貯水部114内の水位は一定に保たれる。
【0040】
なお、電解水散布装置100は、給水部115としてタンク115aを有していなくてもよい。この場合は、電解水散布装置100に対して、水を供給するラインを水道よりひき、貯水部114内の水位が下がった場合に、貯水部114内の水位が所定位置に上昇するまで、水道水を供給するようにしてもよい。
【0041】
図3に示すように、散布部119は、送風部107と、フィルター部116とを備える。送風部107は、本体ケース101の中央部に設けられ、モータ部109と、モータ部109により回転するファン部110と、それらを囲むスクロール形状のケーシング部111とを備えている。モータ部109は、ケーシング部111に固定されている。
【0042】
ファン部110は、シロッコファンであり、モータ部109から水平方向に延びた回転軸109aに固定され、モータ部109は、上述のようにケーシング部111に固定されている。モータ部109の回転軸109aは、本体ケース101の前面側から背面側に延びている。ケーシング部111は、ケーシング部111の本体ケース101における上面側に吐出口112を備え、ケーシング部111の本体ケース101における背面側に吸込口113を有している。
【0043】
送風部107の風量は、ユーザの設定した風量に基づいて決定される。決定された風量に基づき、制御部130により、モータ部109の回転量が制御される。
【0044】
フィルター部116は、貯水部114に貯水された電解水と、送風部107によって本体ケース101内(即ち筐体内)に流入した室内空気とを接触させる部材である。フィルター部116は、円筒状に構成され、円周部分に空気が流通可能な孔を備えたフィルター116aを配置している。フィルター116aは、その一端が貯水部114の水に浸漬され、保水されるように、フィルター116aの中心軸を回転中心として貯水部114に回転自在に内蔵されている。そして、フィルター部116は、駆動部(図示しない)により回転され、電解水と室内空気を連続的に接触させる構造となっている。
【0045】
風路108は、吸気口102と吹出口106とを連通し、吸気口102から順に、フィルター部116、送風部107、吹出口106を備えている。モータ部109によってファン部110が回転すると、吸気口102から吸い込まれ風路108内に入った外部の空気は、順に、フィルター116a、送風部107、吹出口106を介して、電解水散布装置100の外部へ吹き出される。これにより、貯水部114にて生成された電解水が外部へ散布される。なお、電解水散布装置100は、必ずしも電解水そのものを撒くものでなくてもよく、結果的に生成した電解水由来(揮発を含む)の活性酸素種を散布するものであってもよい。
【0046】
図6A、
図6Bを用いて、気体判別部131で検知気体を状態判別する方法について説明を行う。
【0047】
図6Aは、気体判別部131の機能をブロックで示した機能ブロック図である。気体判別部131は、比較部132と演算部133により構成される。気体判別部131は、所定時間(例えば、1秒)毎に気体検知部120から出力されている検知気体に応じた出力値(電圧値)を取得する。演算部133は、ある時点において取得した気体検知部120の出力値とある時点よりも所定時間前に取得した気体検知部120の出力値との差分を計算することで出力値の変化量を取得する。演算部133は、この演算を所定時間毎に繰り返すことで、複数の変化量を取得する。即ち、演算部133は、各周期における出力値の変化量を算出することになる。
【0048】
比較部132は、演算部133で取得した気体検知部120の出力値の変化量と複数の閾値範囲との大きさを比較し、取得した変化量が複数の閾値範囲のうちのどの閾値範囲に含まれるかを演算し、その閾値範囲に含まれる変化量の個数を記録する。比較部132は、この演算と記録を所定時間毎に繰り返すことで、複数の閾値範囲それぞれに含まれる変化量の個数を記録する。
【0049】
さらに、演算部133は、比較部132で得られた複数の閾値範囲毎に含まれる変化量の個数に対し、複数の閾値範囲毎に対応して設定された加算値を加算する演算を行う。加算した結果を用いて検知気体の状態判別を行う。具体的な検知気体の状態判別方法については
図7A~
図9を用いて後述する。なお、複数の閾値範囲及び複数の閾値範囲毎に対応して設定された加算値は、メモリ(図示せず)に記憶されており、複数の閾値範囲それぞれに含まれる変化量の個数もこのメモリに記録される。
【0050】
気体検知部120は、例えば半導体式ガスセンサにより構成される。ガスセンサ素子は、金属酸化物材料と一体化されたヒーターで構成されている。センサに電源印加することで、金属酸化物材料がヒーターにより加熱状態となる。このガスセンサ素子では、検知可能な気体が金属酸化物材料に接触することで生じる抵抗値変化に基づいて、気体を検出する。例えば、清浄大気中では、金属酸化物材料表面が大気中の酸素の影響を受けて自由電子の移動が制限され、導電率が低下するために高い抵抗値を示している。この状態で検知可能な気体が金属酸化物材料表面に接触すると、金属酸化物材料表面の酸素が消費され、それまで制限されていた自由電子の動きが開放され、導電率が高くなるために低い抵抗値を示す。この抵抗値の違いを電圧出力などに変換して取得することで、検知対象となる気体の検知が可能となる。
【0051】
図6Bは、検知気体の状態判別処理を示すフローチャートである。
【0052】
気体判別部131は、まず、所定時間(例えば、1秒)毎に気体検知部120から出力される出力値(一例として電圧値)を所定の期間(例えば、1分)繰り返し取得する(ステップS11)。出力値の取得は、例えばアナログ/デジタル(A/D)コンバータなどを用いて行う。
【0053】
演算部133は、ステップS11で取得したある時点における出力値とある時点よりも所定時間前に取得した出力値の差分を計算することで、気体検知部120の出力値の変化量を算出する。これを繰り返すことで、複数の変化量(所定時間毎の変化量)を算出する(ステップS12)。
【0054】
次に、比較部132は、ステップS12で得られた複数の変化量それぞれについて、複数の閾値範囲と比較し、その変化量が含まれる閾値範囲の変化量の個数を記録する。これにより、複数の閾値範囲それぞれに含まれる変化量の個数が取得される(ステップS13)。
【0055】
演算部133は、ステップS13で得られた複数の閾値範囲それぞれに含まれる変化量の個数に対し、閾値範囲に対応した加算値を加算する(ステップS14)。最後に、演算部133は、算出された加算後の値に応じて検知気体の状態判別を行う(ステップS15)。
【0056】
なお、状態判別により得られる出力結果は、検知気体の種類や、検知気体の有無、検知気体の濃度などである。例えば、ステップS14で得られる演算部133が算出した値に対して、任意の閾値と比較することで、検知気体の種類や検知したい気体の有無を得ることができる。また、ステップS14で演算部133が加算する加算値として濃度と相関のある値を用いることで、濃度値を出力結果として得ることも可能である。
【0057】
また、
図6Bでは、演算部133は、ステップS11で所定時間毎に取得された複数の出力値を用いて、所定時間毎の出力値の変化量を算出し(ステップS12)、比較部132は、ステップS12で得られた複数の出力値の変化量それぞれについて、複数の閾値範囲と比較する(ステップS13)ものとして説明した。しかしながら、
図6Bに示す検知気体の状態判別処理のフローチャートは一例である。例えば、ステップS11~S13の処理を以下のように変更し、変更したステップS11~S13の処理を所定時間毎に所定の期間(あるいは一定回数)繰り返し実行した後にステップS14、S15の処理を行うようにしてもよい。即ち、ステップS11を、気体検知部120から出力される出力値を1回だけ取得する処理に変更し、ステップS12を、変更後のステップS11で取得された出力値とそれよりも所定時間前に取得された出力値の差分を算出することで変化量を算出する処理に変更する。また、ステップS13を、変更後のステップS12で得られた変化量と複数の閾値範囲と比較する処理に変更する。そして、この変更後のステップS11~S13の処理を所定時間毎に所定の期間(例えば1分)あるいは一定回数(例えば60回)繰り返し実行することで、
図6Bに示すステップS13の処理結果と同様に、複数の閾値範囲それぞれに含まれる変化量の個数が取得できる。
【0058】
図7A~
図9を用いて、具体的に検知気体を状態判別する方法について説明する。
【0059】
図7A~
図7Cは電解水生成部105の一対の電極117に通電し、電気分解を行っているときの気体検知部120の出力値(電圧値)とその変化量の一例を示している。気体検知部120は、電解水生成部105の近傍などに配置され、電解水生成部105で生成された電解水による次亜塩素酸を含む気体を検知できる構成である。電解水生成部105を構成する一対の電極117は、貯水部114内に設置される。
図7Aは、電解水生成部105の一対の電極117の通電状態と経過時間を示す図である。一対の電極117に電流を流すことで電気分解を行う。
図7Bは、
図7Aに示す一対の電極117の通電状態における気体検知部120の出力値を示す図である。
図7Cは、
図7Bに示す気体検知部の出力値を一定周期で取得したときの一周期前の出力値との変化量の一例を示す図である。電気分解が行われると、気体検知部120は電解水による次亜塩素酸を含む検知気体に応じて出力が変化する。所定時間毎に取得した気体検知部120の複数の出力値において、ある時点において取得した出力値とある時点よりも所定時間前に取得された出力値との差分である変化量を求める。この変化量を
図7Cで示している。
【0060】
図8は、
図7Aに示す電極通電中において特定条件で電気分解を行ったときの、演算部133で取得した気体検知部120の出力値の変化量の出現頻度を一例として示したものである。同じ電気分解の条件で長時間データを取得した結果を示しており、気体検知部120の出力値の変化量が取得したデータに対して何個発生したかを示している。この出現頻度の出力傾向は、電解水生成部105と気体検知部120の位置関係や、電気分解の生成条件が決まると、多少のばらつきはあるがある程度同様の傾向を示す。
【0061】
図9は、複数の閾値範囲と複数の閾値範囲に応じた加算値の一例を示す図である。
図8、
図9に示すように、変化量に対する複数の閾値範囲を次のように設定する。閾値範囲d2は、変化量が-0.05Vより小さい領域を示す。閾値範囲c2は、変化量が-0.05V以上で-0.02Vより小さい領域を示す。閾値範囲b2は、変化量が-0.02V以上で-0.01Vより小さい領域を示す。閾値範囲a2は、変化量が-0.01V以上で0Vより小さい領域を示す。閾値範囲a1は、変化量が0V以上で+0.01Vより小さい領域を示す。閾値範囲b1は、変化量が+0.01V以上で+0.02Vより小さい領域を示す。閾値範囲c1は、変化量が+0.02V以上で+0.05Vより小さい領域を示す。閾値範囲d1は、変化量が+0.05V以上の領域を示す。
【0062】
図8では、閾値範囲b1と閾値範囲b2と閾値範囲c2の出現頻度が大きい。閾値範囲の出現頻度のピークは、電解水生成部105で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体で気体検知部120の出力値が変化することで、閾値範囲b1のピークが大きくなることが実験的に確認されている。電解水生成部105と気体検知部120の設置位置や、電気分解の生成条件などにより、特定の閾値範囲の出現頻度が大きくなる。なお、検知気体の種類や濃度などが変化すると、気体検知部120の出力変化の傾向が変わる。例えば、半導体式ガスセンサで考えると、金属酸化物表面の酸素の消費が、発生する気体の種類や濃度により異なる。このように、演算部133で算出した気体検知部120の変化量の出現頻度の差異に基づいて、検知気体の種類や濃度などの検出が可能となる。
【0063】
電解水生成部105で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体による出力値の変化量は、上述したように、閾値範囲b1で示す出現頻度のピークを示す。一例であるが、演算部133では、この傾向に基づいて
図9で示す加算値を用いて演算を行う。複数の閾値範囲毎に対応して加算値を設定している。即ち、演算部133が算出した気体検知部120の変化量が閾値範囲b1のときに、10を加算値として加算する。また、演算部133が算出した気体検知部120の変化量が閾値範囲b1以外のときは、電解水生成部105で生成された電解水による次亜塩素酸を含まないので、-1の加算値を加算する。このように、演算部133が算出した変化量と閾値範囲に対応した加算値を加算することで、電解水生成部105で生成された電解水による次亜塩素酸の濃度を精度よく検出し、検知気体の識別が可能となる。
【0064】
上述したように、設置位置や生成条件などが決まると出現頻度の傾向が同等になる。よって、電解水生成部105で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体の変化量に対して、加算値を大きくすることで、次亜塩素酸の濃度を検出する精度を向上させている。
【0065】
また、電解水生成部105で生成された電解水による次亜塩素酸の濃度が高い場合は、閾値範囲b1の範囲に変化する変化量の個数が増えるために、演算部133が演算した加算後の値がさらに大きくなる。一方、検知気体の種類が変わると出現頻度の傾向が変わり、演算部133が演算した加算後の値は小さくなる。即ち、この演算部133が演算した加算後の値の大きさにより、検知気体の状態判別が可能となる。また、演算部133が演算した加算後の値を特定の比較閾値と比較し、特定の閾値以上の場合に、検知対象とする気体が存在すると判別できる。また、検知対象とする気体の濃度を別途計測器などで計測し、濃度と相関のある加算値を用いることで濃度値に換算することも可能である。
【0066】
なお、上記の説明では、閾値範囲の領域が8個の場合で説明したが、複数の閾値範囲の電圧範囲をより狭く設定し、より多くの閾値範囲を用いた判別を行ってもよい。電解水生成部105で生成された電解水を含む検知気体による出現頻度の傾向に対して、より細かく加算値を設定するため、検知対象とする気体を精度良く検知できる。
【0067】
なお、使用環境のニオイレベルに応じた制御のために、気体検知部120を共用してもよい。ここで示すニオイとは、例えばタバコの煙によるニオイなどを想定している。この場合は、気体検知部120は、環境のニオイ成分を検知可能な位置に配置される必要がある。例えば、風路108などに配置することで実現できる。気体検知部120を用いて、電解水生成部105で生成した電解水を含む気体を検知しつつ、使用環境のニオイレベルを判定し、ニオイレベルに応じた電解水散布装置100の制御を行う。
【0068】
図10A~
図10Dは、
図7A~7Cの状態に加えて使用環境にニオイ発生がある場合の気体検知部120の出力の一例を示している。
図10Aは、電解水生成部105の一対の電極117の通電状態と経過時間を示す図である。電解水生成部105の一対の電極117に通電することで電気分解を行う。
図10Bは、使用環境のニオイ発生の状態と経過時間を示す図である。
図10Cは、
図10Aに示す一対の電極117の通電状態及び
図10Bに示すニオイの発生状態における気体検知部120の出力値を示す図である。
図10Dは、
図10Cに示す通電状態とニオイ発生状態における気体検知部の出力値の一例を示す図である。電解水生成部105で生成された電解水を含む検知気体に応じて変化した気体検知部120の出力値と、ニオイ発生による出力値が重畳して出力されている。使用環境にニオイが発生すると、ニオイが空間に拡散し、空間内で時間経過に伴い濃度が均一になる。このため、
図10Cで示すようにニオイ発生後に、気体検知部120はある程度安定した出力値を示す。ここで、一対の電極117が通電状態になると、電解水生成部105で生成された電解水を含む検知気体により、気体検知部120の出力が急峻な変化をする。さらに、一対の電極117が非通電状態になると気体検知部120の出力値がニオイ発生時の出力レベルに戻り、ニオイ発生がなくなることで、
図7Bと同等の出力値に戻る出力傾向を示す。
図10Dは、所定時間毎に取得した気体検知部120の複数の出力値において、ある時点において取得した出力値とある時点よりも所定時間前に取得された出力値との差分である変化量を示している。
【0069】
図10Dと
図7Cを比較すると、気体検知部120の変化量は使用環境のニオイの有無によらず同等の出力傾向を示している。つまり、ニオイ発生に関わらず電解水生成部105で生成された電解水を含む気体を検知できる。言い換えると、使用環境のニオイ判定を、気体検知部120を用いて行うことが可能である。使用環境のニオイ判定において、一対の電極117が通電状態である場合の気体検知部120の急峻な出力変化はニオイ判定の検知精度低下に繋がる。そのため、例えば、一対の電極117が通電状態である場合の気体検知部120の出力を除いて判定するなどの処理を行う。これにより、電解水生成部105で生成された電解水を含む検知気体の影響を低減し、使用環境のニオイレベルの判定が可能となる。このニオイレベル判定の結果に基づき、制御部130で電解水生成部105の一対の電極117への投入電力や、送風部107の風量などを制御する。気体検知部120で、電解水生成部105で生成した電解水を含む気体の検知と、使用環境のニオイレベル判定を行う。これにより、使用環境のニオイレベルに応じた電解水散布装置100の制御を、追加のセンサを設けることなく、コストアップを抑えつつ実現することができる。
【0070】
なお、複数の閾値範囲はユーザ操作などで変更可能としてもよい。例えば、気体検知部120が寿命などで感度劣化すると、気体検知部120の出力値の変化量が小さくなる。気体検知部120の感度劣化に対して、閾値範囲を調整することで、感度調整が可能となる。気体検知部120の製造ばらつきや寿命劣化、使用環境の違いによる影響など、実際の使用環境に適した設定が可能となる。感度設定の方法は、本体ケース101の天面に設けられた操作パネルに感度設定用のスイッチを設け、ユーザが操作することで設定できるようにしてもよい。また、設定値は実験的に決めた複数の固定値を設定してもよいし、任意の値を設定できるようにしてもよい。
【0071】
なお、上述の説明では、演算部133は、所定時間毎に取得された気体検知部120の出力値から変化量を求め、複数の閾値範囲毎に設定された加算値に基づいて検知気体の状態判別を行ったが、これに限られない。即ち、この状態判別結果を所定時間毎に取得して、最終的な検知気体の状態判別結果を算出してもよい。検知気体の状態判別結果を所定時間毎に取得して平均化処理することで、判別結果のばらつきが抑制できるため、判別精度を向上させることが可能となる。
【0072】
また、平均処理の方法として、移動平均処理を用いることで、時間経過に対応した検知気体の状態判別結果の出力が可能である。移動平均処理は、例えば、平均化するデータ数が5個の場合、取得したデータを含む過去5個のデータを用いて平均化する処理で、過去からのデータ変化の傾向を表す出力が得られるものである。電解水生成部105で生成された電解水を含む気体を検知する場合は、電解水の状態が時間経過に対してある程度緩やかな変化であるため、移動平均処理によって電解水の状態変化を適切に判別できる。単純な平均化処理では所定時間毎のデータを用いた状態判別のため、周囲環境の影響を受けて平均化処理を行う際に使用するデータに依存して急峻な変化が発生してしまう。移動平均化処理により、周囲環境の影響を抑えて、電解水生成部105で生成された電解水を含む検知気体の状態判別が可能となる。
【0073】
なお、上述の説明では気体判別部131で所定時間毎に取得された気体検知部120の出力値から変化量を求め、複数の閾値範囲毎に設定された加算値に基づいて検知気体の状態判別を行ったが、気体検知部120の出力値や、変化量から検知気体の状態判別を行ってもよい。上述したように、気体検知部120の出力値は、検知対象の気体により変化する。即ち、気体検知部120の出力値や変化量は検知気体の種類や濃度などに応じた変化をすることになる。つまり、この出力値や変化量に対して、特定の閾値と比較して検知対象の気体の存在の可能性を判別することが可能である。
【0074】
以上の通り、電解水散布装置100では、気体検知部120による検知対象の気体の出力値の変化量と予め定められた複数の閾値範囲とを比較することで、検知対象の気体の状態判別を高い精度で実現できる。
【0075】
以上、第1実施形態に基づき本開示を説明したが、本開示は上記第1実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記第1実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0076】
(第2実施形態)
空気中の細菌、真菌、ウイルス、臭い等の除去を行うために、電気分解により次亜塩素酸を含む電解水を生成して散布する電解水散布装置が知られている。
【0077】
従来、電解水散布装置における次亜塩素酸の生成量の検出方法として、電気化学的方法を用いて溶液濃度を検出する方法などが知られている(特許文献1)。また、複数のガスセンサの出力傾向を利用して気体の種類や濃度を検知する技術も知られている(特許文献2)。
【0078】
しかしながら、特許文献1に記載された検出方法は、溶液濃度の検出用の電極などを使用する必要があるため、コストアップするおそれがある。また、電気化学的方法を用いて検出する場合、電極の定期的な洗浄などが必要となり、検知精度の維持が難しいといった課題もある。さらに、特許文献2に記載された検出方法では、複数個のガスセンサを使用する必要があるため、コストアップするおそれがある。即ち、従来の方法により、生成した次亜塩素酸等の気体の状態(例えば濃度)を判別する場合、比較的煩雑でコストがかかるという問題がある。
【0079】
本開示は、例えば、次亜塩素酸等の気体の生成の有無や生成した次亜塩素酸等の気体の生成量といった検知気体の状態を比較的簡易かつ安価に判別できる電解水散布装置を提供することを目的とする。
【0080】
この目的を達成するために、本開示の電解水散布装置は、以下を特徴とするものである。即ち、本開示の電解水散布装置は、電解水生成部と、送風部と、制御部と、気体検知部とを備える。電解水生成部は、一対の電極によって電解水を生成する。送風部は、電解水生成部が生成した電解水を、吸気口から筐体内に吸い込んだ空気に接触させて吹出口から送風する。制御部は、電解水生成部の一対の電極に通電させる電力量及び送風部の風量を制御する。気体検知部は、電解水生成部で生成された電解水を含んだ気体を検知する。また、気体検知部は、気体検知部によって検知された検知気体に応じた出力値を出力する。また、制御部は、気体検知部から出力された出力値を一定の周期で所定の期間繰り返し取得し、各周期における出力値の変化量を算出し、各周期における変化量それぞれについて、変化量と複数の所定の範囲とを比較し、所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値を算出し、算出した所定の範囲毎の積算値の情報に基づいて、検知気体の状態を判別する。
【0081】
本開示の電解水散布装置によれば、電解水生成部で生成された電解水を含んだ気体を検知する気体検知部の出力値の変化量の出現頻度である積算値を所定の範囲毎に算出し、算出した積算値の情報に基づいて、検知気体の状態判別を行う。これにより、例えば、次亜塩素酸等の生成の有無や、生成した次亜塩素酸等の生成量といった検知気体の状態を比較的簡易かつ安価に判別することができるという効果を備えている。
【0082】
本開示に係る電解水散布装置は、一対の電極によって電解水を生成する電解水生成部と、電解水生成部が生成した電解水を、吸気口から筐体内に吸い込んだ空気に接触させて吹出口から送風する送風部と、電解水生成部の一対の電極に通電させる電力量及び送風部の風量を制御する制御部と、電解水生成部で生成された電解水を含んだ気体を検知する気体検知部と、を備えた電解水散布装置であって、気体検知部は、気体検知部によって検知された検知気体に応じた出力値を出力し、制御部は、気体検知部から出力された出力値を一定の周期で所定の期間繰り返し取得し、各周期における出力値の変化量を算出し、各周期における変化量それぞれについて、変化量と複数の所定の範囲とを比較し、所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値を算出し、算出した所定の範囲毎の積算値の情報に基づいて、検知気体の状態を判別する。
【0083】
これにより、本電解水散布装置は、活性酸素種を含んだ気体と活性酸素種が発生する際の副生成物である副次気体との両方を含む検知気体の出力値を用いて算出した複数の所定の範囲毎の積算値の情報に基づいて検知気体の状態を判別し得る。即ち、複数の所定の範囲毎の積算値の情報を用いることで、気体検知部の出力値が活性酸素種を含んだ気体と似た傾向を示す別の気体を、活性酸素種を含んだ気体と誤判別してしまうことを抑制できる。また、活性酸素種を含んだ気体が低濃度で判別精度が低くなる場合においても、活性酸素種と副次気体との両方の出力を考慮することでより正確に活性酸素種が生成しているかを判別することができる。
【0084】
また、制御部は、所定の範囲毎の変化量の積算値の比率に基づいて、検知気体内における特定の気体の生成を判別するという構成にしてもよい。
【0085】
これにより、本電解水散布装置は、活性酸素種を含んだ気体と活性酸素種が発生する際の副生成物である副次気体との両方を含む検知気体の出力値を用いて算出した複数の所定の範囲毎の積算値の比率に基づいてより正確に活性酸素種の生成を判別し得る。即ち、複数の所定の範囲毎の積算値の比率を用いることで、気体検知部の出力値が活性酸素種を含んだ気体と似た傾向を示す別の気体を、活性酸素種を含んだ気体と誤判別してしまうことを抑制できる。また、活性酸素種を含んだ気体が低濃度で判別精度が低くなる場合においても、活性酸素種と副次気体の両方の出力を考慮して判別することでより正確に活性酸素種の生成を判別することができる。
【0086】
また、制御部は、所定の範囲毎の変化量の積算値に基づいて、検知気体内における特定の気体の濃度を判別するという構成にしてもよい。
【0087】
これにより、活性酸素種を含んだ気体と活性酸素種が発生する際の副生成物である副次気体との両方を含む検知気体の出力値を用いて算出した複数の所定の範囲毎の積算値に基づいてより正確に活性酸素種の濃度(発生量)を判別し得る。
【0088】
また、積算値の比率は、変更可能であるという構成にしてもよい。
【0089】
これにより、電解水生成部の生成条件の違いや、気体検知部の特性ばらつきなどの特性変動がある場合でも、電解水生成部で生成された活性酸素種を含んだ気体の発生量の算出を行うことができるため、正確に電解水生成部で生成された活性酸素種の発生量を算出することができる。
【0090】
また、複数の所定の範囲は、変更可能であるという構成にしてもよい。
【0091】
これにより、気体検知部の特性ばらつきや経年劣化などの特性変動がある場合でも、電解水生成部で生成された活性酸素種を含んだ気体の発生量の算出を行うことができるため、正確に電解水生成部で生成された活性酸素種の発生量を算出することができる。
【0092】
また、出力値は、電圧値であるという構成にしてもよい。
【0093】
また、本開示の電解水散布装置を送風装置に適用してもよい。
【0094】
これにより、送風装置においても本開示記載の効果を実現できる。
【0095】
以下、本開示を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下の第2実施形態は、本開示を具体化した一例であって本開示の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して説明を省略している。さらに、各図面において、本開示に直接には関係しない各部の詳細については説明を省略している。
【0096】
まず、
図11~16を参照して、本開示の第2実施形態である電解水散布装置200について説明する。
図11は、電解水散布装置200の斜視図であり、電解水散布装置200を前面側から見た図である。
図12は、電解水散布装置200の斜視図であり、
図11のパネル203を開いた状態で電解水散布装置200を前面側から見た図である。
【0097】
図11、12に示す通り、電解水散布装置200は、略箱形状の本体ケース201を備え、本体ケース201の両側面には略四角形状の吸気口202を有している。本体ケース201の天面には、開閉式の吹出口206が設けられている。
図11、12では、吹出口206は閉じた状態である。
【0098】
本体ケース201の前面側から見て、右側の側面(本体ケース201の一方側の側面)である第1の本体側面201Aには、開閉可能なパネル203が設けられている。このパネル203には、吸気口102が設けられている。パネル203を開くと、
図12に示すように、縦長四角形状の開口204が現れる。開口204から、後述する貯水部214、給水部215、錠剤投入ケース218a等が取り出し可能に構成されている。
【0099】
図13は、電解水散布装置200の正面視中央部分を縦方向に切った断面図であり、電解水散布装置200を右側から見た図である。
図13は、電解水散布装置200が作る風路構成などを示している。
図14は、電解水散布装置200の正面視右側を縦方向に切った断面図であり、電解水散布装置200における右側から見た図である。
図14は、タンク部材などの電解水生成に関する周辺構成などを示している。
図15は、電解水散布装置200の機能をブロックで示した機能ブロック図である。
【0100】
図12~15に示すように、本体ケース201内には、電解水生成部205と、給水部215と、散布部219と、風路208とが備えられている。電解水生成部205は、一対の電極217と、貯水部214を備えている。
【0101】
図12、13に示すように、貯水部214は、天面を開口した箱形状をしており、水を貯水できる構造となっている。貯水部214は、本体ケース201の下部に配置され、本体ケース201から水平方向にスライドして着脱可能となっており、開口204から取り出すことができる。貯水部214は、給水部215から供給される水を貯水する。
【0102】
図14に示す一対の電極217は、電極部材(図示せず)を備えており、この電極部材が貯水部214内の水に浸かるように設置される。一対の電極217は、この電極部材に通電することにより、貯水部214内の塩化物イオンを含む水を電気化学的に電気分解し、活性酸素種を含む電解水を生成させる。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素分子と、その関連物質のことである。活性酸素種は、例えば、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシラジカル、或いは過酸化水素といった所謂狭義の活性酸素と、オゾン、次亜塩素酸(次亜ハロゲン酸)等といった所謂広義の活性酸素とを含む。
【0103】
一対の電極217は、電極部材への電気分解するための通電を行う通電時間と、その通電停止後の時間、つまり通電を行っていない時間である非通電時間を一周期として、その一周期を複数回繰り返すことで、電解水を生成する。電極部材に対し、非通電時間を設けることで、電極部材の寿命を延ばすことができる。なお、非通電時間に対して通電時間を長くすれば、一周期当たりにおいてより多くの量の活性酸素種を含む電解水が生成される。また通電時間に対して非通電時間を長くすれば、一周期当たりの活性酸素種の生成が抑えられる。さらに、通電時間における電力量を大きくすれば、より多くの量の活性酸素種を含む電解水が生成される。
【0104】
電解促進錠剤投入部218は、
図12に示すように、錠剤投入ケース218aと、錠剤投入ケース218a内に設けた錠剤投入部材(図示せず)と、錠剤投入ケース218aの上部に着脱自在に設けられた錠剤投入カバー218bとを備えている。錠剤投入ケース218aは、開口204から取り出し可能に構成される。ユーザは、取り出した錠剤投入ケース218aから錠剤投入カバー218bを外すことで、ユーザが錠剤投入ケース218a内に電解促進錠剤を装填できる。錠剤投入ケース218a内に装填された電解促進錠剤は、貯水部214へ投入されることになる。
【0105】
具体的には、電解促進錠剤投入部218は、電解促進錠剤を貯水部214へ投入する場合に、錠剤投入部材を回動させる。錠剤投入部材が回動すると、電解促進錠剤が錠剤投入ケース218aの底面の落下開口(図示せず)より貯水部214に落下する。電解促進錠剤投入部218は、錠剤投入ケース218aから貯水部214に落下した電解促進錠剤の個数をカウントし、錠剤投入ケース218aから貯水部214に電解促進錠剤が一錠落下したと判定すると、錠剤投入部材の回動を停止する。この電解促進錠剤が貯水部214内の水に溶け込むことにより、貯水部214内に塩化物イオンを含む水が生成される。なお、電解促進錠剤の一例は、塩化ナトリウムである。
【0106】
なお、電解水散布装置200は、電解促進錠剤投入部218を有していなくてもよい。この場合は、電解水散布装置200が、ユーザに対して電解促進錠剤の投入を指示する報知を表示や発音によって行い、ユーザに電解促進錠剤を直接、貯水部214へ投入させるようにしてもよい。
【0107】
また、電解水散布装置200は、
図15に示すように、気体検知部220及び制御部230を備えている。
【0108】
気体検知部220は、一対の電極217で生成された電解水を含む気体を検知し、検知した気体に応じた出力値を出力する。なお、本実施形態では、気体検知部220が出力する出力値が電圧値である場合を例に説明する。気体検知部220の詳細については、後述する。
【0109】
制御部230は、例えば、本体ケース201(
図11参照)の天面に設けられた操作パネルの裏側に設けられ、電解水散布装置200の制御を行う。制御部230は、一対の電極217による水の電気分解を制御し、また電解促進錠剤投入部218による電解促進錠剤の投入を制御するものである。特に、制御部230は、気体検知部220により出力された検知気体の出力値に基づいて、検知気体の状態判別を行うものである。この検知気体の状態判別の詳細については、
図16を参照して後述する。なお、制御部230の機能は、プロセッサ(図示せず)がメモリ(図示せず)に記憶されているプログラムを実行することで実現される。
【0110】
給水部215は、
図12に示すように、本体ケース201内部の正面視右側の側面に設置され、貯水部214から着脱可能な構造となっており、開口204から取り出すことができる。給水部215は、貯水部214の底面に設けられたタンク保持部214aに装着されている。給水部215は、水を貯水するタンク215aと、タンク215aの開口(図示せず)に設けられた蓋215bとを備えている。蓋215bの中央には、開閉部(図示せず)が設けられており、この開閉部が開くと、タンク215a内の水が、貯水部214へ供給される。
【0111】
具体的には、タンク215aの開口を下向きにして、タンク215aを貯水部214のタンク保持部214aに取り付けると、タンク保持部214aによって開閉部が開く。つまり、タンク215aに水を入れてタンク保持部214aに取り付けると、開閉部が開いて貯水部214に給水され、貯水部214内に水が溜まる。貯水部214内の水位が上昇して蓋215bのところまで到達すると、タンク215aの開口が水封されるので給水が停止し、タンク215aの内部には水が残り、貯水部214内の水位が下がった場合に都度、タンク215a内部の水が貯水部214に給水される。即ち、貯水部214内の水位は一定に保たれる。
【0112】
なお、電解水散布装置200は、給水部215としてタンク215aを有していなくてもよい。この場合は、電解水散布装置200に対して、水を供給するラインを水道よりひき、貯水部214内の水位が下がった場合に、貯水部214内の水位が所定位置に上昇するまで、水道水を供給するようにしてもよい。
【0113】
図13に示すように、散布部219は、送風部207と、フィルター部216とを備える。送風部207は、本体ケース201の中央部に設けられ、モータ部209と、モータ部209により回転するファン部210と、それらを囲むスクロール形状のケーシング部211とを備えている。モータ部209は、ケーシング部211に固定されている。
【0114】
ファン部210は、シロッコファンであり、モータ部209から水平方向に延びた回転軸209aに固定され、モータ部209は、上述のようにケーシング部211に固定されている。モータ部209の回転軸209aは、本体ケース201の前面側から背面側に延びている。ケーシング部211は、ケーシング部211の本体ケース201における上面側に吐出口212を備え、ケーシング部211の本体ケース201における背面側に吸込口213を有している。
【0115】
送風部207の風量は、ユーザの設定した風量に基づいて決定される。決定された風量に基づき、制御部230により、モータ部209の回転量が制御される。
【0116】
フィルター部216は、貯水部214に貯水された電解水と、送風部207によって本体ケース201内(即ち筐体内)に流入した室内空気とを接触させる部材である。フィルター部216は、円筒状に構成され、円周部分に空気が流通可能な孔を備えたフィルター216aを配置している。フィルター216aは、その一端が貯水部214の水に浸漬され、保水されるように、フィルター216aの中心軸を回転中心として貯水部214に回転自在に内蔵されている。そして、フィルター部216は、駆動部(図示しない)により回転され、電解水と室内空気を連続的に接触させる構造となっている。
【0117】
風路208は、吸気口202と吹出口206とを連通し、吸気口202から順に、フィルター部216、送風部207、吹出口206を備えている。モータ部209によってファン部210が回転すると、吸気口202から吸い込まれ風路208内に入った外部の空気は、順に、フィルター216a、送風部207、吹出口206を介して、電解水散布装置200の外部へ吹き出される。これにより、貯水部214にて生成された電解水が外部へ散布される。なお、電解水散布装置200は、必ずしも電解水そのものを撒くものでなくてもよく、結果的に生成した電解水由来(揮発を含む)の活性酸素種を散布するものであってもよい。
【0118】
気体検知部220は、例えば半導体式ガスセンサにより構成される。ガスセンサ素子は、金属酸化物材料と一体化されたヒーターで構成されている。センサに電源印加することで、金属酸化物材料がヒーターにより加熱状態となる。このガスセンサ素子では、検知可能な気体が金属酸化物材料に接触することで生じる抵抗値変化を検出する。例えば、清浄大気中では、金属酸化物材料表面が大気中の酸素の影響を受けて自由電子の移動が制限され、導電率が低下するために高い抵抗値を示している。この状態で検知可能な気体が金属酸化物材料表面に接触すると、金属酸化物材料表面の酸素が消費され、それまで制限されていた自由電子の動きが開放され、導電率が高くなるために低い抵抗値を示す。この抵抗値の違いを電圧出力などに変換して取得することで、検知対象となる気体の検知が可能となる。
【0119】
図16を用いて、検知気体を状態判別する方法について説明を行う。
図16は、検知気体の状態判別処理を示すフローチャートである。
【0120】
制御部230は、まず、一定の周期(例えば、1秒)毎に気体検知部220から出力される出力値(一例として電圧値)を所定の期間(例えば、1分)繰り返し取得する(ステップS21)。出力値の取得は、例えばA/Dコンバータなどを用いて行う。
【0121】
制御部230は、ステップS21で取得したある時点における出力値とある時点よりも一周期前に取得した出力値の差分を計算する。これを繰り返すことで、各周期における出力値の変化量を算出する(ステップS22)。
【0122】
次に、制御部230は、ステップS22で算出した各周期における変化量それぞれについて、複数の所定の範囲と比較する(ステップS23)。
【0123】
続いて、制御部230は、ステップS23の比較結果に基づいて複数の所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値を算出する(ステップS24)。最後に、ステップS24で算出した複数の所定の範囲毎の積算値に応じて検知気体の状態判別を行う(ステップS25)。
【0124】
なお、状態判別により得られる出力結果は、検知気体の種類や、検知気体の有無、検知気体の濃度などである。例えば、制御部230で算出された複数の所定の範囲毎の積算値の比率が、特定の比率であるかどうかを判定することで検知気体の種類や検知したい気体の有無を判別することができる。また、複数の所定の範囲毎の積算値の比率に加えて、積算値の値を濃度と相関のある値と比較することで、濃度値や濃度の大きさのレベルなどを出力結果として得ることも可能である。
【0125】
また、
図16では、制御部230は、一定の周期毎に所定の期間繰り返し取得された複数の出力値を用いて算出した各周期における出力値の変化量それぞれについて、複数の所定の範囲と比較し、所定の範囲毎の積算値を算出するものとして説明した(ステップS21~S24)。しかしながら、
図16に示す検知気体の状態判別処理のフローチャートは一例であり、例えば、ステップS21~S24の処理を以下のように変更し、変更したステップS21~S24の処理を一定の周期毎に所定の期間(あるいは一定回数)繰り返し実行した後にステップS25の処理を行うようにしてもよい。即ち、ステップS21を、気体検知部220から出力される出力値を1回だけ取得する処理に変更し、ステップS22を、変更後のステップS21で取得された出力値とそれよりも一周期前に取得された出力値の差分を算出することで変化量を算出する処理に変更する。また、ステップS23を、変更後のステップS22で得られた変化量と複数の所定の範囲と比較する処理に変更する。また、ステップS24を、変更後のステップS23の比較結果に基づいて、複数の所定の範囲のうち、変更後のステップS22で得られた変化量が含まれる範囲の出現数である積算値を算出する処理に変更する。そして、この変更後のステップS21~S24の処理を一定周期毎に所定の期間(例えば1分)あるいは一定回数(例えば60回)繰り返し実行する。これにより、
図16に示すステップS22~S24の処理結果と同様に、各周期における出力値の変化量を算出し、各周期における変化量それぞれについて、複数の所定の範囲とを比較し、複数の所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値を算出することできる。
【0126】
図17A~19を用いて、具体的に検知気体を状態判別する方法について説明する。
図17A~17Cは電解水生成部205の一対の電極217に通電し、電気分解を行っているときの気体検知部220の出力値(電圧値)と変化量の一例を示している。気体検知部220は、電解水生成部205の近傍などに配置され、電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む気体を検知できる構成である。電解水生成部205を構成する一対の電極217は、貯水部214内に設置される。
図17Aは、電解水生成部205の一対の電極217の通電状態と経過時間を示す図である。一対の電極217に電流を流すことで電気分解を行う。
図17Bは、
図17Aに示す一対の電極217の通電状態における気体検知部220の出力値を示す図である。電気分解が行われると、気体検知部220は電解水による次亜塩素酸を含む検知気体に応じて出力が変化する。一定の周期毎に取得した気体検知部220の複数の出力値において、ある時点において取得した出力値とある時点よりも一周期前に取得された出力値との差分である変化量を求める。この変化量を
図17Cで示している。
【0127】
図17Bのような出力傾向を示すのは、気体検知部220が電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む気体を検知できる位置に設置されているためである。この位置関係にない場合、気体検知部220は電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む気体を検知できないため、気体検知部220の出力はある一定の安定した出力を示すことになる。気体検知部220が電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む気体を検知できる位置にある場合、気体検知部220が副生成物である副次気体などを含む検知気体による影響で、出力が急峻に増減する傾向を示す。すなわち、気体検知部220の出力が、一定の周期毎に所定の変化をすることで、特定の物質を含んだ気体であると認識することができる。
【0128】
図18は、
図17Aに示す電極通電中において特定条件で電気分解を行ったときの、所定の期間における気体検知部220の出力値の変化量の出現頻度を一例として示したものである。同じ電気分解の条件で長時間データを取得した結果を示しており、気体検知部220の出力値の変化量が取得したデータに対して何回発生したかを示している。この出現頻度の出力傾向は、電解水生成部205と気体検知部220の位置関係や、電気分解の生成条件が決まると、多少のばらつきはあるがある程度同様の傾向を示す。
【0129】
図19は、各周期における変化量を複数の所定の範囲に分類した図である。所定の期間において算出された複数の変化量それぞれについて、
図19の複数の所定の範囲と比較することで、複数の所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値を算出する。一例として、
図18、
図19に示すように、変化量に対して、複数の所定の範囲を次のように設定する。閾値範囲d2は、変化量が-0.05Vより小さい領域を示す。閾値範囲c2は、変化量が-0.05V以上で-0.02Vより小さい領域を示す。閾値範囲b2は、変化量が-0.02V以上で-0.01Vより小さい領域を示す。閾値範囲a2は、変化量が-0.01V以上で0Vより小さい領域を示す。閾値範囲a1は、変化量が0V以上で+0.01Vより小さい領域を示す。閾値範囲b1は、変化量が+0.01V以上で+0.02Vより小さい領域を示す。閾値範囲c1は、変化量が+0.02V以上で+0.05Vより小さい領域を示す。閾値範囲d1は、変化量が+0.05V以上の領域を示す。
【0130】
図18の例では、所定の範囲として、閾値範囲b1と閾値範囲b2と閾値範囲c2の出現頻度が大きい。一例であるが、閾値範囲の出現頻度のピークは、電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体と副生成物である副次気体によって気体検知部220の出力値が変化する。これにより、閾値範囲b1と閾値範囲b2と閾値範囲c2のピークが大きくなる傾向を示すことが実験的に確認されている。電解水生成部205と気体検知部220の設置位置や、電気分解の生成条件、気体検知部220のセンサ特性の違いなどにより、特定の閾値範囲の出現頻度が大きくなる。また一方で、検知気体の種類や濃度などが変化すると、気体検知部220の一定の周期における出力値の出力変化の傾向が変わる。例えば、半導体式ガスセンサで考えると、金属酸化物表面の酸素の消費が、発生する気体の種類や濃度により異なる。このように、制御部230で算出した変化量の出現頻度の傾向に基づいて、検知気体の種類や濃度などの検出が可能となる。
【0131】
電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体と副生成物である副次気体による気体検知部220の出力値の変化量は、上述したように、閾値範囲b1と閾値範囲b2と閾値範囲c2で示す出現頻度のピークが多くなる傾向を示す。制御部230は、このような出現頻度のピークの傾向に対して、
図19で示す複数の所定の範囲と比較することで、複数の所定の範囲毎の出現数である積算値の算出を行う。気体検知部220の変化量が
図18で示す出現頻度の傾向を示す場合、複数の所定の範囲毎の積算値は、
図18の各閾値範囲の面積と比例する傾向を示す。複数の所定の範囲の積算値の比率が、
図18の各閾値範囲の面積と比例の関係性を示す場合に、電解水生成部205で生成された電解水として、次亜塩素酸が存在すると判別できる。これにより検知気体の識別が可能となる。具体的な例として、閾値範囲b1が次亜塩素酸を含む検知気体による出力値の変化量で、閾値範囲b2と閾値範囲c2が副生成物である副次気体による出力値の変化量とする。複数の所定の範囲毎の積算値の比率が
図18の各閾値範囲の面積に比例する関係を示すことで、想定された電解水の生成条件で次亜塩素酸と副次気体が生成されていると判別できる。次亜塩素酸の生成時には副生成物も同時に生成される。この副生成物の反応も考慮した判別を行うことで、次亜塩素酸の生成を正確に判別することができる。つまり、閾値範囲a1、閾値範囲a2、閾値範囲b1、閾値範囲b2、閾値範囲c1、閾値範囲c2、閾値範囲d1、閾値範囲d2の積算値の比率が
図18の各閾値範囲の面積と比例した比率を示す場合に、電解水生成部205で生成された電解水として、次亜塩素酸が含まれるかどうかを判別できる。
図18を例として複数の所定の範囲毎の積算値の具体例を示す。
図18では、所定の期間において算出した複数の所定の範囲毎の積算値は、閾値範囲d2は2回、閾値範囲c2は30回、閾値範囲b2は20回、閾値範囲a2は1回、閾値範囲a1は3回、閾値範囲b1は40回、閾値範囲c1は5回、閾値範囲d1は1回である。前述したように、複数の所定の範囲毎の積算値の比率が、上記の比率の関係性を示す場合、電解水生成部205で生成された電解水として、次亜塩素酸が含まれるかと判別できる。なお、比率の関係性を有するかの判別は、複数の所定の範囲に対して任意のばらつき範囲を設定して判別してもよい。例えば、閾値範囲d2の積算値が2回±10%、閾値範囲c2の積算値が30回±10%、閾値範囲b2の積算値が20回±10%、閾値範囲a2の積算値が1回±10%、閾値範囲a1の積算値が3回±10%、閾値範囲b1の積算値が40回±10%、閾値範囲c1の積算値が5回±10%、閾値範囲d1の積算値が1回±10%であるとき、複数の所定の範囲毎の積算値の比率が、
図18の各閾値範囲の面積と比例した関係性を満たすと判別してもよい。即ち、電解水生成部205で生成された電解水として、次亜塩素酸が含まれると判別してもよい。
【0132】
上述したように、設置位置や生成条件などが決まると出現頻度の傾向が同等になる。よって、電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体により、所定の期間において算出された複数の変化量と複数の所定の範囲とを比較して算出した、複数の所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値の大きさを用いることで、次亜塩素酸の濃度を検出する精度を向上させている。一例として、
図18で示す出現頻度の傾向を示す場合に、特定の濃度で次亜塩素酸が生成されていると仮定して説明を行う。電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸の濃度が
図18の条件よりも高い場合、想定された電解水の生成条件で次亜塩素酸と副生成物が生成されていることから、出現頻度の傾向は
図18の各閾値範囲の面積と比例の関係を示す。そのため、複数の所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値の比率は同等になる。ただし、次亜塩素酸や副生成物の濃度が高くなるため、全体的に出現頻度が大きくなり、複数の所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値が大きな出力値を示す。一方、検知気体の種類が異なる場合や次亜塩素酸の濃度が低い場合は、出現頻度の傾向が変わり、各閾値範囲における積算値の比率の関係性が次亜塩素酸の濃度が高い場合と異なる出力を示すことになる。また、各閾値範囲における積算値が小さく特定の気体の検出が困難になる。このように、複数の所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値の比率に加え、積算値の大きさを用いることで、次亜塩素酸の生成量を正確に判別することができる。
【0133】
また、各閾値範囲における積算値の比率に加えて、各閾値範囲における積算値の大きさを特定の比較閾値と比較し、特定の閾値以上となる場合に、検知対象とする気体が存在すると判別できる。まず、閾値範囲a1、閾値範囲a2、閾値範囲b1、閾値範囲b2、閾値範囲c1、閾値範囲c2、閾値範囲d1、閾値範囲d2の積算値の比率が、
図18の各閾値範囲の面積と比例の関係を示すかを判定する。さらに、各閾値範囲における積算値が、各閾値範囲に対して設定された特定の閾値より大きい場合に、検知対象とする気体が存在すると判別する。
【0134】
また、検知対象とする気体の濃度を別途計測器などで計測し、濃度と相関のある比較閾値と比較することで濃度値に換算することも可能である。この場合、各閾値範囲における比較閾値は、次亜塩素酸濃度の条件などに応じて設定された閾値を設定することで実現できる。
【0135】
なお、上記の説明では、所定の範囲として閾値範囲a1~d2の8個の領域の場合で説明したが、複数の所定の範囲として各閾値範囲の電圧範囲をより狭く設定し、より多くの所定の範囲による判定を行ってもよい。電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体による出現頻度の傾向に対して、細かく所定の範囲を設定するため、次亜塩素酸や副生成物である副次気体も考慮し、検知対象とする気体を精度良く検知できる。
【0136】
なお、上記の説明では、所定の範囲として閾値範囲a1~d2の8個全ての領域における積算値の比率で判定したが、全ての領域を使用せずに、特定の領域の積算値だけを用いた比率から検知気体の状態判別を行ってもよい。電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体による出現頻度の傾向は、電気分解の条件などである程度決まるため、例えば、閾値範囲b1と閾値範囲b2と閾値範囲c2の比率のみを用いた判定でも、ある程度精度良く判別することが可能である。
【0137】
なお、使用環境のニオイレベルに応じた制御のために、気体検知部220を共用してもよい。ここで示すニオイとは、例えばタバコの煙によるニオイなどを想定している。この場合は、気体検知部220は、環境のニオイ成分を検知可能な位置に配置される必要がある。例えば、風路208などに配置することで実現できる。気体検知部220を用いて、電解水生成部205で生成した電解水による次亜塩素酸を含む気体を検知しつつ、使用環境のニオイレベルを判定し、ニオイレベルに応じた電解水散布装置200の制御を行う。
【0138】
図20A~20Dは、
図17A~17Cの状態に加えて使用環境にニオイ発生がある場合の気体検知部220の出力の一例を示している。
図20Aは、電解水生成部205の一対の電極217の通電状態と経過時間を示す図である。電解水生成部205の一対の電極217に通電することで電気分解を行う。
図20Bは、使用環境のニオイ発生の状態と経過時間を示す図である。
図20Cは、
図20Aに示す一対の電極217の通電状態及び
図20Bに示すニオイの発生状態における気体検知部220の出力値を示す図である。電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体に応じて変化した気体検知部220の出力値と、ニオイ発生による出力値が重畳して出力されている。使用環境にニオイが発生すると、ニオイが空間に拡散し、空間内で時間経過に伴い濃度が均一になる。このため、
図20Cで示すようにニオイ発生後に、気体検知部220はある程度安定した出力値を示す。ここで、一対の電極217が通電状態になると、電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体により、気体検知部220の出力が急峻な変化をする。さらに、一対の電極217が非通電状態になると気体検知部220の出力値がニオイ発生時の出力レベルに戻り、ニオイ発生がなくなることで、
図17Bと同等の出力値に戻る出力傾向を示す。
図20Dは、一定周期毎に取得した気体検知部220の複数の出力値において、ある時点において取得した出力値とある時点よりも一周期前に取得された出力値との差分である変化量を示している。
【0139】
図20Dと
図17Cを比較すると、気体検知部220の変化量は使用環境のニオイの有無によらず同等の出力傾向を示している。つまり、ニオイ発生に関わらず電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む気体を検知できる。言い換えると、使用環境のニオイ判定を、気体検知部220を用いて行うことが可能である。使用環境のニオイ判定において、一対の電極217が通電状態である場合の気体検知部220の急峻な出力変化はニオイ判定の検知精度低下に繋がる。そのため、例えば、一対の電極217が通電状態である場合の気体検知部220の出力を除いて判定するなどの処理を行う。これにより、電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体の影響を低減し、使用環境のニオイレベルの判定が可能となる。このニオイレベル判定の結果に基づき、制御部230で電解水生成部205の一対の電極217への投入電力や、送風部207の風量などを制御する。気体検知部220で、電解水生成部205で生成した電解水による次亜塩素酸を含む気体の検知と、使用環境のニオイレベル判定を行う。これにより、使用環境のニオイレベルに応じた電解水散布装置200の制御を、追加のセンサを設けることなく、コストアップを抑えつつ実現することができる。
【0140】
なお、複数の所定の範囲を決める閾値範囲はユーザ操作などで変更可能としてもよい。例えば、気体検知部220が寿命などで感度劣化すると、気体検知部220の出力値の変化量が小さくなる。気体検知部220の感度劣化に対して、閾値範囲を調整することで、感度調整が可能となる。気体検知部220の製造ばらつきや寿命劣化、使用環境の違いによる影響など、実際の使用環境に適した設定が可能となる。感度設定の方法は、本体ケース201の天面に設けられた操作パネルに感度設定用のスイッチを設け、ユーザが操作することで設定できるようにしてもよい。また、設定値は実験的に決めた複数の固定値を設定してもよいし、任意の値を設定できるようにしてもよい。
【0141】
なお、積算値の比率は変更可能としてもよい。例えば、電解水散布装置200として、電解水生成部205の一対の電極217の通電状態により、検知気体の副次気体の生成量が異なる。具体的には、電解水生成部205の一対の電極217に通電して電気分解する場合と、非通電状態にして電気分解しない動作の場合である。通電時と非通電時の気体検知部220で検知される気体は、副生成物である副次気体の生成量や有無などが異なる。そのため、積算値の比率を変更可能とすることで、電解水生成部205の一対の電極217への通電状態などが異なる場合でも精度良く検知することができる。また、気体検知部220の製造ばらつきや寿命劣化、使用環境の違いによる影響などで、センサ特性が変動する場合なども、積算値の比率を変更可能とすることで、精度良く検知することができる。積算値の比率の設定方法は、気体検知部220に使用するセンサの種類や特性などに応じて任意に設定できるようにしてもよい。また、制御部230が、電解水散布装置200の電解水生成状態などに応じて、自動的に切り替えてもよい。積算値の比率の設定値は、実験的に決めた固定値を設定してもよいし、任意の値を設定できるようにしてもよい。
【0142】
なお、上述の説明では、一定の周期で所定の期間、気体検知部220から出力された出力値を繰り返し取得し、各周期における出力値の変化量を算出し、各周期において算出した複数の変化量それぞれを、複数の所定の範囲と比較している。そして、算出した複数の変化量それぞれを複数の所定の範囲のいずれかに分類し、所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値を算出し、算出した複数の所定の範囲毎の積算値の情報に基づいて検知気体の状態判別を行ったが、これに限られない。即ち、この状態判別結果を所定時間毎に取得して、最終的な検知気体の状態判別結果を算出してもよい。検知気体の状態判別結果を所定時間毎に取得して平均化処理することで、判別結果のばらつきが抑制できるため、判別精度を向上させることが可能となる。
【0143】
また、平均処理の方法として、移動平均処理を用いることで、時間経過に対応した検知気体の状態判別結果の出力が可能である。移動平均処理は、例えば、平均化するデータ数が5個の場合、取得したデータを含む過去5個のデータを用いて平均化する処理で、過去からのデータ変化の傾向を表す出力が得られるものである。電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む気体を検知する場合は、電解水の状態が時間経過に対してある程度緩やかな変化であるため、移動平均処理によって電解水の状態変化を適切に判別できる。単純な平均化処理では所定時間毎のデータを用いた状態判別のため、周囲環境の影響を受けて平均化処理を行う際に使用するデータに依存して急峻な変化が発生してしまう。移動平均化処理により、周囲環境の影響を抑えて、電解水生成部205で生成された電解水による次亜塩素酸を含む検知気体の状態判別が可能となる。
【0144】
以上の通り、電解水散布装置200では、気体検知部220から出力値を一定の周期で所定の期間繰り返し取得し、各周期における出力値の変化量を算出する。さらに、算出した各周期における複数の変化量と予め定められた複数の所定の範囲とを比較し、複数の所定の範囲毎の変化量の出現数である積算値を算出する。この複数の所定の範囲における積算値の比率に基づく判別により、電解水散布装置200では、検知対象の気体の状態判別を高い精度で実現できる。
【0145】
以上、実施形態に基づき本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本開示に係る電解水散布装置は、空気中の細菌、真菌、ウイルス、臭い等の除去(不活性化を含む)を行う電解水散布装置として有用である。
【符号の説明】
【0147】
100 電解水散布装置
101 本体ケース
101A 第1の本体側面
102 吸気口
103 パネル
104 開口
105 電解水生成部
106 吹出口
107 送風部
108 風路
109 モータ部
109a 回転軸
110 ファン部
111 ケーシング部
112 吐出口
113 吸込口
114 貯水部
114a タンク保持部
115 給水部
115a タンク
115b 蓋
116 フィルター部
116a フィルター
117 一対の電極
118 電解促進錠剤投入部
118a 錠剤投入ケース
118b 錠剤投入カバー
119 散布部
120 気体検知部
130 制御部
131 気体判別部
132 比較部
133 演算部
200 電解水散布装置
201 本体ケース
201A 第1の本体側面
202 吸気口
203 パネル
204 開口
205 電解水生成部
206 吹出口
207 送風部
208 風路
209 モータ部
209a 回転軸
210 ファン部
211 ケーシング部
212 吐出口
213 吸込口
214 貯水部
214a タンク保持部
215 給水部
215a タンク
215b 蓋
216 フィルター部
216a フィルター
217 一対の電極
218 電解促進錠剤投入部
218a 錠剤投入ケース
218b 錠剤投入カバー
219 散布部
220 気体検知部
230 制御部