(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】熱伝導シートおよびこれを用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20230908BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230908BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
H01L23/36 D
B32B9/00 A
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2020571055
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020000984
(87)【国際公開番号】W WO2020162117
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019021381
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019046614
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】小西 彰仁
(72)【発明者】
【氏名】河村 典裕
(72)【発明者】
【氏名】白土 洋次
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚紀
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139364(WO,A1)
【文献】特開2010-010599(JP,A)
【文献】特開2008-080672(JP,A)
【文献】特開2009-117594(JP,A)
【文献】特開2007-266518(JP,A)
【文献】特開2003-198166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
B32B 9/00
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の主面を有するグラファイトシートと、
前記グラファイトシートの前記主面の上に設けられ、かつ前記主面の少なくとも対向する2辺を前記グラファイトシートからはみ出すように覆う取付シートと、を備え、
前記グラファイトシートの前記主面は、前記取付シートに覆われていない第1領域と前記取付シートに覆われた第2領域と、を有し、
前記グラファイトシートは初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えたときの厚みをT1としたとき、前記取付シートの厚みを(T0―T1)よりも薄くした、熱伝導シート。
【請求項2】
矩形状の主面と、前記主面とは反対側の裏面と、を有するグラファイトシートと、
前記グラファイトシートの前記主面の上に設けられ、かつ前記主面の少なくとも対向する2辺を前記グラファイトシートからはみ出すように覆う取付シートと、
前記グラファイトシートの前記裏面に設けられたセパレータと、
前記グラファイトシートの前記主面の上かつ前記取付シートの上に設けられた保護フィルムと、を備え、 前記グラファイトシートの前記主面は前記取付シートに覆われていない第1領域と前記取付シートに覆われた第2領域とを有し、
前記取付シートの前記グラファイトシートからはみ出た部分の端部は前記保護フィルムと当接している、熱伝導シート。
【請求項3】
前記グラファイトシートは初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えたときの厚みをT1としたとき、前記取付シートの厚みを(T0―T1)よりも薄くした、請求項2記載の熱伝導シート。
【請求項4】
前記保護フィルムの前記取付シートと対向する面には微粘着層が設けられている、請求項2記載の熱伝導シート。
【請求項5】
前記セパレータには、前記取付シートの前記グラファイトシートからはみ出た前記部分と接着している領域を横断するスリットが設けられている、請求項2記載の熱伝導シート。
【請求項6】
前記取付シートと前記セパレータとは接着しており、かつ前記保護フィルムと前記取付シートとは接着しており、前記取付シートと前記セパレータとの間の接着力を、前記保護フィルムと前記取付シートとの間の接着力よりも弱くした、請求項2記載の熱伝導シート。
【請求項7】
前記取付シートと前記保護フィルムとの間にスペーサをさらに備え、前記グラファイトシートからはみ出た部分の前記取付シートの端部は前記スペーサを介して前記保護フィルムと当接している、請求項2記載の熱伝導シート。
【請求項8】
前記取付シートは、前記グラファイトシートの前記主面の外周の全てを覆っている、請求項1から7のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項9】
前記グラファイトシートは長方形状であり、対向する2つの長辺はすべて前記取付シートで覆われ、短辺は、前記取付シートで覆われていない第1部分と前記取付シートで覆われた第2部分とを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項10】
発熱部品と、放熱部材と、請求項
1に記載の熱伝導シートと、を備え、
前記発熱部品と前記放熱部材との間に前記熱伝導シートが設けられ、
前記熱伝導シートは、前記取付シートによって前記放熱部材または前記発熱部品に貼り付けられ、
前記グラファイトシートの前記第
1領域が圧縮された状態で、前記熱伝導シートが前記発熱部品および前記放熱部材に当接されている、電子機器。
【請求項11】
前記発熱部品の上面が前記取付シートに当接し、
前記発熱部品の側面から端子が引き出され、
前記端子が引き出された前記側面に前記グラファイトシートの辺は位置し、前記グラファイトシートの前記辺は全て前記取付シートで覆われている、請求項10記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発熱部品と放熱部品との間に設けられる熱伝導シートおよびこれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年電子機器の高性能化に伴い、機器内部で発生する熱量が大きくなり、熱対策が重要となってきている。このため例えば発熱部品と放熱部品との間にシリコーングリスのようなサーマルインターフェイスマテリアル(以下TIMと記す)を設けて熱を速やかに伝導させることが行われている。しかしながらシリコーングリスを用いた場合、発熱部品および放熱部品が熱により膨張収縮を繰り返すと、いわゆるポンプアウトと呼ばれる次第にシリコーングリスが外部に排出される現象が生じ、熱伝導が劣化しやすくなっていた。そのためグラファイトシートのような熱伝導シートが用いられる場合がある。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかし、グラファイトシートは滑りやすいため、正確な位置に配置することが難しいという問題がある。
【0006】
本開示は、位置決めが容易で、発熱部品および放熱部品の凹凸を吸収して熱抵抗を下げることができる熱伝導シートおよびこれを用いた電子機器を提供する。
【0007】
上記問題を解決するために、本開示にかかる発明(以下、本発明という)は、以下の構成を備える。すなわち、本発明の熱伝導シートは、グラファイトシートと、取付シートと、を備える。グラファイトシートは、矩形状の主面を有する。取付シートは、グラファイトシートの主面の上に設けられる。また、取付シートは、グラファイトシートの主面の少なくとも対向する2辺をはみ出すように覆う。グラファイトシートの主面は取付シートに覆われた第1領域と取付シートに覆われていない第2領域とを有する。また、グラファイトシートは初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えたときの厚みをT1としたとき、取付シートの厚みを(T0―T1)よりも薄くする。
【0008】
また、本発明の熱伝導シートは、グラファイトシートと、取付シートと、セパレータと、保護フィルムと、を備える。グラファイトシートは、矩形状の主面と、主面に対向する裏面と、を有する。取付シートは、グラファイトシートの主面の上に設けられる。取付シートは、グラファイトシートの主面の少なくとも対向する2辺からはみ出すようにグラファイトシートを覆う。セパレータは、グラファイトシートの裏面に設けられる。保護フィルムは、グラファイトシートの主面上かつ取付シートの上に設けられる。グラファイトシートの主面は、取付シートに覆われた第1領域と取付シートに覆われていない第2領域を有する取付シート。また、グラファイトシートからはみ出た部分の取付シートの端部は保護フィルムと当接している。
【0009】
本発明の熱伝導シートにより、グラファイトシートからはみ出した部分の取付シートで放熱部材あるいは発熱部品に固定することができる。それとともに、熱伝導シートに圧力を加えた場合、取付シートの厚みよりもグラファイトシートの方が圧縮されやすい。そのため、露出した部分のグラファイトシートを放熱部材および発熱部品に密着させることができ、安定した熱伝導性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1の実施形態における熱伝導シートの分解斜視図である。
【
図2】同実施形態における熱伝導シートの上面図である。
【
図3】同実施形態における熱伝導シートの
図2に示すIII-III線断面図である。
【
図4】同実施形態の第1変形例に係る熱伝導シートの上面図である。
【
図5】同実施形態の第2変形例にかかる熱伝導シートの上面図である。
【
図6】同実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の断面図である。
【
図7A】同実施形態における熱伝導シートを電子機器に取り付ける際の工程を示す断面図である。
【
図7B】同実施形態における熱伝導シートを電子機器に取り付ける際の工程を示す断面図である。
【
図8】同実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の第1変形例にかかる断面図である。
【
図9】同実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の第1変形例にかかる上面図である。
【
図10】同実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の第2変形例にかかる断面図である。
【
図11】同実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の第2変形例にかかる上面図である。
【
図12】同実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の第3変形例にかかる断面図である。
【
図13】同実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の第3変形例にかかる上面図である。
【
図14】本開示の第2の実施形態における熱伝導シートの断面図である。
【
図15】同実施形態における熱伝導シートの
図14に示す領域XVにおける拡大断面図である。
【
図16】同実施形態における熱伝導シートの
図14に示す領域XVIにおける拡大断面図である。
【
図17】同実施形態における熱伝導シートの下面図である。
【
図18】同実施形態における第1変形例の熱伝導シートの上面図である。
【
図19】同実施形態における第1変形例の熱伝導シートの下面図である。
【
図20】同実施形態における第1変形例の熱伝導シートの
図18に示すXX-XX断面図である。
【
図21】同実施形態における第2変形例の熱伝導シートの上面図である。
【
図22】同実施形態における第3変形例の熱伝導シートの上面図である。
【
図23】同実施の形態における第4変形例の熱伝導シートの断面図である。
【
図24】同実施の形態における第5変形例の熱伝導シートの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の第1の態様に係る熱伝導シートは、グラファイトシートと、取付シートと、を備える。グラファイトシートは、矩形状の主面を有する。取付シートは、グラファイトシートの主面の上に設けられる。また、取付シートは、グラファイトシートの主面の少なくとも対向する2辺からはみ出すようにグラファイトシートを覆う。グラファイトシートの主面は取付シートに覆われていない第1領域と取付シートに覆われた第2領域とを有する。また、グラファイトシートは初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えたときの厚みをT1としたとき、取付シートの厚みを(T0―T1)よりも薄くする。
【0012】
また、本開示の第2の態様に係る熱伝導シートは、グラファイトシートと、取付シートと、セパレータと、保護フィルムと、を備える。グラファイトシートは、矩形状の主面と、主面と反対側の裏面と、を有する。取付シートは、グラファイトシートの主面の上に設けられる。取付シートは、グラファイトシートの主面の少なくとも対向する2辺をはみ出すように覆う。セパレータは、グラファイトシートの裏面に設けられる。保護フィルムは、グラファイトシートの主面上かつ取付シートの上に設けられる。グラファイトシートの主面は取付シートに覆われていない第1領域と取付シートに覆われた第2領域とを有する。また、グラファイトシートからはみ出た部分の取付シートの端部は保護フィルムと当接している。
【0013】
これらの態様の熱伝導シートにより、グラファイトシートからはみ出した部分の取付シートで放熱部材あるいは発熱部品に固定することができる。それとともに、熱伝導シートに圧力を加えた場合、取付シートの厚みよりもグラファイトシートの方が圧縮されやすい。そのため、露出した部分のグラファイトシートを放熱部材および発熱部品に密着させることができ、安定した熱伝導性を確保することができる。
【0014】
本開示の第3の態様に係る熱伝導シートは、第2の態様において、グラファイトシートの初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えたときのグラファイトシートの厚みをT1としたとき、取付シートの厚みを(T0―T1)よりも薄くしている。
【0015】
本開示の第4の態様に係る熱伝導シートは、第2の態様において、保護フィルムの取付シートと対向する面には微粘着層が設けられている。
【0016】
本開示の第5の態様に係る熱伝導シートは、第2の態様において、セパレータには、取付シートのグラファイトシートからはみ出た部分と接着している領域とを横断するスリットが設けられている。
【0017】
本開示の第6の態様に係る熱伝導シートは、第2の態様において、取付シートとセパレータとは接着しており、かつ保護フィルムと取付シートとは接着しており、取付シートとセパレータとの間の接着力を、保護フィルムと取付シートとの間の接着力よりも弱くしている。
【0018】
本開示の第7の態様に係る熱伝導シートは、第2の態様において、取付シートと保護フィルムとの間にスペーサをさらに備えている。そしてグラファイトシートからはみ出た部分の取付シートの端部はスペーサを介して保護フィルムと当接している。
【0019】
本開示の第8の態様に係る熱伝導シートは、第1~第7のいずれか1つの態様において、取付シートがグラファイトシートの前記主面の外周の全てを覆っている。
【0020】
本開示の第9の態様に係る熱伝導シートは、第1~第7のいずれか1つの態様において、グラファイトシートが長方形状である。グラファイトシートの長辺側2辺はすべて取付シートで覆われている。そして、グラファイトシートの短辺は、取付シートで覆われていない第1部分と取付シートで覆われた第2部分とを有する。
【0021】
本開示の第10の態様に係る電子機器は、放熱部材と、第1~第7のいずれか1つの態様に係る熱伝導シートと、を備える。当該電子機器は、発熱部品と放熱部材との間に熱伝導シートが設けられる。熱伝導シートは、グラファイトシートの外周部で取付シートによって放熱部材または発熱部品に貼り付けられている。また、第1領域のグラファイトシートが圧縮された状態で熱伝導シートが発熱部品および放熱部材に当接されている。
【0022】
本開示の第11の態様に係る電子機器は、第10の態様に係る電子機器に対し、発熱部品の上面が取付シートに当接され、発熱部品の側面から端子が引き出されている。そして、端子が引き出された辺に位置するグラファイトシートの辺は全て取付シートで覆われている。
【0023】
以下、本開示の実施の形態における熱伝導シートについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す熱伝導シートおよび電子機器は、いずれも一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0024】
(第1の実施形態)
(熱伝導シート)
図1は本開示の第1の実施形態における熱伝導シート11の分解斜視図であり、
図2は熱伝導シート11の上面図であり、
図3は熱伝導シート11のIII-III線断面図ある。グラファイトシート12は、縦約60mm、横約90mm(約60mm×90mm)の長方形状の大きさを有し、厚さが約100μmの熱分解グラファイトシートを用いている。このグラファイトシート12は高い圧縮性を有するものを用いるのが望ましく、100kPaの圧力を加えた場合の圧縮率は約35%となっている。ここで圧縮率とは、初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えた状態での厚さをT1として、(T0-T1)/T0の値をパーセント表示したものである。本実施の形態において、グラファイトシート12の厚さは、100kPaの圧力を加える前が約100μmであり、100kPaの圧力を加えた状態での厚みが約65μmである。
【0025】
図3に示すように、グラファイトシート12の一方の面(主面)には取付シート13が設けられている。この取付シート13はグラファイトシート12の外周に沿って幅約10mmで、グラファイトシート12の外周部から約5mmはみ出すように設けられている。なお、取付シート13は、グラファイトシート12を電子部品等に取り付けるためのシートである。取付シート13は基材13bと粘着層13aとからなり、基材13bのグラファイトシート12に対向する面に粘着層13aが設けられている。粘着層13aを含めた取付シート13の厚さは約10μmとなっている。そのため、取付シート13の厚みは(T0―T1)よりも薄くなっている。また取付シート13どうしに挟まれたグラファイトシート12の中央部は、グラファイトシート12が露出した状態となっている。このグラファイトシート12の主面の取付シート13が設けられていない領域を第1領域12aという。また、グラファイトシート12の主面の取付シート13が設けられた領域を第2領域12bという。
【0026】
(第1変形例)
第1の実施形態の第1変形例に係る熱伝導シート11の上面図を、
図4に示す。
図4に示すように、グラファイトシート12の長辺側2辺全てのみ取付シート13で覆うようにしても良い。
【0027】
(第2変形例)
第1の実施形態の第2変形例に係る熱伝導シート11の上面図を、
図5に示す。
図5に示すように、グラファイトシート12の外周ほぼ全てを取付シート13で覆い、短辺側に切り欠き部16を有するようにしても良い。すなわち、グラファイトシート12の短辺は、取付シート13で覆われていない第1部分と取付シート13で覆われた第2部分とを有しても良い。このようにすることにより、発熱部品14あるいは放熱部材15と熱伝導シート11との間に空気がたまり、熱抵抗が上がってしまうことを防止することができる。
【0028】
(電子機器)
図6は、第1の実施形態に係る熱伝導シート11を用いた電子機器の断面図である。電子機器としては、例えばIGBT等のパワートランジスタがある。それらは基地局やモータ駆動用、車載用途の部品として用いられる。放熱部材15にグラファイトシート12の外周部からはみ出た取付シート13により熱伝導シート11が貼り合わせられ、発熱部品14が約200kPaの圧力で熱伝導シート11に押し付けられて固定されている。この約200kPaの圧力によりグラファイトシート12は圧縮されながら、発熱部品14および放熱部材15の凹凸に併せて変形して密着する。そのため、発熱部品14と放熱部材15との間の熱抵抗が小さくなり、電子機器の放熱効率が向上する。
【0029】
(熱伝導シート11を用いた電子機器の製造方法)
次に、熱伝導シート11を用いた電子機器の製造方法を、
図7A、
図7Bを用いて説明する。
図7A、
図7Bは、具体的には、熱伝導シート11を電子機器に取り付ける際の工程を示す断面図である。
【0030】
まず、
図7Aに示すように、熱伝導シート11を例えばヒートシンクのような放熱部材15に貼り合わせる。ここで、グラファイトシート12の周囲から取付シート13がはみ出している。そのため、この取付シート13により熱伝導シート11を容易に正確な位置に配置することができる。次に、
図7Bに示すように、この露出しているグラファイトシート12の面の上に発熱部品14を取り付ける。そして、発熱部品14より所定の圧力Fを加えてグラファイトシート12を圧縮する。この時の圧力Fは、100~300kPa程度とすることが望ましい。取付シート13を含む領域を同時に圧縮しても、取付シート13の厚みを十分に薄くすることにより、露出しているグラファイトシート12にも十分に圧力が加わり、圧縮される。そのため放熱部材15および発熱部品14に凹凸があっても、露出した部分のグラファイトシート12を放熱部材15および発熱部品14に密着させることができ、熱抵抗を小さくすることができる。
【0031】
特に取付シート13の厚みを(T0―T1)よりも薄くすることが優れている。なぜならば、グラファイトシート12に圧力を加えたとき、第1領域12aが取付シート13の表面とほぼ同じ高さになる。そのため、露出した部分のグラファイトシート12を放熱部材15および発熱部品14により密着させることができるからである。
【0032】
さらに取付シート13が、グラファイトシート12の外周全てを覆っているようにすることにより、グラファイトシート12の端部からのグラファイト粉の落下や飛散を防止することができ、電子機器の信頼性を向上させることができる。
【0033】
(電子機器の第1変形例)
第1の実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の第1変形例にかかる断面図を、
図8に示す。また、当該電子機器の変形例にかかる上面図を、
図9に示す。なお、
図9において放熱部材15は説明の都合上省略している。
図8のように発熱部品14の端子17が側面から引き出されているものを使用する場合には、端子17が引き出された辺に位置するグラファイトシート12の辺は、
図9に示すように全て取付シート13で覆われているようにすることが望ましい。このようにすることにより、グラファイトシート12の端部から端子17へのグラファイト粉の落下や飛散による悪影響を防止することができる。
【0034】
(電子機器の第2変形例)
第1の実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の第2変形例にかかる断面図を、
図10に示す。また、当該電子機器の変形例にかかる上面図を、
図11に示す。なお、
図11において放熱部材15は説明の都合上省略している。
【0035】
この第2変形例にかかる電子機器は、グラファイトシート12の上面の面積が発熱部品14の上面の面積よりも大きい場合である。その他の構成については、上記電子機器の第1変形例の場合と同じである。このような構成においても、グラファイトシート12の端部から端子17へのグラファイト粉の落下や飛散による悪影響を防止することができる。
【0036】
(電子機器の第3変形例)
第1の実施形態における熱伝導シートを用いた電子機器の第3変形例にかかる断面図を、
図12に示す。また、当該電子機器の変形例にかかる上面図を、
図13に示す。なお、
図13において放熱部材15は説明の都合上省略している。
【0037】
この第3変形例にかかる電子機器は、グラファイトシート12の上面の面積が発熱部品14の上面の面積よりも小さい場合である。その他の構成については、上記電子機器の第1変形例の場合と同じである。このような構成においても、グラファイトシート12の端部から端子17へのグラファイト粉の落下や飛散による悪影響を防止することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
(熱伝導シート)
図14は本開示の第2の実施形態における熱伝導シート21の断面図、
図15は
図10における熱伝導シート21の領域XVでの拡大断面図、
図16は
図14における熱伝導シート21の領域XVIでの拡大断面図、
図17は熱伝導シート21の下面図である。なお
図17は熱伝導シート21からセパレータ24を外した状態での下面図である。
【0039】
グラファイトシート22は、約60mm×90mmの長方形状の大きさを有し、厚さは約100μmの熱分解グラファイトシートを用いている。このグラファイトシート22は高い圧縮性を有するものを用いるのが望ましく、100kPaの圧力を加えた場合の圧縮率は約35%となっている。ここで圧縮率とは、初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えた状態での厚さをT1として、(T0-T1)/T0の値をパーセント表示したものである。
【0040】
図15は
図14におけるグラファイトシート22の端部近傍の領域XVでの拡大断面図である。また、
図16は
図14における取付シート23の端部近傍の領域XVIでの拡大断面図である。
【0041】
グラファイトシート22の一方の面(主面)には取付シート23が設けられている。この取付シート23はグラファイトシート22の外周に沿って幅約10mmで、グラファイトシート22の外周部から約5mmはみ出すように設けられている。取付シート23はポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す)を基材23bとし、基材23bのグラファイトシート22に対向する面にアクリルからなる粘着層23aが設けられている。粘着層23aを含めた取付シート23の厚さは約10μmとなっている。そのため、取付シート23の厚みは(T0―T1)よりも薄くなっている。また取付シート23どうしに挟まれたグラファイトシート22の中央部は、グラファイトシート22が露出した状態となっている。このグラファイトシート22の主面の取付シート23が設けられていない領域を第1領域22aという。また、グラファイトシート22の主面の取付シート23が設けられた領域を第2領域22bという。
【0042】
グラファイトシート22が全面に露出している面(裏面)側(
図14、
図15におけるグラファイトシート22の下側の面)には、厚さ約75μmのセパレータ24が設けられている。このセパレータ24のグラファイトシート22と対向する面には、シリコーン樹脂からなる離型材24aが設けられている。そのためグラファイトシート22からはみ出た部分の取付シート23は、離型材24aによって弱い力でセパレータ24に接着している。
【0043】
また取付シート23が設けられた面(主面)側(
図14、
図15におけるグラファイトシート22の上側の面)には、厚さ約50μmの保護フィルム25が設けられている。この保護フィルム25の取付シート23と対向する面にはシリコーンからなる微粘着層25aが設けられる。また、グラファイトシート22からはみ出た部分の取付シート23の端部は微粘着層25aにより保護フィルム25に接着されている。ここで微粘着層25aとは、対象材料に適度な粘着性を有し、剥離したときに対象材料に粘着物が残らない粘着層を意味している。
【0044】
以上のように構成することにより、取付シート23とセパレータ24との間の接着力は、粘着層23aがアクリルよりなりシリコーン樹脂よりなる離型材24aとほとんど接着しないので、保護フィルム25と取付シート23との間の接着力よりも弱いものとなる。
【0045】
この熱伝導シート21を例えばヒートシンクのような放熱部材に貼り合わせる。まずは熱伝導シート21からセパレータ24を剥離する。取付シート23とセパレータ24との間の接着力は、保護フィルム25と取付シート23との間の接着力よりも弱くなっているので、セパレータ24のみを剥離することができる。
【0046】
グラファイトシート22からはみ出した部分の取付シート23は、厚さが薄いため形状を保持することが難しくなる。本実施の形態では、グラファイトシート22からはみ出した部分の取付シート23の端部は保護フィルム25に接着されているため、形状を保持することができる。この保護フィルム25に固定された状態で、放熱部材に貼り合わせることができるため容易に正確な位置に配置することができる。そのあと保護フィルム25を剥離する。保護フィルム25と取付シート23との接着力を、取付シート23と放熱部材との接着力よりも弱いものとしておくことにより、容易に保護フィルム25を剥離することができる。
【0047】
次にこの露出しているグラファイトシート22の面に発熱部品を所定の圧力を加えてグラファイトシートを圧縮する。この時の圧力は、100~300kPa程度とすることが望ましい。取付シート23を含む領域を同時に圧縮しても、取付シート23の厚みを十分に薄くすることにより、露出しているグラファイトシート22にも十分に圧力が加わり、圧縮される。そのため放熱部材および発熱部品に凹凸があっても、露出した部分のグラファイトシート22を放熱部材および発熱部品に密着させることができ、熱抵抗を小さくすることができる。
【0048】
さらに取付シート23が、グラファイトシートの外周全てを覆っているようにすることにより、グラファイトシート22の端部からのグラファイト粉の落下や飛散を防止することができ、電子機器の信頼性を向上させることができる。
【0049】
(第1変形例)
本開示の第2実施形態における第1変形例の熱伝導シート21について、
図18~
図20を用いて説明する。この熱伝導シート21は、セパレータ24にスリットライン24bを設けたものである。
図18は、熱伝導シート21を保護フィルム25の上からみた図すなわち上面図である。
図19は、熱伝導シート21をセパレータ24の下からみた図すなわち下面図である。
図20は、
図18における線分XX-XXで切ったときの熱伝導シート21の断面図である。
【0050】
セパレータ24にはグラファイトシート22からはみ出た取付シート23と接着している領域を横断し、セパレータ24の一辺から他辺につながったスリットライン24bが設けられている。スリットライン24bは、セパレータ24に切り込みを入れることにより設けられる。すなわち、スリットライン24bは、セパレータ24の厚さと比較して幅の非常に狭い溝(スリット)、またはセパレータ24の表面から裏面に達する切り込みである。セパレータ24にスリットライン24bを入れることにより、熱伝導シート21からセパレータ24さらに剥離しやすくすることができる。
【0051】
(第2変形例)
本開示の第2実施形態における第2変形例の熱伝導シート21の上面図を、
図21に示す。なお、
図21は熱伝導シート21からセパレータ24および保護フィルム25を外した状態での上面図である。
図21のように、グラファイトシート22の長辺側2辺全てのみ取付シート23で覆うようにしても良い。
【0052】
(第3変形例)
本開示の第2実施形態における第3変形例の熱伝導シート21の上面図を、
図22に示す。なお、
図22は熱伝導シート21からセパレータ24および保護フィルム25を外した状態での上面図である。
図22のように、グラファイトシート22の外周ほぼ全てを覆い、短辺側に切り欠き部26を有するようにしても良い。すなわち、グラファイトシート22の短辺は、取付シート23で覆われていない第1部分と取付シート23で覆われた第2部分とを有しても良い。このようにすることにより、発熱部品あるいは放熱部材と熱伝導シートとの間に空気がたまり、熱抵抗が上がってしまうことを防止することができる。
【0053】
なお、以上の実施の形態では、取付シート23の保護フィルム25側には粘着層23aを設けずに、保護フィルム25の取付シート23側に微粘着層25aを設けたが、保護フィルム25側に微粘着層25aを設けずに、取付シート23の両面に粘着層23aを設けたものでも構わない。この場合も、取付シート23とセパレータ24との間の接着力を、保護フィルム25と取付シート23との間の接着力よりも弱くし、保護フィルム25と取付シート23との接着力を、取付シート23と放熱部材との接着力よりも弱いものとしておくことにより同様の効果を得ることができる。
【0054】
(第4変形例)
本開示の第2実施形態における第4変形例の熱伝導シート21の断面図を、
図23に示す。グラファイトシート22を電子デバイス等に取り付ける前に、グラファイトシート22の表面に保護フィルム25が極力触れないように、グラファイトシート22と保護フィルム25との間には空間を確保しておくことが望ましい。そのため
図23ように取付シート23と保護フィルム25との間に、厚さ約60μmのPETからなるスペーサ27を設けても良い。この場合、グラファイトシート22からはみ出た部分の取付シート23の端部はスペーサ27を介して保護フィルム25と接着されているように構成する。さらにスペーサ27と保護フィルム25との接着力を、スペーサ27と取付シート23との接着力よりも強くすることで、放熱部材に貼り合わせた後、スペーサ27と保護フィルム25を同時に剥離することができる。
【0055】
(第5変形例)
本開示の第2実施形態における第5変形例の熱伝導シート21の下面図を、
図24に示す。なお、
図24は熱伝導シート21からセパレータ24を外した状態での下面図である。
図24のように保護フィルム25およびセパレータ24の大きさを、取付シート23を設けた領域よりも大きくし、取付シート23を設けた領域の外側の保護フィルム25に複数個の貫通孔28を設けても良い。保護フィルム25に貫通孔28を設けることにより、放熱部材もしくは発熱部品に貼り合わせるときの位置合わせに使うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示に係る熱伝導シートは、精度よく位置決めをすることができ、熱抵抗の小さい熱伝導シートを得ることができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0057】
11、21 熱伝導シート
12、22 グラファイトシート
12a、22a 第1領域
12b、22b 第2領域
13、23 取付シート
13a、23a 粘着層
13b、23b 基材
14 発熱部品
15 放熱部材
16、26 切り欠き部
17 端子
24 セパレータ
24a 離型材
24b スリットライン
25 保護フィルム
25a 微粘着層
27 スペーサ
28 貫通孔